シャドーITとは。シャドーAIとの違いと、会社で見つけて減らす手順

シャドーITとは、会社が把握・許可していない端末やクラウドサービス、アプリを、社員が自分の判断で業務に使うことです。禁止の通知を出すだけではなかなか減らず、使われているものを見つけて仕分け、代わりになる公認の環境を配ることが現実的な対策となります。生成AIを個人のアカウントで使う野良AI(シャドーAI)とは何かは別の記事にまとめており、ここではその土台にあるシャドーIT全体を扱います。

※この記事の管理画面の名前・料金・公的機関の資料の内容は、2026年9月20日〜10月3日に各社の公式ページと公的機関の資料で確認したものです。画面の名前や提供条件は変わることがあるため、実際の操作の前に各社の最新の案内をご確認ください。

シャドーITとは|会社が把握していない端末やサービスを業務で使うこと

シャドーITは、会社の情報システムの担当者が把握していないIT、という意味で使われる言葉になります。英語のshadowは「影」のことで、管理する側から見えないところで使われているIT、と読むと分かりやすいでしょう。対象は私物のスマートフォンやパソコンといった機器だけでなく、無料のクラウドストレージ、個人で登録したチャット、ブラウザの拡張機能、生成AIのサービスまで含まれます。

押さえておきたいのは、使っている本人は、仕事を進めるために良かれと思って選んでいることが少なくないという点です。急ぎの資料を家で仕上げたい、取引先が指定する共有サービスに合わせたい、会社の仕組みでは時間がかかる、といった事情から使い始めるケースが目立ちます。そのため、見つけたときに本人を責めるだけでは、次からは見えない形で続いてしまいます。

サンクションIT(許可済みIT)との関係

シャドーITの反対側にあるのが、会社が審査して使うことを認めたサンクションIT(許可済みIT)になります。sanctionには「認可」という意味があり、会社が契約したメール、ファイル共有、チャット、業務システムなどがこれに当たります。同じクラウドストレージでも、会社が契約して管理画面から設定しているものはサンクションIT、社員が個人で登録したものはシャドーITです。分かれ目は、サービスの名前ではなく、会社が把握し許可しているかどうかにあります。

対策のゴールは、シャドーITをゼロにすることより、業務で使われているITを1つずつサンクションITの側へ移していくことだと考えてみてください。

シャドーITとBYODの違いは「許可の有無」

BYOD(Bring Your Own Device)は、社員の私物の端末を、会社が認めたうえで業務に使う仕組みのことです。私物のスマートフォンで会社のメールを読むという同じ行為でも、会社がルールを決めて許可し、端末の登録やパスワードの設定を求めていればBYOD、黙って使っていればシャドーITとなります。

実際には、BYODを認めている会社でも、登録していない2台目の端末や、許可していないアプリを入れて使えば、その部分はシャドーITに戻ってしまいます。BYODは私物を使う仕組みそのものを指し、シャドーITは許可の外で使うことを指す、と分けて覚えると社内で話が混ざりにくくなるでしょう。

シャドーITの対象になるものの種類

シャドーITの対象は、大きく分けると端末、クラウドサービス、ネットワーク、そして生成AIの4つになります。どれも個人で手軽に始められ、会社の承認を通らずに業務へ入り込みやすいものばかりです。

私物のパソコン・スマートフォン・USBメモリ

自宅のパソコンで作業の続きをする、私物のスマートフォンで顧客の書類を撮影する、USBメモリでデータを持ち帰る、といった使い方が典型的な例として挙げられます。会社のパソコンと違ってウイルス対策や画面ロックの設定を会社が確かめられず、紛失したときに中身を消す手段も会社の側にはありません。

クラウドストレージ・ファイル共有

個人で登録した無料のクラウドストレージに業務のファイルを置き、取引先や自宅とやり取りする使い方も、シャドーITの代表的な形の1つです。共有リンクの設定を誤ると、リンクを知っている人なら誰でも開ける状態になることがあり、退職した後もファイルが個人のアカウントに残り続けてしまいます。

チャット・フリーメール

個人のメッセージアプリで社内や取引先と連絡を取る、会社のメールが使いにくいからとフリーメールに転送して読む、といった使い方もシャドーITに当たります。やり取りの記録が会社に残らないため、言った言わないの確認や、退職時の引き継ぎが難しくなるでしょう。

