
AIエージェントとは、目標を渡すと作業の手順を自分で組み立て、ファイルやアプリなどのツールを使って実行まで進めるAIのことです。社員10〜200名の会社が比べるときは、製品の人気順ではなく「どの種類のエージェントか」「料金が人数・テナント・使用量のどれで増えるか」「送信や更新の前に人が止められるか」の3点で見ると選びやすくなり、その前提として社員が日常で使うAIを会社で揃えておくことが先になります。この記事では、ChatGPT・Claude・Microsoft 365 Copilot/Copilot Studio・Gemini Enterprise・Salesforce Agentforce・Manus・Dify・JAPAN AI AGENTを種類で整理し、公式ページで確認できた料金と既定の設定、社員10名・30名の年額の試算、導入前のチェックリストまでをまとめます。
AIエージェントとは|答えるAIと作業を進めるAIの違い
AIエージェントは、質問に答えるところで止まらず、目標に向けて作業を進めるところまで担うAIです。どこからがエージェントかについて業界で統一された定義はありませんが、各社の公式説明を並べると、共通する要素は「目標を受け取る」「手順を自分で組む」「ツールを使う」「結果を確かめて次の手を打つ」の4つです。AIエージェントに担当業務と権限を決めて継続して任せる使い方は「AI社員」とも呼ばれ、作り方と任せる範囲の決め方はAI社員とはでまとめています。
AIエージェントの定義:目標を渡すと手順を組み、ツールを使って実行まで進めるAI
たとえば「来週の取引先訪問の準備をして」と頼んだとします。チャット型のAIなら、準備に必要なことの一覧を文章で返します。エージェントとして動くAIは、予定表から訪問日を確かめ、共有フォルダから過去の提案書を探し、前回の議事録を要約し、訪問用の資料の下書きを作るところまで進めます。途中で情報が足りなければ質問し、重要な操作の前には承認を求めます。仕組みや身近な例から順に知りたい方は、AIエージェントとはの解説をご覧ください。
OpenAIの公式ヘルプ(2026年9月17日時点)は、ChatGPTの機能を「Chat」と「Work」に分け、Workを「長時間にわたる複数ステップの作業や、完成した成果物の作成を目的とするエージェント」と説明しています。同じヘルプでは、Workで進捗を確認し、質問に回答し、方針を変え、重要なアクションを承認できると案内しています。任せる範囲が広がるほど、人が確認する場面を設計しておく必要があるということです。
チャット型生成AI・チャットボットとの違い
違いは「誰が次の手を決めるか」と「AIが何に触れられるか」の2点にあります。
| ルール型チャットボット | チャット型生成AI | AIエージェント | |
|---|---|---|---|
| 主な役割 | 決められた質問に決められた答えを返す | 質問に対して文章・表・要約を生成する | 目標に向けて手順を組み、作業を実行する |
| 次の手を決めるのは | 作成者が作ったシナリオ | 毎回、人が指示する | AIが手順を組み、人は承認と確認をする |
| 触れられるもの | 登録されたFAQ | 人が貼り付けた情報、添付したファイル | 接続したメール・ファイル・予定表・業務アプリ |
| 失敗したときの影響 | 答えられない | 誤った文章が出る(人が使う前に気づける) | 誤った送信・更新が実行されうる |
表の最下行が、会社として比較するときの出発点です。チャット型の誤りは人が使う前に気づく余地がありますが、エージェントは操作まで進むため、誤りがそのまま社外へのメール送信やデータの更新になりえます。OpenAIの公式ヘルプも、サインインやアプリの有効化によってメール、ファイル、アカウント設定などの機密データにアクセスし、ユーザーに代わって操作を実行できるようになることから、プロンプトインジェクション攻撃を含むプライバシーリスクが生じると注意しています。プロンプトインジェクションとは、Webページやメールの中に仕込まれた指示をAIが読み込み、本来の依頼とは違う動きをしてしまう攻撃のことです。
導入で期待できるメリットと、その前提
エージェントで期待されるのは、業務効率化、定型作業にかかる人件費の見直し、夜間や休日を含めた処理の継続です。ワークスペースエージェントの公式ヘルプでも、会議のフォローアップの自動化、ベンダー・調達・承認リクエストの処理と振り分け、インバウンドリードの評価と対応といった使い方が例に挙げられています。
ただし、こうした効果は各社が機能として案内しているものであり、社員10〜200名の会社でどの程度の効果が出るかを示す独立した検証結果や公的な統計は見当たりません。効果を見込むなら、自社の業務で小さく試して測ることが前提になります。また、エージェントが力を発揮するのは、手順と判断基準がある程度決まっていて、つなぐべきデータが社内で整理されている業務です。日常業務でAIを使う習慣やルールがない状態でエージェントだけを入れても、任せる業務の切り出しで止まりやすくなります。
AIエージェントの種類|4つに分けると比較しやすい
AIエージェントは、製品名で並べるより「どこで動き、誰が作るか」で4つの種類に分けると、自社に必要なものが絞り込みやすくなります。上位の比較記事では、業務自動化型・情報検索型・業務システム搭載型・特化型・ノーコード開発型など5〜6分類で整理されることもありますが、社員10〜200名の会社が最初に判断することは、次の4つでおおむね足ります。
| 種類 | どこで動くか | 誰が作るか | 主なサービス例 | 向く会社 |
|---|---|---|---|---|
| 汎用アシスタント型 | ChatGPT・Claude・Geminiなどの画面の中 | 作らずにそのまま使う(定型業務用に社員が作る機能もある) | ChatGPT Work/ワークスペースエージェント、Claude(Cowork・Claude Code)、Gemini Enterprise | 資料作成・調査・ファイル整理を幅広く任せたい |
| 業務アプリ組み込み型 | Microsoft 365やCRMなど、すでに使っている業務アプリの中 | 提供元が用意したものを使い、必要に応じて追加で作る | Microsoft 365 Copilot、Salesforce Agentforce | 社内のデータがすでに特定の業務基盤に集まっている |
| ノーコード構築型 | 構築画面で作ったエージェントを、社内チャットやWebサイトに公開 | 社内の担当者や導入支援会社 | Copilot Studio、Dify | 問い合わせ対応など、決まった流れの業務を自社用に作り込みたい |
