
AIに入力する機密情報とは、取引先との契約内容や未公開の事業計画など、会社が外に出さずに管理している情報のことです。入力したからといって、すぐ他の利用者に公開されるわけではありませんが、外部のサービスに情報を渡したことになり、契約や設定によっては学習にも使われてしまいます。入れてよい資料と使ってよい環境は、会社で先に決めておきましょう。ChatGPTに絞った全体像はChatGPTの情報漏洩が起きる8つの経路で取り上げています。
AIに機密情報を入れるとどこへ届く?保存と学習の経路
AIへ送った文章やファイルは、まず使っているサービスの外部サーバーへ届きます。ブラウザの入力欄に貼った時点で、社内だけに置いてある資料ではなくなってしまいます。どの事業者が受け取り、会話をどれだけ残し、モデルの学習に使うのかは、契約と設定によって変わってきます。入力する前に、使っている画面のサービス名と、誰の名義の契約なのかを確かめてみてください。
通り道を順に追うと、社員の端末からAI事業者へ送られ、事業者のシステムで処理されて、設定によっては履歴などが保管される流れになります。個人向けのChatGPTでは、OpenAIの説明によると、内容がモデルの学習に使われる場合があります。学習への利用を止めても、保存まで自動で止まるわけではありません。「学習されない」と「事業者側に残らない」は、別々に確かめる必要があります。
ほかにも通り道はいくつか考えられます。会話を共有する操作や、アカウントの不正利用、提供側の不具合によって、思ってもいない相手に情報が見えてしまうかもしれません。外部の資料をAIに読ませる使い方では、資料に紛れ込んだ指示が回答に影響することも考えておきたいところです。ひとくくりに「漏洩」と呼ばずに、どこで管理の手を離れたのかを分けて見ると、打つ手を選びやすくなります。
たとえば取引先との未公開の価格表を要約させる場合、送られるのは短い指示文だけではなく、添付した表も含まれます。「社名を書いていないから安全」と思っても、商品名や見積の条件の組み合わせから、相手を推測されてしまうことがあります。送る素材を全体で見て、必要なところだけを残すようにしてください。会社で許可した環境であっても、何を入れるかを選ぶ作業はなくなりません。
ソースコード・履歴・個人情報で起きた漏洩事例
事例を見るときは、情報を入力してしまった事故と、ほかの方に実際に見えてしまった障害を分けて考える必要があります。どちらも会社として対応が要るのは同じですが、起きた範囲を取り違えると判断を誤ってしまいます。報道や事業者の発表で確かめられる範囲から、順に見てみましょう。
サムスン電子で報じられたソースコードなどの入力
Economist Koreaは2023年3月30日、サムスン電子の半導体部門で、設備のソースコードに関わる入力が二件、会議の文字起こしの入力が一件あったと報じています。社員が外部のサービスへ送った時点で、社内に閉じていた資料を、会社が直接管理できない場所へ渡したことになってしまいます。記事を読む限りでは、ほかの利用者への回答にそのコードが出たとまでは確かめられません。入力してしまった事故と、第三者に公開された事故を、同じ出来事として扱わないことが大切になります。
自分の会社に置き換えると、開発担当の方が不具合の説明を求めてコードを貼る場面が近いでしょう。顧客名や認証情報が入っていない短い抜き出しでも、まだ公開していない設計が含まれていることがあります。まずは社内の区分を見て、許可された環境に入れてよい範囲かどうかを確かめてみてください。どこまでコードを短くすれば用が足りるのか、頼んできた方と一緒に考えることも出来ます。
OpenAIが公表した他の利用者の履歴表示
OpenAIは2023年3月の障害について、一部の利用者がほかの利用者のチャット履歴のタイトルを見られる状態になっていたと発表しました。原因は、同社が使っていたソフトウェアの不具合だったとのことです。さらに、特定の九時間に利用中だったChatGPT Plus加入者の1.2%については、氏名やメールアドレス、支払い先の住所などがほかの利用者に見えた可能性があるとも発表しています。カード番号の全桁が見えたという発表ではありません。
