動画生成AIの商用利用。会社で動画を公開する前に確かめる手順

動画生成AIの商用利用とは、AIで作った動画を広告・自社SNS・営業資料・採用ページなど、事業のために公開して使うことです。会社で出してよいかは、まず使ったツールの規約と契約プランで商用利用が許されているか、次に映っている人物・声・ロゴ・音楽が第三者の権利を侵していないか、の2段階で判断することになります。同じツールでも無料プランでは商用利用できない例があり、社員が個人アカウントで作った動画はこの1段目で止まってしまうことがあります。公開前に誰が何をどの順で確かめるかを決め、記録を残しておきましょう。

動画生成AIの商用利用は「規約」と「第三者の権利」の2段階で判断する

動画を公開してよいかどうかは、規約の確認と権利の確認を分けて順に見ると判断しやすくなります。1段目は、そのツールとプランの規約が商用利用を認めているかどうかの確認です。ここで許されていなければ、動画の中身にどれほど問題がなくても公開には使えません。2段目では、映っている人物・声・ロゴ・キャラクター・音楽・既存作品との類似など、第三者の権利を侵していないかを見ていきます。

規約で商用利用が認められていても、それは提供元との契約の上で使ってよいというだけで、第三者の権利まで保証するものではありません。実際に、Klingの有料サービス規約(2026年4月21日施行版)も7.4で、入力と出力が肖像権・著作権・商標権などを侵害しないことは利用者の責任としています。規約で使えることと、権利を侵していないことは別の問題になります。

生成AIと著作権の全体像、とくに侵害かどうかを分ける類似性と依拠性の考え方や社内規程の条文例は、生成AIの著作権(侵害の2要件と社内ルール)で詳しく扱っています。ここでは動画に絞って、広告・SNS・営業資料に出す前に何をどの順で確かめるかを見ていきましょう。想定している読み手は、社員10〜200名ほどの会社で動画づくりを任された総務・広報の方と、公開の可否を決める経営者の方です。

商用利用に当たる場面|広告・SNS・自社サイト・営業資料・採用・納品

規約でいう商用利用には、有料の広告だけでなく、会社の事業のために見せる動画がほぼすべて入ると考えておくのが安全です。売上に直接つながらない自社SNSの投稿や採用ページの会社紹介も、事業のための発信として扱われることが多くなります。たとえばHeyGenの利用規約は、無料プランの出力について、販売・再配布・収益化に加えて商用活動に関連した使用もできないと定めています。広告費をかけていないから大丈夫、という判断は通らないと考えておきましょう。

社員10〜200名ほどの会社で、動画生成AIが使われやすい場面を並べると次のようになります。

  • 広告出稿(YouTube広告、SNS広告、交通広告、店頭のサイネージ)
  • 自社SNSの投稿(X・Instagram・TikTok・YouTubeチャンネル)
  • 自社サイトの製品紹介・サービス紹介の動画
  • 営業資料や提案書に埋め込む説明動画(顧客の社内で転送されることがあります)
  • 採用ページや求人媒体に載せる会社紹介動画
  • 展示会のブースで流し続けるループ映像
  • 顧問先・取引先に向けた制度解説の動画(会計事務所や社労士事務所で多い使い方です)
  • 取引先から請けた制作をAIで作って納品する場合

社外に出さない社内研修用の動画は、規約上の商用利用にあたるかどうかがツールごとに分かれる部分です。ただ、研修動画はあとから採用説明会や顧客向けセミナーに転用されやすく、その時点で社外公開になってしまいます。最初から社外に出す前提で規約を確かめれば、転用のたびに作り直す手間はかかりません。用途ごとにどこまで確認するかは、後半の判定表で整理しました。迷ったときは、社外の誰かの目に触れる可能性が少しでもあれば商用利用として扱う、という基準で考えてみてください。

無料プランと有料プランで商用可否が変わる|Kling・HeyGen・Runwayの条項

動画生成AIの多くは、無料で試せる範囲と有料で契約した範囲とで、出力を商用に使えるかどうかの条件が変わります。ただし、無料なら必ず商用不可というわけでもなく、線の引き方はツールごとに違います。規約の条項を実際に読んでみると、その違いがはっきり見えてきます。

