ChatGPT、情報漏洩防ぐ新モードを公開
情報漏洩対策から国産エージェントまで
実務に効く5本
本日の夕版は「使う側の守りと足元の実装」に焦点を当てます。生成AIの業務利用が当たり前になるなか、注目は派手な新モデルよりも情報漏洩をどう防ぐか、機密データを外に出さずどう活用するかへと移りつつあります。ChatGPTの新セキュリティ機能の一般開放、約1億人が使うLINEヤフーのAIエージェント拡張、クラウドに頼らないAI技術の登場など、中小企業の導入判断に直結する5本を業種視点で整理しました。
① ChatGPT、機密データの持ち出しを防ぐ「ロックダウンモード」を一般開放
OpenAIは、ChatGPTの「ロックダウンモード」を個人・自営業向けプラン(Free/Plus/Pro等)とビジネスアカウントにも開放しました。これは2月に発表された機能で、悪意ある指示を仕込む「プロンプトインジェクション」攻撃の最終段階であるデータ送信経路を遮断する仕組みです。有効化するとWeb閲覧・画像取得・ディープリサーチ・エージェント機能が制限され、機密情報が外部へ流出する経路を断ちます。攻撃そのものを消す機能ではなく、被害の出口を塞ぐ「守りの設定」と位置づけられます。
「社員がAIに機密を入力して漏れないか」は中小企業のAI導入で最も多い懸念です。今回の開放で、外部資料を扱う部署だけ厳格設定にするなど運用の選択肢が広がりました。利便性と安全性のトレードオフを理解したうえで、業務別のルール設計を進めることをおすすめします。
② LINEヤフー「Agent i」、画像生成と“記憶”機能を追加し15領域へ拡大
国内月間約1億人が使うLINEを基盤とするAIエージェント「Agent i」が機能を大幅拡張しました。テキストからの画像生成や画像加工に対応したほか、会話から情報を自動で保存して継続的にやり取りできるメモリ(記憶)機能を搭載。応答のトーンも「フレンドリー」「執事」など10種類から選べます。対応領域は「学び」「くらし」「エンタメ」などを加えて全15領域(ベータ含む)に拡大しました。
専用アプリ不要で“いつものLINE”からAIが使える点は、ITに不慣れな顧客層を抱える地域事業者にとって大きな意味があります。今夏には店舗向けの「LINE OA AIモード」も予定されており、予約・問い合わせ対応の自動化を検討する中小サービス業は動向を押さえておきたいところです。
③ 学習不要の検索技術「turbovec」登場、データを外に出さないRAGが現実的に
開発者Ryan Codrai氏が、Google Researchの量子化アルゴリズムを実装したベクトル検索ツール「turbovec」をMITライセンスで公開しました。1000万件のデータを31GBから約4GBへ圧縮でき、事前の学習フェーズが不要で追加データをすぐ検索できるのが特徴です。社内文書をAIに参照させる「RAG」をクラウドに送らずローカルで完結させやすくなり、医療・金融・行政など機密性の高い現場での活用を後押しします。
「自社データでAIを賢くしたいが外部に出すのは不安」という声に応える技術潮流です。大規模なインフラ投資なしに手元のPCサーバーで社内検索AIを構築できる余地が広がります。まずは社内マニュアルやFAQでの小さな実証から始め、データの所在を自社で管理する設計を意識しましょう。
④ シカゴ大、サーバー不要で動く“皮膚のように伸びる”オンデバイスAI
シカゴ大学の研究チームが、体に貼ったままセンシング・記憶・処理を一つのデバイスで完結させる柔軟な電子パッチを発表しました。脳の仕組みを模した素子を高密度に集積し、150%まで伸ばしても動作。心臓の異常波形の追跡で10ミリ秒以内に99.6%の精度を達成しました。外部サーバーへの送信が不要なため、装着型の医療モニタリングがより安全かつ低遅延で実現する可能性があります。
クラウドに頼らず端末側で処理する「エッジAI」は、通信が不安定な現場や、データを外に出せない医療・介護領域で価値を発揮します。研究段階ですが、ヘルスケア・見守り分野の事業者にとっては数年先のサービス設計を考えるヒントになります。
⑤ 音楽生成のSuno、著作権訴訟が続くなか大型調達で評価額が倍増
AIで楽曲を生成するSunoが、シリーズDで4億ドルを調達し、評価額は前回の約2倍となる54億ドルに達したと報じられました。一方で、全米レコード協会が大手レーベルを代理して2024年に提起した著作権侵害訴訟は継続中で、Warner Musicは和解したものの、Sunoは「フェアユース」を主張して争いを続けています。2026年7月には略式判決の審理が予定されており、生成AIと著作権の境界線をめぐる重要局面を迎えます。
資金は集まる一方で法的決着は未確定——生成AIの“学習データの正当性”は依然グレーです。日本企業が生成AIで音楽・画像・文章を業務利用する際は、利用規約や学習元の扱いを確認し、商用利用の可否を都度チェックする慎重さが求められます。
明日への展望
本日の流れを通底するのは「賢さの競争から、安全に使う・自前で守るへ」というテーマの転換です。情報漏洩を防ぐ設定、データを外に出さない検索技術、端末内で完結するAI——いずれも“クラウドに預ける前提”を見直す動きと言えます。明日以降は、こうしたセキュリティ・データ主権の観点を組み込んだ国内ベンダーのサービス発表や、生成AIの著作権をめぐる司法判断の行方が注目ポイントになりそうです。
AIの主戦場は「最新モデル」から「現場で安全に使いこなす」段階へ。情報漏洩対策、ローカル完結の活用、身近なツールへの統合が、中小企業のAI導入を一段と現実的にしています。自社のどの業務から、どこまでデータを預けて始めるか——その設計こそが成果を分けます。
コプラスは、貴社の業務に合わせたAI活用・情報管理の設計をご支援します。お気軽にご相談ください。


