RPAとAIの違い。止まり方と費用で比べる使い分け

RPAとAIの違いとは、決めた手順どおりに操作を繰り返す仕組みか、データや文章を読んで判断や作成を行う仕組みかの違いです。定型の転記や登録はRPA、手順が毎回変わる判断や文章づくりはAIに任せ、両者をつないで使うのが現実的な形になります。最近は画面操作まで自分で進めるAIエージェントも出てきましたが、今あるRPAをすぐに置き換える必要はありません。止まり方・費用の決まり方・人が確かめる位置の違いを押さえてから、業務ごとに使い分けを決めましょう。

RPAとAIの違い|RPAは手、AIは頭

RPAとAIの違いをひとことで言うと、RPAは決められた操作をこなす手、AIは情報を読み取って考える頭にあたります。RPAは教えた手順を正確に速く繰り返しますが、手順にないことは判断出来ません。AIは書式の違う書類や文章を読み、分類や予測、文章の作成まで行うことが出来ます。一方でAIは、読んだ結果を業務システムに登録する手段を、それだけでは持っていない場合が多いでしょう。

RPAとは:決めた手順どおりに画面を操作するソフトウェアロボット

RPA(Robotic Process Automation)とは、人がパソコンで行っている定型の操作を、ソフトウェアのロボットに代わりに行わせる仕組みです。総務省の情報通信統計データベースに掲載された解説では、RPAを「人間が行ってきた定型的なパソコン操作をソフトウエアのロボットにより自動化するもの」と説明しています。表計算ソフトから数字をコピーして基幹システムに入力する、毎朝決まったサイトから情報を集める、といった操作を記録や設定で覚えさせて動かします。同じ解説では、帳簿入力や伝票作成、経費チェック、SFA(営業支援システム)へのデータ入力などが適用業務の例に挙がっています。

AIとは:データから学び、認識・予測・判断する技術

AI(人工知能)とは、大量のデータから規則性を学び、画像や文字の認識、数値の予測、分類や判断を行う技術の総称です。手書きの請求書から金額を読み取るAI-OCR、問い合わせに答えるチャットボット、需要を予測する仕組みなど、用途ごとに多くの種類があります。近年広く使われるようになった生成AIは、指示に応じて文章・要約・画像などを作り出すAIを指します。ChatGPTやClaude、Geminiが代表例で、会議メモの要約や返信の下書きのように、これまで人が頭を使っていた読む・書く作業を支えてくれます。

RPAとAIを項目別に比べる

RPAとAIの違いを、導入の検討でよく話題になる項目ごとに並べると次のようになります。

  • 目的:RPAは決まった操作の代行、AIは読み取り・予測・判断・文章の作成
  • 学習:RPAは教えた手順を変えずに繰り返し、AIはデータから学んだ傾向で答えを出す
  • 得意な入力:RPAは形式のそろったデータ、AIは書式の違う書類や文章などの形の決まっていないデータ
  • 事前の準備:RPAは手順の洗い出しとシナリオ(ロボットに動かさせる手順書)の作成、AIは読ませるデータと、出力を確かめる手順の用意
  • 結果のぶれ:RPAは同じ入力なら同じ結果、AIは同じ入力でも答えが少し変わることがある
  • 導入のしやすさ:RPAは手順が決まっていれば小さく始めやすく、生成AIは契約してすぐ使えるが、入力してよい情報のルールづくりが要る

並べてみるとRPAが見劣りする項目もありますが、同じ入力なら同じ結果になる点は、経理や給与のように間違いの許されない業務ではむしろ長所です。AIの答えが少し変わる性質は、文章の作成では強みになり、数字の転記では弱みとなってしまいます。

RPAとAIの種類

RPAにもAIにも種類があり、どれを指して話しているかで社内の議論がかみ合わなくなることがあります。

RPAの種類:デスクトップ型・サーバー型・クラウド型

RPAは動かす場所によって、大きく3つの型に分けて説明されることが多いものです。デスクトップ型は担当者のパソコンの中で動き、1人の定型作業を手元で自動化するのに向いています。サーバー型は社内のサーバーで複数のロボットをまとめて動かし、部署をまたぐ大量の処理や一元管理に向く形です。クラウド型は提供会社の環境で動き、ブラウザで使う業務システムとの組み合わせで使われます。Microsoftの料金ページでは、人が立ち会って動かすアテンド型と、人がいなくても動く非アテンド型を分けてライセンスを販売しており、この区別も型と同じくらい費用に影響します。

