Microsoft 365 Copilotでできること。ライセンス3段階とアプリ別の機能、前提条件を整理する

Microsoft 365 Copilotとは、Word・Excel・PowerPoint・Outlook・Teamsといった業務アプリの中に組み込まれ、自社のテナントにあるメール・ファイル・会議記録を参照して答える法人向けのAIアシスタントです。ただし2026年9月16日時点の公式ドキュメントでは、製品名はMicrosoft Copilotに変わっており、さらに「できること」はライセンスの区分によって3段階に分かれると記載されています。この記事では、アプリごとにできることを並べる前に、まず自社が3段階のどこにいるのかを判定し、そのうえで前提条件・データの扱い・アクセス権の落とし穴・導入手順までを、公式ドキュメントで確認した内容だけで順番に整理します。

この記事に書いた仕様・機能・価格は、2026年9月16日にMicrosoftの公式ドキュメントおよび公式の料金ページで確認した内容です。主な参照先は、learn.microsoft.com の「Microsoft Copilot の概要」「Microsoft Copilot の Microsoft 365 アプリとネットワークの要件」「Microsoft Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」、learn.microsoft.com の Microsoft Copilot Studio の概要・標準ハーネスライセンス・Microsoft 365 Copilot の拡張、および www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365-copilot/pricing です(Microsoft Copilot の概要/アプリとネットワークの要件/データ、プライバシー、セキュリティ/プランと価格)。仕様は更新されるため、導入の判断前に同じページで再確認することをおすすめします。

Microsoft 365 Copilotとは何か|名称はMicrosoft Copilotに変わっている

Microsoft 365 Copilotは、Microsoft 365の業務アプリの中で動く法人向けの生成AIで、テナント内のデータを踏まえた回答や下書きを返すことを目的に作られています。まず押さえておきたいのは、2026年9月16日時点の公式ドキュメントでは、製品の呼び方そのものが変わっているという点です。

公式ドキュメントに書かれている名称の変更

Microsoft Copilotのプライバシーに関する公式ドキュメントの冒頭には、Microsoft 365 Copilotの名前がMicrosoft Copilotになり、Microsoft 365 Copilot Chatの名前がMicrosoft Copilot Chatになった、という趣旨の注記が置かれています。あわせて、一部のエクスペリエンス・ライセンス・機能については、移行期間中は引き続き従来の名称が残るとも書かれています。公式ドキュメントの見出し自体も、Microsoft Copilotの概要、Microsoft CopilotのMicrosoft 365アプリとネットワークの要件、という表記に変わっています。

実務上の影響は小さくありません。稟議書や比較資料をMicrosoft 365 Copilotという名前で作り、いざ管理センターや料金ページを開くとMicrosoft Copilot、Microsoft 365 Copilot Business、Copilot Chatといった別の言葉が並ぶ、という食い違いが起きます。名前が違うので別製品だと判断して検討が止まる、逆に同じものだと思い込んで違うライセンスを買う、という事故につながります。

無料版・個人向けプラン・GitHub Copilotなど、Copilotという名前の製品全体の違いはCopilotとは?同じ名前の製品の違いと会社で安全に使う方法で整理しています。

何を参照して答えるのか

Copilotの回答のもとになるものは、大きく分けて2種類あると整理できます。ひとつはWeb上の一般的な情報、もうひとつは自社のテナントにある作業データ、つまりメール・ファイル・会議・予定表・組織関係などです。公式ドキュメントでは、この作業データへの自動的な接続をMicrosoft GraphとWork IQが担うと説明されており、それがどの区分に含まれるかで、できることの幅が大きく変わります。

ここが、多くの比較記事で飛ばされがちな分岐点です。Copilotを検討する人の多くは、社内のファイルを読んで答えてくれること、つまり作業データへの接続を期待しています。しかしその機能は、Copilotという名前がついていればどれでも付いてくるわけではない、と公式ドキュメントには書かれています。

この記事の結論を先に置きます。Copilotでできることを調べる作業は、アプリごとの機能一覧を眺めることではなく、(1)自社がライセンスの3段階のどこにいるか、(2)作業データへの自動接続が含まれるか、(3)前提条件とアクセス権の設定が済んでいるか、の3つを順番に確認する作業です。この3つが揃わないと、機能一覧に書かれていることの半分は動きません。

できることはライセンスで3段階に分かれる

公式ドキュメントのMicrosoft Copilotの概要では、できることが3つの区分に分けて説明されています。Copilot Chat (Basic)、Microsoft 365 Copilot (Basic)、Microsoft 365 Copilot (Premium) の3つです。同じCopilotという名前でも、この3つは根拠にできるデータも、Officeアプリの中で使えるかどうかも違います。

3段階の違いを1つの表で見る

区分回答の根拠にできるデータWord・Excel・PowerPoint・OneNoteのCopilotエージェント
Copilot Chat (Basic)Webデータのみ。Microsoft Graphにはアクセスできないと記載アクセスできないと記載Webデータのエージェント。カスタムなどは従量課金制
Microsoft 365 Copilot (Basic)Webデータのみ(作業データへの自動接続のアドオンなし)標準アクセスあり。ただし優先アクセスや完全なチャット統合が含まれない場合がある作業データを扱うエージェントは従量課金制
Microsoft 365 Copilot (Premium)WebデータとMicrosoft Graph・Work IQによる作業データを自動で参照すべてのエクスペリエンスに優先アクセスWebデータと作業データのエージェントを含む

表の内容は、いずれも公式ドキュメントのMicrosoft Copilotの概要に記載されている整理にもとづいています。Premiumに含まれるものとしては、優先アクセスのほか、Microsoft Graph・Work IQ・Copilot検索・セマンティックインデックス作成による組織データの根拠付け、管理者向けの高度な管理コントロールと分析、使用状況レポート、組織のメッセージが挙げられています。

追加料金なしのCopilot Chatと有料のMicrosoft Copilotの線引き

Copilot Chat (Basic) は、対象となるMicrosoft 365ライセンスに含まれるスタンドアロンのベースラインのエクスペリエンスである、と公式ドキュメントには記載されています。つまり、すでにMicrosoft 365を契約していれば、追加のライセンスを買わなくても使える範囲があるということです。大企業向けの料金ページでも、対象となるMicrosoft 365サブスクリプションを持つすべてのMicrosoft Entraアカウントのユーザーが、追加料金なしで利用できると書かれています。

