
東京都の生成AIガイドラインを会社で使うとは、職員向けの約束事をそのまま貼らずに、使う環境と4つの確認点を自社の言葉に直して取り入れることになります。取り入れるのは、許可した環境だけで使うという約束事と、機密情報・回答の裏付け・著作権・外へ出すときの表示という4つの確認点です。機密性Aのような役所の区分は持ち込まず、社外秘・個人情報・公開可くらいの小さな区分にして決めましょう。社内規程全体の作り方は、生成AIガイドラインの作り方(社内ルールで決める10項目とひな形)から先に読むと、流れをつかみやすくなります。
まず見る資料は2026年の職員向け手引き
東京都の資料を自社ルールの手本にするなら、中心に置くのは2026年3月30日に初版が出た「生成AI利用の手引き」になります。出しているのは東京都デジタルサービス局で、正式な名前は「東京都AI導入・活用ガイドラインに基づく 生成AI利用の手引き」です。
ただ、この手引きは東京都の職員が使うことを前提に作られています。民間企業で使う場合は、職員向けの言葉をそのまま貼らずに、会社の規程や就業規則、情報セキュリティ規程に合う言い方へ直してみてください。
資料は3段の重なりになっています。上に全庁の方針である東京都AI戦略があり、その下に、AIを導入する事業の担当者に向けた東京都AI導入・活用ガイドラインが置かれている形です。職員が普段の仕事で生成AIを使うときの対応策をまとめたのが、生成AI利用の手引きとなります。
ガイドライン本体のほうは、AIを事業に入れる担当の職員に向けて書かれています。企画から要件定義、設計開発、運用、廃止、調達までを扱っているため、総務の方が最初から全部読むと重く感じてしまうでしょう。社内の利用ルールに写すのが目的なら、まずは手引きの2章と3章だけ読んでみてください。
検索すると都立学校生成AI利活用ガイドラインも出てきますが、こちらは都立学校に向けた資料となります。学校法人や学習塾でなければ、会社の社内ルールにそのまま持ち込む必要はありません。都立学校向けの「都立AI」では、入力した情報を再学習させない設定にしたうえで、プライバシー性の高い情報を扱わない決まりをガイドラインに定めていて、考え方の参考にすることは出来ます。
※本記事の東京都資料の内容は、2026年10月3日にPDFの原文で確認したものです。生成AI利用の手引きは、イラスト画像を除き、著作権法の範囲内で文章の引用・転載等に使えるとされていて、発行元の明記を求めています。発行元は東京都デジタルサービス局です。原文は、東京都デジタルサービス局のAI導入・活用ガイドライン、生成AI利用の手引きのページと、2023年8月の報道発表から読むことが出来ます。
会社に入れる骨格は共通環境と4つのチェック
中小企業がそのまま取り入れやすいのは、使ってよい環境をしぼることと、4つのチェックポイントになります。ここだけ先に決めておけば、長い規程を作る前でも、現場に配るルールとして使うことが出来ます。
東京都は2023年8月の報道発表で、全局で約5万人を対象に使える環境を整えたと発表しています。2023年版ではAzure OpenAI Serviceを使った共通基盤が示されていて、使い始める前の申請フォームとeラーニングも約束事に入っていました。会社に写すなら、全員が使ってよい入口を1つ決めて、個人の判断で別のサービスを使わない形に寄せることになります。
2026年版の手引きでは、都が使える環境としてMicrosoft Copilot、Microsoft 365 Copilot、生成AIプラットフォームの3つが挙げられています。どれも、入力したデータが学習目的で保存されないことを確認した環境です。会社でも同じように、どのAIが賢いかより先に、会社として中身を確かめた環境かどうかで決めましょう。
4つのチェックは、個人情報や機密性の高い情報の扱い、回答の根拠や裏付けの確認、著作権への配慮、外で使うときの明記になります。この4点は、社内ルールの見出しとしてほぼそのまま使うことが出来ます。細かい条文を並べるより、毎回の確認項目として社員に配るほうが根づきやすいでしょう。
手引きには、東京都AI戦略が掲げる透明性・公平性・安全性・プライバシー・セキュリティ・アカウンタビリティ(説明責任)の6項目も出てきます。ただ、社員向けの短いルールに6つとも並べると、読まれないまま終わってしまいます。中小企業では、入力する前に守ること、出力を使う前に見ること、外へ出すときに書くことの3つにまとめてみてください。
2023年版から2026年版で変わった点
