
人事のAI活用とは、ChatGPT・Claude・Geminiなどの汎用の生成AIに、求人票や社内通知、規程Q&Aのような人事の文書の下書きと整理を任せ、決める部分は人事担当が持つ使い方です。任せてよいのは文章の下書き・要約・観点の洗い出しまでで、採否や評価の点数、処遇はAIに決めさせず、病歴や信条、労働組合への加入状況などの情報はそもそも入れない形になります。業務ごとに入れる材料と指示文を決めておけば、社員10〜200名の会社でも、専用の人事システムなしで始めることが出来ます。経理・総務まで含めた全体像はバックオフィスのAI活用の記事で扱っています。すぐ試したい方は、指示文を載せた採用の実務の節から読んでみてください。
人事のAI活用とは|従来型の人事AIと汎用の生成AIの違い
人事のAI活用は、大きく分けると、人事データを計算して配置や異動の案を出す専用の仕組みと、文章を読んで書く汎用の生成AIの2つの使い方になります。専用の仕組みは、社員の経歴や評価のデータを一か所に集めたうえで、数理的な手法で案を組み立てる形が中心です。汎用の生成AIは、求人票や通知文の下書き、規程の読み比べ、面談記録の要約のように、言葉を扱う仕事を受け持つことが出来ます。
人事特化のシステムを入れていない会社でも、汎用の生成AIなら、規程のPDFや過去の求人票、社内通知の文面を材料にしてすぐに試せます。一方で、汎用の生成AIは点数を計算する道具ではなく、もっともらしい文を作る道具なので、出てきた文が規程や事実と合っているかを人が確かめる前提で使うことになります。このあと実名事例の節で紹介するトラスコ中山と富士通の人事異動案の仕組みは前者、LINEヤフーの業務ツール群は生成AIを組み込んだ社内の仕組みにあたります。
従来型の人事AIと生成AIの違いは、決まった計算をするか、言葉を作るかにあります。言葉を作る生成AIは、指示の書き方や渡す材料で出力が大きく変わるため、同じ業務でも担当者によって結果がばらついてしまいます。このばらつきを抑えるために、業務ごとの指示文を決めて社内で共有しておくのが、人事で生成AIを使うときの土台となります。
人事部門の生成AI活用の実態|人事白書2025の業務別の活用率
人事部門の生成AIの使い方は、会議の要約やチャットボットでの質問対応、社員向けの通知文づくりのように、文章を扱う仕事が上位に並びます。『日本の人事部』の人事白書2025(2025年3月3日〜31日に調査、正会員6,139社・6,285人(のべ)が回答)では、人事部門で生成AIを「活用していない」が33.5%で、業務別の活用率は次のとおりでした。
- 議事録や会議内容の要約:43.1%
- チャットボットでの質問対応:26.0%
- 従業員向け通知やメールの自動作成:20.6%
- 教育・研修コンテンツの作成:19.5%
- 社内規定やポリシーの草案作成:14.8%
- 求人広告や募集要項の作成:14.4%
- 従業員の評価やサーベイ結果の分析・要約:13.7%
- 従業員向けサーベイの設問作成:6.9%
- 候補者の履歴書や職務経歴書の要約:3.9%
いずれも回答企業の自己申告で、記事から分母の定義が読み取れないため「回答企業のうち」の割合として載せています。人事評価へのAI活用となると、慎重な会社が多くなります。『人事白書2026』(2026年3月3日〜31日に調査、正会員5,103社・5,274人(のべ)が回答)では、従業員1〜100人の会社の72.5%が、人事評価にAIを活用しておらず今後も活用する予定はないと答えました。全体では活用している1.8%、実証実験中7.8%、導入を検討している29.2%、活用しておらず今後も活用する予定はない61.2%という結果です。
大企業が中心の経団連のアンケート(HR部門におけるAI等の活用に関する報告書、2026年4月14日、回答75社)では、AIの活用領域は採用が25社で最も多くなっています。中小の会社の実態とは分けて読んでおくのが無難でしょう。
人事のAI活用の実名事例|トラスコ中山×富士通とLINEヤフー
実名で公開されている人事のAI活用を見ると、AIの出力は案や参考情報として扱い、決めるのは人という分担がどちらにも共通しています。
トラスコ中山×富士通|人事異動案を作る専用の仕組み
トラスコ中山と富士通は2026年5月20日、富士通のデータ・AI基盤の上で人事異動案を提案するアプリを約4か月で作り、2026年4月の人事異動から使っていると共同で発表しました。人事データを一か所で管理し、数理的な手法で配置案を作る専用の仕組みで、異動案の作成にかかる工数は約98%削減したと富士通の発表にあります。汎用の生成AIに名簿を貼って異動案を作らせる使い方とは、別のものとして読んでください。
LINEヤフー|人事総務の業務ツールを10件
LINEヤフーは2026年2月10日のプレスリリースで、人事総務の領域に10件のAI活用ツールを2026年春までに順に入れると発表しました。例として、面接日程の調整の自動化や、面接官が模擬面接とフィードバックを通じて、面接で確かめる観点や評価基準を学べるトレーニングが挙げられています。人事総務の部門全体で「月間約1,600時間以上の工数を削減することを見込み」とする数字は、実績ではなく同社が発表した見込みです。リリースには「最終的な判断・対応は必ず人が行っています」とあり、AIが案を出して人が決める分担は、汎用の生成AIでもそのまま真似ることが出来ます。
※各社の発表内容は2026年10月16日に確認したものです。効果の数字はいずれも同社の発表で、第三者による検証は確認出来ていません。
人事でAIを使うメリットとデメリット・リスク
