
プロンプトとは、AIに渡す指示文や質問文のことです。仕事で使うなら、思いついた一文をそのまま投げるより、してほしいこと・背景・出力の形・役割または材料の4つの欄に分けて書くほうが、社員どうしで直しやすくなります。型や例文集まで広く見たい方は、ChatGPTのプロンプトの書き方とプロンプトエンジニアリングの記事を先に眺めてみてください。1つの依頼を4つの要素で組み立てておけば、回答がずれたときにも、どの欄が足りないのかを見分けることが出来ます。
プロンプトとは|AIへの指示文・質問文を仕事の依頼にする
プロンプトは、AIに何をしてほしいかを伝えるための文章になります。短い質問もプロンプトですし、資料や条件、出力の形まで入れた長い依頼文もプロンプトです。
社内で使うときは、プロンプトを人への依頼文として見てみてください。新人の方や別の部署の方が同じ文章を読んで迷うようなら、AIも必要な前提を持たないまま答えることになってしまいます。
AnthropicのClaude向けの文書では、Claudeを、自社の決まりや仕事の流れを知らない新入社員のように考えるとよい、という説明があります。文脈を知らない同僚に見せて混乱するなら、Claudeも混乱するという黄金律も示されています。
この考え方は、ほかのAIを使うときにも役に立つでしょう。AIは、社内の事情や取引先との関係、上司が嫌がる言い回し、提出先の書式を、最初から知っているわけではありません。
プロンプトの書き方は、AIにお願いする技術というより、仕事の依頼を省かずに伝える技術になります。まずは一文で丸投げせず、依頼として欠けているものを探すつもりで書いてみてください。
4つの要素|してほしいこと・背景・出力の形・役割または材料
4要素は、どの出典でも同じ名前でそろっているわけではありません。ここでは、3つの出典に共通する欄に、4つ目として役割または材料を足した形で扱っていきます。
GoogleのPrompting Guide 101では、効果的なプロンプトを書くときに考える領域として挙がっているのは、Persona・Task・Context・Formatの4つです。毎回4つ全部を使う必要はなく、タスクには動詞や命令を必ず入れることがいちばん大事だとされています。
Microsoft Copilotのサポートページでは、目的・コンテキスト・ソース・期待する項目の4つを、プロンプトに含めることが出来る、という案内です。そのうえで、必要なのは明確な目標であり、望む結果を得るには目標以上のものを入れる場面が多いとも書かれています。
DAIR.AIのPrompt Engineering Guide日本語版で、プロンプトの要素として挙がっているのは、命令・文脈・入力データ・出力指示子の4つです。こちらも、すべての要素が要るわけではなく、形は手元のタスクによって変わるとされています。
3つの出典を並べてみると、してほしいこと、背景、出力の形の3つが共通する部分になります。4つ目は、Googleが役割、Microsoftがソース、DAIR.AIが入力データと、出典によって置くものが違います。
| この記事の欄 | Googleの近い要素 | Microsoftの近い要素 | DAIR.AIの近い要素 | 社員に説明するときの言い方 |
|---|---|---|---|---|
| してほしいこと | Task | 目的 | 命令 | 何を作るか、何を直すか、何を比べるか |
| 背景 | Context | コンテキスト | 文脈 | なぜ必要か、誰に向けるか、前提は何か |
| 出力の形 | Format | 期待する項目 | 出力指示子 | 表、箇条書き、メール文、稟議の項目など |
| 役割または材料 | Persona | ソース | 入力データ | 誰として答えるか、何の資料を使うか |
社内で配るシートでは、出典ごとの違いを細かく覚えてもらうより、この4欄を埋める形にしたほうが使いやすくなります。役割が要らない依頼なら材料を厚めに書き、材料がない相談なら役割を置く、と決めてしまいましょう。
Googleのガイドには、良い結果につながったプロンプトは英語で平均約21語、実際に試されるプロンプトは9語未満が多い、という記述もあります。英語の語数なので日本語の字数には置き換えられませんが、短すぎる依頼では背景や形式が抜けやすい、と受け止めておくとよいでしょう。