| 自律実行型 | 提供元のクラウド上の作業環境 | 作らずに目標を渡して任せる | Manus | 長い調査や作業を、個別に任せて結果だけ受け取りたい |
※分類は比較のための整理です。1つのサービスが複数の種類にまたがることがあります(例:ChatGPTはそのまま使うWorkと、社内で作るワークスペースエージェントの両方を持ちます)。
汎用アシスタント型:ふだんのAIの画面から作業を任せる
社員が日常的に使っているチャット画面から、そのまま長い作業を依頼できる種類です。新しい画面を覚える必要が少なく、導入の心理的な負担は小さい一方、社員それぞれが自由に使えるため、どのアプリやフォルダにつないでよいかを会社として決めておかないと、利用範囲が見えにくくなります。
業務アプリ組み込み型:データがある場所でAIを動かす
メール・予定表・文書・顧客情報がすでに1つの業務基盤に集まっている会社では、その基盤に組み込まれたエージェントが、データの権限をそのまま引き継げる点で扱いやすくなります。Copilot Studioの公式ドキュメントでは、ナレッジ ソースに対するユーザー認証を使う場合、エージェントはその利用者がアクセスできるコンテンツのみを表示すると説明されています。反対に、社内のデータが複数の基盤に分かれている会社では、1つの基盤に寄せたエージェントだけでは届かない範囲が残ります。
ノーコード構築型:自社の手順に合わせて作る
プログラムを書かずに、画面操作でエージェントを組み立てる種類です。社内の問い合わせ対応や、決まった手順の受付業務など、流れが固まっている業務に向きます。作る人と保守する人が社内に必要で、作ったエージェントの挙動に責任を持つのは利用する会社側です。Copilot Studioの公式ドキュメントも、作成したエージェントの責任は利用者側にあると明記しています。
自律実行型:目標を渡して、提供元の環境で任せる
提供元のクラウド上にある作業環境で、調査や資料の作成などを長時間かけて進める種類です。個人でも始めやすい料金の形が多い反面、会社のデータをどこまで渡すか、成果物をどう確認するかは使う側で決める必要があります。社員が個人の判断で契約しやすい種類でもあるため、後の章で扱う「個人アカウントのエージェントに社内データをつなぐリスク」と直結します。
主要8サービスの比較|用途・提供形態・料金
主要なAIエージェントを比べると、料金の形がサービスごとに大きく違い、1人あたりの月額だけで並べると実際の負担を見誤ります。下の表は、上位の比較記事でよく取り上げられ、かつ公式ページで料金を確認できたサービスです(MicrosoftはMicrosoft 365 CopilotとCopilot Studioの2製品を別の行にしています)。
| サービス | 種類 | 主な用途 | 料金の形(公式ページの表示) |
|---|---|---|---|
| ChatGPT Business(Work・ワークスペースエージェント) | 汎用アシスタント型 | 調査・資料作成、定型業務のエージェント作成 | 標準シート1ユーザー月20ドル(年払い)・25ドル(月払い)。日本から表示した料金ページでは年払い月3,050円・月払い月3,850円(税の記載なし)。Workの使用量はCodexと同じ仕組み。ワークスペースエージェントは2026年7月6日からクレジット制 |
| Claude Team/Enterprise(Cowork・Claude Code) | 汎用アシスタント型 | 資料作成、ファイルを使った作業、開発 | Team:スタンダードシート月20ドル(年払い)・25ドル(月払い)、税抜。Enterprise:1シート月20ドル(年払い)+APIレートでの使用量 |
| Microsoft 365 Copilot | 業務アプリ組み込み型 | Word・Excel・PowerPoint・Outlook・Teams上の作業 | Copilot Business(アドオン):年払い月3,148円相当(税抜)。大企業向け:年払い月4,497円相当(税抜)。いずれも対象のMicrosoft 365ライセンスが別途必要 |
| Copilot Studio | ノーコード構築型 | 社内向け・社外向けエージェントの作成と公開 | 25,000 Copilotクレジットのパックが月29,985円(テナント全体・税抜)。従量課金制もあり |
| Gemini Enterprise | 汎用アシスタント型 | Google環境での業務 | Business:1ユーザー月3,700円(1か月)・年37,200円(1年)。Standard:月5,100円(1か月)・1年契約で月4,400円。Plus:月8,800円・1年契約で月7,300円(税の記載なし) |
| Salesforce Agentforce | 業務アプリ組み込み型 | Salesforce上の営業・顧客対応 | Salesforce FoundationでAgentforceを無料で開始。Flexクレジットは100,000クレジットあたり60,000円(事前購入・事前コミット・PayGo)。税の記載は未確認 |
| Manus | 自律実行型 | 調査・作業の自律実行 | Free 0ドル(1日300クレジット)、有料は月20ドルから、Teamは1シート月20ドル。年払いは17%割引(公式ヘルプの記載) |
| Dify | ノーコード構築型 | 自社用のAIアプリ・ワークフローの作成 | Sandbox無料(月200メッセージクレジット)、ワークスペース単位の年額で、Professional 年590ドル(メンバー3名まで)、Team 年1,590ドル(50名まで)、Enterpriseは要問い合わせ。Community Editionはオープンソースでセルフホスト可 |
| JAPAN AI AGENT | 法人向けサービス(国内) | 国内向けのAIエージェント(詳細は公式ページ参照) | Team:月2,980円×人数(1〜50名)。Enterprise(51名以上)は費用を問い合わせ。税の記載は未確認 |
※料金は2026年9月15日〜17日に各社の公式ページ・公式ヘルプで確認した金額です。表示通貨は閲覧する環境によって変わることがあり、ChatGPTの料金ページは米ドル表示と円表示の両方を確認しています。税の記載がないものは、税を足さずに表示どおり載せています。Manusの料金は公式ヘルプの記載です。プラン構成と価格は変更されるため、契約前に各社の公式ページで最新の内容をご確認ください。
ChatGPT:エージェントは提供終了し、ChatGPT Workとワークスペースエージェントへ