ただし、その範囲には明確な線が引かれています。公式ドキュメントでは、Copilot Chat (Basic) はWord・Excel・PowerPoint・OneNoteのCopilotにアクセスできないと記載されています。文書を開いたまま、その中で下書きを作らせたり要約させたりする使い方は、この区分には含まれていないという説明です。また、Copilot Chat (Basic) はMicrosoft Graphにアクセスできないため、組織のコンテンツを使いたい場合は、次のいずれかが必要になると書かれています。

  • チャットの入力欄に内容を貼り付ける
  • ファイルをアップロードする
  • TeamsやOutlookで開いている内容を対象にする
  • 組織データにアクセスできる従量課金制のエージェントを使う

この4つは、どれも人が毎回手を動かす必要があるか、別の課金が発生するかのどちらかです。追加料金なしの範囲で社内データを使う方法はある、けれども自動ではない、という理解が正確なところです。

なお、Copilot Chat (Basic) の入口として公式ドキュメントに挙げられているのは、m365copilot.com、Microsoft EdgeのCopilotアイコン、OutlookとTeamsのCopilot Chat、bing.com/chat、bing.com/copilotsearch、copilot.com、copilot.ai です。社員が何気なく使っているEdgeのCopilotアイコンも、サインインの状態によってはこの区分に入ります。会社が把握していないAI利用、いわゆる野良AIの棚卸しを進めている会社は、社外のサービスだけでなくこの入口も対象に含めておくと抜けが減ります。

Basicの「標準アクセス」という条件の読み方

3段階のうち、いちばん誤解を生みやすいのが Microsoft 365 Copilot (Basic) です。公式ドキュメントでは、この区分について、Word・Excel・PowerPoint・OneNoteのCopilotに標準アクセスがあると書かれています。しかし同じ箇所に、優先アクセスや完全なチャット統合が含まれない場合があること、そしてサービス容量の影響を受けて1日を通して変わることが、あわせて記載されています。

これは、使えるか使えないかの二択ではなく、混み具合によって体験が変わりうるという条件付きの記載です。試用中に、朝は動いたのに午後は反応が鈍いという報告が上がったとき、設定ミスを疑う前にこの条件を思い出せるかどうかで対応が変わります。Premiumでは、すべてのエクスペリエンスに優先アクセスが与えられると記載されています。

判定の順番。まず自社のMicrosoft 365契約で使えるのが3段階のどれなのかを管理センターで確認し、次に、期待している使い方が作業データへの自動接続を前提にしていないかを確認します。この2つがずれていると、機能一覧を何度読んでも判断できません。

社内データの自動参照はPremiumだけ|Microsoft GraphとWork IQ

社内データの横断検索、つまり社内用語・申請方法・規程などをチャットで探す使い方は、公式ドキュメントの整理では Microsoft 365 Copilot (Premium) の機能として説明されています。Premiumの説明には、Microsoft Graph・Work IQ・Copilot検索・セマンティックインデックス作成による組織データの根拠付けが含まれると記載されています。

Microsoft Graphが担っていること

Microsoft Graphは、Microsoft 365の中にあるメール・ファイル・予定表・連絡先といったデータにアクセスするための共通の入口にあたるものです。Copilotがユーザーの質問に対して社内の文書を探しに行くとき、この仕組みを通って情報を取りに行く、という関係になります。裏を返すと、Microsoft Graphにアクセスできない区分では、人が内容を持ち込まないかぎり、社内の文書は回答の材料になりません。

ここは見積りにも効きます。社内規程やマニュアルの横断検索を目的にCopilotを検討しているなら、比較すべき対象は追加料金なしで使えるCopilot Chatではなく、作業データへの接続を含む区分です。逆に、Webの情報と手元で貼り付けた内容で完結する用途であれば、追加料金なしの範囲で対応できます。

Work IQはオンとオフを切り替えられる

Work IQは、エージェントが組織のデータ・コンテンツ・ツールを推論できるようにするインテリジェンス層である、と公式ドキュメントでは説明されています。公式の料金ページ側の説明では、Microsoft 365のコンテンツとメタデータ、Copilotコネクタ経由で取り込まれた業種データ、そしてそれらから生成されたセマンティックインデックスを統合するもので、ユーザーのスタイルや習慣、好みをより正確に理解するためのCopilotメモリも含まれる、と記載されています。

見落としやすいのは、Work IQがオンとオフを切り替えられると明記されている点です。オフのときの応答はMicrosoft GraphとWork IQに基づかない、つまりメール・ファイル・会議・予定表・チーム・組織関係といった文脈が回答に乗らない、と書かれています。導入後に、思っていたより社内の文脈を拾ってくれないという評価が出たとき、モデルの性能の話に飛ぶ前に、この設定を確認する価値があります。

また、Work IQ APIは別売りの使用量ベースの課金サービスである、とも記載されています。Work IQという名前が出てきたら、ライセンスに含まれる層の話なのか、APIとして別に課金される話なのかを区別して読む必要があります。

Microsoft Copilot Coworkは別勘定

公式ドキュメントでは、Microsoft Copilot Coworkはユーザーに代わってMicrosoft環境全体でタスクを実行するものと説明され、使用量ベースの課金であると記載されています。Premiumのライセンスを持っていても、Coworkの利用は使用量に応じた課金という扱いです。2026年の公式サイトの見せ方ではWork IQとCoworkが前面に出ているため、社内資料をこの用語で作り直しておくと、後から公式ページを開いた人との話が噛み合います。

Coworkの料金の仕組みと、社員に使わせる前に管理者が決める設定(誰が使えるかを決める支出ポリシー、上限、承認)は、Copilot Coworkとは|料金の仕組みと、社内に出す前に決める設定で詳しく整理しています。

アプリごとにできること

ここからは、公式ドキュメントに記載されているアプリ内の機能を、業務の場面に当てはめて見ていきます。以下の機能の記述は、Microsoft 365 Copilot (Basic) の「使用できるアプリ内機能」として公式ドキュメントに挙げられているものです。前の章のとおり、Basicの区分では優先アクセスや完全なチャット統合が含まれない場合があるという条件が付きます。

