
生成AIガイドラインの著作権の項目とは、社員がAIに何を入れ、出てきたものをどう確かめ、どこまで社外に出してよいかを決める社内ルールです。書き方は、入力・生成物の確認・公開の3つの場面に分け、使ってよいAIサービスを会社で決めておく形になります。社員10〜200名の会社なら、法律の長い説明より、禁止すること・確かめる手順・記録の残し方を先に決めたほうが回しやすいでしょう。ガイドライン全体の10項目は生成AI社内ガイドラインの作り方にまとめてありますので、ここでは著作権の条項だけに絞ってお伝えします。
生成AIガイドラインの著作権は3場面に分けて書く
著作権の項目は、入力・生成物の確認・公開という3つの場面で分けると、社員の方が迷いにくくなります。法律の言葉を並べただけでは、現場の方が画面の前で手を止めてしまうでしょう。
入力の場面で決めるのは、他人の文章や画像、PDF、提案書、コードをAIに入れてよいかどうかです。見るところは2つで、その資料を会社が使う権利を持っているか、AIに入れる目的が既存の表現をまねることになっていないかになります。社外の資料を丸ごと入れて要約する、作家名や作品名を入れて似た文章を出させる、既存の画像を読み込ませて似た画像を作る、という使い方は止めておくほうが無難です。
生成物の確認の場面では、AIが出した文章や画像が既存の作品に似ていないかを、人が確かめる手順を書きます。文章なら検索やコピペチェック、画像なら類似画像検索、社外に出す資料なら出典と引用の確認が候補になります。AIが出したものだから安全、ではなく、使う前に人が確かめる前提で書きましょう。
公開の場面では、生成物をWebサイトやSNS、広告、提案書、セミナー資料、納品物に使うときの承認者と記録を決めておきます。後から似ていると言われたときに、誰が使ったのか、どの指示文(プロンプト)から出たのか、どのサービスを使ったのかが分からないと、確認に時間がかかってしまいます。
社員10〜200名の会社では、全員に著作権法を読み込んでもらう運用は続きにくいものです。まずは総務・情シス・経営者の方で、「使ってよいAI」「入れてはいけないもの」「公開前に見るもの」「記録するもの」の4つを紙1枚に決めてみてください。
よくある失敗は、著作権の項目を「権利侵害に注意する」の一文だけで終えてしまう書き方になります。これだと、営業の方が提案書のたたき台を作るとき、広報の方がブログ用の画像を作るとき、開発の方がコードを聞くときに、判断が一人ひとりに任されてしまいます。ルールは、画面の前で選べるくらい具体的な言葉に落としましょう。
法律の要点は条文の根拠として短く押さえる
社内ガイドラインに書く法律の説明は、30条の4、類似性と依拠性、AI生成物の著作物性、責任の4点に絞れば足ります。詳しい解説は生成AIと著作権に任せて、社内文書には実務で使う分だけを書きましょう。
著作権法30条の4は、著作物に表現された思想又は感情を自分で楽しんだり、他人に楽しませたりする目的ではない場合に、必要と認められる限度で利用できるという条文です。情報解析のための利用もここに入ります。ただし、著作物の種類や用途、利用の仕方から見て、著作権者の利益を不当に害する場合は別の扱いとなります。
社内向けには、30条の4を「AIに何を入れてもよい条文」と説明しないでください。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月)は、いくつかの目的のうち一つでも、見る・読むなどで内容を味わう目的(享受の目的)が入っていれば、30条の4の要件を欠くとしています。この「考え方」そのものに法的な拘束力はありませんが、ガイドラインを作るときの目安として使うことができます。
生成や利用の段階では、既存の著作物との類似性と依拠性が問われます。類似性は創作的な表現が共通しているか、依拠性は既存の著作物をもとに作ったと見られるか、というお話です。AIを使った方が元の作品を知らなくても、学習の段階でその作品が学習されていれば、通常は依拠性があったと推認される、というのが文化庁の整理になります。さらに、生成した段階では問題がなくても、SNSへのアップロードなど生成物を使う段階まで直ちに適法とはならず、場面ごとに判断が要るとされています。
