
Geminiでのデータ分析とは、Googleの生成AI「Gemini」に売上表や経費明細などの表データを読ませ、集計や傾向の説明、グラフ作成を日本語の指示で頼む使い方です。入口は2つあり、Geminiアプリにファイルをアップロードする方法と、Googleスプレッドシートの右上にある[Gemini に相談]からサイドパネルを開いて分析する方法になります。会社の売上や経費を扱うなら、どちらの入口も個人のGoogleアカウントではなく、会社が契約した仕事用アカウント(Google Workspace)で使うようにしましょう。個人アカウントでは、入力した内容の一部を人のレビュアーが読む場合があると公式ヘルプに書かれているためです。
Geminiでデータ分析する入口は2つ|アプリとスプレッドシート
Geminiでのデータ分析は、Geminiアプリにファイルを渡す方法と、スプレッドシートのGeminiで分析する方法の2つから始められます。前者は手元のファイルを添付してそのまま質問できるのが強みで、後者はシートの上で集計やグラフを作り、結果をそのままセルに残せるのが強みとなります。扱う数字が大きくなり、基幹システムのデータを直接つなぎたい段階では、Google CloudのBigQueryでGeminiの支援を受ける3つ目の入口もあります。ただし総務・経理の日常業務であれば、まずは前の2つを使い分ければ足りるでしょう。
- Geminiアプリ(gemini.google.com):ファイルを同じ指示に最大10個まで添付して質問できます。個人のGoogleアカウントでも使えますが、会社のデータは仕事用アカウントで扱います。
- スプレッドシートのGemini:開いているシートのデータについて、分析・グラフ作成・ピボットテーブル作成などを日本語で頼めます。使えるのはBusiness Standard以上などの対象プランに限られます。
AIを使ったデータ分析の全体像、たとえばツールの比べ方や匿名化の手順、社内ルールのひな形は、AIデータ分析のやり方(社内データの渡し方と検算)にまとめています。
Geminiで分析するメリット|作業時間の短縮と壁打ち
大きな利点は、関数やピボットテーブルの組み方を知らなくても、日本語で聞けば集計の形が返ってくることです。経理の方が月次の部門別集計を作るときも、これまで手で組み替えていた表を、指示1つで下書きさせることが出来ます。どんな切り口で見ればよいか分からない段階でも、「このシートでどのような分析ができる?」と聞けば、分析の候補を挙げてもらえます。相談できる分析の担当者が社内にいない方にとって、壁打ちの相手になる点も見逃せません。
使う人にもデータの読み方の素養が要る
一方で、Geminiが出した数字や説明が妥当かどうかを判断するのは、使う人の役目になります。前年比の分母が合っているか、外れ値を除くべきか、といった判断は、元の業務を知っている方でなければ下せません。平均と中央値の違い、構成比と伸び率の違い程度は、社内で使う前に共通の知識として押さえておきましょう。Geminiは素養を持つ方の作業を速くする道具であり、素養の代わりにはならないと考えてください。
Geminiアプリにファイルをアップロードして分析する手順
Geminiアプリでの分析は、ファイルを添付してから、何を知りたいかを文章で頼む流れになります。操作はパソコンのブラウザでgemini.google.comを開くところから始まります。
画面の操作手順|ファイルの追加から送信まで
- パソコンで gemini.google.com を開き、会社の仕事用アカウントでログインします。
- 下部のテキストボックスに、分析してほしい内容を入力します。
- テキストボックスにある、ファイルを追加するためのアイコンをクリックします。
- パソコン内のファイルなら[ファイルをアップロード]、Googleドライブにあるファイルなら[ドライブから追加]をクリックします。
- 送信アイコンをクリックします。
公式ヘルプには、ファイルを正しく分析できなかったというエラーが出たら、ファイルをもう一度アップロードするよう書かれています。仕事用アカウントで[ドライブから追加]を使うには、管理者がGeminiでのアプリの使用を有効にしていることと、[アクティビティの保存]がオンでWorkspaceがGeminiアプリに接続されていることが条件となります。ボタンが出ない、接続を求められる、といったときは、後の「Excelで分析できないときの原因と対処」の節を確かめてみてください。
