
生成AIの壁打ちとは、まだまとまっていない考えをAIに投げ、質問や反論を返してもらいながら自分の考えを整理していく使い方になります。社外秘をどこまで入れてよいかは情報の中身だけでは決まらず、使う環境で線が変わり、個人アカウントなら社名・人名・金額を伏せた形までにとどめるのが安全です。生成AIの始め方や業務ごとの使いどころの全体像は、生成AIの使い方|会社で始める手順と、業務別の使いどころで順に紹介しています。
生成AIの壁打ちとは|答えより、考えの整理を受け取る使い方
壁打ちは、AIから正解をもらう使い方ではなく、自分の考えを言葉にして打ち返してもらい、抜けや矛盾に気づくための使い方になります。言葉の由来はテニスの壁打ちで、壁に打ったボールが返ってくるように、投げた案に質問や別の見方が返ってくる様子を指しています。社内で相談しようにも、まだ人に見せる段階ではない案や、立場上ほかの社員に聞きにくい迷いは少なくありません。そうした段階の考えを、誰にも遠慮せずに一度外へ出せる点に、AIを壁打ち相手にする意味があります。
AIを壁打ち相手にするメリット|時間・遠慮・視点
1つ目は、夜でも休日でも、思いついたときにすぐ相談出来ることです。2つ目は、相手の評価を気にせずに未完成の案を出せることで、上司や部下には言いにくい迷いもそのまま書くことが出来ます。3つ目は、顧客・現場の社員・財務担当など、立場を指定して別の視点から見直してもらえる点になります。一方で、AIは事実を取り違えることがあり、判断の責任を負ってくれる相手でもない点は、後の節で扱います。
もう1つ見落とされやすいのが、壁打ちでは経営や人事の生々しい話ほど入力したくなるという点です。相談の質を上げようと状況を詳しく書くほど、社外秘や個人の情報が文章に混ざってしまいます。便利さと引き換えに何を渡しているのかを、次の節で先に整理しておきましょう。
社外秘はどこまで入れてよいか|情報の種類と使う環境で決める
入れてよい範囲は、情報の種類と、どの環境で壁打ちをするかの掛け合わせで決まります。同じ売上の数字でも、会社が契約して学習に使わない設定を管理している環境と、社員が自分で登録した無料版とでは、扱いを分けるべきでしょう。下の表は、壁打ちで出てきやすい情報を7つに分け、3つの環境ごとに目安を付けたものです。
情報の種類×使う環境の判断表
○=入れてよい、△=条件つきで入れてよい、×=入れない。個人の無料版は、学習に使う設定を変えていない状態を指します。会社の環境は、会社が契約し、入力を学習に使わない設定と利用の管理を会社側で持っている環境を指します。
| 壁打ちで出てきやすい情報 | 個人の無料版(設定そのまま) | 学習をオフにした個人アカウント | 会社が契約した環境 |
|---|---|---|---|
| 社名や数字を含まない考えの骨組み(企画の方向性、会議の進め方など) | ○ | ○ | ○ |
| 伏せ字にした経営課題(業種・規模・比率で書いたもの) | ×(学習をオフにすれば右の列の扱い) | ○ | ○ |
| 取引先名・顧問先名が分かる相談 | × | × | △ 目的に必要な範囲だけ |
| 決算前の数値、未発表の値下げ・撤退・新商品 | × | × | △ 社内で許可された人だけ |
| M&A・資本提携・大口契約の交渉中の話 | × | × | △ 相手先名は伏せ、担当役員の了承を得て |
| 特定の社員の評価・問題行動・退職の相談 | × | × | △ 氏名を伏せ、処分の判断はさせない |
| 健康診断の結果など要配慮個人情報 | × | × | × |
表の中でいちばん差が出るのは、真ん中の学習をオフにした個人アカウントの列になります。学習に使われない設定にしても、会話そのものは本人のアカウントに残り、会社の側からは何が入力されたかが見えにくいまま残ってしまいます。学習オフは入れてよい理由にはならず、個人アカウントでは伏せ字にした形までと決めておきましょう。
