Azure OpenAIの使い方。申し込みから社員が社内チャットで使えるまでの手順

Azure OpenAIの使い方とは、Azureの契約の中でOpenAIのモデルを自社用に配置し、社員が使える画面と権限を整えるまでの一連の作業のことです。申し込んでから社内チャットで使えるまでに要るのは、サブスクリプションの用意、リソースの作成、モデルのデプロイ、チャット画面の用意、社員への権限付与、使いすぎの歯止めの6つになります。このうち、モデルをデプロイして試すところまでは画面の操作だけで進められます。一方で社員向けのチャット画面は、新しいFoundryでそのまま使える公式の完成品が見当たらず、自社で作るか、サンプルを元に作り込むことになります。

始める前に:Azure OpenAIとChatGPT・OpenAI APIの違い

Azure OpenAIは、OpenAIと同じモデルを、MicrosoftのクラウドであるAzureの上でAPI経由で使うサービスになります。ChatGPTのように、ログインすればすぐに社員が話しかけられる画面が付いてくるわけではありません。モデルを呼び出す窓口はAzureが用意し、社員が触るチャット画面と、誰に使わせるかの権限は自社で整える形です。

OpenAIが直接提供するAPIとの関係では、MicrosoftとOpenAIが共同でAPIを開発して互換性を保っており、Azure側ではVNETやプライベートエンドポイントといったAzureのセキュリティ機能を使えます。

定義やChatGPTとの違い、料金の全体像はAzure OpenAIとは何か・ChatGPTとの違いと料金にまとめています。ここでは、その先の「申し込んでから社員が使えるまで」の作業だけを順に追っていきましょう。

現在の製品ページでは、名称は「Azure OpenAI in Foundry Models」と表記されています。本文では、通称のAzure OpenAIで呼びます。

申し込みから社員が使えるまでの工程表

社員が社内チャットで使えるまでには、契約・構築・権限・費用管理の4種類の作業が順に出てきます。Azureの画面だけで進めやすいのはモデルを試すところまでで、そこから先は情シスか開発会社の出番となります。下の表は、工程ごとに誰が手を動かし、どの権限が要るかを並べたものです。

工程主な作業担当の目安使う権限(Azureの役割など)
1. サブスクリプションの用意無料アカウントか従量課金で契約し、支払い方法を決める総務・経理と情シス(契約の手続き)
2. リソースの作成地域・名前・価格レベル・ネットワークを決めて作る情シスCognitive Services 寄稿者(リソース作成・キー参照・デプロイ作成)
3. モデルのデプロイモデル・デプロイ名・デプロイの種類・TPMを決める情シスCognitive Services OpenAI 共同作成者(デプロイの作成・編集)
4. プレイグラウンドで試すシステムメッセージを入れて答え方を確かめる情シスサブスクリプションの所有者とプロジェクトのFoundry ユーザー(クラシックのクイックスタート)
5. チャット画面の用意Webアプリ・サンプルの作り込み・Teamsへのエージェント発行から選ぶ情シスか開発会社WebアプリのマネージドIDにCognitive Services OpenAI ユーザー
6. 社員の権限サインインの設定と、使える社員の絞り込み情シスEntraのセキュリティグループ、App Serviceの認証
7. 使いすぎ対策予算の通知、TPM、API Managementでの月の上限情シスと経理Cognitive Services 使用状況閲覧者(クォータの確認)
8. 運用モデルの更新や機能の廃止に合わせた手直し情シスか開発会社Cognitive Services OpenAI 共同作成者

※役割の名前と範囲は、2026年10月6日時点でMicrosoftの公式ドキュメント(learn.microsoft.com)の日本語版で確認したものです。日本語版の多くは機械翻訳です。担当の目安は、社員10〜200名の会社を想定した一例です。

表の権限名は、Azureの「ロールベースのアクセス制御(RBAC)」で使う役割の名前になります。RBACとは、人やアプリごとに、できる操作を役割として割り当てる仕組みのことです。全員に強い権限を配らないよう、工程ごとに必要な役割だけを渡していきましょう。チャット画面を経由して使う形なら、社員一人ひとりにAzureの役割を配る必要はありません。

