Microsoft 365 Copilotの活用事例。部署別の使い方と効果が出た会社の共通点

Microsoft 365 Copilot(現在の名称はMicrosoft Copilot)の活用事例とは、WordやTeams、Outlookに組み込まれたCopilotを会社が業務に使い、その効果を公表した例のことです。部署を問わず効く場面は、会議の要約、メール処理、資料の叩き台、社内情報探しの4つに集まります。効果を公表した会社はどこも、いきなり全員に配らず、少人数で試して数字を測ってから広げる進め方をとっています。ライセンスの区分や前提条件はMicrosoft 365 Copilotでできることで整理していますので、あわせてご覧ください。

公開されている5社の事例を、発表主体・時期・測り方で並べる

公開事例の数字は、どれも企業やMicrosoftの発表で、第三者が検証した数字ではありません。測り方も、アンケートによる見込み、利用回数、時間の集計とばらばらになります。数字だけを横に並べて比べると、読み違えのもとになってしまいます。

下の表は、Microsoftの顧客事例と、Microsoft for businessの「お客様の声」に載っている5社の内容を、発表主体・時期・測り方・最初の人数で並べ直したものです。数字の横には、誰がどう測った数字なのかを必ず添えています。

会社発表主体・掲載先時期最初の人数・進め方公表された数字測り方
日本製鉄Microsoftの顧客事例(2025年5月22日公開)パイロットの成果を受けて、2025年1月にライセンス数を4,400に拡大パイロットはユーザー300名。拡大後は約70%を各部署向け、残りを挙手制に4,400ユーザーへ拡大後の1か月間で、Teams会議のAIメモ利用約2万件、メールスレッドの要約約4,500件、Copilotのライセンスを持つ社員がCopilot Chatから行った社内ファイル検索のプロンプト送信5万回以上Microsoft Viva Insightsで見える形にした利用回数(時間の削減量ではない)
JCBMicrosoftの顧客事例PoCは2024年1月から3月までの約2か月。2024年6月に1,000ライセンス、10月に1,600ライセンス初期導入分の440ライセンスを、約70ある全部署に行き渡るように配分300人中7割が、社内外の情報の収集・検索にかかる時間が減ったと回答。1人あたり平均約5時間/月の削減効果が期待できるPoCの最終段階に取ったMicrosoft Formsのアンケート(回答300人・見込み)
デンソーMicrosoftの顧客事例(2024年12月3日公開)2024年4月に本社社員6,000人へ導入。社員3万人への全社展開が決定スモールスタートで先行導入し、効果を測定導入人数の拡大(6,000人、3万人へ展開決定)先行導入で効果を測った成果を受けて拡大、と発表
学情Microsoft for businessの「お客様の声」(公開日の記載なし)2024年から導入。2025年2月から3か月間で6回のトレーニングDX・マーケティング戦略部のメンバーと経営層による試行から、ロードマップを作って段階導入2025年2月から4月までで合計5,004時間の業務時間削減、金額に換算して1,305万円のコスト削減。直近の調査でアクティブユーザー率100%同社発表(算出方法の記載なし)
ユーザーサイドMicrosoft for businessの「お客様の声」(公開日の記載なし)時期の記載なし営業部 営業推進課の課長が、自分の業務から検証するスモールスタート10時間/月の残業時間を削減課長本人の発言(Power BI・Power Automateの併用を含む)

※各社の内容は、2026年10月15日時点でMicrosoftの公開ページに掲載されている記載をもとにしています。数字はいずれも企業・Microsoftの発表で、第三者による検証はありません。

表に載せたのは、原文と測り方を確かめられた数字だけになります。時間の数字はJCB・学情・ユーザーサイドの3社分で、JCBの約5時間はアンケートからの見込み、学情の5,004時間は算出方法が書かれていません。日本製鉄については、会議メモやメール要約が何件使われたかという利用回数を載せることにしました。他社の数字は自社の見込みに使わず、自社で測る項目を選ぶ参考にとどめましょう。

もう1つ見ておきたいのは、どの会社も最初は限られた人数から始めている点です。日本製鉄はパイロット300名、JCBは440ライセンス、学情は1つの部署と経営層、ユーザーサイドは課長1人から始まっています。社員10〜200名の会社に置き換えるなら、まず数名から10名ほどで試す形が無理のない出発点になります。

日本製鉄・JCB・デンソーの事例は、配ったライセンスや導入人数が千を超える単位の話です。学びたいのは数字より進め方のほうで、どの部署に何人配り、何を測り、どんな条件で広げたかは、人数が少ない会社でも縮めて使うことが出来ます。

