生成AI「無いと困る」利用者6割に
生成AIは「業務インフラ」へ
― 国内5本でみる実装の現在地
「生成AIが使えなくなったら困る」と答えた利用者は59.2%――最新調査が示したのは、AIがもはや実験ツールではなく日々の業務を支える基盤になりつつある現実です。本日の夕版では、この利用実態調査を軸に、診察室・銀行口座・予測分析・人材育成の現場で同時に進む「AIの内蔵化」を、5月27〜28日発表の国内ニュース5本で横断します。
①利用者の6割が「無いと困る」――生成AI依存度が急上昇
ICT総研が発表した「生成AI価値実感と継続意向調査」で、利用経験者に「生成AIが使えなくなったらどの程度困るか」を尋ねたところ、「非常に困る」が18.3%、「ある程度困る」が40.9%となり、合計59.2%が手放せないと回答しました。今後期待することは「より正確で信頼できる情報提供」が56.6%で最多、次いで「作業時間のさらなる短縮」が43.0%。生成AIが補助ツールの域を超え、日常業務に組み込まれた存在へと変化している実態が浮かび上がっています。
「無いと困る」が6割という数字は、裏を返せば利用ルールやデータ管理が未整備のまま依存が進むリスクでもあります。まず社内の利用実態を可視化し、品質チェックと情報管理の運用を先に整えることが、安心して使い続ける前提になります。
②診察の音声がそのままカルテに――医療現場の「AI音声カルテ」始動
アトミックソフトウェアは、自由診療向け電子カルテ「medicalforce」に、診察中の音声をリアルタイムでテキスト化し、SOAP形式のカルテ用テキストを自動生成する「AI音声カルテ」機能の先行提供を5月28日に開始しました。AI機能群「medicalforce intelligence」の第一弾という位置づけで、医師が会話に集中しながら記録を残せるようにし、カルテ入力にかかる時間の大幅削減を狙います。専門職の「書く負担」を直接減らす実装例です。
音声からの記録自動化は、医療に限らず商談メモ・問い合わせ対応・現場日報など「話したことを後で文章化する」あらゆる業務に応用できます。属人化しやすい記録業務こそ、AI導入の費用対効果が見えやすい入口です。
③予測分析を「対話」で――Prediction Oneに対話型エージェント版
ソニーネットワークコミュニケーションズは、予測分析ツール「Prediction One」に対話型AIエージェント版を新ラインナップとして追加し、5月よりβ版の提供を開始しました。「何を予測・分析すべきか」というテーマ選定から、データの結合・整形といった前処理、精度向上のための修正案や施策提案までを、AIエージェントがチャット形式で一貫してナビゲートします。機械学習やプログラミングの専門知識がない担当者でも一画面で分析を完結でき、正式版は2026年度中のリリースを予定しています。
データ分析の壁は多くの場合「ツール」ではなく前処理と問いの立て方にあります。そこをAIが伴走する設計は、専門人材を抱えにくい中小企業でも需要予測や離反予測に着手できる現実的な選択肢になります。
④法人口座にAIを標準装備――ネット銀行が資金繰りを自動予測へ
GMOあおぞらネット銀行は、2026年度中に法人向け口座へAIエージェントを標準装備すると発表しました。顧客ごとに資金繰りを予測したり支払いを自動化したりできるようにし、取引画面も利用者に合わせてカスタマイズします。同社は「金融のあり方そのものをAIで変革したい」とし、AIを軸に法人口座の拡大を目指す方針です。バックオフィスにAIを「追加する」のではなく、口座サービス自体にAIを「内蔵する」動きとして注目されます。
資金繰り予測や支払い自動化は、人手の限られる中小企業の経理ほど効果が大きい領域です。金融サービス側にAIが標準で載る流れは、自社でツールを選定せずとも高度な財務管理が手に入る未来を示しています。
⑤リスキリングの6割が「研修の延長」止まり――AIが迫る再設計
みらいワークスが発表した「日本企業におけるリスキリングの認識とAI影響に関する実態調査2026」によると、回答企業の6割以上がリスキリングを実施している一方、61.0%が「職務や役割の転換は前提にしない」従来研修の延長として捉えており、職種転換を伴う本来のリスキリングを実践しているのは9.5%にとどまりました。さらに生成AIの影響で「カリキュラム更新が必要」とした企業が37.1%で最多となり、目的や制度設計の見直しを迫られた企業と合わせ、5割超が施策変更を余儀なくされています。
AI導入の成否を最後に分けるのは人材です。研修を「受けさせる」だけでなく、AIで変わる業務を前提に役割そのものを描き直す視点が欠かせません。小さく試し、成果が出た業務から育成テーマを更新する循環が現実的です。
🔭 明日への展望
本日の5本に共通するのは、AIが「使うアプリ」から「サービスや業務に内蔵される基盤」へと位置づけを変えつつある点です。利用者の依存度が高まるほど、品質・情報管理・人材育成といった「使い続けるための土台」の重要性が増します。明日以降は、こうした基盤化を支えるガイドライン整備や中小企業向け支援策の動き、そして口座・カルテ・分析ツールのように既存サービスへAIが標準搭載される事例の続報に注目したいところです。
生成AIは「便利な選択肢」から「無いと困る基盤」へ。医療・金融・分析・人材の各現場で、AIはサービスそのものに溶け込み始めています。問われるのは"導入したか"ではなく、"使い続ける土台を整えられているか"です。
コプラスでは、自社の業務に合わせた生成AIの選定・運用設計・人材育成までを伴走支援しています。「何から始めるべきか」のご相談から、お気軽にお問い合わせください。


