保育園のAI活用。連絡帳・おたより・記録で使う方法と園児情報の線引き

保育園のAI活用とは、連絡帳の返事やクラスだより、月案・週案、保育日誌といった書く仕事の下書きをAIに任せ、保育者が手を入れて仕上げる使い方です。AIに渡すのは「Aさん(4歳児クラス)」のように置き換えた材料だけにして、園児の名前・生年月日・アレルギーの具体名・家庭の事情は入れないのが線引きの基本になります。下書きは早く出来ても、子どもの姿に合っているかを確かめる役目は、最後まで保育者に残ります。法人全体でのAI導入の進め方は中小企業のAI導入の記事に全体像をまとめているので、あわせて読んでみてください。

人手が足りない中での書類の負担と、AIに任せられる範囲

AIに任せられるのは文章の下書き・言い換え・案出しまでで、子どもを見て判断する部分は任せられません。連絡帳、保育日誌、月案・週案、保育要録、おたよりと、園の書く仕事は毎日のように積み重なっていきます。人手に余裕のない日ほど、こうした書類は保育のあとの短い事務の時間に回ってしまいます。クラス全員分の連絡帳とその日の日誌を、限られた時間で続けて書き上げる場面に覚えのある方も多いでしょう。月案を書くたびに1か月分の連絡帳をすべて見返していた、という園の声も公開されていて、後の事例の節で紹介しています。

AIに向いている仕事と、向いていない仕事を分けると次のようになります。

  • 任せやすい仕事:走り書きのメモを文章に起こす、言い回しを丁寧に整える、季節のあいさつを考える、遊びや行事の案をいくつも出す、長い記録を短くまとめる
  • 任せない仕事:子どもの発達の見立て、事故の原因の判断、保護者との関係を左右する言葉の最終決定、関わりが良かったかどうかの評価

仕上げの判断は保育者が持ったまま、白紙から書き始める時間だけを減らす道具と考えると分かりやすいでしょう。どの業務から試すか迷うなら、園児の情報がほとんど要らないおたよりや行事の案出しから始めてみてください。

保育AI(特化型)と、ChatGPTなどの汎用AIの違い

保育ICTに組み込まれた保育AIは園の記録を読み込んで使う道具で、ChatGPTなどの汎用AIはその場で渡した文章だけを材料にする道具です。コドモンやルクミーといった保育ICTのサービスには、連絡帳や日誌、写真を材料に、子どもの成長のレポートや遊びの提案を返す機能が出てきています。園の記録がすでに保育ICTに入っていれば、材料を集め直す手間がかからない点が強みになります。園児のデータを読み込ませる使い方は、その事業者との契約や規約のもとで使う形になると考えておきましょう。

一方で汎用AIは、どの業務にも使える反面、園の記録は自分では持っていません。おたよりの文案や行事のアイデアのように、園児の記録が要らない仕事でこそ力を発揮します。宮城県が令和7年(2025年)10月に発行した「保育施設の生成AI活用集」も、ChatGPT・Gemini・NotebookLM・Sunoという汎用のサービスを使う前提で書かれています。どちらを使う場合でも、園児の情報をどこまで渡すかは園が決めることになり、その線引きは次の2つの節で整理してあります。

保育士の守秘義務と、AIへの入力の関係

AIに園児の情報を入れる前に押さえておきたいのは、保育士個人と施設の両方に、法令で秘密を守る義務がかかっている点です。保育士個人の義務は、児童福祉法第18条の22に書かれています。

児童福祉法 第18条の22
「保育士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保育士でなくなつた後においても、同様とする。」
e-Gov法令検索(児童福祉法)

違反したときの罰則は同じ法律の第61条の2にあり、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金となります。同じ条の第2項で、告訴がなければ公訴を提起できない、いわゆる親告罪とされています。施設の側の義務については、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の第14条の2を見てみましょう。

児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第14条の2
第1項「児童福祉施設の職員は、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならない。」
第2項「児童福祉施設は、職員であつた者が、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない。」
e-Gov法令検索(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準)

こちらは保育士資格の有無を問わず、調理員や事務の職員も含めた職員全員にかかる決まりです。そのうえ施設には、辞めた職員からも秘密が漏れないよう、必要な措置を講じる義務があります。措置の中身は条文に書かれていないので、何をもって措置とするかは園が自分で決めることになります。AIへの入力ルールを文書にして職員と共有することも、その一つとして考えられるでしょう。

保育所保育指針 第1章 総則 1(5)「保育所の社会的責任」ウ
「保育所は、入所する子ども等の個人情報を適切に取り扱うとともに、保護者の苦情などに対し、その解決を図るよう努めなければならない。」
厚生労働省(保育所保育指針)

全国保育士会倫理綱領「プライバシーの保護」
「私たちは、一人ひとりのプライバシーを保護するため、保育を通して知り得た個人の情報や秘密を守ります。」
全国保育士会(倫理綱領)

AIそのものについては、個人情報保護委員会が2023年6月2日に生成AIサービスの利用に関する注意喚起を出しています。個人情報を含むプロンプトを入れるなら、利用目的の範囲内かを十分に確かめるよう求めた内容です。本人の同意なく個人データを入れ、それが回答の出力以外の目的で扱われると、個人情報保護法に違反する可能性があるとも書かれています。そのうえで、サービスの事業者がそのデータを機械学習に使わないことなどを、十分に確かめておく必要があります。

園児の障害や発達の特性、医師の診断にもとづく情報(アレルギーの診断など)は、個人情報保護法第2条第3項の要配慮個人情報に当たり得る情報になります。要配慮個人情報は、取り扱いに特に配慮を要するものとして法律で別に定められた情報です。家庭の事情も、内容によっては同じ扱いになることがあります。