ChatGPTでエージェントを使う主な入口は、2026年9月17日時点で「ChatGPT Work」と「ワークスペースエージェント」の2つです。OpenAIの公式ヘルプ「ChatGPT エージェント」の冒頭には、ChatGPTエージェントは利用できなくなったこと、時間のかかる複数ステップのタスクや完成した成果物の作成にはChatGPT Workを使うことが案内されています。ChatGPT AgentやエージェントモードとしてChatGPTを紹介している比較記事を読む場合は、この移行を前提に読み替える必要があります。
ChatGPT Workは、トピックの調査、情報の分析、文書・スプレッドシート・プレゼンテーション・レポートの作成に使う機能と説明されています。対象アカウントに順次提供中で、まだ表示されない場合があります(2026年9月17日時点)。公式ヘルプでは、Workには Codex と同じ使用量の仕組みが適用されるとあり、使用量はタスクによって異なります。ワークスペースの管理者は「ワークスペース設定」の「権限とロール」で、クラウドで実行するWorkと、デスクトップアプリで手元のファイルを扱うWorkを分けて管理できます。
ワークスペースエージェントは、繰り返し行うタスクやワークフロー用のエージェントを社内で作る機能です。ChatGPT Businessのリリースノートでは、無料期間を2026年7月6日まで延長し、同日からクレジット制の料金体系を適用すると案内されており、席料金とは別に利用に応じた費用がかかる前提で考える必要があります。公式ヘルプでは、作成、公開前のテスト、モデルの選択、アプリやツールへの接続、チームやワークスペースとの共有、Slackでの使用、スケジュール実行、API経由での起動ができると説明されています。会社として押さえておきたい既定値は次の3つです。
- ChatGPT Enterpriseワークスペースでは、リリース時点でワークスペースエージェントは既定でオフで、管理者が対象ワークスペースで有効にできる
- アプリとコネクタの書き込みアクションは、既定でエージェント実行中に「常に確認」に設定されている
- アプリ接続の認証を「エージェント所有アカウント」にする場合は、可能な限りサービスアカウント(特定の個人ではなく業務用に作るアカウント)を使うよう案内されている
共有範囲は「自分だけに非公開」「リンクを知っている組織の全員」「組織のディレクトリに公開」から選べます。ChatGPT Businessの料金ページでは、ChatGPT Work、Codex、カスタムワークフロー向けのワークスペースエージェントが含まれる内容として挙げられ、対象は従業員数2〜200名のチームとされています。法人プランの料金の詳細はChatGPTの法人プランと料金で解説しています。
Claude:CoworkとClaude Code、コネクタを管理者が開く
Claudeでは、ファイルやアプリを使って作業を進めるCoworkと、開発向けのClaude Codeが、Pro以上の有料プランに含まれています。2026年9月16日の公式ブログと料金ページのお知らせでは、CoworkをClaude本体に統合し、ProとMaxから順次提供すると案内されています。同じブログでは、Claudeは既定でアクションを実行する前に確認すること、有料プランでベータ提供のClaude DocsやClaude SlidesなどはEnterpriseの管理者が有効にする時期を選べることも説明されています。
会社で使う場合に確認したいのは、コネクタ(Google DriveやSlackなど外部サービスとの接続)の扱いです。Claudeの公式ヘルプでは、TeamとEnterpriseのメンバーがコネクタを使う前にオーナーまたはプライマリオーナーが組織で有効にする必要があり、有効にしても自動的に誰かにアクセス権が付くわけではなく(ベータ版のエンタープライズ管理認証を除く)、各ユーザーが個別に認証すると説明されています。操作ごとに「常に許可」「承認が必要」「ブロック」を選べ、個別のユーザーはその設定を上書きできません。
料金の形はTeamとEnterpriseで異なります。Teamはシートに使用枠が含まれる形で、2〜150名向けです。Enterpriseは、1シート月20ドル(年払い)のシート料金に使用量が含まれず、Claude、Claude Code、Coworkでの使用がすべてAPIレートで別に請求されます。セルフサービスで申し込む場合の最低シート数は20、営業担当経由は50とヘルプに記載されています。
このEnterpriseの請求の仕組みについて、Anthropicの消費ガイド(英語)は、Claude CodeとCoworkは通常のチャットよりかなり速いペースでトークンを消費するとしたうえで、初日から全員にClaude CodeとCoworkを使える状態にすることが、想定外の消費を最も早く生む方法だという趣旨を書いています。支出の上限は組織・グループ・個人の単位で設定でき、個人の上限はグループの上限より常に優先され、組織全体の上限が最終的な天井になると説明されています。上限をグループや個人の単位で設定してから広げることが、提供元の案内に沿った進め方です。Enterpriseの詳細はClaude Enterpriseの料金と管理機能をご覧ください。
Microsoft 365 Copilot と Copilot Studio:使う側は席料金、作る側はクレジット
Microsoftのエージェントは、Microsoft 365アプリの中で使う部分と、Copilot Studioで作る部分で料金の形が分かれます。Microsoft 365 Copilotは1ユーザーあたりの席料金で、一般法人向けのCopilot Business(アドオン)は年払い月3,148円相当(税抜)です。公式ページでは、2026年7月1日から12月31日までの申込を対象に月2,698円相当の割引価格も表示されていますが、この価格は初年度のみの適用で、既存のMicrosoft 365のビジネスプラン利用者が対象と注記されています。購入には対象となるMicrosoft 365プランのライセンスが別途必要で、一般法人向けは最大300ユーザーまでです。なお、Microsoftの公式ドキュメントでは、Microsoft 365 Copilotの名前がMicrosoft Copilotになったと案内されており、移行期間中は旧名称も使われています。
対象のMicrosoft 365サブスクリプションを持つユーザーは、Copilot Chatを追加料金なしで使えます。ただし公式ページでは、Copilot Chatでのエージェントの使用は従量課金制で、エージェントを使用するにはAzureサブスクリプションが必要と案内されています。追加料金なしで使えるのはチャットが中心で、組織のデータを使うエージェントやカスタムのエージェントは従量課金になります。
