
建設業のAI活用事例とは、ゼネコン各社が自社の発表で公表している、生成AIや画像認識・自動施工などのAIを業務に使った例のことです。このうち社員10〜200名の建設会社がそのまま真似出来るのは、工事日報・週報、KY活動の下準備、施工計画書や工事打合せ簿の下書き、施工要領書の問い合わせ、施主・近隣向けの文書と議事録といった文章の仕事になります。大手が発表している削減時間などの数字は算出方法の記載がないものばかりで、自社でも同じ効果が出るとは読めません。画像認識・自動施工・ロボットは専用の仕組みが必要で、汎用の生成AIでは真似出来ない領域と考えておきましょう。
どのツールを選ぶか、人数ごとの費用、書類別の指示文の全体像は建設業のAIツールの選び方で扱っています。
大手が生成AIに動いた背景|人手不足・高齢化と2024年問題
時間外労働の上限規制は、2024年4月から建設業にも適用されています。原則は月45時間・年360時間で、特別条項を結んでも年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間以内(いずれも休日労働を含む)に収める必要があります。令和7年版の国土交通白書によると、2024年の建設業の就業者は55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%で、全産業(32.4%・16.9%)より若手の割合が低い構成となっています。現場代理人が夜に事務所へ戻って書類をまとめる働き方は、この上限の中では続けにくくなってしまいます。
国のi-Construction 2.0は省人化3割を掲げています
国土交通省は2024年4月16日にi-Construction 2.0を策定し、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍にする目標を示しました。柱は施工・データ連携・施工管理の3つのオートメーション化です。中小の会社が生成AIで手を付けやすいのは、このうち書類と情報のやりとりにあたる部分になります。
建設業の生成AI利用率を示す調査と読み方
中小企業基盤整備機構の実態調査(2026年3月公表、有効回収1,668社、うち建設業249社)では、全業種のAI導入率は20.4%でした。建設業だけの導入率は本文に示されていません。インフォマートが建設業で働く会社員1,040名に聞いた自社調査(2026年4月)では、生成AIを利用している方が33.1%となりました。業種別の利用率を社内資料に使う前に、調査の年・母数・業種の区分を原典で確かめてみてください。
ゼネコン各社が公表している生成AIの使い方|出所と確認日つき
各社の発表を並べると、大手の多くは、社員が個人のアカウントで使う形ではなく、会社の中に専用の環境を用意してから使い方を広げています。ここで挙げる数字は、すべて各社(一部は支援会社)の自己申告で、第三者が検証した結果は見当たりません。
鹿島建設:外部のChatGPTは業務利用禁止のまま、社内版を用意した
鹿島建設は2023年8月8日、自社と国内外のグループ会社(一部を除く)の従業員約2万人を対象に、Azure OpenAI ServiceでChatGPTと同等のAIモデルを社内に構築したと発表しました。それまでChatGPTの業務利用は禁止しており、社内版には従業員認証や利用履歴の記録の機能を加えた形です。広報誌KAJIMA DIGEST 2023年10月号には、現場では社外向けのメールの代筆や報告書・議事録の要約に使う方が多いとあり、管理部門と比べて現場の利用はまだ少ないと感じている、という声も載っています。
大成建設:ChatGPT Enterpriseの全社プロジェクトと、施工計画書の下書き
大成建設は2025年11月17日、ChatGPT Enterpriseを活用した全社プロジェクトで、1人あたり週平均5.48時間、250名換算で年間6.6万時間の業務を減らしたと発表しました。同月28日には、発注情報と社内のナレッジから国土交通省の書式に沿った全体施工計画書の下書きを約10分で作る仕組みも公表しています。信頼性の低い箇所を自動で特定し、技術者が精査する作りで、作業時間は従来比で約85%減らせるとしていますが、算出方法と比較条件の記載はありません。
清水建設:施工要領書・基準書を探す技術文書アシスタント
清水建設については、AI開発会社のLightblueが2025年7月4日のPR TIMESで、Lightblue Assistantの全社導入(2025年4月・利用者2,000名超)を発表しました。施工要領書や基準書を探す技術文書アシスタントで検索時間を短くする効果を確認したとされますが、数値はなく、清水建設自身の発表でもない点に気を付けたいところです。
戸田建設:災害事例や技術提案資料とつないだ内製の基盤
戸田建設は2026年5月18日、内製した生成AI基盤Toda-AI-Portalを全社で本格展開し、同年4月時点で3,000名以上が使っていると発表しました。過去の災害事例や公共案件の技術提案資料とつなぎ、会社のフォーマットでPPTX・XLSXなどを作る機能も備えています。
安藤ハザマと西松建設:自社の施工計画書を読ませた建設特化のAI
安藤ハザマは2024年1月11日、燈社のAKARI Construction LLMに社内の施工計画書や技術文書を読ませた生成AIの運用を始め、回答に使った文書を示す機能を持たせたと発表しました。西松建設も2023年12月1日のお知らせで燈社の建設特化LLMの導入を伝え、文書管理のBoxと連携して社内文書を参照する機能を開発中としています。
長谷工コーポレーション:工種と天候から危険を挙げる「ゲンバノメ」
長谷工コーポレーションは2025年9月9日、工種・作業内容・天候・気温と現場写真から、想定されるリスクと対策を示す生成AI「ゲンバノメ」を発表しました。2025年8月時点で首都圏の全129現場に採用され、若手の施工管理者に新たな気付きを与える効果を確認したと発表されています。
日本国土開発:ルール3つの生成AI利活用ガイドライン
日本国土開発は2024年6月12日、筑波大学との共同研究で「生成AI利活用ガイドライン Ver.1.0」を作ったと発表しました。Microsoft Copilotの使用を基本とし、ルールは次の3つと付帯の1項目で構成されています。
- ルール1 個人情報、機密性の高い情報は入力しない