フリーWi-Fi・私物のモバイルルーター

見落とされやすいのがネットワークです。カフェや駅などの無料Wi-Fi、私物のモバイルルーターやスマートフォンのテザリングで会社のパソコンをインターネットにつなぐことも、会社が認めていなければシャドーITの一部となります。運営者の分からないWi-Fiでは、通信が暗号化されていないと内容を読み取られるおそれがあり、本物に似せた偽のアクセスポイントにつないでしまう心配も残ります。外で仕事をする社員が多い会社は、会社支給のスマートフォンからのテザリングを認めるなど、使ってよい回線を先に決めておきましょう。

生成AI(ChatGPTなど)とブラウザ拡張機能

近年、特に注意が呼びかけられているのが、ChatGPTなどの生成AIを個人のアカウントで業務に使う形です。文章の要約や翻訳、資料の下書きに便利なため、会社が用意していないと、社員が自分で登録して使い始めることがあります。こうした生成AIのシャドーITは、シャドーAI(野良AI)と呼ばれています。

ブラウザに入れる拡張機能も、見えにくいシャドーITの1つになります。翻訳や文章の補助をうたう拡張機能の中には、開いているページの内容を読み取る権限を求めるものもあり、権限の中身を確かめないまま入れると、業務の画面を読み取れる状態を許してしまいます。

シャドーITとシャドーAI(野良AI)の違い|4つの観点で判断する

シャドーAI(野良AI)はシャドーITの一部ですが、入れたデータの行き先と見つけにくさが違うため、対応の順番は分けて考える必要があります。シャドーAIの定義やリスクの全体像は冒頭のリンク先にまとめているので、ここでは両者を見比べるための4つの観点に絞ります。

観点1 入れたデータの行き先

シャドーITで問題になるのは、主にデータが「置かれる」ことです。個人のクラウドストレージに置いたファイルは、共有の設定を誤らなければ、基本的には本人のアカウントの中で保管されます。これに対してシャドーAIでは、データを「入力する」こと自体が外部への送信となり、サービスや設定によっては、入力した内容がAIの学習に使われうる点も加わります。

観点2 見つけやすさ

シャドーITの多くは、端末の管理画面やアプリの連携一覧、経費の明細など、何らかの形で跡が残りやすくなります。シャドーAIは、ブラウザで開いて個人のアカウントでログインするだけで使えるため、アプリの連携一覧にも経費にも出てこないことがあります。IPA(情報処理推進機構)の解説書も、職場が従業員の個人アカウントによるAIの業務利用を認識できないこと自体を、リスクとして挙げています。

観点3 止めたときの代わりの用意

シャドーITは、会社が契約しているストレージやチャットへ移るよう案内すれば、代わりがすぐ見つかる場合が多いでしょう。生成AIは、会社として使える環境がまだない場合、止めた瞬間に社員の仕事が以前の手作業に戻ってしまいます。代わりがないまま禁止すると、見えない場所で使い続ける動機だけが残ることになります。

観点4 対応の優先度

優先度は、入れているデータの重さと、会社からの見えなさの掛け算で決めるのがおすすめです。顧客の個人情報や取引先の資料を扱う部署で、個人のアカウントの生成AIが使われている場合は、真っ先に手を付ける対象となります。迷ったら、外部へ送られるデータが多く、会社から見えないものから順に対応しましょう。

シャドーITとシャドーAIを見分ける4つの観点

  • データの行き先:シャドーITは主に「置く」、シャドーAIは「入力して外部へ送る」
  • 見つけやすさ:シャドーITは管理画面や明細に跡が残りやすく、シャドーAIはブラウザと個人のアカウントだけで使えて跡が残りにくい
  • 代わりの用意:シャドーITは既存の契約へ移しやすく、生成AIは公認の環境がないと移す先がない
  • 対応の優先度:重いデータを扱い、会社から見えない利用から。個人のアカウントの生成AIは上位に置く

シャドーITのリスク|情報漏えい・アカウント乗っ取り・マルウェア

シャドーITのリスクは、情報漏えい、アカウントの乗っ取り、マルウェア感染の3つに、退職後もデータが残る問題を加えて考えると整理しやすくなります。どれも、会社が設定や状況を確かめられないことから生まれる点で共通しています。