Copilot Studioは、25,000 Copilotクレジットを含むパックが月29,985円(税抜)で、テナント全体のライセンスとして販売されています。ユーザー数による課金ではなく、エージェントが応答や操作をするたびにクレジットを消費する形です。公式のライセンスガイドでは、未使用のクレジットは翌月に繰り越せないと記載されています。また、公式ドキュメントでは、パックで購入した場合に消費が前払いの容量を超えて125%に達すると強制措置がとられ、カスタムエージェントが無効になると説明されています。進行中の会話は中断されませんが、以降の呼び出しは容量を増やすかリセットされるまで拒否されます。管理者はPower Platform管理センターで使用状況を監視し、従量課金制のクレジット上限を設定できます。Microsoft 365 Copilotのライセンスを持つ社員が社内向けのエージェントを使う場合は、公平な利用の範囲内でライセンスに含まれるとされています。料金の見積もり方はCopilot Studioの料金と使い方で詳しく解説しています。
Gemini Enterprise:Google Cloudの価格表で円価格を確認できる
Googleの法人向けのGemini Enterpriseは、Google Cloudの価格表(SKU一覧)で円価格を確認できます。2026年9月15日時点で、Business Editionは1ユーザー月3,700円(1か月の前払い)・年37,200円(1年の前払い)、Standardは月5,100円(1か月)・1年契約で月4,400円、Plusは月8,800円(1か月)・1年契約で月7,300円と表示されています。価格表には税の扱いの記載がありません。エージェントを作成・利用する機能の範囲はエディションによって異なる可能性があるため、契約前にGoogle Cloudの公式ドキュメントと販売窓口で、自社が使いたい機能がどのエディションに含まれるかを確認してください。
Salesforce Agentforce:CRMのデータの上で動かす
Salesforceの日本語の料金ページでは、Salesforce FoundationでAgentforceを無料で始められることと、Flexクレジットが100,000クレジットあたり60,000円であることが案内されています。購入方法は事前購入・事前コミット・PayGo(使った分の支払い)から選ぶ形です。顧客情報や商談情報がすでにSalesforceにある会社にとっては、Salesforce上のデータを使うエージェントを動かせる点が候補になる理由です。アドオン製品を含めた見積もりは、販売窓口で確認することをおすすめします。
Manus:個人でも始めやすいクレジット制の自律実行型
Manusは公式ヘルプで、無料プラン(1日300クレジット)と、月20ドルからの有料プラン、1シート月20ドルのTeamプランを案内しています。年払いにすると17%の割引です。クレジットは作業の量に応じて消費されるため、同じ月額でもこなせる作業量は依頼内容によって変わります。個人でも契約できる料金体系のため、会社として使う場合はTeamプランで契約をまとめ、社内のどのデータを渡してよいかを先に決めておく必要があります。
Dify:ワークスペース単位で料金が決まる構築基盤
Difyは、AIを使ったアプリやワークフローを画面上で組み立てる基盤です。公式の料金ページでは、無料のSandbox(月200メッセージクレジット)、Professional(ワークスペースあたり年590ドル)、Team(ワークスペースあたり年1,590ドル)、要問い合わせのEnterpriseが表示されています。メンバー数の上限は、Professionalが3名まで、Teamが50名までです。オープンソースのCommunity Editionを自社のサーバーで動かす選択肢もあります。料金はワークスペース単位の年額で、メンバー数の上限に合わせてプランを選ぶ形のため、コストの見通しを立てやすい一方、作る・直す・運用するための人手は社内か外部の支援会社に必要です。
JAPAN AI AGENT:人数×月額の国内サービス
JAPAN AI AGENTの公式料金ページでは、Teamプランが月2,980円×人数(1〜50名)、Enterpriseプラン(51名以上)は費用を問い合わせる形と表示されています。円建てで人数に比例する料金の形のため、国内サービスで予算を組みたい会社には試算しやすい料金体系です。税の記載と、各プランに含まれる機能の範囲は、公式ページと販売窓口でご確認ください。
料金体系と社員数別の年額試算
AIエージェントの費用は、1人あたりの月額だけでなく、テナントやワークスペース単位の料金と、使った分だけ増える使用量を足して見る必要があります。料金体系を4つに分けたうえで、社員10名と30名に配った場合の年額を試算します。
料金体系は4種類:1人あたり・テナント単位・ワークスペース単位・クレジット従量
| 料金体系 | 費用が増える要因 | 該当する例 | 予算化で注意すること |
|---|---|---|---|
| 1人あたりの月額(席料金) | 配る人数 | ChatGPT Business、Claude Team、Microsoft 365 Copilot、Gemini Enterprise、JAPAN AI AGENT Team | 全員に配るか一部に配るかで総額が大きく変わる。配られなかった社員が個人契約に流れやすい |
| テナント単位のパック | パックの数と消費量 | Copilot Studio | 未使用分は翌月に繰り越せない。パック購入では前払い容量の125%に達するとカスタムエージェントが無効になる。利用が伸びた月の扱いを先に決める |
| ワークスペース単位 | ワークスペースの数と、メンバー数の上限による上位プランへの移行 | Dify | 作る人・保守する人の人件費や外注費が別にかかる |
| 使用量(クレジット・APIレート) | エージェントの作業量 | Claude EnterpriseとClaude Code・Coworkの使用量、ChatGPT Work・ワークスペースエージェント・Codexの利用枠と追加クレジット、Agentforce Flexクレジット、Manusのクレジット | 月ごとに変動する。上限と通知を契約時に設定する |
多くのサービスは、この4つを組み合わせています。たとえばClaude Enterpriseは席料金と使用量、Microsoftは席料金とCopilot Studioのパック、ChatGPT Businessは席料金に加えて、ChatGPT WorkとCodexの利用枠を超える分の追加クレジットと、2026年7月6日からクレジット制になったワークスペースエージェントの利用分という構成です。比較表の1人あたり月額が同じように見えても、エージェントを使い込むほど使用量の部分で差が出ます。
