
ChatGPTのCodexは、ChatGPTデスクトップアプリのCodexモードを開き、読み取り専用か承認ありの権限で、ダミーのファイルに小さな作業を頼むところから使い始めるのが無理のない形になります。会社で使う場合は、その前に、誰がどのプランのアカウントで、どのデータを、どの権限で扱うかを決めておきましょう。とくにPlusやProの個人アカウントは、データコントロールで学習をオフにしない限り、会話がモデルの改善に使われる場合があります。席の料金やクレジット、上限に達したときの動きは、ChatGPT BusinessのCodexの上限とクレジットで詳しく扱っています。
※プラン・料金・設定名は、2026年10月15日時点でOpenAIの公式ヘルプ(ChatGPT プランで Codex を使う)と、開発者向けドキュメント(承認とセキュリティ、AGENTS.md、料金)に記載されている内容です。画面名や設定の名前は変わることがあります。
Codexとは何か|ファイル操作やコマンド実行まで任せられるAIエージェント
Codexは、OpenAIがChatGPTの各プランに含めて提供している、作業を任せるためのAIエージェントです。チャットのように文章で答えを返すだけでなく、指定したフォルダの中のファイルを読み、書き換え、コマンドを実行するところまで進めることが出来ます。公式の説明はコーディングのタスクを中心に書かれていますが、フォルダの中のファイルを扱う作業であれば、開発以外の仕事でも頼めることになります。
チャットとの違いは、AIが自分の手でファイルに触れる点にあります。チャットなら、出てきた答えを使うかどうかは人が決めますが、Codexは許された範囲で直接ファイルを書き換えてしまいます。便利な分、どのフォルダを触らせ、どこから先は人の承認を待たせるかを、最初に決めておく必要があるわけです。この決め方が、後で見る権限(サンドボックスと承認ポリシー)の話につながっていきます。
開発の経験がない方でも、日本語で頼んで使うことは出来ます。ただ、ターミナルの操作に慣れていない方は、コマンドを打つCLIより、ChatGPTデスクトップアプリのCodexモードから始めたほうが戸惑いは少ないでしょう。総務・経理・営業事務の方がCSVの書式をそろえたり、文書の表記揺れを洗い出したりする使い方は、後の判断表で具体的に見ていきます。
使い始める前に決めること|担当者のチェックリスト
会社でCodexを使い始めるなら、最初の1人に配る前に、次の9つを決めておきましょう。どれも後から変えられますが、社員が使い始めてからルールを後付けすると、個人のアカウントで進んでいた作業の扱いから整理し直すことになってしまいます。
- 1.最初に使う人いきなり全員に配らず、2〜3名から始めます。開発担当1名と、開発の経験がない事務の方1名を組み合わせると、両方の立場のつまずきが早く見えてきます。
- 2.使うアカウントとプラン会社が契約したワークスペース(BusinessやEnterprise)のアカウントで使うのか、社員が個人で持っているPlusやProで使うのかを決めます。業務では会社のアカウントにそろえるのが基本です。
- 3.扱ってよいデータ最初の1か月は、ダミーのファイルと、個人情報を抜いたコピーだけにします。顧客の個人情報、未公開の契約や決算の情報をいつから扱ってよいかは、試した結果を見てから決めます。
- 4.最初の権限サンドボックスはread-only(読み取り専用)、承認ポリシーはon-request(必要なときに承認を求める)から始めます。段階の上げ方は後の章の社内ルール案を使ってください。
- 5.ローカルだけか、クラウドも使うか自分のパソコンの上で動かすローカルと、OpenAI管理の環境で動くCodex Cloudは、管理対象のワークスペースでは別々に管理できます。最初はローカルだけにする判断もあります。
- 6.作業させるフォルダ普段の共有フォルダをそのまま指定せず、試し用の専用フォルダを作ります。元のファイルはそこに置かず、コピーだけを入れます。
- 7.結果を確かめる人Codexが作ったファイルを、社外に出す前に誰が見るかを決めます。作業した本人とは別の方が見る形にすると、思い込みによる見落としが減ります。