情報漏えい

まず心配されるのが情報漏えいです。共有リンクの設定ミス、私物の端末の紛失、個人のアカウントからの誤送信など、漏えいの入口が会社の管理の外に増えていきます。個人情報保護委員会は、要配慮個人情報が含まれる場合や、本人の数が1,000人を超える場合など、4つの類型に当たる個人データの漏えい等(そのおそれを含む)について報告を求めています。速報は事態を知った時点から概ね3〜5日以内が目安とされ、法人の場合はいずれかの部署が知った時点が起点になります。

確報の期限は30日以内(不正な目的で行われたおそれがある場合は60日以内)とされており、シャドーITの中で起きた漏えいは、会社が気づくまでに時間がかかりやすい点に注意が必要です。

※報告の対象と期限は、個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」と「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」で確認した内容です。生成AIへの入力がそのまま報告の対象になるかどうかは、これらの資料には書かれていません。

アカウントの乗っ取り

個人で登録したサービスは、パスワードの使い回しや多要素認証の未設定があっても、会社のルールが届きません。乗っ取られたアカウントに業務のファイルや取引先とのやり取りが残っていれば、そのまま外部の人に見られてしまいます。

マルウェア感染

出どころの分からないアプリや拡張機能、ウイルス対策が入っていない私物の端末は、マルウェアの入口になりえます。会社のネットワークにつながった私物の端末が感染すると、社内のほかの端末やファイルサーバーへ広がるおそれもあるでしょう。

退職・異動のあとにアカウントとデータが残る

見落とされがちなのが、退職や異動のときの後片付けです。会社が契約したサービスなら、管理者がアカウントを止めることが出来ます。一方、社員が個人で登録したサービスは、会社の側から止める手段がありません。辞めた方の個人アカウントに、取引先の資料や顧客の一覧が残ったままになることも考えられます。

シャドーITが起きる背景と原因

シャドーITが広がる背景には、クラウドサービスの手軽さ、リモートワークの広がり、そして会社の仕組みの使いにくさがあります。どれも社員の側から見れば、仕事を進めるための合理的な選択に見えてしまう点が厄介です。

クラウドサービスは個人でもすぐに使える

多くのクラウドサービスは、メールアドレスがあれば短い時間で登録でき、無料の範囲でも業務に足りる機能が使えます。稟議も購入も要らないため、承認の手順を飛ばして使い始めることが簡単になりました。Microsoftは、Defender for Cloud Apps の解説ページで、組織では実際には平均で1,000を超えるアプリが従業員によって使われており、従業員の80%は誰もレビューしていない承認されていないアプリを使っていると説明しています。

調査名や母数はそのページに書かれていないため、あくまでMicrosoftの説明として受け止めるのがよいでしょう。それでも、管理者が把握している数と実際に使われている数に差があるかどうかは、自社でも確かめてみる価値があります。

リモートワークで会社の目が届かない場面が増えた

自宅や外出先で働く時間が増えると、会社のパソコンや回線だけでは足りない場面が出てきます。家族と共用のパソコン、自宅のWi-Fi、私物のスマートフォンなど、会社が管理していない機器や回線が仕事に混ざりやすくなりました。

会社の仕組みが使いにくい・遅い

会社が用意したツールの容量が足りない、申請してから使えるまでに時間がかかる、取引先が指定するサービスに会社の仕組みが対応していない、といった不便さもシャドーITの原因となります。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」の解説書も、職場でAIサービスの利用が無い場合などに、従業員が個人的に利用しているAIサービスを業務に使うことがあると、シャドーAIの起き方を説明しています。

社員が会社の仕組みを避けているのなら、それは仕組みのほうに足りないものがあるという合図でもあります。シャドーITを減らすには、使っている社員より先に、会社が渡している道具を見直すことから始めてみてください。

禁止の通知だけではシャドーITが減らない理由

「業務で個人のサービスを使うことを禁止します」と通知するだけでは、使っていた理由が解決しないため、シャドーITはなかなか減りません。社員は使うのをやめるのではなく、会社に知られにくい使い方に切り替えてしまうこともあります。