保育の団体が出す指針も探しましたが、全国保育士会・全国私立保育園連盟・日本保育協会が生成AIの利用に絞った指針や声明を出しているかは、2026年10月16日の確認時点では確認できませんでした。国の資料としては、宮城県の活用集が参考文献に挙げている、こども家庭庁の「生成AIの導入・活用に向けた実践ハンドブック」(2025年)があります。

※条文は2026年10月16日にe-Gov法令検索で現行の条文を確認したものです。第61条の2の罰則は現行の条文で「拘禁刑」と書かれています。保育所保育指針は平成29年3月31日厚生労働省告示第117号、全国保育士会倫理綱領は平成15年2月26日採択のものです。

園児の名前・アレルギー・家庭の事情をAIに入れてよいかの判断表

迷ったときは「入れない」「仮名にすれば入れてよい」「そのまま入れてよい」の3つに分けて考えると、職員ごとの判断がぶれにくくなります。前の節の条文と、要配慮個人情報の考え方をもとに整理したのが次の表です。

情報の種類判断理由と置き換え方
生年月日・住所・保護者の名前や連絡先入れない文章を作るのに要らない情報。必要なら、AIの下書きを園のシステムに移してから人が書き足す
アレルギーの具体名・除去食の内容入れない医師の診断にもとづく情報は要配慮個人情報に当たり得る。「食事に配慮が必要な子」までにとどめる
障害・発達の特性、診断名、療育の状況入れない要配慮個人情報に当たり得る。要録や面談の資料でも、所見はAIに渡さず保育者が書く
家庭の事情(家族の状況、経済状況、保護者の病気、虐待の疑いなど)入れない内容によっては要配慮個人情報に当たり得る。守秘義務の中心にある情報
子どもの写真・動画入れない(園が契約した保育ICTの機能は、その規約の範囲で)顔で個人が分かる。宮城県の活用集も、写真を使う場合は保護者の書面の同意を確かめ、個人の特定につながらないよう注意するよう書いている
園児の名前・あだ名仮名にすれば入れてよい「Aさん」「本児」に置き換える。ほかの子の名前も「お友だち」に変える
遊びや生活の様子(いつ・何をして・どう反応したか)仮名にすれば入れてよい名前を外せば、連絡帳や日誌の材料として使える。体調や家庭での様子は入れず、担任が自分の言葉で書く
職員の名前仮名にすれば入れてよい事故報告などでは「保育者A」「保育者B」に置き換える
クラスの人数・年齢・行事の日程・持ち物そのまま入れてよい個人を特定しない園の情報。おたよりや月案の骨組みに使う
保育のねらい・季節・活動の内容そのまま入れてよい園の計画や保育の考え方。月案・週案や遊びの案出しの材料になる

表の「仮名にすれば入れてよい」には落とし穴があり、クラスの人数が少ないと、名前を伏せても誰の話か分かってしまう場合があります。たとえば「4歳児クラスの双子の弟のほう」と書けば、名前がなくても園の人なら特定出来てしまいます。置き換えたあとに、その文を園の外の人が読んで誰だか分かるかを一度考えてみてください。アレルギーの具体名、診断名、家庭の事情は、仮名にしてもAIに入れないのが原則です。

この表を職員全員が同じように守れるかは、使っているAIの環境にも左右されます。職員がそれぞれ私物のスマホで無料版を使っていると、どの設定で何を入れたかを園は確かめられなくなってしまいます。

園児情報の線引きを、園で使う環境ごとそろえる

線引きが守られているかを園が確かめるには、職員が使うAIを園の管理下で1つにまとめることが近道になります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

連絡帳の下書きをAIで作る

連絡帳は、園での遊びの場面を書いた保育者のメモを渡して、園での様子の下書きを作らせると早く仕上がります。AIに渡すのは、砂場や園庭での遊びのように、園で見た場面のメモだけにしましょう。体調や家庭での夜の様子は判断表のとおりAIに渡さず、担任が自分の言葉で書き足します。名前は「Aさん」に、ほかの子の名前は「お友だち」に変えておくのが前提です。そのまま貼って使える指示文は、次のようになります。

【指示文1:連絡帳(園での様子)】
保育園の連絡帳に担任が書く、園での様子の下書きを作ってください。
条件は次のとおりです。

・文字数は100字前後。担任が書く連絡帳として、短く具体的に
・です・ます調。あいさつやねぎらいの決まり文句は入れない
・場面は1つにしぼり、子どもがしたこと・様子を、メモの言葉のまま伝える
・子どもの名前は「Aさん」のまま使い、名前を足さない
・メモに書いていない出来事、子どもの言葉、気持ちの想像、発達の見立ては書かない
・体調や家庭のことは書かない(担任が自分で書き足します)

【今日の園での様子(保育者のメモ)】
4歳児クラスのAさん。午前、園庭の砂場。お友だちと2人で山を作り、両側から掘ってトンネルをつなげた。つながると手をたたいて笑う。片付けの時間に、自分からスコップを洗い場へ運ぶ。

たとえば、こんな下書きが返ってきます。

【出てくる文の例】
今日は園庭の砂場で、お友だちと2人で山を作りました。両側から掘ってトンネルがつながると、手をたたいて笑っていました。片付けの時間には、自分からスコップを洗い場へ運んでくれました。

AIの出力はあくまで下書きなので、連絡帳アプリには担任が読み直してから貼るか、打ち直して入れましょう。その前に、次の点を確かめてください。

  • メモにない出来事や子どもの言葉、「うれしそうに」のような気持ちの想像が足されていないか
  • 体調や家庭のこと、保護者の書き込みへの答えを担任が書き足したか
  • 名前を戻すときに、別の子の連絡帳と取り違えていないか