RPAの自動化レベル:総務省のクラス1〜3

総務省の同じ解説で、RPAの自動化レベルとして整理されているのが次の3段階です。

  • クラス1 RPA(Robotic Process Automation):情報の取得や入力、検証といった定型業務の自動化
  • クラス2 EPA(Enhanced Process Automation):AIの技術と組み合わせた一部の非定型業務の自動化。自然言語や画像の解析、形の決まっていないデータの読み取りを含む
  • クラス3 CA(Cognitive Automation):プロセスの分析や改善、意思決定までを自ら行う高度な自律化

解説によると、現在のRPAの多くはクラス1にあたり、その都度考えて判断が必要な作業は難しいとされています。いま話題のAIエージェントは、クラス2やクラス3で描かれていた姿に近づく技術と見ることも出来るでしょう。ただし、分類が作られた当時と今では技術の中身が違うため、クラス分けは考え方の目安として使うのが無難です。

AIの種類:特化型と汎用型

AIは、出来ることの幅によって特化型と汎用型に分けて説明されます。特化型AI(ANI)は、画像認識や音声認識、需要予測のように1つの仕事に絞って力を発揮するもので、業務で使われているAIの多くがこちらに入ります。汎用型AI(AGI)は、人のようにさまざまな仕事をこなせるAIを指し、さらに人の知能を超える超知能(ASI)という考え方も語られています。生成AIは文章・要約・翻訳と幅広くこなしますが、一般には汎用型AIが実現したとは見なされていません。RPAと組み合わせる相手として現実に検討するのは、AI-OCRのような特化型AIと、ChatGPTのような生成AIの2つと考えてよいでしょう。

RPAが向く業務・向かない業務と、止まる理由

RPAが力を発揮するのは、手順が毎回同じで、入力の形がそろっていて、使う画面があまり変わらない業務です。

RPAが向く業務・向かない業務

向いているのは、毎月の売上データを基幹システムから出力して集計表に貼る作業や、決まった項目を別のシステムへ転記する作業のように、判断が入らない繰り返しの仕事になります。回数が多いほど効果が大きくなり、担当者が休んでも同じ手順で処理が進むのも利点でしょう。反対に、向かないのは次のような業務です。

  • 書類の書式が取引先ごとに違い、読む場所が毎回変わる
  • メールの本文を読んで、内容に応じて対応を変える必要がある
  • 例外が多く、担当者の判断で処理を分けている
  • 年に数回しか発生せず、ロボットを作る手間が見合わない
  • 使う画面やシステムの更新が頻繁にある

このうち前の3つは、AIを前段に足すことで自動化の範囲に入る可能性があります。後の2つは、RPAでもAIでもなく、手作業のままにするか、システムの見直しで対応するほうが合う場合が多いでしょう。

RPAが止まる理由:画面の変更・システムの更新・想定外の入力

RPAは画面上のボタンや入力欄の位置・名前を手がかりに動くため、画面が変わると操作する場所を見失って止まります。よくあるきっかけは、業務システムの更新でボタンの配置が変わった、ログイン画面に確認の手順が増えた、取り込むファイルの列が1つ増えた、といった変化です。想定していない値が入力に混じったときも、シナリオに分岐がなければエラーで止まってしまいます。止まったロボットを直すには、シナリオを作った人か、中身を読める担当者が必要になり、この保守の手間がRPAの見えにくい費用となります。作った担当者の異動や退職で誰も直せないロボットが残ることが、RPAで起こりやすい失敗の1つです。

API連携との違い:APIがあればRPAより安定する

API(アプリケーション同士がデータをやり取りするための窓口)があるシステムなら、画面を操作するRPAより、APIでつなぐほうが安定します。APIは画面の見た目が変わっても影響を受けにくく、処理も速いのが利点になります。RPAは、APIが用意されていない古いシステムや、外部のWebサイトのように画面からしか操作できない相手をつなぐ手段として考えるのが基本です。ノーコードの連携ツールとRPAの使い分けはAI業務自動化の進め方でも紹介しているので、あわせて確認してみてください。

