
建設業のAIツールとは、施工管理や安全書類、積算・見積といった建設会社の仕事を、AIの力で速く進めるためのソフトやサービスの総称です。選ぶときは、書類の下書きに強い汎用の生成AIと、図面や工程のデータに強い建設特化ツールを現場と事務所で使い分け、どちらも社員個人のアカウントではなく会社が契約した環境で使うことが出発点になります。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、国土交通省は令和8年7月29日付の建設コンサルタント業務等向けの通知で、生成AIの積極的な利活用と情報漏えいへの留意を求めています。現場と事務所それぞれの使い方から、書類ごとのプロンプト例、人数別の費用の出し方まで、順に見ていきましょう。
建設業のAIツールとは|汎用の生成AIと建設特化ツールの2種類
建設業で使われるAIツールは、大きく2種類に分けて考えると整理しやすくなります。1つは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityのように、文章の作成や要約、調べものを幅広くこなす汎用の生成AIです。生成AIとは、文章・画像・プログラムなどを作り出すことが出来るAIの総称を指します。もう1つは、工程表の作成、現場写真の整理、積算、図面の読み取りなど、建設の特定の業務向けに作られた建設特化ツールになります。
2つは競い合うものではなく、得意な仕事が違います。汎用の生成AIは、日報や報告書、近隣へのお知らせ文、社内の通知文など、言葉で組み立てる仕事の下書きを短い時間で作ることが出来ます。一方で、図面や写真、現場のデータと直接つながる仕事は、建設特化ツールのほうが向いている場面が多いでしょう。実際には、まず汎用の生成AIを会社の環境で全員に配り、足りない業務だけを建設特化ツールで補う順番が、費用の面でも管理の面でも無理のない進め方となります。
最近は、指示を受けて複数の手順を自分で進めるAIエージェントという言葉もよく使われています。ただ、社員10〜200名規模の建設会社や工務店、設計事務所の経営者・総務の方がまず決めるべきなのは、どの種類のAIを、誰に、どの環境で使わせるかという3点です。この3点が決まらないまま個別のツールを比べ始めると、現場ごとに違うサービスが入り、後からまとめ直す手間が増えてしまいます。
建設業でAIツールが求められる背景|2024年の上限規制とi-Construction 2.0
建設業でAIツールが求められる背景には、働ける時間の上限が法律で決まったことと、担い手の高齢化が同時に進んでいることがあります。人を増やしにくいなかで、同じ仕事を短い時間で終わらせる手段の1つとして、生成AIが注目されるようになりました。
2024年4月から時間外労働の上限規制が建設業にも適用
厚生労働省によると、建設業には5年間の猶予が設けられていましたが、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。上限は原則として月45時間・年360時間で、特別条項を結んだ場合でも、年720時間以内、休日労働を含めて単月100時間未満、複数月平均80時間以内に収める必要があります。月45時間を超えられるのは、年6か月までとされています。なお、災害の復旧・復興の事業では、単月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内の2つは適用されません。
施工管理の仕事には、現場での立ち会いに加えて、日報、写真の整理、各種の書類づくりといった机の上の作業が含まれます。現場に立つ時間は削りにくいため、AIで短くしやすいのは書類づくりと整理の時間です。上限規制のもとで残業を減らすには、この机の上の作業をどれだけ速く終えられるかが大切になります。
人手不足と高齢化が進む現場
令和7年版の国土交通白書(原データは総務省「労働力調査」)によると、2024年の建設業の就業者は55歳以上が36.7%、29歳以下が11.7%でした。全産業では55歳以上が32.4%、29歳以下が16.9%で、建設業は高齢の層が厚く、若い層が薄い構成となっています。ベテランが持つ段取りや安全の勘所を、文章や手順書にして若手に残していく作業にも、生成AIの下書きの力を活かすことが出来ます。話し言葉で語ってもらった内容を録音し、生成AIで手順書の形に整えれば、書くのが苦手なベテランの知恵も残しやすくなるでしょう。
