AIエージェントの無料版。できること・制限と、会社で使う前の確認点

無料で使えるAIエージェントとは、Manus・Genspark・Difyなどの無料プランや、n8nのように自社のサーバーで動かすオープンソース版、期間限定の無料試用など、料金を払わずに試せるAIエージェントのことです。会社で試すこと自体は出来ますが、無料版は入力が学習に使われるかどうかや管理者機能の有無が公式に書かれていないものも多く、公開情報と架空のデータだけで、期間と担当者を決めて試す範囲にとどめるのが安全になります。顧客や社員の情報を入れて業務で使うなら、学習利用を止められるか、管理者が利用を把握出来るかを確かめ、条件を満たす環境へ移る判断が必要です。

AIエージェントの仕組みや生成AIとの違いはAIエージェントとは何かを解説した記事で、有料のサービスも含めた全体の比べ方はAIエージェント比較でまとめています。ここではおすすめのツールを並べるのではなく、会社として無料版を試す前に何を確かめ、どこで線を引くかを順にたどっていきます。

無料版の種類は3つ|SaaSの無料枠・オープンソース・無料トライアル

無料で使えるAIエージェントは、提供元のサーバーで動く無料枠、自社で動かすオープンソース、期間を区切った無料トライアルの3つに分かれます。同じ無料でも、データがどこに置かれ、誰が運用の手間を負うかはまったく違ってきます。選ぶ前に、どの種類の無料なのかを先に確かめてみてください。

種類例データの置き場所費用と手間会社で試すときの見どころ
SaaSの無料枠Manus・Genspark・Felo・Dify(クラウドのSandbox)提供元のサーバー費用はかからないが、クレジットや回数に上限がある学習利用の扱いと、運営会社の所在
オープンソースを自社で運用DifyのCommunity版・n8nのCommunity版自社で用意したサーバーソフトは無料。サーバー代と更新・バックアップの手間は自社持ちライセンスの条件と、つなぐAIモデル側の規約
無料トライアルn8nのクラウド版・Copilot Studioの試用提供元のサーバー期間が終わると有料に移るか停止する試用で作ったものを本番に移せるか

SaaSの無料枠:登録してすぐ使えるが、条件は提供元が決める

始めるまでの手間が少ないのは、アカウントを作るだけで使える無料枠です。ManusやGenspark、Feloは、毎日決まった量のクレジットが付与される形をとっています。入力した内容は提供元のサーバーで処理されるため、学習に使われるかどうかや、どの国に保存されるかは、各社の規約とプライバシーポリシーで決まります。会社の側で条件を変える余地はほとんどなく、確かめたうえで受け入れるか、使わないかを選ぶことになってしまいます。

オープンソースを自社で動かす:ソフトは無料、運用は自社持ち

Difyとn8nは、ソフトウェアそのものを無料で入手し、自社で用意したサーバーで動かすことも出来ます。データは自社のサーバーに置かれるので、置き場所を自分たちで決められる点は安心材料になります。その代わり、サーバーの費用、ソフトの更新、バックアップはすべて自社の負担です。エージェントの頭脳にあたるAIモデルを外部のAPIで呼び出す場合は、そのAPI側の利用条件も別に確かめる必要があるでしょう。サーバーを扱える担当者がいる会社向けの選択肢になります。

無料トライアル:期間が終われば止まる前提で使う

n8nのクラウド版には永続の無料プランがなく、公式ドキュメントでは14日間の無料試用と案内されています。料金ページには、試用にクレジットカードは不要とあります。MicrosoftのCopilot Studioも、個人でサインアップすると無料試用が始まりますが、試用中は作ったエージェントを公開出来ず、作成とテストまでの扱いです。職場か学校のアカウントが必要で、IT管理者がセルフサインアップを止めている会社では始められない場合もあります。どちらも期間が終われば有料に移るか使えなくなるため、試用で作ったものを業務の土台にしないよう気をつけましょう。