2023年ごろの解説と今の手順の違い(申請フォームとFoundry)

Azure OpenAIの使い方を調べると、事前に利用申請のフォームを出して承認を待つ手順や、Azure OpenAI Studioという画面名が出てくる解説がまだ多く見つかります。その多くは2023年ごろに書かれたもので、今の公式ドキュメントとは手順が変わっています。

項目以前の解説に多い書き方2026年10月6日時点の公式ドキュメント
利用申請事前に申請フォームを出し、承認されてから使う一般的なモデルは不要。限定アクセスのモデルや、コンテンツフィルター・不正使用監視の変更を求める場合だけ登録フォームが要る
操作する画面Azure OpenAI StudioMicrosoft Foundryのポータル。クラシックと新しいポータルが併存
サービスの名前Azure OpenAI Service製品ページの表記はAzure OpenAI in Foundry Models
社内データを読ませる機能On Your Dataで社内文書を読ませる2026年10月14日に廃止。移行先はFoundry Agent ServiceとFoundry IQ
社内チャットの公開「Webアプリとしてデプロイ」で公開するハブベースのプロジェクト向けのレガシー手順で、新しいFoundryプロジェクトでは機能しない。元のGitHubサンプルは2026年9月24日にアーカイブ

※右の列は、2026年10月6日時点でMicrosoftの公式ドキュメント(learn.microsoft.com・azure.microsoft.com)とGitHubの公式リポジトリで確認した内容です。

今も利用申請のフォームは要るのか

一般的なモデルを使うだけなら、今は利用申請のフォームは要りません。Microsoftの限定アクセスの説明ページでは、登録フォームが要るのは限定アクセス(Limited Access)に指定されたモデルを使う場合と、コンテンツフィルターや不正使用監視の変更を求める場合だけとされています。限定アクセスのモデルの例には、computer-use-previewなどがあります。フィルターや監視の変更を申請できるのは、Microsoftのアカウントチームが担当する顧客か、対象のプログラムに入っている顧客に限られます。社内チャットで一般的なモデルを使う範囲なら、申請を待たずに始めることが出来ます。

Azure AI StudioからMicrosoft Foundryへ:名前と画面の変化

操作の場の名前も変わっています。公式ドキュメントでは、Azure AI StudioとAzure AI Foundryは「Microsoft Foundry」に名前が改められました。そのMicrosoft Foundryのポータルにも、従来の「Foundry(クラシック)ポータル」と「新しいFoundryポータル」の2つが併存しています。同じポータル(ai.azure.com)の「New Foundry」のトグルで切り替える作りで、オフがクラシック、オンが新しいポータルになります。

公式のハウツー記事には「この記事は、新しい Foundry ポータルでは使用できません」と注記された手順もあり、読んでいる手順がどちら向けかを最初に確かめてください。このあとの手順では、両方の画面での名前を並べて書いていきます。なお、Microsoftは「新しい投資は、新しいポータルの Foundry プロジェクトに重点を置きます」としており、これから始める会社は新しいポータルを基準に考えるのが無難でしょう。

社員向けのチャット画面は自社で用意する

Azure OpenAIを社内に広げるときにつまずきやすいのが、社員が使うチャット画面の用意です。モデルをデプロイしただけでは、使えるのはAzureの権限を持つ担当者のプレイグラウンドと、APIを呼び出すプログラムだけになります。社員がブラウザで開いて話しかける画面は、今のところ次の3つの道から選ぶ形です。

道1:「Webアプリとしてデプロイ」はレガシーの手順

クラシックのポータルには、チャットのWebアプリを公開する「Webアプリとしてデプロイ」という手順が残っています。入力するのは名前・サブスクリプション・リソースグループ・場所・価格プランと、「Web アプリでチャット履歴を有効にする」のチェックです。ただし公式ドキュメントには「この記事では、ハブ ベースのプロジェクトのレガシ サポートを提供します」と書かれ、新しいFoundryプロジェクトでは機能しないと明記されています。