RPAとChatGPTの違い|読んで書くAIと、決めた操作をするロボット

RPAとChatGPTの違いは、ChatGPTが文章を読んで答えや下書きを返すのに対し、RPAは決められた画面操作を実行する点にあります。

ChatGPTは答えを返し、RPAは操作する

ChatGPTのようなチャット型の生成AIは、貼り付けた請求書の文面から取引先名と金額を抜き出したり、取引先へのお詫びメールを下書きしたりするのが得意です。ただし、ふだんの会話で使う限り、その結果を会計ソフトに入力したりメールを送信したりはせず、答えを返したところで止まります。RPAはその逆で、会計ソフトへの入力は正確にこなせますが、請求書の文面の意味は理解していません。両者は競い合う道具というより、読む・書くを受け持つ役と、入力・登録を受け持つ役として並べて考えると整理しやすくなります。

ChatGPTのWorkのように、操作まで進めるAIも出てきた

最近は、チャット型の生成AIにも、複数の手順を自分で進めるエージェントの機能が加わりました。OpenAIのヘルプ(2026年9月27日確認)では、ChatGPTの対象の有料プランにChatとWorkがあり、Workを時間のかかる複数ステップの作業を進め、成果物を完成させるためのエージェントと説明しています。同じヘルプには、Workに接続済みアプリの使用やブラウザーの使用を依頼できることと、承認が必要なアクションは画面で承認か拒否を選ぶ仕組みについての記載もあります。ワークスペースの管理者が、権限とロールの設定でWorkへのアクセスを管理できる点も、会社で使ううえで押さえておきたい部分になります。こうした機能を使えば、ブラウザー上の操作をAIが自分で選んで進めることも出来るため、RPAとの境目は以前より近づいてきました。

AI単体の限界と注意点

AIだけで業務を完結させようとすると、いくつかの壁に当たります。まず、チャット型の生成AIは判断や下書きは出せても、業務システムに登録する手段を標準では持たず、最後の入力は人かRPAが担うことになります。次に、AIの精度は読ませるデータの量と質に左右され、社内の書式や用語に慣れていないと読み違いが出てしまいます。生成AIには、事実と違う内容をもっともらしく出力するハルシネーションもあり、数字や固有名詞はとくに確かめが欠かせません。AIの出力をそのままシステムに流さず、人が確かめる場所を1つは残してください。

RPA・生成AI・AIエージェントを同じ業務で比べる判断表

同じ業務を3つの仕組みに任せたときの違いを見ると、どこにどれを使うかが決めやすくなります。ここでは、RPAがすでに使われていることの多いバックオフィスの3つの業務を例に、入力の揺れ、手順が毎回同じか、止まり方、人が確かめる位置、費用の決まり方で比べてみます。生成AIとAIエージェントの違いそのものはAIエージェントと生成AIの違いで詳しく扱っているので、ここではRPAとの比較に絞ります。

業務・比べる軸RPAチャット型の生成AIAIエージェント
月次の売上データの集計と転記(基幹システムから出力し、集計表にまとめて会計ソフトへ入力)向いている。出力の形が毎月同じなら、最後まで人の手を介さずに回せる集計結果の説明文や、前月との差の要因メモを下書きする役手順が固定なので、エージェントにする意味は小さい
勤怠の締めと給与ソフトへの取り込み打刻データの出力と取り込みは向いている。打刻漏れや申請漏れの判断は出来ない打刻漏れを本人に確かめる文面や、就業規則に照らした論点の整理漏れを探して本人に確認を送り、回答を待って直す流れを任せられる可能性がある。給与に直結するため確定前に人の承認が要る
取引先マスタの登録(新規取引先の申込書から、会計・販売システムへ登録)申込書の形式が1つなら向いている。取引先ごとに書式が違うと止まる書式の違う申込書から項目を抜き出し、登録用の表にそろえる複数のサイトを見て項目を埋める作業まで進められる。誤登録は後の請求に響くため、登録前に人が確かめる
入力の揺れ揺れに弱い。形がそろっていることが前提揺れに強い。書式の違いを読み分けられる揺れに強い。足りない情報を自分で探しに行く
止まり方画面や入力が変わるとエラーで止まる答えを返して止まる。誤りは出力の中に残る止まらずに別の操作を選んで進むことがある
人が確かめる位置例外の処理と、エラーが出たときの対応出力を業務に使う前登録・送信・削除の実行前の承認と、実行後の記録
費用の決まり方利用者数・ボット数で決まる固定費が中心利用者ごとの月額が中心動かした量で変わる部分が大きい