アプリ公式ドキュメントに記載されている機能
Wordドキュメントの下書き、書き換え、要約
Excelデータを分析し、分析情報を生成し、数式とビジュアルを作成
PowerPointプロンプトまたは既存のコンテンツからプレゼンテーションを作成、要約、編集(画像の追加、デッキ全体の書式設定の変更)
Outlookメールの下書き、スレッドの要約、明確さ・センチメント・トーンを改善するコーチングのヒント
OneNote下書きの計画、アイデア、リスト
Teams会議の要約(最大30日間)と文字起こし、アクションアイテムのキャプチャ
Forms質問の下書きを作成してアンケート、投票、フォームを作成

Wordでできること

Wordでは、ドキュメントの下書き、書き換え、要約ができると記載されています。実務で効きやすいのは、ゼロから書かせることよりも、すでにある文書を素材にする使い方です。前年の案内文を開いて日付と条件だけ差し替える、長い契約書や規程を章ごとに要約させて論点を洗い出す、社内向けの荒い文章を社外向けの文体に直す、といった場面です。

注意したいのは、書き換えの結果をそのまま採用すると、元の文書にあった条件や例外が落ちることがある点です。とくに金額・期限・対象範囲が入る文書では、書き換え後に元の文書と並べて差分を確認する工程を、最初から手順に組み込んでおくほうが安全です。

Excelでできること

Excelでは、データを分析し、分析情報を生成し、数式とビジュアルを作成できると記載されています。日本語で条件を伝えて数式を書かせる、表の傾向を言葉で説明させる、グラフの候補を出させる、といった使い方が該当します。

実務でつまずきやすいのは、データの形です。1行目にタイトルが入っていたり、同じ列に数値と文字列が混ざっていたりする表は、人が見れば読めても、分析の対象としては扱いにくくなります。分析させたい表は、1行目を見出し、2行目以降をデータにする、結合セルを使わない、の2点を先に整えておくと結果が安定します。

数式は、出てきたものをそのまま貼らず、答えが分かっている数行で検算してから全体に広げます。集計の定義が少しずれた数式は、エラーにならないまま間違った数字を出し続けるためです。

Excelの中でCopilotを使うために必要なライセンス、3つのモード、ボタンが出ないときの切り分け手順は、Copilot Excelの使い方と必要なライセンスで詳しく整理しています。

PowerPointでできること

PowerPointでは、プロンプトまたは既存のコンテンツからプレゼンテーションを作成でき、要約や編集もできると記載されています。編集の例としては、画像の追加やデッキ全体の書式設定の変更が挙げられています。

使いどころとしては、白紙から作らせるより、すでにあるWordの原稿や議事録を渡して構成に起こさせる形が現実的です。章立てと各ページの主題を決める下地として使い、体裁と数字は人が整える分担にすると、作業時間が実際に減ります。社外に出す資料では、数値の出典と、それが自己申告の値なのか第三者が検証した値なのかを人が確認する工程が必要です。

Outlookでできること

Outlookでは、メールの下書き、スレッドの要約、そして明確さ・センチメント・トーンを改善するコーチングのヒントが使えると記載されています。長く伸びたスレッドを開いて、これまでの経緯と未決の論点を短くまとめさせる使い方は、引き継ぎや途中参加の場面で効果が分かりやすい部分です。

メールを扱ううえでの前提条件はやや細かく、公式ドキュメントでは、対応するメールボックスはExchange Onlineのプライマリメールボックスであると記載されています。アーカイブや、アクセス権のある共有メールボックス・代理人のメールボックスでも使えるとされていますが、グループメールボックスでは使用できないと明記されています。問い合わせ窓口をグループメールボックスで運用している会社は、ここで期待とずれる可能性があるため、試用の前に確認しておくとよい箇所です。

Teamsでできること

Teamsでは、会議の要約と文字起こし、アクションアイテムのキャプチャができると記載されています。会議の要約については、最大30日間という期間が公式ドキュメントに明記されています。

ここには運用上の条件があります。公式の要件ドキュメントでは、会議終了後に会議の内容を参照させるには、文字起こしまたは記録を有効にする必要があると記載されています。会議中は使えたのに、後から振り返ろうとすると何も出てこない、という相談の多くは、この設定が入っていないことが原因になります。会議を主催する側の運用として、文字起こしを既定で有効にするかどうかを、導入前に決めておく必要があります。

Teams電話については、必要なライセンスが通話の種類で異なると記載されています。VoIPの通話にはCopilotのライセンス、PSTNの通話にはTeams電話ライセンスと通話プラン、そしてCopilotのライセンスが必要とされ、いずれも文字起こしまたはレコーディングが前提になります。また、VoIPでは全参加者に文字起こしまたは録音中の通知が表示され、PSTNでは録音中のアナウンスが入る、と記載されています。相手のいる通話でこの機能を使う場合は、告知と社内ルールを先に決めておく必要があります。

OneNote・Formsでできること

OneNoteでは下書きの計画、アイデア、リストの作成が、Formsでは質問の下書きを作成してアンケート・投票・フォームを作成できると記載されています。社内アンケートの設問づくりや打ち合わせ前の論点出しなど、準備の時間を削る用途に向きます。なお、LoopとWhiteboardは、公式の要件ドキュメントでテナントでの有効化が必要と記載されています。

導入直前で止まる前提条件

Copilotの検討が止まる場所は、機能の良し悪しではなく、前提条件であることが少なくありません。公式の要件ドキュメントに記載されている条件のうち、社員10名から200名規模の会社で実際に引っかかりやすいものを、確認の順に並べます。