- ルール2 著作権を守るため、生成物を入念に確認する
- ルール3 回答の根拠や裏付けを必ず自ら確認する
- 付帯 生成物を対外的に使う場合は、生成AIを利用した旨を明記する
大林組:設計案を生成するAiCorb
大林組が2022年3月22日に発表したAiCorbは、建物の外観(ファサード)の設計案を生成する設計向けのAIで、書類作成のための生成AIとは用途が違います。
※出所(いずれも確認日 2026年10月16日):鹿島建設 2023年8月8日 発表・KAJIMA DIGEST 2023年10月号/大成建設 2025年11月17日・11月28日 発表(週5.48時間・年間6.6万時間・約85%はいずれも同社発表で、算出方法・比較条件の記載なし)/Lightblue 2025年7月4日 PR TIMES(支援会社の発表)/戸田建設 2026年5月18日 発表/安藤ハザマ 2024年1月11日 発表/西松建設 2023年12月1日 お知らせ/長谷工コーポレーション 2025年9月9日 発表/日本国土開発 2024年6月12日 発表/大林組 2022年3月22日 発表。戸田建設・安藤ハザマ・西松建設・長谷工コーポレーションの発表には、効果の数値の記載はありません。
日建連の16社アンケートに見る、大手の使い方と効果の測り方
日本建設業連合会(日建連)の先端ICT活用専門部会が2025年3月11日のセミナーで示した資料が、大手の利用の実態をつかむ手がかりになります。2024年11〜12月に会員16社の部会委員へ聞いたアンケートで、資料には正確性に欠ける部分があるかもしれないとの注記が付いています。
生成AIの利用を禁止している会社はなく、対象者・業務内容・製品を限って認めているのが13社(81%)でした。使い道は翻訳が16社、文書・議事録の要約が15社、メール文面の作成が14社、RAG(社内文書を検索して答えさせる仕組み)による社内文書検索が9社、現場の施工・安全管理が5社となっています。特に効果が出ている用途には、社内文書の作成・要約を12社が挙げました。
注目したいのは、効果を数字で測るところまで答えたのが月間1〜4時間の削減の2社だけだった点です。効果を数字で答えた会社は16社中2社で、真似をする側も記録の型から用意する必要があります。懸念には生成された情報の信憑性を16社が挙げ、ルール・指針は16社すべてが作っていました。業界団体のひな形を待つより、日本国土開発のような短いルールを自社で先に決めるほうが早いでしょう。
事例の数字を社内資料に引くときの見分け方
大手の事例の数字を社内の稟議や提案に使うときは、誰が発表した数字か、算出方法が書かれているかの2点を先に確かめましょう。ここまでの事例は、出所で4つに分けられます。
- 同社発表 鹿島建設、大成建設、戸田建設、安藤ハザマ、西松建設、長谷工コーポレーション、日本国土開発、大林組
- 支援会社の発表 清水建設のLightblue Assistant(Lightblue社のPR TIMES)
- 同社の広報誌 鹿島建設の現場での使い方(KAJIMA DIGEST)
- 業界団体の会合資料 日建連の16社アンケート(正確性についての注記つき)
算出方法まで書かれた数字は、今回の事例の中にはありません。稟議書に引くときは、たとえば次のように出所と自社の判断を分けて書くことが出来ます。
参考:大成建設は、ChatGPT Enterpriseを使った全社プロジェクトで、1人あたり週平均5.48時間の業務削減と発表している。 (出所:大成建設 2025年11月17日 発表。同社発表の数字で、算出方法の記載はない。確認日 2026年10月16日) 自社の見込み:同じ数字は当てはめず、工事日報の作成で導入前後の時間を90日間記録して判断する。
大手の事例を自社の書類作成に置き換える|日報・KY・施工計画書・議事録
大手の事例のうち、社員10〜200名の会社が汎用の生成AIで真似出来るのは、材料が文字で、出てきた文を人が読んで使う仕事です。次の節から示す使い方は、大手の発表と国・団体の資料から業務を読み替えたもので、効果の数字は自社で測ることになります。
| 大手の発表 | 自社で試す業務 | 汎用の生成AIで真似出来る範囲 |
|---|---|---|
| 大成建設:全体施工計画書の下書き(同社発表) | 施工計画書・工事打合せ簿の下書き | 章ごとの文案と、前回の計画書との差分の一覧まで。書式への整形や信頼性の自動表示は専用の仕組み |
| 長谷工コーポレーション:ゲンバノメ | 安全工程打合せで職長に渡す危険の候補リスト | 作業の情報から危険の候補と対策の案まで。KY用紙は職長が書く |
| 戸田建設:過去の災害事例とつないだ基盤 | 危険の候補リスト、新規入場者教育の資料 | 自社のヒヤリハット記録を添えた範囲まで |
| 清水建設(Lightblue社発表)・安藤ハザマ・西松建設:社内文書の検索と回答 | メーカー要領書・共通仕様書への問い合わせ | 添付した文書の範囲まで |
| 鹿島建設:社外向けメールの代筆、報告書・議事録の要約(広報誌) | 工事日報・週報、近隣向け文書、議事録 | ほぼそのまま真似出来る |
| 大林組:AiCorb(外観の設計案の生成) | なし | 専用のAI。真似の対象外 |
表の右端が専用の仕組みになっている事例は、同じ効果を汎用の生成AIだけで出すのは難しいと考えましょう。反対に、メールの代筆や議事録の要約は、会社の環境さえあれば明日からでも試すことが出来ます。どこから始めるか迷う場合は、日建連の16社で効果が出ていると答えた会社が多かった、社内文書の作成・要約から選んでみてください。
工事日報・週報の下書き|現場メモを日報の形に整える
工事日報と週報は、材料を現場のメモに限れば、生成AIに任せやすい書類になります。
入れる材料
- 天候(午前/午後)・気温
- 作業内容(工種と場所。3Fスラブ、X1〜X5通りのような階・通り芯の呼び方で)
- 出面(協力会社ごとの職種と人数。協力会社はA社・B社の記号で書き、氏名は入れない)
- 使用機械(機種・台数)、搬入材料
- 立会・検査、安全・指示事項、ヒヤリハット
- 翌日の予定
- メモには工事名を◯◯工事と記号で書く
指示文(そのまま貼れる全文)
