
AI-Readyとは、会社がAIを効果的かつ安全に使える準備が整った状態のことで、経済産業省はデータを整理・構造化して活用できる状態にすることと説明しています。ただ、データ整備の完了を待つ必要はなく、手元の文書だけで済む業務から使い始め、使いながら整えていくのが近道になります。2026年7月に閣議決定された人工知能基本計画も、「まず使ってみる」ことと、AIの利活用とデータ整備の好循環を掲げています。自社がいまどの段階にいて、何から整えればよいのかを確かめてみてください。
表記は、内閣府や経団連の原文にならって「AI-Ready」を使います。検索ではハイフンを抜いたAI Ready(AI-Ready)の形もよく見かけますが、指している中身は同じです。AIを前提に仕事の進め方そのものを見直す取り組みの全体像は、AX(AIトランスフォーメーション)とはの記事で、DXとの違いや最初の30日のチェックリストとあわせて整理してあります。
AI-Readyとは|意味と読み方、DX・AI導入との違い
AI-Readyは、AIを使うための準備ができている状態を表す言葉で、読み方はエーアイ・レディになります。英語のready(準備ができた)から来た言葉で、誰が使うかによって「準備」の中身が少しずつ違います。
経済産業省の用語解説(METI Journal ONLINE、2026年8月12日公開)は、「企業がAIを効果的かつ安全に活用するため、データを整理・構造化し、活用可能な状態にすること」と定義しています。一方、経団連が2019年に出した提言では、経営・人材・システムとデータまでを含めた会社の段階として扱われており、データだけの話ではありません。実務では、AIを効果的かつ安全に使うための、データ・人・仕組み・ルールの準備が整った状態と捉えると、社内で話がかみ合いやすくなるでしょう。
ツールを入れただけではAI-Readyではない|AI導入・DXとの違い
AIのサービスを契約して社員に配っただけでは、AI-Readyとは呼びにくいのが実情です。入れたAIに何を渡してよいのか、どの文書が最新なのか、誰が結果を確かめるのかが決まっていないと、使われないまま終わるか、個人の判断でばらばらに使われることになってしまいます。
DXは、データとデジタル技術で業務や事業を変える取り組み全体を指し、AI-Readyはその中でAIを使う前提条件をそろえる部分にあたります。AI導入が道具を入れる出来事だとすると、AI-Readyは入れた道具が成果につながる土台のほうを指す言葉と考えることが出来ます。道具と土台のどちらが欠けても、AIは会社の仕事を変えるところまで届きません。
言葉の由来|内閣府・経団連・経済産業省で意味がどう変わったか
AI-Readyは、2019年2月に経団連が企業の段階として示し、翌3月に政府の原則が社会の在り方を表す言葉として掲げ、2026年には経済産業省がデータの整え方の意味で解説する、という順で意味が広がってきました。調べる資料によって説明が違って見えるのは、どの時期のどの文書を元にしているかが違うためです。
2018年|人間中心のAI社会原則の検討会議に出された資料
内閣府の人間中心のAI社会原則検討会議には、2018年6月1日付で、Preferred Networksの丸山宏氏による「AI-Readyとは?」という資料が出されています。政府の定義ではなく有識者の提出資料で、汎用人工知能、デジタル技術が行き渡った社会、統計的機械学習を使うシステムの3つについて、それぞれどんな備えが要るかを論じた内容です。会社のデータ整備を扱ったものではない点には、注意が必要でしょう。
2019年2月|経団連「AI活用戦略」が会社の5段階を示す
日本経済団体連合会(経団連)は2019年2月19日、「AI活用戦略〜AI-Readyな社会の実現に向けて〜」を公表しました。提言は、やみくもにAIを使っても便益を最大限には受けられないとして、まずAIを使うための準備(AI-Ready化)が必要だと述べています。そのうえで、AI-Readyな企業・個人・社会制度と産業基盤の3つに分け、企業には5段階のレベルを設けました。