3つの業務に共通するのは、RPAが手順の決まった部分、生成AIが揺れのある読み書き、エージェントが複数の手順をまたぐ確認や問い合わせを受け持つという分担です。月次の売上集計のように手順がほぼ固定の業務では、エージェントを使っても結果はRPAと変わらず、費用と確かめる手間だけが増えてしまいます。OpenAIが公開している手引き「A practical guide to building agents」でも、エージェントを作る前に使い道が条件に当てはまるかを確かめ、当てはまらなければ決まった手順で動く仕組みで足りる場合がある、と述べています。手順が毎回同じ業務は、新しいAIより今のRPAのほうが安く確実に回ることが多いでしょう。

失敗の仕方の違い|RPAは止まり、エージェントは止まらずに間違える

RPAとAIエージェントの違いが業務で大きく表れるのは、うまくいかなかったときの振る舞いです。

RPAは止まるので気づける

RPAは想定外の画面に出会うとエラーで止まり、処理はそこで途切れます。止まったこと自体は通知やログで分かるため、担当者が気づいて手作業に切り替えれば、誤ったデータが先へ流れることは少なくて済みます。困るのは、止まったことに誰も気づかない運用や、夜間に止まって翌朝まで処理が遅れるケースでしょう。

エージェントは止まらずに別の操作を選ぶ

AIエージェントは、目的に向かって自分で手順を組み立てるため、想定と違う画面に出会っても止まらずに別の操作を選んで進むことがあります。うまく回り込めれば便利な反面、間違った取引先を選んだまま登録を終えるなど、誤りが表に出ないまま処理が完了してしまう場合もあり得ます。総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)別添も、AIエージェントは自律的な動作の中で人間の意図しない商品の注文やファイル削除等の動作を行う可能性がある、と指摘しています。AIが同じ基準で運用されていても、確率的な性質から場面によって異なる判断を下すことがある点も、同じ別添に記された注意点の1つです。

止まる失敗は気づけますが、止まらない失敗は、後で請求や給与の数字が合わないと分かるまで見つからないことがあります。エージェントに任せる業務では、誤りが起きたときにどこで気づけるかを先に設計する必要が出てきます。

エラー時の運用を確かめるチェックリスト

RPAでもエージェントでも、本番で動かす前に次の点を決めておきましょう。

  • 止まったときの通知先エラーや承認待ちの通知が、誰のメールやチャットに届くか。担当者が不在のときの代わりも決めておく
  • 手作業に戻す手順ロボットやエージェントを止めた後、同じ処理を人が手で続けられる手順書があるか
  • 途中まで進んだ処理の扱い登録が途中で止まったとき、どこまで済んだかを確かめる方法があるか
  • 実行の前に人が承認する操作登録・送信・削除・支払いのように取り消しにくい操作の前で、人の承認を挟むか
  • 操作の記録いつ、どのアカウントで、何を操作したかの記録が残り、後から追えるか
  • 直せる人が2人以上いるかシナリオや指示の中身を読める担当者が、作った人のほかにもいるか

権限とログの違い:決めた画面だけか、渡した権限の範囲か

RPAはロボット用のアカウントで、シナリオに書いた画面と操作だけを繰り返します。これに対してエージェントは、渡されたアカウントと接続先の範囲の中で、どの操作をするかを自分で選びます。Webアプリケーションの安全性に取り組む国際的なコミュニティのOWASPは、生成AIアプリの主なリスクをまとめた資料(OWASP Top 10 for LLM Applications 2025)で、過剰な機能・過剰な権限・過剰な自律を、AIに意図しない操作をさせてしまう原因に挙げています。同じ資料が勧める対策は、影響の大きい操作の前に人の承認を求めることと、接続先のシステムの側で権限を確かめることです。エージェントに業務システムをつなぐときは、読むだけの接続から始め、登録や送信の権限は承認の仕組みと記録がそろってから広げてみてください。エージェントのセキュリティ対策の全体像はAIエージェントのセキュリティでまとめています。