汎用のAIチャットに付くエージェント機能

ChatGPTの無料プランでも、長い作業を任せるChatGPT Workと開発向けのCodexにアクセス出来ると、公式の料金案内には書かれています。ただし、提供はデスクトップアプリで利用に制限があり、順次の提供とされているため、使える量の具体的な数字は示されていません。以前のChatGPTエージェントは提供が終わり、公式ヘルプはChatGPT Workへの移行を案内しています。GoogleのGeminiアプリでは、エージェント機能のGemini SparkはAIプランのない無料の利用では使えず、Google AI ProかUltraが対象となります。エージェントらしい動きを無料で試せる範囲は、サービスごとにかなり差があります。

主なサービスの無料枠と制限|回数・クレジット・同時実行と、途中で止まるリスク

無料枠の制限は、1日や1か月に使えるクレジットの量、同時に動かせる作業の数、使えるモデルの種類の3つで決まります。エージェントは1つの依頼を何段階にも分けて処理するため、チャットよりも早く枠を使い切りやすくなります。

サービス無料で使える量(公式の記載)ほかの制限
Manus(無料プラン)毎日300クレジットを付与同時に動かせるタスクは1つ、予約実行は2つまで。使えるのはチャットモードと、エージェントモードのManus 2.0 Lite
Genspark(無料プラン)毎日100クレジット(生涯の付与上限まで)規約では、ストレージとAIモデル・エージェントの利用も限られた範囲と案内
Felo(無料プラン)毎日200クレジットが自動で補充(繰り越しなし)Pro検索は1日5回
Dify(クラウドのSandbox)200メッセージクレジット(付与の周期は料金ページに記載なし)アプリ5個、メンバー1人、ナレッジ文書50件・50MB、ログの保存30日、API呼び出しは月5,000回まで
n8nクラウド版は14日間の試用のみ。Community版は自社サーバーで無料試用はProプラン相当の機能
Copilot Studio(無料試用)個人のサインアップで試用開始。30日の延長が出来る(最初の試用の日数は該当ページに記載なし)試用中はエージェントを公開できない
Coze公式に記載を確認できず公式に記載を確認できず

※2026年10月7日時点で各社の公式ページ・ヘルプ・規約に表示されている内容です(各社の自己申告)。クレジットの消費量は作業の中身で変わり、ここに挙げた量で何回の依頼をこなせるかは公式に示されていません。

途中で止まると、作業が中途半端なまま残る

無料枠で困りやすいのは、作業の途中でクレジットが尽きて止まることです。例えば、20件の請求書をフォルダーから読み取って一覧表にまとめる作業が10件目で止まると、どこまで処理が済んだかを人が確かめ直すことになります。予約実行のように人が見ていない時間に動く仕組みでは、止まったことに翌朝まで気づかない場面も出てきます。Manusの無料枠のように同時に動かせる作業が1つだけだと、急ぎの依頼が前の作業の終わりを待つ形にもなるでしょう。無料枠は、止まっても困らない作業を試すための枠だと割り切っておきましょう。

使えるモデルが軽い版に限られる

無料枠では、使えるモデルが軽い版に限られることがあります。Manusの無料プランでは、エージェントモードで使えるのはManus 2.0 Liteと案内されています。無料で試した結果が物足りなくても有料版で同じになるとは限らず、反対に、無料でうまくいった作業が有料版の別のモデルでは違う動きをする可能性もあります。試した結果は、使ったプランとモデルの名前と一緒に記録しておくと、あとで比べやすくなります。有料プランの入口は、Manusが月20ドルから(月4,000クレジット)、n8nのクラウド版が年払いで月20ユーロのStarterから、DifyのProfessionalが1ワークスペースあたり年590ドルからと案内されています。

無料版の確認判断表|学習利用の既定・オフにする画面・管理者機能・保存先

会社で無料版を試してよいかは、入力が学習に使われる設定が既定か、それを止める画面があるか、管理者が利用を把握出来るか、データがどこに置かれるかの4点で判断出来ます。主なサービスについて、公式の規約とヘルプで確かめた内容を1つの表にまとめました。