社員10名・30名の年額の試算
公式ページに表示されている単価に、人数と12か月を掛けた席料金の年額です。使用量やクレジットの追加分、前提となるライセンス、初期費用、導入支援の費用は含みません。
| サービス(プラン) | 計算に使った単価 | 10名の年額 | 30名の年額 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT Business 標準シート(年払い) | 月3,050円(日本から表示した円価格・税の記載なし) | 366,000円 | 1,098,000円 |
| Microsoft 365 Copilot Business(アドオン・年払いの通常価格) | 月3,148円相当(税抜) | 377,760円 | 1,133,280円 |
| 同上(初年度の割引価格) | 月2,698円相当(税抜・2026年12月31日までの申込、初年度のみ) | 323,760円 | 971,280円 |
| Gemini Enterprise Business(1年) | 年37,200円(税の記載なし) | 372,000円 | 1,116,000円 |
| JAPAN AI AGENT Team | 月2,980円(税の記載は未確認) | 357,600円 | 1,072,800円 |
| Claude Team スタンダード(年払い) | 月20ドル(税抜) | 2,400ドル | 7,200ドル |
| Claude Enterprise(年払い) | 1シート月20ドル(税抜)+APIレートの使用量 | 対象外(セルフサービスは最低20シート) | 7,200ドル+使用量 |
| Copilot Studio(1パック) | 月29,985円/パック(税抜) | 359,820円(人数によらず。消費量が増えればパックの追加か従量課金) | |
| Dify Team | 年1,590ドル/ワークスペース(メンバー50名まで) | 1,590ドル | 1,590ドル |
※単価は2026年9月15日〜17日に各社の公式ページで確認した金額です。計算は単価×人数×12か月(年単位の価格は×人数)。税の記載がないものは税を足していません。Claude Teamは、1ドル=155円(2026年9月16日の参照レートを丸めた値)で計算した場合、税抜で10名372,000円・30名1,116,000円です。Anthropicの公式ヘルプでは、2026年4月1日から日本の消費税10%を別途課税すると案内されており、10%を足すと10名409,200円・30名1,227,600円になります。Microsoft 365 Copilot Businessは対象のMicrosoft 365プランのライセンスが別途必要です。
試算すると、1人あたりの席料金型は、10名で年約36万〜38万円、30名で年約107万〜113万円に並びます(Microsoftの初年度割引価格を除く)。税の扱いが揃っていないため、目安の幅です。差が出るのは、表に含めていない部分です。Microsoftは前提となるMicrosoft 365のライセンス、ClaudeのEnterpriseは使用量、Copilot Studioはクレジットの消費、Difyは作る人の工数が、それぞれ総額を左右します。見積もりを比べるときは、席料金に加えて「使用量の上限をいくらに置くか」「前提のライセンスはすでにあるか」「誰が作って保守するか」を同じ条件で並べてください。コスト管理の考え方は生成AIのコスト管理でも整理しています。
無料枠・無料プランで試すときの限界
無料で試せる範囲は、サービスによって「利用量の上限」「管理機能」「公開できる範囲」のどれが制限されるかが違います。Difyの無料Sandboxは月200メッセージクレジット、Manusの無料プランは1日300クレジットと、利用量で制限されます。Microsoft 365のCopilot Chatは追加料金なしですが、エージェントの使用は従量課金で、Azureサブスクリプションが必要です。
無料枠でわかるのは、画面の使い勝手と、エージェントがどの程度の精度で作業を進めるかまでです。社内のメールやファイルをつないだときの権限の効き方、ログの残り方、使用量が増えたときの請求は、契約した環境でしか確かめられません。また、無料枠を社員が個人アカウントで試すと、その時点で社内データが会社の管理の外に出ます。試すときは、公開情報やダミーのデータに限定するルールを先に決めておくことをおすすめします。
無料枠を社員が個人アカウントで試すと、入力した社内データは会社の管理の外に出ます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
AIエージェントの選び方|会社で確認する6つの基準
AIエージェントは、機能の多さより、自社の業務基盤と、任せてよい操作の範囲に合うかで選ぶと失敗しにくくなります。社員10〜200名の会社が確認したい基準を6つに絞ります。
選び方1:自律性と自動化のレベル(提案だけ/人の承認後に実行/自動実行)
最初に決めるのは、エージェントに「どこまで自分で進めさせるか」です。自律性のレベルは、提案や下書きまでにとどめる段階、人が承認してから実行する段階、決められた条件の範囲で自動実行する段階に分かれます。多くのサービスは段階を設定で選べるようになっており、ChatGPTのワークスペースエージェントは書き込みアクションを既定で「常に確認」、Claudeはアクションの前に既定で確認し、コネクタの操作ごとに「常に許可」「承認が必要」「ブロック」を選べます。比較のときは、自動実行ができるかどうかより、承認を求める設定を業務ごとに細かく決められるか、その設定を個々の社員が勝手に緩められないかを確認してください。
選び方2:既存システムとの連携(Microsoft 365・Google Workspace・Slack・MCP)
エージェントの価値は、つながるデータの範囲で決まります。ChatGPT Businessの料金ページではGoogle Workspace、Slack、GitHub、Microsoft 365などとの連携が挙げられ、ワークスペースエージェントではGoogle Calendar、Google Drive、Slack、SharePointなどのアプリと独自のカスタムMCPを追加できると案内されています。MCP(Model Context Protocol)は、AIと外部のツールやデータをつなぐための共通の接続方式です。Claudeも、MCPに対応するサービスへの接続やカスタムコネクタの追加ができると公式ヘルプで説明しています。