部署別の使い方|場面・渡す資料・確認する点を1つの表で比べる

部署ごとの使い方は、使う場面、Copilotに渡す資料、出てくる物、人が確認する点、任せない範囲の5つをそろえて比べると判断しやすくなります。下の表は、公開事例に出てくる場面とMicrosoftの機能説明をもとに、社員10〜200名の会社によくある部署へ当てはめたものです。自社の部署名に読み替えながら、どの行から試すかを決めてみてください。

部署使う場面Copilotに渡す資料出てくる物人が確認する点任せない範囲
営業商談の会議の要約、提案書や製品比較資料の叩き台、お客様へのメールの下書き商談の録画や文字起こし、過去の提案書、製品資料商談メモ、資料の下書き、メールの文案金額・納期・約束した内容が正しいか、お客様の社名と氏名見積金額や値引きの決定、お客様への送信そのもの
総務・人事社内規程や手順書への問い合わせ対応、面談記録の整理、募集文や社内案内の下書き規程・手順書のファイル、面談のメモ回答の文案、要点の一覧、文書の下書き最新の規程をもとにしているか、個人情報が混ざっていないか人事評価や採否の判断、規程の解釈の最終判断
経理Excelの集計表の分析、数式づくり、月次の増減の説明文の下書き集計表、勘定科目の一覧数式、グラフ、増減の説明文数式の参照範囲、元の帳簿と合計が一致するか仕訳の確定、税務の判断
情報システム社内からの問い合わせの切り分け、手順書の更新、Excelのマクロや関数過去の問い合わせ、手順書、既存のマクロ回答案、手順書の改訂案、コード案今の環境で手順どおりに動くか、権限の設定に触れていないか権限の変更、本番の環境での実行
カスタマーサポート問い合わせメールの要約、回答の下書き、担当交代時の引き継ぎメモ問い合わせの履歴、FAQ、製品資料回答の文案、やり取りの要約事実と違う案内がないか、約束していない対応を書いていないか返金や補償の可否、クレームへの最終回答
経営層・管理職長いメールスレッドの要約、会議の決定事項と担当の確認、報告資料の要点整理メールスレッド、会議の記録、部署からの報告資料要約、決定事項と担当の一覧要約で抜けた論点がないか、数字が元の資料と合っているか経営判断そのもの

表の「任せない範囲」は、どの部署でも、お金・人・約束が決まる場面に集まります。Copilotが出すのは叩き台までと決め、決める工程は人に残す線を部署ごとに引いておきましょう。この線が決まっていないと、確認の手間だけが増えて、効果が見えにくくなってしまいます。

公開事例に出てくる部署別の場面

表の場面は、公開事例にも同じ形で出てきます。学情では、Teams会議の要約を商談メモにまとめたり、面談の動画から推薦文を作ったりしています。スカウトメールの誤字脱字チェックや、Dynamics 365の商談の要約にも使っているそうです。ユーザーサイドでは、営業推進課の課長が、セミナー案内メールの要約とリスト化、製品比較資料の叩き台、返答期限のある書類の要点確認に使っています。Excelのマクロや関数を聞いたり、Teams会議の録画から議事録とアクションリストを作ったりする使い方も、同じ事例に出てくる場面になります。

Microsoftの導入支援サイトにある活用シナリオの一覧(Scenario Library)も、Finance(財務)、Human Resources(人事)、Information Technology(IT)、Sales(営業)など部門ごとに分かれています。ただし総務に当たる区分はないため、総務の方は人事やITの行を組み合わせて読むのが近道になります。

マーケティングや法務のように表にない部署も、同じ5つの列で書き出してみてください。列を埋めていくと、任せない範囲が広すぎて、使う場面がほとんど残らない部署も見えてきます。そうした部署は試験導入の対象から外し、ほかの部署の結果を待ってから考えても遅くありません。

会議とメール|どの部署でも効果が出やすい2つの場面

どの部署でも最初に手応えを感じやすいのは、会議とメールの2つでしょう。会議やメールは部署を問わず毎日発生し、使った分だけ時間の差がはっきり出るためです。どの部署の方にとっても、使い始めの壁が低い場面になります。

Teams会議の自動要約・議事録・アクション抽出

Microsoftのライセンスの説明では、Teamsで「会議の要約(最大30日間)と文字起こし、アクションアイテムのキャプチャ」が使えると挙げられています。会議の要約をどのライセンスで使えるかは、導入前に親記事のライセンスの区分で確かめてみてください。日本製鉄では、4,400ユーザーへ広げた後の1か月間で、約2万件のTeams会議のAIメモが使われたと公表されています。会議の多い部署から試すと、使われ方の変化を数字で追いやすくなります。