社員や顧客の個人データについては、個人情報保護委員会が2023年6月2日の注意喚起で、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力する場合は、生成AIの提供事業者がその個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。個人情報を含むプロンプトの入力が、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確認することも、同じ注意喚起のもう1つの柱になります。健康診断の結果のような要配慮個人情報は、どの環境でも壁打ちに入れないと決めてしまうのが分かりやすいでしょう。
伏せ字への置き換え方|社名・人名・金額・日付の直し方
個人アカウントで壁打ちをするときは、固有の情報を、分かっても困らない粒度に置き換えてから貼るのが基本になります。AIに必要なのは、誰の話かではなく、どんな規模のどんな状況かという構造のほうです。置き換えの決まりは4つに絞ると、社員にも説明しやすくなります。
- 社名は、業種と規模に置き換える(例:関東の食品卸、社員60名ほど)
- 個人名は、役職や立場に置き換える(例:営業部の課長、入社3年目の若手)
- 金額は、比率や桁に置き換える(例:売上の約1割、数千万円規模)
- 日付は、時期の幅に置き換える(例:来期の上期、来月の上旬)
置き換える前と後の例
取引先から値下げを求められた場面と、社員の勤怠を相談する場面で、置き換えの前後を並べてみます。
【置き換える前】 〇〇商事から、10月1日の納品分から単価を8%下げてほしいと言われた。〇〇商事との年間取引は4,200万円で、営業部のA課長が担当している。 【置き換えた後】 主要な取引先の1社(卸売業)から、来期の初めから単価を1割弱下げてほしいと言われた。この取引先との取引は数千万円規模で、営業部の課長が担当している。値下げを受けるか、条件を付けて一部だけ受けるかを考えたい。 【置き換える前】 経理課のBさん(入社3年目)が、9月に3回、連絡なしで遅刻した。本人は体調のことを話しているが、課長は注意したいと言っている。 【置き換えた後】 管理部門の若手社員が、ここ1か月で連絡なしの遅刻を数回した。本人から事情の説明はあるが、上司は注意したいと考えている。注意の伝え方と、面談で確認すべきことを整理したい。
置き換えた後の文章にも、値下げを受けるかどうかを考えるのに必要な材料は残っています。取引先の社名や担当者名が消えても、AIの返してくる論点はほとんど変わりません。2つ目の例では、体調に関わる話を置き換えた後の文章から外している点にも注目してみてください。健康に関わる情報は、表のとおり要配慮個人情報にあたり得るため、伏せ字にするより先に文章から抜くのが安全です。伏せ字にしたかどうか迷ったときは、その文章を社外の知人に見せても困らないかで判断出来ます。
個人アカウントで経営相談をすると、履歴とメモリが会社の外に残る
社長や役員が自分の個人アカウントで経営の相談を重ねると、学習の設定とは別に、会話の履歴とAIの記憶が本人のアカウントに積み上がっていきます。OpenAIのヘルプでは、「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにしても、会話は引き続きチャット履歴に表示されると説明されています。ChatGPTの無料版やPlus、Proの個人用ワークスペースでは、この学習への利用が既定で有効になっている点も押さえておきたいところです。
ChatGPTのメモリのヘルプには、ChatGPTと共有した機密情報がメモリに記憶される場合がある、との記載もあります。メモリをオフにしても過去のチャットは削除されません。メモリとして保存された情報を消すには、保存済みメモリと、その情報を最初に共有したチャットの両方を削除し、ほかに含まれる場所からも消すよう案内されています。資金繰りや人事の悩みを何か月も相談し続けると、その中身が本人のアカウントの中に要約の形でも残り続けることになります。
※設定名と保存期間は、2026年9月に OpenAI と Google の公式ヘルプ(日本語版)で確認した内容です。画面の表記は更新されることがあります。