IPAの解説書は、経営者層の対策として「シャドーAI回避のため、AIサービス利用の検討」という項目を立て、その中に未許可・未認可のAIサービス利用(シャドーIT)の禁止を含めています。禁止と同時に、会社として使える環境を検討することが求められている、と読むことが出来ます。

生成AIの場合、この傾向はさらに強くなります。文章の下書きや要約で手間が減ることを一度知った社員にとって、使えなくなることは仕事の速さが元に戻ることを意味するからです。禁止だけで終わらせず、同じことが会社の管理の下で出来る環境を渡すところまでを、ひとつの対策として考えてみましょう。

禁止で終わらせず、会社公認のAIを配りませんか

個人のアカウントに流れていた生成AIの利用は、会社で使う環境を1つに決めて配ると、管理の下へ戻しやすくなります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

シャドーITの事故・事例と公的機関の注意喚起

シャドーITによる事故は、会社がそもそも利用を把握していないため、表に出にくいという特徴があります。ここでは、実名の事案を推測で並べる代わりに、公的機関が出している注意喚起と、起こりうる場面を仮想例としてご紹介します。

警視庁サイバーセキュリティ対策本部の注意喚起

警視庁のサイバーセキュリティ対策本部は、公式Xアカウント「警視庁サイバー(@MPD_cybersec)」で、個人の判断で生成AIを業務に使っていないかと呼びかけ、組織が管理していない生成AIを業務で使うシャドーAIには様々なリスクが潜んでいると注意を促しました。この投稿には、シャドーAIと並んでシャドーITのハッシュタグも付いていました。ITmediaの報道(2026年5月12日)によると、投稿に添えられた図では、情報漏えい、著作権侵害、ハルシネーション(AIがもっともらしい誤りを出力すること)の3つのリスクが挙げられています。

IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」でAIのリスクが3位に

IPAが2026年1月29日に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織編では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が3位に入り、今回が初めての選出となりました。順位は、情報セキュリティ分野の研究者や企業の実務担当者など約250名からなる選考会が、審議と投票を経て決めたものです。項目の名前はシャドーITそのものではありませんが、解説書では、職場に許可なくAIを業務利用し、情報漏えいにつながる可能性が、リスクの1つとして示されています。

同じ解説書には、米国のAI企業の調査として、業務で生成AIにデータをコピー&ペーストして入力している利用者が77%おり、そのうち82%が組織に管理されていないアカウントによるものだったという数字も出てきます。これはIPA自身の調査ではなく、海外のベンダーの調査を海外メディアの記事を通じて紹介したもので、調査名や母数は解説書に書かれていません。

※出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2026」(https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html )、同[組織編]解説書(2026年3月)。解説書の記述は一部を要約しており、原文のままではありません。

起こりうる場面(仮想例)

以下は特定の会社の事案ではなく、社員10〜200名ほどの会社で起こりうる場面を想定した仮想例です。

  • 営業担当が、提案書を自宅で仕上げるために個人のクラウドストレージへ顧客リストを置き、その共有リンクを取引先にも送っていた
  • 総務担当が、会社のメールに届いた添付ファイルを個人のフリーメールに転送し、私物のスマートフォンで読んでいた
  • 経理担当が、取引先との議事録の要約に個人のアカウントの生成AIを使い、取引先の社名や金額をそのまま貼り付けていた
  • 退職した社員の個人アカウントに、在籍中に作った見積書のファイルが残っていた

どの場面も、本人は仕事を早く進めようとしていただけで、会社が気づくのは取引先からの問い合わせや退職後の手続きのとき、ということが少なくありません。事故が起きる前に見つけるには、次に紹介する方法で、使われているものを会社の側から探しにいく必要があります。

シャドーITの利用状況を把握する方法|手持ちの管理画面で見つける

シャドーITを見つける第一歩は、有料のツールを入れる前に、すでに契約しているサービスの管理画面を開いてみることです。Google WorkspaceやMicrosoft 365を使っている会社であれば、まず確認したい画面があります。生成AIに絞った見つけ方は、シャドーAI(野良AI)の見つけ方で詳しく紹介しています。