i-Construction 2.0が示す省人化の目標
国土交通省は2024年4月16日に「i-Construction 2.0」を策定し、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割進め、生産性を1.5倍に高める目標を掲げています。柱は、施工のオートメーション化、データ連携のオートメーション化、施工管理のオートメーション化の3つです。建設機械の自動施工のように大きな投資が要る取り組みもある一方、書類や報告のやり取りを速くする取り組みは、社員数十人の会社でも手を付けやすい部分になります。
国土交通省が生成AIの利活用を求める通知(令和8年7月29日)
国土交通省大臣官房技術調査課は、令和8年7月29日付で「建設コンサルタント業務等における生成AI利活用等について(依頼)」という通知を出しました。通知では、生成AIが日常業務や設計業務などで受発注者双方の業務効率を飛躍的に高める可能性を持つとされ、今後の積極的な利活用が求められていると書かれています。同時に、機密性の高い行政情報や個人情報の不適切な外部送信、特にクラウド型AIサービスへの無秩序な入力について、情報漏えいリスクへの十分な留意を求めているのも特徴です。
対象は測量、土木関係の建設コンサルタント業務、地質調査業務など(官庁営繕・港湾空港関係を除く)で、生成AIで成果物をとりまとめる業務では、受注者に「生成AI利活用計画書」の提出を求める形になります。直接の対象は施工会社や工務店ではないものの、発注者が受注者に生成AIの使い方を書面で説明させる形がすでに始まっている点は押さえておきましょう。
調査で見る中小企業と建設業の利用状況
中小企業基盤整備機構の「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月公表、東京商工リサーチに委託して令和7年11月17日〜12月12日にWebで実施、配布10,000社・有効回収1,668社でうち建設業249社)では、AIを導入している企業は全業種で20.4%、検討中は18.6%でした。導入済みの322社のうち、生成AIを利用している企業は82.6%にのぼり、導入の目的では「業務効率化/作業時間短縮」が87.0%を占めています。なお、同調査の概要資料には、建設業だけの導入率は示されていません。
働く人の側の数字としては、インフォマートが建設業に従事する20〜60代の会社員1,040名に行った「建設業のDXとAI活用に関する実態調査」(2026年4月14〜20日実施、同社による自社調査)があります。生成AIを「利用している」と答えた方は33.1%で、「自分の仕事には関係ない・興味ない」と答えた方が41.0%でした。使う方と使わない方がはっきり分かれている状態で放っておくと、使いたい方だけが自分のアカウントで使い始める形になりやすくなってしまいます。
※インフォマートの数字は同社が自社で実施・発表した調査の結果で、第三者による検証を経たものではありません。各資料の内容は2026年9月28日に国土交通省・厚生労働省・中小企業基盤整備機構の公式ページと、同社のプレスリリース(PR TIMES)で確認しました。
建設業でAIツールを使うメリット|時間・品質・人材育成・データ活用
建設業でAIツールを使うと、どんな良いことがあるのでしょうか。汎用の生成AIで得やすいものと、建設特化ツールで得やすいものに分けて整理してみました。
書類づくりと整理の時間を短くできる
いちばん分かりやすいのは、日報・報告書・お知らせ文などの書類の下書きにかかる時間が短くなることです。箇条書きのメモや音声の書き起こしを渡すだけで、決まった形の文章に整えてもらえます。ゼロから書く時間が、AIの下書きを直す時間に置き換わります。現場から戻ったあとの机の上の作業が減れば、上限規制のもとでも残業を抑える助けになります。
書類の質をそろえ、抜け漏れを減らせる
同じ書類でも、書く人によって詳しさや言い回しがばらつくことはよくあります。社内で決めた項目や書き方を指示文にしておけば、誰が使っても同じ構成の下書きが出てくるため、確認する側の手間も減らせます。安全書類やKY活動(危険予知活動)の記録で、書き忘れやすい項目を最初から並べておくといった使い方も考えられるでしょう。
経験の浅い社員の調べものと学びを支えられる
