医療AIとは。病院・クリニックでの活用例と、患者情報を守る生成AIの使い方

医療AIとは、画像の読影や文書作成などの場面でAI(人工知能)を使い、医師や看護師、事務職員の判断と作業を支えて医療の質と効率を高める取り組みのことです。結論から言うと、医療AIは医師の代わりではなく支援の道具で、職員10〜200名規模の医療機関が取り組みやすいのは、退院サマリーや院内文書の下書きといった事務作業での生成AI活用です。ただし患者情報を扱う以上、入力したデータが学習に使われないこと、保存場所、利用ログの管理を確かめてから使うことが前提になります。この記事では、医療AIの活用領域とメリット・注意点を公的資料に沿って整理し、医療機関で生成AIを安全に使うための線引きと始め方までを解説します。

医療AIとは|診断・治療・業務を支える仕組み

医療AIは、医療の現場で集まる画像・文章・音声・数値のデータをAIで処理し、診断や治療、院内の業務を支援する技術の総称です。特定の製品を指す言葉ではなく、画像診断を補助するソフトウェアから、紹介状の下書きを作る生成AIまでを含みます。

技術で分けると、大量の例からパターンを学ぶ機械学習、画像から病変の候補などを見つける画像認識、文章や音声を扱う自然言語処理・音声認識が主な系統です。近年は指示に応じて文章などを作る生成AIが加わり、記録や文書の作成を支える使い方が広がっています。

医師の代わりではなく、判断を支える道具

医療AIを考えるうえで最初に押さえたいのは、AIは判断の主体ではないという点です。後述するとおり、厚生労働省は平成30年の通知で、AIを使った診療でも医師が最終的な判断の責任を負うと整理しています。AIが示すのは判断の材料や下書きで、導入の効果も、作業がなくなる前提ではなく、確認を残したまま作業時間がどれだけ短くなるかで見積もるのが現実的です。

医療AIと、業務で使う生成AIの違い

同じ医療AIという言葉でも、診断を支援するプログラムと、事務で使う生成AIでは性格が異なります。診断を支援するソフトウェアには医療機器として扱われ、製品ごとに手続きを経て提供されるものがあります。一方、文章の下書きや要約に使う生成AIは汎用のクラウドサービスとして提供されることが多く、入力してよい情報や管理の方法を、医療機関が自ら決める必要があります。

厚労省の懇談会が示した6つの重点領域

医療AIの開発を進める分野については、厚生労働省「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」の報告書(平成29年6月27日)が、次の6つを重点領域として挙げています。

  1. ゲノム医療
  2. 画像診断支援
  3. 診断・治療支援(検査・疾病管理・疾病予防も含む)
  4. 医薬品開発
  5. 介護・認知症
  6. 手術支援

このうち、病院・クリニックの規模を問わず身近になりやすいのは、画像診断支援と、診断・治療支援の中でも記録や文書に関わる部分です。ゲノム医療や医薬品開発は、研究機関や大学病院、製薬企業が中心となる領域です。

医療AIの主な活用場面と事例

医療AIの活用場面は、画像を読む場面、診療の周辺、文書と事務の3つに分けると整理しやすく、職員数の少ない医療機関でも着手しやすいのは文書と事務の領域です。

画像診断支援の実用化と3つの使い方

画像診断支援は、画像がデジタルで保存され学習データが集まりやすいことから、実用化が進んできた分野です。医師の読影の流れのどこでAIを使うかによって、使い方は3つに分けられます。

使い方流れねらい
医師が読む前AIが先に画像を解析し、所見の候補や優先して見るべき画像を示す急ぐべき症例に早く気付く
医師が読んだ後(ダブルチェック)医師の読影の後にAIの結果と突き合わせ、食い違う箇所を見直す見落としに気付くきっかけを増やす
検査中にリアルタイム内視鏡検査などの最中に、AIが画面上で注意すべき箇所を示すその場で確認を促す