Google Workspace:API の制御で連携しているアプリを見る

Google Workspaceの管理コンソールでは、「メニュー > セキュリティ > アクセスとデータ管理 > API の制御」から「アプリのアクセスを管理」を開くと、社員がGoogleのデータへのアクセスを許可したサードパーティ製のアプリが一覧で表示されます。一覧には、そのアプリを使っているユーザー数や、アプリが求めているサービスが並ぶため、どのアプリが何人に使われているかを掴むことが出来ます。気になるアプリは、「信頼できる」「制限付き」「ブロック中」のいずれかに設定を変えることも可能です。

Microsoft 365:Entra のユーザーの同意設定を確かめる

Microsoftの公式ドキュメントには、既定では、管理者の同意を必要としないアクセス許可のアプリについて、すべてのユーザーが同意できると書かれています。その例には、ユーザーが自分のメールボックスへのアクセスをアプリに許可できる場合も含まれます。

設定は、Microsoft Entra 管理センターの「Identity > Applications > エンタープライズ アプリケーション > 同意とアクセス許可 > ユーザーの同意設定」で確認できます。設定を変えても影響するのは今後の同意操作だけで、すでに与えられた同意はそのまま残ります。すでに社員が許可しているアプリは、Microsoftの案内「エンタープライズ アプリケーションに付与されるアクセス許可の確認」の手順で確かめてみてください。管理者の同意ワークフローを使えば、社員が使いたいアプリを管理者に承認依頼する流れも作れます。

Defender for Cloud Apps:クラウド検出でシャドーITを可視化する

Microsoftの説明では、Defender for Cloud Apps のクラウド検出は、使用中のクラウドアプリを検出してシャドーITを可視化する機能です。このクラウドアプリの検出は、Microsoft Entra ID P1、Enterprise Mobility + Security E3(EMS E3)、Microsoft 365 E3 の一部として、追加コストなしで提供されると記載されています。

画面の場所は、Microsoft Defender ポータルの「Cloud Apps > Cloud Discovery」にある「検出されたアプリ」タブです。Microsoftのアプリカタログには、90を超えるリスク要因で評価された31,000を超えるアプリが載っているとされ、見つかったアプリの評価を確かめる手がかりになります。上に挙げた3つ以外のライセンスで使えるかどうかは、契約しているプランの内容を確かめてください。

Chrome:管理対象ブラウザのレポートで拡張機能を見る

Chromeを会社で管理している場合は、Google 管理コンソールの「デバイス > Chrome > 設定」にある「ブラウザに関するレポート」で「管理対象ブラウザのクラウド レポートを有効にする」を設定すると、レポートを見られるようになります。レポートでは、インストールされている拡張機能の名前と、その拡張機能が求めている権限、管理者が自動で入れたものか社員が自分で入れたものかを確かめることが出来ます。

経費精算とカードの明細を照合する

有料のサービスであれば、どこかで支払いが発生します。経費精算や法人カードの明細から、ソフトウェアやクラウドサービスへの支払いを抜き出し、会社が契約したものの一覧と突き合わせてみてください。個人のカードで払って経費で精算している月額のサービスが見つかれば、それがシャドーITの候補となります。

社員に無記名で申告してもらう

管理画面にも明細にも出てこない無料のサービスや生成AIは、社員に聞くのが近道でしょう。名前を書かせると、叱られることを心配して申告をためらう方も出てくるため、最初の1回は無記名のアンケートで、使っているサービスと用途だけを集めるのがおすすめです。集まった内容は、責任を問うためではなく、会社が配る道具を決める材料として使いましょう。

有料のIT資産管理・CASBを検討する場合

管理画面と申告だけでは追いきれない規模になったら、SaaS管理ツールやIT資産管理ツール、CASB(クラウドの利用を可視化・制御する仕組み)を検討する段階になります。たとえば、freee IT管理は1ユーザー月額300円(年契約・年払い、最低50ID)、マネーフォワード Admina は50ID以下のスタートアップ企業向けに永年無料のプラン(従業員数50名まで・クレジットカードの登録が必要)、LANSCOPE エンドポイントマネージャー クラウド版は1台300円から(税抜き)と、各社の公式ページに表示されています。freee IT管理を最低の50IDで契約すると、年額で180,000円からの出費となります。各社の機能や検知の範囲は各社の発表によるもので、詳しい比べ方はシャドーAI対策ツールの比較にまとめました。