会社の契約に切り替えるときも、個人の履歴は自動では移りません。ChatGPT Businessについては、管理者は社員の個人用ワークスペースの統合や削除を強制出来ない、とOpenAIのヘルプに書かれています。個人アカウントに入れた経営の相談は、退職や異動のあとも会社の手で片付けられない前提で考えましょう。
Googleの個人アカウントでGeminiを使う場合も、アクティビティの保存をオフにした後のチャットは72時間アカウントに保持され、オンのままなら自動削除までの期間は既定で18か月とされています。人間のレビュアーが確認したチャットはアクティビティを削除しても消えず、最長で3年間保存されるとの説明もあります。相談の中身が会社の外に置かれ、会社から見えないまま時間がたってしまう点は、2社のヘルプを読む限り共通しているでしょう。学習の設定の変え方はChatGPTに学習させない方法、メモリの消し方はChatGPTのメモリの使い方で手順を紹介しています。
相談の履歴を会社の手元で管理出来る環境なら、社長の壁打ちも記録として残せます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
会議前15分の壁打ち手順|前提を貼り、質問させ、反論させる
会議や稟議の前に使うなら、15分を6つの手順に分け、最後に上司へ渡せる1枚のメモの形で出してもらうのが実用的です。時間の配分は次のとおりになります。
- 0〜2分 新しいチャットを開き、前提のひな形を貼る
- 2〜4分 AIに役割(立場)を指定する
- 4〜7分 足りない情報を3つ質問させて、それに答える
- 7〜10分 反論役に切り替えて、案の弱点を挙げさせる
- 10〜13分 気になった指摘を2〜3往復で掘り下げる
- 13〜15分 要点と次のアクションを1枚のメモにまとめさせる
手順1:目的・前提条件・背景を先に共有する
AIの答えがぼやける原因の多くは、前提が伝わっていないことにあります。何のための相談か、会社の状況、すでに決まっていること、迷っていることの4つを、最初の1通にまとめて貼りましょう。
【目的】来週の経営会議で、[議題]を進めるかどうかを決めたい 【会社の状況】[業種]、社員[人数の幅]名、今期は[状況を一言で] 【決まっていること】予算の上限は[桁]、[動かせない期限] 【迷っていること】A案([概要])とB案([概要])のどちらにするか 【お願い】すぐに結論を出さず、まず判断に足りない情報を3つ質問してください
最後の1行を入れると、AIがいきなり結論を書き始めるのを防げます。
手順2:役割(立場)を指定する
役割を1つ指定すると、返ってくる質問や指摘の角度がそろいます。例えば、取引先の購買担当、財務を見る役員、入社2年目の現場社員のように、実際にその案を受け取る立場を選ぶのがおすすめです。1つのチャットで役割を何度も替えると話が混ざるため、立場を替えるときはひと言断ってから替えるとよいでしょう。
手順3:AIに質問させる(逆質問)
前提を貼ったら、答えより先にAIから質問をもらいます。自分では当たり前だと思って書かなかった条件が、質問の形で浮かび上がってくるためです。質問を3つに絞らせると、答える側の負担も軽くなるでしょう。
手順4:反論役をさせる|推したい案を先に言わない
AIは質問に書かれた前提に沿って答えを組み立てるため、推したい案を先に書くと、その案を補強する材料ばかりが返ってきやすくなります。A案とB案を並べるときは、どちらを推しているかを伏せ、それぞれの弱点を同じ数だけ挙げてもらいましょう。自分の案に賛成されたときほど、反論役に切り替えて弱点を出させるのが壁打ちの肝になります。
手順5:1回で終わらせず往復を続ける
最初の答えは、たいてい一般論に近い内容にとどまります。気になった指摘を1つ選び、うちの規模でも当てはまるか、数字で言うとどのくらいか、と2〜3往復掘り下げてみてください。往復を重ねるほど、自分が何を気にしていたのかがはっきりしてきます。
手順6:要点と次のアクションをまとめさせる
最後に、やり取りを1枚のメモにまとめてもらいます。形を指定しないと長い要約になりやすいため、下のように項目を決めて頼むのが確実です。