2023年8月に策定された「文章生成AI利活用ガイドライン」(以下、2023年版)と、2026年3月の「生成AI利用の手引き」(以下、2026年版)は、別々の文書です。2023年版と2026年版の違いをひと言でいうと、入力を禁止する書き方から、管理された環境で扱う前提へ進んだ点になります。会社のルールでも、何もかも入力禁止にするより、使ってよい環境と入れてよい範囲を分けるほうが現場に合うでしょう。
2023年版のルールの1つ目は、個人情報等や機密性の高い情報は入力しないことでした。2026年版では、これが「取扱いには細心の注意を払うこと」に変わっています。都の庁内共通ツールについては、セキュリティ面で検証したうえで、機密性Aまでの情報を扱ってよいという整理になりました。
とはいえ、何でも入れてよくなったわけではありません。入力したデータが学習目的で保存されないと確認した共通ツールだからこそ、扱える範囲が広がった、という読み方になります。会社で使うときも、無料版や個人アカウントには入れない、会社が確かめた環境なら社外秘まで入れてよい、という分け方にしてみてください。
使う環境も変わりました。2023年版はAzure OpenAI Serviceの共通基盤が中心でしたが、2026年版ではMicrosoft Copilot、Microsoft 365 Copilot、生成AIプラットフォームへと広がっています。検索結果にはまだ古い解説も残っているので、社内資料を作るときは2026年版の手引きを基準にしましょう。
2026年版で目を引くのは、許可されていない生成AIを業務で使うことと、私物の端末で生成AIを使って仕事をすることの禁止です。違反すると懲戒処分の対象になる場合がある、という書き方もされています。民間企業では懲戒という言葉だけを写すのではなく、就業規則や情報セキュリティ規程に沿って、違反したときの扱いを人事・労務の担当の方と決めることになります。
一方で、2023年版から変わっていない部分もあります。回答の根拠や裏付けの確認、著作権への注意、外で使うときの明記は、2026年版にも引き継がれています。社内で説明するときは、変わった点と残った点を分けて話すと、古い資料を読んだ方にも伝わりやすくなります。
都の言葉は会社の一文へ読み替える
東京都の手引きは、項目ごとに会社の短い一文へ置き換えると使いやすくなります。役所の仕組みを丸ごと持ち込まずに、社員が実際に守る行動へ落としてみてください。
「安全性が確保された庁内の共通ツール又は許可を受けた外部のツールで生成AIを利用すること」という約束事は、会社が指定したAIサービスだけを業務で使う、と置き換えられます。ここにサービス名まで書くと、変えるたびに規程を直す手間がかかってしまいます。許可したサービスの一覧は、別紙にしておくと扱いやすいでしょう。
AIワンストップ相談窓口は、総務や情報システムの相談先に読み替えます。新しいAIを使いたい方は、使い始める前に管理部門へ申し出る、という一文で充分です。窓口のない会社では、代表者や総務の責任者、外部のIT顧問など、実際に返事をする方を1人決めておきましょう。
機密性Aは、都が使っている情報の区分になります。中小企業なら、社外秘・個人情報・公開可の3つに縮めるだけでも、社員は迷いにくくなるでしょう。区分が細かすぎると、使う前の判断で手が止まってしまいます。まずは請求書、契約書、顧客名簿、人事情報を、個人情報か社外秘のどちらかに入れてみてください。
東京都サイバーセキュリティポリシーは、自社の情報セキュリティ規程に読み替えます。規程がまだない会社でも、生成AIのルールの中に最低限の禁止事項を置く形で始めることが出来ます。許可していないAI、私物の端末、個人アカウントの3つを禁止として書いておくと、野良AIの入口をふさぎやすくなります。
懲戒処分は、強い言葉のまま入れる前に、就業規則とのつながりを確かめてください。小さな会社なら、初回は利用停止と再教育、悪質な場合は就業規則に沿って対応する、という書き方のほうが合うこともあります。強く書くほど運用も重くなってしまうので、実際に守ってもらえる一文に直しましょう。
ガイドライン本体にある企画・要件定義・設計開発・運用・廃止という流れは、大きなAIシステムを入れるときの考え方になります。社員が文章作成や要約に使うだけなら、そこまでの工程表は要りません。会社の出費で考えても、専任のチームを置く前に、管理する環境を1つ選んで教育と棚卸しの手間を減らすほうが、軽く始めることが出来ます。
私物の端末や許可していないAIを避けるには、使ってよい環境を先に配るのが近道になります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
機密情報は環境ごとに入力範囲を決める
機密情報のルールは、入力禁止の一覧だけで終わらせず、どの環境ならどこまで扱えるかで決めると実務に合います。ここがあいまいなままだと、社員は便利な個人アカウントへ流れてしまいます。