公開するとサブスクリプションにApp Serviceができ、選んだ価格プランによっては費用が発生します。チャット履歴をオンにするとCosmos DBも作られ、使った保存容量に追加料金がかかります。Webアプリを削除してもCosmos DBは自動では消えないため、片付けの手順も決めておきましょう。さらにMicrosoftは、このWebアプリとソースコードは「そのまま」サンプルとして提供するもので、カスタマイズと実装の責任は利用者にあると説明しています。

道2:GitHubのサンプルを元に作り込む

Webアプリの元になったGitHubのサンプル(microsoft/sample-app-aoai-chatGPT)は、2026年9月24日にアーカイブされ、今は読み取り専用です。同じREADMEには、社内データを読ませる機能「On Your Data」を2026年10月14日に廃止する告知も載っています。On Your Dataの移行先として案内されているのは、Foundry Agent ServiceとFoundry IQになります。

社内文書を検索して答えるサンプルにはAzure-Samples/azure-search-openai-demoもありますが、READMEでは追加のセキュリティ機能を入れずに本番環境へ組み込まないよう強く勧めています。サポートの窓口はGitHubのIssuesになります。

道3:Teamsにエージェントとして出す

新しいFoundryでは、作ったエージェントをMicrosoft 365 CopilotとTeamsに発行する機能が一般提供されています。発行するとAzure Bot Serviceのリソースが自動で作られ、公開範囲は「あなただけ」か「組織内のユーザー」から選べます。組織内に広げる場合は、Microsoft 365 管理センターで管理者の承認が要ります。発行した後はMicrosoft 365とTeamsの側でもデータが処理・保存されるため、データの保管場所の要件を先に確かめるよう公式ドキュメントも注意を促しています。これはモデルとそのまま話すチャット画面ではなく、エージェントを発行する機能という点にご注意ください。

社内での使い道:問い合わせ対応・文書検索・要約

どの道を選ぶかは、社内で何に使いたいかで決まってきます。メールの下書きや議事録の要約が中心なら、モデルとただ話せるチャット画面があれば足ります。社内規程やマニュアルを読ませて社員の問い合わせに答えさせたい場合は、Azure AI Searchのような文書検索の仕組みを組み合わせる構成となります。Teamsの中で決まった業務をこなさせたい場合は、エージェントとして発行する道3が候補になるでしょう。

いずれの道でも、画面の作り込みと、モデルの更新や機能の廃止に合わせた手直しは、自社の仕事として残ってしまいます。

画面づくりと保守を自社で抱えずに始めるなら

チャット画面の開発や機能の廃止への追随を抱えたくない場合は、使う環境を会社で1つ用意する方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

手順1:Azureのサブスクリプションを用意する

最初に要るのは、Azureのサブスクリプションです。サブスクリプションとは、Azureの利用料をまとめて請求する契約の単位のことになります。リソース作成の公式手順でも、前提条件にはAzureのサブスクリプションだけが挙げられています。

無料アカウントで始める場合

新規の顧客向けには、30日間使える200米ドル分のクレジットが付いた無料アカウントがあります。このほか、20以上の人気サービスが12か月間無料、65以上のサービスが常に無料と案内されています。登録には電話番号、クレジットカードかデビットカード(プリペイドは不可)、MicrosoftかGitHubのアカウントが要ります。本人確認のため1ドルの請求が一時的に表示され、あとで取り消される仕組みです。30日を過ぎた後やクレジットを使い切った後は、従量課金のサブスクリプションで使うことになります。無料アカウントのクレジットでどこまで試せるかは、申し込む前に公式の案内で確かめてみてください。