社員の利用を確かめるときの注意

社員の利用状況を確かめる仕組みは、事前のルールづくりとセットで進めてください。個人情報保護委員会のガイドラインQ&A(Q5-7)は、個人データを扱う従業者のモニタリングについて、目的をあらかじめ特定して社内規程に定め従業者に明示すること、実施の責任者と権限を定めること、ルールを作って運用者に徹底すること、ルールどおりに行われているかを確認することを留意点として挙げています。あわせて、労働組合などに事前に通知し必要に応じて協議することや、従業者に周知することが望ましいとの記載もあります。社員の側から見た疑問については、シャドーAIは会社にバレるのかで整理しています。

社員への通知文のひな形|責めずに申告を促す

見つける作業を始める前に社員へ目的を伝える通知を出すと、申告が集まりやすくなります。ポイントは、責めるための調査ではないこと、申告期間中に申し出たものは責任を問わないこと、代わりの道具を会社が用意することの3点を、はっきり書くことにあります。下のひな形を、自社の事情に合わせて書き換えてお使いください。

件名:業務で使っているアプリ・サービスの申告のお願い

社員の皆さまへ

日頃の業務で、会社が用意したもの以外のアプリやクラウドサービス、生成AIを使っている方もいらっしゃると思います。会社として、皆さんが仕事を進めやすい道具をそろえるために、いま使っているものを教えてください。

今回の申告は、使っていた方を責めるためのものではありません。申告期間中に申し出ていただいたものは、申告したことを理由に責任を問わない扱いとします。

申告していただきたいこと

  • 使っているサービスやアプリの名前
  • 使っている用途(例:取引先とのファイル共有、文章の下書き、翻訳)
  • 会社の情報を入れたことがあるか(ある・ない・分からない)

申告期限:◯月◯日(◯)まで

申告の方法:下記のフォームから、名前を書かずに回答できます。

いただいた内容をもとに、会社で使ってよい道具を決め、必要なものは会社として用意する予定です。分からないことがあれば、総務部の◯◯までお気軽にご相談ください。

◯◯株式会社 総務部

期間を区切って申告を受け付けると、それ以降に見つかったものとの線引きもしやすくなるでしょう。申告期間が終わった後の扱いは、就業規則や社内規程とあわせて決めておく必要があります。懲戒については、労働契約法第15条が、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない懲戒は権利の濫用として無効になると定めているため、処分の判断は専門家に相談しながら進めてください。

見つけた後の4区分の仕分け|公認・設定変更・移行・停止

見つかったサービスは、すべて止めるのではなく、そのまま公認する、設定を変えて公認する、代わりへ移す、止める、の4つに仕分けると判断が速くなります。仕分けの基準は、扱うデータの重さ、会社が管理できるかどうか、代わりがあるかどうかの3つで十分です。

区分1 そのまま公認する

会社の情報をほとんど扱わず、使う人も用途も限られているものは、申告どおり公認してサンクションITの一覧に加えます。たとえば、公開されている情報だけを扱う地図や乗換案内のようなツールが当たるでしょう。公認したものは一覧に載せ、誰が使っているかを分かるようにしておいてください。

区分2 設定を変えて公認する

業務に役立っていて、会社の契約や管理者の設定に切り替えられるものは、設定を整えたうえで公認する対象となります。個人のアカウントを会社の契約に入れ直す、共有リンクの既定を社内限定にする、多要素認証を必須にする、といった手当てを済ませてから使ってもらいましょう。

区分3 会社の道具へ移す

会社がすでに同じ役割の道具を契約しているものは、そちらへ移ってもらいます。個人のクラウドストレージから会社のストレージへ、個人のチャットから会社のチャットへ、といった移し替えです。ChatGPTを個人のアカウントで使っていた社員を会社のワークスペースへ移す場合、OpenAIのヘルプには、ChatGPT Businessでは管理者が個人用ワークスペースの統合や削除を強制できないと書かれています。

個人用ワークスペースを会社のワークスペースに統合すると元に戻せないことや、Business・Enterpriseのワークスペースでは本人によるデータのエクスポートが使えないことも案内されているため、統合する前に、必要なデータを社員自身で書き出してもらうよう伝えておきましょう。