2019年3月|内閣府「人間中心のAI社会原則」が「AI-Readyな社会」を掲げる
2019年3月29日、政府の統合イノベーション戦略推進会議は「人間中心のAI社会原則」を決定し、その脚注で「AI-Readyな社会」の意味を説明しました。原文を要約すると、社会全体がAIの恩恵を受けている、または必要なときにすぐAIを導入して恩恵を得られる状態にある「AI活用に対応した社会」のことです。同じ脚注には、企業について「AI活用を前提とした経営戦略に基づいたビジネスを展開し」という一節もあります。関連する質問でよく見かける「AI-Readyな社会」は、政府の文書ではこの脚注で意味が説明されている言葉です(経団連の提言の副題にも同じ言葉が使われています)。
2026年の政府の動き|経済産業省の解説と人工知能基本計画
2026年には、経済産業省がMETI Journal ONLINEで企業内データの話としてAI-Readyを取り上げました。6月29日の政策特集は、企業内のデータをAIが活用できる状態に整える「AI-Ready化」に注目が集まっていると紹介し、8月12日の用語解説で冒頭の定義を示しています。
7月14日に閣議決定された人工知能基本計画(副題「日本AX、より強く、より豊かに」)には、AI-Readyという語そのものは出てきません。それでも、現場でまずAIを使い、その経験をデータの整備につなげるという考え方が書かれていて、データ整備の進め方を考える手がかりになります。
いま注目される背景|生成AIの普及と企業内データ
AI-Readyが改めて注目されている背景には、生成AIが社内の文書を読んで答えを返せるようになり、会社の中にあるデータの質が答えの質に響くようになったことがあります。以前のAI活用は、専門の担当者が数値のデータを集めて分析する場面が中心でした。生成AIでは、規程・マニュアル・議事録・メールといった文章が材料になるため、総務や情シスが管理している共有フォルダの中身まで、AIの使い勝手に関わってきます。
調査で見る、データ活用の成果の現状
データを活かしきれていない会社は、少なくありません。経済産業省の政策特集が引くガートナージャパンの調査(2025年9月、日本国内の企業に所属する個人が対象、n=455)では、自社のデータ活用について「全社的に十分な成果を得ている」と答えた割合は2.4%でした。同じ調査で「あまり成果を得ていない」「まったく成果を得ていない」の合計は25.7%とされています。企業の規模を問わない個人向けの調査で、中小企業だけの数字ではありませんが、データの整備が一朝一夕には進まないことがうかがえるでしょう。
AI-Readyな会社の姿|経団連の5段階で自社の位置を確かめる
自社がAI-Readyかどうかは、経団連の5段階に当てはめてみると、どこまで来ていてどこが足りないかを言葉にしやすくなります。段階の名前と中身を知っておくと、経営者への報告や次の予算の相談にも使えます。
AI-Readyを形づくる要素|経営・専門家・従業員・システムとデータ
経団連の5段階は、レベル1「AI-Ready化着手前」、レベル2「AI-Ready化の初期段階」、レベル3「AI-Ready化が進行する」、レベル4「AI-Ready化から本格的なAI-Powered化へと展開する」、レベル5「AI-Powered企業として確立し、影響力を発揮している」の順に上がっていきます。それぞれの段階について、経営・マネジメント層、専門家、従業員、システムレベル・データの4つの観点から、目標となる姿が書かれています。
AI-Readyの要素として語られることの多い戦略・データ・人材・仕組み・ルールも、おおむねこの4つの観点のどれかに収まります。経営が方針を決め、専門家とふつうの社員が使い方を身につけ、システムとデータが追いついて、初めてAIが成果につながる、という見方です。
社員10〜200名の会社向けの自己診断
下の表は、経団連の各段階の記述を、社員10〜200名の会社に置き換えるとどんな姿になるかを、このコラムで読み替えた目安になります。経団連の原文は大企業も含めた2019年時点の提言で、中小企業向けの読み替えを経団連が示しているわけではありません。