保護者の心配ごとが書かれた日の返事は、AIを使わずに担任が最初から書いたほうが気持ちは伝わるでしょう。

クラスだより・園だよりの文案をAIで作る

おたよりは園児の個人情報がほとんど要らないので、AIに任せやすい仕事の1つになります。入れる材料は、月とクラス、今月のねらい、最近のクラス全体の様子、行事の日程と持ち物、お願いごとです。宮城県の活用集でも、メモから下書きを作る、季節のあいさつを考える、丁寧な文体に書き換える、という使い方が紹介されています。次の指示文は、メモの部分を差し替えればそのまま使うことが出来ます。

【指示文2:クラスだより】
あなたは保育園の5歳児クラスの担任です。保護者向けのクラスだより(11月号)の文案を作ってください。

・全体で600字前後。見出しは「今月のあいさつ」「子どもたちの様子とねらい」「お知らせとお願い」の3つ
・あいさつは晩秋の季節感を入れて3文程度
・「子どもたちの様子とねらい」は下のメモだけをもとに書く。個人の名前や、誰のことか分かるエピソードは書かない
・お知らせは箇条書きにし、日付と持ち物は下のメモのとおりに書く。メモにない日付・曜日・行事を足さない
・です・ます調。命令する言い方を続けず、お願いする言い方にする

【メモ】
・今月のねらい:友だちと目的を共有して遊ぶ/身近な自然物を使って表現する
・最近の様子:どんぐりや落ち葉を集めて、グループで製作をしている。ドッジボールのルールを自分たちで話し合う姿がある
・11月13日 芋ほり遠足。汚れてもよい服装、軍手、着替え一式、ビニール袋
・作品展の準備のため、空き箱(お菓子の箱くらい)を11月18日までに1人2つ
・朝晩冷えるため、上着に名前を書いてもらう

たとえば、こんな文案が返ってきます(後半は省略しています)。

【出てくる文の例】
■今月のあいさつ
木々の葉が色づき、朝晩の空気がひんやりとしてきました。園庭では、どんぐりや落ち葉を見つけてはうれしそうに見せに来てくれる姿が見られます。季節の移ろいを、子どもたちと一緒に味わっていきたいと思います。

■子どもたちの様子とねらい
最近は、集めたどんぐりや落ち葉を使って、グループで作品づくりを楽しんでいます。ドッジボールでは、ルールを自分たちで話し合って決める姿も見られるようになりました。(以下略)

■お知らせとお願い
・11月13日 芋ほり遠足……汚れてもよい服装で登園してください。軍手・着替え一式・ビニール袋のご用意をお願いします。
・空き箱のご協力のお願い……お菓子の箱くらいの大きさの空き箱を、11月18日までに、お子さま1人につき2つお持ちください。

おたよりは保護者全員の手元に残る文書なので、配る前に次の点を見ておきましょう。

  • 日付・持ち物・数がメモと一致しているか。指示文で止めていても曜日を足してくることがあるので、足されていたらカレンダーと照らし合わせる
  • 季節の言葉や行事の呼び方が、園と地域で使っている言い方と合っているか
  • 「様子」の文が、特定の子の出来事として読めてしまわないか
  • 園の決まった書き出しや結び、保護者の呼び方(「保護者の皆様」など)に直したか

毎月の書き出しや結びの型が決まっている園なら、指示文にその型を貼っておくと、手直しの量がぐっと減ります。

月案・週案(指導計画)の下書きをAIに頼む

月案・週案は、上にある計画と前月の振り返りを渡して骨組みを作らせ、子どもの姿に合わせて保育者が書き直す使い方が向いています。多くの園では、指導計画は年間指導計画から期案、月案、週案へと下りてくるので、AIにもその上の計画を必ず一緒に渡しましょう。入れる材料は、期案(または年間指導計画)のその月にあたる部分、クラス全体の振り返りメモ、園の月案の書式の項目名の3つになります。個別の配慮が要る子の記述はAIに渡さず、担任があとから書き足す形にしてください。

【指示文3:月案】
あなたは保育園の4歳児クラスの担任です。12月の月案の下書きを作ってください。

・項目は下の【園の月案の項目名】をそのまま使い、順番も変えない
・各項目は、園の書式どおり文章で書く
・「子どもの姿」にあたる項目は、下の振り返りメモだけを使う。メモにない姿を足さない
・ねらいは、下に貼った期案のねらいとずれないようにする
・特定の子どもへの配慮は書かない(個別の配慮は担任が書き足します)
・保育所保育指針の文言を引用する場合は、引用であることを示し、言葉を変えない

【園の月案の項目名】
(ここに園の書式の項目名を貼る。例:前月の子どもの姿/ねらい/内容/環境構成/保育者の援助・配慮/家庭との連携)

【期案(第3期:12月〜2月)のねらい(園の計画から転記)】
・冬の自然や生活の変化に気づき、興味をもつ
・友だちと思いを伝え合いながら、一緒に遊びを進める

【11月の振り返りメモ(クラス全体)】
・芋ほり遠足のあと、さつまいもの絵や製作が増えた
・ルールのある遊びで、順番をめぐってもめる場面がある。保育者が入ると話し合える
・朝の身支度に時間がかかる子が数人いる
・寒くなり、室内で過ごしたがる子が増えた

たとえば、こんな骨組みが返ってきます(一部の項目だけ載せています)。

【出てくる文の例】
【前月の子どもの姿】
芋ほり遠足の経験から、さつまいもを題材にした絵や製作を楽しむ姿が増えている。ルールのある遊びでは順番をめぐって言い合いになることもあるが、保育者が仲立ちすると、自分たちで話し合おうとしている。
【ねらい】
冬の自然に触れ、気づいたことを友だちと言葉や表現で伝え合う。
【環境構成】
霜や氷、吐く息の白さなど、冬の変化に気づけるよう、朝のうちに園庭へ出る時間をつくる。身支度の手順を絵で示し、自分で確かめながら進められるようにする。