区分4 止める

顧客の個人情報や取引先の機密を扱っていて、会社として管理する手段がないものは、止める対象になります。止めるときは、期限を決めて案内し、代わりに使う道具を同時に示すことが欠かせません。代わりを示さずに止めると、別の見えないサービスに移るだけになってしまいます。

4区分の目安

  • そのまま公認:会社の情報をほとんど扱わず、使う人や用途が限られている
  • 設定を変えて公認:業務に役立っていて、会社の契約や管理者の設定に切り替えられる
  • 代わりへ移す:会社に同じ役割の道具がすでにある
  • 止める:重いデータを扱っていて、会社として管理する手段がない

シャドーITの対策|ルール・教育・代わりの道具をそろえる

シャドーITの対策は、ルールを決める、社員に伝える、代わりの道具を配る、の3つをそろえて初めて効き始めます。どれか1つだけでは、ルールがあっても守る手段がない、道具があっても使い方が伝わっていない、という状態になりがちでしょう。

社内ガイドラインで使ってよいものを決める

ガイドラインには、会社が認めたサービスの一覧、新しいサービスを使いたいときの申請の流れ、入れてはいけない情報の種類、私物の端末や外部の回線を使うときの条件を書きます。申請してから使えるまでの日数が長いと、それ自体がシャドーITの原因になってしまいます。目安の日数も、あわせて決めるとよいでしょう。生成AIの扱いを書き足すときは、生成AIの社内ガイドラインの作り方も参考になります。

IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版(2026年3月27日公開)には、クラウドサービスを安全に使うための手引きが付録として付いており、ルールづくりの土台に使うことが出来ます。

従業員教育は「責める」より「申告しやすくする」

教育で伝えたいのは、禁止事項の一覧よりも、なぜそのサービスが危ないのか、迷ったときに誰に聞けばよいのか、という2点です。IPAの解説書も、AIの利用について講習などのプログラムを用意すること、社内の秘密情報などを安易に入力しないこと、ハルシネーションが存在することを理解することを、教育の項目として挙げています。

研修の場では、実際に社内で申告されたサービスを例に使うと、自分ごととして受け止めてもらいやすくなります。申告した社員が損をしない雰囲気を作ることが、次の申告につながるでしょう。点検の項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめているので、研修の資料作りに活用してみてください。

代わりになる公認ツールを配る

代わりの道具は、シャドーITで使われていたものと同じくらい手軽に使えることが条件になります。容量の小さい会社のストレージや、ログインの手順が多いチャットでは、結局また個人のサービスに戻ってしまうでしょう。申告で集まった用途を見ながら、社員が困っていた場面を1つずつ埋める道具を選んでいきましょう。

生成AIをシャドーIT化させない配り方|会社で安全に使うには

生成AIをシャドーITにしないためには、禁止より先に、会社として使える環境を全員に配ることが近道になります。配るときに確かめたいのは、入力したデータを学習に使わせない設定、利用の記録(ログ)、配る範囲、複数のAIの使い分けの4つです。

入力したデータを学習に使わせない設定

個人情報保護委員会は、2023年6月2日の注意喚起で、個人データを含むプロンプトを生成AIサービスに入力する場合には、提供する事業者がそのデータを機械学習に利用しないことなどを十分に確認するよう求めています。IPAの解説書でも、外部サービスを使うときに入力データを学習の対象から外すオプトアウト設定の徹底が、経営者層の対策の1つとして並びます。

社員一人ひとりの設定に任せると、設定し忘れた方の分だけ穴が残ってしまいます。会社の管理画面からまとめて設定できる環境を選ぶと、確認の手間も減らせるでしょう。

誰がいつ使ったかのログを残す

会社として配った環境でも、利用の記録が残らなければ、問題が起きたときに何が入力されたかを確かめられません。IPAの解説書は、システム管理者・従業員向けの対策として、通信ログやCASBなどを活用してAIサービスの利用状況を把握し、管理されていないAIサービスの利用を把握することを挙げています。ログは社員を見張るためではなく、事故のときに会社と社員の双方を守る記録として位置づけ、先ほどの個人情報保護委員会のQ&Aに沿って、目的と運用のルールを先に周知しておきましょう。