| レベル(経団連の名称を要約) | 原文の要点 | 社員10〜200名の会社に置き換えた姿(このコラムの読み替え) |
|---|---|---|
| レベル1 AI-Ready化着手前 | AIやビッグデータの議論が先行し、事業での活用は未着手。データを引き出すのに1か月、統合に半年、クリーニングに1年かかることもある | 社員が個人のアカウントでAIを使っているかを会社が把握していない。規程やマニュアルの最新版がどれか、担当者に聞かないと分からない |
| レベル2 AI-Ready化の初期段階 | スモールスタートで小さな成果や失敗を積み重ねる。外部の専門家の力を使って既存のソリューションを当てはめる。理数分野とAI×データの素養を持つ人がIT部門などを中心に1〜2割 | 会社で契約した生成AIを、議事録や文書の下書きなど2〜3の業務で使っている。基本的な使い方と注意点が分かる社員が、社員の1〜2割(50名なら5〜10名)いて、入力してよい情報の線引きがある |
| レベル3 AI-Ready化が進行する | 部分最適だったプロセスを共通化し、会社全体に広げる。基礎リテラシーを持つ人が従業員の3〜5割程度 | どの部署も同じ環境・同じルールで使い、よく使う指示や手順を社内で共有している。規程やFAQが1か所にまとまり、AIに探させて答えさせる使い方も試している |
| レベル4 本格的なAI-Powered化へ展開 | 基礎リテラシーが高い従業員が8割以上。業務に関する大半のデータをリアルタイムに近い形で引き出し、分析・活用できる | 販売や在庫など業務システムのデータもAIで分析に使え、経営判断の材料づくりにAIが組み込まれている |
| レベル5 AI-Powered企業として確立 | 全従業員が仕事の何らかの場面でAIを使い、AIを使った他社との事業連携も進んでいる | 取引先や業界とデータをやり取りしながら、新しいサービスづくりにもAIを使っている |
※原文の要点は、経団連「AI活用戦略〜AI-Readyな社会の実現に向けて〜」(2019年2月19日)第Ⅲ章のAI-Ready化ガイドラインから要約したものです(2026年9月25日に原文を確認)。右の列はこのコラムによる読み替えで、経団連の記述ではありません。
中小企業の現実的な目標はレベル2
社員10〜200名の会社が最初に目指す場所としては、レベル2がちょうどよい高さだと考えられます。原文のレベル2は「AI活用に関するスモールスタートで小さな成果や失敗を積み重ねることで経験を積む」段階とされ、取り組みの多くは既存の業務を置き換えるような一部の簡易業務だと書かれています。外部の専門家の力を使って既存のソリューションを当てはめる、という記述もあり、自前でAIを開発する力は求められていません。このコラムの見方では、既製の生成AIを会社で契約し、いくつかの業務で使い始めることが、レベル2に近づく最初の一歩になります。
反対に、レベル1の説明には、古いシステムのままだとデータを引き出すのに1か月、統合に半年、クリーニングに1年かかることもある、と書かれています。大がかりなデータ整備を先に済ませようとすると、その間AIを使わない期間が長くなりがちです。
人材育成とリテラシーは「1〜2割」から
人の面でも、レベル2の目安は高くありません。原文は、理数分野とAI×データの素養(基礎リテラシー)を持つ人が、IT部門やデータ関連の部門を中心に1〜2割いる状態をレベル2の従業員の姿として描いています。このコラムでは社員10〜200名の会社に置き換えて、社員の1〜2割(50名なら5〜10名)が基本的な使い方と注意点を分かっている状態を、一つの目安と見るのがよいと考えます。最初から全員に研修をするより、推進担当の周りの数名が実際の業務で使い、うまくいった使い方を社内に見せていくほうが、組織の空気も変わりやすくなります。
AI-Readyに近づくと何が変わるか