どの使い方でも、AIの表示は候補であって診断ではありません。AIが示さなかった箇所に病変がある可能性も残るため、最終的な判断は医師が行います。

活用事例:内視鏡・画像診断、オンライン診療、処方支援

診療に近い場面での使われ方を、個別の製品ではなく仕組みとして整理します。

  • 内視鏡・画像診断:検査中の画像から、医師が注意を向けるべき箇所をAIが示します。
  • オンライン診療の周辺:受診前に患者が入力した症状をAIが整理し、医師が問診の要点を把握しやすくします。
  • 処方支援:処方内容と患者の情報を照らし合わせ、飲み合わせや用量の確認を促します。

いずれもAIは確認の網を増やす役割で、診断や処方を決めるのは医師や薬剤師です。診療に関わる製品を検討するときは、院内の医療安全の担当者を交えて確認します。

事務作業・文書作成の効率化(退院サマリー・診断書・紹介状・音声入力)

規模を問わず効果を見込みやすいのが、文書作成と事務作業の効率化です。退院時要約(退院サマリー)、診断書、紹介状、看護記録、会議録、院内規程など、医療機関は大量の文書を作っています。生成AIに原案を作らせ、担当者が確認・修正する流れにすれば、ゼロから書く時間を減らせます。国内では、病院や提供企業が次のような取り組みを発表しています。

  • 恵寿総合病院(石川県七尾市):Ubieの生成AIサービスを看護師の退院時看護サマリーの作成に使い、6週間の測定で、使わない群(89件)の平均12分20秒に対し使った群(100件)は7分5秒で42.5%短く、心理的負担の評価も3.7に対し2.7で27.2%低かったと、第65回全日本病院学会で発表しています(2024年9月30日のUbieの発表による)。
  • 慶應義塾大学病院:アルサーガパートナーズは2025年6月17日、慶應義塾大学病院と生成AIによる退院サマリー作成支援システムを共同開発し、5つの診療科の医師が活用を始め、2025年末までにほぼ全診療科での利用開始を目指すと発表しています。病院内の閉じたネットワーク内で構築し、OpenAIとは専用の通信経路を限定的に開設して接続するとしています。

※上記はいずれも取り組みの当事者による発表で、第三者による検証結果ではありません。2026年9月17日時点で発表内容を確認しています。

このほか、医療文書向けの音声入力、定型のパソコン操作を自動化するRPA、レセプト(診療報酬明細書)の点検の補助なども、事務負担を減らす手段として検討されています。どの場合も、出力をそのまま使わず担当者が確認する工程を残します。

医療AIを導入する3つのメリット

医療AIのメリットは、職員の負担軽減、確認の精度向上、地域による差を縮める可能性の3つです。ただし、どれも運用の設計次第で、導入しただけで得られるものではありません。

メリット1:医師・医療従事者の負担軽減と働き方改革

医師の時間外労働の上限規制は2024年4月に始まり、厚生労働省の資料では、医療機関の水準に応じて年960時間・1,860時間などの上限が示されています。上限の中で診療を続ける手段として、厚生労働省はタスク・シフト/シェアやICTの活用を挙げています。

生成AIによる文書の下書きは、医師事務作業補助者が担える範囲を広げる手段にもなります。補助者がAIで原案まで整え、医師は確認と修正に集中する形です。看護師や事務職員の文書作業にも同じ考え方が当てはまります。

メリット2:診断精度の向上と医療ミスの防止

画像のダブルチェックや処方内容の照合のように、AIを確認の網として使うと、見落としに気付くきっかけを増やせます。一方でAIにも誤りはあり、AIが問題なしとした箇所を人が見なくなれば、かえって見落としにつながります。効果が出るのは、人の確認と組み合わせたときです。

メリット3:地域格差・医師偏在の是正

専門医が少ない地域でもAIの支援で一定の確認ができれば、受けられる医療の差を縮める助けになると期待されています。ただしAIは専門医の代わりにはなりません。地域の医療機関にとって現実的な効果は、限られた医師や職員の時間を、文書作業から患者対応へ振り向けられることです。

医療AIの課題と注意点

医療AIの注意点は、判断と責任の所在、学習データの質、判断根拠の見えにくさ、個人情報の扱いの4つで、生成AIを業務で使う医療機関にとっては個人情報の扱いが導入の前提条件になります。