請求書払いにしたい場合の条件

会社の経理でカード払いが難しい場合は、請求書による電信送金への切り替えを申し込めます。対象はMicrosoft 顧客契約(MCA)か、Webから登録した従量課金(MOSP)の契約です。条件は「6 か月間以上の固定的なお客様であり、未払いの残高がないこと」と、サブスクリプションの費用が地域ごとに決まった金額を超えていることの2つになります。MOSPの場合はサポートに申請し、会社の書類を添え、必要に応じて与信の審査を受ける流れです。電信送金に切り替えた後は、クレジットカード払いには戻せません。Webから申し込んだ場合は条件を満たすまで、少なくとも最初の半年はカード払いになると考えて準備しておきましょう。Microsoftの営業担当を通して契約した場合は、最初から電信送金が既定となります。

手順2:リソースを作成する(Azure portalと新しいFoundryポータル)

サブスクリプションができたら、モデルを置く入れ物となるリソースを作ります。作り方は、Azure portalでAzure OpenAIのリソースを作るクラシックの方法と、新しいFoundryポータルでプロジェクトと一緒に作る方法の2通りです。

Azure portalで作る(クラシック)

  1. 「リソースの作成」でAzure OpenAIを検索し、作成に進みます。
  2. Basicsの画面で、サブスクリプション・リソースグループ・地域・名前・価格レベルを入れます。
  3. ネットワークの設定で、接続を受け付ける範囲を3つから選びます。
  4. タグを付け、「確認と送信」で内容を見直してから作成します。

地域について公式ドキュメントは、場所が違うと待ち時間が生じる可能性はあるものの、実行時の可用性には影響しないと説明しています。価格レベルは、現在はStandardの1つしか選べません。ネットワークは「インターネットを含むすべてのネットワーク」が既定で、ほかに「選択したネットワーク」と、プライベートエンドポイントだけで接続する「無効」があります。社内からだけ使わせたい場合の考え方は、後半のデータの扱いの節で触れます。

新しいFoundryポータルで作る

新しいポータルでは、ai.azure.comで「New Foundry」をオンにして新しいプロジェクトを作ると、Foundryリソースが一緒にできます。リソースグループと場所は、詳細オプションで指定する形です。Foundryリソースは、公式の説明では「Azure OpenAI リソースの種類と比較して機能のスーパーセットを提供します」とされ、Azure OpenAIの機能を含んだ上位版にあたります。すでにAzure OpenAIリソースを持っている場合も引き続き使え、Foundryへの切り替えは任意になります。切り替えてもエンドポイント・キー・リソース名はそのままで、元に戻すことも出来ます。

手順3:モデルをデプロイしてクォータ(TPM)を決める

リソースを作っただけでは、まだモデルは使えません。モデルを選んで自分のリソースに配置する「デプロイ」をして、初めて呼び出せるようになります。

クラシックのポータルでの操作

New Foundryをオフにした画面で「+ モデルのデプロイ」から「ベース モデルをデプロイ」を選び、モデルを選んで確認に進みます。そこで決めるのが、デプロイ名、デプロイの種類(Standard・Global-Standard・Global-Batch・Provisioned-Managed)、詳細設定のコンテンツフィルターとTPMの4つです。デプロイ名はプログラムからモデルを呼び出すときに使う名前なので、公式ドキュメントも慎重に選ぶよう注意しています。

新しいFoundryポータルでの操作

新しいポータルでは「検出」から「モデル」を開き、gpt-5-miniなどを検索して「配置」から「既定の設定」を選びます。できあがったデプロイ名は、チャット画面を作るときに使うので控えておきましょう。

クォータ(TPM)は流量の上限で、月の金額の上限ではない

クォータとは使える量の割り当てのことで、Azure OpenAIでは1分あたりのトークン数(TPM)で決まります。トークンは、AIが文章を細かく区切って数える単位のことです。割り当ては、リージョンごと・モデルごと・デプロイの種類ごとに、サブスクリプションに対して付きます。デプロイに割り当てたTPMがそのまま流量の上限となり、超えた要求は429というエラーで返されます。TPMは1分あたりの流量の上限で、月の利用料の上限ではありません。公式ドキュメントにも、クォータを使って課金を管理するのはAzureのベストプラクティスではないと書かれています。