段階が上がると、AIの答えを直す手間が減り、使う人と業務が広がっていきます。規程の最新版が1つに決まっていれば、AIに渡す文書を探す時間も、古い規程をもとにした誤った答えを直す時間も減らすことが出来ます。使い方が社内で共有されると、特定の社員だけが速く仕事を終える状態から、部署全体の作業時間が短くなる状態へ移っていくでしょう。経団連がレベル4以降で描く、AIを使った新しい事業や他社との連携は、その先にある話になります。
データ整備が要る使い方・要らない使い方
AIの使い方は、データ整備がほとんど要らないもの、社内文書の整理が要るもの、表のデータの整備が要るものの3つに分けて考えると、今日から始められる範囲がはっきりします。冒頭で紹介したAXの記事でも、DXを待たずに始められる部分と、DXを進めないと届かない部分に分けて考える見方を示しています。
①手元の文書を渡して下書き・要約・翻訳をする|整備はほぼ不要
会議のメモを渡して議事録に整える、取引先からの長いメールを要約する、社内向けのお知らせの下書きを作る、英文の資料を訳すといった使い方は、その場で渡した文書だけで仕事が完結します。AIが会社の共有フォルダを見に行くわけではないため、社内のデータがどれだけ散らかっていても始めることが出来ます。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2026」でも、AIの利活用の用途(AIを導入・試験利用・検討中の企業が対象、複数回答)は「文書・音声の要約・翻訳・校正」が82.5%、「文書・レポートの作成(社内・社外)」が80.5%と、この種類の使い方が上位に並んでいます。
ここで必要になるのは、渡してよい情報とそうでない情報の線引きと、出てきた答えを人が確かめる習慣のほうでしょう。用途ごとにどのAIが向くかはChatGPT・Claude・Geminiの使い分けで、手元の資料を読み込ませて質問する使い方はNotebookLMの使い方で紹介しています。
②社内規程やFAQを探して答えさせる(RAG)|文書の最新版をそろえる
就業規則や経費精算のルール、よくある社内問い合わせをAIに探させて答えさせる使い方は、RAG(検索拡張生成)と呼ばれます。RAGは、質問に近い文書を社内の資料から探し、その中身をもとに答えを作る仕組みになります。探す先に古い版と新しい版が混ざっていると、AIは古い規程をもとに答えを返してしまうことがあります。AIが事実と違う内容をもっともらしく作ってしまうハルシネーションとは別に、元の文書が古いことによる誤りも起こるため、RAGの答えの正しさは渡した文書の質に大きく左右されます。
この使い方に進む前に整えるべきなのは、データベースではなく文書の版の管理です。仕組みの詳しい説明はRAGとは、作るときの手順と費用はRAG構築の方法と費用の記事にまとめています。
③売上予測や需要予測などの分析|表のデータの整備が要る
売上の予測や在庫の見通しのように、数字の表をAIに分析させる使い方では、データの整備が欠かせません。部署ごとに売上を税込で付けているか税抜で付けているか、締め日がいつかがそろっていないと、AIに渡しても正しい比較にはならないでしょう。表計算ソフトで集計できる規模なら、まずは1つの表を整えて渡すところから試すことが出来ます。社内のデータを安全に渡す手順はAIデータ分析のやり方で取り上げています。
分析に使う場合のデータ基盤の用語|DWH・ETL・データカタログ
データ基盤の話になると、専門用語が一気に増えます。DWH(データウェアハウス)は、複数の業務システムのデータを分析用に集めておく保管庫のことです。ETLは、データを取り出し(Extract)、形をそろえ(Transform)、保管庫に入れる(Load)処理の頭文字になります。データカタログは、社内にどんなデータがどこにあり、誰が管理しているかをまとめた目録を指し、データの意味や計算のしかたを定義しておく層はセマンティックレイヤーと呼ばれています。
社員10〜200名の会社では、こうした基盤を最初から作る必要はほとんどなく、③の使い方が本格的に必要になった段階で検討すれば足りるでしょう。後で紹介する共有フォルダの一覧づくりは、データカタログを小さな会社の言葉に直したものと考えることも出来ます。