サービス(無料の形)学習利用の既定オフにする画面管理者機能運営とデータの置き場所
ChatGPT(Free)個人用ワークスペースでは、データ共有が既定で有効。学習への利用はオプトアウト出来るプロフィール→「設定」→「データコントロール」→「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ。一時チャットは学習に使われない個人プランにはなし(Business以上のワークスペースの機能)公式に記載を確認できず
Gemini(個人のGoogleアカウント)トレーニングを受けたレビュアーがチャットの一部を確認し、レビューされたチャットは最大3年保持。保存期間の既定は18か月「アクティビティの保存」をオフ(チャットは72時間保存され、モデルのトレーニングには使われない)。一時チャットも人のレビューと改善に使われない公式に記載を確認できず公式に記載を確認できず
Microsoft Copilot(個人向けの無料版)Copilotでのやりとりなどを、AIのトレーニングに使うと案内。組織のEntra IDでサインインした利用者などは対象外copilot.comのプロフィールアイコン→プロフィール名→「Privacy」→「Training on conversation activity」をオフ。オフでも製品改善・広告・安全などの目的の利用は除かれないと注記公式に記載を確認できず公式に記載を確認できず
Copilot Studio(無料試用)公式に記載を確認できず公式に記載を確認できず職場・学校のアカウントが必要。IT管理者がセルフサインアップを無効にしている場合がある公式に記載を確認できず
Dify(クラウドのSandbox)料金ページに記載なし公式に記載を確認できずメンバーは1人まで。ログは30日分公式に記載を確認できず(Community版なら自社のサーバー)
n8n(Community版)自社のサーバーで動き、データは自社に置かれる。つなぐAIモデル側の条件は別に確認自社で管理Community版は無料。管理向けの機能はBusiness・Enterpriseの有料ライセンス自社で用意したサーバー
Manus(無料プラン)公式に記載を確認できず公式に記載を確認できず公式に記載を確認できず公式に記載を確認できず
Genspark(無料プラン)無料プランの扱いは明記を確認できず(Team・Enterpriseは自動でオプトアウトと記載)公式に記載を確認できず公式に記載を確認できず運営はMainFunc Inc.。Microsoft Azureに保存(リージョンの記載なし)
Felo(無料プラン)プライバシーポリシーの本文では確認できず公式に記載を確認できず公式に記載を確認できず規約ではFelo Inc.、プライバシーポリシーではFelo株式会社
Coze規約に、利用者のコンテンツを製品・サービスの提供・運用・開発・改善に使う場合があると記載オフにする設定は確認できず公式に記載を確認できず規約上の提供者はSPRING (SG) PTE. LTD.またはその関連会社。個人情報は米国とシンガポールのサーバーに保存されうる

※2026年10月7日に各社の公式ページ・規約・ヘルプで確認した内容です。いずれも各社の自己申告で、第三者が検証したものではありません。「公式に記載を確認できず」は確認したページに記載が見当たらなかった欄で、その機能がないという意味ではありません。画面の名前や手順は変わることがあるため、試す直前に公式のヘルプを開き直してください。

表を並べてみると、学習利用を止める画面がはっきり示されているのは、ChatGPT・Gemini・Microsoft Copilotの汎用のAIチャットに限られます。エージェント専業の無料版は、学習利用の既定値も管理者機能も、公式の記載から読み取れない欄が多く残ります。読み取れないものは、会社としては学習に使われる可能性があるものと見なして扱うのが無難でしょう。学習利用を止める画面が見つからない無料版には、社外に出せない情報を入れないと決めましょう。

ChatGPTの設定で学習をオフにしても、管理者のいない個人プランである以上、社員一人ひとりが設定を守っているかを会社から確かめる手段はありません。社員が10人いれば10回、設定の確認を本人に頼み続けることになってしまいます。設定の手順は、ChatGPTに学習させない設定とCopilotに学習させない設定でも順を追って紹介しています。

無料版の設定を一人ずつ確かめる前に、会社で使うAIの環境をそろえる

学習利用や管理者機能を社員ごとに確かめ続けるより、会社で使うAIの環境と権限を先にそろえましょう。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

個人情報・機密情報は入れない|個人情報保護委員会の注意喚起の要点

顧客や社員の個人データは、学習利用の扱いを確かめられない無料版には入れないのが原則です。個人情報保護委員会は2023年6月2日に、「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表しました。事業者向けの部分では、本人の同意を得ないまま個人データを含む指示文(プロンプト)を生成AIサービスに入力し、そのデータが応答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があると述べています。そのうえで、提供事業者が入力データを機械学習に使わないことなどを十分に確認するよう、事業者に促す内容になります。