※規約の内容は2026年9月25日時点で各社の公式ページに掲載されているものです。規約は改定されることがあるため、公開前には必ず最新版を開いて確認してください。

Kling AI|有料会員は商用利用可、非会員は書面の許可が必要

Klingの有料サービス規約(Kling AI Terms of Paid Service、2026年4月21日施行版)は、3.1.1で会員の種類としてStandard・Pro・Premier・Ultra・Team・Enterpriseを挙げています。3.1.2の会員特典には、透かしの除去と、会員による出力の商用利用は制限されないことが含まれます。例外は、Kling AIと競合する製品やサービスの開発・提供に使う場合です。

一方で7.2は、会員でない利用者は、書面の許可がない限り、生成物すべてにKling AIのブランドやロゴを表示しなければならないと定めています。利用規約の3.1(e)にも、書面の同意なく商用目的で使うことを禁じる条項があります。規約上、Klingの無料の範囲で作った動画を許可なく広告や自社SNSに使うことは認められていないと読めます。

HeyGen|無料プランの出力は商用活動に使えない

HeyGenの利用規約は、有料プランの出力を商用目的を含めて使えるとする一方、無料プランの出力は販売・再配布・収益化・商用活動に関連した使用ができず、広告やクライアントワークへの使用もできないとしています。アバターが話す説明動画を無料プランで試作し、そのまま営業資料に入れてしまうと、規約に反する使い方となってしまいます。試作は無料でも、公開用の書き出しは有料プランのアカウントで行う、と決めておきましょう。

Runway|規約でプランによる商用可否の線を引いていない

Runwayの利用規約は、出力の商用利用を制限せず、入力と出力の所有権も主張しない書き方です。公式ヘルプの「Can I use the content I made in Runway for commercial purposes?」(2025年7月30日更新)でも、作ったコンテンツは非商用の制限なく使え、所有権は利用者にあると案内されています。YouTubeやSNSに載せる際のRunwayのクレジット表記も不要と明記されており、Klingとは条件の作りがかなり違います。

一方で利用規約の4.4には、入力と出力を学習や改善に使うライセンスを利用者がRunwayに与える定めもあります。社内の映像や顧客の素材を入れる前に、次に挙げる5つの項目のうち、提供元による再利用の扱いを必ず確かめましょう。また、商用利用が許されていることは、映っている人物や音楽の権利まで問題ないという意味ではありません。無料プランでの透かしの扱いなど、プランによる細かな違いは公開前に公式ページで確かめてください。

利用規約で確かめる5つの項目

どのツールでも、規約を開いたら同じ5つの項目を順に拾うと、読み落としが減ります。

  • 商用利用の可否と、その条件になっているプラン無料・有料・法人向けで条件が分かれていないかを、条項番号と一緒に控えます。
  • 生成物の権利の帰属所有権が利用者にあるのか、提供元が使用の許諾を持つ形なのかを確認します。
  • クレジット表記・ロゴ表示・透かしの義務表示が必要な場合は、その表示を消す加工が許されているかも見ます。
  • 禁止されている使い方実在の人物のなりすまし、提供元と競合するサービスの開発など、ツールごとの禁止事項を確かめます。
  • 入力と生成物を提供元が再利用するかどうか学習やサービス改善に使われる設定か、法人向けのプランで扱いが変わるかを見ます。

確認した条項番号と、規約の施行日・確認した日付は、申請票に書き残しておきましょう。規約が改定されたときに、公開済みの動画がどの版の規約のもとで作られたかをたどれるようになります。

透かし・ロゴ表示・クレジット表記

無料プランでは、動画に提供元のロゴや透かしが入る、または表示が義務になっていることがあります。Klingの7.2はこの典型で、非会員の生成物にはブランドやロゴの表示が求められ、有料会員の特典に透かしの除去が含まれています。表示が義務になっている動画から、編集ソフトでロゴを消したりトリミングで切り落としたりすると、規約違反になりかねません。

目に見えない透かしもあります。Googleは、FlowでVeoなどにより生成した動画に、見えない電子透かしのSynthIDが付くと発表しています。見た目に透かしがないからといって、AIで作ったことが判別できないとは限らない点も覚えておいてください。

主な動画生成AIの商用利用の条件を比較(2026年9月25日時点)