見るべきなのは、連携先の数よりも、自社で毎日使っているシステムに接続できるかと、接続したときに元のアクセス権がそのまま効くかです。全社員が見られるべきではないフォルダを、エージェント経由で見られるようになっていないかを、試行の段階で確認しておきます。
選び方3:セキュリティ(権限管理・ログ・データの扱い・保存場所)
セキュリティで比べるべきなのは、機能の有無の一覧ではなく、エージェントが動いたときに「誰の権限で」「何をして」「その記録がどこに残るか」を説明できるかです。確認したいのは次の4点です。
- 権限:エージェントが誰のアカウントで外部サービスにアクセスするか。ChatGPTのワークスペースエージェントは、実行するユーザー自身のアカウントか、エージェント所有のアカウントかを接続ごとに選び、後者はサービスアカウントの利用が推奨されている
- ログ:誰がどのエージェントをいつ動かし、何を実行したかを後から確認できるか
- データの扱い:入力や接続したデータが、提供元のモデルの学習に使われない設定になっているか。ChatGPT Businessの料金ページは既定でビジネスデータを学習に使用しないこと、Claudeの料金ページはTeamとEnterpriseで既定ではモデルの学習に使わないことを示している
- 保存場所:会話ログやエージェントの活動データがどの地域に保存されるか。Copilot Studioの公式ドキュメントは、日本のデータセンターを東日本(東京、埼玉)と西日本(大阪)とし、会話ログを含むエージェントの過去の活動データはユーザーのExchangeメールボックスがある地域に保存されると説明している
エージェント特有のリスクについては、アプリケーションのセキュリティに関する文書を公開しているOWASPが「Top 10 for Agentic Applications for 2026」を2025年12月9日に公開しています。社内でリスクを洗い出すときの参照先の一つになります。一般的な点検項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめています。
選び方4:料金体系と総コスト
料金は、前の章で整理した4つの料金体系のどれに当たるかを確かめ、席料金だけでなく使用量の上限まで含めて比べます。特にクレジットやAPIレートで使用量が増える形では、上限に達したときに止まるのか、自動で従量課金に切り替わって請求が増えるのかが、サービスによって違います。Copilot Studioの公式ライセンスガイドでは、事前購入したクレジットを使い切ると自動で従量課金に切り替わる買い方と、容量を超えると技術的措置がとられる買い方が区別されています。Claude Enterpriseのセルフサービスは、前払いのクレジットがなくなると組織全体の利用が止まると説明されています。止まる設計と請求が増える設計のどちらが自社の業務に合うかを、契約前に決めておきます。
選び方5:サポート体制と日本語での契約・請求
社員10〜200名の会社では、導入後に社内だけで設定を調べ続けるのは負担が大きいため、日本語の情報と、困ったときの窓口を確認します。OpenAIのヘルプの日本語版は機械翻訳であることがページ上に明記されており、細かい設定を確認するときは元の英語の記事も合わせて読むと安心です。Claude Enterpriseの公式ヘルプでは、セルフサービスの請求は米ドルのみ、請求書払いは営業担当経由のプランで対応と説明されています。AnthropicはClaudeの請求について、適格請求書発行事業者として登録済みであることも公式ヘルプで案内しています。
今回の8サービスのうち、公式ページで円建ての料金を確認できたのは、Microsoft、Google Cloud(Gemini Enterprise)、Salesforce、JAPAN AI AGENT、日本から表示したChatGPTです。経理処理のしやすさや、国内の導入支援会社を使えるかどうかも、選定の実務では判断材料になります。
選び方6:目的・業務基盤別の選び方
最後に、目的と業務基盤から候補を絞ります。完成品をそのまま使うのか、自社用に作るのかで、選ぶ種類が変わります。
| 自社の状況 | 最初に見る候補 | 理由 |
|---|---|---|
| Microsoft 365が業務の中心 | Microsoft 365 Copilot、Copilot Studio | メール・文書・会議のデータと権限をそのまま使える |
| Google Workspaceが業務の中心 | Gemini Enterprise | Google環境で使え、Google Cloudの価格表で円価格を確認できる |
| 顧客情報がSalesforceにある | Salesforce Agentforce | Salesforce上のデータを使うエージェントを動かせる |
| 資料作成や調査を幅広く任せたい | ChatGPT Business、Claude Team | 日常のチャットと同じ画面から長い作業を依頼できる |
| 問い合わせ対応など決まった流れを作り込みたい | Copilot Studio、Dify | 手順を固定したエージェントを作って社内外に公開できる |
| 定型の転記や通知だけを自動化したい | 既存のワークフロー自動化で足りないかを先に確認 | 判断が要らない作業は、エージェントより決まった手順の自動化のほうが挙動が安定しやすい |
どの候補を選ぶ場合も、エージェントはつながったデータの範囲でしか働きません。社内のデータが複数の基盤に分かれている会社では、1つの基盤のエージェントに寄せる前に、社員が日常の業務でどのAIをどう使っているかを把握しておくほうが、判断を誤りにくくなります。
人の承認と停止手段|送信・削除の前に止める設計
エージェントを会社で使うときは、社外への送信、データの削除、支払いに関わる操作の前に、人が承認する工程と、いつでも止められる手段を先に設計しておくことが前提です。各社の既定値はおおむね安全側に設定されていますが、既定値のままで運用が回るとは限りません。
各社の既定値:書き込みは確認、コネクタは管理者が開く
| サービス | 公式ヘルプ・ドキュメントに書かれている既定値や仕組み |
|---|---|
| ChatGPT ワークスペースエージェント | Enterpriseではリリース時点で既定オフ、管理者が有効化。書き込みアクションは既定で「常に確認」。アプリによっては「確認しない」やカスタムの承認設定に変更できる |
| ChatGPT Work | 管理者が「権限とロール」でクラウド実行と手元のファイルを扱う実行を分けて管理。重要なアクションは承認できる。デスクトップアプリで手元のファイルを使うのはユーザーの許可を得た場合 |