注意喚起は違反になると言い切っているわけではなく、違反となる可能性を示したものです。それでも、前の節の判断表で学習利用の欄が「公式に記載を確認できず」となっている無料版は、この十分な確認が難しい状態と言えます。

入れてはいけない情報を、先に言葉で決めておく

個人データのほかにも、無料版に入れると後から取り戻せない情報があります。

  • 顧客名簿や問い合わせの履歴など、個人を特定出来る情報
  • 給与・人事評価・健康に関わる社員の情報
  • 契約書・見積書・取引先から預かった資料
  • パスワード、APIキー、クレジットカード番号などの認証や決済の情報
  • 公表前の決算・新製品・価格の情報

Cozeのプライバシーポリシーも、パスワードやクレジットカード番号のような機密情報を入れないよう利用者に求めています。社内での線引きは、このあとの申請ルールのひな形で3段階の表にしているので、合わせて使ってみてください。

商用利用の可否は規約で確認する

業務で使う前に、規約が商用利用や社内業務での利用を認めているかを確かめる必要があります。オープンソースの2つは、ライセンスに条件がはっきり書かれているので確かめやすくなります。Difyのライセンスは、Apache 2.0をもとに追加の条件を付けたもので、ほかのアプリの裏側の仕組みとして使うことも含めて商用利用を認めています。ただし、書面の許諾なしに複数の利用者へ提供するマルチテナントの運用は出来ず、画面のロゴや著作権表示を消したり変えたりすることも認められていません。

n8nのSustainable Use Licenseは、自社の社内業務のため、または非商用・個人での利用に限って、使うことと改変することを認めるものです。自社の業務を自動化する使い方は許諾の範囲に入りますが、作った仕組みを他社に有償で提供するのは範囲の外となります。

SaaSの無料枠は、提供元の規約が条件を決めます。Manusの無料プランは、商用利用の可否が公式の案内に見当たらず、試す前に規約の本文を読む必要があるでしょう。規約は英語のものも多いため、営業資料や納品物に生成物を使う予定があるなら、試用の申請に規約のURLと該当する条文を添えてもらうのが確実です。

AIエージェント特有の確認点|接続権限・実行前の人の承認・取り消し・出力の確認

AIエージェントはチャットと違い、メールやファイルなどの外部のツールに接続して人の代わりに操作まで進めるため、つなぐ範囲と実行前の承認を確かめる必要があります。OpenAIは旧ChatGPTエージェントのヘルプで、エージェントがサインインやアプリの有効化を通じてメールやファイルなどの機密データにアクセスし、代わりに操作を実行出来ることから、プロンプトインジェクション(文書やWebページに紛れ込ませた指示でAIを操る攻撃)を含むプライバシーのリスクが生じると説明しています。同じヘルプが勧める使い方は、その作業に必要なアプリだけを有効にする、曖昧で自由度の高い指示を避ける、不審な点があればすぐに止める、などになります。

Anthropicも、Claudeにつなぐ外部の接続先(MCPサーバー)について、悪意のある接続先が意図しない操作をさせる隠れた指示を含む場合があると注意し、外部のアプリに書き込めるツールは無効にすること、信頼できる組織が作って運用している接続先だけにつなぐことを勧めています。Claudeは無料のアカウントでも、こうした独自の接続先を1つまで追加出来ます。試用の間は、送信や削除が出来る書き込みの権限をエージェントに渡さないのが基本になります。

会社のメールやドライブにつなぐ前に、管理者の設定を見る

社員が無料のエージェントに会社のメールやファイルをつなごうとすると、その許可は本人の同意だけで通ってしまうことがあります。MicrosoftのEntra IDの解説では、既定ではすべてのユーザーが、管理者の同意を必要としないアクセス許可のアプリに同意でき、例えば自分のメールボックスへのアクセスをアプリに許可出来ると説明されています。情シスの担当者は、Entra IDの「ユーザーの同意設定」で、検証済みの発行元のアプリだけに同意を許す設定を検討してみてください。