アップロードできる量とコンテキストウィンドウ
1回の指示に添付できるのは最大10個までで、動画以外のファイルは1つあたり100MBまでとされています。ただし上限の中に収まっていても、Geminiが一度に読める量には別の枠があり、これをコンテキストウィンドウと呼びます。個人アカウントのGeminiアプリでは、Google AIのプランがない場合は32,000トークン、AI Plusは128,000トークン、AI ProとAI Ultraは100万トークンと公式ヘルプの表に示されています。仕事用アカウントについては、Business Starterが32,000、Business StandardとPlusが100万と、Workspaceのエディション比較ページに記載があります。
100万トークンについて公式は、最大1,500ページのテキストを理解できる量だと説明しています。一方で、表計算の何行に当たるかという換算は公式に示されていません。大きすぎるファイルでは、全体のつながりや詳細が欠けた回答が返る場合があると書かれています。明細を丸ごと渡すより、分析に使う列と期間だけを切り出して渡した方が、回答の抜けを防げます。また、一定期間に分析できるファイル数にも上限があり、上限に達したら時間をおくと再び使えるようになります。
※ファイル数・容量・個人アカウントのコンテキストウィンドウは2026年9月26日時点のGemini アプリ ヘルプ、仕事用アカウントの値は2026年9月26日時点のGoogle Workspace エディション比較ページの記載です。
アップロードしたスプレッドシートからグラフを作って編集する
Geminiのウェブアプリでは、アップロードしたスプレッドシートからグラフを作成し、拡大して細部を確認できます。形を変えたいときは、グラフの下の編集アイコンを押し、グラフの種類やラベルなど変える内容を選んで[更新]を押す手順です。月次の推移は折れ線、部門別の比較は棒、というように、指示文にグラフの種類を書き添えると意図が伝わりやすくなります。チャットの回答からスプレッドシートや.xlsx、.csvなどのファイルを作ることもでき、ほとんどの形式で、パソコンに保存したりドライブへエクスポートしたりすることも出来ます。
※グラフの作成と編集は2026年9月26日時点のGemini アプリ ヘルプ、回答から作成できるファイル形式は同日時点のGemini アプリ ヘルプ「Gemini アプリを使用する」の記載です。
Googleスプレッドシートのサイドパネルで分析する手順
スプレッドシートのGeminiは、開いているシートのデータについて、関数を書かずに日本語で集計や傾向の説明を頼める機能です。公式ヘルプでは、できることとして表の作成、数式の作成、データの分析と分析情報の生成、グラフの作成が挙げられています。並べ替えやフィルタ、条件付き書式、ピボットテーブルの作成といった操作も、指示文から実行させることが出来ます。
使える契約|Business Starterと無料アカウントは対象外
スプレッドシートのGeminiを使えるのは、Workspaceでは Business Standard、Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plus で、個人向けでは Google AI Pro と Google AI Ultra になります。いちばん安いBusiness Starterはこの一覧に入っておらず、エディション比較ページでもスプレッドシートのサイドパネルとAI関数の欄は空欄になっています。無料の個人アカウントも対象外なので、画面右上に[Gemini に相談]が見当たらない場合は、まず契約の種類を確かめましょう。Business Standardの通常価格は年間プランで1ユーザー月額1,600円(税別)で、30名の会社が全員に配ると毎月48,000円(税別)となります。