あなたは建設会社の現場代理人の補助です。 次の【現場メモ】を、社内の工事日報の形に整えてください。 条件 ・見出しは「天候(午前/午後)・気温」「作業内容(工種・場所)」「出面(協力会社・職種・人数)」「使用機械(機種・台数)」「搬入材料」「立会・検査」「安全・指示事項」「翌日の予定」の8つにする ・各見出しの下は1行1項目の箇条書きにし、体言止めで短く書く(例:3Fスラブ配筋 X1〜X5通り) ・出面は協力会社ごとに、メモの記号(A社・B社など)のまま職種と人数を書く ・工事名はメモの記号(◯◯工事)のまま書き、実名に置き換えない ・人の名前、発注者名、現場の住所は書かない ・メモに書かれていない数字・工種・機械は足さない。書かれていない見出しは「記載なし」とする ・最後に「確認が必要な点」として、メモの中で意味があいまいな箇所を挙げる 【現場メモ】 (ここに当日のメモを貼る。工事名は◯◯工事と記号で書く)
週報にまとめるときは、その週の日報をまとめて貼り、次の指示文を続けて使います。
次の【今週の日報】5日分から、社内向けの週報を作ってください。 条件 ・「今週の進捗(予定との差)」「遅れの理由と対策」「安全の振り返り」「来週の予定」「上長に相談したいこと」の順に書く ・予定との差は、日報に書かれた割合や数量だけを使って書く。計算で新しい数字を作らない ・日報どうしで食い違う記載があれば、「食い違い」として両方を並べて示す ・人の名前、発注者名、現場の住所は書かない。協力会社は日報の記号のまま書く 【今週の日報】 (ここに5日分を貼る)
出てくる文の例
材料が、晴れのち雨、3Fスラブ配筋X1〜X5通り、A社鉄筋工6名、B社型枠大工4名、D13・D16搬入、午後雨で2時間中断、明日X5〜X8、という程度のメモでも、次のような形で返ってきます。
◯◯工事 工事日報 天候(午前/午後)・気温 ・晴れ/雨 気温は記載なし 作業内容(工種・場所) ・3Fスラブ配筋 X1〜X5通り ・午後 降雨のため約2時間 作業中断 出面(協力会社・職種・人数) ・A社 鉄筋工 6名 ・B社 型枠大工 4名 使用機械(機種・台数) ・記載なし 搬入材料 ・鉄筋 D13・D16(数量は記載なし) 立会・検査 ・記載なし 安全・指示事項 ・記載なし 翌日の予定 ・3Fスラブ配筋 X5〜X8通り 確認が必要な点 ・搬入時の揚重に使った機械の有無 ・B社 型枠大工の作業場所(メモに記載なし)
施工管理アプリや音声入力のメモと組み合わせる
ANDPADなどの施工管理アプリで日報を出している会社なら、アプリに貼る前の文を整える使い方になります。現場で音声入力して話したメモを貼るだけでも、見出しに沿った日報の形に揃えることが出来ます。
人が必ず確かめる点
- 出面の人数・時間・数量がメモと一致しているか
- メモにない作業や機械が足されていないか
- 遅れの理由が、発注者や協力会社の責任と読める書き方になっていないか
- 週報の食い違いの欄に挙がった箇所を、日報を書いた本人に確かめたか
確認が必要な点を毎回出させておけば、翌朝にメモの抜けを現場で聞き直せます。メモにない数字を足させない一文は、どの指示文にも必ず入れておきましょう。
現場ごとに個人のAIを使う形から会社が管理する1つの環境へ移すと、指示文や入力の決まりを全員で揃えられます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
KY活動の下準備|安全工程打合せで職長に渡す危険の候補リスト
毎朝のKY用紙は、職長が作業する方々と話し合って書くものです。生成AIに作らせるのは、前日の安全工程打合せで職長に渡す危険の候補リストまでにしておきましょう。長谷工コーポレーションのゲンバノメも、工種・作業内容・天候・気温からリスクと対策を示し、若手の施工管理者に新たな気付きを与える効果を確認したと発表されています。厚生労働省の職場のあんぜんサイトが説明するKYT基礎4ラウンド法(1R どんな危険がひそんでいるか、2R これが危険のポイント、3R あなたならどうする、4R 私達はこうする)は訓練の型として知られており、候補リストもこの順に並べると職長が話し合いに使いやすくなります。
入れる材料
- 翌日の作業(協力会社の記号ごとの作業内容。開口部まわりの型枠解体、など)
- 天候・気温・風の予報
- 使う機械・道具、作業場所の状況(高さ、開口部、足元、周りの重機)
- 自社の過去のヒヤリハット記録のうち、同じ工種のもの(氏名・日付・現場名を消したもの)
指示文(そのまま貼れる全文)
あなたは建設現場の安全担当の補助です。 次の【翌日の作業】をもとに、安全工程打合せで職長に渡す「危険の候補リスト」を作ってください。KY用紙そのものは職長が書くので、作らないでください。 条件 ・作業ごとに、KYT基礎4ラウンド法の順(1R どんな危険がひそんでいるか/2R これが危険のポイント/3R あなたならどうする/4R 私達はこうする)に並べる ・1Rは「〜なので、〜して、〜になる」の形で、危険の候補を3〜5つ挙げる ・2Rは、起きたときの重さと起きやすさで話し合いで特に取り上げたい候補を2つ選び、理由を短く書く ・3Rは、2Rの2つそれぞれに対策の案を2〜3つ挙げる ・4Rは、指差し唱和で確かめるチーム行動目標の例を1つ書く(例:開口部 手すり・養生 ヨシ!) ・【過去のヒヤリハット】に同じ作業の記録があれば、どの記録を参考にしたかを書く ・法令の条番号や数値の基準は書かない(必要な場合は「要確認」と書く) ・人の名前、発注者名、現場の住所は書かない。協力会社はA社・B社の記号で書く 【翌日の作業】 協力会社(記号)・作業内容: 天候・気温・風の予報: 使う機械・道具: 作業場所の状況: 【過去のヒヤリハット】 (あれば貼る。なければ「なし」と書く)
出てくる文の例
B社 型枠解体(3F 開口部まわり) 1R どんな危険がひそんでいるか ・開口部の近くで型枠をばらすので、足元の板を踏み外して、開口部から墜落する ・解体した型枠材を足元に置くので、材料につまずいて転倒する ・バールで型枠をはがすので、はね返った材料が顔に当たる 2R これが危険のポイント ・開口部からの墜落(起きたときの重さが大きい) ・型枠材へのつまずき(足元に材料が増え、起きやすい) 3R あなたならどうする ・開口部からの墜落:作業前に手すりと養生を確かめる/墜落制止用器具を使う/開口部の近くに材料を置かない ・型枠材へのつまずき:ばらした材料はその都度置き場へ運ぶ/通路を決めて表示する 4R 私達はこうする(行動目標の例) ・開口部 手すり・養生 ヨシ!
