
Geminiに学習させない設定とは、入力した会話がGoogleのAIモデルの改良や人間のレビューに使われないようにするための設定のことです。個人のGoogleアカウントでは社員が各自で[アクティビティの保存]をオフにする必要があり、オフにしても会話は72時間保持され、オフにする前にレビューされた分は最長3年残ってしまいます。一方、Google Workspaceのコアサービス対象エディションとGemini Enterpriseは、許可なく入力が生成AIモデルの学習に使われることはないため、社員にスイッチを押させる必要はありません。会社がやるべきことは、社員に個人アカウントで仕事をさせない仕組みづくりになります。
結論|個人は各自でオフ、会社契約は個人アカウントで仕事をさせない
Geminiの入力が学習に使われるかどうかは、どのアカウントで使っているかで決まり、設定の手順もそこで分かれます。個人のGoogleアカウントは本人の設定次第で、Google Workspaceのコアサービス対象エディションとGemini Enterpriseは、契約の段階で学習に使われない扱いとなります。
社員10〜200名ほどの会社で困りやすいのは、会社でWorkspaceを契約していても、社員が私物のGmailアカウントのままGeminiを開いてしまう場面です。この場合は会社の契約の守りが届かず、個人アカウントの扱いがそのまま当てはまってしまいます。情報漏洩のリスク全体はGeminiの情報漏洩リスクの全体像で、プランごとの違いと料金はGemini個人版と法人版の違いでまとめています。ここから先は、学習させない設定の手順と、社内で徹底する方法だけを扱います。
アカウントの区分ごとの判断表(誰が・どの画面で・何を押すか)
まずは、自社の社員がどの行に当てはまるかを確かめてみてください。
| 区分 | 誰が | どの画面で何を押すか | 入力が学習に使われるか | 保持期間 |
|---|---|---|---|---|
| 個人のGoogleアカウント(無料、Google AI Plus/Pro/Ultra) | 社員本人 | gemini.google.com →[設定とヘルプ]→[アクティビティ]→上部の[オン]→[オフにする]または[オフにしてアクティビティを削除] | オン(18歳以上は既定でオン)なら改良に使われ、人間のレビューもある。オフにした後のチャットは使われない(フィードバックを送った場合を除く) | オン:既定18か月で自動削除(3か月・36か月・自動削除しない、も選べる)。オフ:72時間。レビュー済み:最長3年 |
| Workspace(追加サービス扱い:Business Base、Essentials Starter、Workspace Individual など) | 使わせるかどうかは管理者 | 管理コンソール[生成 AI]>[Gemini アプリ]>[サービスのステータス] | 個人と同じ規約。[Gemini アプリ アクティビティ]がオンなら改善と開発に使われ、人間のレビューもありうる | Google 利用規約と Gemini アプリのプライバシーに関するお知らせに従う |
| Workspace(コアサービス:Business Starter/Standard/Plus、Enterprise の各エディションなど) | 管理者 | [サービスのステータス]で使える人を、[Gemini 会話履歴]と[会話の保持]で履歴の長さを決める。社員が押す学習のスイッチはない | 許可なくドメイン外で使われることはない。人間のレビューもない(会話履歴のオン・オフに関係なく同じ) | 3・18・36か月から選ぶ(既定18か月)。履歴オフでも最長72時間ほど |
| Gemini Enterprise(Business・Standard・Plus) | 契約した会社の管理者 | 社員が押す学習のスイッチはない | 使われないと案内されている(Googleのモデルにも、他のお客様のモデルにも) | 削除をリクエストしたデータは60日以内に削除 |
※2026年10月15日時点で、Googleの公式ヘルプ(Gemini アプリ プライバシー ハブ、Gemini アプリのアクティビティを管理・削除するページ、Google Workspace 管理者ヘルプ)と、Google Cloud の Gemini Enterprise よくある質問を確認した内容です。Gemini Enterprise の60日以内の削除は、2026年9月18日に同社のセキュリティの概要ページで確認しています。画面の名前や区分は変わることがあるため、設定の前に公式ページをご確認ください。