※対応プランは2026年9月26日時点のGoogle ドキュメント エディタ ヘルプ「Google Workspace with Gemini を使ってみる」、料金は2026年9月20日時点のGoogle Workspace 料金ページ(年間プランの通常価格・税別)の表示です。期間限定の割引は含めていません。
[Gemini に相談]から分析を頼む操作
- Excelファイルなら、先に[ファイル]→[Google スプレッドシートとして保存]でスプレッドシート形式にします。
- パソコンでスプレッドシートを開き、右上の[Gemini に相談]アイコンをクリックします。
- サイドパネル下部のプロンプトボックスに指示を入力し、Enterキーを押します。
- 分析の過程を見たいときは[分析手順]をクリックします。
- 結果を残すときは挿入アイコンでシートに入れるか、[ドキュメントにエクスポート]で新しいGoogleドキュメントに書き出します。
公式ヘルプの例文は、「この表の傾向を特定して」「このシートでどのような分析ができる?」のような短い文です。総務・経理の表に置き換えるなら「部門別・月別の経費合計を出して、前年同月より20%以上増えた項目を挙げて」のように、集計の軸と条件を1文に入れると結果が安定します。1つのシートに表が複数あるときは、対象の表を指定した方が包括的な分析になると公式にも書かれています。複数のタブがあるファイルでは、プロンプトボックスのプルダウンで使うタブだけを選んでおけます。
ピボットテーブルも「地域別の売上合計を示すピボット テーブルを作成して」と頼むと、アクションのプレビューカードが出て、[適用]を押すと実行される仕組みです。結果が意図と違えば、「元に戻す」アイコンで取り消せます。
会話の履歴は消えるので[挿入]でシートに残す
サイドパネルの会話は、ブラウザの再読み込み、スプレッドシートを閉じて開き直す、パソコンがオフラインになる、のいずれかで失われます。公式ヘルプは、履歴を失わないように、生成された出力をスプレッドシートに挿入するよう勧めています。挿入したグラフは基になるデータと一緒に新しいタブへ追加されますが、元のデータを後から直してもグラフには反映されません。使う結果はその場で[挿入]し、元データを直したらグラフを作り直す、と手順に決めておきましょう。
AI関数 =AI() は1行ずつの分類・要約に使う
セルに「=AI()」または「=Gemini()」と入力すると、指示文と範囲を渡して、セルごとに回答を生成させることが出来ます。形は AI(プロンプト, 範囲) で、範囲は省略でき、プロンプトは引用符で囲みます。回答はテキストに限られ、スプレッドシート全体やドライブの他のファイルは参照できないため、見せたいセルは範囲で渡す必要があります。1回に生成されるのは、選択したセルのうち最初の350個までで、関数は元に戻すこともやり直すことも出来ません。仕事用アカウントでは、Business StandardとPlusで1人あたり月5,000個という上限も示されています。
向いているのは、問い合わせ内容を請求・契約・不具合などに分類する、アンケートの自由記述を1行ずつ要約するといった、行ごとに判断が要る作業です。合計や前年比のような計算は、SUMやピボットテーブルで出した方が確実でしょう。公式ヘルプも、医療・法律・金融などの分野の専門的な助言として使わないよう注意を促しています。
※AI関数の仕様は2026年9月26日時点のGoogle ドキュメント エディタ ヘルプ、月5,000個は同日時点のGoogle Workspace 管理者ヘルプ「AI の使用量上限について」の記載です。月間の上限は毎月1日(太平洋時間)にリセットされ、繰り越しはできません。
Excelで分析できないときの原因と対処
「Geminiでエクセルが分析できない」ときの原因は、公式ヘルプの記載から5つに切り分けられます。当てはまるものを上から順に確かめてみてください。
- .xlsxのまま開いている。スプレッドシートのGeminiはスプレッドシート形式で最も効果的に動くとされ、Excelファイルは[ファイル]→[Google スプレッドシートとして保存]で変換してから使います。
- 契約がBusiness Starterか、無料の個人アカウントになっている。スプレッドシートのサイドパネルとAI関数はどちらも対象外のため、Business Standard以上か、個人ならGoogle AI Pro以上の契約が必要です。