- 8.上限に達したときの連絡先利用枠を使い切ったときに、待つのか、クレジットを足すのかを誰が決めるかを書いておきます。Businessでの判断の順番は冒頭で紹介した記事で扱っています。
- 9.すでに個人アカウントで使っている社員の棚卸し会社が配る前から、自分のPlusやProでCodexを業務に使っている方がいるかを確かめます。いれば、どのプランで、どんなファイルを渡したかを聞いておきます。
9つのうち、後から取り返しがつきにくいのは2番目のアカウントと3番目のデータです。個人アカウントに渡した業務ファイルは、会社のワークスペースの設定の外に置かれたままになります。棚卸しは誰かを責めるためではなく、どのプランで何に使っているかを知るために、短いアンケートで聞いてみてください。
決めた内容は、A4で1枚ほどの文書にまとめて、最初に使う方に渡すと伝わりやすいでしょう。文書の中身は、この後の章の段階表、判断表、1週間の試し方、AGENTS.mdの例をそのまま貼り付けて作ることが出来ます。
Codexの始め方|使える場所とサインインの手順
Codexを使える場所は、ChatGPTデスクトップアプリ(Codexモード)、Codex CLI、Codex IDE拡張機能、Codexウェブ版の4つです。どれもChatGPTアカウントでサインインして使う形になります。
- ChatGPTデスクトップアプリ(Codexモード) 普段のChatGPTと同じアプリから使えるため、開発の経験がない方の入口に向いています
- Codex CLI ターミナル(コマンドを打つ画面)で動かす使い方で、開発担当向けです
- Codex IDE拡張機能 VS Codeなどの開発ツールに組み込んで使う形です
- Codexウェブ版 ブラウザから使う形で、アプリを入れずに試せる入口になります
Codex VS Code拡張機能は、ほとんどのVS Code派生版で使えると案内されています。ほかのIDEを使っている場合は、IDEのターミナルからCodex CLIを動かすことが出来ます。
非エンジニアが最初に触るなら、デスクトップアプリから
開発の経験がない方は、ChatGPTデスクトップアプリから始めると、画面の見た目が普段のChatGPTと近いので迷いにくくなります。最初の1回は、次の順番で進めてみてください。
- 会社のワークスペースに招待されたアカウントで、ChatGPTデスクトップアプリにサインインする
- Codexモードに切り替える
- 作業させるフォルダとして、試し用に作った専用フォルダを選ぶ
- 権限が読み取り専用か、承認ありになっているかを確かめる
- ファイルを書き換えない小さな依頼を1つだけ出し、返ってきた報告を読む
サインインするアカウントを間違えると、会社のワークスペースの設定が効かないまま使い始めてしまいます。個人のアカウントと会社のアカウントを両方持っている方は、いまどちらでサインインしているかを最初に確かめましょう。
ローカルとクラウドの違い
Codexには、自分のパソコンの上で動くローカルの使い方と、OpenAIが管理するコンピューターの上で動くCodex Cloudの2つがあります。公式ヘルプは、ローカルの作業はデバイスの上で、クラウドのタスクはOpenAI管理の環境で実行されると説明しています。Codex Cloudは再利用できるクラウド環境で作業を進めるため、パソコンがスリープしていても作業を続けられるのが特徴になります。
一方、Codex Cloudは無料版とGoには含まれず、対象のPlus、Proの全ティア、Business、Enterprise、Healthcare、Educationで使えると案内されています。使えるかどうかは展開状況とワークスペースの設定によるため、管理者がクラウドを開けていなければ使えません。ゲスト、K-12、Enterpriseの閲覧専用シートはクラウド環境を作れない点も、配る前に知っておきたいところです。
最初の数週間はローカルだけで試し、クラウドは扱うデータのルールが固まってから開ける順番が落ち着くでしょう。クラウドのタスクは、自分のパソコンではなくOpenAI管理の環境で処理されます。使う方には、この違いを一言添えて伝えておいてください。
料金と対象プラン|無料版から使えるが、枠はプランで違う
