社労士の生成AIの使い方。就業規則・労務相談・助成金の業務別に、材料・指示文・出力の例・確かめる点をそろえる

社労士の生成AIの使い方とは、就業規則・労務相談・助成金などの業務ごとに、AIへ渡す材料と指示文を決めておき、出てきた下書きを社労士が条文や原文と突き合わせて仕上げる進め方です。入れるのは顧問先や従業員を特定できる情報を外した材料だけで、指示文には役割・背景・出力の形まで書き、人が確かめるのは条文の番号と号、数字と期限、顧問先の規程との食い違いの3つとなります。守秘義務の条文の読み方や情報の3段階の線引き、費用、将来性まで含めた全体像は、社労士のAI活用の全体像をまとめた記事で扱っています。

社労士が生成AIに任せる範囲|AIの出力は社労士が最終確認する

生成AIに任せてよいのは、条文の言い回しや案内文の構成、長い資料の整理までの下書きで、法令の当てはめと顧問先への結論は社労士が持つ形になります。社会保険労務士法第2条第1項は社労士の業務を号ごとに分けて定めており、主な号は次のとおりです(一の三〜一の六の事務代理・紛争解決手続の代理は省略)。

  • 一号:労働社会保険諸法令に基づく申請書等を作成すること
  • 一の二:申請書等の提出に関する手続を代わってすること
  • 二号:帳簿書類(申請書等を除く)を作成すること
  • 三号:事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること(これらの事項に係る法令並びに労働協約、就業規則及び労働契約の遵守の状況を監査することを含む)

業務別に見ると、生成AIの下書きが役立つ場面の多くは、三号の相談・指導で使う文書、たとえば就業規則の案や回答文、顧問先への案内に集まります。一号の申請書や二号の帳簿書類は、行政機関への提出や法令にもとづく作成が前提となるため、AIの出力は記載内容の確認表をつくる程度にとどめるのが無難でしょう。どの号の業務でも、AIの出力は、根拠の原文に当たるまでは誰も確かめていない下書きとして扱ってください。

下の表は、業務ごとにAIに任せる部分と社労士が持つ部分を分けたものです。

業務AIに任せる部分社労士が持つ部分
就業規則の改定箇条書きを条文の形に直す、モデル就業規則との差分の洗い出し、段取り表の下書き規定内容の決定、労働基準法第89条の記載事項の確認、意見聴取と届出
労務相談相談文の整理、回答文の下書き、チャット向けの要約法令の当てはめと結論、顧問先への回答
助成金支給要領・Q&Aからヒアリング項目と書類一覧を下書き要件の判断、金額・期限の照合、申請書の作成
案内文・説明資料構成案と文面の下書き、言い換え内容の正しさ、規程・労使協定との整合
手続き業務の連絡書類の依頼文、提出物の不足を知らせる文の下書き申請書・帳簿書類の作成と記載内容の判断、期限の確認
求人原稿原稿の下書き、トーン違いの案労働条件との一致

このあとの節では、業務ごとに「入れる材料」「そのまま貼れる指示文」「出力の例」「人が確かめる点」の4つをそろえて並べています。

社労士事務所の使い方の実例|就業規則・労務相談・利用ポリシー

実名で公開されている社労士事務所の使い方を見ると、下書きはAI、判断は社労士という分け方が共通の考え方となります。

社会保険労務士法人Next Partners|就業規則と労働相談の下書き

東京都立川市の社会保険労務士法人Next Partnersの代表社員、鈴木健市氏は、資格予備校TACの情報誌のインタビュー(TACNEWS 2024年4月)で、社労士業務に生成AIは欠かせないと語りました。記事によると、クリニックの就業規則では、院長が手直しした箇条書きの文言から個人を特定できるものを外して貼り付け、「条文形式に修正」と指示するだけで約8割の精度で仕上がり、あとは専門家がチェックをすればよいとされています。

労働相談でも個人情報を外した相談文を貼り付けて回答の下書きをつくり、回答の根拠となるURLを示すAIを使うほか、長くなる回答をチャットツールに合う分量へ要約させる使い方も挙げられていました。約8割という数字はインタビュー記事の中の記述で、第三者が測った値ではありません。

社会保険労務士法人はなみずき|生成AI利用ポリシーの公表

社会保険労務士法人はなみずきは、2026年7月1日に制定した生成AI利用ポリシーを公開しています。お客様から預かった情報を学習に利用させる目的では入力せず、守秘義務の対象となる情報も原則として入力しないこと、必要なときは「個人や企業を特定できないよう適切な加工・匿名化を行う」ことを定めたものです。そのうえで、法令の解釈や労務相談への回答といった専門的な判断は、必ず同法人の社会保険労務士がするとはっきり書かれています。

AIを使う範囲を「文書や資料の作成補助、情報の整理・要約」に絞り、判断は人が持つという線の引き方は、事務所のルールを作るときの見本になるでしょう。

荻生労務研究所|労務管理の文案づくり

社会保険労務士 荻生労務研究所は、2025年4月2日のブログ記事で、労務管理の現場での生成AIの使い方を紹介しています。挙げられているのは、就業規則のたたき台、社内向けの説明文やQ&Aの構成案、注意喚起や面談案内のように言葉選びに気を遣う文案、求人原稿の下書きや比較、資料の要約や言い換えの5つです。同じ記事は、AIに丸投げする危険にもはっきり触れており、使い方の設計は人が受け持つという立場になります。

3つの事務所の例を並べると、Next Partnersとはなみずきは特定できる情報を外して入れることを、3つの事務所とも判断は人が持つことをはっきりさせていることが分かります。

※各事務所・媒体の掲載内容は2026年10月16日に確認したものです。効果の数字はいずれも本人や事務所の発言・掲載によるもので、第三者による検証ではありません。

個人情報と守秘義務|匿名化して入力する材料の線引き

生成AIに入れてよいのは、顧問先と従業員を特定できる情報を外した材料だけと決めておくのが、業務別の使い方の前提になります。社会保険労務士法第21条は、開業社会保険労務士と社会保険労務士法人の社員に対し、正当な理由なく業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用することを禁じています。第27条の2は同じ義務を使用人その他の従業者にも課しており、事務所の職員がAIに貼り付ける場面も対象から外れません。