Google Workspaceでは、管理コンソールの「セキュリティ」から「アクセスとデータ管理」、「APIの制御」と進むと、会社のアカウントのデータにアクセスしているアプリの一覧と利用者の数を確認でき、CSVで書き出すことも出来ます。無料版の試用を認める前に一度この一覧を開き、すでにつながっているアプリがないかを見ておきましょう。

無料版で確かめる6つの手順

  • 架空のデータだけで動かす実在の顧客名や社員名は使わず、作り話の請求書やメールで試します。
  • 接続は読み取りだけにする送信・削除・投稿などの書き込みの権限は、試用の間は渡しません。
  • 実行の前に確認が出るかを試す送信や削除の直前に、人の承認を求める画面が出るかを見ます。法人向けの有料版では、例えばChatGPTのワークスペースエージェントが書き込み操作を既定で毎回確認する設定になっています。
  • 取り消せるかを確かめる送ったメールや消したファイルを元に戻せるかを、サービスの画面とヘルプで確かめます。
  • 同じ処理の繰り返しで枠を使い切らないかを見る処理が止まらなくなったときにクレジットがどれだけ減るか、自分で止められるかを確かめます。
  • 出力は人が確かめてから使うAIの答えには事実と違う内容(ハルシネーション)が混じることがあります。数字・固有名詞・日付は元の資料と照らし合わせます。

エージェント全般の安全対策は、AIエージェントのセキュリティ対策で詳しく扱っています。

社員10〜200名の会社で無料版が広がると起きること

情シスの専任がいない規模の会社では、無料版の利用は気づかないうちに広がり、後から実態をつかむのが難しくなります。

誰が何に登録しているか分からない

無料版はメールアドレスだけで登録出来るため、会社の承認を通らずに使い始められます。個人のメールアドレスで登録されると、会社の管理画面にもメールの記録にも残らず、本人に聞かない限り分かりません。

退職や異動のあともアカウントと接続が残る

社員が辞めても、個人で作ったアカウントは本人が消さない限り残ります。そのアカウントが会社のメールやドライブにつながったままなら、会社側で接続を止めるまでエージェントが会社のデータにアクセス出来る状態が続いてしまいます。Microsoft 365の管理センターの解説でも、共有されたエージェントは、作ったユーザーが組織から削除されると所有者がいなくなる可能性があると書かれています。会社の契約の中でさえ起きることなので、個人の無料アカウントではなおさら把握が難しいでしょう。

有料化が個人のカードで進む

無料枠で便利さを知った社員が、上限に当たって自分のクレジットカードで有料プランに切り替えることもあります。月20ドルほどのプランでも、経費の精算に乗らなければ、どのサービスにいくら払っているかを会社は知らないままとなります。経費で精算された場合も、明細の名前だけでは何のサービスか分かりにくく、契約内容の確認まで手が回らない場面が出てきます。

確かめる人が1人か兼任しかいない

情シスが1人だけ、あるいは総務との兼任という会社では、サービスごとに規約を読み、設定を確かめる時間は取りにくくなります。前の節の判断表を10個のサービスすべてについて最新に保つのは、兼任の担当者には重い作業です。確かめる対象を減らすには、使ってよいサービスを会社が先に決めて、数を絞るのが近道になります。

シャドーAI化を防ぐ社内ルールと、承認ツールの一覧

無料版を一律に禁止するより、会社として使ってよいAIを先に用意し、承認したツールの一覧を示すほうが、見えない利用を減らしやすいと考えられます。会社が把握していないところで使われるAIはシャドーAI(野良AI)と呼ばれ、AIエージェントの場合は外部のツールにつながる分、影響が広がりやすくなります。

IPAの中核人材育成プログラムの成果物として公開された「生成AIおよびAIエージェントを安全に活用するための手引書」(2026年7月)は、禁止を先行させるだけでは申告されない利用が増え、実態の把握がさらに難しくなるおそれがあると指摘しています。同じ手引書が対策として挙げるのは、業務に使いたいのに公式な手段がない状況をなくすための、組織が公認したAIの提供です。全社に、または情報漏洩のリスクが高い部署から優先して提供する形が示されています。