作風やアイデアそのものは、著作権で守られる対象ではありません。とはいえ、作風の指定なら何でも安全という意味にはならないので注意が必要です。実際の生成物が既存の作品の創作的な表現と似ていれば、公開したときに問題となるおそれがあります。
私的使用の例外も、会社の業務での利用や公開にはそのまま当てはまりません。個人が家で楽しむ使い方と、会社がWebサイトや広告、提案書で使う場面は分けて考えてみてください。ガイドラインには「個人で試したものを、そのまま会社の公開物に転用しない」と書いておくと伝わりやすくなります。
AI生成物に著作権が認められるかどうかも、ガイドラインでは短く触れれば十分でしょう。文化庁の考え方では、AIは「創作する者」には当たり得ず、人がどれだけ創作的に関わったかを積み重ねで見るとしています。判断の材料は、指示や入力の分量と内容、生成を試した回数、複数の生成物からの選び方で、人が創作的な加筆や修正をした部分は通常、著作物性が認められます。
責任の話は、怖く書きすぎず、かといって軽くも見せないほうがよいところになります。差止請求は故意や過失を問わずできるのに対し、損害賠償には故意又は過失が、刑事罰には故意が要るとされています。著作権法には、十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金(又はその両方)、社員が業務で侵害した場合には、会社(法人)にも三億円以下の罰金刑の定めがあります。なお、119条1項などの罪は原則として告訴がなければ起訴できない親告罪ですが、有償の著作物を原作のまま公衆送信するといった一部の行為は、告訴がなくても起訴されることがあり得ます。
国内外の訴訟や事件の具体例は、ガイドラインの本文に無理に入れなくてよいでしょう。裏取りのできていない事例を研修資料に載せると、かえって説明がぶれてしまいます。ガイドラインには、事件名よりも禁止事項と確認手順を残したほうが実務で役立ちます。
社内で説明するときは、「学習の段階は30条の4とその例外を見る」「生成物を使う段階は類似性と依拠性を見る」「AI生成物の権利は人がどれだけ手を加えたかを見る」の3つで足ります。この3つを研修資料の冒頭に置いてから、次のチェックリストへ進めてみてください。
入力時・出力時・公開時のチェックリスト
チェックリストは、入力時・出力時・公開時の3つに分けると、現場の作業の流れに乗せやすくなります。部署別ではなく場面別にしておけば、営業・広報・開発・管理部門が同じ言葉で確かめることができます。
入力時のチェック
- 会社が使う権利を持つ資料か取引先から受け取った資料、購入した教材、Web上の画像、他社の提案書をAIに入れる前に、入れてよい資料かを確かめます。
- 既存の作品に似せる目的ではないか作家名、作品名、キャラクター名、広告コピー名を入れて、似た生成物を作らせる使い方は避けます。
- 既存の著作物を画像入力に使っていないか既存のイラストや写真を読み込ませて、似た構図や表現を出す使い方は、公開前に止める対象にします。
- 個人アカウントや無料版に業務情報を入れていないか会社が契約条件を確かめられない環境には、顧客の資料や未公開の資料を入れないようにします。
入力時の判断は、いちばん手前で止められる対策になります。文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月)でも、入力した既存の著作物と似たものを生成させる目的の入力は、30条の4が適用されない場合があると注意を促しています。社外の資料を要約したいときは、契約で決まっている利用の範囲や社内の承認ルートを確かめてから進めましょう。
出力時のチェック
- 文章は検索とコピペチェックを通したか見出しや導入文、説明の言い回しが、既存のページと近くないかを確かめます。
- 画像は類似画像検索を試したか公開物や広告で使う画像は、既存の作品に近い構図や表現がないかを見ます。
- AIの出力に人が手を入れたかそのまま貼るのではなく、会社の文脈に合わせた手直しや事実の確認を人が加えます。
- 生成の過程を記録できているかプロンプト、生成日時、使ったAIサービス、確かめた検索結果を残します。
同じガイダンスは、生成物を使う前に、インターネット検索などで既存の著作物と似ていないかを確かめることを挙げています。画像や文章を社外に出すなら、この確認を手順として書き込んでおきましょう。