- 仕事用アカウントで、ドライブのファイルを追加できない。管理者がGeminiでのアプリの使用を有効にし、[アクティビティの保存]がオンになっている必要があります。仕事用アカウントの[アクティビティの保存]は既定でオンで、オフにできるのは管理者だけです。
- ファイルが大きすぎる。全体のつながりや詳細が欠けた回答になることがあるため、列と期間を絞って小さなファイルにします。
- AI関数は使用できませんと表示される。Workspace Experimentsに参加していないか対象プランでない、管理者設定や言語設定が原因、のいずれかが公式ヘルプに挙げられています。長期的な生成上限に達した場合は、24時間後にもう一度試すよう案内されています。
手元のExcelをすぐに見てほしいだけなら、スプレッドシートに変換せず、Geminiアプリへアップロードする方法もあります。ただし、Geminiアプリの対応ファイル形式の一覧は公式ヘルプに列挙されておらず、「ほとんどのファイル形式をサポート」という書き方にとどまります。うまく読み込めないときは、スプレッドシートに変換してからスプレッドシートのGeminiで扱う方が確かでしょう。
※原因の記載は2026年9月26日時点のGoogle ドキュメント エディタ ヘルプ(Gemini in Google スプレッドシート、AI 関数)と Gemini アプリ ヘルプによります。
個人アカウントと仕事用アカウントでは、入れた数字の扱いが違う
同じGeminiでも、個人のGoogleアカウントで使うか、会社のWorkspaceの仕事用アカウントで使うかで、入力した売上表の扱いが変わります。判断の材料になるのは、人によるレビュー、学習への利用、保存期間、誰が設定を変えられるか、の4点です。
個人アカウント|レビュアーが一部を読む場合がある
個人アカウントのGeminiアプリでは、サービス改善のため、Googleのサービスプロバイダを含む人間のレビュアーが、収集したデータの一部をレビューすることがあるとされています。公式のプライバシーハブには、レビュアーに見られたくない機密情報は入力しないよう注意書きがあります。[アクティビティの保存]をオフにすれば今後のチャットはAIモデルのトレーニングに使われなくなりますが、それでも72時間は保存されます。ただし、オフの場合でも、応答や安全を守る目的で人間のレビュアーがレビューする場合があると公式に書かれています。すでにレビューされた過去のチャットは、アクティビティを削除してもアカウントから切り離された状態で、最長3年間残るとされます。会社の売上表や顧客リストを、社員の個人アカウントのGeminiに入れさせないことが第一の線引きです。
仕事用アカウント|人のレビューも許可のない学習もない
Workspaceのプライバシーハブには、お客様のコンテンツは人間によってレビューされることも、許可なくお客様のドメイン外で生成AIモデルのトレーニングに使われることもないと書かれています。Geminiは既存のWorkspaceの権限に従うため、閲覧権限のないファイルはGeminiも表示・使用できません。一方で、仕事用アカウントのGeminiアプリでは[アクティビティの保存]が既定でオンになっており、オフにできるのは管理者だけです。会話の履歴は既定で18か月保存され、アプリ内のGeminiのプロンプトと回答の保存期間は、管理者が90日から無期限の間で設定する仕組みになります。社員が自分で[アクティビティの保存]をオフにすることはできず、保存期間は管理者が決める形です。個々の会話を社員が削除できるかどうかも、組織の設定によって変わります。
※個人アカウントの記載は2026年9月26日時点のGemini アプリのプライバシー ハブ(最終更新日2026年9月24日)、仕事用アカウントの記載は同日時点のGoogle Workspace の生成AIプライバシー ハブ(最終更新日2026年8月14日)と Gemini アプリ ヘルプによります。
フィードバックボタンに表の中身を書かない