違反した場合の罰則は第32条の2に置かれ、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金とされ、公訴の提起には告訴が必要です。条文はe-Gov法令検索の社会保険労務士法で確かめることが出来ます。条文が定めているのは秘密を漏らさない義務で、生成AIへの入力がそのまま違反になると書かれているわけではありません。ただ、外部の事業者が提供するAIに顧問先の情報を貼り付けることは、その事業者に情報を渡すことにもつながるため、外してから入れる形が無理のない方法になります。

業務別の線引きは次の表のとおりです。

業務そのまま入れてよい材料外してから入れる材料入れない材料
就業規則厚生労働省のモデル就業規則、一般的な条文の言い回し顧問先の現行規程(会社名・所在地・役職者名を外す)従業員名簿、賃金台帳の実データ
労務相談一般的な論点の質問相談文(氏名・社名・日付・部署名・固有の経緯を外す)健康診断の結果や病歴、マイナンバー
助成金支給要領・Q&A・パンフレットの本文顧問先の状況(業種と規模、雇用区分に置き換える)対象者の氏名、雇用保険の番号、個人の賃金額
案内文・説明資料法改正の公的資料変更内容の要点(社名を外す)個別の従業員の処遇や評価

健康情報やマイナンバーの扱い、漏えいした場合の報告まで含めた3段階の線引きは、社労士のAI活用の記事にある情報の線引きの節で詳しく見ることが出来ます。8つの士業の守秘義務の条文を並べて比べたい方は、士業のAI活用の記事も参考になるでしょう。

連合会の案内と、事務所で決める範囲

全国社会保険労務士会連合会は、会員向けの「社会保険労務士向け生成AI活用ガイドブック」を2024年9月に公式Xで告知しており、中身は所属する各会の会員ページで確認してください。2026年10月には、学生や若手社会人に職業としての社労士の魅力を伝える特設サイト「AI時代にこそ輝く、社労士の魅力」を公開し、「AI が情報を示し、人が判断する」という言葉を掲げました。これは職業の紹介で、生成AIの利用の指針ではありません。一般に公開された生成AIの利用指針は、2026年10月16日に確認した時点では連合会のサイトに見当たりませんでした。所属する会の通知を確かめたうえで、何を入れないかは事務所のルールとして書き出しておきましょう。

指示文の書き方|役割と背景を差し込み枠で渡す

指示文は、AIの役割、顧問先の背景、作業の中身、出力の形、守らせる条件の5つを決まった順に書き、顧問先ごとに変わる部分だけを【 】の差し込み枠にすると使い回しが利きます。役割と背景を書かずに「就業規則を条文にして」とだけ頼むと、AIは一般的な会社を想定した文面を返してきます。業種と規模、雇用区分、すでにある規程の有無を差し込み枠で渡すだけで、出力は顧問先の実情に近づいていくでしょう。

【指示文の共通の型】
あなたは社会保険労務士事務所で、文書づくりを補助する担当です。
# 背景
・顧問先:【会社の業種と規模】
・対象となる従業員:【従業員の雇用区分】
・すでにある規程:【関係する規程の名前と有無】
# 材料
【会社名・氏名・日付など特定につながる部分を外した材料】
# 作業
【してほしい作業を1文で】
# 出力の形
【表/条文/箇条書き/○字以内の文章 など】
# 守ること
・法令の条文番号や号を書くときは、確かなものだけを書き、自信がないものは【要確認】と付ける
・材料にない金額・率・日数・期限は書かず、【原文で確認】と置く。材料にある数字はそのまま写す
・材料にない事実を補わない。足りない情報は最後に「確認が必要な点」として並べる

末尾の「守ること」は、どの業務でも外さない部分です。AIはもっともらしい数字を作ってしまうことがあり、助成額や期限を誤ると顧問先の損に直結してしまいます。材料にない数字は空けさせ、材料にある数字は写させるだけにすれば、人が原文と突き合わせる手間も小さくなります。助成金のように数字の取り違えが響く業務では、材料にある数字も書かせない、さらに厳しい決まりに切り替えましょう。

差し込み枠に入れるのは「小売業・従業員30名」「有期契約のパートタイマー」のような属性だけで、会社名や個人名は入れません。指示文を職員ごとの手元のメモで持つと、同じ業務でも事務所の中で出力の質がばらついてしまうのが悩みどころでしょう。よく使う指示文は名前と版を付けて1か所にまとめ、誰が使っても同じ型から始められるようにしてみてください。

就業規則の改定|条文形式への書き直し・差分チェック・段取り表

就業規則の改定では、AIに任せる作業を「箇条書きを条文に戻す」「モデル就業規則との差分を洗い出す」「意見聴取から周知までの段取り表をつくる」の3つに分けると、確かめる点もはっきりします。労働基準法第89条は、常時十人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成と届出を求め、記載する事項を一号から十号(三号の二を含む)までの号で定めています。AIの出力を確かめるときは、この号の並びが物差しになります。

社長や院長が手直しした箇条書きを条文形式に戻す

材料は、顧問先が手を入れて戻してきた箇条書きのメモと、対応する現行の条文(会社名・役職者名・個人名を外したもの)の2つにします。Next Partnersの例と同じ使い方で、事務所で取り入れやすい作業の1つでしょう。