※同手引書は、IPAおよびICSCの意見を代表するものではないと断り書きをしています。

承認ツールの一覧に書く項目

承認ツールの一覧は、社員が使ってよいかをその場で判断出来るように、次の列を1行ずつ並べると使いやすくなります。

列書く内容
サービス名とプラン使ってよいプランと、登録に使うアカウントの種類(会社のメールアドレスか)
区分承認済み/試用中/使用禁止
入れてよい情報青・黄・赤の3段階のどこまでか
必ずする設定学習利用をオフにする画面の名前と、確かめた日
外部ツールへの接続つないでよいツールと、読み取りだけか書き込みも許すか
責任者と見直し日その行の担当者と、次に見直す日

一覧は社内のポータルや共有ドライブの決まった場所に置き、新しいサービスの相談が来たら行を足していきましょう。社内ルール全体の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方、エージェントの見えない利用への対策はAIエージェントのシャドーAI対策でも扱っています。

社内で無料版を試すときの申請ルールのひな形

無料版の試用を認めるなら、申請の項目、入れてよい情報の線引き、試用期間、終わるときの後始末の4つを1枚にまとめて決めておきましょう。ここに載せるひな形は、そのまま社内の様式に写して使えるように項目を並べています。

申請書の項目

項目記入のしかた・例
申請者と部署試す人の名前と所属
サービス名・URL・運営会社公式サイトのURLと、規約に書かれた運営会社の名前
使う目的と業務例:公開されている業界ニュースを集め、週1回の要約を作る
使う人数と期間例:2名・30日間(延長するときは出し直す)
登録するアカウント会社のメールアドレスで登録する(個人のアドレスは使わない)
入れる情報の区分青のみ/黄まで(黄は承認者の許可が必要)
学習利用の設定オフにした画面の名前と、設定した日。オフに出来ない場合はその旨
外部ツールへの接続なし/読み取りのみ(つなぐツールの名前)
有料化の予定なし(有料にするときは会社の契約として出し直す)
承認者部門長と情シスの担当者(兼任なら総務の責任者)

入れてよい情報・いけない情報の3段階

入れてよい情報は、青・黄・赤の3段階に分けると、申請する側も迷わずに選べます。

区分情報の例無料版での扱い
青(入れてよい)公開済みのWebページや自社サイトの文章、一般的な文章の下書き、架空のデータ試用でそのまま使ってよい
黄(条件付き)社外秘ではない社内資料、個人を含まない業務の手順書、個人が分からない形にした集計学習利用をオフに出来るサービスで、承認者が認めた場合だけ
赤(入れない)顧客名簿、給与・人事評価、契約書、取引先から預かった資料、パスワードやAPIキー、公表前の数字無料版には入れない。業務で扱うなら会社が契約した環境で

黄の範囲は会社によって変わるため、社内の情報の区分に合わせて例を書き換えてください。判断に迷う情報は赤として扱い、承認者に相談してから入れる運用にしましょう。

試用期間と、終わるときの後始末

試用期間は30日程度を上限にし、終わる日に次の4つを片付けます。

  1. 外部ツールとの接続を解除し、Google WorkspaceやMicrosoft 365の許可済みアプリの一覧からも外す
  2. 作ったエージェント、アップロードしたファイル、会話の履歴を削除する
  3. 続けない場合はアカウントを削除し、有料プランに切り替わっていないかを確かめる
  4. 出来たこと・出来なかったこと・使ったクレジットを申請者が報告し、承認ツールの一覧に反映する

後始末まで決めておかないと、試用が終わったあとも接続とデータが残り、前の節で見た退職者のアカウントと同じ問題が起きてしまいます。

無料版と有料版の違い|学習利用・管理者機能・アクセス制御・共有・サポート

無料版と法人向けの有料版で差が出るのは、AIの賢さよりも、会社が利用を管理出来るかどうかの部分です。確認した範囲で、主な違いを並べました。

確認する点無料版で確認した範囲法人向けの有料版の例
学習利用既定で使われる、または記載が見当たらないサービスが多いGensparkのTeam・Enterpriseは自動でオプトアウトと記載
管理者と利用状況ChatGPTの個人プランには管理者機能がないChatGPTのBusiness・Enterpriseでは、管理コンソールでワークスペースエージェントの利用状況を確認出来る
アクセス制御本人のアカウントの中で完結するChatGPTのワークスペースエージェントは、管理者がロールごとに利用・作成・公開を許可出来る
実行前の確認サービスごとに違い、記載がないものもあるワークスペースエージェントの書き込み操作は、既定で毎回確認
チームでの共有とログDifyのSandboxはメンバー1人、ログは30日分DifyのProfessionalはメンバー3人、Teamは50人