一部の社員だけでなく、使う全員に配る

1人ごとに料金がかかる契約では、費用を抑えるために一部の社員にだけ配る判断になりやすくなります。配られなかった社員が個人のアカウントで使い始めれば、シャドーAI(野良AI)がそこから生まれてしまいます。誰に配るかは役職ではなく、文章や資料を扱う業務があるかどうかで決め、使う可能性のある全員に行き渡らせることを目指してみてください。

複数のAIを1つの窓口で使い分ける

ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexityといった生成AIは、それぞれ得意な作業が異なります。社員が用途に合わせて別々のサービスに個人で登録し始めると、管理すべき入口がそのぶん増えていきます。会社として複数のAIを1つの窓口でまとめて使えるようにすれば、使い分けたいという社員の要望に応えながら、入口を1つに絞ることが出来るでしょう。4つのAIの違いは主要4AIの違いと使い分けで紹介しています。

個人のAI利用を、会社公認の1つの環境へ

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約・1つの画面で使える法人向けサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理でき、利用人数に上限はなく、ユーザーごとの課金はありません。基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

シャドーITとはどういう意味ですか?
会社が把握・許可していない端末やクラウドサービス、アプリを、社員が自分の判断で業務に使うことを指します。英語のshadowは影の意味で、管理する側から見えないところで使われているITを表します。私物のスマートフォンや個人のクラウドストレージ、フリーメール、個人のアカウントで使う生成AIなどが含まれます。
シャドーITとBYODの違いは何ですか?
違いは会社の許可の有無です。BYODは、社員の私物の端末を、会社がルールを決めて認めたうえで業務に使う仕組みを指します。シャドーITは会社が把握・許可していないまま使うことを指すため、BYODを認めている会社でも、登録していない端末や許可していないアプリを使えばシャドーITに当たります。
シャドーITとシャドーAIの違いは何ですか?
シャドーAI(野良AI)は、シャドーITのうち、生成AIを会社の管理の外で業務に使うものを指します。シャドーITの多くはデータを置くことが問題になるのに対し、シャドーAIは入力そのものが外部への送信になり、ブラウザと個人のアカウントだけで使えるため、管理画面や経費の明細に跡が残りにくいという違いがあります。会社として使える生成AIの環境がないと止めた後の移し先がないため、代わりの環境を用意してから対応することが大切です。
シャドーITを見つけるのに有料のツールは必要ですか?
最初の段階では必須ではありません。Google Workspaceの管理コンソールのAPIの制御、Microsoft Entraでのアプリに付与されたアクセス許可の確認、Chromeの管理対象ブラウザのレポート、経費精算やカードの明細、無記名の申告といった手持ちの手段から始められます。Microsoft Defender for Cloud Appsのクラウド検出は、Microsoft Entra ID P1、EMS E3、Microsoft 365 E3の一部として追加コストなしで提供されるとMicrosoftが記載しています。規模が大きくなって追いきれなくなった段階で、有料のSaaS管理ツールやCASBを検討するとよいでしょう。
シャドーITを使っていた社員は処分すべきですか?
処分を急ぐより、申告期間を設けて使っているものを申し出てもらい、公認・設定変更・移行・停止に仕分けるほうが、見えない利用を減らしやすくなります。申告すると処分されると受け取られると、申告が集まらず、利用がさらに見えにくくなるおそれがあります。懲戒を検討する場合は、労働契約法第15条の定めもあるため、就業規則に照らして専門家に相談しながら判断してください。

まとめ

シャドーITとは、会社が把握・許可していない端末やサービスを社員が業務で使うことで、BYODとは会社の許可があるかどうかで分かれます。生成AIを個人のアカウントで使うシャドーAI(野良AI)は、その中でもデータが外部へ送られやすく、見つけにくい種類となります。

対策は、手持ちの管理画面と無記名の申告で使われているものを見つけ、そのまま公認・設定を変えて公認・代わりへ移す・止めるの4つに仕分け、代わりの道具を配るところまでを1セットで進めることです。禁止の通知だけで終わらせず、社員が困っていた場面を会社の道具で埋めていきましょう。生成AIについては、学習に使わせない設定とログを会社側で管理できる環境を、使う全員に配ることから始めてみてください。ほかの記事はAI活用コラム一覧からご覧いただけます。