【指示文1:箇条書きを条文形式に戻す】
あなたは就業規則の条文を整える担当です。
# 背景
・顧問先:【会社の業種と規模】
・対象:【従業員の雇用区分】
・顧問先の担当者が、現行の条文を見ながら箇条書きで修正案を書きました
# 材料
<現行の条文>
【会社名・個人名を外した現行の条文】
<修正案の箇条書き>
【顧問先から戻ってきた箇条書き】
# 作業
修正案の内容を、現行の条文の書きぶり(「〜しなければならない」「〜することができる」などの文末、号の立て方)に合わせて条文形式に書き直してください。
# 出力の形
1. 書き直した条文(条番号は「第○条」のまま)
2. 現行の条文から変わった箇所の一覧
3. 確認が必要な点(修正案の意味があいまいな箇所、他の条文との関係が気になる箇所)
# 守ること
・修正案にない内容を足さない
・法令の条文番号を書くときは確かなものだけを書き、自信がないものは【要確認】と付ける
出力の例(架空)
<材料にした箇条書き>
・診療中は私用のスマホを見ない
・患者さんの情報をSNSに書かない(辞めた後も)
・名札は必ず付ける

1. 書き直した条文
第○条(服務規律)
従業員は、次の各号に掲げる事項を守らなければならない。
(1)勤務時間中は、業務上必要な場合を除き、私用の携帯電話等を使用しないこと。
(2)業務上知り得た患者及びその家族の情報を、SNS等に掲載し、又は第三者に漏らさないこと。退職後も同様とする。
(3)勤務中は、所定の名札を着用すること。
2. 変わった箇所
・服務規律の条に(1)〜(3)を加えた
3. 確認が必要な点
・違反した場合に懲戒の対象とするかどうか。対象とする場合は、懲戒の条文との対応【要確認】

人が確かめる点は、修正案にない言葉が足されていないか、文末の書きぶりが他の条文とそろっているか、懲戒や制裁と結びつく条文がどこにあるかの3つになります。例の出力では、材料の箇条書きにない「その家族」が(2)に入っているのに、変わった箇所の一覧には出てきていません。(1)でも、「診療中」が「勤務時間中」に広がり、「業務上必要な場合を除き」という例外が加わっています。AIは範囲を広げたり例外を足したりしても一覧から落とすことがあるので、材料と出力は一字ずつ見比べてください。違反を懲戒につなげるなら、第89条第九号が定める表彰及び制裁の種類及び程度の記載が、規則の中で定まっているかも合わせて確かめましょう。

モデル就業規則(令和7年12月版)との差分を洗い出す

厚生労働省のモデル就業規則は令和7年12月に改訂され、主な改訂事項として、国会または地方議会の議員に立候補するための休暇の規程例の追加(第32条)と、犯罪被害者等の被害回復のための休暇等、その他の特別休暇の紹介の追加(第5章解説)が挙げられています。改訂事項には「その他、法改正の反映など所要の改正」も含まれるため、顧問先の規程と全体を突き合わせる作業はAIに下ごしらえさせると速く進みます。材料には、モデル就業規則のPDFの該当する章と、顧問先の現行規程の同じ章(会社名を外したもの)を用意しましょう。

【指示文2:モデル就業規則との差分チェック】
あなたは就業規則の見直しを補助する担当です。
# 背景
・顧問先:【会社の業種と規模】
・比べる範囲:【章の名前(例:休暇の章)】
# 材料
<A:厚生労働省 モデル就業規則(令和7年12月版)の該当の章>
【PDFから写した本文】
<B:顧問先の現行規程の同じ章>
【会社名を外した本文】
# 作業
Aにあって Bにない規定、Bにあって Aにない規定、両方にあるが内容が違う規定を洗い出してください。
# 出力の形
表(列:項目/Aの条番号と要旨/Bの条番号と要旨/違いの種類)
# 守ること
・AとBの材料に書かれていないことは書かない
・法改正の内容を推測で補わない。法改正が理由と思われる違いには【改正の有無を要確認】と付ける
・どちらに合わせるべきかの意見は書かない
出力の例(架空)
項目|A(モデル就業規則)|B(顧問先)|違いの種類
議員に立候補するための休暇|第32条に規程例あり|該当する条文なし|Aにだけある
特別休暇の種類|第5章の解説で、犯罪被害者等の被害回復のための休暇等を紹介|慶弔休暇のみ|内容が違う
副業・兼業の届出|規程例あり|規定なし|Aにだけある【改正の有無を要確認】

人が確かめる点は、AIが挙げた差分が本当に材料の中にあるか、そして差分のうち法改正にもとづくものと、モデル就業規則が規程例として示しているだけのものを分けられているかです。例の3行目の副業・兼業は休暇の章の材料に入っていない話題で、AIは材料の外の知識から行を足してくることもあるため、PDFの該当ページを開いて1行ずつ当たってみてください。モデル就業規則は国が示すひな形の例なので、差分の表は直す候補の一覧として使い、どこを直すかは社労士が法令に当たって決めることになります。

意見聴取・届出・周知の段取り表をつくる

改定の中身が固まったら、意見聴取から周知までの段取りを顧問先向けの表にする作業も、AIに下書きさせることが出来ます。労働基準法第90条第1項は、就業規則の作成又は変更について、労働者の過半数で組織する労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことを使用者に求めています。届出には同条第2項で意見を記した書面の添付が必要とされ、労働者への周知は、第106条が掲示・備え付け・書面の交付などの方法を挙げて定めた事項です。

【指示文3:意見聴取から周知までの段取り表】
あなたは社会保険労務士事務所で、顧問先向けの手順書をつくる担当です。
# 背景
・顧問先:【会社の業種と規模】【事業場の数】
・労働者の過半数で組織する労働組合:【ある/ない】
・今回の改定:【変更する条文の一覧】
# 作業
就業規則の変更を届け出て、従業員に周知するまでの段取りを、顧問先の担当者が順に進められる表にしてください。
# 出力の形
表(列:順番/やること/担当(顧問先・事務所)/用意する書類/完了の確認方法)
# 守ること
・日数や期限は書かず【要確認】と置く
・労働基準法の条文番号を書く場合は、第89条(作成及び届出)、第90条(意見の聴取)、第106条(周知)の範囲にとどめる
出力の例(架空)
順番|やること|担当|用意する書類|完了の確認方法
1|変更する条文の確定|事務所・顧問先|新旧対照表|顧問先の承認を受けた
2|過半数代表者の選出(労働組合がないため)|顧問先|選出の経過が分かる記録|選び方を事務所が確認した
3|変更案への意見聴取(第90条第1項)|顧問先|変更案、意見書の様式|意見書を受け取った
4|労働基準監督署への届出(第89条、第90条第2項の意見書を添付)|事務所|変更届、意見書|受付印のある控え(電子申請は受付の通知)を保管した
5|従業員への周知(第106条)|顧問先|掲示・備え付け・書面の交付などから方法を選ぶ|周知した方法と日付を記録した