Codexは、FreeとGoを含むChatGPTの各プランに含まれています。使える量の上限はプランごとに違うため、同じ使い方でも、プランによって止まるまでの長さが変わってきます。
OpenAIの料金ページ(2026年10月15日時点)では、Plusが月額20ドル、Businessが1ユーザー月額20ドル(年払い・2名以上)、月払いなら25ドルと表示されています。会社の出費に直すと、Businessの年払いで10名に配れば月200ドル、1年で2,400ドルになります。Businessの標準の利用上限はPlusと同じくらいの目安とされ、上限に達した後は、柔軟な料金体系のプランならワークスペースのクレジットを追加して使い続けられます。クレジットの考え方や支出上限の決め方は、ChatGPT BusinessのCodexの料金と上限にまとめてあるので、配る人数を決める前に読んでみてください。
もう1つ知っておきたいのは、Codex、ChatGPT Work、ChatGPT for Excel、ワークスペースエージェントのうちプランで使えるものが、同じ利用枠とクレジットを分け合う点です。Workで重い作業をした方は、その日のCodexの残りが減っている、ということが起こり得ます。
APIキーで使う場合との違い
Codexは、ChatGPTアカウントの代わりにAPIキーで動かすことも出来ます。その場合、使えるのはCLI、SDK、IDE拡張に限られ、クラウドの機能は使えません。料金もプランの席ではなくAPIの料金で計算されるため、APIキーで動かした分は、席の料金とは別の請求として届きます。サブスクリプションとAPIを混同すると、どこにいくら払っているのかが見えにくくなってしまいます。会社で配るなら、まずはChatGPTアカウントでのサインインにそろえると、管理する場所が1つにまとまるでしょう。
プラン別の学習の扱い|業務のファイルを渡してよいアカウントか
業務のファイルを渡してよいかどうかは、Codexの機能ではなく、サインインしているアカウントのプランで決まります。公式ヘルプでは、ChatGPTの学習データの設定は、コンピューター操作で撮ったスクリーンショットも含めて、Codexで処理される内容にも適用されると説明されています。
- Business・Enterprise(法人向け) 入力と出力は、既定ではモデルの改善に使われません
- API 既定では使われません。API組織のオーナーがデータの共有にオプトインすることは出来ます
- Plus・Pro ChatGPTのデータコントロールで学習をオフにしない限り、会話がモデルの改善に使われる場合があります
- Free・Go 個人向けのプランで、Codex Cloudも含まれません。業務のファイルを渡す前提にはしないのが無難です
同じCodexでも、会社のBusinessで動かすか、個人のPlusで動かすかで、渡したファイルの扱いが変わります。PlusやProでも、設定で学習をオフにすること自体は出来ます。ただ、その操作は社員1人ずつに任されるため、会社として全員分を確かめるのは難しいでしょう。
前の章のチェックリストに、個人アカウントの棚卸しを入れたのはこのためです。棚卸しで、個人のPlusやProを業務に使っている方が見つかったら、会社のワークスペースに招待して、作業の場所を移してもらいましょう。開発担当だけでなく、事務の方が試しに使っている場合もあるので、聞く範囲は部署を絞らずに広げておくと安心です。
開発以外の社員にも、学習に使われない会社の環境をまとめて配る方法があります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
承認モードと権限の社内ルール案|4段階で広げる
Codexの権限は、どこまで触れるかを決めるサンドボックスと、いつ人の承認を待つかを決める承認ポリシーの組み合わせで決まります。言葉は難しく見えますが、触ってよい範囲と、聞いてから動く場面の2つを決めている、と考えると分かりやすくなります。
サンドボックスの3つのモード
- read-only(読み取り専用) ファイルを読んで報告するのが基本で、承認しない限り書き換えはしません