ここまでのやり取りを、上司に渡す1枚のメモにまとめてください。 項目は次の4つにしてください。 ・決めたいこと ・選択肢と、それぞれの弱点 ・まだ確かめていない事実 ・次にやること(担当と期限の欄は空欄のまま)
まだ確かめていない事実の欄を必ず作らせるのが、このメモでいちばん大事な工夫となります。
役職別の壁打ちひな形|社長・総務・情シス・企画
同じ壁打ちでも、役職によって相談の中身と、入れてはいけない情報の種類が変わります。社員10〜200名ほどの会社でよく出る4つの場面について、そのまま貼って使えるひな形を用意しました。角かっこの中を伏せ字で埋めて使ってみてください。
社長:事業を続けるか、縮小するかの判断
あなたは中小企業の社外取締役です。 [業種]、社員[人数の幅]名の会社で、[事業の概要]を続けるか縮小するかを迷っています。 判断の材料は、売上に占める割合が[比率]、利益は[傾向]です。 結論を出す前に、確認すべき事実を3つ質問してください。 そのうえで、続ける場合と縮小する場合の、それぞれ最悪の展開を示してください。
撤退や値下げのような未発表の話は、会社の環境であっても入れる人を限っておきたい情報になります。
総務:規程を改定する前に反対意見を知る
あなたは[部署]で働く社員です。 会社が来月から[規程の改定内容]を始めると発表しました。 社員の立場から出そうな反対意見や不安を、強い順に5つ挙げてください。 それぞれに、総務が前もって用意すべき説明を1行で添えてください。
反対意見を先に出してもらえば、説明会の資料で答えるべき点が見えてきます。
情シス:ツール導入の稟議で聞かれる質問を洗い出す
あなたは[業種]、社員[人数の幅]名の会社の財務担当役員です。 情シスから[ツールの種類]の導入稟議が上がってきました。 費用は月[桁]、目的は[目的]です。 承認する前に確認したい質問を、費用・セキュリティ・効果の測り方の3つの観点から、合わせて8つ挙げてください。
挙がった質問に先に答えを用意しておけば、稟議の差し戻しを減らせます。
企画:稟議書の穴を探す
あなたは慎重な審査担当者です。 次の企画の要旨を読み、承認できない理由を3つ挙げてください。 そのうえで、それぞれの理由を解消するために企画書へ足すべき情報を示してください。 要旨:[企画の要旨。取引先名と金額は伏せ字で]
審査担当の役を与えると、甘い評価のまま終わる場面が減るでしょう。
スレッドは続けるか分けるか|前提づくりは続け、検証は分ける
前提を固めて案を練るまでは同じスレッドで続け、出来上がった案を疑うときは新しいチャットに分けるのが使いやすい形になります。同じスレッドを続けるとAIはそれまでの流れを踏まえて答えるため話が深まる一方で、流れに引っ張られて同じ方向の答えが続きやすくなってしまいます。
分けるときに気を付けたいのが、ChatGPTのメモリです。メモリが有効な場合、ChatGPTは過去のチャットなどから関連する情報を記憶出来るとヘルプで説明されており、新しいチャットを開いても前の相談の中身が参照されることがあります。まっさらな目で案を疑わせたいときは、パーソナライズなしの一時チャットで聞き直しましょう。一時チャットではメモリの作成や更新は行われず、開始前にパーソナライズなしを選べば既存のメモリやカスタム指示も使われません。ただし、安全上の理由でコピーが最長30日間保管される場合がある点は覚えておいてください。
実際の使い分けとしては、手順1〜5を1つのスレッドで進め、手順6で出来た1枚のメモだけを一時チャットに貼って、反論役にもう一度かけるのがおすすめです。前提を知らない相手が読んでも通じるかを確かめることにもなり、会議の資料としての出来も上がります。
ChatGPT・Claude・Geminiの使い分け|壁打ちで先に見るのは設定
壁打ちに使うAIは、答えの好みで選ぶ前に、履歴に残さない相談の仕組みと学習の扱いを確かめておきたいところです。3つとも、履歴に残さずに相談出来るモードがあります。
- ChatGPTの一時チャット:履歴に表示されず、モデルの学習にも使われません。安全上の理由でコピーを最長30日間保管する場合があります