人が確かめる点は、顧問先が常時十人以上の労働者を使用しているかどうか、意見を聴く相手が労働組合か過半数代表者か、届出に意見書が添付されているか、周知の方法が第106条の方法に当たるかの4つになります。第89条は届け出ることを定めていて、日数の期限は条文にないため、AIが期限らしき日数を書いてきたら根拠を疑ってください。

過半数代表者の選び方は、労働基準法施行規則第6条の2が定めています。第1項の二つの号は、法第41条第二号の監督又は管理の地位にある者でないこと、そして協定等をする者を選ぶと明らかにした投票・挙手等の方法で選ばれ、使用者の意向にもとづいて選ばれた者でないことで、AIの表に書かれていなくても事務所の手順書の側で補いましょう。

指示文と使うAIを、事務所で1つにまとめる

規程の材料や指示文が職員ごとのAIに散らばる状態は、使う環境を事務所で1つにすると整えやすくなります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

労務相談への回答案づくりと顧問先チャット向けの要約

労務相談では、AIに相談文の事実と論点を整理させ、判断が分かれる点は結論の候補2つと分かれ目になる事実まで出させて、結論と根拠は社労士が決める分担になります。入れる材料は、顧問先から届いた相談のメールやチャットから、会社名・氏名・日付・部署名など特定につながる部分を外したものです。外す作業はAIに任せず、貼り付ける前に職員が自分の手で済ませてください。

健康にかかわる相談では、病名や診断書の記載はAIに入れず、「私傷病で休職中」「主治医は軽作業なら就業可との意見」のように、判断に要る事実だけを言葉に置き換えて渡します。病名を伏せても、休職や復職の論点を整理するには足りる場面が多いでしょう。

相談文の整理と結論の候補出し

【指示文4:労務相談の整理と結論の候補】
あなたは社会保険労務士の回答文づくりを補助する担当です。
# 背景
・顧問先:【会社の業種と規模】
・相談した人の立場:【人事担当者/経営者 など】
・関係する従業員:【従業員の雇用区分】
・関係する規程:【就業規則の該当条文(会社名を外したもの)】
# 材料
【特定につながる部分を外した相談文】
# 作業
1. 相談文を「事実の整理」「論点」に分けてください。
2. 論点ごとに、結論の候補A・Bと、それぞれの理由を書いてください。
3. AとBの分かれ目となる事実を挙げ、相談文から分からないものには【要確認】と付けてください。
# 出力の形
見出し付きの箇条書き(事実の整理/論点/結論の候補A・B/分かれ目となる事実/根拠(条文・裁判例・通達))
# 守ること
・判断が分かれる点は、結論の候補を2つ挙げ、どの事実で分かれるかを書く(最終の結論は書かない)
・根拠に挙げる法令は条文番号まで書き、確かでないものは【要確認】と付ける
・裁判例・通達を挙げる場合は、事件名・裁判所・年月日または通達番号を書き、確かでないものは【要確認】と付ける
・材料にない事実を補わない
出力の例(架空)
■事実の整理
・正社員が私傷病で休職中で、就業規則に定める休職期間【休職期間(就業規則の定め)】の満了が近い
・主治医の意見は「軽作業なら就業可」
・会社には、元の職務のほかに軽作業の部署がある(相談文の記載)
■論点
・休職期間の満了時に復職を認めるか、就業規則の休職期間満了の定めに沿って扱うか
■結論の候補
A:軽作業の部署での復職を認める方向で検討する。主治医が軽作業での就業を可としており、軽作業の部署もあるため
B:就業規則の休職期間満了の定めに沿って扱う方向で検討する。元の職務に戻れる状態かがはっきりしないため
■分かれ目となる事実
・就業規則が復職の条件を「元の職務に戻れること」としているか、それ以外の定め方か【要確認】
・軽作業の部署へ配置する余地が実際にあるか、本人がそれを希望しているか【要確認】
・会社が指定する医師や産業医の意見を聞いているか【要確認】
・主治医の意見が書面になっているか、その範囲(期間・業務の内容)【要確認】
■根拠
・法令の条文:材料の範囲では特定していません
・裁判例・通達:挙げていません

人が確かめる点は、結論の候補AとBが材料の事実だけから組み立てられているか、分かれ目として挙がった事実に抜けがないか、そして顧問先の就業規則の休職と復職の条文と食い違っていないかの3つです。AIは存在しない条文番号や裁判例の事件名をもっともらしく挙げてくることがあるため、法令はe-Gov法令検索で、裁判例は事件名・裁判所・年月日で引いて実在を確かめましょう。最終の結論を書かせないのは、どちらの候補を採るかの判断を社労士の側に残すためになります。分かれ目の【要確認】を顧問先に聞き、社労士が結論を決めてから回答文を整える順にすると、下書きと判断の境目がはっきりします。

回答を顧問先チャット向けに要約する

回答文が長くなると、顧問先のチャットでは読まれにくくなってしまいます。Next Partnersの例でも、長い回答をチャットツールに合う分量に要約させる使い方が紹介されていました。