  • ユーザーにMicrosoft 365ライセンスが割り当てられ、Microsoft Entra IDアカウントを持っているかCopilotの利用は、対象となるMicrosoft 365のライセンスとEntra IDのアカウントが前提になると記載されています。ここが個人アカウントのままの人がいると、その人だけ動きません。
  • メールボックスがExchange Onlineのプライマリメールボックスかアーカイブや、アクセス権のある共有・代理人のメールボックスでも使えるとされる一方、グループメールボックスでは使用できないと明記されています。
  • Microsoft 365 Apps for enterpriseをデバイスベースのライセンスで使っていないかデバイスベースのライセンスを使っている場合、Copilotは使用できないと記載されています。共用端末をデバイス単位のライセンスで運用している会社は、ここで構成の変更が必要になります。
  • ブラウザでサードパーティのCookieが有効かWord Online・Excel Online・PowerPoint Onlineで動かすには、サードパーティのCookieを有効にする必要があると記載されています。セキュリティ設定で一律に無効化している会社は、この条件と社内方針の擦り合わせが要ります。
  • Teamsの会議で文字起こしまたは記録を有効にする運用が決まっているか会議終了後に内容を参照させるための前提条件です。会議の要約は最大30日間と記載されています。
  • LoopとWhiteboardをテナントで有効化しているかいずれもテナントでの有効化が必要と記載されています。使う予定があるなら、導入時にまとめて確認しておく項目です。
  • Microsoft 365アプリのプライバシー設定(接続エクスペリエンス)を絞りすぎていないかこの設定がCopilot機能の可用性に影響すると記載されています。過去にまとめて無効化した経緯がある会社は、現在の設定を確認する必要があります。
  • ネットワークが *.cloud.microsoft へのWebSocket接続を通しているか*.office.com、*.cloud.microsoft、copilot.cloud.microsoft への完全なWSS接続が必要と記載されています。TLS検査、積極的なタイムアウトを持つプロキシ、WSSのブロックが障害の原因になるとされ、*.cloud.microsoft の部分的な許可はサポートされていないと明記されています。

最後の1項目は、情シスの手を借りないと確認できない代わりに、当たっていたときの解決が早い部分です。特定の社員や拠点だけCopilotが不安定という症状が出たときは、機能側を疑う前にネットワーク機器の設定を確認する価値があります。

データの扱い|学習に使われるのか、どこへ送られるのか

顧問先や取引先の情報を扱う会社が最初に確認したい論点は、入力した内容がどう扱われるかです。公式のプライバシーに関するドキュメントには、この点についての記載があります。

学習利用とエンタープライズ データ保護

公式ドキュメントには、Microsoft Graph経由でアクセスされるプロンプト、応答、データは、Microsoft Copilotで使用されているものを含め、基礎となる大規模言語モデルのトレーニングには使用されない、と記載されています。また、Microsoft Entraのアカウントでサインインした場合、Copilot Chat (Basic)、Microsoft 365 Copilot (Basic)、Microsoft 365 Copilot (Premium) はエンタープライズ データ保護の対象になり、顧客がExchangeのメールやSharePointのファイルに対して広く信頼しているのと同じ契約条件とコミットメントでプロンプトと応答が守られる、と説明されています。

ここで大事なのは、サインインの状態が条件になっている点です。社員が私用のアカウントでCopilotの画面を開いて業務の情報を入力した場合、この説明の対象にはなりません。どのアカウントで使うかを明示したルールが必要です。ルールの作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方にまとめています。

管理者が見られるもの、利用者が消せるもの

保存されたデータは暗号化されると記載されています。管理者側では、コンテンツ検索またはMicrosoft Purviewで表示・管理でき、Purviewでアイテム保持ポリシーを設定できるとされています。TeamsのCopilotチャットについては、Teams Export APIでも参照できると書かれています。利用者側では、マイ アカウント ポータルからCopilotのアクティビティ履歴、つまりプロンプトと応答を削除できると記載されています。

どこで処理されるのか

リージョンについては、注意して読む必要のある記載があります。公式ドキュメントでは、大規模言語モデルへの呼び出しはリージョン内の最も近いデータセンターにルーティングされるが、使用率が特に高いときは容量のある他のリージョンに呼び出すこともある、と説明されています。EUのユーザーにはEUデータ境界の追加の安全対策があり、EUのトラフィックはEUデータ境界内にとどまるとされています。あわせて、サブプロセッサとして提供されるAnthropicのモデルは、現在EUデータ境界から除外されるとも記載されています。

つまり、常に同じ場所で処理されると読み取れる書き方にはなっていません。データの所在地を社内規程や顧客との契約で厳密に定めている会社は、この記載を前提に、扱ってよい情報の範囲を決める必要があります。なお、Anthropicのモデルについては、該当するMicrosoft 365ライセンスのエクスペリエンスでのみ使用でき、既定ではすべてのユーザーが使用できるわけではないこと、Microsoftのエンタープライズ データ保護に従って動作することが記載されています。

この節の記載は、learn.microsoft.com の「Microsoft Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」を2026年9月16日に確認したものです。データの取り扱いに関する条件は改定されることがあるため、契約や規程の根拠にする場合は、原文を直接参照してください。

過剰共有の落とし穴|情報漏洩はプロンプトより先に権限から起きる

Copilotの情報漏洩リスクとして語られやすいのは、機密情報をプロンプトに入れてしまうことです。これは実際に重要で、入力してよい情報と禁止する情報の線引きは、導入前に決めておく必要があります。ただし、Microsoft 365の中で起きる問題としては、もうひとつ先に手を打つべき論点があります。テナント内のアクセス権の設定です。

なぜアクセス権が問題になるのか

公式ドキュメントでは、Copilotの回答はユーザーの権限でスコープされる、つまり本人がアクセスできる情報の範囲で答えると説明されています。これは安全側の設計ですが、裏返すと、本人がアクセスできてしまうものはすべて検索の対象になる、ということでもあります。

多くの会社のSharePointやOneDriveは、長年の運用で、とりあえず全社に共有した状態のフォルダやファイルが積み上がっています。誰も検索しないので実質的に見えていなかっただけで、権限上は誰でも開ける状態です。そこにCopilotが入ると、これまで実質的に埋もれていた文書が、自然文の質問ひとつで表に出てきます。人事評価、給与、顧問先の資料、係争中の案件のメモなど、見られると困る文書がそのまま出てくる可能性があります。

これは不具合ではありません。設計どおりに動いた結果です。だからこそ、導入の前に手順として潰しておく必要があります。

共有リンクの棚卸し、機密ラベル、検索範囲の制限の順で直す

公式ドキュメントでは、Microsoft 365 Copilot (Premium) の説明の中で、過剰共有への対策としてSharePoint 高度な管理、制限付きコンテンツ検出、Microsoft Purviewが挙げられています。これを実務の順番に置き換えると、次の3段階になります。