| Claude | 既定でアクションの前に確認。TeamとEnterpriseのコネクタはオーナーが有効化し、操作ごとに「常に許可」「承認が必要」「ブロック」を設定、個別ユーザーは上書き不可 |
| Copilot Studio | 管理者がテナントで生成AI機能を使うエージェントの発行をオフにできる。クレジットの上限を設定でき、パック購入では前払い容量の125%で強制措置 |
ChatGPTのワークスペースエージェントには、書き込みの承認に加えて「コネクタアクション制約」という仕組みもあります。公式ヘルプでは、メールの送信先を特定のドメインに限る、特定のGoogleドキュメントだけを読み取らせる、といった制約の例が挙げられています。ただし同じヘルプは、この制約はエージェントがコネクタに依頼できる操作を管理するもので、コネクタが応答として返すデータをフィルタリングしたり制限したりするものではない、と但し書きを付けています。制約をかけたから読まれないとは限らないため、そもそも接続する範囲を絞ることが基本になります。
エージェントに渡す権限を段階で決める
権限は、業務ごとに一度に決めるのではなく、段階を上げていく形で渡すと事故を防ぎやすくなります。次の表は、社内で権限の段階を決めるときのたたき台です。
| 段階 | エージェントに任せること | 渡す権限 | 人の関与 | 業務の例 |
|---|---|---|---|---|
| 段階0:下書き | 文章・表・要約の作成 | なし(人が渡した情報だけを使う) | 人が内容を確認して使う | 議事録の要約、見積書の比較表づくり |
| 段階1:読み取り | 社内文書やメールの検索と要約 | 必要なフォルダ・受信箱に限った読み取り | 出力を人が確認する | 社内規程への問い合わせの回答案 |
| 段階2:作成まで | 下書きメールやファイルの作成 | 作成は可、送信・共有・削除は不可 | 送信や共有は人が行う | 請求書と入金の突合結果の一覧化 |
| 段階3:承認後に実行 | 送信・登録・更新 | 書き込み権限(毎回確認) | 実行前に人が承認する | 取引先への定型連絡の送信 |
| 段階4:条件つき自動実行 | 定型の登録や社内通知 | 送信先や対象を制約した書き込み | 事後にログで確認する | 社内チャンネルへの定期レポート投稿 |
社外への送信、データの削除、支払いや契約に関わる操作は、段階4に置かず段階3までにとどめることをおすすめします。また、段階を上げる条件(例:段階2で1か月運用して誤りの件数を確認する)を先に決めておくと、現場の要望だけで権限が広がることを防げます。エージェントを止める手段として、実行中のタスクを止める操作の場所、エージェントの公開を取り下げる手順、接続したアプリの認証を取り消す手順を、管理者と利用者の両方が知っている状態にしておきます。
公式ヘルプが挙げる安全な使い方
提供が終わった「ChatGPT エージェント」のOpenAI公式ヘルプに残る注意として、エージェントを使うときのベストプラクティスに、現在のタスクに必要なアプリだけを有効にすること、メールを確認してすべて処理して、のような曖昧で自由度の高いプロンプトを避けること、不審な点がある場合はすぐにタスクを停止することが挙げられています。ワークスペースエージェントのヘルプでも、エージェントに必要な範囲にのみアクセスを制限すること、リスクを理解していない限り個人アカウントを使わないことが推奨されています。
これらは社員向けの利用ルールにそのまま入れられる内容です。社内ガイドラインにエージェントの項目を足すときは、任せてよい業務の段階、接続してよいアプリ、承認が必要な操作、止め方の4点を書いておくと、現場が迷いにくくなります。ルール文書の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で解説しています。
エージェントの前に、日常で使うAIを会社で揃える
AIエージェントを入れる前に整えるべきなのは、社員が毎日使うチャット型AIの契約と設定を、会社として揃えることです。エージェントは、日常のAI利用の延長で使われるため、日常のAIが個人任せのままだと、エージェントも個人任せで広がります。
個人アカウントのエージェントに社内データをつなぐリスク
自律実行型や汎用アシスタント型のエージェントには、個人向けの料金プランで契約して使い始められるものがあります。Manusは無料プランを、ChatGPTは個人向けのPlusでWorkを、ClaudeはPro以上でCoworkを提供しています。社員が業務の効率化のために、個人で契約したエージェントに会社のメールやクラウドのフォルダをつなぐと、会社からは次のことが見えなくなります。
- どのデータにエージェントがアクセスできる状態になっているか
- 入力や接続したデータが提供元の学習に使われない設定になっているか
- エージェントが何を送信・更新したか
- その社員が退職・異動したときに、接続が解除されるか
会社が把握していないAIの利用は、野良AI(シャドーAI)と呼ばれます。チャット型AIの野良利用では、入力した情報の扱いが主な問題でしたが、エージェントでは、接続したアカウントの権限で操作まで実行されうる点で影響が広がります。社内で使われているAIの把握と対策の考え方は野良AI(シャドーAI)とはをご覧ください。
学習させない設定・ログ管理・社員への配布・複数AIの使い分け
日常のAIを会社で揃えるときに押さえる点は、エージェントを選ぶときの基準と同じです。先に日常のAIで整えておけば、エージェントを追加するときに同じ管理の型を当てはめられます。
- 学習させない設定:入力したデータを提供元のモデルの学習に使わない設定を、社員ごとの操作に任せず会社側で一律にする。個人向けプランでは本人の設定次第になるため、設定の確認方法はChatGPTに学習させない方法も参考になります
- ログ管理:誰が・いつ・どのAIを使ったかを会社側で確認できるようにしておく。エージェントの導入後に「何を実行したか」を追えるかどうかは、日常のAIのログが取れているかどうかの延長にあります
- 社員への配布:一部の社員にだけ配ると、配られなかった社員が個人アカウントで使い始める経路が残ります。1人あたりの席料金型では、全員に配ったときの総額を先に試算しておく
- 複数AIの使い分け:調査に強いAI、長文の読み込みに強いAI、オフィス文書と連携しやすいAIなど、得意分野は分かれています。1つのサービスのエージェントに全業務を寄せる前に、複数のAIを会社の管理下で使い分けられる状態にしておくと、選定をやり直す負担が減ります
複数のAIを1つの環境でまとめて使う方法はマルチAIとは、業務ごとの割り当て方は主要4AIの違いと使い分けで解説しています。法人向け生成AIサービスの料金を横並びで比べたい場合は法人向け生成AIサービスの比較をご覧ください。