操作を任せる前に、毎日使うAIの管理から

エージェントに権限を渡す前に、社員が毎日使う生成AIの設定と記録を会社でそろえる方法があります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

RPAとAIを組み合わせるメリットと例

RPAとAIは、どちらかを選ぶより、得意な工程を分けて組み合わせると自動化できる範囲が広がります。

組み合わせるメリット:AIが読んで判断し、RPAが登録する

組み合わせの基本は、AIが書類や文章を読んで必要な項目と判断の材料をそろえ、RPAがそれを業務システムに入力する分担です。RPAだけでは扱えなかった書式のばらつきをAIが吸収し、AIだけでは届かなかったシステムへの登録をRPAが受け持つ形になります。どの工程を誰に任せるかを業務ごとに表にする方法は、AI業務自動化の進め方で詳しく紹介しています。

RPA×AI-OCR:紙やPDFの書類を読み取って登録する

AI-OCRは、紙やPDFの書類の文字を読み取り、データに変える技術です。取引先ごとに書式が違う請求書や申込書から、日付・金額・取引先名などを取り出し、RPAが会計システムや基幹システムへ登録する流れが代表的な使い方になります。読み取りに自信のない項目だけを人の確認に回す設定にすれば、確認の手間を全件から一部に絞れます。

RPA×対話型AI・チャットボット:受け付けた内容を登録する

チャットボットや対話型のAIが社員や顧客からの問い合わせを受け付け、住所変更や備品の申請のように手続きが決まった依頼は、RPAがそのままシステムに登録する組み合わせもあります。受付はAIが時間を問わず受け持ち、登録はRPAが正確にこなすため、担当者は例外の対応に集中出来ます。

RPA×生成AI:要約・文面の作成・フローの下書き

生成AIは、RPAが集めてきた情報を要約したり、集計結果をもとに報告文や案内の文面を作ったりする役に向いています。RPAが毎朝集めた取引先の更新情報や業界のニュースを生成AIが要約し、担当者に届けるといった使い方が考えられます。RPAのフローそのものを、自然な言葉の指示から下書きする機能を持つ製品も出てきました。下書きされたフローも、本番で動かす前に、担当者が手順と接続先を1つずつ確かめるようにしましょう。

RPA×AI画像認識:製造ラインの不具合検知

製造の現場では、カメラの画像からAIが傷や形の異常を見つけ、RPAが検査結果を記録して担当者に知らせる、という組み合わせも紹介されています。AIが見つけた異常の候補を人が確かめ、確定した結果をRPAが品質管理のシステムへ残す流れにすると、記録の手間と見落としの両方を減らせます。

部門別の例:経理・人事・カスタマーサポート

部門ごとに見ると、組み合わせの形は次のように描けます。

  • 経理:届いた請求書をAI-OCRで読み取り、RPAが会計ソフトに仕訳の候補を登録し、担当者が承認する
  • 人事:応募書類の要点を生成AIがまとめ、面接日程の候補をRPAが予定表から拾い、案内の下書きを生成AIが作る
  • カスタマーサポート:問い合わせメールを生成AIが内容で振り分け、定型の手続きはRPAが処理し、個別の回答は担当者が下書きを直して送る

どの部門でも、最後の承認や社外への送信は人が行う形にしておくのが無難です。

今あるRPAを残す・AIで補う・APIに移す・置き換える

すでにRPAを使っている会社では、新しいAIを入れるかどうかより先に、手元のロボットを1本ずつ仕分けるところから始めると判断を誤りにくくなります。仕分けは、ロボットの一覧を作り、1本ごとに次の順で問いを当てていきます。

  1. 画面が安定していて、例外が少なく、この半年ほとんど止まっていないか。当てはまれば、そのまま残す
  2. 止まる原因が、紙やPDFの書式のばらつきや、メール本文の読み取りにあるか。当てはまれば、前段にAI-OCRや生成AIを足して補う
  3. 操作している相手のシステムに、APIや公式の連携機能があるか。あれば、画面操作をやめてAPI連携に移す
  4. 手順そのものが毎回変わり、問い合わせや確認のやり取りを重ねて進める業務か。当てはまる場合に限り、AIエージェントへの置き換えを検討する
  5. ほとんど使われていない、または業務そのものが変わったか。当てはまれば、止めて手作業か別の方法に戻す