注意点1:最終判断は医師が行い、責任の所在を明確にする

厚生労働省の医事課長通知「人工知能(AI)を用いた診断、治療等の支援を行うプログラムの利用と医師法第17条の規定との関係について」(平成30年12月19日、医政医発1219第1号)は、AIを用いた診療でも診断や治療を行う主体は医師であり、医師が最終的な判断の責任を負うと整理しています。

院内でも、誰がAIの出力を確認し、誰が承認するのかを業務の流れに書き込みます。生成AIが作った退院サマリーの原案なら、確認して確定させるのは記載に責任を持つ医師です。

注意点2:学習データの量と質(アノテーション負担・偏り)

AIの性能は学習データの量と質に左右されます。画像診断支援AIを作るには、多数の画像に専門医が正解の情報を付ける作業(アノテーション)が必要で、専門家の時間を大きく使います。また、特定の施設や機器、患者層に偏ったデータで学習したAIは、条件の異なる現場で同じ性能を出せない可能性があります。製品を選ぶときは、どのような条件で性能が確かめられたかを提供元の説明で確認します。

注意点3:ブラックボックス問題と説明可能なAI

深層学習を使ったAIは、なぜその結果を出したのかを人が理解しにくいという課題があり、ブラックボックス問題と呼ばれます。患者への説明や判断の検証が求められる医療では大きな課題で、注目した画像の部分を示すなど根拠を分かる形で示す、説明可能なAI(XAI)の研究が進められています。生成AIも、もっともらしい誤り(ハルシネーション)を含むことがあるため、元の記録と照らし合わせる運用が欠かせません。

注意点4:個人情報・セキュリティへの配慮

個人情報保護法では、病歴は要配慮個人情報にあたり、一般の個人情報より慎重な取扱いが求められます。個人情報保護委員会は令和5年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で、個人情報取扱事業者に次の2点を示しています。

  • 個人情報を含むプロンプト(AIへの指示文)を入力する場合は、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること
  • 本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、応答の出力以外の目的で取り扱われる場合は法違反となる可能性があるため、提供事業者がそのデータを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること

患者情報を含む内容を生成AIに入力するなら、少なくとも利用目的の範囲に収まるかと、学習に使われないことを事前に確かめる必要があります。職員が個人で登録した無料サービスへの入力は、この確認ができない典型です。医療分野の個人情報の扱いは、個人情報保護委員会と厚生労働省が示している「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」もあわせて確認してください。

ここがポイント:最終判断・学習データ・ブラックボックスは主に製品を作る側や診療の場面の論点ですが、個人情報の扱いは生成AIを使うすべての医療機関が自分で決める論点です。確認の仕方は医療機関で生成AIを安全に使うにはで解説します。

診療報酬でのAIの評価|令和8年度改定の加算要件

令和8年度の診療報酬改定の個別改定項目では、生成AIなどのICT機器を活用する医師事務作業補助者を、医師事務作業補助体制加算の人数の数え方に反映する仕組みが示されました。中央社会保険医療協議会の資料「個別改定項目」(令和8年2月13日)の内容は次のとおりです。

項目個別改定項目での内容(要旨)
導入するICT機器生成AIで退院時要約・診断書・紹介状等の原案を作成する文書作成補助システム(必須)を組織的に導入し、大半の医師と補助者が日常的に活用し、業務の効率化が顕著に図られていること
安全管理電子カルテ等の医療情報システムと連動して医療情報を扱うものは、厚生労働省の安全管理ガイドラインと総務省・経済産業省のガイドラインに準拠
AIの利用生成AI等を用いるものは、経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」を遵守
研修すべての補助者に、操作方法と生成AIの適切な利用に関する研修を実施
算入方法上記を満たせば補助者1人を1.2人、さらに医療文書用の音声入力(汎用を除く)・RPA・10種類以上の患者向け説明動画のいずれかも広く活用していれば1.3人として算入