見落としやすいのが、回答への評価ボタンです。AI関数の日本語版ヘルプにも英語のまま載っている一文には、フィードバックは人が読む可能性があるため、個人情報や機密情報を含むデータを送らないよう書かれています。仕事用アカウントであっても、「役に立たなかった」の報告欄に表の数字や顧客名を貼り付けると、人の目に触れる経路ができてしまいます。社内ルールには、フィードバックの自由記述欄に元データを書かないという1行を足しておきましょう。
機密情報・個人情報の扱いと権限管理
仕事用アカウントに切り替えても、何を入れてよいかの判断は会社側に残ります。顧客名や社員名を番号に置き換える、明細ではなく部門別・月別の合計に丸めてから渡す、といった前処理は、どの入口でも効果があります。また、Geminiは閲覧権限のあるファイルなら参照できるため、給与台帳のように見せる範囲を絞るべきファイルは、ドライブの共有設定を先に見直してください。マスキングの手順と、入れてよいデータの線引きの表は、親記事の社内データをAIに渡す前の注意点で扱っています。
社内の数字を入れるAIは、学習に使われない会社の環境にそろえておくと安心です。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
Geminiの分析プロンプトの組み立て方
分析プロンプトは、目的、見てほしい観点と手順、出力の形の3つを書き、必要なら役割を1行添えると組み立てやすくなります。短い指示でも答えは返りますが、観点が抜けると、平均だけを出して終わるような浅い回答になりがちです。
目的・観点・出力形式を指定し、役割を与える
たとえば経費明細を渡すなら、次のように4つの要素を並べます。
あなたは中小企業の経理担当者を支える分析担当です。 目的:来月の経費見直しの打ち合わせで使う、増えている経費の一覧を作りたい。 データ:添付の経費明細(2024年4月〜2026年3月。列は日付・部門・勘定科目・金額・摘要)。 手順: 1. 部門別・勘定科目別に、月ごとの合計を出す 2. 前年同月より20%以上増えた組み合わせを挙げる 3. 増えた理由として考えられることを、摘要から読み取れる範囲で書く(推測であることを明記する) 出力:表(部門・科目・今年度の合計・前年度の合計・増加率)と、3行の要約。 最後に、計算に使った行数と、空欄があった行の件数を書くこと。
役割の1行は必須ではありませんが、誰に向けた説明にするかが定まり、用語の選び方がそろいます。最後の1行で行数と空欄の件数を書かせると、後の検算がぐっと楽になります。
業務別のプロンプト例|売上推移・経費・勤怠・施策の振り返り
総務・経理の担当者がよく使う場面を4つ挙げます。
- 売上推移:月別の売上合計を折れ線グラフにして、前年同月比がマイナスの月を挙げて。季節要因と考えられるものと、それ以外を分けて説明して。
- 経費明細:勘定科目別の月平均と、平均から大きく外れた月を一覧にして。外れた月については金額の大きい明細を上位5件まで並べて。
- 勤怠:部署別に、月の残業時間の合計と1人あたりの平均を出して。個人名は出さず、部署単位で要約して。
- 施策の振り返り:キャンペーン期間と、その前後4週間で、問い合わせ件数と成約件数を比べて。期間中だけ増えたのか、終了後も続いたのかを分けて示して。
どの例も、集計の軸(月・部署・科目)と、比べる相手(前年・平均・前後の期間)を明示している点が共通しています。比べる相手を書かないとGeminiが自分で基準を選ぶため、担当者ごとに違う数字が出てしまいます。勤怠のように個人に結びつくデータは、社員番号に置き換えてから渡すようにしてください。
アンケートの自由記述の分類・ポジネガ判定・要約
顧客アンケートや社内の満足度調査の自由記述は、Geminiに任せやすい作業の1つです。1行ずつ肯定・否定・どちらでもないを判定させる作業には、スプレッドシートのAI関数が向いています。AI関数は選択したセルのうち最初の350個までしか一度に生成しないため、件数が多いときは範囲を分けて実行することになります。全体の傾向をまとめる段階では、判定済みの列を含めた表をサイドパネルに渡し、「否定的な意見を多い順に5つの話題にまとめ、代表的な記述を1つずつ引用して」と頼むと、報告書の下書きとして使える形で返ってきます。要約に引用された記述が本当に元データにあるかは、検索で1件ずつ確かめてください。
分析結果からの示唆出し・次の施策案・経営向け要約