表のとおり、社員が自分でスイッチを押す必要があるのは個人アカウントの行だけです。Workspaceのコアサービスの行とGemini Enterpriseの行では、学習に使わない扱いが規約で決まっているので、会社の仕事は社員に個人アカウントで仕事をさせないことに移ってきます。追加サービス扱いのWorkspaceは、アカウントに会社のドメインが入っていても個人と同じ扱いになる点に注意が要ります。
個人アカウントでGeminiに学習させない設定の手順
個人のGoogleアカウントでは、[アクティビティの保存]をオフにすることが、学習させない設定にあたります。公式ヘルプには18歳以上のユーザーはこの設定がデフォルトでオンと書かれていて、何もしなければ会話は改良とレビューの対象に入ってしまいます。有料の Google AI Plus・Pro・Ultra を契約していても個人アカウントであることは変わらず、同じ設定で管理することになります。
パソコン(gemini.google.com)でアクティビティをオフにする手順
公式ヘルプが案内している手順は、次の3つです。
- パソコンで gemini.google.com を開き、仕事に使っている個人アカウントでログインします。
- [設定とヘルプ]→[アクティビティ]をクリックします。
- 画面上部の[オン]をクリックし、[オフにする]または[オフにしてアクティビティを削除]を選びます。
同じアクティビティの画面は、myactivity.google.com/product/gemini からも開くことが出来ます。Gemini アプリの設定を変えても、ウェブとアプリのアクティビティなど、Google の他の設定は変わらない点も覚えておきましょう。
[オフにする]と[オフにしてアクティビティを削除]の選び方
これまでの会話を手元に残したい方は[オフにする]、今までの記録も消したい方は[オフにしてアクティビティを削除]を選ぶことになります。仕事の情報をすでに入れてしまった方なら、後者を選んで削除の範囲を全期間にするほうが安心でしょう。
ただし、サービス プロバイダがすでに確認した過去のチャットは、削除しても最長3年間は消えません。こうしたチャットはGoogleアカウントから切り離された状態で保存されているためで、オフにしても過去にさかのぼって取り消すことは出来ないのです。共有したチャットの公開リンクも、チャットを消しただけでは削除されない仕組みとなっています。
スマホ(iPhone・Android)のGeminiアプリで設定するとき
スマホでも、ブラウザで myactivity.google.com/product/gemini を開けば、Gemini アプリ アクティビティの画面にたどり着けます。アプリの中から操作する手順は、公式ヘルプの同じページで表示を Android や iPhone と iPad に切り替えると案内されます。画面の名前はアプリの版によって変わることもあるので、社内マニュアルに載せるときは配る直前に実機で確かめてみてください。
会社のWorkspaceアカウントでスマホのアプリを使う場合は、後で触れる管理コンソールの[サービスのステータス]が、Android と iOS の Gemini モバイルアプリへのアクセスもまとめて管理しています。コアサービスのエディションであれば、社員が手元のアプリで学習の設定を探す必要はなく、管理者の側で決まる形です。
オフにしても残るもの|72時間の保持と人間のレビュアー
[アクティビティの保存]をオフにしても、会話がその場で消えるわけではありません。オフの状態にも残る扱いが3つあり、ここを知らないまま「オフにしたから大丈夫」と考えてしまうと、社内の説明がずれてしまいます。
オフにしても会話は最長72時間アカウントに保持される
公式ヘルプでは、オフにしている間の会話も最長で72時間はアカウントに保存されると案内されています。この期間は、Googleがサービスを提供し、フィードバックを処理するために設けられたもので、Gemini アプリ アクティビティの一覧には表示されません。一時チャットも同じく72時間保持されますが、AIモデルのトレーニングには使われない扱いになります。
人間のレビュアーが会話を確認する場合がある
オンのままの会話は、Googleのサービス改良のために、人間のレビュアー(トレーニングを受けたサービス プロバイダを含む)が一部を確認する場合があります。チャットはレビュアーに送られる前にアカウントから切り離され、レビューされた会話は最大3年間保持されます。