骨組みとしてはそれらしく見えても、そのまま月案にはしないでください。手直しのときは、次の点を見ていきます。

  • ねらいと内容が、期案・年間指導計画とつながっているか。項目名と順番が園の書式どおりか
  • 「子どもの姿」が、クラスの実際の姿と合っているか(AIはそれらしい姿を補って書くことがある)
  • 環境構成の案が、園の保育室・園庭・職員の人数で本当にできるか
  • 「保育所保育指針に基づき」と書かれていても、指針の原文と照らし合わせるまでは引用として使わない

週案に落とすときも、同じ月案を貼って「この月案の第2週を、5日分の活動に分けてください」と頼めば、続きの骨組みを作ってくれます。

保育日誌の振り返りと保育要録の下書き

保育日誌と保育要録は子どもの記録そのものを扱うため、AIに渡すのは、名前と診断・家庭の情報を外したメモに限るのが前提になります。日誌では、走り書きのメモを日誌の書式に整えさせる使い方が便利です。クラスの1日を残す日誌と、児童票のような一人ひとりの記録は分けて考え、AIに渡すのはクラス全体の動きを書いたメモにとどめましょう。メモにない出来事を足させないことと、分からないところを空けておかせることの2つも、指示文で必ず縛っておきます。

【指示文4:保育日誌】
あなたは保育園の担任です。下のメモを、保育日誌の文章に整えてください。

・「今日の活動」「子どもの様子」「評価・反省と明日への手立て」の3つに分ける
・メモにない出来事、子どもの発言、数字は足さない。分からないところは【要確認】と書く
・クラス全体の記録として書き、子どもの名前や個人が分かる書き方はしない
・日誌として「〜していた」「〜した」の書き方で、全体で300字程度

【メモ】
2歳児クラス。午前、室内で新聞紙遊び。ちぎる→集めてプールに。最初は見ているだけの子も、後半は自分から入る。取り合いが2回あり、保育者が間に入り「かして」を伝える。片付けで袋に入れるのを楽しむ。明日は外で、風の中で同じ遊びをしてみたい。

たとえば、こんな日誌の文が返ってきます。

【出てくる文の例】
【今日の活動】室内で新聞紙遊びをした。新聞紙をちぎって集め、新聞紙のプールを作って遊んだ。
【子どもの様子】初めは保育者のそばで様子を見ていた子も、後半は自分から輪に入っていた。新聞紙の取り合いが2回あり、保育者が間に入って「かして」の言葉を伝えた。片付けでは、袋に新聞紙を入れること自体を楽しんでいた。
【評価・反省と明日への手立て】【要確認】取り合いが起きた場面で、新聞紙の量が足りていたか。明日は園庭で、風を受けて新聞紙が舞う様子を楽しめるようにする。

保育要録は子どもの育ちを小学校へ伝えるために送られる書類なので、中身をAIに書かせる使い方はおすすめしません。AIに頼めるのは、保育者が書いた下書きの誤字と読みにくい文を直すことまでになります。直した箇所を一覧で出させ、保育者が1つずつ見て採るかどうかを決めましょう。

【指示文5:保育要録の誤字と読みにくい文の直し】
下の文は、保育者が書いた5歳児の保育要録の下書きです。次の条件で、誤字と読みにくい文だけを直してください。

・書かれている事実、子どもの姿、評価は、足さない・削らない・変えない
・直してよいのは、誤字・脱字、主語と述語のねじれ、長すぎて読みにくい文の区切りだけ
・言葉を良い印象のものに言い換えない
・直した箇所は、本文とは別に「元の文→直した文(直した理由)」の一覧で示す
・子どもは「本児」のまま書く

【下書き】
(ここに、名前・診断名・家庭の事情を外した下書きを貼る)

たとえば、直した箇所の一覧はこんな形で返ってきます。

【出てくる文の例】
直した箇所
・「友だちと遊ぶ中で、本児は自分の思いを伝えようとし、相手の話を聞こうとする姿が見られ、年度の後半には…」→「友だちと遊ぶ中で、本児は自分の思いを伝えようとし、相手の話を聞こうとする姿が見られた。年度の後半には…」(1文が長いため区切りました)
・「意欲的にに取り組んだ」→「意欲的に取り組んだ」(「に」の重複)

日誌と要録では、次の点を保育者が見てから仕上げてください。

  • 【要確認】のまま残った箇所を、保育者が埋めたか
  • 要録の本文が、一覧に出ていない箇所まで書き換わっていないか(元の下書きと並べて見比べる)
  • 一覧の直しの中に、言葉の印象を変える言い換えが混ざっていないか。最後に園長が目を通しているか

保育ICTの保育AIを使う園では、写真や日誌から成長をまとめたレポートを、要録や月案の参考資料にしている例も公開されています。この使い方は、後の事例の節で詳しく見ていきましょう。

ヒヤリハット・事故報告の文をAIで整える

ヒヤリハットや事故報告では、AIにさせるのは、保育者のメモを「いつ・どこで・誰が・何を・どうした・対応」の順に整えることだけにしましょう。入れてはいけないのは、子どもと職員の名前、けがの診断名、受診した医療機関の名前、保護者とのやりとりの詳細です。子どもは「本児」、職員は「保育者A」「保育者B」に置き換えて渡します。

【指示文6:ヒヤリハット報告】
下のメモを、園内のヒヤリハット報告に書き写すための下書きに整えてください。

・「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どうした」「その場の対応」の順に並べる
・メモの事実だけで書き、推測・原因・対策は書かない
・子どもは「本児」、職員は「保育者A」「保育者B」のまま使う
・メモで分からない項目は【要確認】と書く

【メモ】
10時20分ごろ、園庭のすべり台。3歳児クラスの本児が、階段の途中で後ろの子に押されてバランスを崩す。手すりにつかまり転落はせず。保育者Aは砂場側にいて見ていなかった。保育者Bが声に気づいて駆け寄る。けがなし。本児は少し泣いたが、すぐ遊びに戻る。すべり台の階段に3人以上並んでいた。