汎用の生成AIを人事で使うメリットは、文章づくりの時間が減ることと、担当者の経験に頼っていた仕事を指示文として残せることにあります。反対にデメリット・リスクとしては、出力の根拠が見えにくいこと、偏った言い回しが混ざること、個人情報の扱い、現場の抵抗の4つが挙がります。
メリット|工数の削減・属人化の解消・判断のぶれを小さくする
求人票や通知文、Q&Aの下書きをAIに任せると、人事担当は中身を決めることと確かめることに時間を使えるようになります。書き方のこつを指示文として社内に残せば、担当が替わっても同じ品質で引き継げます。面接の評価の観点をAIの案から言葉にしておけば、面接官ごとの基準のずれに気づきやすくなり、評価の客観性を高める手がかりにもなるでしょう。定着率のような数字への効果は、自社で導入の前後を比べて確かめる必要があります。
デメリット・リスク|ブラックボックス・バイアス・個人情報・現場の抵抗
根拠が見えにくい点は、根拠の条文や材料の箇所を必ず書かせる指示で補うことになります。過去の文書の偏りをなぞった言い回しや、指示文で禁じた質問が混ざることもあるので、人の目で確かめる手順は外せません。個人情報は、入れない情報を決め、仮名に置き換え、出力以外の目的(学習など)で扱われない環境で使うと決めておけば抑えられます。現場の抵抗は、人事担当や管理職が先に使って見せると和らいでいくでしょう。どのリスクも、AIの出力をそのまま外に出さず、人が確かめる手順を挟めば小さくすることが出来ます。
人事でAIに任せる範囲|最終判断は人が行い、AIは下書きまで
人事の仕事でAIに任せるのは文章の下書きと観点の洗い出しまでで、採否・評価・処遇のように人の待遇を左右する判断は、最終的に人事担当と上長が持つことになります。生成AIは、それらしい理由を添えて結論を出してくるので、判断までさせると、誰がどの根拠で決めたのかを社員に説明出来なくなってしまいます。経団連の報告書も、採用・評価・配置など影響の大きい判断では、AIの結果だけで不利益な処遇を決めない対応例を挙げています。AIの役割は、判断に要る材料を並べ、見落としを指摘する支援役と考えるのが無理のない分け方でしょう。
業務ごとの線引きを、任せる・下書きだけ・入れないの3段階に分けると次のようになります。
- 任せる(人は読み直して使う)求人票・社内通知・研修案内の言い換えや誤字の確認、公開されている法令や社内規程の要約、面接の質問案や研修の設問案の洗い出し、会議の要約。個人を特定出来る情報を含まない材料に限ります。
- 下書きだけ(人が事実と規程に照らして仕上げる)内定通知や入社案内、社員の問い合わせへの回答案、就業規則の改定案と社内向けQ&A、面談記録の要約、評価コメントの下書き。氏名や社員番号は「社員A」「応募者B」のような仮名に置き換えてから入れ、送る前に人が規程の条文と照らします。
- 入れない(AIに渡さない・決めさせない)病歴、健康診断の結果や診断書の中身、信条・思想や支持政党、労働組合への加入状況、本籍・出生地、家族の病歴や収入。採否や評価の点数・等級をAIに決めさせることも、この段階に入ります。
入れないの段階にある情報は、名前を伏せても、内容そのものが本人への差別や不利益につながりかねない種類のものです。病歴や信条、労働組合への加入状況は、仮名に置き換えてもAIに入れないと決めておきましょう。迷ったときは、その情報がなくても下書きが作れるかを考えてみてください。多くの場合、病名を書かずに「私傷病で休職中」とだけ書けば、手続きの案内文は十分に作れます。
応募者・社員の個人情報はどこまで入れてよいか|個人情報保護法と職業安定法
応募者や社員の情報をAIに入れるときは、利用目的の範囲内か、出力以外の目的(学習など)で扱われないか、そもそも集めてはいけない情報ではないかの3点を確かめることになります。
個人情報保護法|利用目的・要配慮個人情報・第三者提供
個人情報保護法の第17条第1項は、個人情報を取り扱うときに利用目的を出来る限り特定するよう求めています。第2条第3項は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実などを含む個人情報を「要配慮個人情報」と定めており、第20条第2項により、一定の場合を除いて本人の同意なしには取得出来ない決まりです。取得したときは、利用目的を公表している場合を除き、速やかに本人へ通知するか公表することを第21条第1項が定めています。第23条は、漏えいなどを防ぐための安全管理の措置を事業者に求める条文です。第三者への提供は第27条第1項が本人の同意を原則としていて、利用目的の達成に必要な範囲で取り扱いを委託する先は、同条第5項第1号で第三者に当たらないとされています。生成AIのサービスに入れることがどちらに近いかは、サービスの規約やデータの扱いで変わるため、条文だけでは一律に決まりません。
個人情報保護委員会の注意喚起(令和5年6月2日)
個人情報保護委員会は、令和5年6月2日に生成AIサービスの利用に関する注意喚起等についてを公表しています。事業者向けの1つ目は、個人情報を含むプロンプト(AIへの指示文)を入れる場合に、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確かめることでした。2つ目では、本人の同意なしに個人データを含むプロンプトを入れ、そのデータが応答の出力以外の目的で扱われる場合に、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があると書かれています。そのため、AIの提供事業者がそのデータを機械学習に使わないことなどを十分に確認するよう求める内容となります。注意喚起が違反の可能性を示しているのは、データが出力以外の目的(学習など)で扱われる場合です。使う前に、法人向けのプランや設定で、入れた内容が学習に使われないことを確かめておきましょう。