  1. 共有リンクの棚卸し:組織全体に共有されているリンク、リンクを知っている全員がアクセスできる設定、期限のない共有を洗い出し、必要のないものを止めます。とくに、退職者が作った共有や、一時的な目的で全社公開にしたまま放置されているサイトが対象です。
  2. 機密ラベルの適用:人事・給与・顧問先データなど、扱いを分けたい情報にラベルを付け、ラベルに応じた保護をかけます。ファイル単位ではなく、置き場所とラベルの組み合わせで管理すると運用が続きます。
  3. 検索範囲の制限:機微な情報が集まるサイトは、検索の対象から外すか、アクセスできる範囲を明示的に絞ります。公式が挙げている制限付きコンテンツ検出は、この段階で使う仕組みにあたります。

順番が逆になると、作業が終わりません。ラベルを付ける作業から始めると、対象のファイル数が多すぎて止まります。まず共有の入口を閉じ、そのうえで重要なものにラベルを付け、最後に検索の見え方を調整する、という順が現実的です。導入前に確認しておきたい項目は生成AIのセキュリティチェックリストに整理しています。

試用の段階でできる確認。試用ライセンスを数名に配ったら、機能の便利さを試す前に、その人が本来見られないはずの情報を質問してみることをおすすめします。社員の給与、役員報酬、特定の顧問先の見積りといった質問を、実際に入力してみる確認です。何も出てこなければ現状の設定は概ね妥当で、何か出てくるなら、それがそのまま棚卸しの対象リストになります。

できないこと・苦手なこと

できることの一覧と同じくらい、社内の期待値を揃えるうえで重要なのが、できないことの整理です。ここは大きく2種類に分かれます。回答の内容そのものの限界と、参照できるデータの範囲の制約です。

回答が誤ることがあり、最終確認は人がする

生成AI全般に共通する点ですが、Copilotの回答も、もっともらしい形で事実と違う内容を返すことがあります。社内データを根拠にできる区分であっても、元の文書の読み取りを誤ったり、複数の文書の内容を混ぜてしまったりすることは起こりえます。とくに、数字、日付、固有名詞、条件や例外は、人が原典に当たって確認する工程を外せません。

運用として決めておきたいのは、誰が確認するかです。作った人が自分で確認する、という取り決めは、急いでいるときには飛ばされがちです。社外に出る文書は上長が原典と突き合わせる、金額が入る資料は経理が確認する、というように、確認する人と確認する対象を先に決めておくほうが機能します。

要約にも注意が必要です。長い会議の要約は発言量の多い話題に引っ張られ、短く重要な決定が落ちることがあります。要約を議事録として正式に残すなら、決定事項と担当者、期限の3点は人が確認して追記する形にしておくと事故が減ります。

ファイル形式と保存場所の制約

もうひとつ、導入後によく出てくるのが、この文書は読んでくれないという相談です。Copilotが社内の文書を参照する仕組みは、SharePointやOneDriveに置かれ、Microsoft 365の中で管理されているデータを前提にしています。したがって、次のようなものは想定どおりに扱えないことがあります。

  • 担当者のPCのローカルフォルダにしかないファイル。クラウドに同期されていない文書は、そもそも参照の対象になりません
  • 紙をスキャンしただけのPDF。画像として保存されているだけの文書は、文字として読み取れる状態になっていません
  • 共有サーバーやNASなど、Microsoft 365の外にある保管場所に置かれた文書
  • 権限の関係で本人が開けない場所にある文書。前章のとおり、回答はユーザーの権限の範囲に限られます

社内規程やマニュアルの横断検索を目的にするなら、Copilotを契約するより先に、対象の文書がどこに置かれているかを確認する作業が必要です。紙のまま、あるいはスキャンしたPDFのまま保管されている規程が多い会社では、そこを整える工数のほうが、ライセンス費用より大きくなることもあります。

前提を整えるより先に、社員が使えるAIを会社で用意する

Microsoft 365の設定や文書の整理が済むまで、社員が使えるAIがないままになります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

Copilot Studioで自社専用のエージェントを作る

既成の機能では足りない場合、Microsoft Copilot Studioを使って、自社専用のエージェントやFAQボットを作ることができます。公式ドキュメントでは、Copilot Studioは、AI搭載のエージェントやワークフローの構築と管理のためのグラフィカルでローコードなスタジオであると説明されています。ローコードであるため、広範な技術的背景がなくても構築でき、必要に応じて開発者向けの深さも持たせられる、と記載されています。料金の仕組み、Copilot クレジットの消費レート、無料で試せる範囲はCopilot Studioとは|料金とクレジット消費、無料で試せる範囲で詳しく整理しています。

何が作れるのか

公式ドキュメントでは、構築できるものとしてエージェント、ワークフロー、エージェントフローの3つが挙げられています。エージェントは、与えた指示に従い、接続した知識源を活用して次の手順を決めるAIアシスタントで、Microsoft Teams、Microsoft 365 Copilot、Webサイトなどのチャネルを通じて利用できると説明されています。ワークフローは、ドラッグ操作のデザイナーで作る自動化です。

Microsoft 365 Copilotを拡張する使い方については、別の公式ドキュメントに、カスタムエージェントと、Microsoft 365 Copilot用のエージェントの2つの方法があると記載されています。後者は、Microsoft 365 Copilotの側では宣言的エージェントと呼ばれるという注記も添えられています。

知識として接続できるもの

Microsoft 365 Copilot用のエージェントに追加できる知識として、公式ドキュメントでは次のものが挙げられています。

知識の種類公式ドキュメントの説明
SharePointのファイル・フォルダ・サイト組織内のSharePointリソース。ユーザーの資格情報を使用して、ユーザーがアクセスできる情報からの回答のみを取得すると記載
Teamsのチャットと会議Teamsのチャットや会議のコンテンツ。同じくユーザーがアクセスできる情報に限られると記載
電子メールOutlookメールのコンテンツ。同じくユーザーがアクセスできる情報に限られると記載
Webサイト指定したURLのほか、設定によっては公開Web検索を使って結果を取得できると記載
Copilot(Graph)コネクタ経由のデータソーステナント管理者が構成したデータソース。Microsoft 365 Copilotとエージェントに知識を追加するためのもの

知識の使い方を制御するトグルとして、指定した情報源のみを使う、すべてのWebサイトを検索する、組織図やプロフィール情報を参照する、といった設定があることも記載されています。社内規程のFAQボットのように答えの範囲を限定したい用途では、1つ目の設定が要になります。