主なツールの商用利用の条件を、公式ページに書かれている範囲でまとめると次のようになります。ここに挙げていない条件は、公開前に各社の最新の規約で確かめてください。

  • Kling AI:有料会員は出力の商用利用に制限なし(Kling AIと競合する製品・サービスの開発・提供を除く)で、透かしの除去も会員特典に含まれる。非会員は書面の許可がない限り、生成物にKling AIのブランド・ロゴの表示が必要(有料サービス規約3.1.2・7.2、2026年4月21日施行版)
  • HeyGen:有料プランは商用目的を含めて出力を使える。無料プランの出力は販売・再配布・収益化・商用活動に関連した使用ができず、広告やクライアントワークへの使用もできない(利用規約)
  • Runway:出力の商用利用を制限せず、入力と出力の所有権も主張しない。YouTubeやSNSでのRunwayのクレジット表記は不要。一方で、入力と出力を学習や改善に使うライセンスを利用者がRunwayに与える定めがある(利用規約4.4、公式ヘルプは2025年7月30日更新)
  • Canva:AI Product Termsを守る限り、AIで生成したものを個人・商用で使える。AIで作ったと開示するのはベストプラクティスとして勧める扱い(公式ヘルプ)
  • Google Flow(Veo):生成した動画には見えない電子透かしのSynthIDが付く(Google発表)。商用利用の条件は、契約しているGoogleのサービスの規約で確認する
  • Adobe Firefly:学習データはAdobe Stock・ライセンス済みのコンテンツ・パブリックドメインのものとAdobeは発表している。知的財産の補償(IP補償)は法人向けの一部のプランだけが対象
  • CapCut:CapCutが提供するテンプレートや音楽などの素材は、製品ごとにCapCut Materials License Agreementで条件が定められている。AI機能を商用に使えるかは、利用規約で確かめる必要がある

並べてみて分かるのは、無料なら一律に商用不可なのではなく、プランと機能ごとに条件が決まっているという点です。Adobeの学習データやIP補償の説明は同社の発表で、第三者が検証したものではありません。静止画の生成AIは画像生成AIの比較で条件を並べているので、画像と動画の両方を使う会社は合わせて見てみてください。

社員が個人アカウントの無料プランで作ってしまう問題

会社で起きやすいのは、社員が善意で、自分の個人アカウントの無料プランを使って動画を作ってしまうケースです。採用動画を急ぎで頼まれた担当者が、スマートフォンに入れた動画アプリで作り、そのまま会社のSNSに載せるといった流れはよく見られます。

この場合、規約の契約当事者は会社ではなく社員個人になります。会社からは、どのツールのどのプランで作ったのか、規約上商用利用が許されていたのかを確かめる手段がありません。商用利用を認めていない無料プランで作っていれば、中身に関係なく1段目で止まってしまいます。担当者が退職すれば、アカウントごと生成履歴やプロンプトも会社の手元から消えてしまうでしょう。

会社が把握していないところで使われるAIは、シャドーAI(野良AI)と呼ばれます。動画生成AIでは、社員の顔写真や社内の映像を素材として入れる場面も多く、何が社外に出たのかを会社が追えなくなってしまいます。

個人アカウントで作られた動画は、あとから問題を指摘されたときにも困ります。使ったプロンプトや元の素材が本人の手元にしかなければ、既存作品をまねていないことを会社として説明する材料がそろいません。その後に規約が改定されても、作った時点でどの版の規約が適用されていたかを示すのは難しいでしょう。公開した動画の数が増えるほど、どれが誰のアカウントで作られたかを後から調べ直す手間も大きくなっていきます。

対策の基本は、公開に使う動画は会社が契約したアカウントで作ることを原則にし、申請票にアカウント名・プラン・生成日を書いてもらう運用です。個人の無料プランで試すこと自体を一律に禁じると、かえって隠れて使われやすくなります。試すのは自由、公開に使うのは会社のアカウントで作ったものだけ、と線を引いて社内に伝えてみてください。

個人の無料アカウントに任せる前に、会社で使うAIを1つにまとめる

台本や説明文を書くAIも、社員の個人アカウントではなく会社の契約にそろえておきましょう。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

著作権|AIで作った動画の権利と、既存作品に似るリスク

動画生成AIと著作権の関係は、自社の動画に権利が生じるかと、他人の作品の権利を侵していないかの2つの向きに分けると整理しやすくなります。詳しい考え方は親記事に譲り、ここでは動画を公開する前に担当者が実際にやることに絞ります。

AIで作った動画に著作権は生じるか|文化庁「AIと著作権に関する考え方について」

文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年3月にまとめた「AIと著作権に関する考え方について」は、AI生成物が著作物にあたるかどうかについても検討を加えた資料です。そこでは、人がどれだけ創作的に関わったかを総合的に見て判断するとされ、表現に至らない指示だけで生成したものは著作物と認められにくいと整理されています。人が生成物に創作的な加筆・修正を加えた部分は、通常、著作物性が認められると考えられます。