職業安定法と公正な採用選考|応募者から集めてはいけない情報
採用の場面では、個人情報保護法に加えて職業安定法が、応募者の情報を集める範囲を絞っています。職業安定法第5条の5第1項は、募集する会社などに、業務の目的の達成に必要な範囲で、目的を明らかにして求職者の個人情報を集め、その目的の範囲で保管・使用するよう求める条文です。同じ条の第2項は、その情報を正しく管理するための措置を講じることも求めています。そのうえで指針(平成11年労働省告示第141号)の第五は、原則として集めてはいけない情報を、次の3つに分けて示しました。
- 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
- 思想及び信条
- 労働組合への加入状況
特別な職業上の必要性があり、業務の目的の達成にどうしても必要で、収集目的を示して本人から集める場合だけが例外となります。厚生労働省のページ「公正な採用選考をめざして」は、本籍・出生地、家族の職業・続柄・健康・病歴・収入、住宅状況、宗教、支持政党、尊敬する人物、思想、労働組合などの社会運動、購読新聞や愛読書を、就職差別につながるおそれのある項目として挙げています。生成AIで面接の質問案を作るときも、この一覧がそのまま確かめる物差しとして使えます。
健康情報と、人事の生成AI利用に絞った国の指針
厚生労働省の「確かめよう労働条件」のQ&Aは、労働安全衛生法第104条の趣旨として、社員の心身の状態の情報は健康の確保に必要な範囲で集め、保管し、使うものと説明しています。事業場ごとに、取り扱う目的や方法、扱える人と権限、管理の方法などを取扱規程として定めておく必要がある点も見逃せません。健康診断の結果や診断書の中身を汎用の生成AIに入れると、この規程で決めた扱う人の範囲を外れてしまうおそれがあるので、入れない側に置いておくのが安全です。
人事労務での生成AIの利用に絞った厚生労働省の指針は、2026年10月16日に確認した時点では見当たらない状況となります。代わりの手がかりになるのが経団連の報告書の13ページにある対応例で、AI事業者ガイドライン第1.1版を基に経団連事務局が作ったものです。挙げられている対応例は次の6つになります。
- HR部門で使うAIツールを会社指定のものに限る
- AIに入れる人事データは必要最小限にする
- 要配慮個人情報は入れない
- AIの提供者がデータを保存・二次利用するかを事前に確かめる
- 採用・評価などでAIを使っていることを、社員(採用では候補者)に明示する
- 採用・評価・配置など影響の大きい判断では、AIの結果だけで不利益な処遇を決めない
大企業向けの報告書ですが、6つとも社員10〜200名の会社の社内ルールにそのまま写せる中身でしょう。まずは会社で使うAIを1つに決め、入れてよい情報の範囲を書き出すところから始めてみてください。
応募者や社員の情報が個人のAIアカウントに散らばる状態は、会社で使う環境を1つにすると防ぎやすくなります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
採用の実務|求人票・募集要項の下書きと面接の質問案
採用でAIに任せやすいのは、求人票や募集要項の文面づくりと、面接で聞く質問の案出しの2つになります。どちらも応募者の個人情報を入れずに進められるので、最初に試す業務にも向いています。
求人票・募集要項の下書き
厚生労働省のページにあるとおり、令和6年4月1日からは職業安定法施行規則の改正により、募集時に示す事項に、従事すべき業務の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間又は更新回数の上限を含む)の3点が加わりました。下の指示文にはこの3点の欄を入れてあるので、求人サイトやハローワークに出す求人を書くときの下書きとしても使えます。材料は、仕事の内容と労働条件を箇条書きにした社内メモと、過去に出した求人票の文面で、労働条件は就業規則や賃金規程から写したものにします。今いる社員の名前や、前任者が辞めた事情は書かないでおきましょう。
【指示文1:求人票・募集要項の下書き】 あなたは中小企業の人事担当として、求人票の文面を下書きする役です。 # 会社の背景 ・業種と規模:【例:製造業・社員80名】 ・募集する職種と雇用形態:【職種名、正社員/有期契約 など】 # 材料 <仕事の内容と労働条件のメモ> 【就業規則・賃金規程から写した労働条件の箇条書き(業務と就業場所の変更の範囲、有期の場合は契約期間と更新の基準を含む)】 <過去の求人票> 【以前に出した求人票の本文】 # 作業 材料をもとに、求人票の本文を書いてください。 # 出力の形 1. 仕事の内容(300字程度) 2. 応募の条件(必須と歓迎に分ける) 3. 労働条件(材料の箇条書きの順のまま。業務の変更の範囲・就業場所の変更の範囲を含める) 4. 契約期間と更新の基準(有期の場合。通算契約期間又は更新回数の上限を含む) 5. 材料から読み取れず、確認が必要な点 # 守ること ・賃金・時間・休日などの数字は材料から写し、材料にない数字は書かずに【要確認】と置く ・材料に変更の範囲や更新の基準がなければ、【要確認:募集時に示す必要があります】と置く ・材料にない手当、制度、働き方を足さない ・本籍・出生地、家族、信条などに触れる条件は書かない ・社風を表す決まり文句より、仕事の中身が伝わる言葉を選ぶ