会議の要約は、決まったこと・担当・期限の3つに分けて出させるのがおすすめです。この形なら、出席者へそのまま回すことも出来ます。要約には聞き違いや、言っていない約束が入ることもあるため、送る前に出席者の1人が目を通しましょう。確認する人を会議ごとに決めておけば、議事録の責任があいまいになりません。社外の方が参加する会議で文字起こしを使うときは、始める前に一言断っておくと安心でしょう。

Outlookのメール要約・返信下書き

Outlookでは、メールの下書き、スレッドの要約、書き方のコーチングのヒントが機能として挙げられています。日本製鉄の公表した1か月間の数字にも、約4,500件のメールスレッドの要約が含まれます。長いやり取りに途中から加わる管理職や、休み明けにメールがたまっている方には、特に使いやすい場面でしょう。

返信の下書きは、伝えたい結論と相手との関係を一言添えて頼むと、手直しが少なくなります。学情は、若手社員のビジネスメールの教育にも、Outlookでの要約と下書きを生かしているそうです。送る前に、宛名・日付・金額の3つだけは必ず自分の目で確かめてください。

メールの要約は、自分あての依頼や期限だけを抜き出すように頼むと、読む量をさらに減らせます。ユーザーサイドの課長がセミナー案内メールを要約してリストにまとめ、SharePointで社内に広げたのも、同じ考え方の使い方になります。部署の全員が読む案内メールほど、1人が要約して共有する形の効き目が大きくなるでしょう。

資料づくりと社内情報探し|追加料金なしで使える範囲との境目

資料の叩き台と社内情報探しは、効果が大きい反面、ライセンスによって使える範囲が変わる場面になります。どこまでが追加料金なしで、どこからがアドオンなのかを、先に押さえておきましょう。Microsoft 365 Copilot(Basic)もアドオンは不要ですが、Copilot Chat(Basic)とどちらに当たるかは、テナントの構成とライセンスによって変わります。ここをあいまいにしたまま配ると、期待した使い方が出来ず、がっかりされてしまいます。

Word・Excel・PowerPointの使い方(下書き・分析・スライド化)

Microsoftの説明では、Wordは文書の下書き・書き換え・要約、Excelはデータの分析と数式・グラフづくり、PowerPointはプロンプトや既存の資料からのプレゼンテーション作成に対応しています。営業の提案書なら、過去の提案書と製品資料を渡して骨組みを作らせ、数字と事例は人が差し替える分担が合うでしょう。ユーザーサイドの課長は、毎日15分〜60分かかっていた日次レポートを、Power BIとPower Automateの仕組みに切り替えています。その組み立ては、Copilotに聞きながら進めたそうです。同じ課長が話す残業時間10時間/月の削減は、Power BIなどの併用を含む数字になります。

Excelでは、数式の参照範囲がずれていても、出てきた表は一見きれいに見えてしまいます。経理の方は、Copilotが作った合計を元の帳簿と1回突き合わせる手順を、作業の最後に入れてください。

PowerPointは、既存の資料をもとにした作成のほか、要約や編集にも対応しています。社内の会議資料なら、Wordで書いた報告書からスライドの骨組みを作らせ、図や数字は人が整えると、手戻りが少なくて済みます。

社内情報の横断検索・社内問い合わせ

社内のメール・ファイル・会議をまとめて探す使い方は、Microsoft 365 Copilot(Premium)というアドオンの範囲になります。Premiumは、Webの情報と、Microsoft GraphやWork IQを通じた社内の作業データの両方を使う形です。日本製鉄の1か月で5万回以上送られた社内ファイル検索のプロンプトは、この使い方の例になります。総務や情シスに届く「この規程はどこにあるか」「この手順はどれが最新か」といった問い合わせを、減らせる場面でしょう。社内の資料を横断して探す使い方を広げる前には、フォルダの共有範囲の見直しが欠かせません。

追加料金なしのCopilot Chatで出来ること・出来ないこと

追加料金なしのCopilot Chat(Basic)は、対象のMicrosoft 365ライセンスに含まれる基本の形になります。Microsoftの説明では、Copilot ChatからはWord・Excel・PowerPoint・OneNoteの中のCopilotは使えません。社内の資料は、貼り付けるかアップロードするか、TeamsやOutlookなどで開いている内容を対象にして渡す形です。