気を付けたいのは、オフの状態や一時チャットでも、ユーザーへの応答や、Google・ユーザー・一般の人々を守る目的で、人間のレビュアーによるレビューを含めてチャットが使われる点です。プライバシー ハブ自身も、レビュアーに見られたくない機密情報は入力しないよう呼びかけています。
フィードバックを送った会話は、オフでもレビューの対象になる
Geminiの回答にフィードバックを送ると、関連するデータは特別にトレーニングを受けたチームがレビューし、Googleアカウントとは切り離された形で最長3年間保存されます。[アクティビティの保存]がオフでも、フィードバックを送った会話は例外になるため、業務の内容が書かれた会話ではフィードバックを送らないよう、社員にも伝えておきましょう。
個人アカウントのまま仕事に使っているかぎり、オフにする前の会話は学習とレビューの対象に入り、オフにした後も72時間の保持とフィードバックの例外が残ってしまいます。社員一人ひとりのスイッチに頼るやり方では、押し忘れた方の分まで会社が把握するのは難しいでしょう。
社員ごとのスイッチに頼らず、会社が契約した1つの環境で使ってもらうほうが、管理の目が届きやすくなります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
履歴の手動削除と自動削除(3か月・18か月・36か月)
アクティビティをオンのまま使う方は、自動削除の期間を短くすれば、手元に残る履歴を減らすことが出来ます。公式ヘルプによると、Gemini アプリ アクティビティはデフォルトでは18か月を過ぎると自動で削除され、期間は3か月か36か月に変えられるほか、自動削除をしない設定も選べます。
自動削除の期間を変える手順
- gemini.google.com で[設定とヘルプ]→[アクティビティ]をクリックします。
- 上部の[… か月以上経過したアクティビティを削除します]または[自動削除オプションを選択します]をクリックします。
- [3 か月][18 か月][36 か月]のどれか、または[アクティビティを自動削除しない]を選び、[次へ]から画面の案内に沿って進めます。
仕事にも使ってしまった個人アカウントであれば、いちばん短い3か月を選ぶのが無難です。過去の会話を見返す必要が少ない方ほど、短い期間で困る場面は少なくなります。
手動で削除する範囲の選び方
手動の削除では、[削除]から[全期間][1 時間以内][過去 1 日間][指定の期間]を選べるほか、日付ごと、会話ごとに消すことも出来ます。削除を選ぶと画面からはすぐに見えなくなり、その後にGoogleのストレージから消していく処理が始まる流れとなります。
Gem との会話を消しても Gem そのものは残り、Gemini Live の会話を消すと、関係する音声や文字起こし、画面共有も一緒に削除されます。業務の情報を入れた心当たりが特定の日だけであれば、日付ごとの削除で範囲を絞ってみてください。
オフにするデメリット|過去の履歴が見られず、アプリ連携も使えない
オフにしたときの不便は、過去の会話が一覧に残らないことと、Google Workspace などのアプリ連携が使えなくなることの2つが中心です。プライバシー ハブには、現時点では Google Workspace など他のアプリとの連携は[アクティビティの保存]がオフの状態では利用できないと書かれています。オフのときに使えるアプリは、デバイス アシスト、Gemini Notebook、メッセージ、電話、WhatsApp に限られます。
作成した Gem はオフでもアカウントに保存されますが、Gem を使って作ったチャットは保存されません。メールや文書をGeminiに読ませる使い方が多い方ほど、オフにしたときの不便は大きくなってしまいます。
一時チャットを使えば、その会話は人間のレビュアーが目を通してGoogle AIの改善に使う流れには回りません。とはいえ一時チャットも72時間は保持されるので、機密情報を入れてよい場所にはならないのです。
会社の立場で見ると、オフにすれば便利な連携が使えず、オンにすれば学習とレビューの対象になるという板挟みが、個人アカウントには残ってしまいます。Workspaceのコアサービスであれば、会話履歴をオンにして連携を使っても学習には使われないため、この板挟みが起きない点が大きな違いとなります。
アクティビティの設定が見つからない・オフにできないとき
設定が見つからないときは、まず、どのアカウントでログインしているかを確かめてみてください。公式ヘルプでは、アクティビティを管理するには Gemini アプリへのログインが必要とされています。そのうえで、このページの設定は個人用アカウントが対象で、仕事用や学校用のアカウントでは Google Workspace の管理者が管理する決まりです。