気をつけたいのは、4要素を「これが正解」と丸暗記してしまうことです。出典ごとに4つ目の中身が違うため、社内では役割か材料のどちらかを選べる欄として伝えてみてください。
たとえば取引先へのメールなら、役割の指定が効いてきます。規程や議事録の整理なら、役割よりも材料の指定を厚くしたほうが、余計な推測を減らすことが出来ます。
社員向けの説明では、まずしてほしいことを動詞で書き、次に背景、最後に受け取りたい形を決める順番にします。迷ったときだけ役割または材料を足す、と案内すれば始めやすくなるでしょう。
記入シート|社員に配る1枚の書き方
社員に配るなら、完成した長いテンプレートより、空欄を埋めていくシートのほうが直しやすくなります。いきなり上手な文章を書いてもらうのではなく、4つの欄を順番に埋めてもらう形にしましょう。
現場でよくあるのは、慣れた方が頭の中だけで背景を補っていて、慣れていない方が同じ指示を使えない、という状態です。欄を分けておけば、どこを補えばよいのかを、上司や総務の方も見つけやすくなります。
具体的に書く・5W1H・曖昧語を避ける
してほしいことの欄には、動詞を入れて書きます。作って、直して、比べて、要約して、抜き出して、並べ替えて、という形にすると、AIも何を返せばよいかを決めやすくなります。
あいまいな依頼は、便利そうに見えて、後から手戻りが出てしまいます。良い感じに、わかりやすく、しっかり、短めに、といった言葉だけでは、誰に向けて、どこまで変えるのかが伝わりません。
5W1Hは、全部を機械的に入れなくても大丈夫です。誰に向けるか、いつ使うか、何を材料にするか、どの書式にするかだけでも、回答の向きはかなり定まってきます。
たとえば「案内文を作って」ではなく、「取引先の担当者へ送る、日程変更のメール文を作って」と書いてみてください。これだけでも、依頼がぐっと仕事の形に近づきます。
役割(ペルソナ)の設定
役割の欄は、AIにどの立場の言葉で考えてほしいかを渡す場所になります。経理担当、総務担当、採用担当、営業責任者、情報システム担当のように、立場によって判断の軸が変わる場面で使います。
役割は、長く書けばよいというものでもありません。社内規程を確認するなら「総務担当として」、取引先へ送るなら「法人営業の担当者として」と、1文で足りる場面も多いでしょう。
役割を入れるときは、肩書きの名前だけで終わらせないでください。何を気にする立場なのかまで添えると、回答の口調や優先順位がそろいやすくなります。
管理部門向けの依頼なら「社員に誤解されにくい表現を優先する」、取引先向けなら「相手に負担をかけない言い回しを優先する」と添えることが出来ます。
背景・文脈・参考情報を渡す
背景の欄には、AIが知らない事情を書いていきます。依頼の目的、読み手、今の状態、避けたいこと、使ってよい資料を短く置いておくと、回答のずれが少なくなります。
ここで注意したいのは、背景の欄を社内事情の貼り付け場所にしてしまうことです。顧客名や個人名、契約金額、未公開の資料名をそのまま入れると、社内ルールに触れてしまいます。
背景は、匿名にしても十分に使えます。顧客名は「取引先A」、社員名は「対象社員」、金額は実額ではなく範囲や条件に置き換える、と決めておきましょう。
背景に何を書くか迷っている方には、誰に向けて、何のために、どこまで決まっていて、何を避けたいのか、の4つを聞いてみてください。この4つがそろえば、依頼文としてかなり整ってきます。
出力形式・文字数の指定
出力の形は、AIの答えをそのまま仕事に移しやすくするための欄になります。メール文、表、チェックリスト、議事録の項目、稟議のたたき台など、受け取りたい形を先に決めておきます。
文字数を指定する場合は、文字数だけでなく用途も添えると扱いやすくなります。社内チャットに貼るので短めに、稟議に入れるので見出しつきで、役員向けなので結論から、といった書き方です。
出力の形が抜けていると、中身は合っていても使いにくい返答になってしまいます。表がほしいのに長い文章で返ってくる、メール文がほしいのに箇条書きで返ってくる、というずれも起こります。
シートを配るときは、最後に「そのまま貼れる形は何か」を一度考えてもらう欄を置いてみてください。回答を仕事の部品として受け取る意識が生まれてきます。
| 欄 | 記入すること | 記入例 | 空欄だと起きやすいこと |