人が必ず確かめる点
- 危険の候補が翌日の現場の状況と合っているか(AIは現場を見ていない)
- 法令・社内の決まり・元請の安全指示と食い違う対策が入っていないか
- 候補リストを職長に渡したあと、KY用紙は職長と作業する方々の話し合いで書いたか
戸田建設が過去の災害事例を社内の基盤につないだように、自社のヒヤリハット記録を添えるほど、出てくる候補は自社の現場に近づいていきます。KYは話し合うこと自体が目的なので、AIの案を読み上げて終わりにしないようにしましょう。
重機の作業計画書と安全書類・新規入場者教育の下書き
安全に関わる書類のうち、生成AIで下書きしやすいのは、決まった事項を漏れなく書く作業計画書と、作業する方々に読ませる説明文です。
車両系建設機械の作業計画書の下書き(安衛則第155条)
バックホウなどの車両系建設機械を使う作業では、労働安全衛生規則第155条により、作業前の調査(第154条)で知り得たことに合う作業計画を定め、その計画で作業する決まりがあります。計画には使用する機械の種類及び能力・運行経路・作業の方法を示し、運行経路と作業の方法は関係労働者に周知しなければなりません。重機を持ち込む協力会社が作り、元請が確かめることの多い書類なので、協力会社から出てきた作業計画書を貼って3つの事項の抜けを確かめさせる使い方も出来ます。
次の【作業の条件】から、車両系建設機械の作業計画書の下書きを作ってください。 条件 ・見出しは「使用する機械の種類及び能力」「運行経路」「作業の方法」「関係労働者への周知の方法」の4つにする ・機械の能力は、機体重量・バケット容量(m3)・クレーン機能の有無を、【作業の条件】に書かれた値だけで書く。書かれていなければ「要確認」と書く ・運行経路は【作業の条件】にある現場内の呼び方だけで説明し、地名や住所は書かない ・作業の方法には、誘導者の配置、立入禁止の範囲、合図の方法を入れる。決まっていない項目は「要確認」と書く ・最後に、作業前の調査(地形・地質・周りの状況)で確かめるべき点を箇条書きで挙げる 【作業の条件】 機械の種類・機体重量・バケット容量・クレーン機能の有無: 作業の内容と範囲: 現場内の通路・搬入口の呼び方: 周りの状況(埋設物・架空線・近くの作業):
使用する機械の種類及び能力 ・バックホウ 1台 機体重量 ◯◯t(要確認) バケット容量 0.45m3 クレーン機能 なし 運行経路 ・北側搬入口から場内通路を通り、A工区の掘削位置まで。帰りも同じ経路 作業の方法 ・掘削と積込み。誘導者を1名配置(配置の位置は要確認) ・旋回範囲をカラーコーンで囲い、立入禁止とする ・合図の方法(要確認) 関係労働者への周知の方法 ・前日の安全工程打合せと当日の朝礼で説明する 作業前の調査で確かめるべき点 ・掘削位置の埋設物と、搬入口付近の架空線
安全書類(全建統一様式)と新規入場者教育の資料
施工体制台帳・再下請負通知書・労務安全に関する届出書の様式集は、一般社団法人全国建設業協会が全建統一様式として発行しています。このうち作業員名簿は作業員の方一人ひとりの個人情報が並ぶ書類なので、生成AIには入れないと決めておきましょう。生成AIに向いているのは、新規入場者教育の説明文、協力会社が送り出し教育に使う説明文、協力会社に配る書類の書き方の説明文といった、個人の情報を含まない文書になります。
あなたは建設現場の安全担当の補助です。 次の【現場のルール】をもとに、新規入場者教育で読み上げる説明文と、理解を確かめる問題を作ってください。 条件 ・説明文は5分ほどで読み上げられる長さにし、「現場の概要」「入退場の決まり」「立入禁止の場所」「保護具」「重機・車両の動線」「緊急時の連絡と避難」の順に書く ・【現場のルール】に書かれていない決まりは足さない。足りない項目は「(要確認)」と書く ・外国から来た作業員の方にも伝わるよう、短い文とやさしい言葉で書く ・最後に、○×で答える問題を5問作り、答えを付ける ・発注者名、工事名、現場の住所、人の名前は書かない 【現場のルール】 (入退場の時間、保護具、立入禁止の場所、喫煙所、重機の動線、緊急時の連絡先の部署名などを貼る)
出てきた説明文は、元請の安全の決まりと現場のルールに合っているかを安全担当が確かめてから使ってください。○×の問題は、説明文に書いた内容だけから作られているかも見ておくと安心です。
施工計画書の下書き|特記仕様書・共通仕様書の根拠を書き分ける
施工計画書は、大成建設が専用の仕組みで下書きを約10分で作ると発表した書類ですが、汎用の生成AIでも章ごとの文案づくりなら真似が出来ます。公共工事標準請負契約約款の第1条第3項では、施工方法等は、約款と設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定めるとされています。文案をAIに作らせても、中身を決めて責任を持つのは会社の側である点は変わりません。
公共土木では、土木工事共通仕様書と発注者の施工計画書作成要領が定める記載項目を章立てに使います。建築工事では、公共建築工事標準仕様書にならって総合施工計画書と工種別施工計画書に分け、民間工事では監理者の確認を受けることが多くなります。工種別の計画書は、協力会社の施工要領書を土台に自社の現場に合わせて直す使い方が向いているでしょう。
入れる材料
- 章立て(公共土木は発注者の作成要領の記載項目、民間建築は自社の過去の計画書の目次)
- 特記仕様書のうち、施工方法・品質管理・安全管理に関わる箇所の要点(発注者名・工事名・住所を消したもの)
- 共通仕様書の該当条項(条項の番号と要旨)
- 工程の大まかな区切りと主な工種、自社の品質管理・安全管理の決まりごと
特記仕様書の要点を先に一覧にする指示文