データ整備を待たずに始める理由|政府の計画も「まず使ってみる」
データ整備を待たずに使い始めてよい大きな根拠は、政府の人工知能基本計画そのものが、使うことを先に置いている点にあります。2026年7月14日に閣議決定された計画の第3章第1節「AI利活用の加速的推進」は、中堅・中小企業や地方部を含めてAIを日常的に使う社会を目指すとし、「AIの効果やリスクへの理解を促しながら、能動的かつ意識的に「まず使ってみる」という精神を広く醸成する」と書いています。続く部分は、「現場においてAIをまず使うことを経験として積み重ね、業務の改善効果を実感するとともに、暗黙知を含めたデータの精製・集積につなげる」とし、「AI利活用と必要なデータ整備の好循環を生み出す」と続きます。
使うことが先にあり、使った経験がデータ整備を進める、という順番です。データ整備はAIを使う前の関門ではなく、使いながら回していく作業と考えて差し支えありません。
小さく始めて、使いながら整える
使いながら整える進め方は、経団連のレベル2の「スモールスタート」とも重なります。最初は①の使い方で2〜3の業務を選び、使ううちに「この規程が古かった」「この手順は文書になっていなかった」と気づいたものから整えていけば、整える順番を現場の困りごとが教えてくれます。データ整備を先に完璧にしようとすると、どの文書をどこまで整えれば十分なのかが決まらず、作業が終わらないまま時間だけが過ぎてしまいがちです。
一方で、会社として環境を用意しないまま「まず使ってみる」を始めると、社員が個人のアカウントで業務の文書をAIに渡すことになりかねません。商工組合中央金庫の「中小企業の生成AIの利用にかかる調査」(2026年1月調査、取引先中小企業3,892社が有効回答)では、「会社での導入はなく、使用は個人の判断に任せている」という回答が64.9%でした。使い始める前に、会社として使う環境とルールだけは先に決めておきましょう。
データ整備を待たずに始めるときこそ、社員が使うAIの環境を会社で1つに決めておくと安心です。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
社内のデータがAIに使われない原因|サイロ化・属人化・非構造化
経済産業省の政策特集(2026年6月29日)は、企業内データの多くがAIで活用されない背景として、「サイロ化」「属人化」「大量の非構造化データ」の3つを挙げています。どれも大企業だけの話ではなく、社員10〜200名の会社にも身近な形で見つかります。
サイロ化|部署ごとに別の場所にある
同じ記事は、サイロ化を、部門やシステムごとにデータが独立・分断されて管理され、組織全体で共有・連携されていない状態と説明しています。中小企業に置き換えると、営業の見積は各自のパソコン、経理の資料は会計ソフトの中、総務の規程は共有フォルダの奥、といった状態が当てはまるでしょう。見積の型をAIに作らせたくても、材料が1か所にないため、毎回だれかが集めてくる手間がかかってしまいます。
属人化|担当者しか分からない
属人化は、担当者しか把握していない、処理できない状態を指します。値引きの判断基準や、取引先ごとの請求の細かな決まりが、ベテラン社員の頭の中にしかない会社も多いのではないでしょうか。書かれていないことはAIにも渡せないため、まずは担当者に話してもらい、その内容をAIに文章へ整えさせるところから始めてみてください。AIを使うことが、そのまま属人化をほどく作業にもなります。
大量の非構造化データ|紙・スキャン・手書き
非構造化データは、メールなどの文書や画像、音声、動画のように、表計算ソフトの行と列に収まらないデータのことです。紙で保管している申請書、スキャンしたままの契約書、手書きの点検表などがこれにあたります。文字として読み取れる文書なら、非構造化データでも生成AIにそのまま渡せる材料になります。一方で、画像のままのPDFは、社内の文書を探して答えさせる使い方では、探す対象から漏れてしまうことがあるため注意が必要です。