若手が専門用語や作業の段取りでつまずいたとき、まず生成AIに聞いて大まかな考え方をつかみ、そのうえで先輩に確かめるという流れを作ることが出来ます。質問のたびに手を止めていたベテランの負担も軽くなるかもしれません。ただし、法令や基準の数字は誤って答えることがあるため、原文や社内の手順書で確かめる決まりを一緒に伝えておきましょう。
写真・図面・測量のデータを扱う仕事は特化ツールで省力化できる
現場写真の仕分け、画像から傷やひび割れの候補を見つける解析、ドローンで撮った写真からの測量、BIM/CIMの3次元モデルを使った情報の共有などは、建設特化ツールが得意とする分野になります。i-Construction 2.0の柱の1つ、データ連携のオートメーション化も、BIM/CIMによるデータの連携を掲げています。文章の仕事は汎用の生成AI、データの仕事は特化ツールと分けて考えると、どこにお金をかけるかを決めやすくなります。
現場での使い方|施工管理・工程管理と安全管理・安全書類
現場で生成AIが役立つのは、判断そのものではなく、判断の材料をそろえる作業と、決まったことを文章にする作業です。施工管理の判断や安全の最終確認は、これまでどおり資格と経験を持つ方が行います。AIに任せる範囲をこの線で区切っておけば、現場の方も安心して使い始めることが出来ます。
施工管理・工程管理でのAIの使い方
施工管理では、日報、打合せの議事録、協力会社への連絡文、工程変更のお知らせといった文章を作る仕事が毎日のように発生します。音声入力で話した内容を生成AIに渡し、日報の型に沿って整えてもらえば、現場から戻ってから一から書く手間を減らすことが出来ます。打合せの録音やメモから、決まったこと・宿題・期限を抜き出して議事録の形にする使い方も向いています。
工程管理では、工程表そのものを作る専用の機能は、建設特化ツールや工程管理ソフトの領域になります。汎用の生成AIが手伝えるのは、雨天で作業が2日遅れた場合に後ろの工程をどう組み替えるかの案出しや、施主や協力会社に遅れを伝える文面づくりといった周辺の作業です。関係する業者の一覧と作業の順番を渡せば、影響の出る相手と連絡の順番を整理した一覧も作ってもらえます。出てきた案をそのまま使うのではなく、現場を知る担当者が確かめたうえで使う前提にしてください。
安全管理・安全書類でのAIの使い方
KY活動(危険予知活動)とは、作業の前に、その日の作業に潜む危険を話し合い、対策を決めておく取り組みのことです。毎朝のKY活動で挙げる危険のたたき台づくりに、生成AIが使えます。作業内容、場所、天候、使う機械を伝えると、見落としやすい危険の候補を挙げてくれるため、話し合いの出発点として役立ちます。ただし危険を最終的に決めるのは職長と作業員で、AIの一覧は見落としの確認に使う位置づけです。
協力会社が元請に提出する安全書類は、作業員名簿のように個人情報を多く含む書類になります。書類の書き方の説明や、記入漏れを確かめる手順の作成には生成AIが使いやすい一方で、作業員の氏名や生年月日、健康状態などの情報を、個人のアカウントのAIにそのまま入れるのは避けましょう。会社で契約し、入力が学習に使われない設定を全員に効かせた環境であっても、入れてよい情報の範囲は社内ルールで決めておく必要があります。
現場写真の整理でも、生成AIは役に立ちます。ChatGPT・Claude・Geminiは画像を読み取ることが出来るため、是正が必要な箇所の写真を渡して、協力会社への指示文の下書きを作ってもらう使い方も考えられます。ただし、写真に写った状況の判断が正しいかどうかは、必ず現場の担当者が確かめてください。施主の家の表札や車のナンバーなどが写り込んでいないかにも、気を配りましょう。
事務所での使い方|積算・見積と契約書などの書類作成
事務所では、数字を扱う積算と、文章を扱う契約・許認可の書類で、生成AIの使いどころが変わります。数字の答えを出させるのではなく、条件や違いを言葉で整理させる使い方が、事務所の仕事では失敗が少ない形です。
積算・見積での使い方