出力時の確認でよくある失敗は、「少し変えれば大丈夫」と考えてしまうことです。各社の事業者向け規約では、元の入力に権利がない場合や、似ていると知りながら使った場合などが補償の外に置かれ、OpenAIやAnthropicのように出力の改変も除外に挙げる規約があります。似ていると感じたものは使わない、という判断を先に置いてください。
公開時のチェック
- 公開先を決めて確かめているか社内メモ、提案書、Web記事、SNS、広告、納品物では、リスクの大きさが変わります。
- 引用として使う部分を分けているか公表された著作物を引用するときは、公正な慣行に合い、引用の目的に照らして正当な範囲に収めます。
- 承認者が決まっているかWeb公開や納品物は、担当者だけで済ませず、承認する方を置きます。
- 後から説明できる記録があるか公開後に問い合わせが来たとき、入力・出力・確認・承認の流れを追えるようにします。
公開時に残す記録は、文化庁のガイダンスでも、生成に使ったプロンプトなど生成の過程を確かめられる状態にしておくよう努める項目として挙げられています。記録は、依拠性がないことの説明にも、人がどれだけ手を加えたかの説明にも役立ちます。
WebコラムやSNSは社外の方がすぐ目にするため、公開前の確認を省くと、会社の名前で問題が広がってしまいます。提案書やセミナー資料も、配る先が広がるほど公開物に近づいていきます。どの公開先なら誰の承認が要るのか、部署ごとに一度決めてみてください。
そのまま貼れる著作権条項の文例
著作権条項は、目的・入力・生成物の確認・公開・記録・違反したときの扱いまでを、1つのまとまりとして置くと使いやすくなります。下の文例は、社内規程にそのまま貼ったうえで、承認者の名前とツール名を自社のものに直して使える形にしてあります。
※文例は一般的なひな形です。既存の就業規則・情報セキュリティ規程や取引条件に合わせ、導入前に法務担当や弁護士などの専門家に確認してください。
条文に入れる名前は、会社の規模に合わせて変えましょう。社員10〜30名なら承認者を「所属長又は管理部門」とするほうが回しやすく、100〜200名なら「広報責任者」「情報システム責任者」「法務又は外部専門家」のように、公開先ごとに分ける形になります。
すべての法律用語を条文に入れようと欲張る必要はありません。社員が読む条項では、行動に移せる言葉のほうが大切です。条文に「禁止」「確認」「承認」「記録」「停止」の5つが入っていれば、まず運用に乗せられます。
8つの条文は、文化庁のチェックリスト&ガイダンスにある業務利用者向けの項目(3-1-1〜3-1-8)の多くと対応させてあります。使うAIの仕組みや規約を確かめ、社員に著作権の教育をする3-1-1は第2条と第8条に、内部ルールを作って侵害を防ぐ3-1-2はこの条項そのものに当たります。入力が楽しむ目的を含まないかを見る3-1-3は第3条、生成と利用で判断が変わり得るとする3-1-4と、使う前に似ていないかを確かめる3-1-5は、第4条と第5条に入れました。プロンプトなど生成の過程を確かめられる状態にしておく3-1-7は、第6条にまとめています。関係者への説明(3-1-6)と広い情報提供(3-1-8)は、条文というより会社としての説明の仕方の話になるので、第7条の対応や第8条の見直しの際にあわせて考えてみてください。
取引先や社内の監査から根拠を聞かれたときに、文化庁の資料のどの項目に沿っているかを示せると、説明もぐっと楽になります。
既存の規程との関係も見ておいてください。情報セキュリティ規程や就業規則、秘密保持規程、制作物の承認フローがすでにある会社で、生成AIの条項だけを別の言葉で書くと、現場はどちらを見ればよいか迷ってしまいます。既存のルールの言葉に寄せて、承認者や保存場所をそろえましょう。
もう一つの失敗は、ガイドラインに違反したときの扱いを何も書かないことです。懲戒の話を強く書く必要はないものの、少なくとも「報告する」「止める」「記録を残す」の3つは入れておきたいところになります。初動が遅れると、差止や損害賠償の問題だけでなく、取引先への説明まで苦しくなってしまいます。
条文で決めた確認や記録は、社員が使うAIを会社の1か所にそろえると、無理なく続けやすくなります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