たとえば、こんな報告の形に整って返ってきます。

【出てくる文の例】
いつ:【要確認】(日付)10時20分ごろ
どこで:園庭 すべり台の階段(階段に3人以上が並んでいた)
誰が:3歳児クラスの本児
何を:すべり台の階段を上っていた
どうした:途中で後ろの子に押されてバランスを崩したが、手すりにつかまり、転落はしなかった。保育者Aは砂場側にいて、その瞬間を見ていなかった
その場の対応:保育者Bが声に気づいて駆け寄った。けがはなく、本児は少し泣いたが、すぐ遊びに戻った

報告書はあとから園の外の人が読むこともある文書です。出す前に、次の点を保育者と主任で確かめてください。

  • 時刻・人数・場所が、メモや他の職員の記憶と一致しているか
  • AIが指示に反して、原因や対策、推測を書き足していないか
  • AIの言い回しで、誰が見ていて誰が見ていなかったかがぼやけていないか
  • 報告先や様式は、園と自治体で決められたものに合わせたか

名前を戻す作業は、AIから文を出したあと、園の記録システムや紙の様式の上でしましょう。要因と対策は、AIに考えさせず、職員の振り返りの場で話し合って決めます。

保護者へのお知らせと問い合わせへの返信

保護者向けのお知らせや問い合わせへの返信は、伝える事実を箇条書きで渡し、言い回しだけをAIに整えさせると早く仕上がります。宮城県の活用集でも、文章づくりの例として、おたよりと並んでLINEの文章が挙がっています。答えの中身は園の規程から保育者が拾い、AIには「伝える事実」以外を書かせないのがコツになります。

【指示文7:問い合わせへの返信】
園から保護者への返信の下書きを作ってください。差出人は園(担当:主任)です。

・200字前後、です・ます調で丁寧に
・最初に問い合わせへのお礼、次に答え、最後に問い合わせ先の案内
・下の「伝える事実」以外のこと(例外の扱い、約束、日程の変更)は書かない
・謝る必要のない内容で、謝罪の言葉を重ねない

【問い合わせの要点】
延長保育の申し込みを、当日の朝に連絡しても使えるか知りたい。

【伝える事実】
・延長保育は前日の17時までに、連絡アプリか電話で申し込む
・当日の申し込みは、定員に空きがある場合だけ受けられる
・空きの有無は、当日9時以降に電話で確かめられる

たとえば、こんな返信文が返ってきます。

【出てくる文の例】
お問い合わせいただき、ありがとうございます。
延長保育は、前日の17時までに連絡アプリまたはお電話でお申し込みをお願いしております。当日のお申し込みは、定員に空きがある場合に限りお受けしています。空きがあるかどうかは、当日の9時以降にお電話でお確かめいただけます。
ご不明な点がございましたら、園までお気軽にお問い合わせください。
○○保育園(担当:主任 ○○)

外国にルーツのあるご家庭へのお知らせを訳すときにも、AIは使えます。園で多いのは英語だけとは限らず、中国語・ベトナム語・ポルトガル語・タガログ語などを使うご家庭もあるでしょう。訳文で日付や時刻がずれていても、日本語しか読めない職員には気づけません。訳したあとに日本語へ訳し戻させると、ずれに気づきやすくなります。

【指示文8:お知らせの翻訳】
次のお知らせを、やさしい日本語と【ベトナム語】の2つに書き直してください。
(【 】の言語は、ご家庭で使う言語に差し替える)
・日付、時刻、持ち物、金額は原文のまま残す
・訳のあとに、その訳を日本語に訳し戻した文を付ける
・原文にない説明やお願いを足さない

【お知らせの本文】
(ここに、園児の名前を含まないお知らせを貼る)

たとえば訳文のあとに「(訳し戻し)11月13日は芋ほり遠足です。汚れてもよい服を着てきてください」のような日本語が付いて返ってくるので、原文と並べて見比べてみてください。返信文と訳文では、次の点を見ておきます。

  • 園の規程・料金・締切と食い違っていないか。AIが例外や約束を勝手に足していないか
  • 訳し戻した文で、日付・時刻・持ち物・金額が原文と一致しているか
  • 入園や健康に関わる大事なお知らせは、AIの訳だけに頼らず、翻訳アプリでの訳し戻しや、通訳・自治体の窓口も使って確かめる
  • 家庭の事情に関わる問い合わせではないか。その場合はAIを使わず、面談や電話で答える

行事と遊びのアイデア出し

行事や遊びのアイデア出しは、子どもの年齢・人数・ねらい・使える場所を指定して、案をいくつも出させると使いやすくなります。宮城県の活用集も、外遊びのアイデアや夏祭りの種目決めを例に挙げ、案の個数や年齢・ねらいを指定するとよいと勧めています。現場で案に困りやすいのは、延長保育の時間の異年齢の遊びや、いつもと違う散歩コースの組み立てといった場面ではないかと思います。

【指示文9:延長保育の時間の異年齢の遊び】
保育園の延長保育(18時〜19時)の時間に、1つの部屋でできる遊びの案を出してください。

・案は4つ。子どもは2歳児から5歳児まで合わせて10人前後、保育者は2人。人数はお迎えで少しずつ減っていく
・ねらいは「年上の子が年下の子に教えたり手伝ったりする」「1日の終わりに落ち着いて過ごす」
・途中で抜けても遊びが続けられ、片付けが5分で終わるものにする
・それぞれ、遊び方、年齢による役割の分け方、用意するもの、2歳児が混ざるときに気をつける点を書く
・走り回る遊びや、新しく道具を買う遊びは入れない