次の【特記仕様書の写し】から、施工計画書に反映が必要な条件だけを抜き出し、番号つきの一覧にしてください。 条件 ・1行に1つの条件を書き、どの章(施工方法・品質管理・安全管理・環境対策など)に関わるかを添える ・数値と単位は、写しの表記どおりに書き写す ・解釈が分かれそうな条件には「要確認」と付け、なぜ分かれるかを1行で書く ・発注者名、工事名、現場の住所が残っていたら、その部分は書き写さない 【特記仕様書の写し】 (発注者名・工事名・住所を消した写しを貼る)
章ごとの文案を作る指示文
あなたは建設会社の工事部で施工計画書を作る担当の補助です。 次の材料から、施工計画書の「◯章(ここに章の名前を書く)」の文案を作ってください。 条件 ・【章立て】の該当する章の小見出しに沿って書く ・根拠は書き分ける。【特記仕様書の要点】によるものは文末に(特記:番号)、【共通仕様書の該当条項】によるものは(共仕:条項)を付ける ・数量・寸法・強度・日数などの数字は、材料に書かれたものだけを使う。書かれていない数字は「◯◯(要確認)」と空欄にする ・材料から判断できない施工方法は、案を2つ並べ、それぞれの前提を書く ・発注者名、工事名、現場の住所は書かない ・最後に「担当者が決める必要がある点」を箇条書きで挙げる 【章立て】 (作成要領の記載項目か、過去の計画書の目次を貼る) 【特記仕様書の要点】 (番号つきの一覧を貼る) 【共通仕様書の該当条項】 (条項の番号と要旨を貼る) 【工程と主な工種】 (区切りを貼る) 【社内の決まりごと】 (品質管理・安全管理の決まりの該当部分を貼る)
4.2 コンクリートの打設 1回あたりの打設量は◯◯m3(要確認)を目安とする(特記:2)。 打重ねの時間間隔は、共通仕様書の規定による(共仕:◯-◯-◯ 要確認)。 打設の方法は、次の2案が考えられる。 案A:ポンプ車1台で打設する(前提:1回の打設量が◯◯m3以下の場合) 案B:ポンプ車2台で打設する(前提:打設量が多く、1台では打重ねの時間間隔を守れない場合) 担当者が決める必要がある点 ・1回あたりの打設量 ・案Aと案Bのどちらにするか ・打設当日の天候による中止の判断基準
前回の計画書との違いを一覧にする指示文
次の【前回の施工計画書の該当章】と【今回の特記仕様書の要点】を比べ、書き換えが必要な箇所を一覧にしてください。 条件 ・一覧は「前回の記載」「今回の条件」「直す内容」の3列の表にする ・今回の条件は(特記:番号)で、どの要点によるものかを示す ・前回の記載のままでよいか判断できない箇所は、「直す内容」に「要確認」と書き、判断に必要な情報を1行で書く ・数量・寸法・日数などの数字は、材料に書かれた値だけを使う ・発注者名、工事名、現場の住所は書かない 【前回の施工計画書の該当章】 (固有名詞を消して貼る) 【今回の特記仕様書の要点】 (番号つきの一覧を貼る)
人が必ず確かめる点
- 特記仕様書の条件がすべて反映されているか(特記の番号で突き合わせる)
- (共仕:条項)の番号と中身が、使う版の共通仕様書と合っているか
- 要確認の空欄がすべて埋まっているか
- 工事部長など社内で決めた確認者のチェックを通したか
大成建設の仕組みが信頼性の低い箇所を自動で特定するのと同じ役割を、ここでは要確認の空欄と、担当者が決める必要がある点の2つで人の目に回しています。空欄を許す一文がないと、AIはもっともらしい数字で埋めようとするので注意してください。
工事打合せ簿(協議・承諾・提出・報告)の下書き
公共土木の現場で日々出てくる工事打合せ簿も、件名・内容・理由の文を作る部分は生成AIに下書きさせることが出来ます。数量や寸法は、現場で測った値と図面の値だけを人が入れる形にしておきましょう。
あなたは公共土木工事の現場代理人の補助です。 次の【メモ】から、工事打合せ簿の下書きを作ってください。 条件 ・発議事項は「協議」「承諾」「提出」「報告」「通知」のうち【メモ】に書かれたものにする。書かれていなければ「要確認」とする ・「件名」「内容」「理由」の3つを作る。件名は30字以内にする ・内容には、変更前と変更後、対象の位置(測点・工種)を書く ・数量・寸法などの数値はメモに書かれた値だけを使い、書かれていなければ「◯◯(要確認)」とする ・理由には、現地の状況などメモに書かれた事実だけを書き、推測で理由を足さない ・発注者名、工事名、現場の住所、人の名前は書かない ・最後に、添付が必要と思われる資料(図面・写真・計算書など)を挙げる 【メモ】 発議事項: 対象の位置(測点・工種): 変更前: 変更後: 現地の状況:
発議事項:協議 件名:No.12〜No.15間 側溝の布設位置の変更について 内容:No.12〜No.15間の側溝について、布設位置を設計図から道路中心側へ◯◯m(要確認)移す。延長は◯◯m(要確認)。 理由:試掘の結果、同区間で既設の埋設管が設計図と異なる位置にあることを確認したため。 添付が必要と思われる資料 ・試掘の位置図と写真 ・変更後の平面図・横断図
発議事項の区分や添付資料の決まりは発注者ごとに違うため、発注者の要領と照らしてから監督職員に出してください。測点と数量は、図面と現場の記録で必ず突き合わせる必要があります。
施工要領書・基準書の問い合わせ|メーカー要領書・共通仕様書を添付して聞く
大手は清水建設・安藤ハザマ・西松建設・戸田建設のように社内文書とAIをつなぐ形で取り組んでいますが、社員10〜200名の会社では社内基準をほとんど持たないことも多いでしょう。聞く相手になるのは、メーカーの施工要領書、共通仕様書・施工管理基準の該当章、自社の手順書(あれば)になります。最初は質問のたびに該当する文書を添付して聞く形から始め、古い版を根拠にされないよう文書を揃えておきます。添付する文書は、最新版だけを1つのフォルダに集め、版と日付をファイル名に入れておきましょう。