出力の例(架空) 正社員の募集 1. 仕事の内容 金属部品の検査工程で、測定器を使った寸法の確認と記録をお任せします。入社後3か月は先輩社員が隣について手順を教えます。 3. 労働条件 ・基本給:【要確認】(材料に金額の記載がありません) ・勤務時間:8:30〜17:30(休憩60分) ・業務の変更の範囲:【要確認:募集時に示す必要があります】 ・就業場所の変更の範囲:本社工場のみ 4. 契約期間と更新の基準 ・期間の定めなし 5. 確認が必要な点 ・業務の変更の範囲が材料にありません。 ・入社後3か月の教育の進め方は材料に書かれていません。実際の教え方を確認してください。
人が確かめる点は、労働条件の行が就業規則や賃金規程と一字ずつ合っているか、令和6年4月に加わった3点が抜けていないか、材料にない約束が足されていないかの3つになります。例の出力でも「入社後3か月は先輩社員が隣について」という材料にない約束が本文に入っており、AIが確認点に挙げていても、本文から消し忘れると応募者への約束として残ってしまいます。労働条件の行だけは、材料のメモと並べて読み比べてください。
面接の質問案と評価シートの観点づくり
面接では、職種で求める力から質問案と評価シートの観点を作らせ、聞いてはいけない項目が混ざっていないかを人が確かめる流れになります。材料は求人票の「仕事の内容」と「応募の条件」で、応募者の履歴書は入れません。
【指示文2:面接の質問案と評価シートの観点】 あなたは中小企業の採用面接の準備を手伝う担当です。 # 材料 <求人票の仕事の内容と応募の条件> 【求人票から写した本文】 # 作業 1. この仕事で求める力を3〜5つに分けてください。 2. 力ごとに、面接で聞く質問を2つずつ作ってください。経験を具体的に話してもらう聞き方にしてください。 3. 評価シートの観点として、力ごとに「どんな答えなら評価出来るか」の目安を1文で書いてください。 # 出力の形 表(列:求める力/質問1/質問2/評価の観点) # 守ること ・本籍・出生地、家族(職業・続柄・健康・病歴・収入など)、住宅状況、生活環境・家庭環境、宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合や社会運動、購読新聞・雑誌・愛読書に触れる質問は作らない ・答えから上の項目が分かってしまう聞き方も避ける ・評価の観点に点数は付けない
出力の例(架空) 営業事務の募集 求める力|質問1|質問2|評価の観点 正確な事務処理|数字の入力で間違いを防ぐためにしてきた工夫を教えてください|締め切りが重なったとき、どう順番を決めましたか|手順と確認の方法を自分の言葉で説明出来る 社内外との連絡|取引先からの急な依頼に、どう対応しましたか|休日はご家族とどう過ごしていますか|相手と状況に合わせて連絡の手段を選べている
人が確かめる点は、質問が「公正な採用選考をめざして」の項目に触れていないかと、評価の観点が求人票の条件から外れていないかの2つです。例の出力の「休日はご家族とどう過ごしていますか」は、指示文で禁じても混ざることがある家庭環境の質問なので、面接官に渡す前に削ってください。評価シートの観点はAIの案をたたき台にして、面接官どうしで言葉の意味をそろえる話し合いに使えば、面接官ごとの評価のぶれを小さくする助けにもなるでしょう。
入社案内の送付状・社内通知文の下書き
入社案内や社内通知の文面は、伝える中身を人事が箇条書きで決め、AIには読み手に合わせた言い回しと構成を任せる分担が合っています。内定通知そのものは労働条件通知書と合わせて会社の書式で出すことが多いため、AIに書かせるのは送付状とメール本文までにします。入社日や集合場所は、AIに考えさせず、材料として渡したものだけを使わせましょう。応募者の名前は「応募者B」と書いておき、送る直前に人が書き換える形にすれば、氏名をAIに入れないまま文面を仕上げることが出来ます。
【指示文3:内定承諾後の入社案内の下書き】 あなたは中小企業の人事担当として、応募者への連絡文を下書きする役です。 # 連絡の種類 内定承諾後の入社案内(送付状とメール本文) # 材料 ・宛名:応募者B(送る前に人が書き換える) ・職種:【職種名】 ・入社日と初日の集合場所・時刻:【決まった内容】 ・初日に持ってくる書類:【会社の書類一覧から写したもの】 ・返事の期限と連絡先:【決まった内容】 # 出力の形 件名と本文。です・ます調で、本文は400字以内 # 守ること ・材料にない約束(研修の内容、配属先、手当など)を書かない ・日付や時刻は材料から写し、材料にないものは【要確認】と置く ・応募者の個人的な事情に触れない
出力の例(架空) 件名:入社日のご案内(応募者B様) 応募者B様 このたびは内定をご承諾いただき、ありがとうございます。入社日は【要確認】、初日は9時に本社2階の会議室へお越しください。当日は、先日お送りした書類一覧の書類をお持ちください。ご不明な点は人事担当までご連絡ください。
人が確かめる点は、日付・時刻・持ち物が材料と一致しているかと、宛名の仮名を実名に戻し忘れていないかの2つになります。仮名のまま送る事故を防ぐため、「応募者B」の文字が残っていないかを送信前に必ず検索しましょう。社内通知では、制度の変更や手続きの締め切りを知らせる文に使えます。
【指示文4:社員向けの社内通知】 あなたは社員向けのお知らせ文を書く担当です。 # 材料 ・知らせる内容:【例:年末調整の書類の提出】 ・対象:【全社員/正社員のみ など】 ・締め切り:【日付】 ・根拠になる規程や手順書:【該当部分の本文】 # 作業 社内チャットに貼る短い版と、メールで送る少し長い版の2つを書いてください。 # 守ること ・材料にない締め切りや例外を足さない ・やってほしいことを1行目に書く ・絵文字は使わない