たとえば、こんな案が4つ並んで返ってきます(1つだけ載せています)。

【出てくる文の例】
1.お店やさんごっこ(パズル・絵本のお店)
遊び方:5歳児が店員になり、パズルや絵本を「売る」。年下の子はお客さんになって、好きなものを選んで遊ぶ
年齢による役割:5歳児は店員と片付け係、3・4歳児はお客さんと棚に戻す係、2歳児は保育者と一緒にお客さん
用意するもの:パズル、絵本、紙で作ったお金
2歳児が混ざるときに気をつける点:小さなピースのパズルは棚の上に置き、2歳児の手の届く場所には大きなピースのものだけを並べる

散歩コースの案を出させるときも、年齢・人数・保育者の数・往復の時間・ねらい(季節の自然を見つける、など)を指定すると、使える案が返ってきやすくなります。ただし、AIは実際の道の交通量や工事の状況を知らないので、道の安全は下見で確かめてください。案出しは数を出させてから選ぶ仕事なので、次の点で絞り込んでいきましょう。

  • 園の部屋・設備・職員の人数・延長保育の時間帯で、本当にできる案か
  • けがの防ぎ方が一般論で終わっていないか。園の安全の決まりと合っているか
  • クラスの子どもの姿に合っているか(AIは年齢の一般的な姿しか知らない)

行事の案を出させるときは、去年の反省メモを一緒に渡すと、同じつまずきを避けた案が返ってきやすくなります。

AIの答えは必ず保育者が確かめる

AIの文章はそれらしく見えても、事実と違うことや、保育としてふさわしくない内容が混ざることがあるため、使う前に保育者が必ず読み直します。宮城県の活用集は「気を付けたいこと」として、次の3つを挙げています。

宮城県「保育施設の生成AI活用集」(令和7年10月10日発行)より
「個人用の端末で勝手に利用したり、個人情報を入力したりしないよう、各園のセキュリティ基準に準じて、適切な利用を促すことが必要です。」
「生成AIは、時に事実と異なる情報を回答することがあるので、内容が正しいか確認することが必要です。」
「質問者に忖度した回答をすることもあるので、保育の適切性については十分注意することが必要です。」
(同じページの図には「不適切な保育も「良い関わり」と回答」という書き込みもあります)
宮城県「保育施設の生成AI活用集」(PDF)

3つ目の忖度の話は、保育の現場ではとくに気をつけたいところになります。聞き方しだいで、AIは聞いた人の考えに寄せた答えを返してきます。子どもへの関わりが良かったかどうかを、AIに判定させないでください。関わりの振り返りは、園内の話し合いや研修で職員どうしが行うものとして分けておくのが安心です。

実名で公表されている保育AIの活用事例

実名で公表されている事例は、保育ICTの事業者が出している保育AIの活用例が中心です。ここで取り上げる2件は、どちらも事業者側の発信(自社申告)で、第三者が効果を検証したものではありません。使っているのも保育ICTの保育AI機能で、ChatGPTなどの汎用AIではない点に注意して読んでみてください。

聖ミカエル保育園(大阪府豊中市)とコドモンの保育AI

コドモンの発表(@Press、2025年11月26日)によると、豊中市と連携したこども家庭庁の保育ICTラボ事業の一環で、2025年10月30日に事例共有会が開かれました。参加したのは、市内の保育士や市の職員など計14名です。発表では、園児4人の連絡帳や指導計画、園での日常の写真などのデータを集めて保育AIに読み込ませて分析し、AIが一人ひとりの成長に合わせたおすすめの遊びを提案したと紹介されています。職員会議のデモでは、「秋の自然探検隊とどんぐり図鑑づくり」という活動が企画されたそうです。

参加者の声として「AIが出した答えのすべてが、必ずしも正解というわけではないと思うので、それを鵜呑みにせずうまく「活用」していく」という言葉も載っています。発表に書かれたICT導入の心得は次の3つでした。

  • 2人以上の推進リーダーを決める
  • まずは活用したい機能を試す
  • 小さく始める

※出典:コドモンのプレスリリース(@Press配信・PC Watch転載、2025年11月26日)。運営は宗教法人 日本聖公会 東豊中聖ミカエル教会。

ソラストたけのつか保育園(東京都)とルクミーの「すくすくレポート」

ルクミーを提供するユニファの活用事例ページでは、株式会社ソラストが運営する認可保育園、ソラストたけのつか保育園の使い方が紹介されています。過去の写真や日誌から子どもの成長をレポートにまとめる保育AI機能「すくすくレポート」を、要録作成・月案作成・保育面談の参考資料に使っているという内容です。ページには「これまで、月案作成時には1ヶ月分の連絡帳をすべて見返していましたが、「すくすくレポート」を活用することで、この作業が非常に楽になりました」という声が載っています。時間がどれだけ減ったかといった数字の効果は、ページには書かれていません。

※出典:ルクミー 活用事例(ソラストたけのつか保育園)。ページに公開日の記載はありません。2026年10月16日に確認しました。

ChatGPTなどの汎用AIを実名の保育園が業務で使っていると公表した事例は、2026年10月16日の確認時点では見つかりませんでした。宮城県の活用集には県内施設の事例が載っていますが、「仙台市Aこども園」のように園名は伏せられています。

国と自治体の動き、使える補助金

国はこども家庭庁の保育ICTラボ事業などで保育のICT活用を後押ししていて、自治体でも宮城県のように、生成AIの使い方をまとめた資料を発行するところが出てきています。保育ICTラボ事業は、民間の事業者などが自治体と連携し、ICTのショーケース化、相談窓口と人材育成、ネットワークづくりと普及啓発に取り組む経費を支援する事業です。前の節の聖ミカエル保育園の事例共有会も、この事業の一環として開かれました。