会社のアカウントではデータ保持の設定を変えられなかったり、保持期間が確認できなかったりする場合もあるため、個人の画面と違って見えても故障ではありません。Workspaceの[Gemini との会話履歴]の設定に触れられるのは管理者だけで、社員の側からは変えられない仕組みになっています。社員から「オフにできない」と相談を受けたら、個人アカウントか会社のアカウントかを一緒に確かめましょう。
会社のアカウントだと分かった場合は、社員が何かを押す必要はなく、管理者の側でエディションと設定を確認すれば済む話となります。反対に個人アカウントだった場合は、その社員が仕事に個人アカウントを使っていたこと自体を見直すきっかけにしてみてください。
Google Workspace(コアサービス)は入力が学習に使われない|社員に押させるスイッチはない
コアサービスの対象エディションでGeminiを使っている場合、社員が何かを押さなくても、入力が生成AIモデルの学習に使われることはありません。管理者ヘルプには、対象エディションのユーザーのコンテンツは、人間によってレビューされることも、許可なくユーザーのドメイン外で生成 AI モデルのトレーニングに使用されることもないと書かれています。Workspace の生成 AI プライバシー ハブにも、ユーザーのプロンプトは顧客データと見なされ、事前の許可や指示なしにモデルのトレーニングに使われないとの説明があります。
コアサービスのエディションと、追加サービス扱いのエディション
注意したいのは、Workspaceならどれでも同じ扱いになるわけではない点です。管理者ヘルプで、コアサービスとして挙げられているのは次のエディションになります。
- Business Starter、Business Standard、Business Plus
- Enterprise Starter、Enterprise Standard、Enterprise Plus
- Essentials、Enterprise Essentials、Enterprise Essentials Plus
- Frontline Starter、Frontline Standard、Frontline Plus
- Nonprofits
一方、Business Base、Essentials Starter、Workspace Individual、G Suite、Cloud Identity、Chrome Enterprise、Android Enterprise でGeminiアプリを使う場合は追加サービスの扱いとなり、Google 利用規約と Gemini アプリのプライバシーに関するお知らせが適用されます。この場合のチャットは人間のレビュアーに確認され、Googleのプロダクトや機械学習技術の改良に使われる場合があり、扱いは個人アカウントと変わりません。会社のアカウントでも、追加サービス扱いなら個人と同じ規約になってしまいます。自社がどのエディションを契約しているかは、Workspaceの管理者に一度確かめてみてください。
よくある誤解|会話履歴をオフにすれば学習が止まる、ではない
Workspaceの管理コンソールにある[Gemini 会話履歴]は、学習のスイッチではありません。管理者ヘルプには、会話履歴がオンでもオフでも、チャットは Google Workspace 利用規約に書かれているとおりに使われると明記されています。コアサービスのエディションなら、履歴を残しても学習には使われず、履歴を切っても扱いは同じという整理になります。
会話履歴をオフにすると、社員は以前の会話を開けなくなり、Workspace アプリとの連携機能もGeminiから使えなくなってしまいます。学習を止めるつもりで履歴を切っても守りは増えず、不便だけが増えるので気を付けましょう。
もう1つ見かける誤解が、会社のアカウントなら必ず守られるという思い込みです。前の項目のとおり、追加サービス扱いのエディションは個人と同じ扱いで、[Gemini アプリ アクティビティ]がオンのときは会話が改善と開発に使われます。
仕事用アカウントで使えているかを確かめる方法
利用者向けのヘルプでは、仕事用アカウントで gemini.google.com にログインし、上部に Pro、Expanded、Ultra のバッジが出ているかを見る方法が案内されています。ただ、このバッジは使える機能とモデルの範囲を示すもので、表示がなければ標準の機能とモデルという意味になります。データが守られているかどうかは、バッジではなく、契約しているエディションがコアサービスの対象かどうかで判断してみてください。