出力の例(架空) チャット版 年末調整の書類を【日付】までに人事へ提出してください。用紙は共有フォルダの「人事>年末調整」にあります。分からない点はこのスレッドで質問してください。
例のチャット版にある共有フォルダの場所は材料にない情報なので、実在する場所かを確かめてから流してください。毎年同じ時期に出す通知なら、確定した文面を手順書に残し、翌年はAIに頼らず使い回すことも出来ます。
就業規則・社内規程の改定案の読み比べと社内向けQ&A
就業規則や社内規程の改定では、変わった箇所を社員に説明する文を作らせる作業と、改定後の規程から社員向けのQ&Aを作らせる作業がAIに向いています。どちらも、根拠になる条文番号を必ず出させる指示にしておくのが要になります。根拠の条文が書かれていれば、人は該当する条を開いて照らすだけになるため、確認の手間が大きく減っていきます。
新旧の比較結果から、社員への影響と説明文を作る
新旧の違いそのものは、Wordの[校閲]→[比較]で改定前と改定後のファイルを比べると、文字単位で洗い出せます。AIに新旧を読み比べさせると小さな語句の変更を読み飛ばすことがあるので、比較はWordに任せ、AIにはその結果を材料にして、変わった箇所ごとの社員への影響と説明文を頼む分担にしましょう。貼る前に、会社名や役職者の名前は外しておきます。
【指示文5:比較結果から社員への影響と説明文を作る】 あなたは社内規程の改定を社員に説明する文を作る担当です。 # 材料 <Wordの[比較]で出した改定前と改定後の差分> 【会社名を外した比較結果(条番号が分かる形で)】 <規程の改定日と施行日> 【日付】 # 作業 1. 変わった箇所ごとに、条番号、変わった点、社員への影響を表にしてください。 2. 表をもとに、社員向けの説明文を書いてください。 # 出力の形 1. 表(列:条番号/変わった点/社員への影響) 2. 説明文(です・ます調、400字以内) # 守ること ・すべての行に条番号を書く。条番号が分からない行には【条番号不明】と書く ・材料の差分にない変更を書かない。法令の改正内容を推測で書かない ・社員にとって不利になる変更も、やわらげずにそのまま書く
出力の例(架空) 1. 表 条番号|変わった点|社員への影響 第24条|慶弔休暇に「子の結婚で2日」を追加|子が結婚する社員も休暇を取れる 第31条|通勤手当の上限を月2万円から月2万5千円に変更|遠方から通う社員の受取額が増える場合がある 2. 説明文(冒頭) 【施行日】から、就業規則の慶弔休暇(第24条)と通勤手当(第31条)の定めが変わります。
人が確かめる点は、表の行が比較結果の差分と一つずつ対応しているかと、説明文が変更の中身を軽く見せていないかの2つです。とくに手当の減額や休暇の条件の変更は、説明文で言い回しが和らげられていないか、条文と並べて読んでください。
改定後の規程から社員向けQ&Aを作る
規程が固まったら、社員から出そうな質問とその答えを、条文番号付きで作らせることが出来ます。
【指示文6:規程から社員向けQ&Aを作る】 あなたは社員からの質問に備えて、社内向けのQ&Aを作る担当です。 # 材料 【改定後の規程の本文(会社名を外したもの)】 <規程の改定日> 【日付】 # 作業 社員が実際に聞きそうな質問を10個考え、規程の本文だけを根拠に答えを書いてください。 # 出力の形 Q:質問 A:答え(120字以内) 根拠:第○条第○項(規程の文言をそのまま1文引用) # 守ること ・すべての答えに根拠の条番号と引用を付ける ・規程に書かれていないことは答えを作らず、「規程に定めがないため人事に確認」と書く ・育児休業・介護休業・年次有給休暇に関わる答えには【法改正後の内容か人事が確認】と付ける ・法律の一般論で規程の空白を埋めない
出力の例(架空) Q:子どもが結婚するときも慶弔休暇は取れますか A:取れます。子の結婚の場合は2日です。 根拠:第24条第1項「子が結婚するとき 2日」 Q:慶弔休暇は分けて取れますか A:規程に定めがないため人事に確認
人が確かめる点は、根拠として引用された文言が規程の中に本当にあるかどうかで、引用を規程のファイルで検索すれば短い時間で照らせます。規程に書かれていない質問へAIが一般論で答えを作っていたら、その行は消して人事が答えを決めましょう。作ったQ&Aは、次の節の問い合わせ対応や規程Q&Aチャットの材料にもそのまま使えるでしょう。
改定した規程は、作って終わりではありません。労働基準法第89条により常時10人以上の労働者を使用する会社は変更も届け出る必要があり、第90条で過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)の意見を聴いて意見書を添付し、第106条で掲示・備え付け・書面の交付などの方法で社員に周知する決まりです。AIで作った説明文やQ&Aは、この周知の場面で配る資料の下書きとして使えます。
社員からの問い合わせ対応|有給・育休・手当の回答案と規程Q&Aチャット
残日数や給与額のように勤怠・給与のデータで決まる質問はAIを通さず、育休・介護休業・休職・退職のように手続きの説明が長くなる質問に使うのが合っています。こうした問い合わせは、規程の条文を材料に渡して回答案を作らせ、人事が条文と照らしてから返す形にすると、返事が早くなります。問い合わせの文面には社員の名前や家族の事情が入っていることが多いので、AIに貼る前に「社員A」に置き換え、事情は答えに要る事実だけを残してください。たとえば育休の質問なら、子の生年月日を「子は1歳未満」のように置き換えても、規程の当てはめには足りる場面が多いでしょう。規程が法律の改正に追いついていないと、古い内容をそのまま案内してしまうため、材料には規程の改定日も入れておきます。