- workspace-write(ワークスペース書き込み) 作業フォルダの中の読み書きと、コマンドの実行を自動で進めます
- danger-full-access サンドボックスも承認もない状態で、公式も推奨していません
承認ポリシーの3つ
- on-request サンドボックスが許す操作は承認なしで進め、範囲の外の編集やネットワークの利用のときに承認を求めます
- never 承認のプロンプトを出しません
- granular カテゴリごとに承認の要否を決めます
公式ドキュメントでは、workspace-writeとon-requestの組み合わせがAutoというプリセットとして紹介されています。ネットワークへのアクセスは既定でオフで、バージョン管理されているフォルダはAuto、そうでないフォルダはread-onlyが勧められている形です。総務や経理の方が使う普段のフォルダは、多くの場合バージョン管理されていないため、公式の推奨に沿うとread-onlyから始めることになります。workspace-writeにしても、.git、.agents、.codex、.awsのフォルダがある場合は読み取り専用で守られる仕組みが用意されています。
社内ルール案|段階ごとに広げる
下の4段階は、公式の設定の名前に合わせて作った社内ルールの案です。会社の実情に合わせて、期間や対象者を書き換えて使ってみてください。
- 段階1(最初の1週間・全員) read-only+on-request。読んで報告させるだけにし、書き換えの承認を求められても許可しない。ネットワークはオフのままにする。ダミーのファイルだけを使う
- 段階2(段階1で問題がなかった方) workspace-write+on-request(Auto)。試し用の専用フォルダの中だけで書き換えを許す。元のファイルは置かず、コピーだけを入れる
- 段階3(バージョン管理されたフォルダを使う開発担当) Autoに自動レビューを組み合わせる。ネットワークは必要なときに承認して使う
- 段階4(原則禁止) danger-full-access、または承認ポリシーをneverにした設定。どうしても必要なときは、情シスの許可を取り、使う期間と対象のフォルダを決めてから使う
段階を上げるかどうかは、前の段階で人が確かめた結果に問題がなかったかで決めましょう。danger-full-accessは、サンドボックスも承認もなくなるため、社内では原則禁止にしてください。以前の設定ファイルにapproval_policyのuntrustedが残っていると、Codexが起動に失敗する場合がある点にも気をつけたいところです。untrustedのサポートは終了しており、公式ヘルプはその代わりに、sandbox_modeをread-only、approval_policyをon-requestにするよう案内しています。
自動レビューの使いどころ
自動レビューは、承認待ちで止まる操作のうち対象のものを、別のレビュアーが代わりに確かめる機能です。公式ヘルプでは設定の「権限」の中の「自動レビュー」から開けると書かれており、設定ファイルではapprovals_reviewerをauto_reviewにして使います。既定ではuserになっていて、サンドボックスの中で完結する操作は対象外となり、重大なリスクのある操作は拒否される仕組みです。ChatGPTアカウントでサインインしていれば、安全性チェックは無料で、プランの上限にも数えられないと案内されています。
一方で開発者向けの説明には、追加のモデル呼び出しで利用量が増える可能性も書かれているため、上限に近い方は様子を見ながら使うと安心でしょう。自動レビューは、ワークスペースの制限を外したり、承認をすべて不要にしたりするものではありません。段階3からの補助として考えてみてください。
管理者が強制できる設定|社員任せにしない仕組み
社内ルールを文章で配るだけでは、設定を変える社員を止められません。会社のワークスペース(管理対象のワークスペース)では、管理者が設定を上から決めておくことが出来ます。
- managed configuration 承認ポリシーやネットワークの要件を管理者が制御します
- allowed_approval_policies 社員が選べる承認ポリシーを絞ります。段階4のneverを選べなくする使い方が考えられます