【指示文5:顧問先チャット向けの要約】
あなたは社会保険労務士事務所の連絡担当です。
# 材料
【社労士が確認を終えた回答文】
# 作業
顧問先の担当者がチャットで読む前提で、回答文を要約してください。
# 出力の形
・150字前後
・1行目に結論、続けて理由を1文、最後に担当者にお願いしたいことを1文
・です・ます調、絵文字は使わない
# 守ること
・回答文にない内容を足さない
・条文番号は消さずに残す
・回答文に【要確認】が残っていたら、要約せずに差し戻す
・結論の強さを変えない(「検討する方向」を「決めた」にしない)
出力の例(架空) 指示文4の【要確認】を社労士が顧問先に確かめ、Aの方向で回答文を確定したあとの要約
休職期間の満了前に、会社が指定する医師の意見を聞いたうえで、軽作業の部署での復職を検討する方向をおすすめします。主治医が軽作業での就業を可としており、御社の就業規則の復職の条件にも当てはまる見込みがあるためです。お手数ですが、ご本人の同意を得て、医師との面談の日程を調整していただけますでしょうか。

要約で確かめるのは、元の回答文から結論の強さが変わっていないかと、条文番号や理由が落ちていないかの2点です。要約は社労士が確認を終えた回答文からつくらせ、確認前の下書きを要約して送らない順番を守りましょう。この順番を事務所の手順書に一行で書いておくだけでも、取り違えは減っていきます。

助成金|支給要領とQ&Aからヒアリング項目と確認表をつくる

助成金では、AIに支給要領やQ&Aの本文を読ませて、顧問先へのヒアリング項目と必要書類の確認表をつくらせ、金額や要件の数字は支給要領の原文で人が照合する分担が無理のない形になります。たとえばキャリアアップ助成金について、厚生労働省のページでは令和8年度版のパンフレットの作成(令和8年4月8日)、Q&Aの改訂(令和8年7月29日)、短時間労働者労働時間延長支援コースの新設が案内されています。支給要領やQ&Aは年度の途中でも改訂されるため、AIが答えた要件には古い内容が混ざってしまうおそれがあります。助成額や要件はAIに尋ねず、その時点の原文を材料として渡し、整理だけを任せてください。

【指示文6:助成金のヒアリング項目と必要書類の確認表】
あなたは助成金の申請準備を補助する担当です。
# 背景
・顧問先:【会社の業種と規模】
・検討しているコース:【助成金の名前とコース名】
・対象になりそうな従業員:【従業員の雇用区分】(人数や氏名は書かない)
# 材料
<支給要領の該当部分>
【厚生労働省のページからダウンロードした支給要領の本文】
<Q&Aの該当部分>
【Q&Aの本文】
# 作業
1. 顧問先に聞くべきことを、ヒアリング項目のリストにしてください。
2. 申請に必要な書類の確認表をつくってください。
# 出力の形
1は「質問文/聞く理由/支給要領の該当箇所(項目名)」の表
2は「書類名/誰が用意するか/支給要領の該当箇所(項目名)/確認欄」の表
# 守ること
・助成額、助成率、日数、期限、人数などの数字は一切書かず、【支給要領で確認】と置く
・材料にない要件を補わない。材料から読み取れない点は「要確認」として最後に並べる
・顧問先が受給できるかどうかの判断は書かない
出力の例(架空)
1. ヒアリング項目
質問文|聞く理由|支給要領の該当箇所
対象になりそうな方の、いまの雇用区分と雇い入れた時期を教えてください|対象となる労働者の範囲を確かめるため|(項目名)【支給要領で確認】
制度の見直しを、就業規則などにいつ定めましたか|制度を定めた時期を確かめるため|(項目名)【支給要領で確認】
これまでに同じ助成金を受けたことはありますか|受給の経緯を確かめるため|(項目名)【支給要領で確認】

2. 必要書類の確認表
書類名|用意する人|支給要領の該当箇所|確認欄
就業規則(制度を定めた条文が分かるもの)|顧問先|(項目名)【支給要領で確認】|☐
賃金の支払い状況が分かる書類|顧問先|(項目名)【支給要領で確認】|☐
申請書の様式|事務所|厚生労働省のページの申請様式ダウンロード|☐

要確認:対象となる期間の数え方は、材料の範囲からは読み取れませんでした。

人が確かめる点は、AIが挙げた項目と書類が支給要領に実際に書かれているか、該当箇所の項目名が正しいか、そして材料にした支給要領とQ&Aが最新の版かの3つです。該当箇所の欄を必ず埋めさせるのは、原文に戻って照合する作業を短くするための工夫となります。ページには「不正受給について」の項目も置かれており、申請内容の事実の確認まで含めて社労士が責任を持つ業務である点は変わりません。

業務改善助成金のように、締切が都道府県ごとに異なる助成金もあるため、期限はAIの出力ではなく、厚生労働省のページや労働局の案内で確かめてください。AIに任せるのは、原文を顧問先との会話に使える形へ並べ替えるところまで、と線を引いておくと迷いが少なくなります。

※キャリアアップ助成金・業務改善助成金・モデル就業規則の記載は、2026年10月16日に厚生労働省のページで確認したものです。助成額・助成率・要件の数字は、この記事では扱っていません。

手続き業務の案内文|算定基礎届・年度更新・入退社の書類依頼と不足連絡

算定基礎届や労働保険の年度更新、入社・退社の手続きでは、申請書そのものではなく、顧問先に書類を依頼する案内文と、提出物の不足を知らせる案内文をAIに下書きさせると、同じ時期に重なる連絡の手間が軽くなります。申請書の作成と記載内容の判断は一号・二号の業務として社労士の側に残し、AIに渡すのは書類名の一覧と、顧問先からすでに届いた書類名の一覧だけです。期限の日付はAIに書かせず、事務所が公的な案内で確かめた日付を最後に人が差し込む形にしましょう。