主要AIの事業者向け規約で確認すること
生成AIサービスを会社で使うときは、出力の権利、商用利用、入力の学習利用、補償の有無を利用規約で確かめておきます。社員任せの個人アカウントでは、この確認を会社でまとめてすることができません。
OpenAIの事業者向けサービス契約(2026年1月1日発効)では、API、ChatGPT Enterprise、ChatGPT Businessなどの企業向けサービスについて、顧客がすべての出力を所有するとされています。一方で、出力の使い方や正確さ・適切さを判断する責任は顧客が負い、ほかのユーザーが似た内容を受け取ることもあるとされます。第三者の権利を侵害するような使い方も禁じられています。
OpenAIのサービス利用規約(2026年9月10日更新)で、出力の使用や配布が第三者の知的財産権を侵害するという請求への補償がはっきり書かれているのは、APIと「Enterprise」です。この「Enterprise」はChatGPT Enterprise・Edu・Healthcareをまとめた呼び名で、ChatGPT Businessはこの定義に挙がっていません。Businessが補償の対象になるかどうかは、契約前に必ず確かめましょう。
AnthropicのCommercial Terms of Service(2025年6月17日発効)は、APIキーなどの商用サービスに適用され、Claude.aiのような消費者向けサービスは別の規約で扱うとしています。顧客は入力の権利を持ち続け、出力を所有します。商用サービスの顧客コンテンツでモデルを学習させないことや、有償利用とその出力が第三者の知的財産権を侵害するという請求から顧客を防御・補償することも定められています。
Google Cloudの生成AI補償対象サービス(2026年7月20日更新)には、Gemini in Workspace、Gemini Enterprise、Agent Platform API(旧Vertex AI API)の一般提供版の基盤モデルなどが並んでいます。個人向けのGeminiアプリは、この一覧に入っていません。無償で提供されている場合は対象外で、出典表示やフィルタなどのツールを無視した場合や、権利者から通知を受けた後も使い続けた場合などは除外されます。
Microsoftの顧客著作権コミットメントの対象は、ボリュームライセンスで有料提供されるもの、又はオンラインサービスの有料サブスクリプションで使うAzure OpenAIのモデルやCopilotになります。無料のプレビュー版は外れます。コンテンツフィルターなどの安全の仕組みを無効にしたり回避したりしないこと、入力を使う十分な権利を持っていることなどが条件です。
個人向けのMicrosoft Copilot補足使用条件(2026年8月18日発効)は、職場・学校・組織のアカウントには適用されず、個人で使うためのものとされています。応答が他者の著作権などを侵害しないとは約束できず、公開や共有をした場合の責任はすべて利用者にある、という書き方になります。個人向けのOpenAI利用規約にも、OpenAI側が出力を補償する条項はありません。さらに、企業や組織として個人向けの規約で使った場合は、利用から生じた第三者の請求について、利用者がOpenAIを補償する側に回ります。
各社の規約を並べると、事業者向けの有料契約には補償の定めがある社が多いものの、どれにも除外の条件が置かれています。よく見られるのは、侵害を知っていた場合、安全機能を外した場合、入力の権利がない場合、そして商標の主張です。出力の改変や、ほかの技術・コンテンツとの組み合わせを除外に挙げる規約もあります。補償がある契約でも、権利のない入力や危ない使い方まで守られるわけではありません。
この除外の条件は、そのまま条文の根拠になります。第3条で権利を確かめていない資料を入れないと決めるのは、入力の権利がない場合の除外に当たらないようにするためです。第4条と第5条で公開前に似ていないかを確かめるのは、侵害を知っていた、又は知るべきだったと言われないための手当てになります。第2条に「フィルタその他の安全機能を無効にしない」と入れておけば、安全機能を外した場合の除外にもかかりにくくなるでしょう。人がAIの出力に手を加えることは、文化庁の考え方では著作物性の材料になる一方で、規約では出力の改変として除外の条件にも挙がり得ます。手直しをしたときは、元の出力と直した後の両方を第6条の記録に残しておくと、説明がしやすくなります。