|---|---|---|---|
| してほしいこと | 動詞で依頼を書く | 社内向けの案内メールを作ってください | 要約なのか作成なのかがずれる |
| 背景 | 読み手、目的、避けたいことを書く | 対象は全社員。新しい申請手順を知らせます | 相手に合わない言い回しになる |
| 出力の形 | 形式、長さ、順番を決める | 件名、本文、最後の確認事項の順にしてください | 使う前に整形し直す手間が出る |
| 役割または材料 | 立場か、使う資料を入れる | 総務担当として、下の手順メモだけを使ってください | 専門外の口調や推測が混じる |
社内配布用の一言:このシートは、上手な文章を書くための紙ではありません。AIに渡す前に、仕事の依頼として欠けている欄を見つけるための紙になります。
欄ごとの分量の目安
4欄を埋めると聞くと、長い文章を書かなければいけないように感じる方もいらっしゃるでしょう。実際には、役割は1文、してほしいことも1文、背景は箇条書きで数行、出力の形は完成物の見た目が分かる程度で足ります。
役割の欄は、職務経歴のように長く書かなくても大丈夫です。「総務担当として」「法人営業の担当者として」「経営者に報告する前提で」のように、回答の立場が変わる言葉を入れておきましょう。
背景の欄は、どうしても長くなりやすい場所になります。全部を書くのではなく、AIの回答を変える情報だけに絞ってみてください。読み手、目的、今の状態、避けたいことが入っていれば、多くの仕事は始めることが出来ます。
出力の形は、実際に貼り付ける先から逆算して決めます。メールなら件名と本文、議事録なら決定事項と未決事項、稟議なら目的や費用の欄というように、提出先の器に合わせるのがコツです。
分量で迷ったら、欄を長くするより、読み手と使う場所を先に決めてみてください。それだけで、余計な説明はだいぶ減っていきます。
組み立て手順|1つの依頼を要素ごとに足していく
4要素は、最初から長い文章にしなくても大丈夫です。まず依頼の芯を作り、そこに背景、役割または材料、出力の形を足していくと、社員の方にも教えやすくなります。
ここでは、社内の申請手順を案内するメール文を作る場面で考えてみます。AIが何と答えたかは扱わず、指示文をどう組み立てるかだけを見ていきましょう。
タスクを分割して段階的に指示
最初の依頼は「社内向けの案内メールを作ってください」だけでも始められます。ただ、このままでは読み手も目的も材料も、出力の形もありません。
次に背景を足します。「対象は全社員で、来月から経費申請の提出先が変わるため、古い提出先へ送らないように知らせたい」という具合です。
材料があるなら、その材料だけを使うように書きます。「下の手順メモだけを使って、書かれていない内容は補わないでください」と置いておくと、推測が混ざりにくくなります。
最後に形を決めます。「件名、本文、社員が最後に確認することの3つに分けてください」と指定すれば、社内にそのまま貼れる部品として扱いやすくなるでしょう。
区切り記号・構造化(#、XMLタグ等)
長い依頼では、どこが指示でどこが材料かを区切っておきます。OpenAIのAPI向けガイドには、Markdownの見出しやXMLタグでプロンプトの区切りを示す方法の案内があります。
AnthropicのClaude向け文書でも、instructions、context、inputなどのXMLタグで、指示・文脈・例・入力を分ける方法が紹介されています。GoogleのGemini API向け文書にも、XMLやMarkdownの構造化タグで指示とコンテキストを分ける説明があります。
社内で使うなら、専門的な書き方に寄せすぎる必要はありません。#依頼、#背景、#材料、#出力形式のように見出しで分けるだけでも、読み違いは減っていきます。
区切り記号は飾りではなく、AIに見せたい材料と、AIに守ってほしい指示が混ざらないようにするための線引きになります。社員に配るときも、その使い方だけは決めておきましょう。
例を示す(サンプル・Few-shot・Demonstration)
例を示す方法は、AIに望むパターンを見せたいときに使います。OpenAIのAPI向けガイドでは、多様な入出力の例を入れると、モデルがそのパターンを拾う、という説明があります。