【指示文7:手続き書類の依頼と、不足を知らせる案内文】
あなたは社会保険労務士事務所で、顧問先への連絡文を下書きする担当です。
# 背景
・顧問先:【会社の業種と規模】
・手続きの種類:【算定基礎届/労働保険の年度更新/入社の手続き/退社の手続き】
・連絡の種類:【書類の依頼/提出物の不足のお知らせ】
# 材料
<事務所が必要とする書類の一覧>
【書類名の一覧(事務所の手順書から写したもの)】
<顧問先からすでに届いている書類>
【届いた書類名の一覧】
# 作業
1. 書類の依頼の場合:顧問先の担当者が用意する書類を、何に使うかの一言を添えて一覧にした依頼文を書いてください。
2. 不足のお知らせの場合:必要な書類の一覧と届いた書類の一覧を突き合わせ、まだ届いていない書類だけを挙げたお知らせ文を書いてください。
# 出力の形
件名、本文(です・ます調)、書類の一覧(チェック欄つき)
# 守ること
・期限の日付や日数は書かず、【提出期限:原文で確認】と置く
・材料の一覧にない書類を足さない。足りないと思われる書類は「確認が必要な点」として最後に分けて書く
・従業員の個人名を本文に書かない
出力の例(架空) 不足のお知らせ
件名:算定基礎届のご提出書類のうち、未着のものについて
いつもお世話になっております。算定基礎届の準備のため先日お願いした書類のうち、下記がまだ事務所に届いておりません。お手数ですが、【提出期限:原文で確認】までにご用意いただけますでしょうか。
☐ 対象となる月の賃金台帳の写し
☐ 対象となる期間に入社・退社した方の一覧
すでにお送りいただいている場合は、行き違いとなりますのでご容赦ください。

確認が必要な点:休職中の方がいる場合の書類は、材料の一覧に含まれていません。

人が確かめる点は、未着として挙がった書類が本当に届いていないか、材料の一覧にない書類が紛れ込んでいないか、期限の枠に事務所で確かめた日付を入れたかの3つです。突き合わせを誤ると、すでに書類を送ってくれた顧問先に催促が届くことになり、信頼を損ねてしまいます。送る前に、事務所の受付記録と一行ずつ照らしてみてください。

顧問先・従業員向けの説明文|労働条件の変更・面談・注意喚起

顧問先や従業員に向けた案内文は、伝える中身を社労士が箇条書きで決め、AIには読み手に合わせた言葉選びと構成を任せると、短い時間で整った文面になります。荻生労務研究所の記事も、注意喚起や面談の案内のように繊細な対応が要る文案を、使い方の1つに挙げています。材料は、変更する労働条件や面談の目的を箇条書きにしたメモで、会社名や対象者の名前は入れません。

【指示文8:労働条件の変更のお知らせ】
あなたは顧問先の人事担当者に代わって、従業員向けのお知らせ文を下書きする担当です。
# 背景
・会社:【会社の業種と規模】
・読む人:【従業員の雇用区分】
・変更の根拠:【就業規則・労使協定のどこを変えたか】
# 材料
【変更点の箇条書き(変更前・変更後・適用の開始時期)】
# 作業
従業員が読んで変更点を取り違えないお知らせ文を書いてください。
# 出力の形
・見出し、変更点(変更前と変更後を並べた表)、問い合わせ先の3部構成
・です・ます調。専門用語には短い言い換えを添える
# 守ること
・材料にない変更点や理由を書かない
・「同意します」「承諾します」など、従業員の意思表示を求める文は入れない(必要かどうかは社労士が決める)
・日付と数字は材料のまま写し、計算や言い換えをしない
【指示文9:面談の案内/注意喚起の文面】
あなたは従業員への連絡文を、角が立たない言葉で整える担当です。
# 背景
・会社:【会社の業種と規模】
・読む人:【従業員の雇用区分】
・文書の種類:【面談の案内/服務規律の注意喚起】
# 材料
【伝える目的・日時の候補・場所・持ち物などのメモ(氏名は入れない)】
# 作業
読む人が責められていると感じにくく、それでいて目的がはっきり伝わる文面を2案書いてください。
# 出力の形
・案A:やわらかめ、案B:ていねいで簡潔
・どちらも250字前後
# 守ること
・処分や評価を示す言葉は、材料にない限り使わない
・材料にない約束や説明を足さない
・本人以外の従業員が特定される書き方をしない
出力の例(架空) 面談の案内・案A
いつもお疲れさまです。最近の働き方について、ご様子を伺いながら一緒に考える時間をいただきたく、面談のご案内をお送りします。日時は【候補日】のいずれかで、場所は【面談の場所】です。評価や処分を目的とした面談ではありませんので、気になっていることがあれば、どんなことでもお話しください。ご都合のよい日時を【返信の期日】までにお知らせいただけると助かります。

人が確かめる点は、材料にない約束や説明が足されていないか、変更点が就業規則や労使協定の条文と食い違っていないか、言葉が読み手に強制や不利益を感じさせないかの3つになります。例の案Aにある「評価や処分を目的とした面談ではありません」の一文は、材料のメモに書かれていなければ、会社が約束していないことを書いた文になってしまいます。読み手にとっては安心できる一文でも、あとで面談の扱いが変わったときに食い違いの火種になるため、入れるかどうかは顧問先と社労士が決めてください。

指示文で「足さない」と書いても、AIは読み手への気づかいから一文を添えてくることがあります。労働条件の変更のお知らせが就業規則の変更を伴う場合は、就業規則の節の段取り表と合わせて、第106条の周知の方法を選ぶところまでをひと続きの作業にすると、抜けが出にくいでしょう。

制度改正の説明資料と求人原稿の下書き

制度改正の説明資料と求人原稿は、どちらも公的資料や顧問先の労働条件という確かな原文があり、AIにはそれを読み手向けに組み直す作業だけを任せる使い方が合っています。