積算の数量を拾う作業や単価の判断は、図面を読み取る建設特化ツールや積算ソフト、そして担当者の経験が中心となる領域になります。汎用の生成AIに図面を渡して数量を出させる使い方は、誤りが混ざったときに気づきにくく、見積の金額に直結するため勧められません。生成AIが力を発揮するのは、見積の前提条件の整理です。施主から届いた要望のメールや打合せのメモを渡して、含む工事・含まない工事、仮設や残土処分の扱い、工期の前提といった条件を一覧にしてもらうと、見積書に添える条件書の下書きが短い時間で出来上がります。条件の書き漏れは、追加工事をめぐる食い違いの元になりやすいため、この一覧を施主と先にすり合わせる使い方をおすすめします。
契約書・許認可などの書類作成での使い方
工事請負契約書や注文書・注文請書、許認可の申請に添える書類では、ひな形との違いを洗い出す作業や、条文の意味を平易な言葉で説明してもらう使い方が向いています。たとえば、自社のひな形と施主から提示された契約書の両方を渡し、違っている条項を並べてもらえば、読み合わせの時間を短くすることが出来ます。契約書や申請書類の最終的な判断は、AIの説明ではなく、原本と専門家の確認で行いましょう。生成AIは条文をもっともらしく要約する一方で、法令の改正や個別の事情を取り違えることがあるためです。
経理や総務の仕事でも、請求書の送付状、社内通知、採用の募集文、社員向けの手順書など、生成AIで下書きを作れる文書は多くあります。ただ、契約書や見積の条件書には、取引先の名前や金額といった外に出してはいけない情報が多く含まれるため、どの環境に入れるかが次の問題になります。
個人アカウントで使うリスクと、会社の環境で使う違い
社員が自分で登録したAIのアカウントに業務の情報を入れると、会社はその情報がどこに残り、どう扱われているかを把握できなくなります。会社が把握していないAIの利用は、野良AI(シャドーAI)と呼ばれることがあります。建設の現場では、スマホで手軽に使えることもあって、この状態が生まれやすいと考えられます。
学習の設定が社員任せになる
個人向けのChatGPT(無料版・Go・Plus・Pro)の料金ページでは、コンテンツをモデルの学習に使うかどうかの項目が「無効化可能」と表示されています。学習に使わせないためには、社員一人ひとりが設定画面で「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにする必要があります。設定は本人の画面で行うため、会社からは状態が見えにくくなってしまいます。Claudeの個人向けプラン(Free・Pro・Max)も、料金ページではモデルのトレーニングが本人が断る方式(オプトアウト)の扱いです。一方、ChatGPT Businessは「デフォルトではビジネスデータを学習に使用しません」と案内され、Claude Teamも料金ページで、デフォルトでコンテンツをモデルのトレーニングに使用しないと示されています。
※ChatGPTの表示は2026年9月16日・19日、Claudeの表示は2026年9月16日に、各社の公式の料金ページとヘルプで確認した内容です。設定の名称や扱いは変わることがあるため、最新の内容は各社の公式ページでご確認ください。
退職や異動のときに会話が個人の手元に残る
個人のアカウントは、その社員が会社を辞めても本人のものとして残ります。見積の条件や施主とのやり取りを相談した会話の履歴も、退職後に会社が消したり引き継いだりするのは難しくなってしまいます。会社で契約するChatGPT Businessでは、アカウントを会社のワークスペースで管理でき、データの保持期間も管理者が設定できると案内されています。
誰が何に使っているかが見えない
個人のアカウントでの利用は、請求も利用状況も会社の外にあります。どの現場で誰がどんな書類づくりに使っていて、どこでつまずいているかが見えないため、うまい使い方を全社に広げることも、危ない使い方を止めることも難しくなってしまいます。禁止するだけでは利用が見えない所に残るため、同じことが出来る会社の環境を先に用意しましょう。
社員が自分の費用で個人向けの有料プランを契約し、業務に使っている場合もあります。ChatGPT Plusは日本から表示した料金ページで月3,000円と表示されており(2026年9月19日確認)、本人の負担なのか経費での精算なのかによって、会社が気づけるかどうかも変わります。社内で使われているAIの洗い出し方や、入れてはいけない情報のルールづくりは、生成AIの社内ガイドラインの作り方で項目ごとに整理しています。
社員それぞれのアカウントを、会社が管理できる1つの環境にまとめてみませんか。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