添付した【文書】だけを根拠に、次の【質問】に答えてください。 条件 ・答えの後に、根拠にした文書名・版・章・ページ(または項目番号)を必ず書く ・添付した文書に書かれていないことは、推測で補わず「添付の文書には記載がありません」と答える ・文書どうしで内容が食い違う場合は、両方の記載と文書名・版を並べて示し、どちらが正しいかは判断しない ・数値(深さ・間隔・規格値・時間・温度など)は、文書の表記どおりに単位まで書き写す 【質問】 (例:添付したメーカーの施工要領書で、アンカーの穿孔深さと清掃方法は?) (例:土木工事施工管理基準で、側溝工の出来形管理の測定項目と規格値は?) 【文書】 (メーカーの施工要領書、共通仕様書・施工管理基準の該当章などを添付する)
答え:添付の施工要領書では、穿孔深さは「◯◯mm」、清掃は「◯◯」の手順と定められています。 根拠:◯◯社 あと施工アンカー施工要領書(2025年版)5章 穿孔・清掃、8ページ 補足:添付の文書には、穿孔径の許容差の記載がありません。 答え:添付の土木工事施工管理基準では、側溝工の出来形管理の測定項目は「◯◯」、規格値は「◯◯」です。 根拠:土木工事施工管理基準(添付の版)◯◯章 側溝工、◯◯ページ
- 示された文書名・ページを開き、その場所に本当にその記載があるか
- 添付した文書が、発注者や監理者が指定した版か
- 記載がないと返った質問は、文書の不足か、AIの読み落としか
安藤ハザマが回答に使った文書を示す機能を持たせているのも、この確かめを人がしやすくするためと読めます。文書をまとめて読ませる仕組みに進むのは、問い合わせの多い文書がどれか分かってからでも遅くありません。
施主・近隣向けの文書と打合せ議事録
鹿島建設の広報誌で現場の使い方として紹介されたのが、社外向けメールの代筆と、報告書・議事録の要約でした。日建連の16社アンケートでも、メール文面の作成が14社、文書・議事録の要約が15社と、多くの会社が使っている用途になります。
近隣向けのお知らせ文
材料は、工事の内容、作業の日時と時間帯、休工日、音や振動・車両の出入りが増える時間で足ります。工事名・工期・施工者名・現場責任者名・電話番号は空欄で残し、人が書き入れてください。
次の【お知らせの材料】から、工事現場の近隣にお住まいの方へ配るお知らせ文を作ってください。 条件 ・A4用紙1枚に収まる長さにする ・冒頭で、ご迷惑をおかけすることへのお詫びを一文で書く ・日時、時間帯、休工日、音・振動・車両の出入りが増える時間は、【お知らせの材料】のとおりに書き、言い換えない ・専門用語(打設、揚重など)は使わず、「コンクリートを流し込む作業」のように言い換える ・工事名、工期、施工者名、現場責任者名、電話番号は「( )」の空欄で残す ・最後に、材料に書かれていないが近隣の方が気にしそうな点を、確認用に箇条書きで挙げる(お知らせ文には入れない) 【お知らせの材料】 工事の内容: 作業の日時と時間帯: 休工日: 音・振動・車両が増える時間:
工事のお知らせ 近隣の皆さまには、日ごろより工事にご理解をいただき、ありがとうございます。工事の音や車両の出入りでご迷惑をおかけしており、申し訳ございません。 下記の日程で、建物の床にコンクリートを流し込む作業を行います。この日は、コンクリートを運ぶ車両の出入りが普段より多くなります。 ・作業日:◯月◯日(◯) ・作業の時間帯:午前8時〜午後5時 ・車両の出入りが増える時間:午前8時〜正午 ・休工日:日曜日・祝日 工事名:( ) 工期:( ) 施工者:( ) 現場責任者:( ) 電話:( ) 確認用(お知らせ文には入れない) ・雨で作業日が変わる場合の連絡方法 ・車両の待機場所と、通学の時間帯との重なり
道路工事の交通規制のお知らせにも、材料を規制の区間・期間・時間帯・迂回路に入れ替えれば同じ指示文が使えます。許可の条件で表示が決まっている事項は、許可書のとおりに人が書き入れてください。
打合せ議事録
施主・監理者・協力会社との打合せは、録音の文字起こしか、手書きのメモを打ち直したものを材料にします。出席者の氏名は、施主A、監理B、のような記号に置き換えてから入れてください。
次の【打合せの記録】から、議事録を作ってください。 条件 ・冒頭に「第◯回」「日時」「場所」「出席者(記号)」を書く ・本文は「決定事項」「指示事項(監理者からの指示)」「保留事項(次回までに決めること)」「宿題(誰が・いつまでに)」の4つに分ける ・決定事項は、記録の中で合意が確認できたものだけにする。合意があいまいなものは保留事項に入れる ・宿題の担当は、記録に出てくる記号(施主A、監理B、施工Cなど)のまま書く ・金額・日付・数量は、記録の表記どおりに書く。記録にないものは書かない ・最後に「次回の日時」を書く。記録になければ「要確認」とする 【打合せの記録】 (文字起こしかメモを貼る)
第5回 定例打合せ 日時:◯月◯日 10時〜11時 場所:現場事務所 出席者:施主A、監理B、施工C 決定事項 ・外構の舗装材は、見本2のタイルで進める(施主Aが了承) 指示事項(監理者からの指示) ・監理B→施工C:見本2のタイルの納期を確認し、次回までに報告すること 保留事項(次回までに決めること) ・駐車場の照明の位置 宿題(誰が・いつまでに) ・施工C:照明の位置の案を2つ、次回の打合せまでに用意する 次回の日時:要確認
- 決定事項に、実際には合意していないことが入っていないか
- 監理者の指示が、決定事項と混ざらずに指示事項に分かれているか
- お知らせ文の日時・時間帯が、最新の工程表と協力会社の予定と合っているか
- 施主に送る前に、記号を実名に戻したうえで上長が中身を確かめたか
施主や近隣の方に出る文書は会社の印象に直結するため、生成AIの文案は下書きと割り切り、送る前に必ず人が読み直しましょう。日本国土開発のガイドラインが付帯の項目で、生成物を対外的に使うときは生成AIを利用した旨を明記するとしている点も、自社のルールを決めるときの参考になるでしょう。
汎用の生成AIでは真似出来ない領域|画像認識・自動施工・ロボット