- allowed_approvals_reviewers 自動レビューの使い方を制限します
- requirements.toml 管理対象の要件は、ワークスペースの開始時の既定値より優先され、その既定値は社員がローカルで選んだ開始時の設定より優先されます
- Codex LocalとCodex Cloudの別管理 CLI、IDE拡張、デスクトップのローカルと、クラウドのタスクを分けて開けたり閉じたり出来ます。有効にしていないEnterpriseのワークスペースでは、クラウドは既定でオフです
- プラグイン Business、Enterprise、Eduの管理者が、管理コンソールでインストールを管理します
- RBAC(ロールごとの権限) 特定のユーザーロールにだけCodexへのアクセスを与えます。公式ヘルプのEnterpriseの設定と管理の節で紹介されています
- Compliance API ローカル、ウェブ、クラウドのCodexの利用状況を確かめられます。Codex Enterprise AnalyticsはEnterpriseのワークスペースで使えます
優先の順番を覚えておくと、社内ルールのどこを仕組みで止め、どこを文章で頼むかを分けられます。管理対象のrequirements.tomlの要件は、社員がローカルで選んだ開始時の設定より優先されます。段階4のneverを許さない、といった線は管理者の設定で止め、扱うデータの線引きのように機械で判断できないものは、AGENTS.mdと社内ルールの文章で伝える形になります。
どの設定が自社のプランで使えるかは、契約しているプランの管理画面と公式ヘルプで確かめてみてください。Enterpriseなら、利用状況の確認は情シスの方が月に1回Compliance APIで見る、といった担当と頻度まで決めておきましょう。
できることと、任せてよい作業・任せない作業の判断表
Codexに任せてよいかは、作業の難しさより、間違えたときに元に戻せるかと、個人情報が入っているかの2つで判断すると迷いにくくなります。開発の作業だけでなく、フォルダの中のファイルを扱う事務の作業にも頼めますが、最後の判断は人に残しておきましょう。
部署別の使い方の例
- 総務 社内規程のテキストやMarkdownのファイルを読ませ、同じ言葉の表記が揺れている箇所を一覧にしてもらう
- 経理 取引データのCSVを、日付や金額の書式をそろえた別のファイルに書き出してもらう
- 営業事務 取引先一覧のCSVから、会社名の表記揺れや重複の候補を出してもらう(個人の連絡先が入っている場合は段階と許可が要る)
- 人事 職種ごとの求人票の下書きを、ひな形のファイルをもとに作ってもらう
- 開発 社内ツールの修正、テストの追加、変更点の説明をまとめてもらう
任せてよい作業
- ダミーやコピーのファイルを使った整形や書き換え
- 読み取り専用で、ファイルの中身を読んで矛盾や表記揺れを報告させる作業
- 結果を新しいファイルに保存させ、元のファイルと見比べられる作業
- 変更点を一覧で出させ、人が1件ずつ確かめられる量の作業
- バージョン管理されたフォルダでの、社内ツールのコードの修正
任せない作業(人が受け持つ)
- 顧客の個人情報が入った元のファイルを、直接書き換える作業
- 支払い、振込、メールの送信など、社外に影響が出る操作
- 社外に出す数字や契約の文面の、最終の確認
- 元に戻せないファイルの削除
- 採用の合否や取引の可否など、人が責任を持つ判断
線を引くときの目安は、Codexが出した結果を、人が1つずつ確かめられる量かどうかです。確かめきれない量を任せると、間違いに気づくのが社外に出た後になってしまいます。結果を人が確かめられない作業は、Codexに任せない側に置いてください。判断に迷う作業は、まず読み取り専用で報告だけをさせ、その報告を読んでから書き換えまで任せるかを決める流れが向いています。
依頼の書き方|目的・対象・ルール・出力の4つを書く
Codexへの依頼は、目的・対象・ルール・出力の4つを書き、1回に1つの作業に絞るとうまく進みます。いきなり書き換えさせず、まず直す候補を一覧で出させ、人が確かめてから実行させる2段階にすると、思わぬ変更を防ぐことが出来ます。