このため、ガイドラインには「使ってよいAIサービスの一覧」を必ず置きましょう。無料版を使ってよい部署や、個人アカウントで済ませてよい業務を例外として残すと、後から説明しにくくなってしまいます。サービスの一覧は、総務・情シス・経営者の方で四半期に一度だけでも見直してみてください。
確認日を残しておくと、規約が変わったときにも見直しやすくなります。ここで取り上げた主要AIサービスの規約は、2026年9月17日から2026年10月3日にかけて確認した内容に基づいています。実際に契約する前には、各社の最新の規約と契約書を見ていただくようお願いします。
侵害が疑われたときの社内フロー
侵害が疑われたときは、報告、公開の停止、似ているかの確認、記録の保全、専門家への相談の順に動くと、初動の抜けを減らせます。誰が悪いかを先に探すより、まず会社として止める範囲を決めるほうが現実的でしょう。
最初の一歩は報告になります。外から指摘が届いたら、担当者だけで返信しないようにしましょう。上長と管理部門、必要に応じて広報や情報システムの担当者にも、同じ情報を渡します。報告先を一つに決めていない会社では、メールやチャットが散らばって、最初に知った時刻すら分からなくなってしまいます。
次は公開の停止です。Webページ、SNSの投稿、広告、提案書の再送、セミナー資料の配布、納品予定のものの提出を、いったん止めます。公開を止めることは、侵害を認めるという意味ではありません。事実を確かめるまで、広がりを止めるための作業になります。
その後で、似ているかどうかの確認に入ります。文章なら、指摘された箇所と既存の著作物を並べて、創作的な表現が共通しているかを見ていきます。画像なら、構図や表情、配置、色使いだけでなく、創作的な表現がどこまで重なっているかを確かめます。作風やアイデアは保護の対象外ですが、表現の重なりがあれば話は変わってきます。
記録の保全も同時に進めてください。使ったAIサービス、アカウント、入力したプロンプト、添付ファイル、生成日時、生成物の候補、選んだ理由、手直しの履歴、公開前の承認記録を保存します。担当者の記憶に頼ると、数日後には細かい点が抜け落ちてしまいます。
最後に、必要に応じて専門家へ相談します。差止や損害賠償、名誉回復の措置、刑事罰、取引先への対応、公表する文面の出し方が絡むなら、社内だけで決めないほうがよいでしょう。外から指摘を受けた時点で、生成過程の記録を消さないよう社内に徹底しましょう。
文化庁のガイダンスも、取引先などの関係者へきちんと説明することを、業務利用者の項目に挙げています。停止と確認が済んだら、誰に、いつ、何を伝えるかも決めておきます。
社内フローは、規程に入れるなら次のように短く書けます。
この短い文例だけでも、初動の迷いはかなり減らせるでしょう。
よくある失敗は、指摘を受けた担当者が、よかれと思って生成の履歴や投稿を消してしまうことです。消してしまうと、依拠性がないことや、人がどれだけ手を加えたかを後から説明しにくくなります。公開は止めても、記録は消さないようにしてください。この違いは、研修で一度伝えておきましょう。
もう一つの失敗は、似ていないと社内だけで早々に決めてしまうことになります。似ているかどうかは、見た目の印象だけでは判断しきれません。生成物を使った場面、入力した情報、手直しの有無、公開先、相手からの指摘の内容を並べて確かめる必要があります。迷うときは、早めに専門家へ相談してみてください。
制作会社・委託先との取り決め文例
制作会社や委託先に生成AIを使ってもらう場合は、利用の通知、入力の制限、生成物の確認、権利の処理、記録の提出を、契約や発注書に入れておくと安心です。社内だけを整えても、外部の制作物から同じ問題が入り込むことがあります。
まず、委託先が生成AIを使うかどうかを、暗黙の前提にしないことが大切になります。ロゴ案や記事案、広告バナー、ホワイトペーパー、セミナー資料、Webサイトの画像などで生成AIを使うなら、発注側が前もって知っておく必要があります。知らないまま納品されると、公開後に指摘を受けても、生成の過程をたどれなくなってしまいます。