書類ごとのプロンプト例|日報・KY活動・施工計画書・見積・近隣説明
プロンプトとは、生成AIに渡す指示文のことです。建設の書類で使うときは、役割、材料、形式、守ってほしい条件の4つを書くと、手直しの少ない下書きが出やすくなります。以下の例は会社で契約した環境で使う前提のもので、【 】の部分を現場の情報に置き換えて使ってください。個人名や施主の住所などは、社内ルールで入力してよいと決めた範囲に限って入れましょう。
日報
日報は、現場で話した内容を音声入力で残し、あとから型に整える使い方が向いています。
あなたは建設会社の現場代理人の補佐です。 以下のメモを、自社の日報の型に整えてください。 型:日付/天候/作業内容(工種ごと)/出面(会社名と人数)/使用機械/打合せ事項/明日の予定/特記事項 条件:メモにない数字や事実は書かず、不明な箇所は【要確認】と書く。簡潔な文にする。 メモ:【音声入力で残したメモを貼り付け】
メモにない数字を書かせない条件を入れるのは、生成AIが空欄をそれらしい数字で埋めてしまうことがあるためです。出来上がった日報は、出面の人数と使用機械だけでも現場代理人が目で確かめるようにしましょう。
KY活動(危険予知活動)
KY活動では、作業の条件をできるだけ具体的に書くほど、現場に合った危険の候補が出やすくなります。
あなたは建設現場の安全担当者です。 明日の作業について、KY活動で話し合う危険の候補を挙げてください。 作業:【例:2階床の型枠解体】 場所:【例:住宅が密集した地域の木造3階建て】 天候:【例:午後から強風の予報】 使用機械・道具:【例:高所作業車、電動丸のこ】 出力:危険の内容/起こりうる災害/対策 を5〜8項目。墜落・転落、飛来・落下、はさまれ・巻き込まれの観点を必ず含める。最後に、この一覧で確認できていない点を書く。
最後の一行でAI自身に確認できていない点を書かせると、職長が話し合いで補う場所がはっきりします。一覧は朝礼の資料として配るより、話し合いの前に職長が目を通す下準備として使うほうが、作業員の方の気づきを引き出しやすいでしょう。
施工計画書のたたき台
施工計画書は、会社や工事ごとに決まった様式があるため、生成AIに任せるのは章立ての確認と各章の文案づくりまでにとどめましょう。
あなたは施工管理技士の補佐です。 以下の工事概要から、施工計画書の章立てと、各章に書くべき項目の一覧を作ってください。 工事概要:【工事名、構造・規模、工期、敷地条件、主な工種】 条件:自社の様式の章立て【貼り付け】に合わせる。数量・日付・法令の条番号は書かず【要記入】とする。各章に、現場で確かめるべき事項を3つずつ添える。
法令の条番号や数量を書かせない条件を付けると、それらしい誤りが紛れ込む余地を小さくすることが出来ます。過去の施工計画書のうち、社内で出来がよいと評価されたものを見本として渡すと、自社らしい書きぶりに近づきます。
見積の前提整理
見積では、金額ではなく、金額を決める前の条件を言葉で整理させる使い方が安全です。
あなたは工務店の積算担当の補佐です。 以下の施主とのやり取りから、見積の前提条件を整理してください。 出力:含む工事/含まない工事(別途工事)/施主支給品/仮設・残土処分・駐車場の扱い/工期と工事時間の前提/施主に確認すべき質問 条件:金額は出さない。やり取りに書かれていない条件は推測せず、確認すべき質問に回す。 やり取り:【メール・打合せメモを貼り付け】
金額を出させず、書かれていない条件を質問に回させるのが、この例の要点になります。質問の一覧は、そのまま施主への確認のメールの下書きとしても使えます。
近隣説明文
着工前のお知らせのように、言葉づかいが大切な書類ほど、生成AIの下書きが役に立ちます。
あなたは建設会社の工事担当者です。 着工前に近隣の方へ配る、工事のお知らせ文を作ってください。 内容:工事名【】、工期【】、作業時間【例:8時〜18時、日曜・祝日は休工】、大型車両の出入り【】、騒音・振動が大きい期間【】、連絡先【会社名・担当部署・電話番号】 条件:A4一枚。専門用語を使わず、ご迷惑をおかけすることへのお詫びを冒頭に入れる。高齢の方にも読みやすい文にする。
配る前には、現場の担当者が作業時間や連絡先を原本と照らし合わせてください。よく使う指示文を会社で共有できる形にまとめると、若手の方も同じ質の下書きを出せるようになります。生成AIごとの得意な仕事の違いは、主要4AIの違いと使い分けも参考にしてみてください。