※2026年10月7日時点の各社公式の案内(自己申告)です。ChatGPTのワークスペースエージェントの実行には、2026年7月6日からクレジット制の料金体系が適用されています。

サポートの範囲は、契約するプランの案内で個別に確かめることになります。有料版にしたからといって、入れてはいけない情報の線引きや出力の確認が要らなくなるわけではありません。変わるのは、設定を会社がまとめて決め、誰が何に使ったかを後から確かめられるようになる部分です。ChatGPTの個人プランと法人プランの違いは、ChatGPT Businessと個人プランの違いで詳しく比べています。

有料に切り替える目安|人数×情報の種類×止まったときの影響

無料のまま続けるか、会社の契約に切り替えるかは、次の5つの物差しで判断出来ます。

物差し無料の試用で足りる切り替えを検討する
使う人数1〜2名が試すだけ3名以上が日常的に使う、または部署をまたいで広がっている
入れたい情報青(公開情報・架空のデータ)だけ黄や赤の情報を入れたいという声が出ている
止まったときの影響翌日にやり直せば済む締め切りのある業務や、顧客への送信が絡む
つなぐツール接続なし、または読み取りだけ会社のメール・ドライブ・業務システムに書き込みたい
費用の出どころ無料枠の中で収まっている個人のカードで有料プランを払う人が出ている

※表の線は本記事の目安で、公的な基準ではありません。

1つでも右の列に当てはまるなら、無料版の延長ではなく、会社として契約する環境を選ぶ段階と考えてよいでしょう。情報の種類で右の列に入る場合は、人数が少なくても切り替えを先送りにしないでください。個人情報や取引先の資料は、一度入れてしまうと取り消せないためです。

無料版をPoC(小さな試験)として使う手順

無料版は、本番の契約を選ぶ前のPoC(概念実証、小さく試して効果を確かめること)に使うと、費用をかけずに向き不向きを見極められます。

  1. 試す業務を1つに絞る(例:公開情報を集めて週1回の要約を作る)
  2. うまくいったと言える基準を先に決める(例:作業時間が半分になる、手直しが3か所以内)
  3. 架空のデータと公開情報だけで、2〜4週間試す
  4. 結果を、プラン名・モデル名・使ったクレジットと一緒に記録する
  5. 本番で必要な条件(学習利用・管理者機能・保存先・料金)を判断表で確かめ、契約する環境を選ぶ

無料で試して手応えがあった業務ほど、本番では顧客名や社内資料を入れたくなります。PoCの段階で、本番に移すときの環境の条件まで書き出しておけば、試した結果を無駄にせず次に進めるでしょう。作るところから試したい方は、AIエージェントの作り方で、ノーコードで作る手順と最初の題材の選び方をまとめています。

無料版の選び方|日本語・ノーコード・外部連携・無料枠・運営元の国

会社で試す無料版を選ぶときは、使いやすさより先に、運営元とデータの置き場所を確かめるのが順番です。日本語で使えるか、ノーコードで作れるかは、そのあとに見ても遅くありません。

見る点確かめ方
運営会社と所在国規約とプライバシーポリシーの事業者名と住所の欄
データの保存先プライバシーポリシーの保存・国外への移転の項目
学習利用と止め方判断表の2列(学習利用の既定・オフにする画面)
無料枠の量と回復のしかた毎日補充か、一度きりか、生涯の上限があるか
外部連携の範囲つなげるツールと、読み取りと書き込みを分けて許可出来るか
日本語とノーコード画面と回答が日本語で使えるか、指示文だけで作れるか