Anthropicの文書では、few-shotやmultishotの例に関連性と多様性を持たせ、exampleタグで囲むよう案内しています。口調や表の並べ方をそろえたいときに向いている方法になります。
社内メールの例なら、過去に承認された文面から固有名詞を外して、言い回しの型だけを見せます。個人名や取引先名が残っていない形にしてから使ってください。
例は正解を覚えさせるためではなく、望む書きぶりを見せるために置きます。古い例を使い回すと、今の制度に合わない文面が混ざってしまうため、配る前に見直しましょう。
ここまでの4欄をつなげると、依頼文は自然と長くなっていきます。長さそのものを怖がらず、仕事の依頼として必要なことが入っているかを見てみてください。
個人ごとにプロンプトを探し回る状態から、会社で共有する形へ移すことが出来ます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
診断表|回答がずれたときに足りない要素を見分ける
回答が思った通りにならないときは、AIの性能を疑う前に、4つの欄のどこが薄いかを見てみてください。症状から逆にたどっていくと、直す場所が見つけやすくなります。
Microsoft Copilotのサポートページには、ほとんどの場合は別のプロンプトで結果をフォローアップするもので、何らかのやり取りがあると考えておいてほしい、という説明があります。OpenAIのChatGPT向けヘルプでも、応答を見て言い回しやコンテキスト、簡潔さを調整していく反復的な改善が案内されています。
一度で決めず追加指示で直す(反復・対話)
最初の返答がずれていても、一から書き直す必要はありません。足りない欄だけを足して、同じ会話の中で直していくことが出来ます。
たとえば口調が固すぎるなら、役割や読み手が薄いのかもしれません。表で返してほしいのに文章で返ってくるなら、出力の形が抜けていると見てよいでしょう。
内容が一般論に寄りすぎるときは、背景の欄を見直します。誰に向けて、どの制度や資料を使い、何を避けたいのかを足してみてください。
事実ではないことが混ざっていそうなときは、材料の欄を締めます。下の資料だけを使う、書かれていないことは不明と書く、という指示に変えてみましょう。
| 出てきた症状 | 足りない欄 | 直し方 | 追加する一文の例 |
|---|---|---|---|
| 一般論ばかりで、自社の状況に合わない | 背景 | 読み手、目的、前提、避けたいことを足す | 対象は全社員で、初めて使う方にも伝わる文にしてください |
| 口調や立場が合わない | 役割 | 誰として答えるか、何を優先するかを足す | 総務担当として、誤解が出にくい言い方を優先してください |
| 形式が使いにくい | 出力の形 | 表、見出し、順番、長さを指定する | 件名、本文、最後の確認事項の順にしてください |
| 勝手な情報が入っている | 材料 | 使う資料を限定し、推測しない条件を入れる | 下の手順メモだけを使い、未記載の内容は補わないでください |
| 何をしているのか分からない返答になる | してほしいこと | 動詞を明確にする | 要約ではなく、社内案内メールの下書きを作ってください |
| 長すぎる、短すぎる、粒度が合わない | 出力の形と背景 | 使う場所と読み手を足す | 社内チャットに貼るため、結論から短く書いてください |
この診断表は、AI担当の方だけが見るものではありません。総務や情シスの方が、社員から「このプロンプトでうまくいかない」と相談されたときの聞き取り表としても使えます。
ずれた回答を直すときは、プロンプト全体を書き換えるより、欠けた欄を1つだけ足すほうが説明しやすくなります。社内で教えるときも、どの欄を足したのかを残しておきましょう。
社員から相談を受けたときは、回答だけを見て判断しないほうがよいでしょう。どんなプロンプトを入れたのか、どの資料を材料にしたのか、どんな形で返してほしかったのかを一緒に聞くと、原因がかなり見えてきます。
総務や情シスの方は、相談票に4つの欄をそのまま置いてみてください。社員が入れた文章を貼る欄と、直した後の文章を貼る欄を分けておけば、次に同じ相談が来たときの教材にもなります。
上司が確認する場合は、プロンプトの上手さよりも、仕事の依頼として通じるかどうかを見ます。別の社員が同じ文章を読んで、同じ作業を始められるかを目安にしましょう。