都の手引きでは、庁内共通ツールはセキュリティ面で検証したうえで機密性Aまで扱える、としています。個人情報等を含むメールやWeb会議の要約にも使える扱いです。その一方で、デジタルサービス局以外が調達した生成AI環境では、機密性の高い情報の入力が認められていないことがある、と分けて書かれています。
会社に置き換えるなら、無料版や個人契約には個人情報と社外秘を入れない、会社が契約した環境なら社外秘の要約まで使ってよい、公開資料の下書きはどの許可済み環境でもよい、という3段階が使いやすいでしょう。難しい分類名を作るより、実際の文書名を並べてみてください。
よくあるのは、個人情報を入れないとだけ書いて終わってしまう例です。顧客名が個人情報だとは分かっても、取引先の見積条件や未発表の企画書がどちらに入るのかで、社員は迷うことになります。迷う情報は入れない、ではなく、迷ったら指定の窓口に確かめる、と書き足しましょう。
AIで社内アプリや問い合わせBOTを作るときは、読ませる資料に機密情報が混ざることもあります。都の手引きは、生成物からは不要な機密情報を削除又はマスキングして表示する設定が必要だとしています。中小企業でも、回答の画面に顧客名や個人名が出ないかを先に確かめてみてください。
情報漏洩が怖いのは、入力したその瞬間だけではありません。誰が使ったか、どの資料を読ませたか、辞めた方のアカウントが残っていないかも、管理する対象に入ってきます。確認する項目は、生成AIのセキュリティ対策チェックリストとあわせて見ると整理しやすくなります。
著作権と対外表示は運用まで決める
著作権と外向けの表示は、社員に「気を付けて」と言うだけでは足りません。どんなプロンプトを避けるか、どの文書にAIで作った旨を入れるかまで、運用として決めておく必要があります。
都の手引きでは、既存の著作物に似せるプロンプトで似たものが生成されると、著作権侵害になるおそれがあると整理されています。会社の一文にするなら、特定の作家や記事、広告、資料に似せる指示を入れない、となります。社員には、好きな文章の雰囲気をまねるより、自社の目的と読み手を指定するよう伝えてみてください。
生成物を配信・公開するときは、既存の著作物と似ていないかを確かめる流れも要ります。全部を専門家に見てもらうのは重すぎるので、公開前に担当者が検索し、気になるものだけ責任者に回す、くらいの軽い手順から始めると続けやすいでしょう。判断に迷ったときは、文化庁の「AIと著作権」も参照先になります。
手引きには、AIの生成物はアイデアや構成案などの中間成果物として使い、最終成果物は職員が創作性を持って加筆・修正する、という考え方も示されています。会社なら、AIの回答をそのまま納品しない、公開する文は担当者が事実を確かめて手を入れる、という一文に出来ます。ここまで書いておけば、AIを下書きに使うこと自体は認めやすくなるでしょう。
外で使う場合は、生成AIで作った旨を明記する、というチェックもあります。これを全部のメールに表示を入れることだと受け取ると、現場が止まってしまいます。ホームページや提案書、配布資料、公開レポートなど、外に残る文書を対象に決めてみてください。
社外メールの下書きや社内の議事録の要約を、人が確かめて普段の業務文書として出すのであれば、毎回AI作成と表示するのは重い運用になります。反対に、画像や文章、分析結果をほぼそのまま外に公開する場合は、どう作ったかの表示が読み手の信頼につながります。どちらか迷う文書は、公開前に責任者へ確かめる形にしましょう。
プロンプトのコツは社内問い合わせにも使える
都の手引きにあるプロンプトのコツは、社員教育の短い教材としてそのまま使えます。立場、目的と背景、出力の形、重ねて直す、の4つで教えると、実務に入りやすくなります。
立場をはっきりさせるとは、「あなたは総務の担当者です」「あなたは営業資料の確認役です」のように、役割を先に伝えることです。目的と背景には、誰に出す文書なのか、何を決めたいのか、どこまで決まっているのかを入れることになります。出力の形は、箇条書きやメール文、比較案、チェックリストなど、受け取りたい形を指定する部分です。
重ねて直すというのは、1回の回答で終わらせずに続けて頼む使い方になります。もっと短く、専門用語を減らして、社長向けに、お客様向けに、と視点を足していくと、回答が実務に近づいていきます。社員研修では、同じ題材を2回投げて変わり方を見るだけでも、感覚をつかむことが出来ます。
手引きには、登録した資料からだけ回答させ、資料に書かれていなければその旨を答えさせる例も載っています。これは、会社の規程やマニュアルを読ませる社内問い合わせに向いた使い方になります。AIが知らないことを想像で埋めないよう、「資料にない場合は分かりませんと答えてください」という指示を入れてみてください。