社員が入力を間違えなくても、提供する側の設計や運用で問題が起きることがある、という例になります。社内のルールには「入力しない」だけでなく、事業者からの障害の知らせを誰が受けて、誰に報告するのかも入れておきましょう。履歴のタイトルだけでも、案件名が入っていれば会社として確かめる必要が出てくることがあります。
RIZAPが公表した個人利用サービスへの誤アップロード
RIZAP株式会社は2026年9月、社員がデータを集計している途中に、個人で使っていた外部の生成AIサービスへお客様の情報を誤ってアップロードしたと公表しました。見つけてすぐにチャット履歴を削除し、学習データへの利用を止める設定をしたと説明しています。個人情報保護委員会への報告も済ませたとのことです。会社が使ってよいと認めていない環境へ情報が渡ったことと、見つけた後の処置とを分けて読める事例になります。
集計に使うファイルは、数字の列だけを見て送ってしまうかもしれません。氏名や連絡先が別の列や別のシートに残っていれば、そのファイルは丸ごと送られてしまいます。担当の方には、アップロードする前に列だけでなく全部のシートを確かめる手順を渡してみてください。事故が分かったときに履歴を消すのは必要な初動ですが、それで送ったという事実がなくなるわけではありません。
アカウント情報がダークウェブで流通したとの話を聞いたら
アカウント情報がダークウェブで出回っているという話は、入力した内容が学習される話とは別の経路として考えます。そうした知らせを受けたら、まず対象のサービスと利用者を確かめて、会社のアカウントに関わるかどうかを管理担当の方へ伝えてください。この節で挙げた公表事例は、そこまでの流通を確かめたものではありません。似た話題を一つの事故にまとめてしまわずに、根拠になる発表と影響の範囲を別々に見ていきましょう。
※事例は上記の報道と各社の公表内容に基づきます。公表されていない被害範囲は推測していません。
三つの事例から見えてくる対策も、それぞれ違います。入力の事故には資料の区分と送る前の確認、サービスの障害には知らせを受ける窓口と事業者への問い合わせ、個人のサービスを使ってしまう問題には公認の環境と周知が必要になるでしょう。自分の会社で起きたと仮定して、最初に連絡を受ける部署を決めてみてください。
サービスの不具合と不正アクセス、プロンプトインジェクション
入力する社員が気をつけていても、サービスの障害や不正アクセスには備えておく必要があります。提供側が会話やアカウントを預かっている間は、設計のミスや脆弱性、サイバー攻撃の影響も考えられます。ただ、個別のサービスで攻撃が起きたと確かめられていないものまで、起きた事故として書くことは出来ません。使っているサービスの障害の案内と、契約で決まっている連絡の方法を確かめてみてください。
学習データへの不正アクセスと、会話履歴への不正アクセスも分けて考えます。前者はモデルを作るのに使われる素材、後者はサービスに保管された利用記録の話となります。学習をオフにしても、履歴の保管やアカウントを守るという課題は残ったままです。退職した社員のアカウントが残っていないか、管理者が一覧で確かめる運用も必要でしょう。
外部の文章に紛れ込む指示にも注意する
プロンプトインジェクションとは、AIに読ませた資料やページに、利用者の指示を上書きするような文を紛れ込ませる手口のことです。たとえば取引先を調べるために読ませたページに、別の動きを促す文章が入っている場合を考えてみます。その文章をAIがどう扱うかは使う環境によって変わるので、機密資料にアクセス出来る機能を使うときは、つなぐ先と権限を別に確かめましょう。
社内の文書と外部のサイトを一緒に読ませる仕事では、便利になる分だけ、読める資料の範囲も広がってしまいます。公開ページに書かれたことを社内の指示と同じ重さで扱わないよう、出力に出てきた資料名と根拠を人が確かめる工程を入れてください。AIが答えたからといって、資料の持ち出しが承認されたことにはなりません。
提供側の不具合は、会社だけでは防ぎ切れないでしょう。一方で、送る資料の量、アカウントの管理、障害が起きたときの連絡の道筋は、会社で決めることが出来ます。相手のサービスに任せる範囲と、社内で受け持つ範囲を、紙一枚に書き分けてみてください。その紙があれば、障害の知らせを受けた担当の方も、最初の確認にすぐ取りかかれます。