※中央社会保険医療協議会の資料「個別改定項目」(令和8年2月13日)の要約です。算定の要件は告示・施設基準の通知と、その後の事務連絡で確認し、届出先の地方厚生局にもご確認ください。

要件から読み取れるのは、生成AIを使うこと自体より、組織として導入し、安全管理の基準に沿い、職員を研修したうえで日常的に使っているかが問われている点です。加算を目指さない医療機関にとっても、生成AI導入の確認項目として参考になります。

患者情報を守るなら、職員が使うAIを院内で1つに決める

職員がそれぞれのアカウントで生成AIを使うと、入力された内容を医療機関が把握できません。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

医療機関での導入の実態と進まない理由

医療現場でのAIの導入状況は、厚生労働科学研究「医療現場における医療AIの導入状況の把握、及び導入に向けた課題の解決策の検討のための研究」でも調べられています。導入が進みにくい理由としては、一般に次の点が挙げられます。

  • 費用:製品に加え、ネットワークや電子カルテとの連携など周辺整備にも費用がかかる
  • 現状で業務が回っている:切り替えの手間をかける理由が見えにくい
  • 担当者がいない:情報システムの専任者がおらず、選定や設定を担える人がいない
  • 情報の扱いへの不安:患者情報を外部のサービスに入力してよいか判断がつかない

ルールと環境が決まらないまま一部の職員が個人のアカウントで使い始めると、組織が把握していないAI利用が生まれます。禁止だけで済ませるより、使ってよい環境と範囲を組織として用意するほうが、見えない利用を減らしやすくなります。考え方は野良AI(シャドーAI)の解説も参考にしてください。

医療機関で生成AIを安全に使うには

医療機関で生成AIを安全に使うには、入力する情報の線引き、サービスの確認、学習・保存・ログの設定、職員への配布と研修、院内ルールの5つを、使い始める前にそろえることが必要です。

入れてよい情報・条件付きの情報・入れない情報の線引き

最初に決めるのは、生成AIに何を入力してよいかです。下の表は院内の業務に当てはめた一般的な整理の例で、自院の個人情報保護方針や利用目的、サービスの契約条件に合わせて調整してください。

区分院内の業務例扱い方
入力してよい(患者・職員を特定できる情報を含まない)院内規程・マニュアルの下書き、求人票、院内掲示物、患者向けお知らせの文案、患者情報を含まない会議録の要約組織が用意した業務用の環境で使い、出力は担当者が確認する
氏名等を外し、条件を満たす環境でのみ(要確認)退院サマリー・紹介状の原案作成、看護記録の要約、患者からの問い合わせへの返答文案学習に使われないこと、保存場所、利用ログの管理を確認した環境で、院内ルールで認めた業務に限る
入力しない個人で登録したAIサービスへのカルテ記載・検査値・画像・紹介状原文の入力、パスワードなど認証情報の入力職員個人のアカウントや、組織が契約条件を確認していないサービスには入れない

※個人情報保護委員会の注意喚起(令和5年6月2日)の確認点をもとに、医療機関の業務に当てはめた一般的な整理です。個別の業務で患者情報を入力してよいかは、利用目的の範囲などを踏まえて院内の個人情報保護の責任者が判断してください。

氏名を消しただけで匿名になるとは限りません。珍しい疾患名、日付、地域、年齢などが組み合わさると個人が分かることがあるため、真ん中の区分は自由に使える情報ではなく、条件を満たした環境でだけ扱う情報と位置付けます。

生成AIサービスを選ぶときの確認点(安全管理ガイドライン第7.0版の当てはめ)

厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の最新版は第7.0版(令和8年6月)です。生成AIを対象にした規定ではありませんが、企画管理編には医療情報の外部保存を委託する事業者の要件があり、患者情報を扱う可能性のある生成AIサービスの選定に当てはめると、確認漏れを防ぎやすくなります。