顧問先向けの制度改正の説明資料

説明資料では、厚生労働省のリーフレットや通知の本文を材料にして、顧問先の業種に合わせたスライドの構成案や説明の台本をつくらせることが出来ます。

【指示文10:制度改正の説明資料の構成案】
あなたは社会保険労務士が顧問先向けの説明会で使う資料の構成をつくる担当です。
# 背景
・聞き手:【会社の業種と規模】の経営者と人事担当者
・持ち時間:【分数】
# 材料
【厚生労働省のリーフレット・通知の本文】
# 作業
材料の内容を、聞き手が自社で何をすればよいか分かる順番で、スライド8枚程度の構成案にしてください。
# 出力の形
スライドごとに「見出し/伝えること(3行以内)/材料の該当箇所」
# 守ること
・施行日、対象となる企業の範囲、数字は材料の文言のまま写し、言い換えない
・「しなければならない」と「望ましい」など、義務の強さの書き分けを材料どおりに保つ
・材料に書かれていない対応策を「義務」と書かない
出力の例(架空)
スライド1|見出し:今回の改正で何が変わるか|伝えること:改正の名前、施行日(材料のまま)、対象となる企業の範囲(材料のまま)|該当箇所:リーフレット1ページ目
スライド2|見出し:会社がしなければならないこと|伝えること:材料で「しなければならない」と書かれた措置の一覧|該当箇所:リーフレット2ページ目
スライド3|見出し:取り組むことが望ましいこと|伝えること:材料で「望ましい」と書かれた事項|該当箇所:リーフレット3ページ目
スライド4|見出し:就業規則で見直す条文|伝えること:該当しそうな章の名前【要確認】|該当箇所:材料に記載なし

人が確かめる点は、施行日と対象となる企業の範囲が材料の文言のまま写されているか、そして「しなければならない」ことと「望ましい」ことの区別が原文どおりかの2点です。義務と努力義務の書き分けは、言い換えの途中で崩れやすいところでしょう。例のスライド4のように材料にない話題が入ってきたら、就業規則のどの条文に当たるかを社労士が見立てて書き足す流れになります。

求人原稿の下書き

求人原稿も、荻生労務研究所の記事で下書きや比較検討の用途として挙げられています。材料は、顧問先の就業規則と労働条件通知書のひな形から写した労働条件の一覧と、仕事の内容や職場の様子のメモの2つを用意しましょう。

【指示文11:求人原稿の下書き】
あなたは中小企業の求人原稿を書く担当です。
# 背景
・会社:【会社の業種と規模】
・募集する職種と雇用区分:【職種】【従業員の雇用区分】
# 材料
<労働条件の一覧>
【就業時間・休日・賃金の決め方など、就業規則と労働条件通知書のひな形から写したもの】
<仕事と職場のメモ>
【仕事の内容、1日の流れ、職場の様子】
# 作業
求職者が仕事の中身と働き方を具体的に思い浮かべられる求人原稿を、トーンを変えて2案書いてください。
# 守ること
・労働条件は材料の文言から変えない。材料にない手当や制度を書かない
・「アットホーム」など、中身の伝わらない決まり文句は使わない

人が確かめる点は、根拠を2つに分けて見ると整理しやすくなります。1つ目は募集の段階の明示で、職業安定法第5条の3は、労働者の募集を行う者に、従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示するよう定め、明示する事項と方法は厚生労働省令に委ねる形です。2つ目は採用時の明示で、労働基準法第15条は、労働契約を結ぶときに賃金、労働時間その他の労働条件を明示するよう使用者に求めています。原稿の労働条件が、この2つの段階で示す内容とも就業規則とも食い違っていないかを確かめる流れになります。AIは読み手を引きつけようとして、材料にない手当や柔軟な働き方を書き足してしまうことがあるため、労働条件の行だけは材料と一行ずつ照らし合わせてください。

出力を確かめるチェックリスト|条文・号・数字・期限・規程との整合

AIの出力を外に出す前に見る点は、業務が違ってもおおむね同じなので、事務所の共通チェックリストにすると職員ごとの確認の差が小さくなります。

  • 条文番号と号は実在するかe-Gov法令検索で条文を開き、番号・項・号と、説明の中身が合っているかを見ます。就業規則の記載事項なら労働基準法第89条の一号から十号(三号の二を含む)のどれに当たるかまで確かめます。
  • 通達・裁判例は実在するか通達は厚生労働省の法令等データベース、裁判例は裁判所の裁判例検索で、番号や事件名・裁判所・年月日を引いて実在と中身を確かめます。
  • 数字は原文から写したか助成額・率・日数・期限・人数は、AIの出力を使わず、支給要領・Q&A・通知の原文で照合します。
  • 材料にない言葉が足されていないか出力と材料を並べ、足された語・約束・理由を拾います。就業規則の例の「その家族」、面談の案内の「評価や処分を目的とした面談ではありません」が典型です。
  • 結論の強さが変わっていないか「場合がある」「望ましい」が、「できる」「しなければならない」に変わっていないかを見ます。
  • 顧問先の規程・労使協定と食い違わないか就業規則の該当条文、労使協定、労働条件通知書と照らします。
  • 材料にした資料の版と日付は最新かモデル就業規則は令和7年12月版、キャリアアップ助成金はQ&Aの改訂日など、使った資料の版を案件の記録に残します。
  • 特定につながる情報が戻っていないか送る前に、出力の中に社名・氏名・日付が入り込んでいないかを見ます。
  • 確認した人と照合した原文を残したか誰がどの原文で確かめたかを、案件ごとに書き残します。

指示文の末尾に「出力の最後に、このチェック項目ごとの自己点検を付けて」と書き加えると、確認の漏れに気づく手がかりが増えるでしょう。ただし、AIの自己点検は確認の代わりにはならないので、最後は人が原文を開いて確かめてください。

事務所で生成AIを安全に使うには|設定・記録・配布・指示文の共有

業務別の使い方を事務所に根づかせるには、学習させない設定、利用の記録、職員への配布と退職時の停止、指示文の共有の4つを、職員個人ではなく事務所の側でそろえる必要が出てきます。

学習させない設定を事務所で一律にする

法人向けのプランには、入力した内容を学習に使わない扱いを標準にしたものがあります。OpenAIはChatGPT Businessのヘルプで、ワークスペースのデータを学習に使用しないと説明しており、Anthropicも法人向け製品の入力と出力を既定ではモデルの学習に使わないとしています。Google Workspaceについても、Privacy Hubに、顧客の事前の許可や指示なしに顧客データを学習に使わないという記載があります。反対に、職員が個人のアカウントで使う場合は、学習の設定を一人ずつに任せることになり、事務所からは設定の状態が見えなくなってしまいます。