初期のクォータは使用量に応じた階層(Free TierとTier 1〜6)で決まり、使うほど自動で引き上げられます。一例として、Tier 1ではgpt-5-miniのGlobal Standardが1分あたり1,000リクエスト・1,000,000 TPMと示されていますが、値は変わる可能性があると明記されています。足りない場合は「クォータ引き上げ要求フォーム」から申請できますが、今の割り当てを積極的に使っている顧客が優先され、条件を満たさない要求は断られることもあります。

手順4:プレイグラウンドで試す

デプロイができたら、社員に出す前に担当者がプレイグラウンドで動きを確かめます。プレイグラウンドは、Foundryのポータルの中にある試し打ち用のチャット画面のことです。クラシックのポータルでは、次の流れで進めることになります。

  1. モデルを選び、「このモデルを使用」を選びます。
  2. デプロイ名と種類を選んで「接続してデプロイ」を押します。
  3. 「プレイグラウンドで開く」を選びます。
  4. 「システム メッセージ」に指示を入れ、「変更の適用」を押します。
  5. チャット欄に質問を入れて、答えを確かめてみてください。

新しいポータルでは、「ビルド」から「モデル」を開き、モデルを選ぶとプレイグラウンドが開きます。クラシックのクイックスタートでは、必要な役割としてサブスクリプションの所有者とプロジェクトのFoundry ユーザーが挙げられています。システムメッセージには社内向けの答え方の指示を入れ、指示の有無で答えがどう変わるかを見てみましょう。社員がよく聞きそうな質問を10個ほど試すと、後でチャット画面を作るときの指示文の下書きにもなります。

手順5:アプリから呼び出す(エンドポイントとAPIキー、Microsoft Entra ID)

チャット画面や社内システムからモデルを呼ぶときは、リソースのエンドポイント(接続先のURL)と、認証の方法を決めます。認証の方法は、APIキーを使う方法と、Microsoftのアカウント管理の仕組みであるMicrosoft Entra IDを使う方法の2つです。公式のクイックスタートでは、Entra IDの方が推奨とされています。

APIキーは知っていれば誰でも呼び出せる合言葉のようなものなので、キーが漏れると社外から使われてしまいます。Entra IDの方式なら、誰が呼び出してよいかを役割で決められ、キーそのものを配らずに済みます。Cognitive Services OpenAI ユーザーの役割では、Entra IDで推論は出来てもキーは見られません。具体的なコードは、開発を担当する方に公式のクイックスタートを見てもらうのが確実でしょう。Azure OpenAIリソースのエンドポイントとキーは、Foundryリソースへ切り替えた後もそのまま使うことが出来ます。

手順6:社員の権限を分ける(RBACとEntraのグループ)

社員が使うときの権限は、Azureを操作する担当者の権限と、チャット画面を使う社員の権限に分けて考えます。担当者に渡すAzureの役割は、主に次の4つです。

  • Cognitive Services OpenAI ユーザーは、デプロイ済みのモデルをプレイグラウンドやEntra IDで使えますが、キーの表示やデプロイの作成は出来ません。
  • Cognitive Services OpenAI 共同作成者は、それに加えてデプロイの作成と編集も出来ます。
  • Cognitive Services 寄稿者(Contributor)は、リソースの作成・キーの参照・デプロイの作成が出来ますが、Entra IDでの推論は出来ません。
  • Cognitive Services 使用状況閲覧者は、サブスクリプション単位でクォータを見られる役割になります。

新しいFoundryのプロジェクトでは、使う人の役割は「Foundry User」(旧名 Azure AI ユーザー)になります。クイックスタートには、この役割を個人ではなくEntraのセキュリティグループに割り当てる手順が載っています。役割は個人ではなくグループに渡し、入社や退職はグループの出入りだけで済ませましょう。