- Claudeのシークレットチャット:Free・Pro・Max・Team・Enterpriseのすべてで使え、学習には使われません。保持期間は既定で30日となります
- Geminiの一時チャット:Googleのモデルの学習には使われず、アカウントに72時間保持される
通常のチャットについては、ChatGPTのFree・Plus・Proの個人用ワークスペースで学習への利用が既定で有効になっており、Claudeの個人向けプランも料金ページの比較表で学習は「オプトアウト」と表示されています。一方で、ChatGPT BusinessやClaudeの法人向けプランでは、入力は既定で学習に使われないとされ、会社の契約に移すだけで前提が変わってきます。
※各社のモードと保持期間は、2026年9月に OpenAI・Anthropic・Google の公式ヘルプと料金ページで確認した内容です。
答えの質の違いを確かめたいときは、同じ前提文を2つのAIに渡し、返ってきた質問や反論が食い違った箇所を人が確かめる使い方が向いています。ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityの得意分野は主要4AIの違いと使い分けで整理しましたので、あわせてご覧ください。
経営者は壁打ちをどう使っているか|公開された1つの例
経営者の使い方として参考になるのは、うまくいかない回答に粘らず、聞き直す回数を増やしているという例です。NTTドコモビジネスが運営するNTT docomo Business Watchの2026年3月16日の記事は、NewsPicksで2025年7月3日に公開された記事を再配信したもので、株式会社Oh my teethの西野CEOが自身のChatGPTの使い方を紹介しています。
記事によると、西野氏はメンバーとの対談やインタビューの内容をAIに入れ、自分の考えを詳しくまとめさせることで、考えを言葉にする作業をAIに任せているそうです。良い回答が出なければすぐにチャットをリセットし、それでも駄目ならClaudeやGeminiなど別のAIに同じ質問をして、3つのAIで3回ずつ、合わせて9回試すという考え方も紹介されています。
この例から読み取れるのは、プロンプトの出来よりも、聞き直しと他のAIへの持ち込みを気軽に出来る環境が壁打ちの質を左右する、と読むことも出来ます。同時に、対談や面談の中身をAIに入れる使い方は、どの環境で行うかによって扱いが大きく変わる情報でもあります。社員が同じことを真似するなら、会社の環境で行うよう案内しておきたいところでしょう。
壁打ちに向かないテーマと、答えを鵜呑みにしない確認
壁打ちは考えを整理する道具であって、処分や税額のように正解と責任が問われる判断を任せる相手ではありません。次のテーマは論点の整理までに使い、結論はAIに出させないと決めておきましょう。
- 人事処分や降格の決定、特定の社員の評価
- 契約が有効かどうか、違法かどうかといった法的な判断
- 税額の計算や、税務上の取り扱いの判断
- 健康情報など、要配慮個人情報が関わる相談
AIは、もっともらしい誤りを書くことがあります。壁打ちで出てきた数字、法律や制度の名前、他社の事例は、必ず元の資料や公式のページで確かめてから使ってください。AIの答えは論点のリストとして扱い、事実の確認と最終の判断は人が行いましょう。
顧問税理士に相談する前の論点整理に使う
税額の判断はさせない一方で、顧問の税理士や会計事務所に相談する前の準備には壁打ちがよく合います。資金繰りや設備投資の相談なら、状況を伏せ字で説明したうえで、税理士に聞くべき質問のリストを作らせてみてください。金額は桁や比率にとどめ、決算の数字そのものは入れないのが無難です。
[業種]、社員[人数の幅]名の会社です。 来期に[設備の種類]の購入を考えており、金額は[桁]規模です。 顧問税理士に相談する前に、確認しておくべき質問を10個挙げてください。 税額の計算や、税務上の結論は出さないでください。
質問のリストを持って相談に行くと、面談の時間を具体的な話に使えるようになります。