集計が済んだら、同じ会話の中で「この結果から考えられる次の打ち手を3つ、根拠になった数字とともに挙げて」と続けると、施策案のたたき台が作れます。経営会議向けには「社長が1分で読める長さで、結論、根拠の数字、判断してほしいことの順に要約して」と、読み手と長さを指定しましょう。ここで出る示唆は、あくまでデータから言える範囲の仮説にとどまります。現場の事情を知る方が読み、採るかどうかを決める前提で使うのが安全です。
結果がぶれるときは条件を具体化して段階的に聞き直す
同じファイルに同じ指示を出しても、Geminiが選ぶ分析の手順や表の形が毎回同じとは限りません。ぶれを抑えるには、集計の単位、対象期間、除外する行(返品や社内取引など)、四捨五入の桁を指示文に書き込むのが効果的です。いきなり結論を求めず、「まず列の意味と行数を確認して」「次に月別の合計を出して」「最後に増減の理由を考えて」と段階を分けて聞くと、途中で食い違いに気づけます。途中の段階で数字がおかしいと感じたら、その段階に戻って条件を足してみましょう。
よく使うプロンプトのテンプレート化と社内展開
毎月同じ分析をするなら、うまくいった指示文を部署のテンプレートとして共有すると、担当者が替わっても同じ形の結果が出やすくなります。Geminiには繰り返しの作業のための指示を保存しておけるGemという機能があり、作成したGemはスプレッドシートのサイドパネルからも呼び出せます。ただし、Gemにアップロードしたファイルと指示は、Gemを共有されたすべての人が閲覧できる点に注意が必要です。社内研修では、テンプレートの使い方と一緒に、入れてよいデータと検算の手順をセットで伝えるようにしてください。
分析前のデータ整備と、前処理をGeminiに手伝わせる方法
Geminiに渡す前に表の形を整えると、集計の誤りを減らせます。見るべき点は、1行目が列名だけになっているか、日付の書き方がそろっているか、金額の列に「円」や全角数字が混ざっていないか、空欄と0が区別されているか、同じ取引先の表記ゆれがないか、の5つです。整理そのものをGeminiに頼むこともでき、サイドパネルでは検索と置換、数値の形式の設定、並べ替えやフィルタを指示文で実行させられます。たとえば「取引先名の列で、株式会社の有無や全角・半角の違いで同じ会社が別名になっているものを一覧にして」と頼めば、表記ゆれの候補を洗い出せます。
欠損値をGeminiに補完させない
注意したいのは、空欄を推測で埋める処理です。前処理や欠損値の補完をGeminiに任せるよう勧める解説もありますが、ノーコード自動化サービスの会社が公開した検証記事(2026年5月)には、Geminiが空白を独自に推測して埋め、実際のデータとずれた値になったため、手作業で直したと書かれています。経理のデータで金額の欠損を平均値などで埋められると、合計そのものが実際と違ってしまいます。指示文には、補完を禁じて件数の報告だけを求める文を必ず入れておきましょう。
欠損値(空欄のセル)は、補完や推測で埋めないでください。 空欄を含む行は集計から除外し、除外した行の件数と、どの列が空欄だったかを最後に報告してください。 0と空欄は区別し、0は金額0円として集計してください。
除外された件数が多ければ、分析の前に元のシステムからデータを取り直す判断ができます。
Geminiの分析結果を検算する|誤集計を見抜く確かめ方
Geminiの分析結果は誤ることがあるため、数字を報告に使う前に、元データと突き合わせる確認が欠かせません。Geminiアプリのヘルプにも、Geminiは間違えることがあるので回答を再確認するよう書かれています。スプレッドシートのGeminiには、計算の過程を見るための画面が用意されている点が助けになります。
[分析手順]と「コードを表示」で計算の中身を見る
データ分析の回答では、[分析手順]をクリックすると、Geminiがどの順で処理したかを確認できます。グラフの回答には「分析ステップ」アイコン、回答の操作一覧には出力の生成に使われたコードを表示する「コードを表示」があります。コードが読めなくても、絞り込みの条件や合計した列の名前は拾えるので、対象期間や除外条件が指示どおりかを確かめてみてください。不安な箇所は、そのまま「このコードで2025年3月の行は含まれていますか」とGeminiに聞き返す方法も使えます。
元データの行数と合計を出し直して突き合わせる