社員はAzureの権限なしで、チャット画面から使う

Webアプリ経由で使う形では、モデルを呼び出すのはWebアプリのマネージドIDで、そこにCognitive Services OpenAI ユーザーを割り当てます。マネージドIDとは、人ではなくアプリに与えるAzure上のIDのことです。社員一人ひとりにAzureの役割を配る必要はなく、社員はEntra IDでサインインしてチャット画面を開くだけになります。サインインの部分は、App Serviceの認証機能を使うとコードをほとんど書かずに用意出来ます。

ただしこの機能が既定で受け持つのは認証(本人確認)だけで、承認(使ってよいかの判断)は含まれません。Microsoft Entra IDでサインインさせる場合、既定ではテナント内のどのユーザーでもトークンを要求できるため、特定の社員に絞るにはEntra側で設定が要ります。一方、Webアプリとしてデプロイした版では、IDプロバイダーが既定でアクセスをAzureテナントのメンバーに制限すると説明されています。設定を変えてから反映されるまでには約10分かかるので、試すときは少し待ってから確かめてください。

手順7:使いすぎを止める設定(予算・TPM・API Management)

従量課金で使う以上、費用の歯止めは社員に開放する前に決めておきたい項目です。ここで知っておきたいのは、Azureの予算機能では利用が止まらない点になります。

予算アラートは通知だけで、利用は止まらない

Cost Managementの予算を作ると、しきい値を超えたときに通知が届きます。しきい値は最大5つ、メールの宛先も最大5つまで設定でき、実績と予測の両方を対象に出来ます。公式ドキュメントには、予算を超えてもリソースは影響を受けず、消費は止まらないと明記されています。費用のデータが反映されるのは通常8〜24時間後で、予算の評価も24時間ごとになります。

新しく作ったサブスクリプションでは、予算を作れるようになるまで最大48時間かかることもあります。アクショングループを使えば通知をきっかけに自動処理を動かせますが、止める仕組みは追加の開発で自分で作る必要が出てきます。Microsoftの公式ドキュメントは、本家OpenAIにあるようなハードリミットはAzure OpenAIには今のところないと説明しています。

月の上限を掛けるならAPI Managementのllm-token-limit

月の使用量で止めたい場合は、Azure API Managementを間に挟み、llm-token-limitというポリシーで制限する方法があります。このポリシーは、キーごとに1分あたりのトークン数と、時間・日・週・月・年ごとのクォータのどちらか、または両方で使用量を制限出来ます。1分あたりの上限を超えると429、期間のクォータを超えると403のエラーが返り、そこで利用が止まる仕組みになります。対象はAPI ManagementのDeveloper・Basic・Basic v2・Standard・Standard v2・Premium・Premium v2の各階層で、同時に届いた要求で一時的に上限を超える場合があると注意書きがあります。API Managementの構築も含めて、どこまで作り込むかを開発の担当者と相談してみてください。

課金の細かい点では、処理が行われた場合はコンテンツフィルターで400エラーになった要求も課金され、401と429のエラーは課金されません。

費用の目安:30人で使うと月いくらか(従量課金・PTU)

Azure OpenAIの料金は、使ったトークンの量に応じて払う従量課金が基本です。料金は、100万トークンあたりの単価で示されます。

従量課金・PTU・Batchの3つの払い方

料金ページでは、入力と出力のトークンに応じた従量課金(Standard)、処理能力を時間単位の料金か月・年単位の予約で確保するProvisioned(PTU)、24時間以内に結果を返す代わりに安くなるBatchの3つが示されています。PTUは使っても使わなくても1時間ごとに料金がかかるため、社員数十人のチャット用途なら従量課金から始めるのが自然でしょう。デプロイの種類でも単価が変わり、公式のFAQでは安い順にグローバル、データゾーン(最大10%高い)、リージョン(グローバルより10〜25%高い)と説明されています。

30人で使う月の費用の試算

ここでは、1人が月に入力100万トークン・出力20万トークンをGPT-5 mini(Global)で使うと仮定して計算してみます。2026年10月3日にAzure Retail Prices API(東日本リージョン)で取得した単価では、入力は100万トークンあたり39.3875円、出力は315.1円でした。1人あたりは入力39.39円と出力63.02円で約102円となり、30人で月に約3,072円になります。