聞き取りを続けていくと、部署ごとに苦手な欄も見えてきます。営業は出力の形が薄い、管理部門は背景を書きすぎる、経営者は材料を省きがち、といった癖が出ることもあるでしょう。
癖が分かったら、全員に同じ研修をするより、その欄だけを補う小さなテンプレートを配るほうが早く進みます。社員の方の負担も軽くなります。
型の扱い|深津式・ReAct・ゴールシークはどこで使うか
有名な型は、4つの欄を埋めるための補助として使うと扱いやすくなります。型の名前を先に覚えるより、どの欄を厚くするための型なのかを見てみてください。
型の紹介(深津式・ReAct・ゴールシーク等)
深津式やゴールシークといった名前の付いた手法も、プロンプトの型として紹介されています。ここでは、それぞれを細かく使い分けるより、4欄のどこに効くかで見ていきます。
役割、制約、入力、出力形式を並べるような型は、記入シートにかなり近い形になります。指示が長くなる仕事では、欄を分けるだけでも見落としを減らすことが出来ます。
考え方を分けて進める型は、調査や比較、稟議のように、途中で確認が必要な仕事に向いています。ただ、AIの中の考えをそのまま出させるより、確認したい観点を人が決めておくほうが運用しやすいでしょう。
型を社内に配るなら、名前よりも使う場面を先に書いてみてください。メールは4欄の基本形、比較は表の形、手順の確認は段階に分ける、と案内したほうが、現場の方も迷いにくくなります。
AIにプロンプトを作らせる(ゴールシーク・メタプロンプト・Geminiをエディタに)
AIにプロンプトを直してもらう使い方もあります。GoogleのPrompting Guide 101では、Geminiにプロンプトをより強いプロンプトへ直してもらう使い方が紹介されています。
この使い方は、最初の指示を作るのが苦手な方に向く方法です。ただ、AIが直したプロンプトをそのまま社内で共有すると、機密情報や確かめていない前提が残ってしまうことがあります。
おすすめは、AIに直してもらった後で、4欄に戻して読むことです。してほしいこと、背景、出力の形、役割または材料に分けて読み直すと、余計な条件や足りない条件に気づきやすくなります。
社員の方へ案内するなら、AIに丸投げして完成させるのではなく、下書きを作ってもらってから人が欄ごとに点検する流れにしましょう。そうすれば、特定の人にしか直せない状態にもなりにくくなります。
Chain-of-Thought
Chain-of-Thoughtは、AIに考える過程を扱わせる話の中で出てくる言葉です。仕事でそのまま使うより、段階を分けて確認する考え方として見たほうが扱いやすいでしょう。
Anthropicの文書では、思考機能を使う場面について、細かすぎる手順を決め打ちするより、一般的な指示を優先するよう勧める説明があります。OpenAIのAPI向け文書でも、推論モデルとGPTモデルでは指示の出し方が変わると案内されています。
社内のふだんの仕事では、考える過程を長く出させるより、判断の根拠や確認した項目を出してもらうほうが使いやすくなります。人が見るべきなのは、AIの内側の考えではなく、その回答を採用してよい理由のほうです。
型は難しい名前から入らず、4欄のどこを補うための道具かで選びましょう。名前を覚えていなくても、仕事で必要なプロンプトは十分に作ることが出来ます。
業務別例文|メール・議事録・要約・稟議に落とす
業務別の例文は、完成品として配るより、4欄の埋め方が見える形で配ると応用しやすくなります。ここでは事務や管理の仕事で、そのまま書き換えやすい形にしてみました。
どの例にも、AIの回答例は置いていません。社員の方に渡すのは、AIに投げる前の指示文になります。
業務別の例文・コピペテンプレ(メール・議事録・要約・企画)
メール文を作る場合は、読み手との関係を背景に入れておきます。社内向けか取引先向けか、謝罪なのか日程変更なのかで、同じ作成の依頼でも口調が変わってきます。
たとえば「法人営業の担当者として、取引先Aへ送る日程再調整のメールを作ってください」という形です。背景には、こちらの都合で変更をお願いすること、相手に負担をかけない言い回しにしたいことを入れます。
議事録では、材料の欄が中心になります。「下のメモだけを使い、決定事項、未決事項、担当者が確認することに分けてください」と書けば、整理の方向が定まります。