個人ごとに契約が分かれていると、資料をどこへ送ったのか、誰が管理しているのかが見えにくくなってしまいます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
入力してはいけない情報を機密度で分ける
入れてよいかどうかは、ファイルの種類だけでなく中身の機密度で決めると、現場の方が迷いにくくなります。個人情報、認証情報、未公開のソースコード、取引先との秘密保持契約に関わる資料を、まとめて「資料」と呼んでしまうと、判断がぶれてしまいます。まずは実際の仕事で扱う素材を並べて、入れてよいもの、条件を付けるもの、入れないものに分けてみましょう。
| 社内の区分例 | 素材の例 | 入力前の判断 |
|---|---|---|
| 入れてよい | 公開済みの案内文や、外部へ出す前提で作った一般的な説明 | 送信先のサービスを確認し、公開済みの範囲だけを使います。 |
| 条件付き | 社名を除いた会議メモ、取引先の数字を伏せた文章 | 識別につながる記述を取り除き、会社が許可した環境に限ります。 |
| 入れない | 顧客の個人データ、パスワード、秘密鍵、未公開のコード、契約で持ち出しを制限された内容 | 外部サービスへ送らず、目的に合う別の作業手順を選びます。 |
この表は会社で作る区分の一例で、どの資料でも自動的に安全と認めるものではありません。公開済みの説明文でも、まだ公開していない追記が混ざれば区分は変わってきます。数字を伏せた資料でも、案件名や日付から相手が分かってしまうことがあります。ファイル名ではなく、送る中身の全体を見て区分を決めましょう。
個人情報が入る場合は、個人情報保護委員会の注意喚起も確かめておく必要があります。同委員会の文書は、入力が利用目的の範囲に収まっているかを十分に確認するよう求める内容となっています。本人の同意なく個人データを含む入力をして、それが回答の出力以外の目的で扱われる場合には、法に違反する可能性がある、という説明になります。どの入力もすぐに違反になる、という説明ではありません。提供事業者が学習に使わないことなども、十分に確かめてください。
営業秘密という言葉にも、法律上の条件があります。不正競争防止法では、秘密として管理され、事業活動に役立ち、公然と知られていない技術上または営業上の情報が対象になります。外部のAIに一度入れたら必ず営業秘密でなくなる、とまでは言えません。ただ、秘密として管理していたと主張しにくくなるおそれはあります。IPAも、クラウドのAIに営業秘密を教えないよう案内しています。
取引先から預かった資料には、秘密保持契約の条件も重なってきます。どの情報を、誰に、何の目的で渡せるのかは、契約書ごとに違います。社内で扱ってよい資料でも、外部のサービスへ送ってよいとは限りません。担当の方が迷ったときは、契約を管理している部署へ確かめる流れを作ってみてください。自分の判断で伏せ字にして送るより、承認する人を決めておく方が、後から説明しやすくなります。
学習オフと履歴オフの設定で変わること
学習に使わせない設定は役に立ちますが、送った内容の保管や、人への共有まで一度に止める設定ではありません。会社で確かめる欄を「学習」「履歴・保存」「管理者による確認」に分けると、説明文の読み違いが減ります。使っているプラン名を手元に置いて、提供元の案内と見比べてみてください。
個人向けChatGPTの設定を確認する
OpenAIのヘルプによると、Free・Plus・Proの個人用ワークスペースでは、データ共有が最初から有効になっています。画面の「プロファイル」から「設定」へ進み、「データコントロール」の「すべてのユーザー向けにモデルを改善する」をオフにします。ヘルプの中には「すべての人のためにモデルを改善する」という表記もあります。オフにした後の新しい会話は、学習に使われないと説明されています。
ここで、過去の会話まで自動的に学習の対象から外れると考えないようにしてください。OpenAIは、回答への評価を送ると、関係する会話全体が学習に使われる場合もあると説明しています。社内に個人アカウントを使っている方がいるなら、設定画面を開いてもらうだけでなく、仕事の情報をどこまで入れてよいかも別に伝える必要があります。