利用の記録を残し、配布と退職時の停止を決める

誰がいつどのAIを使ったかを事務所で把握できる状態にすると、顧問先から使い方を尋ねられたときにも説明がしやすくなります。職員にアカウントを配る手順と、退職や異動のときに止める手順は、入所・退所の手続きと同じ書類に組み込むのが確実でしょう。第27条の2の義務は職員にも及ぶので、退所した職員の手元に、顧問先の相談文が残ったアカウントがある状態は避けたいところです。

指示文を事務所で共有するルール

指示文は、職員が個別に工夫したものを事務所の共有の台帳に集め、名前と版を付けて管理すると、出力の質がそろいます。台帳に載せる項目は次のとおりです。

  • 指示文の名前と用途(例:指示文4 労務相談の整理と結論の候補)
  • 版と最後に見直した日、見直した人
  • そのまま入れてよい材料と、外してから入れる材料
  • 出力を確かめる人と、照合に使う原文(e-Gov、支給要領、モデル就業規則など)
  • 使うAIと、同じ指示文で出力を比べたときのメモ

台帳とあわせて、顧問先ごとの背景を1枚にまとめておくと、差し込み枠を埋める手間が減ります。中身は業種と規模、従業員の雇用区分、既存の規程の名前と版(いつ改定したものか)で、会社名を外した形で作り、指示文の「背景」にそのまま貼る運用にしてみてください。規程を改定したら、この1枚の版も同じ日に書き換えることになります。

法改正や支給要領の改訂があったときは、関係する指示文の「守ること」と照合先を見直し、版を上げてから使うようにしましょう。社内ルール全体の作り方は、生成AIの社内ガイドラインの作り方でひな形と合わせて紹介しています。

複数のAIを業務で使い分ける

同じ指示文を2つのAIに渡して出力を見比べると、条文番号や要件の食い違いが目に入りやすくなります。食い違った箇所は、そのまま人が原文で確かめる箇所の候補として使うことが出来ます。Next Partnersの例のように根拠のURLを示すAIで確認の手がかりを探し、文章の下書きは別のAIに任せるといった分け方も考えられます。4つのAIの得意分野の違いは、主要4AIの違いと使い分けにまとめました。

事務所のAI利用を、顧問先に説明できる形に

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準適用し、管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理出来ます。GPTs・Gem・Claudeプロジェクトの社内版にあたるカスタムプラスでは、よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有出来るため、事務所で決めた指示文を職員みんなで同じ形で使えます。基盤はAWSの日本リージョンで稼働し、データの保管とログ管理は国内で行います。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

社労士が生成AIに顧問先の相談内容を入力してもよいですか?
社会保険労務士法第21条と第27条の2は、業務に関して知り得た秘密を漏らすことを禁じています。入力がそのまま違反になると条文に書かれているわけではありませんが、外部の事業者に情報を渡すことになります。会社名・氏名・日付など特定につながる部分を外してから入れ、入力が学習に使われない法人向けの環境で使うのが基本になります。
就業規則をAIに一から作らせてもよいですか?
条文の形を整える下書きには使えますが、労働基準法第89条の各号の事項がそろっているか、顧問先の実情に合っているかは社労士が確かめる必要があります。モデル就業規則(令和7年12月版)や顧問先の現行規程を材料として渡し、材料にない内容を足さないよう指示すると、確かめやすい出力になります。
助成金の要件や金額をAIに聞いてもよいですか?
おすすめしません。支給要領やQ&Aは年度の途中でも改訂されるため、AIの答えが古い内容のことがあります。支給要領とQ&Aの本文を材料として渡してヒアリング項目と必要書類の確認表をつくらせ、数字は支給要領の原文で照合してください。
AIが挙げた条文番号はどう確かめればよいですか?
e-Gov法令検索で該当の法律を開き、条番号・項・号と、その中身が回答文の説明と合っているかを見ます。指示文で「確かでない条文番号には【要確認】と付ける」と指定しておくと、確かめる箇所を絞りやすくなります。
社労士会に生成AIの利用ルールはありますか?
全国社会保険労務士会連合会は、会員向けの「社会保険労務士向け生成AI活用ガイドブック」を2024年9月に告知しています。2026年10月16日に確認した時点では、一般に公開された利用指針は連合会のサイトに見当たりませんでした。所属する会の通知を確かめたうえで、事務所のルールを決めるのが現実的です。
職員ごとに使っているAIが違っても問題ありませんか?
職員が個人のアカウントで使うと、学習の設定や利用の記録を事務所で把握できません。社会保険労務士法第27条の2は職員にも秘密を守る義務を課しているため、使うAIと設定、指示文の台帳を事務所でそろえ、退所時にアカウントを止める手順まで決めておくことをおすすめします。

まとめ

社労士の生成AIの使い方は、業務ごとに入れる材料と指示文を決め、出力を社労士が原文と突き合わせる流れにすると、事務所の中で再現できる形になります。就業規則では箇条書きを条文に戻す作業、モデル就業規則(令和7年12月版)との差分の洗い出し、意見聴取から周知までの段取り表が、AIに任せやすい部分でした。

労務相談は事実の整理と結論の候補、分かれ目の事実までをAIに出させ、結論と根拠は社労士が決めます。チャット向けの要約は、確認を終えた回答文からだけつくらせる順番でした。助成金は支給要領とQ&Aの本文を渡してヒアリング項目と確認表をつくらせ、数字は原文で照合するのが安全でしょう。案内文や説明資料、求人原稿、手続き書類の依頼文では、材料にない言葉や約束が足されていないかを見比べることが確認の中心となります。

指示文は事務所の台帳で版を付けて共有し、使うAIと学習の設定、利用の記録も事務所の側でそろえておきましょう。守秘義務や情報の線引きの全体像は社労士のAI活用で、ほかの業務のAI活用はAI活用コラム一覧で読むことが出来ます。