権利がどこに帰属するかは、ツールの規約の定めと、社内や外注先との取り決めの両方で確かめる必要があります。所有権が利用者にあると書かれた規約でも、作ったのが外注先であれば、納品時の契約で権利の扱いを決めておかないと会社のものにはなりません。

生成物に独占権がない場合がある

著作物と認められない動画は、他社に同じような映像を使われても、権利を主張しにくくなります。同じツールに似た指示を入れれば、他社も似た映像を作れる点も頭に置いておきましょう。会社の顔として長く使う動画は、AIの生成物をそのまま使うより、人の手で仕上げる工程を多めに入れるほうが安心でしょう。

既存作品に似ていないかを公開前に確かめる

公開前の確認で見落としやすいのが、既存のアニメ・映画・キャラクターとの類似です。2026年5月には、ウテナが生成AIで制作した広告「潤い戦士モイスチャー」のYouTube動画とJR山手線駅の交通広告が既存のアニメに似ていると指摘され、謝罪して動画を削除し、交通広告も撤去したとITmedia NEWSが報じています。似ているかどうかは、作った本人より、作品を知る第三者の目のほうが気づきやすくなります。

社内でできる確認としては、担当者以外の2人以上に見てもらうこと、主要な場面の静止画を画像検索にかけること、登場人物の衣装や決めポーズ・色の組み合わせが特定の作品を思わせないかを見ること、の3つが挙げられます。親記事で説明している類似性と依拠性の考え方に照らして、少しでも迷う動画は公開を止めてください。

プロンプトに作品名・著名人名・他社ロゴを入れない

依拠性を疑われないためにまずできるのは、プロンプトに特定の作品名・キャラクター名・著名人の名前・他社のブランド名を入れないことです。よくある書き方を、避けたい例と置き換えた例で比べてみます。

  • 避けたい例:人気アニメ◯◯の主人公のような魔法少女が化粧水をかざす/置き換えた例:肌の潤いを守る架空のヒロインが、青い光の中で化粧水をかざす(衣装と色は社内で決めた設定を指定)
  • 避けたい例:俳優◯◯に似た男性が商品を紹介する/置き換えた例:30代の男性が落ち着いた声で商品を紹介する(実在の人物に似せない)
  • 避けたい例:◯◯社のロゴが入ったノートパソコンで作業する/置き換えた例:ロゴのないノートパソコンで作業する
  • 避けたい例:映画◯◯のラストシーンと同じ構図で/置き換えた例:夕暮れの海辺で、人物が振り返る構図で

指示に名前を入れていなくても、似たものが出てくることはあります。プロンプトは、似ていると言われたときに依拠していないことを説明する材料にもなるため、申請票に全文を残しておくと安心です。プロンプト履歴の保存の仕方は親記事で扱っているので、ここでは申請票に全文を残すことだけ押さえておいてください。

他社のロゴ・キャラクター・商品デザインの映り込み(商標)

動画生成AIは、実在するブランドのロゴに似たマークや、有名なキャラクターに似た人形を、背景に出してしまうことがあります。背景の看板・服のロゴ・机の上の製品・車のエンブレムなどは、1コマずつ止めて見ないと気づきにくいものでしょう。他社の商標や商品デザインと紛らわしいものが映っていれば、その場面を差し替えるか、ぼかしを入れてから公開しましょう。

BGM・効果音・ナレーションの声

音楽を生成するAIや、動画生成AIに付いた音楽の機能で作ったBGMも、既存の曲に似ていないかを確かめる対象になります。メロディや特徴的なフレーズが有名な曲やCMソングを思わせないかを、音楽に詳しい社員に聞いてみるのも1つの方法です。効果音やBGMを素材サイトから持ってくる場合は、その素材サイトの規約で商用利用と動画への組み込みが許されているかも別に確かめてください。ナレーションの声の扱いは、次の人物の節で触れます。

人物の顔と声|肖像権・パブリシティ権と社員の同意

人物が映る動画は、実在の人に似ていないか、使う本人から同意を得ているか、の2点で判断することになります。AIが作った架空の人物のつもりでも、特定の俳優やタレントに似てしまえば、その人の肖像権やパブリシティ権の問題が起こりえます。顔や姿を無断で使われない利益は肖像権として、著名人の名前や肖像が持つ客を引きつける力はパブリシティ権として、保護されることがあります。

著名人に似せた人物で客を引く広告が危ない理由(ピンク・レディー事件)