チャット画面を置くApp Service(Linux B1)が月に約2,185円、社内文書の検索を組み合わせる構成ならAzure AI Search(Basic)が月に約15,296円かかります。3つを合わせると、30人で月に約20,553円(約2万円)という計算になります。モデルの利用料そのものより、検索とサーバーの固定費の方が大きくなる点も覚えておきましょう。

※単価はAzure Retail Prices APIの東日本リージョンの見積もり値で、税の扱いの記載はありません。契約の種類や為替で変わります。サーバー2つは730時間(1か月)で計算しています。トークン量は計算のための仮定で、実際の使い方で大きく変わります。開発・保守の人件費と、チャット履歴に使うCosmos DBの保存料は含みません。

料金の細かい単価やPTUの考え方は、Azure OpenAIの料金で詳しく扱っています。Microsoft Copilotのアドオンと比べたい場合は、Azure OpenAIとCopilotの違いも参考にしてみてください。

データは学習に使われるか:セキュリティと社外からの接続

Azure OpenAIに入力した内容は、許可や指示なしにモデルの学習に使われることはないと公式に説明されています。データの扱いのページによると、プロンプトや出力は他の顧客から見えず、OpenAIなど他のモデル提供者にも渡されません。モデル自体はステートレス(入力を覚えない作り)で、プロンプトや出力がモデルに格納されない仕組みです。Azureのモデルが、ChatGPTやOpenAI APIなどOpenAIの運営するサービスとやり取りすることもないと書かれています。

例外は不正使用の監視で、人による確認が要る場合に限り、データが顧客のリソースと同じ地理的な区域にある専用の保存場所に残ります。この監視を変える申請は承認制で、Microsoftのアカウントチームが担当する顧客か、対象のプログラムの顧客に限られます。申請の条件や手順はAzure OpenAIのオプトアウトにまとめています。

社内からだけ使わせる(閉域)

リソースは、作った直後はすべてのネットワークからの接続を受け付ける状態です。社内からだけ使わせたい場合は、プライベートエンドポイントを作り、Private Linkを通じてMicrosoftのバックボーン経由で接続します。会社のネットワークとAzureをつなぐには、Azure VPN GatewayかExpressRouteのプライベートピアリングが必要になります。Private Linkは別料金のため、費用の試算に足しておく必要があります。

処理する場所も、デプロイの種類で選べます。Globalは任意のリージョン、Data Zoneは米国・EU・アジア太平洋のいずれかの区域内、StandardとRegional Provisionedは指定したリージョン内で処理される仕組みです。取引先に処理の場所を説明する必要がある会社は、デプロイの種類を選ぶ段階で決めておくとよいでしょう。

自社で構築・運用するか、既製の法人向けサービスを使うか

ここまでの工程を自社で持つかどうかは、作る手間より、作った後の運用を誰が続けるかで判断するのが現実的です。Azure OpenAIのモデルには寿命があり、一般提供のモデルは提供開始から12か月で新規の顧客は使えなくなり、18か月で終了します。終了の通知は少なくとも60日前に届き、Standard系のデプロイは後継が示されていれば自動でアップグレードされますが、Provisionedはされません。モデルが替わるたびに、作ったチャット画面の動作確認が必要となってしまいます。On Your Dataの廃止のように、使っていた機能そのものが終わる場合は作り直しも出てきます。廃止の時期と対応はAzure OpenAIのモデル廃止で詳しくまとめています。

判断の材料として、自社で構築する場合と既製の法人向けサービスを使う場合に要る作業を並べてみましょう。

  • 自社で構築するなら、チャット画面の開発、Entraのグループと役割の設計、API Managementなどでの使いすぎ対策、モデルの更新に合わせた手直しを、自社か開発会社が受け持つことになります。
  • 既製の法人向けサービスなら、契約と社員の招待が中心になり、画面やモデルの更新は提供元が受け持つ形が多くなります。
  • どちらを選んでも、社内のルールづくりと、何を入力してよいかの教育は自社に残ってしまいます。