Geminiが示した合計や件数は、スプレッドシートの関数で出し直して一致を確かめます。報告に使う数字は、SUMやピボットテーブルで出し直した値と一致したものだけにしましょう。
- 行数が合っているかCOUNTAで元データの行数を数え、Geminiが計算に使った行数と比べます。空欄で除外された行があれば、その件数も一致するかを見ます。
- 合計がSUMやピボットテーブルと一致するかGeminiが出した部門別の合計を足し上げ、元データの金額列をSUMした値と比べます。1円でもずれたら、除外条件か重複を疑います。
- 前年比・構成比の分母は正しいか前年比なら前年同月、構成比なら全体の合計が分母になっているかを確かめます。分母が部門の合計にすり替わった計算は、見た目では気づきにくい誤りです。
- 欠損をどう扱ったか空欄の行をどう扱ったか説明してもらい、推測で埋めていないかを確かめます。
- 引用した数字や記述が元データにあるか要約に出てきた金額や自由記述の文を、検索で元の表から1件ずつ探します。
検算の考え方をまとめた全体のチェックリストは、親記事の計算結果の検算チェックリストにあります。Gemini固有の確認は、上の5点と[分析手順]の画面で足りるでしょう。
分析結果をドキュメント・Canvas・スライドにまとめる
分析が済んだら、結果を報告の形に整える作業もGeminiに任せられます。スプレッドシートのサイドパネルでは、回答を[ドキュメントにエクスポート]で新しいGoogleドキュメントに書き出せます。Geminiアプリでは、Canvasを使うとドキュメントやスライドを作って直接編集でき、作ったものを[Google ドキュメントにエクスポート]で書き出すことも出来ます。Canvasを開くには、テキストボックスのファイルを追加するアイコンから[Canvas]を選び、「この分析結果をもとに、経営会議用のスライドを5枚で作成して」のように頼みます。
仕事用アカウントのスプレッドシートでも、Gemini に相談して表やキャンバスを作成できると公式ヘルプに書かれており、Business StandardとPlusのキャンバス作成の上限は、2026年9月26日時点で1人あたり月60本です。Workspaceの上限は変わることがあるので、使い始める前に管理者ヘルプで最新の値を確かめてください。
定常のレポートはBIツール、大量データはBigQueryと使い分ける
Geminiは、その場で問いを立てて答えを探す分析に向いており、毎週同じ形で見続けるダッシュボードの代わりにはなりにくい道具です。グラフの色や軸の細かな体裁を整える作業は、会話で指示するより、手で直した方が早い場面も多くあります。
グラフの見た目の調整には限界があり、定常のダッシュボードはLooker Studioなどと使い分ける
スプレッドシートのGeminiで作ったグラフは、元データが変わっても自動では更新されません。毎月の売上を同じ形で役員に見せ続けるなら、データを更新すれば図も変わるBIツール(Looker Studioなど)でダッシュボードを作り、Geminiは異常な動きの理由を探るときに使う、という分担が現実的です。Geminiで作った集計の形が気に入ったら、それを設計のたたき台にしてダッシュボードへ移す流れも取れます。
大量データはBigQuery(Gemini in BigQuery)でSQLを生成して扱う
基幹システムから取り出した大量の明細のように、ファイルに収まらない量を扱うなら、Google CloudのBigQueryでGeminiの支援機能を使う方法があります。Google Cloudの公式ドキュメントでは、Geminiの支援でSQLの説明や生成を受け、BigQuery MLで売上を予測するチュートリアルが公開されています。ただし、SQLの読み書きとGoogle Cloudの契約・費用管理が前提になるため、総務・経理の担当者だけで始めるより、情シスや外部の支援と組む段階の選択肢になります。
会社で使わせる前に、情シス・総務が決めること
社員が個人アカウントのGeminiに売上表を入れてしまう事態を防ぐには、禁止の通知より先に、会社として使ってよい環境を配ることが近道です。そのうえで、どのデータをどの入口で扱うかを決め、管理画面で利用状況を追えるようにしましょう。
データの機密度と入口を対応させる