宮城県は令和7年10月10日に「保育施設の生成AI活用集」(11ページ)を発行し、2026年10月15日に掲載した県のページでは、YouTubeの「保育×生成AI応援チャンネル」やプロンプト集も案内しています。県内の認可保育所などの保育者向けに研修も開いていて、第1回の「保育×AIはじめの一歩」(令和8年8月3日)では、ChatGPTで秋の遠足のおたよりを作る体験が組まれました。第2回は令和8年11月10日にオンラインで開かれ、後半はAIを安心して使うためのポイントを扱う予定です。

費用の面では、デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)の事務局サイトが、対象の中小企業の例に保育などのサービス業を挙げています。社会福祉法人は、従業員300人以下であれば対象に入ります。申請は、事務局に登録されたITツールを、登録された「IT導入支援事業者」と組んで行う仕組みです。交付決定の前に契約や発注をすると補助の対象にならず、業種や業務を限らない汎用のツールだけでは申請できない決まりもあります。汎用のAIサービスがこの補助金の対象になるかは、登録されたITツールか、ほかの業務プロセスと組み合わせられるかで決まり、この記事では個々のサービスについて確かめていません。申請を考えるなら、まずIT導入支援事業者に確かめてみてください。

※出典:こども家庭庁「保育ICTラボ事業」、宮城県(保育施設の生成AI活用のページ)、デジタル化・AI導入補助金 事務局(申請対象者)。補助金の内容は2026年9月18日〜29日に事務局サイトと公募要領で確認したものです。通常枠の締切は回ごとに公表され、確認時点では6次が2026年10月30日、7次が2026年12月1日(いずれも17時)でした。

園内の使用ルールのひな形

園でAIを使い始める前に、入れてよい情報と確かめる人を1枚の紙に決めておくと、職員ごとの判断のばらつきを抑えられます。次のひな形は、園の名前と空欄を埋めれば職員会議の資料としてそのまま使うことが出来ます。

○○保育園 生成AIの使用ルール(第1版  年  月  日)

1.目的
 連絡帳・おたより・計画・記録などの文章の下書きにかかる時間を減らし、子どもと向き合う時間にあてる。

2.使ってよい業務
 連絡帳の下書き(園での遊びの場面だけ)/クラスだより・園だよりの文案/月案・週案の骨組み/保育日誌の文章の整理/保育要録の誤字と読みにくい文の直し(中身は保育者が書く)/ヒヤリハットのメモを時系列に整える(要因と対策は職員で話し合う)/保護者へのお知らせ・返信の文案/行事・遊びのアイデア出し

3.入力してはいけない情報
 園児・保護者・職員の氏名、生年月日、住所、連絡先
 アレルギーの具体名、診断名、障害・発達の特性
 家庭の事情、子どもの写真・動画、その他園の外に出せない情報
 ※名前は「Aさん」「本児」「保育者A」に置き換えてから入力する

4.使ってよいAIと端末
 園が契約したAIサービス(名称:      )を、事務室のパソコン( 台:置き場所      )で使う
 使う時間の目安:(例:午睡の見守りに入っていない職員の事務の時間、保育のあとの事務の時間)
 職員ごとに配られたアカウントで使い、パソコンを離れるときはログアウトする
 私物のスマホ・個人のアカウントでは業務に使わない

5.確かめる人
 保護者に渡す文書:担任が読み直し、主任または園長が確認してから出す
 保育要録・事故報告:AIに中身を書かせず、担任が書いたものを園長が確認する

6.入力してはいけない情報を入れてしまったとき
 すぐに(主任・園長の名前:      )へ報告する。報告した職員を責めない

7.見直し
 (  月)と(  月)の職員会議で、使い方と困ったことを話し合い、このルールを見直す

4と5は、宮城県の活用集が挙げている、個人の端末での利用への注意と、事実と違う答えへの注意にそのまま対応しています。聖ミカエル保育園の事例にあった「2人以上の推進リーダーを決める」も、5の確かめる人と重ねて決めておくと回しやすいでしょう。

複数の園を運営する法人では、法人本部で決めることと、各園で決めることを分けておくと、ルールが園ごとにばらばらになりません。

  • 法人本部が決めること:使うAIサービス、入力してはいけない情報(ひな形の3)、職員へのアカウントの配布と退職・異動のときの停止、利用ログを誰が確かめるか
  • 各園が決めること:保護者に渡す文書を確かめる人(ひな形の5)、使う時間と場所(事務室のどのパソコンで、見守りに入っていない事務の時間に使う、など)、困ったときの報告先

AIを使うことを保護者に伝えておきたい園は、次のような短いお知らせを添える方法もあります。

保護者の皆様へ

当園では、おたよりや連絡帳などの文章の下書きに、生成AI(文章を作るAI)を使うことがあります。
・AIには、お子さまのお名前や、ご家庭・健康に関する情報は入力しません
・AIが作った文章は、必ず担任と園の職員が読み直し、内容を確かめてからお渡しします
・ご不明な点やご心配な点は、園長までお気軽にお尋ねください

○○保育園 園長 ○○○○

ルール文書の作り方そのものは、生成AIの社内ガイドラインの作り方でも詳しく整理しています。

学習させない設定と、園で契約するAI環境

園としてAIを使うなら、入力が学習に使われない設定と、誰がどのAIを使っているかを園が確かめられる環境の両方をそろえる必要があります。宮城県の活用集が紹介しているChatGPT・Gemini・NotebookLM・Sunoは、令和7年10月1日時点で「いずれも基本的な機能は、無料で利用できます」と書かれています。無料版で試してみて、AIで何が楽になるかを職員が知るきっかけにするのは良い入り方でしょう。