【目的】取引先一覧の会社名の表記をそろえたい 【対象】このフォルダの torihikisaki_copy.csv だけ。ほかのファイルは開かない 【ルール】元のファイルは書き換えず、新しいファイルに保存する。判断に迷う行は直さず、一覧に残す 【出力】先に、直す候補の一覧(行番号・今の表記・直した表記・理由)を出す。書き換えは私が一覧を確かめた後に行う。最後に、変更したファイルと変更点を一覧で出す
最後の行の、何を変えたかを一覧で出させる一言は必ず添えましょう。変更点の一覧があれば、確かめる方は変わった箇所だけを見ることが出来ます。ファイルを書き換えない読み取りだけの依頼なら、もっと短くても通じます。
このフォルダの規程のファイルを読み、同じ言葉の表記が揺れている箇所を、ファイル名・行・表記の組み合わせで一覧にしてください。ファイルは書き換えないでください。
依頼が長くなってきたら、1つの依頼に詰め込まず、作業を分けて順番に頼んでみてください。うまくいった依頼文は、部署の共有メモに残しておくと、次に使う方が書き方をまねることが出来ます。言葉の選び方より、対象のファイルと、やってはいけないことがはっきり書かれているかのほうが、結果に効いてきます。
最初の1週間の試し方|ダミー→コピー→本番
最初の1週間は、ダミーのファイル、本物のコピー、本番のファイルの順に、扱うものを1段ずつ本物に近づけていきます。各段階で人が確かめる点を決めておけば、次に進んでよいかを担当者が迷わずに判断できます。
- 1〜2日目(ダミー・read-only+on-request) 架空の取引先や架空の金額で作ったCSVやテキストを読ませ、報告だけをさせる。確かめる点は、依頼した範囲のファイルだけを読んだか、報告が日本語で分かりやすいか
- 3〜4日目(ダミー・Auto) 同じダミーで書き換えを頼む。確かめる点は、新しいファイルに保存したか、変更点の一覧と実際の変更が一致しているか
- 5日目(本物のコピー) 個人情報を抜いた本物のコピーで同じ作業を頼む。確かめる点は、元のファイルに触れていないか、迷う箇所を勝手に直していないか
- 6日目(振り返り) Codexの設定の使用量の画面で、利用枠の減り方を記録する。うまくいかなかった点をAGENTS.mdのルールに書き足す
- 7日目(本番の判断) 個人情報を含まない本番のファイルだけ、バックアップを取ってから任せるかを決める
1週間で本番まで進めなくても問題はありません。ダミーで同じ間違いが何度も出るなら、依頼の書き方かAGENTS.mdのルールを見直すほうが先になります。本番のファイルは、必ずバックアップを取ってから渡してください。試した方には、うまくいった依頼文と失敗した依頼文の両方を残してもらうと、2人目以降に配るときの手引きとして使えます。
ダミーのファイルは、本物と同じ列の並びと書式で、中身だけを架空にして作るのがおすすめです。列の数や日付の書き方まで本物に寄せておけば、コピーに切り替えたときの差が小さくなり、つまずく場所を先に見つけることが出来ます。
AGENTS.mdで会社の共通ルールを覚えさせる
AGENTS.mdは、Codexが作業の前に読む指示のファイルです。毎回の依頼に同じ注意書きを書かなくても、このファイルに会社のルールを書いておけば、Codexはそれを読んでから作業に入ります。ChatGPTデスクトップアプリでCodexを使っているときに /init と入力すると、いま開いているプロジェクト用のAGENTS.mdのひな形が作られます。CLIでも同じ初期化の流れになっていると案内されています。
読み込みの順番と大きさの上限
AGENTS.mdは、Codexのホームに置くグローバルなものと、プロジェクトのもの(Gitのルートから作業するフォルダまで)を重ねて読み、作業するフォルダに近いファイルほど優先されます。合計の大きさには既定で32KiBの上限があるため、長い規程をそのまま貼らず、守ってほしいことだけを短く書くのがよいでしょう。全員に守ってほしいことはグローバルに、部署ごとの決まりは作業フォルダのAGENTS.mdに分けると整理しやすくなります。グローバルのファイルは各自のパソコンに置くものなので、情シスから配るひな形として用意しておきましょう。