汎用の生成AIと建設特化ツールの使い分けの判断軸
汎用の生成AIと建設特化ツールのどちらを使うかは、その仕事の材料が言葉なのか、図面・写真・現場のデータなのかで決めると迷いにくくなります。材料が言葉の仕事、たとえば日報、議事録、お知らせ文、条件書、手順書、社内の通知は、汎用の生成AIで十分に下書きを作ることが出来ます。材料が図面や写真、工程のデータで、しかも結果をほかのシステムに渡す必要がある仕事は、建設特化ツールを検討する価値があります。
判断に使う3つの問い
- その仕事の材料は、文章やメモか、それとも図面・写真・数値のデータか
- 出来上がったものを人が読んで確かめるのか、別のシステムにそのまま取り込むのか
- その仕事は現場と事務所の多くの方がするものか、特定の担当者だけのものか
3つめの問いは、費用に直結します。多くの方が使う仕事は全員が使える汎用の生成AIで広く受け止め、特定の担当者だけが使う仕事には、その人数分だけ建設特化ツールを入れる形が、無駄の少ない組み合わせです。建設特化ツールを先に全員へ配ると、使わない方の分まで費用がかかってしまいます。
建設特化ツールの機能や価格は製品ごとに大きく異なるため、候補を絞る段階では、各社の公式ページと資料で、対応している書類の様式、データの保管場所、契約の単位を確かめてください。汎用の生成AIのほうも、1つのサービスに絞るか、複数を使い分けるかで環境の作り方が変わります。複数の生成AIを1つの環境でまとめて使う考え方は、マルチAIの解説で整理しています。
人数別の費用の出し方|10名・50名・200名で計算する
会社の環境で生成AIを使うときの費用は、1人あたりの月額に人数と12か月を掛けて年間の出費に直すと、社内で比べやすくなります。主な法人向けプランは1ユーザーあたりの月額課金で、ChatGPT Businessの料金ページには「従業員数2~200名のチーム向け」、Claude Teamの料金ページには「2〜150名のチーム向け」と記載されています。ChatGPT Businessでは2026年8月24日以降に作成したワークスペースの有料シートの合計上限が200シートで、Claude Teamは150シートを超えるとEnterpriseの検討が必要です。
| 人数 | ChatGPT Business 標準シート(年額課金・月3,050円) | ChatGPT Business 標準シート(月額課金・月3,850円) | Claude Team スタンダード(年払い・月20ドル) | Google Workspace Business Standard(年間プラン・月1,600円) |
|---|---|---|---|---|
| 10名 | 月30,500円/年366,000円 | 月38,500円/年462,000円 | 月200ドル(約30,000円)/年2,400ドル(約360,000円) | 月16,000円/年192,000円 |
| 50名 | 月152,500円/年1,830,000円 | 月192,500円/年2,310,000円 | 月1,000ドル(約150,000円)/年12,000ドル(約1,800,000円) | 月80,000円/年960,000円 |
| 200名 | 月610,000円/年7,320,000円 | 月770,000円/年9,240,000円 | Teamの上限150シートを超えるため対象外(Enterpriseを検討) | 月320,000円/年3,840,000円 |
※ChatGPT Businessは2026年9月19日、Claude TeamとGoogle Workspaceは2026年9月28日に各社の公式料金ページで確認した表示です(Claude Teamの対象人数2〜150名は2026年9月16日の確認)。ChatGPT Businessの金額は日本から開いた料金ページの円表示で、税の記載はありません(米ドル表示では標準シートが年額課金で月20ドル、月額課金で月25ドル)。Claude Teamは税抜の米ドル価格で、円の金額は1ドル=150円で計算した場合の目安です。Google Workspaceは年間プランの通常価格・税別(フレキシブルプランは月1,900円)で、メールやドライブなどを含む一式の料金にGeminiが含まれる形です。プランや価格は変わるため、検討の際は各社の公式ページで最新の内容をご確認ください。