ただし個人向けのChatGPT(無料版・Plus・Pro)は、個人用のワークスペースではデータ共有が既定で有効になっています。設定の「データコントロール」で「すべての人のためにモデルを改善する」(ヘルプでは「すべてのユーザー向けにモデルを改善する」とも表記)をオフにすると、それ以降の新しい会話は学習に使われなくなります。履歴に残らない一時チャットも学習には使われず、30日後にシステムから削除されると案内されています。オフにしていても、回答に「良い回答」「良くない回答」の評価を送ると、その会話全体が学習に使われる場合がある点には気をつけてください。Geminiの個人アカウントでも、アクティビティの保存をオフにすると今後のチャットは学習に使われず(フィードバックを送った場合を除く)、72時間だけ保持される仕組みになっています。

こうした設定は、どれも職員一人ひとりのアカウントの中にあります。職員が私物のスマホや個人のアカウントで使っていると、設定をオフにしているか、何を入れたかを園は確かめられません。宮城県の活用集が「個人用の端末で勝手に利用したり」しないよう促しているのも、同じ心配からでしょう。設備運営基準が施設に求める「必要な措置」を考えても、個人任せのままでは園として説明しにくい状態となってしまいます。

ChatGPT Businessなどの法人向けプランは、既定で入力と出力を学習に使わない設計です。園として契約する環境を選ぶときは、次の点を見ておきましょう。

  • 入力を学習に使わない設定が、職員全員に一律でかかるか
  • 誰がいつどのAIを使ったかの記録を、園長や法人本部が見られるか
  • 職員にアカウントを配り、退職や異動のときに園の側で止められるか
  • 私物のスマホ・個人アカウントでの業務利用をやめてもらう代わりに、同じように使える環境を用意できるか
  • 文章の下書き、調べもの、長い資料の要約など、業務ごとに使うAIを園で決められるか

ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityは、得意なことが少しずつ違います。同じおたよりの下書きを2つのAIに作らせて比べると、言い回しの違いから良いほうを選ぶことも出来ます。使い分けの考え方は主要4AIの違いと使い分けに、職員が会社の知らないところで使うAIの問題は野良AI(シャドーAI)の記事にまとめています。複数の園を運営する法人なら、園ごとにばらばらに契約するより、本部でまとめて1つの環境にするほうが目が届きやすくなります。

園で使うAIを、1つの契約と1つの管理画面で

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けのサービスです。全モデルで学習非利用を標準適用し、会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理でき、よく使う指示文はカスタムプラスでBOTにして職員に共有できます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

保育園で無料のChatGPTを使ってもよいですか?
宮城県の「保育施設の生成AI活用集」も、無料で使える機能から使い方を紹介しています。業務で使うなら、園児の名前や家庭の情報を入れない、「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする、園が決めた端末で使う、の3つを園で決めてからにしましょう。職員が個人のスマホや個人のアカウントで別々に使うと、設定や入力した内容を園が確かめられなくなります。
連絡帳に子どもの名前を入れなければ、何を書いても大丈夫ですか?
名前を外しても、アレルギーの具体名、診断名、障害や発達の特性、家庭の事情は入れないでください。医師の診断にもとづく情報や障害に関わる情報は、個人情報保護法の要配慮個人情報に当たり得ます。クラスの人数が少ないと、名前がなくても誰の話か分かってしまうこともあります。
保育士がAIに園児の情報を入れたら、守秘義務違反になりますか?
児童福祉法第18条の22は、保育士が正当な理由なく業務で知り得た人の秘密を漏らすことを禁じていて、違反には第61条の2で1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が定められています。AIに入れた情報がどう扱われるかは、サービスの規約と設定によって変わります。個人情報保護委員会も、個人情報を入れるなら利用目的の範囲内か、事業者が機械学習に使わないかを十分に確かめるよう求めています。迷う情報は入れないのが安全です。
保育ICTの保育AIと、ChatGPTはどちらを使えばよいですか?
園の記録がすでに保育ICTに入っていて、記録をもとにしたレポートや遊びの提案がほしいなら、保育ICTの保育AIが向いています。おたよりの文案や行事のアイデアのように園児の記録が要らない仕事は、汎用のAIでも十分に下書きが出来ます。どちらを使う場合も、園児の情報をどこまで渡すかは園のルールで決めてください。
保育要録をAIで書いてもよいですか?
要録は子どもの育ちを小学校へ伝えるために送られる書類なので、子どもの姿や評価はAIに書かせず、保育者が書いた下書きの誤字と読みにくい文を直させる使い方にとどめるのがおすすめです。名前・診断名・家庭の事情を外した文を渡し、直した箇所を一覧で出させて、担任と園長が1つずつ確かめてから仕上げましょう。
職員が私物のスマホでAIを使うのは、やめてもらうべきですか?
業務で使うなら、園の端末と園が配ったアカウントにまとめるのがおすすめです。宮城県の活用集も「個人用の端末で勝手に利用したり、個人情報を入力したりしないよう」促しています。やめてもらうときは、事務室のパソコンなど、代わりに使える環境と使う時間を先に用意しておくと移りやすくなります。

まとめ

保育園でのAIは、連絡帳、クラスだより、月案・週案、保育日誌、要録の誤字の直し、ヒヤリハットのメモの整理、保護者へのお知らせ、遊びの案出しと、書く仕事の下書きに広く使うことが出来ます。どの業務でも、名前を「Aさん」「本児」に置き換えた材料だけを渡し、アレルギーの具体名や診断名、家庭の事情は入れないのが線引きになります。

保育士には児童福祉法第18条の22の守秘義務があり、施設には設備運営基準第14条の2で、職員や元職員から秘密が漏れないよう措置を講じる義務があります。AIの下書きは事実と違うことや、聞いた人に寄せた答えが混ざるため、保護者に渡す前に保育者が必ず読み直しましょう。

園として続けて使うなら、使用ルールを1枚にまとめ、学習に使われない設定と利用の記録を園が確かめられる環境を用意してみてください。法人のAI活用に関するほかの記事はAI活用コラム一覧で読むことが出来ます。