企画管理編の外部保存の委託先の要件(要旨)生成AIサービスに当てはめた確認点
情報を格納する機器が、国内法の適用及び執行の及ぶ範囲にあることを確実にする会話履歴や利用ログがどの国のサーバーに保存されるか、契約や公式の説明に明記されているか
医療情報を保存する機器の設置場所(地域、国)を確認する保存場所が国内か。AIモデルの処理が海外で行われるかも分けて確認する
委託先事業者に対する国外法の適用可能性を確認する提供事業者や、その先のAIモデル提供元に海外の法律が適用される可能性があるか
委託元の医療機関や患者等の許可なく、受託した医療情報を分析等の目的で取り扱わないことを契約に含める入力データを学習や分析に使わないことが、設定だけでなく契約・規約で約束されているか
プライバシーマークやISMSなどの認証、体制、規程、経営の健全性などを確認する提供事業者の認証の取得状況、サポート体制、事業の継続性

※左列は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版(令和8年6月)」企画管理編の、外部保存の委託に関する遵守事項の要旨です。同ガイドラインは生成AI向けの規定ではないため、右列はその要件を当てはめた確認の例です。2026年9月17日時点の厚生労働省ページで確認しています。

同じ厚生労働省のページには「医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト(令和8年6月)」も掲載されています。生成AIを入れる前に、院内のネットワークや端末の対策をあわせて点検しておくと安心です。

学習させない設定・保存場所・利用ログを確かめる

  • 学習に使わない設定が組織全体に適用されているか職員が一人ひとり設定する方式では漏れが起きます。管理者側でまとめて適用できる形が望ましいです。
  • 会話履歴・ログ・アカウント情報の保存場所と保存期間が分かっているか国内に保存されるか、退職者のデータをどう扱うかも確認します。
  • 誰が・いつ・どのAIを使ったかを組織が確認できるか利用ログが取れないと、誤入力があったときに経緯を説明できません。

確認項目の全体は生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめています。

職員への配布と研修

一部の職員にしか環境を配らないと、配られなかった職員が個人のサービスで使い始める原因になるため、対象の職種をあらかじめ決めて配布します。研修では操作方法に加え、入力してよい情報の区分、出力を確認する責任、誤りが含まれる可能性、困ったときの相談先を伝えます。令和8年度改定の個別改定項目でも、生成AIの適切な利用に関する研修が要件に挙げられています。

院内ルールに書いておくこと

  • 使ってよいサービス組織が契約した環境だけを業務で使い、個人アカウントでの業務利用は認めないと明記します。
  • 入力する情報の区分上の3段の表を、自院の業務に合わせて具体化します。
  • 出力の確認と承認の責任者診療に関わる文書は医師が確認して確定させるなど、文書の種類ごとに決めます。
  • 誤入力に気付いたときの報告先と見直しの時期規約やガイドラインは改定されるため、年1回など見直す時期も決めます。

ルールの作り方の全体像は生成AIの社内ガイドラインの作り方で解説しています。

職員10〜200名の医療機関が始める5つのステップ

中小規模の医療機関は、ルールと環境を先に整え、患者情報を含まない業務から試す順番が安全です。

ステップやること主な担当
1. 現状を把握する職員が個人のアカウントで生成AIを業務に使っていないか確認し、使いたい業務の候補を集める事務長・情報システム担当
2. 院内ルールを決める個人アカウントでの業務利用の禁止、入力する情報の区分、確認の責任者を決める事務長・個人情報保護の責任者
3. 業務用の環境を用意する学習に使われない設定、国内での保存、利用ログの管理を確認したサービスを選び、配布と研修を行う情報システム担当・経営者
4. 患者情報を含まない文書で試す院内規程、マニュアル、求人票、掲示物、会議録などで効果と使い方を確かめる事務部門・各部署の代表者
5. 対象業務を広げる条件を満たした環境で文書の原案作成などに広げる。医師事務作業補助体制加算を届け出ている医療機関は、その要件とも照合する診療部門・医事課・事務長

ステップ4では文書1件あたりの作成時間と修正時間を記録しておくと、広げるかどうかを判断しやすくなります。用途によって得意なAIが異なるため、複数のAIを1つの環境で管理する考え方はマルチAIの解説を参考にしてください。