次に、入力してよい資料を発注側が決めます。委託先が自分の判断で他社の資料やWeb上の画像をAIに入れると、発注側まで説明に巻き込まれるおそれがあります。会社が渡した資料だけを使う、第三者の著作物を入れない、既存の作品に似せる目的では入力しない、という線を引きましょう。
取り決めの文例は、次の3つの条項にまとめられます。
委託先との条項は、生成AIを禁止するより、使うなら記録を出せる形にするほうが現実的です。禁止だけにすると、制作の実態がかえって見えなくなります。使う範囲を知らせてもらい、入力と確認のルールをそろえたほうが、発注側も委託先も動きやすくなるでしょう。
制作費が小さい仕事でも、公開範囲が広いものは確認を省かないでください。広告運用の中で作った1枚の画像でも、会社の広告として多くの方の目に触れます。制作費の大きさより、公開範囲とブランドへの影響で確認の厚さを決めましょう。
委託先とのやり取りでは、納期の直前になって初めてAIを使ったかを聞くと、修正が間に合わなくなってしまいます。発注書、キックオフ、初稿の確認の3か所で聞いてみてください。小さな会社ほど、最初の質問票を1枚用意しておけば、毎回の確認が楽になります。
使ってよいAIを会社で決め、記録が残る環境に集める
著作権の条項を守ってもらうには、使ってよいAIを会社で決め、その環境を実際に用意することが欠かせません。使える環境を会社が用意しないままだと、社員の方は個人アカウントや無料版へ流れやすくなります。
個人アカウントや無料版で仕事をされると、入れた資料の権利の確認、生成物の確認、入力・出力・公開の記録が、会社の手元に残りません。条文に「会社が指定したAIサービスを使う」と書いても、使える環境がなければ、現場では別のサービスを開いてしまうでしょう。記録が会社に残らなければ、著作権の確認をしたことを後から説明できなくなってしまいます。
ここで、前の節で見た個人向けの規約を思い出してみてください。個人向けのOpenAI利用規約と個人向けのMicrosoft Copilotには出力の補償がなく、個人向けのGeminiアプリもGoogle Cloudの補償対象サービスの一覧に入っていません。Copilotの個人向け条件にいたっては、個人で使うためだけのものと書かれているほどです。第2条で、会社が指定していない個人アカウントや無料版に業務情報を入れないと決めたのは、この補償の外側で会社の仕事をさせないためでもあります。
一部の社員だけに環境を用意すると、用意されなかった方が個人アカウントを使う理由が残ってしまいます。総務だけ、営業だけ、広報だけという配り方では、社内の資料が部署ごとに別々のAIへ入ることになります。
記録は、後から確かめるための保険のようなものです。誰が、いつ、どのAIを使い、何を入れて、どの生成物を公開したかが追えれば、指摘を受けたときの初動も早くなります。反対に記録がなければ、担当者の記憶と手元のメモに頼るしかありません。
会社で使う環境を選ぶときは、料金、使えるAI、入力データの扱い、管理者の権限、利用の記録(ログ)、使えるモデルの制限(ON/OFF)、請求の方法を並べて見ていきましょう。料金だけで選んでしまうと、記録が取れない、承認者が見えない、個人アカウントが残る、という形になりがちです。ガイドラインと環境は、同じタイミングで整えることが大切になります。
ガイドラインを作る段階で、最初から全社展開まで決めなくても構いません。まずは公開物を作る部署、顧客の資料を扱う部署、AIをよく使う部署から始めて、使った記録がきちんと残るかを見てみてください。ルールだけを配るより、実際の画面と記録を見ながら直していくほうが、社内にも根づきやすくなります。
生成AIの利用ログを、会社の環境で残す
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で使える法人向けサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログの確認や、権限・モデルON/OFFの設定ができ、個人アカウントや無料版に散らばりやすい業務利用を会社の環境へ集められます。月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。
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