使いながら整える社内文書の順番|AI-Readyデータの作り方
社内文書は、問い合わせが多いものと、改訂が多いものから順に整えると、少ない手間でAIの答えが良くなります。反対に、めったに開かれない古い資料から手を付けると、作業の割に効果が見えにくくなってしまいます。
AI-Readyデータとは
AI-Readyデータは、AIがそのまま読めて、どれが正しい版かが分かり、渡してよいかどうかの区別がついているデータのことと考えると分かりやすいでしょう。経済産業省の用語解説も、現場のデータを意味・関係性付けし、AIが理解しやすい高品質なデータとして管理していくことを「AI-Ready化」と呼んでいます。中小企業の社内文書でいえば、最新版が1つに決まっていること、ファイル名から版と日付が分かること、文字として読めること、入れてはいけない情報が混ざっていないこと、の4点がそろえば、①と②の使い方には十分に役立ちます。
整える順番の目安
整える順番は、社員からの問い合わせの多さと、古い版が残ったときの困りやすさで決めると迷いにくくなります。社員10〜200名の会社なら、次の順番が一つの目安になるでしょう。
- 就業規則と社内規程(休暇・経費・出張など)。問い合わせが多く、古い版が残っていると誤った答えにつながりやすい文書です
- よくある社内問い合わせと回答。総務や情シスに何度も来る質問と、その答えを1つの文書にまとめます
- 見積・提案書の型。営業が各自のパソコンに持っている型を集め、会社の標準を1つ決めます
- 業務マニュアル。手順が変わったまま更新されていないものから見直します
- 議事録。量が多いため、決まったことと宿題が分かる形に絞って残します
総務の文書から始めるのは、使う人が多く、効果が社内に伝わりやすいからです。中小企業基盤整備機構の「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)」でも、業務分野別のAI導入率では、総務・管理部門が68.3%で最多となっています。
文書ごとの具体的な作業
整える作業そのものは、特別な道具を使わずに進めることが出来ます。次の5つを、上の順番の文書に1つずつ当てていきましょう。
- 最新版を1つに決める同じ名前のファイルが複数あるときは、いま使っている版を1つ決め、ほかは「旧版」フォルダへ移します。
- ファイル名に版と日付を入れる例:就業規則_第12版_2026-04-01。名前を見ただけで新旧が分かる形にそろえます。
- スキャン画像を文字の読めるPDFにする複合機やPDFソフトの文字認識(OCR)を使い、文字を選択・検索できる状態にします。
- 言葉の表記をそろえる客先・取引先・得意先のように同じものを指す言葉を、社内で1つに寄せます。
- 入れてはいけない情報を分ける個人情報や取引先から預かった資料が混ざる文書は、別のフォルダに分けておきます。
どの作業も、総務の担当者が通常業務の合間に少しずつ進められる大きさです。1つの文書を整えるたびにAIに同じ質問をしてみると、答えが変わる様子が分かり、次に整える文書を選ぶ判断材料にもなります。
総務・情シスが最初の1週間でやること
最初の1週間は、AIの設定より先に、共有フォルダのどこに何があるかを知るところから始めると、その後の作業が速く進みます。会社全体の立ち上げを30日で進める手順は、冒頭のAXの記事のチェックリストにまとめてあるため、ここではデータ側の作業に絞ります。
- 1日目:共有フォルダの上位の階層と持ち主を一覧にするフォルダ名・中身・管理している部署・最終更新の時期の4列で、上から2階層ほどを書き出します。
- 2〜3日目:規程とFAQの最新版を特定し、旧版を退避する同じ名前の文書を並べ、今の版を1つ決めて、残りを旧版フォルダへ移します。
- 4日目:入力しない情報の置き場所に印を付ける個人情報・取引先から預かった資料・未発表の情報が入っているフォルダ名の頭に、印となる記号を付けます。