順序の目安:①日常のAIを会社で契約し、学習させない設定とログを揃える → ②社員全員が使える状態にし、利用ルールを定着させる → ③業務を1つ選び、段階0〜2の権限でエージェントを試す → ④承認と停止の手順を確かめてから段階3以上に広げる。①と②がないまま③から始めると、エージェントの利用だけが会社の管理の外で先に広がりやすくなります。
導入の進め方と注意点、導入前チェックリスト
エージェントの導入は、目的を1つに絞って小さく試し、効果とリスクを測ってから段階的に広げる進め方が基本です。社員10〜200名の会社では、専任の担当者を置けないことも多いため、手順を短く区切っておくと止まりにくくなります。
導入の4ステップ:目的の明確化→小規模で試行→効果測定→段階展開
- 目的の明確化:任せたい業務を1つ選び、現状の作業時間、手順、使っているデータ、誤りが起きたときの影響を書き出します。「業務を効率化する」ではなく「月末の請求書と入金の突合にかかる時間を減らす」のように、測れる形にします
- 小規模で試行:2〜5名程度の担当者で、段階0〜2の権限から始めます。つなぐデータは試行に必要な範囲に限り、Claude EnterpriseやCopilot Studioのように使用量で費用が増えるサービスでは、支出やクレジットの上限を最初に設定します
- 効果測定:作業時間の変化に加えて、エージェントの誤りの件数、人が手直しした時間、使用量と費用を記録します。誤りの手直しに時間がかかって、元の作業時間とほとんど変わらないこともあるため、差し引きで判断します
- 段階展開:効果が確認できた業務から、対象者と権限の段階を広げます。広げるたびに、承認の設定、停止の手順、ログの確認方法を利用者に周知します
導入時の注意点:機密情報・誤動作・過度な依存
機密情報:エージェントに接続したデータは、依頼した作業以外の場面でも参照される可能性があります。個人情報、取引先の機密、人事情報を含むフォルダは、試行の段階では接続しないことをおすすめします。ワークスペースエージェントのヘルプが但し書きしているとおり、操作の制約は返ってくるデータの制限にはならない点にも注意が必要です。
誤動作:エージェントは、読み込んだWebページやメールに含まれる指示に引きずられることがあります(プロンプトインジェクション)。社外から届くメールや、外部のWebページを読ませる業務では、書き込みの承認を外さないようにします。
過度な依存:エージェントが作った成果物を確認せずに使う状態が続くと、誤りに気づく人がいなくなります。誰が最終確認をするかを業務ごとに決め、確認した記録を残す運用にしておくと、担当者が替わっても品質を保ちやすくなります。
導入前チェックリスト
- 社員が日常で使うAIを、会社の契約で揃えているか個人アカウントでの利用が残っていると、エージェントも個人契約で広がります。まず日常のAIの契約と配布の範囲を確認します。
- 入力や接続したデータを学習に使わない設定が、全員に適用されているか社員ごとの設定に任せていないか、法人プランの既定値がどうなっているかを確認します。
- 任せる業務を1つに絞り、権限の段階を決めたか段階0〜4のどこから始め、どの条件で段階を上げるかを文書にしておきます。
- 社外送信・削除・支払いの前に、人が承認する設定になっているか既定値が「常に確認」でも、作成者が変更できる場合があります。変更できる人を管理者に限れるかを確かめます。
- 外部サービスとの接続に、個人ではなく業務用のアカウントを使うかエージェント所有の接続には、可能な限りサービスアカウントを使うよう公式ヘルプでも案内されています。
- 使用量やクレジットの上限と、上限に達したときの動きを確認したか止まるのか、従量課金に切り替わるのかはサービスと買い方によって違います。
- エージェントを止める手順を、管理者と利用者が知っているか実行中のタスクの停止、公開の取り下げ、接続の解除の3つを確認します。
- 誰が・いつ・どのエージェントを動かしたかを後から確認できるか記録の見方と、確認する担当者を決めておきます。
エージェントの前に、社員が毎日使うAIを会社で揃える
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準適用し、管理画面ではUPGEAR AI上の「誰が・いつ・どのAIを・どう使ったか」を一覧でき、使わせるAIも会社が選べます。UPGEAR AIの料金は月額30,000円(税抜)からで、ユーザーごとの課金はありません(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
AIエージェントはどこがいいですか?
ChatGPTとAIエージェントの違いは何ですか?
ChatGPTエージェント(エージェントモード)は今も使えますか?
AIエージェントは無料で使えますか?
社員10〜30名の会社でもAIエージェントを導入すべきですか?
AIエージェントに社内のメールやファイルをつないでも大丈夫ですか?
まとめ
AIエージェントは、目標を受け取って手順を組み、ツールを使って実行まで進めるAIです。答えるだけのチャット型と違い、誤りがそのまま送信や更新になりうるため、会社で比べるときは機能の多さより、種類、料金体系、承認と停止の設計を確認することが要点になります。
種類は、汎用アシスタント型(ChatGPT Work・ワークスペースエージェント、Claude、Gemini Enterprise)、業務アプリ組み込み型(Microsoft 365 Copilot、Salesforce Agentforce)、ノーコード構築型(Copilot Studio、Dify)、自律実行型(Manus)に分けると整理しやすくなります。ChatGPTエージェントは2026年9月17日時点の公式ヘルプで提供終了とされ、ChatGPT Workに移っています。
料金は、1人あたりの席料金型なら社員10名で年約36万〜38万円、30名で年約107万〜113万円に並びますが、実際の差は使用量、前提のライセンス、作る人の工数で生まれます。Claude Enterpriseでは初日から全員にClaude CodeとCoworkを配ると想定外の消費が起きやすいと公式が注意しており、Copilot Studioはパック購入では前払い容量の125%でカスタムエージェントが無効になります。上限と止まり方を契約前に確認してください。
そして、エージェントを選ぶ前に、社員が日常で使うAIを会社で揃えることが先です。学習させない設定、ログ、全員への配布、複数AIの使い分けが整っていれば、エージェントを追加するときも同じ管理の型で広げられます。法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。