表のとおり、同じ50名でも、どのサービスを選ぶか、年払いか月払いかで、年間の出費は数十万円から百万円以上変わります。ChatGPT Businessの年額課金は年間の契約で、期の途中でシートを減らしても次の年間請求サイクルまで反映されないため、現場の人数が工事量で増減する会社は注意が必要です。年額課金では1年分の料金をまとめて支払う形になるため、資金繰りの計画にも入れておきましょう。一部の方にだけ席を配ると、配られなかった方が個人のアカウントで使い始める余地が残ってしまいます。
費用を比べるときは、月額の単価ではなく、全社員に配った場合の年間の総額と、配らなかった場合に残る野良AIのリスクを並べて判断しましょう。現場の職人の方まで含めて配るのか、事務所と施工管理の担当者に絞るのかを先に決めると、計算に使う人数が定まります。ChatGPTの法人プランの詳しい料金と請求の仕組みは、ChatGPT法人プランの料金の記事で扱っています。
現場と事務所を同じ会社の環境で運用する設計
現場と事務所で別々のAIを契約すると、管理の画面、入力してよい情報のルール、共有したい指示文が2つに分かれてしまいます。使う書類は違っても、環境とルールは1つにそろえるのが運用の基本になります。
アカウントは会社のメールアドレスで発行する
現場の職長や、協力会社との窓口になる方にも、会社のメールアドレスでアカウントを発行しましょう。退職や異動のときに管理者がアカウントを止められる形にしておくことが、個人のアカウントとの大きな違いです。協力会社の方にアカウントを渡すかどうかは、契約の条件と入力してよい情報の範囲を決めてから判断してください。
現場はスマホ、事務所はパソコンを前提に決める
現場で使う方は、スマホから音声入力で日報のメモを残す使い方から始めると無理がありません。事務所では、パソコンで見積の条件書や契約書の違いの確認など、長い文書を扱う使い方が中心になります。どちらの使い方も同じ環境の中で出来るよう、スマホとパソコンの両方から使えることを契約前に確かめておきましょう。
よく使う指示文と入力のルールを共有する
前の節のようなプロンプト例は、現場用と事務所用に分けて社内で共有すると、使う方ごとの品質の差を小さくすることが出来ます。あわせて、入力してよい情報と入れてはいけない情報を1枚にまとめ、アカウントを渡すときに必ず読んでもらう運用にしてください。環境を分けずにルールを1枚にそろえることが、現場と事務所で同じ安全さを保つ決め手です。
利用状況を見て、広げる仕事を決める
環境を1つにまとめると、どの部署がどの仕事にどれだけ使っているかを会社側で確かめられるようになります。よく使われている仕事の指示文を全社に広げ、使われていない部署には短い勉強会を開くといった手の打ち方も見えてきます。最初の3か月は、日報、KY活動の候補出し、見積の条件整理の3つに絞って始め、使い方が定着してから対象を広げる進め方がおすすめです。3か月たったところで、使った方に便利だった使い方を1つずつ出してもらい、指示文の一覧に加えていくと、社内の手引きが少しずつ育っていきます。
建設業で生成AIを使うときの注意点|情報漏洩と誤りの見落とし
建設業で生成AIを使うときに特に気をつけたいのは、施主や作業員の情報を外に出さないことと、AIの誤りをそのまま書類に載せないことの2つです。どちらも、ツールを変えるだけでは防げず、社内のルールと確認の手順で補う必要があります。
施主・作業員・図面の情報を入力する範囲を決める
建設の仕事には、施主の氏名や住所、作業員の個人情報、発注者から預かった図面など、外に出してはいけない情報が多く含まれます。国土交通省の令和8年7月29日付の通知も、クラウド型AIサービスへの無秩序な入力を情報セキュリティ上の懸念として挙げています。入力が学習に使われない会社の環境を用意したうえで、入れてよい情報の範囲を決め、発注者との契約で生成AIの利用に条件が付いていないかも確かめてください。
AIの出力をそのまま提出しない
生成AIは、存在しない基準や数字を、もっともらしい文章で書いてしまうことがあります。数量、金額、日付、法令の条番号、安全の基準値は、必ず原本や公式の資料で確かめてから書類に載せましょう。施工計画書や安全書類は、最終的に責任を持つ方の名前で提出される書類になります。