- 5日目:まず使う3つの業務と、渡す文書を決める業務ごとに、AIに渡してよい文書と、渡さない文書を書き出します。
1日目の一覧は、表計算ソフトに4列を作り、上から2階層ぐらいまでを埋める程度で十分です。全部を見ようとすると1週間では終わらないため、深い階層は後回しにして構いません。5日目に決める業務は、①の使い方で済むものを2つ、②の使い方に進みたいものを1つ、という組み合わせにしてみてください。最初の2つで使い方に慣れながら、残る1つのために規程やFAQを整える、という並べ方になります。
1週間の後の進め方|小さく試す・広げる・見直す
1週間の後は、選んだ業務で1か月ほど使い、かかった時間を使う前と比べます。効果が見えた業務は、ほかの部署にも同じ手順で広げていきましょう。広げる途中で困りごとが出てきたら、それが次に整える文書の候補になります。3か月ほどたったら、使っている業務・整えた文書・残っている課題を棚卸しし、経団連の5段階の表と見比べてみると、進み具合を社内に説明しやすくなるでしょう。全社の仕組みづくりに進む段階では、AIガバナンスの回し方の記事も参考にしていただけます。
整える間も守ること|ガバナンスと入力しない情報、会社の環境
データを整えている間も、入力しない情報のルールと、会社として管理できる環境の2つは先に用意しておく必要があります。顧客や社員の個人情報、取引先から預かった資料、未発表の決算や人事の情報は、原則としてAIに入れない区分に置いておきましょう。入力してよい情報・条件付きの情報・入力しない情報の3つの区分の作り方は、生成AIの社内ガイドラインの作り方の記事にひな形を載せています。
環境の面では、入力した内容をAIの学習に使わせない設定を会社側で確かめられること、誰がいつどのAIを使ったかのログが残ること、使う必要のある社員全員に会社のアカウントを配れることの3つを確かめてみてください。会社の環境が使いにくいと、社員は個人のアカウントに戻ってしまいます。会社が把握していないAIの利用はシャドーAI(野良AI)と呼ばれ、見つけ方と対策はシャドーAI(野良AI)とはで、確かめる項目の一覧は生成AIセキュリティ対策チェックリストで紹介しています。複数のAIを1つの環境でまとめて使う方法も、マルチAIとはの記事で比べることが出来ます。
データ整備を待たずに、4つのAIを会社の環境で使い始める
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです。全モデルで学習非利用を標準で適用し、管理画面ではUPGEAR AI上の利用状況を利用者・日時・利用モデル単位まで把握でき、CSVでの書き出しにも対応します。特定のAIモデルの利用禁止も設定できます。整えた社内文書を読み込ませて答えさせる社内文書RAGや、よく使う指示と手順を社内限定で共有できるカスタムプラスも備えています。どのプランも利用人数は無制限で、データの保管とログ管理は国内で行います。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
「AI-readyな社会」とはどういう意味ですか?
AI-Readyとはどういう状態ですか?
経済産業省のAI-readyとは?
データ整備が終わっていなくても生成AIを使ってよいですか?
AI-Readyの読み方は?
まとめ
AI-Readyとは、会社がAIを効果的かつ安全に使える準備が整った状態のことで、2019年の内閣府の原則と経団連の提言を経て、2026年には経済産業省がデータの整え方の意味で解説しています。社員10〜200名の会社が最初に目指す段階は経団連のレベル2あたりで、データ整備の完了を待たずに、手元の文書で済む業務から使い始めることが出来ます。使いながら規程とよくある問い合わせの最新版を1つに決め、ファイル名に版と日付を入れ、スキャン画像を文字の読めるPDFにしていけば、社内文書を探して答えさせる使い方にも進めます。AIを前提に仕事の進め方を見直す全体の流れはAX(AIトランスフォーメーション)とはで、法人のAI活用に関するほかの記事はAI活用コラム一覧で確かめてみてください。