会社の共通ルールの例
# 会社の共通ルール(AGENTS.md の例) ## 回答と報告 - 回答と報告は、すべて日本語で書く - 作業が終わったら、変更したファイルと変更点を一覧で出す ## ファイルの扱い - 元のファイルは上書きしない。結果は新しい名前で保存する(例:元の名前_修正.csv) - ファイルは削除しない。削除が必要なときは、対象と理由を一覧で出して止まる - 依頼で指定されたファイルとフォルダ以外は開かない ## 個人情報と社外秘 - 氏名・住所・電話番号・メールアドレス・口座番号が入ったファイルを見つけたら、作業を止めて報告する - 個人情報や社外秘の内容を、報告の文章に書き写さない ## 迷ったとき - 判断に迷う箇所は直さず、迷った理由と一緒に一覧に残す - ネットワークへの接続が必要になったら、理由を書いて承認を待つ
このファイルは守ってほしいことを伝えるための文書で、守らせるための仕組みとは別物だという点に気をつけてください。削除の禁止やネットワークのように機械で止められるものは、前の章の権限と管理者の設定でも止めておきましょう。AGENTS.mdはお願いの役目で、止める役目は権限と管理者の設定が受け持ちます。部署ごとのAGENTS.mdには、その部署でよく使うファイルの名前の付け方や、直してはいけない列の名前を書き足すと、依頼文が短くなっていきます。
注意点|機密情報・元ファイル・人の確認・利用上限
使い始めてから困りやすいのは、渡す情報、元のファイル、結果の確認、利用量の4つです。どれも設定だけでは防ぎきれないため、使う方に言葉で伝えておく必要があります。
機密情報と個人情報は最初から渡さない
最初の1か月は、顧客の個人情報や未公開の契約の情報が入ったファイルを、作業フォルダに置かないようにしましょう。会社のワークスペースで使っていれば学習には使われないとしても、違うフォルダを指定してしまったときに、関係のないファイルまで読まれることは学習の設定では防げません。作業フォルダは、必要なファイルだけを入れた専用のものを作ってください。
元のファイルを残し、新しいファイルに保存させる
workspace-writeでは、作業フォルダの中のファイルが自動で書き換えられます。元のファイルを残さずに任せると、どこが変わったのかを後から比べる手段がなくなってしまいます。元のファイルは上書きさせず、結果は別の名前で保存させましょう。依頼文とAGENTS.mdの両方に書いておけば、言い忘れも減らせるはずです。
出力は人が確かめてから使う
Codexが出した結果は、社外に出す前に必ず人が確かめます。変更点の一覧と実際のファイルを並べ、一覧に書かれていない変更が混ざっていないかを見るのが、確かめ方の基本になります。数字の合計や件数は、元のファイルと結果のファイルで同じになるかを、表計算ソフトで数えて比べてみてください。
利用上限は、ほかのエージェント機能と分け合っている
Codexの利用枠は、ChatGPT WorkやChatGPT for Excel、ワークスペースエージェントのうちプランで使えるものと同じ枠から使われます。上限に達した後でOpenAIのサポートに頼んでも、上限はリセットされないと公式ヘルプは案内しています。リセットまで待つか、表示される選択肢(クレジットの追加など)を使うことになるため、締め切りの近い作業ほど早めに始めましょう。Businessで上限に達したときの判断の順番と、支出上限の決め方は、冒頭で紹介した記事で扱っています。
Claude Codeなど他のツールとの違いと使い分け
ファイルを読み書きして作業を進めるAIエージェントは、OpenAIのCodexだけではなく、AnthropicのClaude Codeのように、ほかの会社からも出ています。機能の細かな差は版が変わるたびに動くため、会社で選ぶときは機能の比べ合いより、次の4点を同じ順に確かめるほうが判断がぶれません。
- サインインするアカウントと、そのプランでの学習の扱い
- 読み取り専用や承認ありなど、権限の段階を選べるか
- 管理者が設定を上から決められるか
- 利用の状況を会社で確かめられるか