画像から判定する検査、機械を動かす自動施工やロボット、設計データを扱う仕組みは、汎用の生成AIに文章で頼んでも同じことは出来ません。専用の機器やソフト、データ、導入の支援がそろって初めて動く仕組みと考えたほうが、事例の読み違いが少なくなります。
画像認識・専用システムの事例(K-SAFE・デジタル棟梁・鉄筋継手の外観検査)
鹿島建設のK-SAFE、竹中工務店のデジタル棟梁、鉄筋継手の外観検査など、専用のシステムを使う事例も、建設業のAI活用としてよく紹介されています。社内資料に引く場合は、各社の発表ページで日付と数字を確かめてから使ってください。汎用の生成AIも写真を読み取れますが、検査の合否を任せる使い方は避け、写真の説明文や記録の文面を作らせる範囲にとどめるのが無難です。写真を使うときは、人の顔や工事看板、発注者名が写り込んでいないかを先に確かめましょう。
設計案の生成とBIM/CIM(大林組のAiCorb・設計・BIM/CIMの自動化)
大林組のAiCorbは外観の設計案を生成する設計向けのAIで、施工会社にとっては真似の対象というより、設計の側でこうした道具が使われていると知っておく事例になります。BIM/CIM(建物や構造物を3次元のモデルで設計・管理する手法)の自動化も、元になる3次元モデルと専用ソフトが前提です。汎用の生成AIで手伝えるのは、モデルから書き出した数量表を読ませて説明文を作る、といった周辺の作業までとなります。
ロボット・ドローン・IoTと自動施工、工程管理の最適化
i-Construction 2.0が柱の1つに掲げる施工のオートメーション化は、機械そのものを動かす話で、書類の生成AIとは別の投資です。ドローンでの測量やIoTのセンサー、工程の自動の組み直しも、機器・ソフト・データがそろって初めて効果が出る分野と考えておきましょう。汎用の生成AIでは、工程表を貼って遅れの影響を文章で説明させたり、協力会社への調整の連絡文を作らせたりするところまでが現実的でしょう。
守秘と情報漏洩|約款・国交省通知・個人情報保護委員会の注意喚起
生成AIに入れる材料を決めるときは、工事の契約で負っている守秘の約束から考えるのが近道です。
公共工事標準請負契約約款 第1条第4項と七会約款 第7条の2
中央建設業審議会の公共工事標準請負契約約款(最終改正 令和7年12月2日)は、第1条第4項で、受注者は契約の履行に関して知り得た秘密を漏らしてはならないと定めています。民間(七会)連合協定 工事請負契約約款にも、令和2年4月の改正で設けられた第7条の2「秘密の保持」があり、相手方から受けた秘密情報を第三者に開示・漏洩せず、契約の履行以外の目的に使わないことを求める内容になります。
国交省 令和8年7月29日の通知
国土交通省は令和8年7月29日、建設コンサルタント業務等での生成AIの利活用について依頼する通知を出しました。対象は測量・土木関係の建設コンサルタント業務・地質調査業務等で、建設工事そのものは対象外です。成果物を生成AIでとりまとめる業務では生成AI利活用計画書の提出を求める一方、法令や基準の検索補助、検討資料のたたき台などに留まる場合は、従来どおり業務計画書に行政情報の流出防止対策を書けばよいとされています。
個人情報保護委員会の注意喚起
個人情報保護委員会は令和5年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で、個人情報を含むプロンプト(AIへの指示文)を入れる場合は、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめるよう求めました。提供事業者が個人データを機械学習に使わないこと等を十分に確かめるよう促す内容も含まれています。この記事の指示文で発注者名・住所・氏名を入れない形にしているのも、こうした約束と注意喚起に沿わせるためです。
AIの誤りと失敗パターン|最終確認は人が持つ
日建連の16社アンケートでは、生成された情報の信憑性を16社すべてが懸念に挙げ、日本国土開発はルール3で回答の根拠や裏付けを必ず自ら確認することを定めました。現場で起こりうる失敗を、2つの例で見ておきましょう。
起こりうる失敗1:日報の人数を前日分と混ぜて書く
前日と当日のメモを続けて貼ると、前日の出面の人数が当日の欄に混ざって書かれることが起こりえます。メモは1日分ずつ貼り、日付を先頭に書いたうえで、出面の人数をメモと突き合わせてから日報に移してください。
起こりうる失敗2:工程変更前の作業時間のままお知らせ文を配る
前の週に作った文案を使い回すと、工程が変わったあとも古い作業時間のままのお知らせ文が近隣に配られてしまいます。お知らせ文は配る前日に、最新の工程表と日時・時間帯を1つずつ照らしましょう。AIは渡された材料の範囲でしか書けないため、材料が古ければ出てくる文も古いままとなります。
小さく始める手順|自社の最初の事例を90日で記録する
最初は1つの業務・数名・90日に絞り、導入前と後の作業時間を記録して、自社の数字を作ってみましょう。
手順
- 対象を1業務に決める(工事日報や議事録のように、毎日・毎週発生して材料が文字のもの)
- 使う人を2〜5名に決め、会社が管理する環境のアカウントを渡す
- 始める前の2週間、その業務にかかった時間を記録する
- この記事の指示文を自社の言葉に直し、同じ業務で60日ほど使う
- 最後の2週間で、時間と直した箇所の数を記録し、続けるか・広げるかを決める
記録の型
記録は、次の項目を表計算ソフトの1行に1件ずつ残すだけで足ります。
- 日付と業務名(例:工事日報)
- AIを使ったか(使った・使わない)
- 作業にかかった時間(分)
- AIの出力から直した箇所の数と、主な直しの内容
- 確かめた人(職種や役割で書く)
- 使った指示文の版
大成建設の週5.48時間のような数字も、自社で同じ型の記録を取れば、算出方法を説明出来る自社の数字として社内で使えるようになります。直した箇所の数は、指示文を見直すときの手がかりにもなるので、時間と一緒に残しておいてください。