この順に並べているのは、変える範囲が小さく、費用と確かめる手間が少ないものから試すためです。仕分けの結果、置き換えの候補が1本もなければ、それも立派な結論になります。

仕分けの際には、ロボットごとに、直近の半年で止まった回数、例外として人が処理した件数、作った人と直せる人の名前を書き添えておきましょう。止まった回数と直せる人の数が、残すか手放すかを決める大事な材料になります。止まる回数が多いのに直せる人が1人しかいないロボットは、補うか移すかを優先して検討してみてください。

費用の決まり方の違い|ボット単位の固定費と、使った分の変動費

RPAの費用は利用者数やボット数で決まる固定費が中心で、AIエージェントの費用は動かした量で変わる変動費の割合が大きくなります。

Power Automateの公式料金で見るRPAの固定費

Microsoftの自動化サービスPower Automateの料金ページ(2026年9月27日確認)では、有料プランが次のように表示されています。いずれも年払いの月額相当で、消費税は含まれていません。

  • Power Automate Premium:1ユーザーあたり月2,248円相当。クラウドフローと、人が立ち会って動かすアテンド型のデスクトップフロー(RPA)を含む
  • Power Automate Process:1ボットあたり月22,488円相当。人がいなくても動く非アテンド型のデスクトップフロー(RPA)
  • Power Automate Hosted Process:1ボットあたり月32,233円相当。Microsoftが管理する仮想マシンで、非アテンド型の自動化を動かす

会社の出費に直すと、経理担当者3名が自分のパソコンでアテンド型のフローを使う場合は、Premiumが3つで月6,744円になります。夜間に無人で1本のロボットを動かすならProcessが1つ加わり、合計は月29,232円、年間では350,784円です。料金ページの注記によると、ボットは一度に1つの非アテンド型フローしか実行できないため、同じ時間帯に2本を並べて動かすならボットがもう1つ必要となり、月22,488円が上乗せとなってしまいます。この金額は、ロボットが月に何回動いても基本的には変わりません。

AIエージェントは使った分で費用が変わる

AIエージェントの費用は、どれだけ動かしたか、どれだけ複雑な処理をさせたかで変わる部分が大きくなります。同じ料金ページで案内されている、エージェントを作るMicrosoft Copilot Studioには、Copilotクレジットを前払いで買うプラン(料金ページの表記は購入前プラン)と、使った分だけ支払う従量課金制のプランがあります。前払いのプランでも、前払いのクレジットを使い切ると自動で従量課金制に切り替わってサービスの中断を防ぐ、と説明されています。ChatGPTのWorkも、OpenAIのヘルプによると利用量の仕組みがCodexと同じで、PlusとBusinessの標準シートには一定の利用枠が含まれ、使い切った後は必要に応じてクレジットで追加利用できる形になります。

RPAは動かす回数を増やしても費用が変わりにくい一方、エージェントは任せる件数が増えるほど費用も増えていきます。件数の多い定型業務をエージェントに移すと、固定費が変動費に変わり、月ごとの出費が読みにくくなってしまいます。予算を組むときは、月の処理件数と1件あたりの手順の数を先に数え、上限の設定や管理者への通知が出来るかも確かめてみてください。

※料金は2026年9月27日時点でMicrosoftの公式ページに表示されている金額(年払いの月額相当・税抜)です。同ページには、掲載の価格情報はマーケティング目的で、通貨・国・地域・組織の条件により実際の価格と異なる場合があるとの注記があります。Copilot StudioとChatGPTの利用量の金額は、この記事では扱っていません。Power Automateを追加費用なしで試せる範囲はAI業務自動化の進め方で紹介しています。

RPAとAIのどちらから入れるか

RPAとAIのどちらから入れるかは、社内の業務のうち、手順の決まった定型作業と、読む・書く・判断する作業のどちらが多いかで決まります。毎月の転記や集計のように決まった操作が多いならRPAから、メールや書類を読んで対応を決める仕事が多いなら生成AIからが自然な順番でしょう。どちらか迷うときは、1週間分の業務を書き出し、作業ごとに手順が毎回同じかどうかで印を付けてみると傾向が見えてきます。生成AIは契約してすぐに使い始められるため、社員が毎日行う読む・書く作業から始め、効果が見えたところで定型作業のRPAや連携ツールへ広げる進め方も取りやすいでしょう。