パブリシティ権の判断では、ピンク・レディー事件の最高裁判決(平成24年2月2日)がよく参照されます。この判決は、肖像などを無断で使う行為が、専ら肖像などの持つ顧客吸引力を利用する目的といえる場合にパブリシティ権の侵害になると示しました。当てはまる例として、肖像そのものを鑑賞の対象とする商品にする場合、商品の差別化のために肖像を付ける場合、肖像を商品の広告として使う場合、の3つの類型が挙げられています。なお、この事件そのものでは、侵害は否定されました。

3つ目の類型に照らすと、有名人にそっくりな人物に商品を紹介させる広告動画は避けたい使い方と考えられます。AIで作った似た顔なら本人の写真を使っていないので問題ない、と考えるのは危険でしょう。本人と見分けがつかないほど似ていれば、実在の人物を広告に使ったのと同じように受け取られるおそれがあります。判決の当てはめは事案ごとに変わるため、実在の人物を思わせる表現を使いたい場合は、公開前に弁護士に相談してください。

社員をAIアバターや声で出すときの同意書の項目

社員の顔や声を使ってAIアバターを作り、説明動画や採用動画に出てもらう使い方もあります。HeyGenは、本人のアバターを作るときに、本人が同意する様子を録画した同意動画を求める仕組みを公式ヘルプで案内しています。ツールの側の同意とは別に、会社と社員の間でも書面で同意を取っておくことが欠かせません。

  • 用途採用動画・商品説明・顧問先向けの解説など、使う目的を具体的に書きます。会社の広報全般のような広い書き方は避けます。
  • 媒体自社サイト、SNS、有料広告、営業資料、展示会など、出す場所を並べます。有料広告に使うかどうかは分けて同意を取ります。
  • 掲載期間いつからいつまで使うかを決めます。期限のない同意は、あとで行き違いが起きやすい部分です。
  • 退職後の扱い退職した時点で取り下げるのか、公開済みのものは期間の終わりまで残すのかを決めておきます。
  • 同意を撤回したときの差し替え撤回の連絡先と、差し替えまでにかかる期間の目安を書きます。
  • アバターと声のデータの保管と削除作ったアバターや複製した声を、どのアカウントで保管し、いつ削除するかを決めます。

声だけを使う場合も考え方は同じです。政府の知的財産戦略本部(事務局:内閣府)による「AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ」(2024年5月)でも、声や容姿の扱いが検討されています。実在の声優やタレントに似せたAIナレーションは、顔の場合と同じく広告には使わないほうが無難でしょう。

顔写真・ブランド素材・機密を入力するときの注意

動画生成AIに入れる顔写真・自社ロゴ・未発表の製品画像・社内の映像は、提供元のサーバーに送られ、プランによっては学習やサービス改善に使われる設定になっていることがあります。未発表の製品や取引先が映った映像は、公開前であっても社外に出た情報として扱うのが安全です。入れてよい情報と入れてはいけない情報の線引きは、AIに入力してはいけない情報を参考に、動画の素材にも当てはめてみてください。経営者の顔や声の素材は、なりすまし動画の材料にもなりえます。備え方はディープフェイク対策で扱っているので、合わせて確かめてみましょう。

掲載先のAI表示ルールと広告の表示規制|YouTube・Meta・TikTok

公開してよい動画でも、載せる先のプラットフォームがAI生成であることの表示を求めている場合があります。広告として出すなら、景品表示法の観点から見せ方を確かめることも求められます。

YouTube|本物らしく見える改変は開示が必要

YouTubeのヘルプは、実在の人物が言っていないことを言っているように見せる場合、実在の場所の映像を改変する場合、起きていない出来事を本物らしく見せる場合に、改変や合成をしたコンテンツであることの開示を求めています。明らかに非現実的な内容や、美顔フィルタ・アップスケールといった加工は開示の対象外とされます。架空の人物が商品を紹介するアニメ調の動画と、実在の社長のアバターが実際には話していない内容を話す動画とでは、扱いが変わる可能性があると考えておきましょう。

Meta(Facebook・Instagram・Threads)とTikTok

Metaは2024年2月6日に公表し2025年4月1日に更新した方針で、C2PAやIPTCといった業界の標識を検出したコンテンツにAIのラベルを付けるとしています。本物らしく見える動画や音声は、投稿する側に開示を求める形です。TikTokは2023年9月19日に、AI生成コンテンツであることを投稿者が自分で示すラベルを提供すると発表しました。