ルールを作っても読まれない会社では、この使い方が助けになります。就業規則や情報セキュリティ規程、生成AIのルールを読ませて、社員が質問できる入口を用意しておけば、問い合わせに答える手間を減らせます。もちろん、最終的な判断は管理部門が持つ形にしておきましょう。
向いているのは、メールの案、議事録の要約、社内通知のたたき台、FAQの整理といった仕事です。反対に、根拠資料のない事実確認や、責任者の判断が要る最終決定には向きません。社員には、AIに聞く前に資料を渡す、使う前に根拠を見る、外へ出す前に人が直す、の順番で覚えてもらうと安心です。
そのまま社内に配れる短いルール文
社内に配る最初の版は、短くても構いません。東京都の手引きから持ち込むなら、次のような文面にすると、中小企業でも回しやすくなります。
- 利用環境業務で生成AIを使う場合は、会社が指定したサービスだけを利用します。許可されていない生成AI、私物端末、個人アカウントでの業務利用は禁止します。
- 入力情報個人情報、顧客情報、契約書、未公開の企画、社外秘資料は、会社が入力を認めた環境以外へ入れません。迷う場合は、入力前に管理部門へ確認します。
- 回答確認生成AIの回答は、そのまま事実として扱いません。外部資料、社内資料、担当者確認のいずれかで根拠や裏付けを確認してから使います。
- 著作権既存の文章、画像、広告、作品に似せる指示は入れません。公開物に使う場合は、既存の著作物と似ていないか確認し、担当者が加筆修正します。
- 対外利用生成AIの出力を外部向け資料、ホームページ、提案書などにほぼそのまま使う場合は、生成AIを利用した旨を必要に応じて表示します。
- 違反時このルールに反する利用が分かった場合は、利用停止、再教育、就業規則に沿った対応を行います。故意または重大な漏洩につながる利用は、速やかに責任者へ報告します。
この文面だけで、社内規程に要る項目がすべてそろうわけではありません。まずは社員に配る簡易版として使い、あとから対象者や申請の方法、ログの確認、事故のときの連絡先を足していく流れがよいでしょう。規程として整えるときは、生成AIガイドラインのひな形に戻って、足りない部分を補ってみてください。
失敗しやすいのは、長い規程を作っただけで、使える環境を配らないまま終わってしまう例です。禁止だけが先に届くと、仕事で困った方は個人アカウントに流れてしまいます。ルールの文面と許可したサービス、相談先の3つを同じ日に知らせると、現場は動きやすくなります。
もう1つの失敗は、公開してよい情報まで怖がって止めてしまうことです。公開済みの会社概要や商品の説明、よくあるメール文の言い換えまで禁止すると、AIを使い始めるきっかけがなくなってしまいます。入れてよい例と入れてはいけない例を並べて、社員が最初の一歩を踏み出せるように決めましょう。
費用の面でも、都のような相談窓口やeラーニング、共通基盤を一から自前で作ると、担当者の時間がかなりかかってしまいます。中小企業なら、最初から大きな体制を作るより、今の管理部門が持てる範囲に縮めたほうが長続きするでしょう。毎月のサービス費だけでなく、アカウントの停止や相談の対応にかかる時間も、会社の出費として見てみてください。
使う環境を1つに決めるなら
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UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
東京都の生成AI利用の手引きは民間企業でもそのまま使えますか?
2023年版と2026年版では何が一番変わりましたか?
中小企業が最初に決めるべき項目は何ですか?
AIで作った文章は必ず生成AI利用と表示する必要がありますか?
まとめ
東京都の生成AIの資料は、2026年の生成AI利用の手引きを中心に読むと迷いにくくなります。ただし東京都の職員向けの資料ですので、民間企業では言葉を縮め、会社の実務に合う一文に直して使いましょう。
そのまま取り入れたいのは、使ってよい環境を決めること、機密情報の扱い、根拠の確認、著作権の確認、外で使うときの明記の5つになります。2023年版から2026年版にかけて、「入力しない」という書き方は「取扱いに細心の注意を払う」へと変わりました。
中小企業が都と同じ体制を作る必要はありません。許可したサービス、入れてよい情報、相談先、違反したときの扱いを短く決めるだけでも、最初の社内ルールとして充分に使うことが出来ます。禁止だけで終わらせずに、社員が使える環境も一緒に決めてみてください。