利用に必要なライセンスと課金

ここが判断の分かれ目になります。Microsoft 365 Copilotを拡張するエージェントについては、公式ドキュメントの前提条件に、ユーザーと作成者はMicrosoft 365 Copilotを使用するためのライセンスを持っている必要がある、と記載されています。作る人だけでなく、使う人の側にもライセンスが要るという条件です。

課金の仕組みについては、標準ハーネスのライセンスに関する公式ドキュメントに記載があります。Copilot クレジットがCopilot Studioの機能全体で共通の通貨であり、従量制メーター、事前購入プラン、前払いパックのサブスクリプションを通じて取得できると説明されています。2025年9月1日から、エージェントの共通通貨がメッセージからCopilot クレジットに変わったという注記も置かれています。従量課金制については、Azureサブスクリプションを使って支払う方法であり、月末に実際に使用したCopilot クレジットの分を支払う形になると記載されています。

一方で、Microsoft 365 Copilotのライセンスを持っている場合の扱いも明記されています。公式ドキュメントでは、Microsoft 365 Copilotライセンスを持つユーザーが、Copilot Chat、Microsoft Teams、SharePointのエージェントを使って、クラシックの回答、生成回答、Microsoft Graphテナントの基礎づけを行うことは、Copilot Studioのメッセージパックやメーターにカウントされない、と説明されています。同じドキュメントでは、Microsoft 365 Copilotライセンスに含まれる機能として、SharePointエージェント、Copilot分析、SharePoint 高度な管理なども挙げられています。

容量の扱いにも条件があります。Copilot Studioでは毎月の購入容量が適用され、未使用のCopilot クレジットは翌月に引き継がれないと記載されています。また、使用量が購入した容量を超えた場合は技術的な適用が行われ、サービス拒否が発生する可能性があるとも書かれています。試用版ライセンスについては、エージェントの作成とテストはできるが公開はできない、と記載されています。あわせて公式の料金ページには、エージェントを使用するにはAzureサブスクリプションが必要であること、前払い方式のMicrosoft Copilot Studioキャパシティ パックも利用できることが記載されています。

エージェントを作る前に知っておきたい安全上の注意

公式ドキュメントには、エージェントの安全確保についての記載があります。ツールはMicrosoft 365 Copilotの動作に影響を与えるデータを取得し、その中にはメールやサポートチケットのような信頼されていないソースからのデータも含まれるとされています。そのうえで、不適切なアクターがこれらのソースにペイロードを作成し、誤った回答やカスタムツールの呼び出しなど、エージェントの動作を操作できる、と説明されています。対策としては、Copilot Studioのコントロールを使って、知識とカスタムツールに使用されるコネクタを安全に構成することが挙げられています。

外部から届くメールや問い合わせを読ませるエージェントを作る場合、この点は設計段階で考慮する必要があります。社内文書だけを知識にしたFAQボットから始め、外部由来のデータを扱うものは範囲を絞ってから広げる進め方が無難です。

Copilot Studioに関するこの節の記載は、learn.microsoft.com の Microsoft Copilot Studio の概要、標準ハーネスのライセンス、Copilotチャットハーネスで Microsoft 365 Copilot を拡張する、の3つの公式ドキュメントを2026年9月16日に確認したものです。ライセンスと課金の詳細は公式のライセンスガイドを参照するよう案内されています。

利用に必要なライセンスの前提と料金の目安

Copilotは単体で契約するものではなく、対象となるMicrosoft 365プランのライセンスがあることが前提になります。公式の料金ページの脚注には、Microsoft 365 Copilotを購入するには対象となるMicrosoft 365プランのライセンスが別途必要であること、そして最大300ユーザーまでであることが記載されています。300という上限は一般法人向けの条件で、それを超える規模には大企業向けのプランが用意されています。

一般法人向けの3つの価格

2026年9月16日にMicrosoftの公式料金ページで確認した、一般法人向けの表示は次のとおりです。いずれも1ユーザーあたりの金額で、消費税は含まれていません。

プラン年払い(ユーザー/月相当)月払い(ユーザー/月)
Microsoft 365 Copilot Business(既存プランへのアドオン)3,148円(ページ上は割引価格2,698円と併記)3,778円
Microsoft 365 Business Standard と Copilot Business3,523円4,228円
Microsoft 365 Business Premium と Copilot Business4,797円5,756円

アドオンの場合、年払いの月額相当が3,148円、月払いが3,778円で、支払い方法によって単価が変わります。割引価格として併記されている2,698円については、公式ページの脚注に、キャンペーンの対象期間が2026年12月31日までと定められていること、対象が対象のビジネスプランを利用している既存のMicrosoft 365顧客に限られること、試用版サブスクリプションでは利用できないこと、年間契約が必要であること、そしてプロモーション価格は初年度にのみ適用されることが記載されています。したがって、2年目以降も割引後の金額が続く前提で見積もると、実際の支出とずれます。

ここでは価格の全体像には踏み込みません。前提となるMicrosoft 365プランを含めた総額、大企業向けの金額、人数別の年額の考え方は、Microsoft 365 Copilotの料金の解説記事で扱っています。

上記の金額は、2026年9月16日に www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365-copilot/pricing に表示されていた一般法人向けの価格です。公式ページには、価格には消費税が含まれていないと記載されています。価格とキャンペーンの条件は変更されることがあるため、申込みの前に公式ページで再確認してください。

導入の手順|購入から割り当て、動作確認まで

導入は、ライセンスを買って配って終わり、にはなりません。前の章までに挙げた前提条件とアクセス権の確認を含めて、順番に進めます。10名から200名規模の会社であれば、次の流れが現実的です。