導入の進め方と注意点

RPAでもAIでも、導入の進め方の基本は変わりません。最初に対象の業務の流れを書き出して見えるようにし、人によって違うやり方をそろえてから自動化します。1つの業務で小さく試し、例外の割合と確認の手間を数えてから次へ広げるのが安全な進め方です。現場の担当者を最初から巻き込み、作った人しか中身が分からないブラックボックスにしないよう、手順書を残して担当を2人以上にしておくことも欠かせません。エージェントを任せる前の確かめ方と進め方は、AIエージェントとはにまとめています。

AIと組み合わせられる主なRPAツールと市場の動き

RPAの製品は、AIやエージェントの機能を前面に出すようになりました。

AIと組み合わせられる主なRPAツール

ここでは、公式サイトでAIやエージェントとの組み合わせを打ち出している製品を3つ挙げます。紹介の文言は各社の公式サイトの表現(2026年9月27日確認)をもとにしたもので、機能の評価ではありません。

  • Power Automate(Microsoft):アテンド型・非アテンド型のデスクトップフロー(RPA)とクラウドフローを持ち、エージェントを作るCopilot Studioと同じPower Platformの製品として案内されている
  • UiPath:エージェンティックオートメーションを掲げ、公式サイトで「エージェントが思考し、ロボットが実行し、人が導く」という形を打ち出している
  • Automation Anywhere:日本語サイトの製品一覧に、RPAと並んでエージェント プロセス オートメーション(APA)やAI Agent Studioを載せている

製品を比べるときは、AIの機能が製品に組み込まれているのか、別のAIサービスと接続して使うのかを確かめましょう。接続して使う場合は、読み取った書類の内容がどの事業者のどこで処理されるかも、あわせて確認が必要です。

市場と導入率のデータ

RPAの広がりを示す数字としては、総務省の解説が、2017年の調査(ガートナー ジャパン)で国内の14.1%の企業が導入済み、6.3%が導入中、19.1%が導入を検討中だったと紹介しています。AIについては、中小企業基盤整備機構の「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月)で、回答した1,647社のうちAIを全社的または一部の業務で導入している企業が20.4%と報告されました。この調査は全国の中小企業10,000社を対象にしたWebアンケートで、数字は回答した企業の自己申告です。同じ調査は、RPAなどの業務効率化のツールをAIとは別のITとして区分して尋ねています。

社内説明のひな形|RPAがあるのにAIエージェントも要るのか

RPAを入れている会社でAIエージェントの話が出ると、経営者や現場から、今のロボットでは足りないのかと聞かれる場面が出てきます。そのときの説明の文例と、判断を1枚にまとめる稟議メモの項目をひな形として示します。

説明の文例

今使っているRPAは、手順が毎回同じ転記や集計を、止まったら分かる形で回してくれています。
AIエージェントが役に立つのは、書類の書式や問い合わせの中身が毎回違い、確認のやり取りを重ねて進める業務です。
そのため、今のロボットは原則そのまま使い、止まる原因が書類の読み取りにあるものはAIで前段を補います。
エージェントは対象を1つの業務に絞って試し、登録や送信の前には人が承認する形で始めます。
費用は、RPAが人数やボット数で決まるのに対し、エージェントは処理の量で変わるため、月の上限を決めてから契約します。

稟議メモに書く項目

稟議のメモには、次の6つの項目を1枚にまとめると、比べる材料がそろいます。

  • 対象の業務と、月の処理件数
  • 今その業務を担っているロボット(あれば)と、直近の半年で止まった回数
  • 例外として人が処理している件数の割合
  • 費用の決まり方(人数・ボット数の固定費か、処理量で変わる変動費か)と、月の上限
  • 人が承認する位置(登録・送信・削除・支払いの前など)
  • 操作の記録の残し方と、止めるときの手順

項目を埋めてみて、例外の割合がわずかで止まった回数も少ないなら、今のRPAを続けるのが妥当な判断となります。例外が多く、人の確認が作業の大半を占めている業務こそ、AIを足す検討の対象になるでしょう。