【指示文7:社員の問い合わせへの回答案】 あなたは人事の窓口で、社員からの質問に答える文を下書きする担当です。 # 材料 <社員からの質問(名前を仮名にしたもの)> 【例:社員Aより「来月から育児休業を取りたいのですが、手続きは何から始めればいいですか」】 <関係する規程と改定日> 【育児休業規程・就業規則の該当条文】(改定日:【日付】) # 作業 質問への回答案を書いてください。 # 出力の形 1. 回答案(社内チャット向け、200字以内) 2. 根拠にした条番号と、その条文の文言の引用 3. 規程だけでは答えられない点(人事が確認すること) # 守ること ・規程の条文だけを根拠にする。法律の内容を推測で補わない ・日数、期限、金額は規程から写し、規程にないものは【要確認】と置く ・育児休業・介護休業・年次有給休暇に関わる答えには【法改正後の内容か人事が確認】と付ける ・社員の個人的な事情について意見を述べない
出力の例(架空) 1. 回答案 社員Aさん、ご連絡ありがとうございます。育児休業の申出は、規程第5条により、休業を始める日の【要確認】前までに、所定の申出書を人事へ出していただく流れです。申出書は人事からお送りします。【法改正後の内容か人事が確認】 2. 根拠 第5条第1項「育児休業をしようとする者は、…申出書を人事担当者に提出するものとする」 3. 人事が確認すること ・申出の期限の日数(材料の第5条に日数の記載がない)
人が確かめる点は、引用された条文が規程に実在するか、日数や金額が規程から写されているか、【要確認】が残ったまま送っていないかの3つになります。【法改正後の内容か人事が確認】の付いた答えは、人事が今の法令と規程を照らしてから返しましょう。
規程Q&Aチャットの作り方|根拠条文を出させ、答えない質問を決める
同じ質問が何度も来るなら、規程とQ&Aを読み込ませたチャットを作り、社員が自分で調べられるようにする方法もあります。ChatGPTのGPTs、GeminiのGem、Claudeのプロジェクトのように、指示と資料をまとめて保存出来る機能を使えば、専用のシステムがなくても形にすることが出来ます。作るときは、根拠の条文を必ず出させることと、答えてはいけない質問の線を先に決めることの2つが外せません。
【指示文8:規程Q&Aチャットに設定する指示】 あなたは社内規程について社員の質問に答える案内役です。 # 読み込ませる資料 規程とQ&A(改定日:【日付】) # 答え方 ・答えは、読み込ませた規程とQ&Aの本文だけを根拠にする ・答えの最後に必ず「根拠:規程名 第○条第○項」を書き、該当する文言を1文引用する ・規程に書かれていない質問には答えを作らず、「規程に定めがありません。人事担当へお問い合わせください」と返す ・育児休業・介護休業・年次有給休暇に関わる答えには【法改正後の内容か人事が確認】と付ける # 答えない質問 ・個人の評価、昇給、異動、退職の扱いについての質問 ・自分や他の社員の健康、病気、家族の事情を含む相談 ・ハラスメントの相談や、特定の社員についての苦情 これらには「人事担当が直接お話を伺います。人事の窓口へご連絡ください」とだけ返す # 守ること ・法律の一般論で答えない ・社員の名前や個人の事情を聞き返さない
公開する前に、Q&Aの質問を一通り入れてみて、根拠の条番号と引用が規程と合っているか、答えない質問を正しく断っているかを人が確かめるのが手順です。規程を改定した日には、チャットに読み込ませた規程も同じ日に差し替えてください。古い規程のまま答え続けるチャットは、社員に誤った案内を広めてしまうことになります。工場など会社のパソコンを持たない社員がいる場合は、スマホで開ける会社のアカウントをそろえる必要も出てきます。
研修の確認テストとサーベイの自由記述の要約
研修とサーベイでは、確認テストの設問を作らせる作業と、集まった自由記述を要約させる作業がAIに向いています。人事白書2025でも、教育・研修コンテンツの作成は19.5%、サーベイの設問作成は6.9%の回答企業が使い道に挙げていました。
作業手順書・安全ルールの確認テスト
材料は、研修で教える作業手順書や安全ルールで、AIには理解を確かめる設問と、間違えた人向けの解説を作らせます。外国人社員がいる職場なら、同じ設問のやさしい日本語の版も一緒に作らせることが出来ます。
【指示文9:作業手順書・安全ルールの確認テストを作る】 あなたは社内研修の確認テストを作る担当です。 # 材料 【研修で使う作業手順書・安全ルールの本文】 # 作業 1. 材料の内容を理解出来たかを確かめる4択の設問を8問作ってください。 2. 外国人社員向けに、同じ設問を短い文と簡単な言葉で書き直した、やさしい日本語の版も作ってください。 # 出力の形 問題文/選択肢A〜D/正解/解説(材料のどの部分に書いてあるかを示す) # 守ること ・材料に書かれていることだけを問う ・ひっかけのための紛らわしい言い回しは使わない ・正解の根拠を、材料の見出しや段落で示す
出力の例(架空) 問3 プレス機の金型を交換するとき、最初にすることは何ですか A 金型を外す B 電源を切り、表示札を掛ける C 手袋を外す D 上長に報告する 正解:B 解説:作業手順書「4. 金型交換」の1行目に「電源を切り、表示札を掛けてから作業する」とあります やさしい日本語の版:金型を かえる とき、はじめに なにを しますか
人が確かめる点は、正解と解説が材料の該当箇所と合っているかと、正解以外の選択肢がうっかり正しい内容になっていないかの2つになります。安全ルールの設問は、正解が現場の手順と食い違うと事故につながりかねないので、現場の責任者にも一度解いてもらいましょう。