管理コンソールで管理者が一括で決めること
管理者が決めるのは学習のオン・オフではなく、誰にGeminiアプリを使わせるかと、会話履歴をどれだけ残すかの2つです。どちらも Google 管理コンソールの[生成 AI]>[Gemini アプリ]の中にまとまっていて、操作には Gemini の「設定」管理者権限が要ります。
[サービスのステータス]で使える人を決める
- Google 管理コンソールで、メニューから[生成 AI]→[Gemini アプリ]に移動します。
- [サービスのステータス]をクリックします。
- [オン(すべてのユーザー)]か[オフ(すべてのユーザー)]を選び、[保存]をクリックします。部署ごとに分けたいときは、横の[組織部門]や[グループ]を選んでから設定します。
変更が反映されるまでには、最長で24時間ほどかかることがあります。この設定は gemini.google.com、Gemini モバイルアプリ、Gemini in Chrome へのアクセスをまとめて管理するもので、Workspace の他のAI機能には影響しません。
[Gemini 会話履歴]と[会話の保持]の決め方
- [生成 AI]→[Gemini アプリ]→[Gemini 会話履歴]をクリックします。
- [Gemini との会話履歴を有効にする]のチェックボックスで、履歴のオン・オフを切り替えます。
- オンにする場合は、[会話の保持]で 3 か月・18 か月・36 か月のいずれかを選び、[保存]をクリックします。
既定は18か月で、最短の保持期間は3か月です。反映には最長72時間ほどかかることがあり、新しく作ったユーザーでは、作成から72時間以内の会話が履歴に残らない場合もあります。ここは学習ではなく履歴を残す長さを決める場所なので、社内で過去の会話を見返したいかどうかで選んでかまいません。
アクセス制御で、使える人とアカウントを絞る
組織部門やグループ単位で[サービスのステータス]を分ければ、まずは一部の部署だけで使い始めるといった進め方も出来ます。社員が会社のアカウントを離れて私物のアカウントに切り替えるのを止める方法は、後の節で扱います。入力内容を見張るDLP(情報漏洩防止)や二要素認証の設定はここでは取り上げないため、Workspace の管理者ヘルプで確かめてみてください。
Gemini Enterpriseはデータがモデルのトレーニングに使われない
Google Cloud が提供する Gemini Enterprise でも、社員に学習のスイッチを押させる必要はありません。Gemini Enterprise のよくある質問には、データを所有するのはお客様でありGoogleではないこと、プロンプトや出力などのデータがGoogleのモデルや他のお客様のモデルのトレーニングに使われないことが書かれています。この説明は、Business・Standard・Plus の各エディションが対象となります。
ユーザーから削除をリクエストされたデータは、60日以内に削除されると案内されています。Workspaceと並べて使う会社では、Gemini Enterprise の契約と管理を誰が受け持つのかも、社内で決めておきましょう。
ここでも残る穴は同じで、社員が会社の Gemini Enterprise ではなく個人アカウントの Gemini を開けば、会社の契約の守りは届きません。どの契約を選んでも、最後に効いてくるのは個人アカウントで仕事をさせない仕組みになります。
個人アカウントでのログインを会社のChromeとネットワークで止める
会社の契約で守れるのは会社のアカウントで使った分だけなので、仕上げは個人アカウントでのログインを技術的に止めることになります。Google Workspace には、そのための公式の方法が2つ用意されています。
社員が個人アカウントで仕事をするリスク(シャドーAI)
会社が把握していないAIの使い方は、シャドーAI(野良AI)と呼ばれます。私物のGmailアカウントでGeminiに議事録や顧客の資料を貼り付けると、その会話は個人アカウントの規約で扱われ、アクティビティがオンなら学習とレビューの対象に入ってしまいます。しかも会社からはその記録が見えず、本人が削除するまで(自動削除の設定によっては期限なく)アカウントに残ることになります。見つけ方や対策の全体は、シャドーAI(野良AI)の対策のページで確かめることが出来ます。
Chromeの設定で会社のドメインだけにログインを絞る