区分位置づけWord・Excel・PowerPoint・OneNoteのCopilot社内のメール・ファイル・会議の横断検索
Copilot Chat(Basic)対象のMicrosoft 365ライセンスに含まれる基本の形使えない自動では探さない。貼り付け、ファイルのアップロード、TeamsやOutlookなどで開いている内容、従量課金制のエージェントで渡す
Microsoft 365 Copilot(Basic)アドオンなしでの標準アクセス標準アクセス。サービスの混み具合の影響を受け、1日の中でも変わる場合がある自動では探さない。Copilot Chat(Basic)と同じく、貼り付け・アップロード・開いている内容・従量課金制のエージェントで渡す
Microsoft 365 Copilot(Premium)アドオンライセンスフル機能への優先アクセスWebとMicrosoft Graph・Work IQの作業データを使う。管理者向けの高度な管理と分析も付く。Copilot Coworkは使用量ベースの課金

※2026年10月15日時点のMicrosoft Learn「Microsoft 365 Copilot の概要」の記載をもとにしています。料金の金額はこの記事では扱っていません。

金額とライセンスの組み合わせは、ライセンス3段階と前提条件の解説で確かめてみてください。もう1つ、部署によって合うAIが違う点も見ておきたいところです。長い文章の下書きはClaude、出典付きの調べ物はPerplexityを好む方もいて、向き不向きは主要4AIの使い分けで整理しています。Copilotを全員に配る前に、部署ごとにどのAIが合うかを比べられる環境があると、配る範囲を決めやすくなります。

Copilotを全員に配る前に、部署に合うAIを比べてみる

部署ごとに合うAIを確かめるなら、複数のAIを会社の契約1本で比べられる環境が近道になります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

効果が出た会社の共通点|5社の進め方を並べて分かること

5社の進め方を並べると、ライセンスを配る相手・配る条件・広げる判断の3点に、共通する工夫が見えてきます。どれも大がかりな仕組みではなく、社員10〜200名の会社でも取り入れやすいものばかりになります。

共通点公開事例での具体例社員10〜200名の会社での置き換え
部署に行き渡らせ、人選を偏らせないJCBは初期の440ライセンスを約70ある全部署に行き渡るよう配り、各部署のマネージャーに役職・職種・年齢を重ねない人選を依頼。日本製鉄も100以上ある部署のすべてに使う機会を用意各部署から1名ずつ、年次と職種が重ならないように選ぶ
使わない人の分は返してもらう日本製鉄は、各部署に割り当てたライセンスを30日間使わなければ返却するルール。JCBは使っていない人に権利を譲ってもらい入れ替え30日使わなければ別の希望者へ回すと、配る前に伝える
費用対効果のラインを先に決めてから試すJCBは、1人あたり平均約5時間/月の削減見込みを、ライセンスの費用対効果に見合うと考えていたラインと比べ、次に進む根拠に1人あたり月に何時間減れば元が取れるかを、試す前に計算しておく
小さく始めて、測ってから広げるデンソーはスモールスタートで先行導入して効果を測り、本社6,000人へ。学情は一部の部署と経営層の試行からロードマップを作り、段階導入経営者と1つの部署で試し、数字を見てから次の部署へ
使う前に学ぶことを条件にするJCBは勉強会動画の受講と、生成AI活用ガイドラインの確認小テストを必須に。学情は3か月で6回のトレーニングを開催短い社内勉強会とガイドラインの確認を、アカウントを渡す条件にする
使い方を共有する場所を作るJCBはSharePointに「生成AI社内活用コミュニティ」サイト(動画・Tips集)。学情はコピー&ペーストで使えるプロンプト集と、部門ごとのユースケースのまとめ部署ごとの使い方を、共有フォルダ1つにまとめる
自分の業務の小さな改善から始めるユーザーサイドの課長は日次の作業から使い始め、いきなり全社規模の経営課題には取り組まない考え方毎日・毎週くり返す作業を、1人1つ選んで試す
利用状況を見える形にする日本製鉄はMicrosoft Viva Insightsで利用状況を可視化誰がどの場面で何回使ったかを、月1回確かめる
今ある規約をリスク確認の土台にするJCBはMicrosoft 365の製品条項やデータ保護規約を参照し、リスクアセスメントをスムーズに終了今使っているMicrosoft 365の契約と規約を、確認の出発点にする