文章と判断の支援は、会社で1つの生成AI環境から

RPAとAIの使い分けを整理すると、定型の操作はRPAや連携ツールに、書類を読む・文章を書く・判断の材料をそろえるといった支援は生成AIに任せる形に落ち着きます。このうち生成AIは、特定の担当者だけでなく、多くの社員が毎日使う道具になる点がRPAと大きく違います。社員がそれぞれ個人のアカウントで使っていると、取引先の情報や社内の数字がどこに入力されたのかを会社が把握できず、会社として把握できていないAIの利用、いわゆるシャドーAI(野良AI)の状態となってしまいます。

会社の環境をそろえるときは、入力した内容をAIの学習に使わせない設定を全員に一律で適用できるか、誰がいつどのAIを使ったかの記録を管理者が確認できるかを確かめてみてください。あわせて、社員へのアカウントの配布と停止を会社で行えるか、業務に合わせて複数のAIを使い分けられるかも大切な点です。

総務省と経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)別添でも、企業のルールが整っていないと、従業員が業務外の利用者向けの生成AIを業務に使うおそれがあるとし、機密情報を扱うときはビジネス利用を想定したサービスを使うよう勧めています。社内ルールの作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方、個人アカウントでの利用を減らす方法はシャドーAI(野良AI)とは、複数のAIを1つの環境で使う方法はマルチAIとはで紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。

文章と判断を支える生成AIを、会社の契約で1つに

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。UPGEAR AIは入力データを学習に使わない設定を全モデルで標準適用し、会話履歴・利用ログ・アカウントを国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを扱え、UPGEAR AIのカスタムプラスでは、よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有できます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

資料をダウンロード UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

RPAとAIの違いは何ですか?
RPAは、人がパソコンで行う定型の操作を、決めた手順どおりに繰り返すソフトウェアのロボットです。AIは、データから学んだ傾向をもとに、書類の読み取りや分類、予測、文章の作成などを行う技術を指します。RPAが手、AIが頭にたとえられ、実際の業務ではAIが読んで判断の材料をそろえ、RPAがシステムに登録する組み合わせで使われます。
RPAとChatGPTの違いは何ですか?
ChatGPTは、文章を読んで要約や下書き、項目の抜き出しを行い、答えを返す生成AIです。RPAは文章の意味を理解しませんが、会計ソフトへの入力のように決められた画面操作を正確に繰り返します。ChatGPTの対象の有料プランにもWorkのように複数の手順を進めるエージェントの機能がありますが(OpenAIのヘルプ、2026年9月27日確認)、登録や送信の前に人が承認する形で使うのが安全です。
RPAに向かない業務は?
書類の書式が取引先ごとに違う業務、メールの本文を読んで対応を変える業務、例外が多く担当者の判断で処理を分けている業務は、RPAだけでは自動化しにくい業務です。年に数回しか発生しない業務や、使う画面が頻繁に変わる業務も、ロボットを作って保守する手間が見合わないことがあります。前の3つは、AIを前段に足すと自動化の範囲に入る場合があります。
RPAとAIを組み合わせると何が出来ますか?
AI-OCRで紙やPDFの請求書を読み取ってRPAが会計ソフトに登録する、チャットボットが受け付けた申請をRPAがシステムに登録する、RPAが集めた情報を生成AIが要約して担当者に届ける、といった使い方が出来ます。AIが読んで判断の材料をそろえ、RPAが入力を受け持つ分担で、どちらか一方では届かなかった業務まで自動化の範囲が広がります。
今あるRPAはAIエージェントに置き換えるべきですか?
すべてを置き換える必要はありません。画面が安定していて例外が少ないロボットはそのまま残し、書類の読み取りで止まるものはAIで前段を補い、APIがあるシステムはAPI連携に移すのが基本の順番です。手順が毎回変わり、確認のやり取りを重ねて進める業務に限って、人の承認を挟む形でエージェントを試すとよいでしょう。

まとめ

RPAとAIの違いは、決めた手順を繰り返す手か、読んで考える頭かの違いにあたります。RPAは手順の決まった転記や登録に強く、画面が変わると止まるので気づける一方、AIエージェントは手順を自分で組み立てるぶん、止まらずに間違えることがあります。

今あるRPAは、残す・AIで補う・APIに移す・置き換えるの順に1本ずつ仕分け、費用は固定費か変動費かで見比べていきましょう。文章と判断を支える生成AIを会社で契約した環境にそろえることが、RPAやエージェントを広げるときの土台になります。法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。