ChatGPTの中でも、Codexとほかのエージェント機能(ChatGPT Workなど)は同じ利用枠を分け合っているので、どれを誰に使わせるかは利用量の面でもつながっています。部署ごとに別々のツールを入れ始めると、学習の設定、権限、利用状況の確認が、ツールの数だけ増えてしまいます。道具を増やすほど、会社が確かめる画面も増えていきます。開発はCodex、調べものや文章は別のAI、と分けている会社ほど、管理の場所を1つに寄せられるかを考えてみてください。
会社で安全に使うには|学習・記録・配布・複数AIの使い分け
Codexを会社で安全に使う条件は、学習に使わせない設定、利用の記録、社員への配り方、ほかのAIとの使い分けの4つを、会社の管理下にそろえることです。BusinessやEnterpriseなら、入力と出力は既定でモデルの改善に使われないため、1つ目は会社のワークスペースで使うだけで満たせます。利用の記録は、EnterpriseならCompliance APIで利用状況を確かめられます(Businessの料金ページには記載がありません)。
悩ましいのは配り方です。Codexは席ごとの料金の中で使うため、開発担当には配っても、ほかの社員まで広げるかは費用との相談になりがちでしょう。配られなかった方が自分のPlusやProで業務に使い始めると、学習の設定も利用の記録も、会社の外に出てしまいます。開発以外の社員にも、学習に使われない会社の環境を用意することが、見えない利用を減らす近道になります。
もう1つは、AIを1つに絞れるかどうかです。長い文書の読み込みや調べものを別のAIに頼んでいる会社では、サービスごとに学習の設定、アカウント、利用の記録が分かれていきます。開発の作業はCodexに任せつつ、日々の文章や調べものは複数のAIを1つの環境で使い分ける、という分け方も選択肢になるでしょう。
複数のAIを1つの環境で使う考え方はマルチAIとは、4つのAIの得意分野は主要4AIの違いと使い分け、点検の項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストを参考にしてみてください。社員の個人利用をどう見つけるかは、野良AI(シャドーAI)の記事で整理しています。
開発以外の社員にも、学習に使われないAI環境を
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けサービスです。全モデルで学習非利用を標準適用し、管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理できます。会話履歴・利用ログは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
ChatGPTの無料版でもCodexは使えますか?
開発の経験がなくてもCodexは使えますか?
最初はどの権限で始めればよいですか?
会社のファイルをCodexに渡すと、AIの学習に使われますか?
AGENTS.mdには何を書けばよいですか?
Codexの利用上限に達したら、サポートでリセットしてもらえますか?
まとめ
ChatGPTのCodexは、フォルダの中のファイルを読み書きし、コマンドを実行するところまで任せられるAIエージェントです。開発の経験がない方は、ChatGPTデスクトップアプリのCodexモードから、読み取り専用か承認ありの権限で、ダミーのファイルに小さく頼むところから始めることが出来ます。
会社で使う前に決めたいのは、誰が、どのプランのアカウントで、どのデータを、どの権限で扱うかの4つになります。PlusやProの個人アカウントは学習をオフにしない限り会話がモデルの改善に使われる場合があるため、業務では会社のワークスペースのアカウントにそろえましょう。権限は段階を決めて広げ、danger-full-accessは原則禁止とし、管理者の設定とAGENTS.mdで守ってほしいことを仕組みと文章の両方から伝えてください。
席の料金、クレジット、上限に達したときの判断は、ChatGPT BusinessのCodexの料金と上限の記事にまとめてあります。法人のAI活用に関するほかの記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。