一時チャットと法人向けの扱いを分ける
ChatGPTの一時チャットは履歴に表示されず、学習にも使われません。ただOpenAIは、安全上の理由から、コピーを最長三十日間保管する場合があると説明しています。保存すると通常のチャットになる点にも気をつけてください。「履歴に出ない」を「どこにも残らない」と読み替えないようにしましょう。
法人向けのChatGPT Business、Enterprise、APIについては、入力と出力を初期状態では学習に使わないとOpenAIは説明しています。Businessで削除した会話や保存していない会話は、法令による例外などを除いて、三十日以内にシステムから削除されるとのことです。管理者が会話履歴をどこまで扱えるかは公式の案内でも記述が分かれているため、契約前に確かめてみてください。
AnthropicもClaudeの商用製品について、初期状態では入力と出力を学習に使わないと説明しています。ただし、フィードバックを送った場合などは例外になることがあります。削除した会話は履歴からすぐ消え、バックエンドからは三十日以内に削除されるとの案内です。Google Workspaceの案内では、顧客のコンテンツを人が確認せず、許可なくドメイン外の生成AIモデルの学習に使わない、という扱いになっています。どれも各社の公式の説明で、第三者が全部の経路を検証した結果という意味ではありません。
※各社の説明はOpenAIのヘルプを2026年9月17日、同社の法人向けプライバシー案内を同年10月16日、Anthropicの学習の扱いとGoogle Workspaceの案内を同年9月29日、Anthropicの削除の扱いを同年10月16日に確認した内容です。契約や設定は変わり得るため、導入時には現行の説明を確かめてください。
比較表を作るなら、「学習しない」の一列だけでは判断しにくくなってしまいます。会話を消した後の保管、例外になるフィードバック、管理者が履歴を見られる範囲は、別々の列にしてみてください。顧客から説明を求められたときも、「学習しません」の一言だけで済ませるより、どこまで確かめたのかを答えやすくなります。
法人向けAIを選ぶときに確認する契約と管理項目
法人向けAIは、学習に使うかどうかの条件と、管理者が扱える範囲を、契約ごとに確かめて選びます。個人向けで学習の設定を切り替える使い方と、法人向けで最初から学習に使わないと説明されている使い方とでは、運用の意味が違ってきます。ただ、法人向けという名前だけで、どんな資料でも送ってよいわけではありません。社内の入力の区分を先に決めて、その区分に合う環境を選んでください。
確かめておきたいのは、誰が契約するのか、入力と出力を学習に使うのか、履歴の保管と削除の条件、管理者が会話や利用状況を見られるか、退職した方の利用を止められるか、といった点です。例外がある説明は、その条件まで読むようにしましょう。管理者が履歴を扱える場合は、そのことを社員へどう知らせるかも、社内で決めておく必要があります。見張るためだけではなく、問い合わせが来たときに対象の利用を探し出せる状態を考えておきましょう。
ログは「残っているはず」と思っているだけでは、事故のときの対応に使えません。利用者、使った日時、使ったサービス、扱った案件をどこまで確かめられるのか、契約する前に管理画面で見てみてください。ログに機密の中身そのものが残るなら、誰が閲覧出来るのかも決めておきます。確かめる役を一人に固定すると、その方がいないときに止まってしまうので、代わりの担当者も指定しておくとよいでしょう。
法人プランの費用は、表に出ている一人分の料金だけを見ても、会社の負担は分かりません。月額の単価がある契約なら、使う方の人数を掛けて、必要なサービスの分を足していきます。初期費用があれば初年度に加えて、年単位で比べてみてください。費用を抑えるために一部の方だけに配る場合は、配られなかった部署が個人アカウントに流れてしまわないかも確かめる必要があります。詳しい比べ方は生成AIの費用管理をご覧ください。
サービスを決める会議には、技術担当だけでなく、契約書を持っている部署や実際に使う部署の方にも入ってもらいましょう。入れてよいかどうかは資料の持ち主が判断し、サービスの設定は管理者が確かめます。責任を一人に集めず、誰が何を決めたかを記録に残すことで、後から取引先へ説明もしやすくなります。法人向けサービスを比べるときは、生成AIのセキュリティチェック項目も使うことが出来ます。