2つ目からの業務を広げる順番
最初の90日が終わったら、材料が社内で完結する業務から順に広げていくのが無理のない進め方です。
- 工事日報・週報、打合せ議事録(材料が社内のメモで、読む人も社内)
- 安全工程打合せの危険の候補リスト、新規入場者教育の資料
- 施主・近隣向けの文書(社外に出るため、上長の確認の手順を決めてから)
- メーカー要領書・共通仕様書への問い合わせ(最新版を1つのフォルダに揃えてから)
- 施工計画書・工事打合せ簿の下書き(発注者から受け取った資料の扱いを社内で決めてから)
後ろの業務ほど、発注者から受け取った資料や社外に出る文書を扱うため、守秘と確認の決まりを先に整える必要があります。
費用の目安と補助金の確かめ方
ツールの費用は人数と使う量で変わるため、人数ごとの計算は冒頭で紹介した選び方の記事に譲ります。補助金は年度ごとに公募の内容と対象になる経費が変わるので、使う年度の公募要領で、生成AIのサービスの利用料が対象に入るかを確かめましょう。90日の記録は、補助金を申請するときに導入の目的と効果を説明する材料にもなるでしょう。
会社で安全に使うには|学習させない設定・ログ・社員への配布・使い分け
大手の事例に共通するのは、社員が個人のアカウントで使う形から、会社が管理する環境へ移したうえで使い方を広げている点です。鹿島建設はChatGPTの業務利用を禁止したまま、従業員認証と利用履歴の記録を備えた社内の環境を用意し、約2万人を対象に運用を始めました。
学習させない設定を会社で揃える
OpenAIは法人向けのChatGPT BusinessやEnterpriseについて、既定ではデータをモデルの学習に使わないと公式に案内しています。個人向けのFree・Plus・Proでは学習へのデータ共有が既定で有効で、本人が設定の「データコントロール」内にある「モデルを改善する」の項目を切り替える必要があります。Anthropicも、法人向け製品の入力と出力は既定で学習に使わないとしています。ただし、評価ボタンでフィードバックを送ると関連する会話全体を最大5年保存するとしているため、施主や作業員の情報を含む会話では押さないよう決めておきましょう。どちらも提供元の自己申告で、保持の期間やログの扱いは契約ごとに確かめる必要があります。
ログを残し、会社のアカウントで配る
鹿島建設が利用履歴の記録を社内版に加えたように、誰がいつどのAIを使ったかを会社が見られる状態にしておけば、問題が起きたときにたどれます。日建連の16社のうち13社が対象者・業務内容・製品を限って利用を認めている点からは、使う人と使い道を会社で決めてから配る考え方が読み取れます。退職や異動のときにアカウントを止められるよう、会社のメールアドレスで発行してください。社員が会社に知らせずに個人のAIを使う状態は野良AI(シャドーAI)と呼ばれ、禁止だけで終わらせず会社の環境を用意することが、減らす近道になります。AIごとの得意な用途の違いは主要4AIの違いと使い分けで紹介しています。
よく使う指示文を会社で1つの版に揃える
この記事の指示文は、会社で1つの版に決めて共有し、直したら版の番号を上げていく運用にしてみてください。現場ごとに指示文が少しずつ違うと、出てくる文の形が揃わず、90日の記録も比べにくくなってしまいます。共有する場所は会社が管理するAIの環境の中か社内のファイル共有にして、個人のメモアプリには置かないと決めておきましょう。
日本国土開発のルール1〜3を自社の言葉にする
社内ルールは、日本国土開発のルール1〜3(個人情報・機密性の高い情報は入れない、生成物を入念に確かめる、根拠と裏付けを自分で確かめる)に、この記事の指示文で使った、発注者名・現場の住所・作業員の氏名は入れない、を足すだけでも形になります。日建連の16社はすべてルール・指針を作っており、人数の少ない会社ほど、A4用紙1枚程度の短いルールから始めるほうが続けやすいでしょう。ルール文書の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方にまとめています。
現場も事務所も、会社が管理する1つの環境で
UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです。この記事の日報・KY・お知らせの指示文は、よく使う指示と手順を社内限定で共有するカスタムプラスで会社の共通の型として配り、管理者ダッシュボードで利用ログや権限を確かめられます。施工要領書や社内の手順書など、自社で扱う資料を読み込ませて回答させる社内文書RAGも備え、基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
中小の建設会社でも、大手ゼネコンと同じ効果が出ますか?
施工管理アプリ(ANDPADなど)と二重の作業になりませんか?
協力会社の職長に使わせてもよいですか?
現場の写真を生成AIに見せて、KYや検査に使えますか?
公共工事の施工計画書を生成AIで下書きしてもよいですか?
建設業の業界団体が出した生成AIのガイドラインはありますか?
社員が個人のChatGPTで日報を作っています。止めるべきですか?
まとめ
建設業のAI活用事例のうち、社員10〜200名の会社が真似出来るのは、工事日報・週報、危険の候補リスト、作業計画書や新規入場者教育の資料、施工計画書と工事打合せ簿、要領書の問い合わせ、施主・近隣向けの文書と議事録といった文章の仕事になります。大手の削減時間や削減率は同社発表で算出方法の記載がないため、社内資料に引くときは出所を書き添えてください。画像認識・自動施工・ロボットは専用の仕組みの領域で、汎用の生成AIでは真似出来ません。
始めるときは、発注者名・現場の住所・作業員の氏名を入れない指示文を会社で揃え、1つの業務で90日ほど時間を記録してみましょう。業務でのAIの使い方を扱う他の記事はAI活用コラム一覧にまとめています。