サーベイの設問と自由記述の要約
社員サーベイでは、設問の案づくりと自由記述の要約の2つに使えます。自由記述には、書いた人が分かる言い回しや特定の上司の名前、健康や家族の事情が混ざることがあるため、貼る前に固有名詞を消し、健康や家族に触れた回答は入れない側に分けておきましょう。
【指示文10:サーベイの自由記述の要約】 あなたは社員サーベイの結果をまとめる担当です。 # 材料 【自由記述の回答(固有名詞を消し、健康・家族の事情に触れた回答を除いたもの)】 # 作業 回答をテーマごとに分け、テーマごとの件数と、代表的な回答を2つずつ挙げてください。 # 出力の形 テーマ/件数/代表的な回答(原文のまま)/読み取れる課題 # 守ること ・回答を書いた人が誰かを推測しない ・件数は数えた結果だけを書き、割合は書かない ・どのテーマにも当てはまらない回答は「その他」にまとめる
出力の例(架空) テーマ|件数|代表的な回答|読み取れる課題 評価の基準|14|「何をすれば評価されるのか分からない」|評価の基準が社員に伝わっていない 残業|9|「月末に作業が集中する」|月末に業務が偏っている
人が確かめる点は、件数が実際の回答の数と合っているかと、代表として選ばれた回答が原文のままかの2つです。AIは件数を数え間違えることがあるため、テーマごとの件数は表計算ソフトで数え直すのが確実でしょう。自由記述から書いた人を推測させる使い方は、社内で禁止と決めておいてください。
人事評価の取りまとめ・コメント下書きと1on1記録の要約
人事評価は取りまとめの点検と評価コメントの下書きに、1on1や面談の記録は要約にAIを使い、点数や等級はAIに決めさせない線を引いておくことになります。
人事評価は取りまとめの点検とコメントの下書きまで
人事評価でAIに任せてよいのは、上長から集めた評価シートの記入漏れの洗い出しと、評価の段階とコメントの中身の食い違いを挙げさせること、事実のメモから評価コメントの下書きを作ることまでです。点数や等級をAIに決めさせると、その根拠を社員に説明出来なくなり、評価への納得も得にくくなってしまいます。評価シートは、氏名を社員A・社員Bのような仮名に置き換えてから貼ってください。
【指示文11:評価の取りまとめの点検】 あなたは人事評価の取りまとめを手伝う担当です。 # 材料 <評価の段階の定義> 【例:S・A・B・C・Dと、それぞれの意味】 <上長から集めた評価シート(氏名は仮名)> 【社員Aから順に、項目ごとの段階とコメント】 # 作業 1. 段階かコメントが空欄の項目を挙げてください。 2. 段階とコメントの中身が食い違っているように読める行を挙げ、理由を1文で書いてください。 # 出力の形 表(列:社員/項目/気になる点/理由) # 守ること ・段階や点数を付け直したり、付け直す案を出したりしない ・社員の人柄について意見を書かない ・食い違いかどうか判断出来ない行は【上長に確認】と書く
出力の例(架空) 社員|項目|気になる点|理由 社員A|業務の正確さ|段階Sとコメントが食い違う|コメントに「月に数回、入力の誤りがあった」とある 社員D|協調性|コメントが空欄|段階Bだけが記入されている
人が確かめる点は、挙がった行を上長に戻して直してもらう流れになっているかで、AIの指摘をもとに人事が段階を書き換えないことが前提です。評価コメントの下書きの指示文や評価者研修での使い方は人事評価のAI活用の記事で詳しく扱っているので、あわせて読んでみてください。
海外に目を向けると、EUのAI法(Regulation (EU) 2024/1689)は附属書IIIで、採用・選考や、昇進・契約終了に影響する決定、業績や行動の監視・評価に使うAIを高リスクに分類しています。欧州委員会の発表では、2026年7月27日に発効したAI Omnibusにより、附属書IIIの高リスクAIの規則は2027年12月2日から適用される予定です。EU域外の会社にどう関わるかは事業の中身によるため、ここでは評価にAIを使うことの重さを考える参考情報として紹介しています。
1on1を実施している会社向け|記録の要約
1on1を実施している会社なら、面談メモの要約にも使えます。名前を「社員A」に置き換え、健康や家族に触れた部分は削ってから貼るようにしてください。
【指示文12:1on1の記録の要約】 あなたは上長と社員の1on1の記録を整理する担当です。 # 材料 【1on1のメモ(社員Aと上長Cの会話。健康・家族に触れた部分は削除済み)】 # 作業 メモを要約し、次回までにやることを整理してください。 # 出力の形 1. 話した内容の要約(5行以内) 2. 社員Aが次回までにやること 3. 上長Cが次回までにやること # 守ること ・メモに書かれていない評価や感想を足さない ・社員Aの性格や能力を決めつける言葉を使わない
人が確かめる点は、要約が本人の言葉の意味を変えていないかと、やることの担当が入れ替わっていないかの2つになります。
人事の仕事はAIに奪われるか|任せた後に残る人事の役割
汎用の生成AIが受け持てるのは文章の下書きと整理なので、人事の仕事がそのまま置き換わるというより、仕事の中身の比重が変わると考えるのが自然でしょう。採否や評価、配置を決めることや社員の相談に向き合うことは、引き続き人事が受け持つ仕事になります。下書きの時間が減った分、AIの出力を規程や法令に照らして見抜く力と、指示文を書いて社内で共有する力が、人事担当の仕事に加わっていきます。
人事が1〜2人の会社の始め方|1か月で試す手順