シャドーAIを見つけ、技術対策と教育を組み合わせる
無許可のAI利用を減らすには、禁止を知らせるだけでなく、実際に使われている道具と、使っている理由を知ることが先になります。会社が認めていない個人アカウントや外部のツールを仕事に使っている状態は、シャドーAIと呼ばれています。便利だから使っている方を責めるような調べ方をすると、かえって利用が見えなくなってしまうかもしれません。まずは「何の作業で必要だったのか」を聞いてみてください。
同じ「AIを使う」でも、文章の言い換えと顧客データの集計とでは、送る情報が違います。部署ごとに、サービス名、契約の名義、扱った資料、困っている作業を聞き取っていきましょう。会社が許可する環境で同じ仕事が出来るなら、そちらへ移る案内を出すことが出来ます。すぐに移れない場合は、許可された範囲と相談先を知らせましょう。調べ方はシャドーAIの整理でも取り上げています。
DLP・URLフィルタ・マスキングは役割を分ける
DLPとは、機密情報が外へ送られるのを検知して制御する仕組みのことです。URLフィルタはつなぐ先のサイトを制限するもので、UTMは社内ネットワークの通信をまとめて守る機器やサービスの総称になります。マスキングは、送る前に氏名や番号などを伏せる作業を指します。どれも、社員が「この文章を送ってよいか」を判断する代わりにはなりません。いまの社内の設備でどこまで見られるのか、管理担当の方に確かめてみてください。
たとえば個人アカウントへのアクセスを制限しても、会社が許可したAIへ間違ったファイルを上げてしまう事故は残ります。氏名だけを伏せても、取引の条件と案件名から相手が分かる資料かもしれません。送り先の制限、素材の加工、承認の手順をそれぞれ置くことで、技術だけでは届かないところを埋められます。社員が作業を続けられる公認の環境も、同時に用意しておきましょう。
短い研修は実際の資料で判断を練習する
研修では「機密情報を入れない」と言葉で伝えるだけでなく、普段の作業に近い例を使う方が伝わりやすくなります。顧客名が入った会議メモ、まだ出していない見積、公開済みの案内文を並べて、それぞれどの環境へ送れるかを考えてもらってください。答えが分かれた素材は、ルールの文書があいまいになっている場所です。現場から出た質問は、次の改訂に生かすことが出来ます。
事故を見つけた方が責められると思ってしまうと、報告が遅れるおそれがあります。迷ったときの相談先と、間違って送ったと気づいたときの連絡先は、同じ資料に載せておきましょう。連絡が早いほど、履歴や共有の状態を確かめる作業に早く取りかかれます。罰則を説明するより先に、誰に何を伝えるかを練習しておく方が、実際の仕事では役に立つでしょう。
社内ガイドラインと事故時の責任・連絡先を決める
社内ガイドラインには、使ってよいサービス、送ってよい情報、例外の決め方、事故のときの連絡先を短く書きます。長い禁止の一覧だけでは、急いで作業している方が自分の場合を見つけられません。AI事業者ガイドラインも、機密情報などを不適切に入力しないよう注意する考えを示しています。まずは社内の代表的な仕事に当てはめて、試してみましょう。
一枚目には、公開済みの情報は許可された環境で使える、顧客や取引先に関わる情報は担当部署の確認を受ける、認証情報や未公開のコードは送らない、といった形で書くことが出来ます。ただ、これはあくまで雛形になります。個人情報や秘密保持契約の条件によって判断は変わるので、実際の承認者とサービス名を埋めてください。入力を許可する部署と、事故の連絡を受ける部署が違うなら、両方の名前を載せておきます。
例外を認めるなら、依頼する方が目的と資料の区分を示し、資料の管理者が可否を決める流れにします。承認は口頭だけで済ませず、対象の資料と使う環境を記録に残してください。そうすれば、後から同じ作業が増えたときに、前回と条件が違うことに気づけます。例外が頻繁に出てくるなら、禁止の線を見直すのか、公認の環境を広げるのかを話し合ってみましょう。