  1. 現状の区分を確認する:自社のMicrosoft 365契約で、いま使えるのが3段階のどれなのかを管理センターで確認します。ここを飛ばして有料ライセンスを買うと、すでに使えたはずの範囲にお金を払うことになります。
  2. 前提条件を点検する:メールボックスの種類、デバイスベースのライセンスの有無、ブラウザのCookie設定、ネットワークのWebSocket接続を確認します。情シスに依頼が必要な項目はここでまとめて出します。
  3. アクセス権の棚卸しをする:共有リンクの見直し、機密ラベル、検索範囲の制限を、この順で進めます。全部を終わらせてから配るのではなく、機微な情報が集まる場所から優先して手を付けます。
  4. 少人数で試用する:部署をまたいで数名に配り、2週間から1か月使ってもらいます。このとき、便利さの確認だけでなく、本来見えないはずの情報が出てこないかの確認も行います。
  5. ライセンスを購入し、ユーザーまたはグループに割り当てる:管理センターから、個人またはセキュリティグループ単位で割り当てます。グループ単位にしておくと、異動や退職に合わせた付け替えが楽になります。
  6. 提供状況と動作を確認する:割り当て後、実際にWordやTeamsでCopilotが表示されるかを確認します。反映まで時間がかかることがあるため、割り当て直後に見えないことだけを理由に不具合と判断しないようにします。
  7. 社内ルールを配る:入力してよい情報と禁止する情報、生成物を確認する担当、社外に出す文書の扱いを文書にして配ります。ライセンスと同時に配るのが、いちばん読まれます。
  8. 利用状況を見て、配り方を見直す:使われていない人からは回収し、使っている部署に回します。Premiumの区分には管理者向けの高度な管理コントロールと分析、使用状況レポートが含まれると記載されています(Basicの区分にも基本的な使用状況管理コントロールとレポートがあると記載されています)。感覚ではなく記録で判断できます。

誰に何人配るかをどう決めるか

全社員に一斉に配る判断は、費用の面でも定着の面でも慎重に考える価値があります。1ユーザーあたりの課金のため、配布する人数がそのまま費用に効きます。一方で、効果が出やすい業務は偏っています。

優先度が高いのは、長い文書を読む時間が多い人、会議が多い人、外部とのメールのやりとりが多い人です。管理部門、営業の提案書作成、士業事務所であれば所長や担当者層が候補になります。逆に、定型の入力作業が中心で文書をあまり扱わない部署は効果が見えにくく、配っても使われないまま費用だけが残りやすくなります。

期待どおりの答えを得るプロンプトのコツ

同じCopilotでも、指示の出し方で結果の質はかなり変わります。ここは特別な技術ではなく、人に仕事を頼むときと同じことを文章にするだけです。社内で共有しやすい形に4つにまとめます。

1.背景と目的を先に書く

何のために、誰に向けて、どういう場面で使うものかを最初に書きます。取引先への謝罪文なのか、社内の共有メモなのかで、必要な文体も長さも変わります。目的を書かない指示には、当たり障りのない一般的な文章が返ってきます。

2.参考にする素材を示す

Copilotの強みは、自社の文脈に接していることです。過去の同種の文書、議事録、規程など、参照させる素材を具体的に指定すると、精度が上がります。区分によっては、ファイルを開いた状態で指示する、内容を貼り付ける、といった方法が必要になることは、前の章のとおりです。

3.出力の形を指定する

箇条書きにするのか文章にするのか、何字程度か、見出しを付けるか、表にするか。形を指定しないと、毎回違う形で返ってくるため、直す手間が増えます。社内でよく使う形式は、定型の指示文としてまとめて共有しておくと、部署ごとの出来のばらつきが減ります。

4.一度で終わらせず、段階的に直す

最初の回答をそのまま使うのではなく、ここを短く、この観点を足して、この部分の根拠を示して、と段階的に直していきます。長い指示を1回で書ききるより、短い指示を重ねるほうが、結果として早く着地します。

社内で共有するときの形。コツを研修で教えるより、実際に使う指示文をそのまま配るほうが定着します。議事録の整理、見積書の確認、問い合わせメールの下書きなど、頻度の高い5つから10の場面について、そのまま貼って使える指示文をTeamsのチャネルや社内ポータルに置いておく形が現実的です。

追加料金なしのCopilot Chatと、有料が要る会社の分かれ目

まず無料の範囲から試しましょう、という案内はよく見かけますが、どの条件を満たしたら有料に上げるのか、という基準はあまり示されません。ここまでに確認した公式ドキュメントの記載から、判断の材料を条件の形で整理します。

追加料金なしの範囲で足りる可能性が高い会社

  • 使いたい用途が、文章の作成・要約・翻訳・調べものなど、Webの情報と手元で貼り付けられる内容で完結する
  • 社内文書の横断検索を当面の目的にしていない
  • Word・Excel・PowerPointの中でCopilotを呼び出す使い方を、必須と考えていない
  • まずは社員がAIに慣れること、入力してよい情報の線引きを社内に浸透させることが当面の目的
  • SharePointやOneDriveのアクセス権の整理が、まだ終わっていない

最後の項目は見落とされがちです。アクセス権の棚卸しが終わっていない状態で作業データへの接続を有効にすると、前章で触れた問題がそのまま表に出ます。整理が終わるまでは追加料金なしの範囲で運用し、その間に棚卸しを進める、という順番には合理性があります。

有料の区分を検討したほうがよい会社

  • 社内規程・マニュアル・過去の提案書を、自然文の質問で横断的に探したい
  • Word・Excel・PowerPointを開いたまま、その中で下書きや要約をさせたい
  • Teamsの会議が多く、会議後に内容を参照する使い方を業務に組み込みたい
  • 管理者として、使用状況レポートや高度な管理コントロールを使って利用状況を把握したい
  • 自社専用のエージェントを作り、社員にも使わせたい(作成者だけでなく利用者にもライセンスが必要と記載されています)
  • サービス容量の影響で体験が変わる状態を避けたい(優先アクセスはPremiumに含まれると記載されています)

この一覧のうち、2つ以上に当てはまるなら、追加料金なしの範囲で検証を続けても判断材料は増えません。少人数に有料の区分を配って、実際の業務で1か月試すほうが早く結論が出ます。

Copilotと汎用の生成AIの役割分担

Copilotを導入した会社でよく起きるのが、入れたのに社員が別のAIを使っている、という状況です。これは社員の意識の問題というより、得意な領域が違うことによるものです。両方を持つ前提で役割を決めておくほうが、実態に合います。