C2PAは、画像や動画がどう作られたかという来歴の情報をファイルに持たせる仕組みです。ファイルに来歴の情報が残っているかどうかに頼らず、掲載先のルールを読んで、自分からラベルを付けるようにしましょう。

実物より良く見せる映像と景品表示法(優良誤認・ステルスマーケティング)

広告に使う動画で気をつけたいのが、AIで作った商品・店舗・効果の映像が実物より良く見えてしまうことです。消費者庁は、商品やサービスの品質などを実際のものより著しく優良であると示す表示を、景品表示法の優良誤認表示として禁じています。AIで作った料理や店内、使用前後の映像が実物と違えば、この観点で問題にされるおそれがあります。

2023年10月1日からは、広告であることを隠すステルスマーケティングも景品表示法違反の対象になっています。AIで作った人物に商品の感想を語らせる動画でも、広告であることは隠さずに示しておくのが安全です。

見た目の不自然さを指摘される例もあります。画像の例ですが、JALがクレジットカードの公式サイトに載せた画像がAI生成で不自然だと指摘され、2025年8月に生成AIの使用を認めて謝罪し、差し替えたとITmedia Mobileが報じました。手や文字の崩れ、不自然な動きは会社の印象を下げてしまうため、公開前の確認項目に入れておきましょう。

法律の問題にならなくても、評判を落としてしまう例もあります。日本マクドナルドが2024年8月に公式Xへ投稿した生成AIの広告動画には、生成AIを使う必要性を疑問視する声など否定的な意見が多く寄せられたとITmedia AI+が報じています。広告に生成AIを使うこと自体への受け止め方も含めて、公開前に社外の目で見てもらうと安心です。

公開前に確かめる6つの手順と順番

公開前の確認は、項目を並べるより、誰がどの順で見て最後に誰が決めるかを決めておくほうが、漏れが少なくなります。規約で止まる動画に人物や音楽の確認をしても無駄になるため、手間の軽い順に並べています。

  • 手順1 作ったアカウントとプランを確かめる(作成者)会社が契約したアカウントか、有料か無料か、生成日はいつかを申請票に書きます。個人アカウントで作ったものは、この時点で作り直しに回します。
  • 手順2 そのプランの規約の該当条項と確認日を控える(作成者)商用可否・ロゴ表示・禁止事項の条項番号と、規約の施行日、確認した日付を書きます。
  • 手順3 人物・声・ロゴ・音楽・既存作品との類似を見る(作成者以外の2人)1コマずつ止めて背景まで見ます。実在の人物に似ていないか、社員が出ているなら同意書があるかも確認します。
  • 手順4 掲載先のAI表示ルールと広告の表示を確かめる(広報の担当者)YouTube・Meta・TikTokなどのラベルの要否と、実物より良く見せていないか、広告であることを示しているかを見ます。
  • 手順5 承認者が決裁する(部門長、広告出稿は経営者)手順1〜4の記録を見て、公開してよいかを決めます。迷うものは公開を止め、弁護士に相談します。
  • 手順6 掲載先を台帳に記録する(広報の担当者)どこに、いつ、どの版を出したかを書き、差し替えの担当者を決めます。

社員10〜200名ほどの会社であれば、作成者・確認者・承認者を1人が兼ねないよう意識するだけでも、見落としはかなり減るでしょう。作った本人だけの確認で公開まで進める形は避けましょう。

用途別に確認の重さを変える判定表

どの用途でも6つの手順は同じですが、確認の重さと承認者は用途で変えてかまいません。広告出稿と社内研修で同じ手間をかけると、運用が続かなくなってしまいます。

用途起きやすい問題足す確認承認者の目安
広告出稿(YouTube広告・SNS広告・交通広告)見る人が多く、取り下げたときの影響が大きい6つの手順すべて、景品表示法の確認、実在の人物と既存作品の類似を2人以上で確認経営者
自社SNS・自社サイト拡散されやすく、AIらしさへの批判を受けやすい6つの手順すべて、掲載先のAIラベルの要否広報の責任者
営業資料・提案書に埋め込む動画顧客の社内で転送され、差し替えが届かない規約と人物の確認、資料の版番号と送付先の記録営業部門の責任者
採用動画・求人媒体社員の出演と、退職後の扱い出演する社員の同意書、掲載期間の設定人事の責任者
社内研修(社外に出さない)あとから社外向けに転用される規約の確認と、転用するときの再申請部門長