誤って入力したと分かったら、使ったサービス、会話やファイル、送った時刻、共有したかどうかをすぐに記録します。履歴の削除や設定の変更が出来るなら進めますが、記録を取る前に証拠まで消してしまわないよう、担当部署に連絡してください。個人情報が含まれるか、取引先への連絡が必要かは、法務や個人情報の担当の方が確かめます。社員が一人で法律の判断を背負わずに済む流れにしておきましょう。
海外の規制や各国の対応が気になる会社もあるでしょう。ただ、この記事で確かめた資料だけでは、国ごとの今の制度を同じ条件で比べることは出来ません。海外の顧客や拠点に関わる仕事では、対象の地域と契約の条件を先に洗い出して、担当の方が今の公的な情報を確かめる手順を決めてください。国内で個人データを入れてよいかの判断は、個人情報保護委員会の注意喚起を出発点にすることが出来ます。
情報漏洩のルールとは別に、AIが事実と違う答えを作ったり、他人の著作物を出力に含めたりすることにも注意が必要です。機密情報を送らずに済んでも、間違った数字を顧客に出してしまえば、別の問題になってしまいます。出典の確認と、外に出す文章を人が確かめる工程は、業務の手順に残しておいてください。ルールを文書にまとめるときは、生成AIガイドラインの作り方が参考になります。
最初の一週間で進める手順と費用の見方
最初の一週間は、全社の仕組みを完成させるより、使われ方を見えるようにして、仮の線を引く期間になります。総務や情シスの方が一人で資料を作り込むと、現場の使い方から離れてしまいます。まずは短い聞き取りから始めて、すでに使われている環境を並べてみてください。
初めに各部署へ、仕事で使っているAIの名前、個人の契約か会社の契約か、よく送る資料の種類を聞きます。答えにくそうな方には、個人を責めるためではなく、会社として使える環境を考えるためだと伝えましょう。次に、機密度で分けた節の三つの区分に、実際の資料を当てはめていきます。判断が割れた資料だけを承認者に持ち込んで、全員が同じ例を見られるようにします。
その後で、公認するサービスと管理担当を決めて、学習への利用、履歴、ログ、退職したときの停止を確かめます。社員には「どのサービスを使うか」「何を送らないか」「迷ったら誰に聞くか」の短い案内を、先に出すことが出来ます。社内の説明会では、会議メモと顧客データの違いを実際に考えてもらってください。最後に、事故のときの連絡先を一度試しにたどって、担当者がいなくても届くかを確かめましょう。
費用を見るときは、サービスの月額だけでなく、契約の管理や社員への説明、事故のときの調査に使う時間も、会社の出費として考えます。ただ、時給や事故対応の金額は会社ごとに違うため、ここで架空の単価を置いて合計を出すことは出来ません。自分の会社の人件費の単価に、管理担当が実際に使った時間を掛けてみてください。契約が部署ごとに分かれるほど、請求や利用者の棚卸しを何度も確かめることになってしまいます。
公認する環境の費用を比べるなら、同じ人数と同じ利用量で見積もります。月額と初期費用を分けて、初年度の総額まで出してみましょう。人数に応じた料金と、利用量でプランが変わる料金を、一人分の単価だけで比べると、会社の支出を読み違えてしまいます。利用が増えたときの上限や通知も確かめると、経理の方にも説明しやすくなります。
一週間が終わったら、許可した環境へ移れなかった作業を書き出してみてください。理由が料金なのか、必要な機能なのか、資料の区分なのかで、次の手は違ってきます。現場から出た例をルールに足して、相談の件数と無許可の利用の様子を続けて見ていきましょう。仕事を止めずに、安全な入力へ少しずつ近づけていく道筋になります。
よくある質問
よくある疑問は、入力した時点の扱いと、後から消せる範囲を分けて考えると答えやすくなります。社内で質問が出たときも、使ったサービス名と契約を先に確かめてみてください。
AIに機密情報を入れると、必ず他の人の回答に出ますか?
学習をオフにすれば、機密情報を入力してもよいですか?
個人向けChatGPTで学習利用を止めるにはどうしますか?
社員が誤って顧客データをアップロードしたら何をしますか?
法人向けAIならどんな社内資料も送れますか?
AIの利用を禁止すれば機密情報の漏洩を防げますか?
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