Google Workspace の管理者ヘルプ「一般ユーザー向けアカウントからのサービス利用を防ぐ」では、指定したアカウント以外で Google Workspace サービスにログインできないようにする方法が案内されています。たとえば企業ネットワーク内で、個人用の Gmail アカウントを使わせないようにすることが出来ます。
- 管理コンソールで[デバイス]→[Chrome]→[設定]に移動します(モバイル デバイス管理の管理者権限が必要です)。
- 部署ごとに分けたいときは、横で組織部門を選びます。
- [ユーザー エクスペリエンス]→[予備のアカウントにログインする]に移動します。
- [ユーザーに以下の Google Workspace ドメインへのログインのみを許可する]を選び、組織のドメインを入力して[保存]をクリックします。
設定は通常数分で有効になり、全員に適用されるまでには1時間ほどかかる場合があります。個人アカウントで入ろうとした社員には、「このネットワーク内では、このアカウントではログインできません」というエラーが表示されることもあると案内されています。
この手順の見出しには「ChromeOS デバイスで利用できます」と書き添えてあります。WindowsやMacで管理しているChromeにどこまで効くかは、自社の環境で試してから全社に広げるのが確実でしょう。同じページでは、シークレット モードを無効にする設定も次の手順として紹介されているので、合わせて検討してみてください。
ウェブ プロキシで会社のネットワークから止める
社内のネットワークを通る通信でまとめて止める方法もあり、こちらは *.google.com 宛ての通信にヘッダーを追加でき、SSL インターセプト機能を持つウェブ プロキシ サーバーが必要になります。ヘルプには Barracuda Networks、Broadcom、Forcepoint の手順が載っています。Google 検索や YouTube のようにログインが要らないサービスは、この方法では止まりません。機器の設定が絡むため、ネットワークを任せている業者と相談しながら進めるのが現実的でしょう。
どちらの方法も、会社が管理している端末とネットワークの中での話です。私物のスマホから使われる分までは止められないため、次の節からのルールと教育で補っていくことになります。
設定をしても、機密情報と個人情報は入力しない
どの区分のアカウントでも、設定は学習とレビューへの使われ方を変えるもので、入力した情報がGoogleに送られなくなるわけではありません。個人アカウントでは、オフにしても72時間の保持と、保護を目的とした人間のレビューが残ります。プライバシー ハブ自身が、レビュアーに見られたくない機密情報は入力しないよう呼びかけているほどです。
Workspace の管理者ヘルプも、追加サービス扱いのユーザーには、機密情報やプライベートな情報を入力しないよう注意を促すことを管理者に勧めています。社内では、少なくとも次のような情報は入れない決まりにしておきましょう。
- 顧客の氏名・住所・電話番号などの個人情報
- 取引先との契約内容や見積もりの金額
- 社外に出していない売上や人事の情報
- パスワードやログインの情報
迷ったときは、社外の人に見せてよい内容かどうかで判断してもらうのが分かりやすいでしょう。会社のアカウントで学習に使われない環境であっても、線引きをアカウントごとに変えないほうが、社員も迷わずに判断できるようになります。
ChatGPTやClaudeを併用しているときも、確かめることは同じ
ChatGPTやClaudeを一緒に使っている会社でも、確かめる順番は変わりません。社員が個人のアカウントで使っているのか、会社が契約した環境で使っているのかを見分け、個人のアカウントなら誰がどの設定を押すのかを、サービスごとに公式の案内で確かめていく流れになります。設定の名前や保持期間はサービスとプランごとに違うため、このページのGeminiの数字をそのまま当てはめないようにしましょう。
社内ガイドラインと教育で徹底する|周知文のひな形
設定と技術的な制限を整えたら、最後は社員への周知とルールで穴をふさぎます。ガイドラインに書く項目は、使ってよいアカウント、入れてはいけない情報、困ったときの連絡先の3つに絞ると伝わりやすくなります。書き方の全体は生成AIの社内ガイドラインの作り方にまとめています。
社員への周知文のひな形
社内メールやチャットにそのまま貼れる形にしました。[ ]の部分を自社の内容に置き換えて使ってみてください。