人選を偏らせない理由

JCBは各部署のマネージャーに人選を任せ、役職や職種、年齢が重ならないように頼んでいます。若手だけ、ITに詳しい方だけで試すと、ほかの層に広げたときに同じ効果が出るかどうかが分からなくなってしまいます。日本製鉄も、100以上ある部署のすべてにCopilotを使う機会を用意することに配慮したと紹介されています。社員の少ない会社では、ITが得意な方とそうでない方を組にして試すのも1つの手になります。

30日使わなければ返す、というルールの効き目

日本製鉄のルールは、各部署に割り当てたライセンスを30日間使わなければ返してもらうというものです。配った後に眠ったままのライセンスを減らし、使いたい方へ回せる仕組みになります。JCBも、追加の600ライセンスを挙手制と抽選で配り、使っていない人には権利を譲ってもらって入れ替えています。少人数の会社ほど1人分の費用が目立つため、返却のルールは配る前に伝えておきましょう。

費用対効果のラインは試す前に決める

JCBは、PoCの最後にMicrosoft Formsでアンケートを取り、300人中7割が情報の収集・検索の時間が減ったと答えた結果をまとめました。そこから見込んだ1人あたり平均約5時間/月の削減を、費用対効果に見合うと考えていたラインと比べ、次の段階に進む根拠にしています。ラインが先にあると、試した後に広げるかどうかを数字で決めることが出来ます。

学ぶことを利用の条件にする

JCBは、勉強会の動画を見ることと、生成AI活用ガイドラインの確認小テストに答えることを、使い始める条件にしています。学情も、2025年2月からの3か月間で6回のトレーニングを開き、各回200〜250名ほどが参加したそうです。社内ルールがまだない場合は、生成AIの社内ガイドラインの作り方を土台に、短い確認テストを作ってみてください。

Microsoftが示す進め方も同じ順番

Microsoftの導入手引きも、少人数にライセンスを配るPilot、対象を広げるDeploy、利用状況と定着を見守るOperateの3段階で進める形を示しています。パイロットの相手は、複数の部門から、すでにMicrosoft 365をよく使っている方を選び、社内の推進役になってもらう考え方です。公開事例の会社が実際にとっている順番と、ほぼ重なる内容になります。

日本製鉄が更新の頻度を変えた点と、その後の広げ方

日本製鉄は導入にあたって、Microsoft 365の更新の頻度を半期ごとから毎月に切り替えています。その際は、社内で作ったExcelのVBAの動作確認と、毎月の更新をどう両立させるかが課題になったそうです。自社で作ったマクロが多い会社は、試験導入の前に情シスの方と更新の頻度を話し合っておきましょう。日本製鉄は、オンライン勉強会やプロンプトのコンテストといった、使い方を広める取り組みも紹介しています。グループ全体では、すでに11,000ライセンスを導入しているそうです。使い方を広める場を導入とあわせて用意している点は、会社の規模を問わず参考になるでしょう。

社員10〜200名の会社向け 試験導入のひな形

社員10〜200名の会社なら、約2か月・数名から始め、測る数字と広げる条件・やめる条件を先に書いてから配るのが進めやすい形になります。期間の約2か月は、JCBのPoCとほぼ同じ長さにしています。下のひな形の数字は目安なので、自社の人数に合わせて書き換えてみてください。

項目社員10〜50名の会社社員51〜200名の会社
期間導入前の2週間で基準値を取り、その後に約2か月試す同じ
試す人数経営者を含む3〜5名各部署から1名ずつ、合わせて10〜20名
選び方会議とメールが多い方を優先部署・職種・年次が重ならないように選ぶ(JCBの人選と同じ考え方)
試す業務1人1つ、毎日か毎週くり返す作業部署ごとに1〜2つ、部署別の判断表の行から選ぶ
測る数字対象業務の1回あたりの時間、週の利用回数、手直しの回数同じ数字に、部署ごとのアンケートを加える
広げる条件先に決めた1人あたり月の削減時間を超えた業務がある同じ条件を満たした部署から順に広げる
やめる・入れ替える条件30日使わなかった方の分は、別の希望者へ回す同じ。基準値より時間が減らなかった業務は対象から外す
使い始める条件ガイドラインの確認と、短い社内勉強会同じ内容に、使い方を共有するフォルダを加える

※人数と期間は目安です。JCBのPoC(約2か月)と、日本製鉄の返却ルール(30日)を手がかりにしています。

人数が少ない会社ほど、1人が使うかどうかで結果が大きく動いてしまいます。試す方には、なぜその方に頼むのかと、2か月後に何を聞くのかを最初に伝えておきましょう。頼まれた理由が分かっていれば、使う側も目的を持って試すことが出来ます。