既製のサービスを比べるときは、上限に達したら止まるか、管理者が利用ログや権限を見られるか、請求書で払えるかを確かめてみてください。Azureで社内チャットを作り込む余力がある会社なら自社構築、総務・情シスを少人数で回している会社なら既製のサービスを使う方が、運用の負担は軽くなるでしょう。社員の個人契約に頼らず、会社として安全に使える環境を1つ決めることが、社内でAIを広げる最初の一歩となります。確認しておきたい項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストで整理しています。

画面も使いすぎの歯止めも、最初から揃った環境で

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で使える法人向けサービスです。社内文書RAGと、利用ログ・権限・モデルON/OFFを扱う管理者ダッシュボードを備え、基盤はAWSの日本リージョンで稼働します。上限に近づくと、管理者宛に複数回メールでお知らせします。上限に達した時点で利用を停止する安全設計のため、知らないうちに超過して追加の請求が発生することはありません。お支払いはクレジットカード払いと、請求書による銀行振込(法人のみ)に対応しています。月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

Azure OpenAIを使うのに、今も利用申請は必要ですか?
一般的なモデルを使うだけなら、利用申請のフォームは要りません。登録フォームが必要になるのは、限定アクセスに指定されたモデル(computer-use-previewなど)を使う場合と、コンテンツフィルターや不正使用監視の変更を求める場合です。2023年ごろの解説には事前の申請を前提にしたものがありますが、2026年10月6日時点の公式ドキュメントでは手順が変わっています。
Azure OpenAI Studioはどこへ行ったのですか?
現在の公式ドキュメントでは、モデルのデプロイやプレイグラウンドの操作はMicrosoft Foundryのポータル(ai.azure.com)で案内されています。Azure AI StudioとAzure AI FoundryはMicrosoft Foundryに名前が改められ、ポータルには「Foundry(クラシック)」と「新しいFoundry」の2つの画面が併存しています。2つは「New Foundry」のトグルで切り替えられます。
Azure OpenAIは無料で試せますか?
Azureの無料アカウントには、新規の顧客向けに30日間使える200米ドル分のクレジットが付きます。登録には電話番号、クレジットカードかデビットカード(プリペイドは不可)、MicrosoftかGitHubのアカウントが必要です。30日を過ぎた後やクレジットを使い切った後は、従量課金のサブスクリプションで使うことになります。クレジットでAzure OpenAIのモデルがどこまで使えるかは、申し込む前に公式の案内で確かめてください。
社員全員にAzureの権限を渡す必要がありますか?
Webアプリなどのチャット画面を経由して使う形なら、社員一人ひとりにAzureの役割を渡す必要はありません。モデルを呼び出すWebアプリのマネージドIDにCognitive Services OpenAI ユーザーの役割を割り当て、社員はEntra IDでサインインして使います。担当者側の役割は、個人ではなくEntraのセキュリティグループに割り当てると、入社や退職の管理が楽になります。
予算を設定すれば、上限で自動的に止まりますか?
止まりません。Cost Managementの予算はしきい値を超えたときに通知するだけで、リソースは影響を受けず、消費も続きます。費用の反映も通常8〜24時間後です。月の使用量で止めたい場合は、API Managementのllm-token-limitポリシーで期間ごとのクォータを掛ける方法があります。

まとめ

Azure OpenAIを申し込んでから社員が社内チャットで使えるまでには、サブスクリプションの用意、リソースの作成、モデルのデプロイ、チャット画面の用意、権限の設定、使いすぎ対策が要ります。モデルを試すところまではポータルの操作で進みますが、チャット画面は新しいFoundryでそのまま使える公式の完成品が見当たらず、Webアプリのデプロイはレガシーの手順で、元のサンプルもアーカイブ済みです。予算の機能は通知だけで止まらないため、月の上限を掛けるにはAPI Managementなどの作り込みが必要になります。作った後もモデルの更新や機能の廃止への対応が続くので、自社で運用を続けられるかを先に見積もってみてください。

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