それぞれが強い領域

作業向いているもの理由
社内の文書・メール・会議記録を踏まえた作業Microsoft Copilotテナント内のデータへの接続が製品の中心に置かれている
Office文書の中での下書き・要約・書式の調整Microsoft Copilotアプリの中に組み込まれており、ファイルを出し入れする手間がない
企画の壁打ち、長い文章の検討汎用の生成AIモデルの性格や得意分野に差があり、目的に合わせて選べる
複数のモデルで答えを見比べる汎用の生成AI同じ質問を複数のAIに投げて、内容の違いを確認できる
社外の情報の調査、出典の確認汎用の生成AIWeb検索に強いサービスを選んで使い分けられる
Microsoft 365の外にあるデータを扱う作業汎用の生成AI他のシステムに保管された資料を、手元から渡して扱える

整理すると、Copilotが強いのは自社テナント内の文脈に接している作業、弱いのは複数モデルの比較、長文の壁打ち、外部の調査です。どちらが優れているという話ではなく、接している情報が違うということです。用途ごとの割り当ての考え方は4つのAIの使い分けに、複数のAIを併用する形の整理はマルチAIの解説にまとめています。

片方だけでは止まらない流れ

Copilotを配っても、社員が個人のアカウントで外部の生成AIを使う流れは止まりません。Office文書の作業はCopilotで足りても、企画の相談や他社サービスの調べものは別のAIのほうが早いと感じる場面が出てくるためです。現実的な設計は、Microsoft 365の中の作業はCopilot、それ以外の相談や調査は会社が用意した環境、という2本立てにして、どちらも会社が把握できる状態にしておくことです。禁止だけで運用すると、見えないところで使われるだけになります。法人向けの生成AIサービスの選択肢は法人向け生成AIの比較で整理しています。

よくある質問

Microsoft 365 CopilotとMicrosoft Copilotは別の製品ですか。
公式ドキュメントには、Microsoft 365 Copilotの名前がMicrosoft Copilotになり、Microsoft 365 Copilot Chatの名前がMicrosoft Copilot Chatになったという趣旨の注記が置かれています。あわせて、一部のエクスペリエンス・ライセンス・機能については移行期間中に従来の名称が残るとも記載されています。したがって、別の製品に置き換わったというより、呼び方が変わり、旧名がまだ残っている状態と読むのが正確です。検討資料には、公式ページで使われている区分名を併記しておくと行き違いが減ります。
追加料金なしで使えるCopilot Chatだけで足りるのは、どんな会社ですか。
用途が、Webの情報と手元で貼り付けられる内容で完結する場合です。文章の作成や要約、翻訳、調べものが中心で、社内文書の横断検索やOfficeアプリの中でのCopilotの呼び出しを必須と考えていないなら、追加料金なしの範囲で対応できます。公式ドキュメントでは、Copilot Chat (Basic) はWord・Excel・PowerPoint・OneNoteのCopilotにアクセスできず、Microsoft Graphにもアクセスできないと記載されているため、この2つを求める段階になったら有料の区分の検討時期です。
Copilotに入力した内容は、AIの学習に使われますか。
公式のプライバシーに関するドキュメントには、Microsoft Graph経由でアクセスされるプロンプト、応答、データは、基礎となる大規模言語モデルのトレーニングには使用されないと記載されています。また、Microsoft Entraのアカウントでサインインした場合はエンタープライズ データ保護の対象になると説明されています。前提はサインインの状態で、社員が私用のアカウントで業務の情報を入力した場合は、この説明の対象になりません。処理の場所については、呼び出しは最も近いデータセンターにルーティングされるが、使用率が特に高いときは他のリージョンに呼び出すこともあると記載されています。
年払いと月払いでは、何が違いますか。
2026年9月16日に公式の料金ページで確認した一般法人向けの表示では、Microsoft 365 Copilot Businessのアドオンは、年払いの月額相当が3,148円、月払いが3,778円です(1ユーザーあたり、消費税は含まれていません)。支払い方法で単価が変わるため、人数が増えるほど差が出ます。割引価格として併記されている2,698円については、公式ページの脚注に、年間契約が必要であることと、プロモーション価格は初年度にのみ適用されることが記載されています。2年目以降も同じ金額が続く前提で試算すると、実際の支出とずれます。
導入したあとに、アクセス権の設定で見えてはいけない情報が出てくることはありますか。
設定によっては起こりえます。公式ドキュメントでは、回答はユーザーの権限でスコープされると説明されており、本人がアクセスできる範囲に限られます。裏を返すと、過剰に共有されたSharePointやOneDriveの中身は、その人の検索対象に入るということです。公式は対策としてSharePoint 高度な管理、制限付きコンテンツ検出、Microsoft Purviewを挙げています。実務では、共有リンクの棚卸し、機密ラベルの適用、検索範囲の制限、という順で進めるのが現実的です。
Copilotを入れれば、ChatGPTなど他の生成AIは要らなくなりますか。
用途が違うため、置き換えにはなりにくいと考えられます。Copilotが強いのは自社テナント内の文脈に接している作業で、Office文書の中での下書きや要約、社内データを踏まえた回答がこれにあたります。一方で、複数のモデルで答えを見比べる、長い企画の壁打ちをする、社外の情報を調べるといった作業は、汎用の生成AIのほうが向いています。Copilotを配っても個人アカウントでの外部AI利用は止まらないため、両方を会社が把握できる形で用意しておく設計が現実的です。

まとめ

Microsoft 365 Copilotでできることは、アプリごとの機能一覧だけでは判断できません。2026年9月16日時点の公式ドキュメントでは、製品名がMicrosoft Copilotに変わり、できる範囲は3段階に分かれると記載されています。社内データの自動参照を担うMicrosoft GraphとWork IQが含まれるのはPremiumで、Basicの区分で社内データを使うには、貼り付け、アップロード、TeamsやOutlookで開いている内容を対象にする、従量課金制のエージェントを使う、のいずれかが必要とされています。

検討の順番は、機能から入らないことです。自社がどの区分にいるかを確認し、メールボックスの種類やデバイスベースのライセンス、ネットワークのWebSocket接続といった前提条件を点検し、共有リンクの棚卸しから始まるアクセス権の整理を進める。そのうえで少人数に配り、使用状況を見て配り方を決める。この順で進めれば、入れたのに動かない、入れたのに使われない、という事態はかなり避けられます。そして、Copilotが届く範囲はMicrosoft 365の中です。その外側にある調査や壁打ちは別の手段が要るため、会社としてAIの利用を把握したいのであれば、両方をあわせて設計しておく必要があります。

Microsoft 365の外側も含めて、会社のAI利用を1つにまとめる

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