医療AIの今後の展望

医療AIは、診療を支える技術と、文書や事務を支える生成AIの両面で、使われる場面が広がっていくと考えられます。令和8年度改定の個別改定項目のように、制度の側でも安全管理と研修を前提にAIを業務に組み込む方向が示されています。

今後の論点は、電子カルテなど院内システムと生成AIの連携、判断の根拠を示す説明可能なAIの研究の進展、そして国のガイドラインやサービス規約の改定への追随です。中小規模の医療機関にとっては、新しい技術を追うことより、患者情報を守りながら職員の負担を減らす使い方を組織として根付かせることが現実的な一歩です。

院内の生成AI利用を、組織として管理する

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準適用し、会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します(各AIモデルへの入力データの扱いは提供事業者の仕様に従います)。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理でき、院内の資料を読み込ませて回答させる社内文書RAGも使えます。UPGEAR AIの料金は月額30,000円(税抜)からで、ユーザーごとの課金はありません(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。医療機関での利用にあたっては、院内の規程と国のガイドラインに照らしてご確認ください。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

医療AIとは何ですか?
画像・文章・音声などの医療データをAIで処理し、診断や治療、院内の業務を支援して医療の質と効率を高める取り組みの総称です。画像診断の補助から、退院サマリーの原案を作る生成AIまで含みます。AIは医師の代わりではなく、AIを使った診療でも最終的な判断の責任は医師が負います。
生成AIに患者情報を入力してもよいですか?
条件を確認せずに入力するのは避けてください。個人情報保護委員会は令和5年6月2日の注意喚起で、利用目的の範囲内かの確認と、提供事業者が機械学習に利用しないこと等の確認を求めています。学習に使われないこと、保存場所、利用ログの管理を確認した業務用の環境で、院内ルールで認めた業務に限って扱うのが安全です。
安全管理ガイドラインは生成AIにも適用されますか?
第7.0版(令和8年6月)は生成AIを対象にした規定を置いていません。ただし企画管理編の外部保存の委託先の要件(国内法の及ぶ範囲、設置場所や国外法の適用可能性の確認、許可なく分析等に使わない契約など)を当てはめると、生成AIサービスを選ぶときの確認点として使えます。
AIが作った文書の責任は誰にありますか?
AIは判断の主体ではないため、内容を確認して確定させた人と組織が責任を負う前提で運用します。診療については、厚生労働省の平成30年12月19日の通知が、AIを用いた診療でも医師が最終的な判断の責任を負うと整理しています。文書の種類ごとに確認の責任者を決めておきましょう。
生成AIを使うと医師事務作業補助体制加算の対象になりますか?
使うだけで対象になるわけではありません。令和8年度改定の個別改定項目では、文書作成補助システムの組織的な導入、安全管理ガイドラインへの準拠、AI事業者ガイドラインの遵守、全補助者への研修などを満たすと、補助者1人を1.2人または1.3人として算入する仕組みが示されています。算定の可否は届出先と最新の通知で確認してください。
小規模なクリニックは何から始めればよいですか?
まず職員が個人のアカウントで生成AIを業務に使っていないかを確認し、入力してよい情報と使ってよい環境を院内ルールで決めます。そのうえで学習に使われない設定や利用ログの管理を確認した環境を用意し、院内規程や掲示物など患者情報を含まない文書から試すのが安全です。

まとめ

医療AIは、医療データをAIで処理して診断や治療、院内の業務を支える取り組みで、医師の代わりではなく支援の道具です。画像診断支援の実用化が進む一方、規模を問わず取り組みやすいのは、生成AIによる退院サマリーや院内文書の原案作成です。令和8年度改定の個別改定項目でも、生成AIを活用する医師事務作業補助者の算入方法が示され、安全管理と研修が要件に含まれました。

患者情報を扱う医療機関が生成AIを使うなら、入力する情報の線引き、学習に使われないことと保存場所・利用ログの確認、職員への配布と研修、院内ルールの整備を先にそろえることが前提です。まずは患者情報を含まない事務文書から試してください。法人でのAI活用に関するほかの記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。