要約では、誰が読むのかを必ず入れてみてください。経営者が判断するための要約と、担当者が次に動くための要約とでは、残す情報が変わってきます。
企画のたたき台では、目的と制約を先に置くと使いやすくなります。新しい制度の社内説明会の案を作るなら、対象者、時間、避けたい説明、最後に取ってほしい行動を背景に入れましょう。
| 場面 | 4欄で作るプロンプト | 配布前に見る場所 |
|---|---|---|
| 取引先メール | #役割 法人営業の担当者として。#背景 取引先Aへ日程変更をお願いします。こちらの都合なので丁寧に。#依頼 メール文を作ってください。#出力 件名と本文に分けてください。 | 取引先名や実名が残っていないか |
| 議事録 | #材料 下のメモだけを使ってください。#依頼 決定事項、未決事項、次に確認することに分けて整理してください。#出力 表にしてください。 | メモに個人情報が含まれていないか |
| 要約 | #背景 経営者が短時間で判断するための要約です。#依頼 下の文章を要約してください。#出力 結論、理由、確認が必要な点の順にしてください。 | 判断に不要な細部まで残していないか |
| 稟議の下書き | #役割 管理部門の担当者として。#背景 新しい業務ツールの導入を社内で申請します。#依頼 稟議に入れる見出し案を作ってください。#出力 目的、背景、費用、リスク、確認事項に分けてください。 | 費用や契約条件を推測させていないか |
テンプレート化して保存・再利用
良いプロンプトは、個人のメモ帳に置いたままにしないほうがよいでしょう。部署で使うものは、用途、作った人、更新日、使ってよい材料、気をつける情報を添えて保存しておきます。
保存するときは、完成したプロンプトだけでなく、4欄の形も残してみてください。後から制度や提出先が変わったときに、どの欄を直せばよいかがすぐに分かります。
テンプレートには、禁止事項も短く入れておきます。個人名を入れない、契約金額は実額を書かない、資料にない内容は補わせない、のように欄ごとに注意を置いておきましょう。
社員が使った後は、うまくいったものだけを共有するのではなく、直した履歴も残してみてください。回答がずれた原因を、次に使う方が学ぶことが出来ます。
テンプレートは完成品ではなく、会社の手順が変わるたびに直していく仕事道具になります。半年に一度など、見直すタイミングも決めておきましょう。
注意点|機密・個人情報、ハルシネーション、確認
プロンプトを上手に書けるようになるほど、社内の情報をたくさん入れたくなってしまいます。だからこそ、背景と材料の欄には、入れてよい情報と入れない情報の線を引いておきます。
注意点(機密・個人情報、ハルシネーション、確認)
機密情報や個人情報の扱いは、プロンプトの上手さとは別の問題になります。取引先名、社員名、個人の評価、契約金額、未公開資料の中身は、社内ルールに沿って扱ってください。
背景の欄は、匿名にする練習の場所にもなります。取引先A、担当者、対象部署、契約条件の要約、といった形に置き換えれば、仕事の文脈を保ったまま余計な情報を減らすことが出来ます。
ハルシネーションとは、AIが事実ではない内容をもっともらしく返してしまう問題のことです。対策として、材料を限定し、資料にないことは不明と書くように指示しておきましょう。
PerplexityのAgent API向け文書でも、検索で見つからないときは推測せず、そう伝えるよう指示する方法が説明されています。検索や調査のプロンプトでは、見つからなかったときの扱いまで決めておくと安心です。
出力の確認は、人の仕事として残ります。AIが作ったメール文や議事録、稟議の下書きはそのまま送らず、事実、金額、相手先、社内ルールとのずれを見てください。
プロンプトに社内事情を書くほど、匿名化と確認の手順もセットで必要になります。便利な欄ほど、先に線引きを決めておきましょう。
- 背景欄に実名を入れない顧客名や社員名、部署の内部事情は、取引先Aや対象部署のように置き換えます。
- 材料欄は使う資料を限定する下のメモだけ、添付した規程だけ、のように範囲を決めておきます。
- 未記載の内容を補わせない資料にないことは不明と書いてください、という一文を必ず入れます。
- 送信前に人が確認する金額、固有名詞、日付、相手先、社内ルールの5つを見ます。