2か月の進め方を週ごとに分ける

約2か月の試験導入は、準備・試す・広げる・比べるの4つの区切りで考えると、途中で止まりにくくなります。

時期やること担当
導入前の2週間対象業務を選び、1回あたりの時間を記録して基準値を取る。ガイドラインの確認と社内勉強会を済ませる試す方全員・経営者
1〜2週目部署別の判断表の場面から1つ選び、毎日か毎週使う。うまくいった頼み方をメモに残す試す方
3〜6週目使う場面を1〜2つ増やし、週ごとの利用回数を数える。30日使っていない方がいないかを見る試す方・取りまとめ役
7〜8週目最後の2週間で同じ業務の時間を記録し、アンケートを取る試す方・取りまとめ役
終了後広げる条件・やめる条件と照らし合わせ、次の部署と人数を決める経営者・取りまとめ役

取りまとめ役は、情シスや総務の方が1人いれば足ります。週に1回、試す方の話を短く聞く時間を取るだけでも、使われていない状態に早く気づくことが出来ます。

プロンプトを業務テンプレートにして社内で共有する

試験導入でうまくいった頼み方は、その場限りにせず、業務テンプレートとして残していきましょう。学情はコピー&ペーストで使えるプロンプト集と部門ごとのユースケースのまとめを作り、JCBはSharePointに動画とTips集を置くサイトを用意しています。テンプレートは、入れる資料・頼む文・出てくる形・人が確認する点・任せない範囲の5つをそろえると、ほかの方もそのまま使えます。

欄書く内容例(営業の商談メモ)
入れる資料Copilotに渡すもの商談のTeams会議の文字起こし
頼む文そのまま貼れる指示決まったこと、お客様の宿題、自社側の宿題、次回の日程を4列の表にしてください
出てくる形表・箇条書き・文字数4列の表と、3行の要約
人が確認する点送る前に見るところ金額・納期・お客様の社名と氏名
任せない範囲人が決めること値引きの判断、お客様への送信

テンプレートがたまってくると、新しく使い始める方の最初の1週間がぐっと楽になります。置き場所は、部署ごとのフォルダを1つ決めるだけで充分です。

部署ごとに最初に試す1つ

試す業務に迷ったら、部署別の判断表から次のように1つずつ選んでみてください。

  • 営業は、商談の会議の要約を商談メモの形にする作業
  • 総務・人事は、よく聞かれる社内規程の問い合わせへの回答の下書き
  • 経理は、月次の集計表の増減を説明する文の下書き
  • 情報システムは、手順書の改訂案づくり
  • カスタマーサポートは、長い問い合わせメールの要約
  • 経営層・管理職は、休み明けにたまったメールスレッドの要約

どれも毎週くり返し発生し、出来上がりを人がすぐに確かめられる作業です。確かめにくい作業から始めると、時間が減ったのかどうかが分からなくなってしまいます。

効果測定は導入前の基準値から|測る数字のひな形

効果を測るには、使い始める前の時間を基準値として取っておくことが出発点になります。導入後に速くなった気がすると聞いても、比べる元の数字がなければ、広げる判断には使えません。対象の業務ごとに、導入前の2週間だけ、1回あたりにかかった時間を記録してみてください。

測る数字取り方公開事例での近い例
対象業務の1回あたりの時間導入前の2週間と、試験導入の最後の2週間で、同じ業務の時間を記録して比べるユーザーサイドの日次レポート(毎日15分〜60分かかっていた)
使った回数週ごとに、会議の要約・メールの要約・資料の下書きの回数を数える日本製鉄の1か月間の会議AIメモ約2万件、メール要約約4,500件
使っている人の割合30日の間に1回以上使った方の割合学情のアクティブユーザー率100%(同社発表)
時間が減った実感試験導入の最後にアンケートで聞くJCBの300人中7割が時間が減ったと回答(Microsoft Formsのアンケート)
手直しの量出てきた下書きを、そのまま使えた・直して使った・使わなかったの3択で記録公開事例に数字なし
差し戻しの回数確認する方が、下書きの直しを頼んだ回数を週ごとに数える公開事例に数字なし
1人あたり月の削減時間1回あたりの時間の差に、月の回数をかけるJCBの平均約5時間/月(アンケートからの見込み)

Microsoftが用意しているCopilotダッシュボード(Viva Insights)も、Readiness(準備)、Adoption(利用)、Impact(効果)、Sentiment(受け止め)の4つに分けて状況を見る形になっています。小さな会社なら、この4つを表計算ソフト1枚に置き換えて、月に1回見るだけでも足ります。