海外のサーバーと運営元の国に気をつける

Cozeは、規約上の提供者がSPRING (SG) PTE. LTD.またはその関連会社で、プライバシーポリシーには個人情報が米国とシンガポールのサーバーに保存されうると書かれています。Gensparkの運営はMainFunc Inc.で、データはMicrosoft Azureに保存されるとプライバシーポリシーにありますが、リージョンの記載は見当たりません。デジタル庁が政府職員向けに定めた生成AIのガイドラインは、国外にサーバー装置がある場合には現地の法令が適用され、検閲や接収を受ける可能性があることに注意を促しています。政府向けの決まりなので民間の会社がそのまま従う義務はありませんが、取引先や顧客から保存先を聞かれたときに答えられるかどうかの目安になります。

無料版を個人で試す前に、会社で使えるAIの環境と権限をそろえる

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです。利用ログ・権限・モデルのON/OFFを扱える管理者ダッシュボードや、よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有出来るカスタムプラス(GPTs・Gem・Claudeプロジェクトの社内版)を備え、基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

AIエージェントは無料でどこまで使えますか?
サービスごとに決まったクレジットの範囲で使えます。2026年10月7日時点の各社公式の案内では、Manusは毎日300クレジット、Gensparkは毎日100クレジット(生涯の付与上限まで)、Feloは毎日200クレジットです。同時に動かせる作業の数や使えるモデルにも制限があり、作業の途中でクレジットが尽きると止まります。量は変わることがあるため、試す前に公式のページで確かめてください。
無料のAIエージェントに入力した内容は学習に使われますか?
サービスによって違います。ChatGPTの無料プランは、個人用ワークスペースではデータ共有が既定で有効で、設定のデータコントロールからオフに出来ます。エージェント専業の無料版には学習利用の扱いが公式に明記されていないものもあり、その場合は使われる可能性があるものとして扱い、社外に出せない情報は入れないのが安全です。
無料版を会社の業務で使っても規約上は問題ありませんか?
規約によります。オープンソースのDifyは商用利用を認めていますが、書面の許諾なしのマルチテナント運用やロゴの削除は認めていません。n8nのライセンスは自社の社内業務での利用を認める一方、他者への有償提供は範囲外です。SaaSの無料プランは、試す前に規約の本文で商用利用の条件を確かめてください。
社員が個人のアカウントで無料版を使っていたら、どうすればよいですか?
まず、入力した情報の種類と、会社のメールやドライブにつないでいないかを本人に確かめます。つないでいる場合は接続を解除し、Google WorkspaceやMicrosoft 365の管理画面で許可済みのアプリを確認します。そのうえで、使ってよいサービスを承認ツールの一覧で示し、試用は申請制にすると、見えない利用が出にくくなります。
無料版に個人情報を入力すると法律違反になりますか?
必ず違反になるとは限りません。個人情報保護委員会の2023年6月2日の注意喚起は、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、そのデータが応答の出力以外の目的で扱われる場合に、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があるとしています。学習利用の扱いを確かめられない無料版には、個人データを入れないのが無難です。
AIエージェントの無料版と有料版は、どこが違いますか?
差が出るのは主に管理の部分です。法人向けの有料版では、管理者が利用状況を確認したり、権限ごとに作成や公開を許可したりする機能が用意されているものがあり、例えばChatGPTのワークスペースエージェントは書き込み操作を既定で毎回確認する設定です。入れてはいけない情報の線引きと出力の確認は、有料版でも会社で決める必要があります。

まとめ

無料で使えるAIエージェントは、SaaSの無料枠、オープンソースの自社運用、無料トライアルの3種類に分かれ、どれも会社で試すこと自体は出来ます。ただ、エージェント専業の無料版は学習利用や管理者機能の扱いが公式の記載から読み取れないものが多く、公開情報と架空のデータで、期間と担当者を決めて試す範囲にとどめるのが安全です。試す前には判断表で学習利用・オフにする画面・管理者機能・保存先を確かめ、申請ルールのひな形で入れてよい情報と後始末を決めておきましょう。使う人数が増えたり、顧客や社員の情報を入れたくなったりしたら、無料版を延ばすのではなく、会社として環境と権限をそろえる段階になります。法人のAI活用についてのほかの記事は、AI活用コラム一覧からご覧いただけます。