- 共有前にプロンプトを棚卸しする古い制度名や提出先が残っていないかを確かめましょう。
社内ルールから整えたい場合は、生成AIの社内ガイドラインの作り方も参考になります。個人のアカウントで仕事の情報が使われていないか気になる方は、野良AI(シャドーAI)の整理から始めてみてください。
会社の出費として見る欄も作る
プロンプトを社内に広げていくと、教育だけでなく、契約と費用の話も出てきます。個人がばらばらに有料サービスを使っていると、プロンプトの質以前に、誰が何に支払っているのかが見えにくくなってしまいます。
費用を見るときは、月額の単価だけで判断しないようにしてください。見積書や公式の料金で確認した単価に、使う人数と月数を掛けて、毎月の支払いと年間の支払いに直してみましょう。
たとえば1人あたりの月額で契約するサービスなら、社員が増えた分だけ会社の出費も増えていきます。部署ごとに別のサービスを選んでいると、同じ仕事のために複数の契約が積み上がってしまいます。
確認できていない金額を、推測で表に入れるのは避けましょう。料金はプランや支払い方法、利用量で変わるため、社内の見積もり表には確認日と出典を添えておくのが安全です。
プロンプト共有の台帳には、おすすめするAIの環境、使ってよい部署、契約の管理者も入れておくとよいでしょう。良いプロンプトだけが広がって、使う環境が個人任せのままだと、管理の負担が残ってしまいます。
社内で費用を見直したい方は、生成AIのコスト管理もあわせて確認してみてください。プロンプトの共有と契約の整理を分けずに見ると、教育と管理を同じ流れで進めることが出来ます。
もう一つ見落としやすいのが、作ったプロンプトを誰が直すのかです。制度や提出先、使うAIが変わったときに古い指示文が残っていると、社員の方が迷ってしまいます。
共有するプロンプトには、管理する人と見直す日を添えてください。小さな欄ですが、会社の手順として扱うなら、作りっぱなしを防ぐ目印になります。
良いプロンプトを、社内で同じ環境から使う
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準適用。カスタムプラスでは、よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有できます。管理者ダッシュボードでは、利用ログ・権限・モデルON/OFFを管理できます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
プロンプトの4要素は必ず全部入れる必要がありますか?
役割と材料はどちらを優先すればよいですか?
良いプロンプトを保存するときは何を残せばよいですか?
AIにプロンプトを作らせてもよいですか?
回答が毎回ずれるときはどう直せばよいですか?
まとめ
プロンプトの書き方は、魔法の一文を探す話ではありません。してほしいこと、背景、出力の形、役割または材料の4欄に分けてみると、AIへの依頼を仕事の依頼として見直すことが出来ます。
4要素の中身は、出典によって少しずつ違います。GoogleはPersona・Task・Context・Format、Microsoftは目的・コンテキスト・ソース・期待する項目、DAIR.AIは命令・文脈・入力データ・出力指示子として整理しています。
共通しているのは、何をしてほしいか、どんな背景か、どんな形で返してほしいかの3つです。4つ目に役割を置くか材料を置くかは、仕事の種類で決めましょう。
回答がずれたときは、AIを責める前に、どの欄が足りないかを見てみてください。一般論なら背景、口調なら役割、形式なら出力の形、推測なら材料を足していきます。
社内で使うなら、テンプレートを個人のメモに閉じ込めず、4欄の記入シートとして共有しましょう。機密情報を入れないための書き方と、人が確認する手順まで一緒に決めておけば、使いやすいプロンプトが会社の資産になっていきます。
最初から完璧な型を作ろうとせず、よく使う仕事から1つ選んで試してみてください。直した履歴まで残すと、次の方も同じ失敗を避けやすくなります。
AI活用のほかの記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。複数のAIを使い分けたい方は、主要4AIの違いと使い分けも参考になります。