1人あたり月の削減時間で、元が取れるかを見る

広げるかどうかは、1人あたり月に減った時間に時給をかけた額が、1人あたりの月額を上回るかで決める形が分かりやすいでしょう。式にすると、1人あたり月の削減時間×時給 ≧ 1人あたりのライセンスの月額、という形になります。たとえば1回30分の作業が20分になり、それが月に20回あるなら、1人あたり月200分、約3.3時間の削減と数えることが出来ます。ライセンスの月額は、契約する時点の公式の金額で計算しましょう。JCBが先に決めていたのも、こうした費用対効果のラインでした。

時間で表しにくい効果もあります。議事録の抜けが減った、返信の遅れが減ったといった変化は、アンケートの自由記述で拾うのが現実的です。数字と声の両方がそろったところで、次の部署へ広げるかを決めていきましょう。

試験導入の最後に聞くアンケートのひな形

アンケートはMicrosoft Formsで作れば、試す方もいつもの画面で答えることが出来ます。質問は5問ほどに絞り、次のような形にしてみてください。

  1. 対象の業務で、1回あたりの時間は導入前と比べてどうなりましたか(減った・変わらない・増えた)
  2. Copilotの下書きを、そのまま使えた割合はどのくらいでしたか
  3. いちばん役に立った場面を1つ教えてください
  4. 使いにくかった場面や、確認に時間がかかった場面はありましたか
  5. ほかの部署の方にもすすめたい使い方はありますか

3問目と5問目の答えは、そのまま業務テンプレートの候補になります。4問目で多く挙がった場面は、任せない範囲に移すかどうかを話し合う材料にしましょう。

人による確認・機密情報・アクセス権限|広げる前に決める3つ

部署に広げる前に、出力の確認、入れてよい情報、ファイルの共有範囲の3つは決めておきましょう。3つとも、試験導入の段階で決めておくほうが、後から直すより手間が少なくなります。

  • 入れてはいけない情報を決めるお客様の個人情報や、未公開の取引条件など、社外に出せない情報をどう扱うかを書き出します。
  • 外に出す前に人が読むお客様に送る文書と、社外に公開する資料は、担当者が読んでから出すと決めます。
  • 会社が認めたAI以外に業務の資料を入れない個人のアカウントで使うAIに、業務の資料を貼らないことを全員で確認します。
  • 共有範囲を見直すPremiumを入れる前に、全社に公開されたフォルダやサイトの中身を確かめます。
  • 困ったときの連絡先を決める誤った出力に気づいたときや、入れてはいけない情報を入れたときに、誰へ知らせるかを決めます。

人による確認とハルシネーション(もっともらしい誤り)

生成AIは、事実と違う内容をもっともらしく書くことがあり、これをハルシネーションと呼びます。部署別の判断表で人が確認する点を決めたのは、このためです。金額・日付・人名・規程の条文は、元の資料と1回突き合わせる習慣をつけてください。自社で小テストを作るなら、こうした注意点を問題に入れると、全員の理解をそろえることが出来ます。社外に出る文書は、出力を受け取った本人だけに任せず、もう1人が読む形にすると見落としが減っていきます。

機密情報の入力ルールとアクセス権限(過剰共有)の見直し

入力してよい情報と、入れてはいけない情報の線引きは、試験導入の前にガイドラインで決めておきましょう。JCBは、Microsoft 365の製品条項やデータ保護規約を参照して、リスクアセスメントをスムーズに終えたと紹介されています。すでにMicrosoft 365を使っている会社なら、今の契約の規約を確認の土台に出来る場合があります。ガイドラインで決めた内容は、試験導入の勉強会で読み合わせると、全員に同じ形で伝わります。

社内の資料を横断して探すPremiumを入れる場合は、フォルダやサイトの共有範囲が広すぎないかも、先に見直しが要ります。共有範囲の考え方は、前提条件と過剰共有の解説にまとめています。社員が会社の知らないAIを使い始める野良AIへの備えは、シャドーAI(野良AI)の解説も参考になるでしょう。

Copilotを全員に配る前に、部署に合うAIを比べる

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです。会話の途中でもモデルを切り替えられ、自社資料を読み込ませて回答させる社内文書RAGや、よく使う指示と手順を社内限定のBOTにして共有するカスタムプラスも使えます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