始める順番は、機密度の低いものから3段に分けると決めやすくなります。
- 社外秘でない集計値(部門別の月次合計、公開済みの決算の数字など)。仕事用アカウントのGeminiアプリとスプレッドシートのGeminiで扱い、最初に試すのはこの段にします。
- 顧客名・社員名を番号に置き換えた明細。仕事用アカウントのスプレッドシートのGeminiで扱い、番号と名前の対応表はGeminiに渡しません。
- 給与、マイナンバー、顧問先や取引先から預かったデータ。Geminiには入れず、扱いは会社のルールと取引先との契約を確かめてから別に決めます。
個人アカウントのGeminiは、どの段のデータにも使わないと決めておくのが分かりやすいでしょう。入れてよいかを迷ったデータは、一つ上の段として扱うと決めておくと判断がぶれません。段ごとの線引きの表は親記事にもあるので、社内ルールを作るときに合わせて参照してください。
管理コンソールで決めておく設定
Workspaceの管理者は、管理コンソールの[生成 AI]→[Gemini アプリ]で、組織全体や組織部門ごとにGeminiアプリをオン・オフできます。同じ画面の[アプリ]では、GeminiアプリからGmailやドライブなどのWorkspaceアプリへのアクセスを許可するかを設定でき、変更の反映には最長で24時間ほどかかることがあります。一方、Gmailやドキュメントなどのアプリごとに Gemini をオン・オフする設定は、Enterprise Standard・Enterprise Plusなどが対象で、Businessエディションは対象に入っていません。利用状況は[生成 AI]→[Gemini レポート]で確かめられ、過去7日・28日・90日のアクティブユーザー数や、アプリごとの使用状況を見られます。
※管理コンソールの項目名と対応エディションは、2026年9月26日時点のGoogle Workspace 管理者ヘルプの記載です。
複数のAIを使い分ける環境も選択肢に入れる
データ分析では、Geminiのほかに、ChatGPTやClaudeのファイル分析を使いたい場面も出てきます。部署ごとに別々のAIを個人契約で使い始めると、学習させない設定や利用ログの確認がサービスの数だけ分かれ、情シスの手が回らなくなってしまいます。AIごとの得意分野は主要4AIの違いと使い分けで、会社の目が届かない利用が生まれる経路は野良AI(シャドーAI)の記事で扱っています。社内ルールの作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方を参考に、分析に使うデータの扱いを1節加えてみてください。
社内データを扱うAIは、学習に使わせない会社の環境で
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けサービスです。全モデルで学習非利用を標準適用し、管理画面では誰が・いつ・どのAIを使ったかを一覧で確かめられます。会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
Geminiのデータ分析は無料でできますか?
GeminiでCSVファイルは読み込めますか?
ExcelファイルのままGeminiで分析できますか?
Geminiに会社のデータを学習させない方法はありますか?
Geminiの分析結果はそのまま報告に使えますか?
データ分析に向いているAIはGeminiですか?
まとめ
Geminiでのデータ分析は、Geminiアプリにファイルを渡す方法と、スプレッドシートの[Gemini に相談]から分析する方法の2つが入口です。Excelで動かないときは、スプレッドシート形式への変換、契約がBusiness Standard以上か、管理者の設定、ファイルの大きさの順に確かめると原因にたどり着けます。
数字を報告に使う前には、[分析手順]や「コードを表示」で計算の中身を見たうえで、SUMやピボットテーブルで出し直した値と突き合わせましょう。会社の売上表や顧客リストは、個人アカウントではなく、学習に使われない仕事用アカウントか会社の公認環境だけで扱うと決めることが、安心して使い続けるための土台になります。法人のAI活用に関する他の記事は、AI活用コラム一覧をご覧ください。