営業資料は見落とされがちですが、PDFや動画が顧客の社内で転送されるため、公開後に差し替えても古い版が残り続けます。社外に配ったものは回収できないと考え、広告と同じくらいの重さで見ておくのが無難です。

そのまま使える社内申請票のひな形

6つの手順を回すには、作成者が1枚の申請票に記入し、確認者と承認者が同じ票に書き足していく形が扱いやすいでしょう。下の項目は、そのまま社内の表計算ソフトやフォームに写して使えます。

動画生成AI 公開前申請票(項目)

  1. 申請日/申請者/部署/申請番号
  2. 動画の名前と用途(広告・自社SNS・自社サイト・営業資料・採用・社内研修・納品)
  3. 公開する媒体と公開期間(開始日・終了予定日)
  4. 使ったツール名/アカウント名(会社が契約したもの)/プラン名/生成日
  5. 規約の確認:商用可否の条項番号/ロゴ表示・透かしの要否/規約の施行日/確認日/規約のURL
  6. プロンプトの全文(生成に使ったものすべて)と、参考にした画像・素材の出どころ
  7. 映っている人物:実在の人物に似ていないか/社員が出ている場合は同意書の番号
  8. 声・ナレーション:合成音声のツール名/実在の声に似ていないか
  9. 音楽・効果音:生成したものか素材サイトのものか/素材サイトの規約の確認日
  10. ロゴ・商標・商品デザイン:他社のものが映っていないか(確認者2名の名前)
  11. 既存作品との類似:画像検索をした日/確認者の名前
  12. 掲載先のAI表示:ラベルの要否と、付けたラベル
  13. 広告の表示:実物より良く見せていないか/広告であることを示しているか
  14. 入力した素材:顔写真・未発表の製品・取引先の映像を入れていないか
  15. 承認者の判断(公開可・修正後に可・不可)と承認日
  16. 差し替えの担当者と連絡先

申請票は動画ファイルと同じフォルダに保存し、ファイル名に同じ申請番号を付けておけば、あとで探すときに迷いません。外注先が作った動画も、発注した社員が同じ票で申請する形にそろえると、社内の記録が1つにまとまります。

公開後の掲載先台帳と差し替えの手順

公開したあとに必要になるのは、どこに出したかをすぐに引ける一覧です。権利者からの申し立て、規約の改定、出演した社員の退職、同意の撤回が起きたときに、広告・SNS・自社サイト・営業資料・展示会の映像のどこに載っているかが分からなければ、取り下げが遅れてしまいます。

  • 台帳の共通項目:申請番号、動画の名前、掲載先(URLや媒体名)、公開日、終了予定日、版番号、差し替えの担当者
  • 営業資料・提案書:送付先の会社名と送付日(転送された先までは追えないことも書き添える)
  • 展示会・店頭の映像:流した会場と期間、映像を入れている再生機器
  • 広告:出稿した媒体、配信期間、広告代理店の担当者

差し替えが必要になったときの流れも、あらかじめ決めておきましょう。担当者が台帳から掲載先を洗い出し、広告は配信を止め、SNSと自社サイトは非公開にし、営業資料は差し替え版を送り直す、という順番になります。取り下げの担当者と連絡先を台帳に書いていないと、問題が起きた日に誰も動けなくなってしまいます。台帳は申請票と同じ場所に置き、四半期に一度は終了予定日を過ぎた掲載が残っていないかを見直してください。

外注・クライアント納品のときの契約

動画制作を外注し、制作会社が動画生成AIを使う場合は、契約書か発注書でAIの使用を明示してもらうことが大切です。確認したいのは、使うツールとプラン、第三者の権利を侵害していないことの保証、問題が起きたときの責任の分担、修正や差し替えへの対応の4点になります。反対に、自社が取引先から動画制作を請けて納品する場合は、同じ4点を自社から先に示しておくと、あとの行き違いを防げます。

社内ガイドラインに動画生成AIの項目を足す

ここまでの手順を続けるには、社内の生成AIガイドラインに動画の項目を足しておくのが近道です。文章の生成AIを前提に作ったガイドラインには、人物の同意や掲載先の表示、音楽の扱いが入っていないことがよくあります。経済産業省が公開している「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」も、項目を考えるときの参考になります。総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、2026年3月31日に第1.2版が公表されています。

  • 公開に使う動画は、会社が契約したアカウントで作る
  • 公開前に申請票を出し、作成者以外の2人と承認者が確認する
  • 実在の人物・著名人・既存作品・他社のロゴに似せる指示を出さない
  • 社員を出演させるときは、用途・媒体・期間・退職後・撤回を書いた同意書を取る
  • 掲載先のAI表示ルールに従い、広告であることを隠さない
  • 公開したものは掲載先台帳に記録し、差し替えの担当者を決める