Microsoft 365 CopilotとMicrosoft Copilotは同じものですか?
Microsoftの説明では、Microsoft 365 Copilotアプリは、Microsoft Copilotと呼ばれるようになりました。Microsoft 365 Copilot Chatアプリも、Microsoft Copilot Chatという名前に変わっています。社内で案内するときは、新しい名前と以前の名前を並べておくと伝わりやすくなります。
追加料金なしのCopilot Chatでも、公開事例と同じ使い方が出来ますか?
一部は出来ます。Copilot Chat(Basic)では、資料を貼り付けるかアップロードするか、TeamsやOutlookなどで開いている内容を対象にして、要約や下書きを頼む形になります。社内のメール・ファイル・会議を横断して自動で探す使い方は、Microsoft 365 Copilot(Premium)というアドオンの範囲です。日本製鉄の社内ファイル検索のような使い方を考えている場合は、ライセンスの区分を先に確かめてください。
社員が少ない会社でも、公開事例の進め方は参考になりますか?
参考になります。公開事例の会社はどこも、数百名や1つの部署、課長1人といった小さな単位から始め、効果を測ってから広げる進め方をとっています。社員10〜200名の会社なら、約2か月・数名で試す、30日使わなかった分は別の方へ回す、費用対効果のラインを先に決める、といった進め方を縮めて使えます。
公開事例の削減時間を、自社の効果の見込みに使ってもよいですか?
おすすめしません。公開事例の数字は企業やMicrosoftの発表で、JCBの約5時間/月はアンケートからの見込み、学情の5,004時間は算出方法の記載がありません。業務の中身も人数も違うため、自社の対象業務で導入前の基準値を取り、試験導入の後に比べる形が確実です。
どの部署から試すのがよいですか?
会議とメールが多い部署から始めると、変化が見えやすくなります。営業や管理職のように、商談や社内の会議が多く、メールのやり取りが長くなりがちな部署が候補です。総務や情シスの社内問い合わせ対応は効果が大きい反面、社内情報を横断して探す使い方では、Premiumのライセンスとファイルの共有範囲の見直しが必要になります。
Copilot以外のAIと併用してもよいですか?
併用している会社もあります。デンソーは、特定の業務向けにはAzure OpenAI Studio、汎用のオフィス業務向けにはMicrosoft 365 Copilotと使い分けています。部署によって合うAIが違うこともあるため、会社として認めるAIの範囲を、ガイドラインで決めておきましょう。
試験導入は何人くらいから始めればよいですか?
公開事例では、日本製鉄がパイロット300名、JCBが初期導入440ライセンスから始めています。社員10〜200名の会社なら、10〜50名の会社で経営者を含む3〜5名、51〜200名の会社で各部署から1名ずつ10〜20名ほどが目安になります。人数より、部署と職種が偏らないことを優先してください。
Copilotの効果は、どのくらいの期間で判断すればよいですか?
JCBのPoCは、2024年1月から3月までの約2か月でした。導入前の2週間で基準値を取り、約2か月試してから、最後の2週間の時間と比べる形が判断しやすくなります。日本製鉄のように、30日使わなかった分を返してもらうルールを並行して置くと、使われていないライセンスにも早く気づけます。
経理や人事など、個人情報を扱う部署でも使えますか?
使う前に、入れてよい情報と入れてはいけない情報をガイドラインで決めておくことが前提になります。JCBは、Microsoft 365の製品条項やデータ保護規約を参照して、リスクアセスメントをスムーズに終えたと紹介されています。自社でも、今の契約の規約とフォルダの共有範囲を確かめてから、対象の業務を選んでください。
Copilotが作った文書を、そのままお客様に送ってもよいですか?
おすすめしません。生成AIは事実と違う内容をもっともらしく書くことがあるため、金額・日付・人名などは元の資料と突き合わせる必要があります。お客様に送る文書は、担当者が読んでから送ると社内で決めておきましょう。

まとめ

Microsoft 365 Copilotの活用事例を部署別に見ると、効く場面は会議の要約・メール処理・資料の叩き台・社内情報探しの4つに集まります。社内情報を横断して探す使い方はPremiumの範囲で、追加料金なしのCopilot Chatとは境目があります。部署ごとの使い方は、場面・渡す資料・出てくる物・人が確認する点・任せない範囲の5つで書き出すと比べやすくなります。

日本製鉄・JCB・デンソー・学情・ユーザーサイドの5社は、どこも少人数で試し、測ってから広げる進め方をとっています。部署に行き渡らせる人選、30日使わなければ返すルール、先に決める費用対効果のライン、学ぶことを利用の条件にする工夫は、社員10〜200名の会社でも使えるものです。まずは導入前の2週間で基準値を取り、約2か月の試験導入から始めてみてください。全員に配るかどうかは、試験導入の数字を見てから決めても遅くありません。

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