壁打ちの結果を社内に出すとき|記録の書き方とログの扱い
壁打ちの結果を稟議や議事録に使うときは、AIの案をそのまま採用したと書くのではなく、判断の根拠と確かめた事実を分けて書くのが基本です。AIの出力は材料の1つにすぎず、判断した人と確認した事実が残っていなければ、後から説明が出来なくなってしまいます。
【決めたこと】A案で進める 【判断の根拠】初期費用が低く、撤退したときの損失が限られるため 【確認した事実】見積書([受領日])、過去3年の同種案件の実績(社内資料) 【検討に使ったもの】生成AIでの論点整理(反論役として弱点を洗い出し)。数値はAIの出力ではなく、上の資料によるもの
ログを残すか消すかは、目的で決めるのが分かりやすいでしょう。判断の経緯を後から説明する必要がある相談は残し、アイデアの走り書きのような相談は一定の期間で整理する、といった線引きが考えられます。
会社の環境で管理者が利用状況を確認出来る場合は、そのことを社員に先に知らせておくのが筋でもあります。周知の文面は、次のくらいの短さで十分です。
会社で契約した生成AIは、情報管理のため、管理者が利用状況(誰が、いつ、どのAIを使ったか)を確認出来る設定になっています。 業務に関係のない個人的な相談には使わないでください。 人事や健康に関わる相談は、AIではなく総務の窓口へお寄せください。
文面を配ったあとに質問が出たら、その内容を次の版に足していく形で育てていきましょう。
社員に壁打ちを勧めるときの社内ルール1枚
社員に壁打ちを勧めるなら、使ってよい環境・入れてよい情報・困ったときの窓口の3点を、1枚にまとめて配るのが手早い方法になります。項目は次の6つで足ります。
- 使ってよい環境会社が契約した環境を使う。個人アカウントを使う場合も、伏せ字にした骨組みまでにとどめる
- 入れてよい情報社名や数字を含まない考えの骨組みと、伏せ字にした業務の相談
- 入れない情報健康情報などの要配慮個人情報。取引先名・決算前の数値は許可された人だけ
- 伏せ字の決まり社名は業種と規模、人名は役職、金額は比率や桁、日付は時期の幅に置き換える
- 結果の使い方数字や制度は元の資料で確かめ、稟議には判断の根拠と確認した事実を分けて書く
- 困ったときの窓口入れてよいか迷ったら、入力する前に総務か情シスへ相談する
ルール全体の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方、入力してはいけない情報の考え方はAIに入れてはいけない情報でも詳しく扱っています。
経営や企画の相談も、学習非利用・ログ管理の会社環境で
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けサービスです。全モデルで学習非利用を標準適用し、会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。ChatGPTで始めた会話をそのままClaudeへ引き継げるため、反論役を別のAIに任せる壁打ちも1つの画面で進められます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
生成AIとの壁打ちに、無料版を使ってもよいですか?
学習をオフにすれば、社外秘を入れても大丈夫ですか?
壁打ちは同じチャットで続けるべきですか?
AIが自分の案に賛成ばかりするのはなぜですか?
壁打ちの内容を稟議書に使ってもよいですか?
まとめ
生成AIの壁打ちで社外秘をどこまで入れてよいかは、情報の種類と使う環境の掛け合わせで決まります。個人アカウントでは、学習をオフにしていても履歴やメモリが会社の外に残るため、社名・人名・金額を伏せた形までにとどめるのが安全です。
使い方の面では、前提を先に貼り、質問させ、反論させ、最後に1枚のメモにまとめさせる流れを、会議前の15分で回してみてください。前提づくりは同じスレッドで続け、出来た案を疑うときだけ新しいチャットに分けると、答えが一方に寄りにくくなります。
ほかの業務での活用法はAI活用コラム一覧にまとめています。