人事担当が1〜2名の会社なら、1か月かけて、業務の棚卸しと目的の決定、小さな試し、ルールづくり、本格的な利用の順に進めるのが無理のない形になります。専用の人事システムがなくても、Excelの名簿は使わずに、規程のPDFと過去の求人票、社内通知の文面を材料にすれば始められます。
1週目|社長の承認、業務の棚卸しと目的を決める
最初に、使うAI・入れない情報・月の費用の3点を1枚にまとめ、社長の承認をもらっておきましょう。そのうえで人事の仕事を書き出し、個人情報を入れずに試せる業務を2つ選びます。候補は求人票の下書き、社内通知、規程の変更点の説明文のように、材料が社内規程や公開済みの文書だけで足りるものが向いています。目的は「通知文を1本作る時間を半分にする」「問い合わせの回答案を当日中に返す」のように、測れる形で決めておきましょう。
2〜3週目|2つの業務で小さく試す
2週目からは、指示文を自社の言葉に直して使い、作業にかかった時間と、人が直した箇所を記録していきます。直した箇所が多い指示文は、守ることの欄に一行足して次の回に試すと、出力が少しずつ自社に合っていくでしょう。
4週目|ルールを決めて本格的な利用へ
4週目は、試した結果をもとに、入れてよい情報と入れない情報、使うAI、確かめる人を社内ルールとして書き出します。経団連の報告書の対応例にあった、AIを使っていることを社員や候補者に明示する一文も、このときにルールへ入れておくとよいでしょう。ルールのひな形は生成AIの社内ガイドラインの記事にあるので、自社に合わせて直して使うことが出来ます。本格的に使い始めるのは、ルールを社員に知らせ、使うAIのアカウントを会社として配ってからになります。個人のアカウントで先に広がってしまうと、会社が把握出来ないAI利用、いわゆるシャドーAIの状態になりかねません。
会社で安全に使うには|学習させない設定・個人アカウント・ログ・使い分け
人事でAIを使い続けるには、学習させない設定、個人アカウントで使わせないこと、利用の記録、複数のAIの使い分けを、社員任せにせず会社の側でそろえておくことになります。
学習させない設定を会社で一律にする
個人情報保護委員会の注意喚起が確認を求めていたのは、入れたデータが出力以外の目的(学習など)で扱われないことでした。ChatGPT Businessは料金ページで「デフォルトではビジネスデータを学習に使用しません」としており、Claude TeamとEnterpriseも学習は既定でなし、Google WorkspaceのGeminiも事前の許可や指示がない限り顧客データをモデルの学習に使わないとしています。個人向けのプランでは、学習への利用を切る設定を社員一人ずつに任せることになり、会社からは設定の状態が見えなくなってしまいます。
※ChatGPT Businessの学習の扱いは2026年9月15日に料金ページで確認した記載です。各社の扱いはプランや設定で変わることがあるため、契約前に公式のページで確かめてください。
個人アカウントで使わせず、利用の記録を残す
応募者や社員の情報を扱う人事こそ、会社が配ったアカウントだけで使う決まりにしておきたいところです。ChatGPT Businessでは管理者が会話履歴を見たり書き出したり削除したり出来、保持期間も決められるので、誰がどの情報を入れたかを後から確かめられます。異動や退職のときにアカウントを止める手順も、入社・退社の手続きの書類に組み込んでおきましょう。情報の扱いを点検する項目はAIセキュリティのチェックリストにまとめてあるので、人事のルールと照らしてみてください。
業務ごとに複数のAIを使い分ける
同じ指示文を2つのAIに渡して出力を比べると、条番号の食い違いや材料にない言葉の足し方の違いが見え、人が確かめる箇所を絞り込めます。規程の読み比べのような長い文書を扱う作業と、通知文の言い回しを整える作業で、使うAIを分ける使い方も出来ます。複数のAIを会社で併用するときの考え方はマルチAIの記事で紹介しているので、使い分けの参考にしてください。
人事で使うAIを、会社の管理のもとで1つに
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準適用しており、管理画面ではUPGEAR AI上で誰が・いつ・どのAIを・どう使ったかを一覧で確かめられます。社内文書RAGで就業規則や社内規程を読み込ませたり、カスタムプラスでよく使う指示文と手順をBOTにして社内限定で共有したりすることも出来ます。基盤はAWSの日本リージョンで動いており、データの保管とログの管理は国内です。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
人事の仕事で生成AIに社員の個人情報を入力してもよいですか?
求人票や面接の質問をAIに作らせるときの注意点は何ですか?
人事評価の点数をAIに決めさせてもよいですか?
就業規則の質問に答えるチャットは作れますか?
厚生労働省に人事でのAI利用のガイドラインはありますか?
まとめ
人事のAI活用は、業務ごとに入れる材料と指示文を決め、出てきた下書きを人事担当が規程や事実と照らして仕上げる形にすると、専用のシステムがなくても始めることが出来ます。求人票や面接の質問案、入社案内や社内通知、規程の変更点の説明とQ&A、問い合わせへの回答案、研修やサーベイ、面談記録の要約が、汎用の生成AIに任せやすい業務でした。病歴や信条、労働組合への加入状況、本籍などは入れず、氏名は仮名に置き換え、採否や評価の点数はAIに決めさせない線を最初に引いておきましょう。まずは個人情報を使わない業務を2つ選び、1か月かけて試してみてください。経理や総務まで含めた全体像はバックオフィスのAI活用で、ほかの業務の使い方はAI活用コラム一覧で読むことが出来ます。