件名:Geminiの業務利用のルールについて([適用日]から) 社員各位 Geminiを業務で使うときのルールを、次のとおり定めます。 1. 業務でGeminiを使うときは、会社のGoogle Workspaceアカウント(@[会社のドメイン])でログインしてください。私物のGmailなど個人のアカウントでの業務利用は禁止します。 2. 個人のアカウントで一度でも業務に使ったことがある方は、gemini.google.com の[設定とヘルプ]→[アクティビティ]から[オフにしてアクティビティを削除]を選んでください。 3. 会社のアカウントでも、顧客の個人情報、契約内容、社外に出していない数字は入力しないでください。 4. 業務の内容を含む会話では、Geminiの回答へのフィードバックを送らないでください。 5. 誤って個人のアカウントに業務の情報を入れてしまったときは、すぐに[担当部署・連絡先]へ連絡してください。報告したことを責めることはありません。 ご不明な点は[担当部署]までお問い合わせください。
5番目の一文は、報告をためらわせないためのものです。レビュー済みの会話は削除しても最長3年残るため、隠されるより早く知って手を打つほうが、会社にとってはずっと大事になります。
個人アカウントに入れてしまったときの対応
- 本人に[オフにしてアクティビティを削除]を選んでもらい、削除の範囲は[全期間]にします。
- 会話を共有していた場合は、公開リンクも別に削除してもらいます。チャットを消しただけでは公開リンクは消えません。
- 入れた情報の種類と日時を記録し、取引先や本人への連絡が要るかどうかを社内で判断します。
削除しても、すでにレビューされた会話は最長3年間保存されるため、「消したから大丈夫」とは言い切れません。記録を残し、同じことが起きない仕組みに直していくことを優先しましょう。
四半期ごとの点検チェックリスト
設定は一度決めても、組織変更や入退社で少しずつずれていきます。3か月に1度、次の項目を見直してみてください。
- [サービスのステータス]が意図どおりか組織部門やグループの設定が、組織変更のあとも狙いどおりになっているかを見ます。
- 契約エディションがコアサービスの対象のままかBusiness Base や Essentials Starter など、追加サービス扱いのエディションが混じっていないかを確かめます。
- [会話の保持]の期間社内で決めた3か月・18か月・36か月のどれかになっているかを確認します。
- Chromeの[予備のアカウントにログインする]の設定組織のドメインが入ったまま保存されているかを見ます。
- 退職者・業務委託の方のアカウント会社のアカウントが止まっているか、私物のアカウントでの業務利用が残っていないかを、本人への確認と合わせて点検します。
- 周知文が新しく入った方にも届いているか入社時の案内に、ひな形の周知文が組み込まれているかを確かめます。
点検で見つかったずれは、次の周知文に反映していきましょう。同じ内容を何度か伝えるうちに、社内の当たり前として根付いていきます。
Geminiも、会社の管理下で使い分ける
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UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
Geminiに学習させない設定はどこにありますか?
オフにすれば、会話はすぐに消えますか?
Google Workspaceのアカウントなら、社員が何も設定しなくても大丈夫ですか?
管理コンソールで会話履歴をオフにすれば、学習は止まりますか?
Gemini Enterpriseでは、入力が学習に使われますか?
社員が私物のGmailで業務に使うのを止める方法はありますか?
有料のGoogle AI Proを契約していれば、学習には使われませんか?
まとめ
Geminiに学習させない設定は、使っているアカウントの区分で中身が変わります。個人のGoogleアカウントでは各自が[アクティビティの保存]をオフにする必要があり、オフにしても72時間の保持と、オフにする前にレビューされた分の最長3年の保存は残ってしまいます。
Google Workspaceのコアサービス対象エディションとGemini Enterpriseは、許可なく入力が生成AIモデルの学習に使われない扱いで、社員に押させるスイッチはありません。管理コンソールの[Gemini 会話履歴]は履歴の長さを決める場所で、学習を止める設定ではない点も押さえておきましょう。
会社として最後に効いてくるのは、社員に個人アカウントで仕事をさせないことです。Chromeとネットワークでの制限、周知文、四半期ごとの点検を組み合わせて、社内の当たり前にしていくことになります。法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。