ガイドライン全体の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方にまとめているので、既存の規程に上の6行を足す形で進めてみてください。

判断に迷うときは弁護士に相談する

実在の人物や既存作品に似ているか、権利を侵していないかの最終的な判断は、社内の確認だけでは決めきれないことがあります。迷う動画は公開を急がず、申請票と動画を持って、著作権や広告表示に詳しい弁護士に相談しましょう。相談するときに申請票がそろっていれば、状況の説明にかかる時間も短くなります。

動画の台本づくりから、会社で使うAIを1つの契約にまとめる

動画の台本やプロンプト、説明文を考えるAIを社員の個人アカウントに任せると、何をどのAIで作ったかを会社がたどれなくなります。UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスで、管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理できます。UPGEAR AI上で誰がいつどのAIを使ったかも確認できます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。

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よくある質問

無料プランで作った動画も商用利用できますか?
ツールとプランによって変わります。Klingは利用規約で書面の同意のない商用目的の利用を禁じ、有料サービス規約(2026年4月21日施行版)では会員でない利用者に生成物へのKling AIのブランド・ロゴの表示を求めています。HeyGenの利用規約も、無料プランの出力は商用活動に関連した使用ができないとしています。一方で、Runwayのように規約で出力の商用利用を制限していないツールもあります。無料か有料かで決めつけず、使ったプランの規約の該当条項を公開前に確かめてください。
CapCutで作った動画は商用利用できますか?
CapCutが提供するテンプレートや音楽などの素材は、製品ごとにCapCut Materials License Agreementで条件が定められています。AI機能で作った動画を商用に使えるかどうかも、使う製品と機能の規約で確かめてから公開してください。会社のアカウントで作り、確認した日付と条項を申請票に残しておくと、あとで規約が改定されたときにもたどれます。
AIで作った動画に著作権はありますか?
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)では、人がどれだけ創作的に関わったかを総合的に見て判断するとされ、表現に至らない指示だけで生成したものは著作物と認められにくいと整理されています。人が生成物に創作的な加筆・修正を加えた部分は、通常、著作物性が認められると考えられます。著作物と認められない場合は、他社に似た映像を使われても権利を主張しにくい点に注意が必要です。
社員の顔や声を使ってAIアバターを作ってもよいですか?
本人から書面で同意を取ることが前提になります。同意書には、用途・媒体・掲載期間・退職後の扱い・同意を撤回したときの差し替えを書いておきましょう。HeyGenのように、アバターを作るときに本人の同意動画の録画を求めるツールもありますが、会社と社員の間の同意はそれとは別に必要です。
AIで作った動画だと表示する義務はありますか?
掲載先のルールで表示が必要になる場合があります。YouTubeは、実在の人物が言っていないことを言うように見せる場合や、起きていない出来事を本物らしく見せる場合に開示を求めています。MetaやTikTokにもAI生成のラベルの仕組みがあり、CanvaはAIで作ったと開示することをベストプラクティスとして勧めています。広告として出す場合は、景品表示法の観点から広告であることを隠さないことも必要です。
社員が個人アカウントで作った動画を会社のSNSに載せてもよいですか?
載せる前に、どのツールのどのプランで作ったかを確かめる必要があります。個人アカウントでは規約の契約当事者が社員本人になり、無料プランで作っていれば商用利用が認められないこともあります。退職すると生成履歴やプロンプトも会社に残らないため、公開に使う動画は会社が契約したアカウントで作り直す運用がおすすめです。

まとめ

動画生成AIで作った動画を広告・SNS・営業資料に出してよいかは、規約とプランで商用利用が許されているか、第三者の権利を侵していないか、の2段階で判断します。無料プランの扱いはツールごとに違い、Klingは無料(非会員)の範囲では書面の許可なく商用に使うことは認められていないと読め、HeyGenも無料プランの出力を商用活動に使えないとしています。

2段目では、既存作品との類似、実在の人物や社員の顔と声、他社のロゴ、音楽、掲載先のAI表示、実物より良く見せる表現を順に確かめることになります。作成者・確認者・承認者を分けて申請票に記録し、公開後は掲載先台帳で差し替えに備えてください。社員が個人アカウントの無料プランで作る状態を放っておくと、1段目の確認すらできなくなってしまいます。

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