発注者から求められたら使い方を説明できるようにする
前述の通知では、生成AIで成果物をとりまとめる建設コンサルタント業務などで、受注者に「生成AI利活用計画書」の提出を求めています。施工の分野でも、どの業務にどのAIを使い、どう確かめているかを説明できる状態にしておけば、発注者や元請から問われたときに慌てずに答えられます。点検の項目は、生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめています。
建設業のAIツールの選び方|機能・操作性・サポート・コスト
建設業のAIツールを選ぶときは、機能の多さよりも、現場と事務所の全員が同じ環境で安全に使い続けられるかを先に確かめましょう。そのうえで、使いたい書類に合う機能があるか、スマホでも迷わず使えるか、困ったときに相談できるか、人数が増えたときの費用はどうなるかを順に見ていくと、候補を絞りやすくなります。
- 入力が学習に使われない設定が、全員に一律で効くか社員ごとの設定に任せる方式では、会社から状態が見えにくくなります。
- 管理者がアカウントの発行と停止をできるか退職や異動、協力会社との契約終了のときに、すぐに止められるかを見ます。
- 誰がいつ使ったかを会社側で確かめられるか利用状況が見えないと、広げる仕事も止める使い方も決められません。
- スマホから音声入力で使えるか現場の方が日報のメモを残せるかどうかが、定着の分かれ目になります。
- 導入時の説明や、困ったときの問い合わせ先があるか総務の担当者だけで社内の質問に答え続けるのは、負担が大きくなります。
- 人数が増えたときに、年間の費用がどう変わるか1人あたりの月額に人数と12か月を掛けた金額で比べます。
建設特化ツールを併せて入れる場合は、同じ項目で比べたうえで、特定の業務の担当者の人数分だけ契約する形を検討してみてください。法人向けの生成AIサービスの料金は、法人向け生成AIサービスの料金比較でも横並びで確かめることが出来ます。
候補が決まったら、いきなり全社で始めるのではなく、現場1つと事務所の担当者数名で1か月ほど試してみましょう。日報や条件書の下書きにかかった時間を導入の前後で記録しておけば、全社に広げるかどうかを数字で判断することが出来ます。試した方の感想のうち、使いにくかった点こそが、全社に広げる前に直すべき点になります。
大手ゼネコンの事例の読み方と、国が示す方向性
建設業のAI活用を調べると、大手ゼネコン各社の実名の事例が多く紹介されています。ただし、紹介されている効果の数字の多くは各社の発表によるもので、第三者が同じ条件で検証した数字ではない点に注意が必要です。大手の取り組みは自社開発のシステムや大規模な現場を前提にしたものが中心で、社員数十人の会社がそのまま同じ効果を見込めるとは限りません。
中小の会社が参考にしたい国の方向性
中小の会社が押さえておきたいのは、個別の企業の事例より、国が示している方向性のほうでしょう。国土交通省はi-Construction 2.0で、施工・データ連携・施工管理の3つのオートメーション化を掲げています。2026年9月4日には、「インフラ分野のAI実装に向けた取組方針」と「建設分野におけるフィジカルAI戦略(中間とりまとめ)」も公表されました。詳しい内容は、国土交通省の報道発表資料で確かめることが出来ます。
大きな投資を伴う自動化が大手や公共工事の現場から進む一方で、書類づくりや報告のやり取りを生成AIで速くする取り組みは、規模を問わず始められる部分になります。まずは会社の環境を1つ用意し、日報やKY活動のような毎日の書類から始めてみてください。
現場も事務所も、1つの会社の環境で
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けサービスです。入力データを学習に使わない設定をどのモデルにも標準で適用し、会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
建設業で最初に導入するAIツールは、汎用の生成AIと建設特化ツールのどちらがよいですか?
現場の職人や作業員にもアカウントを渡すべきですか?
社員が個人のChatGPTで安全書類や見積を作っていたら問題ですか?
施工計画書や契約書をAIに作らせても大丈夫ですか?
国土交通省は建設業の生成AI利用について何か示していますか?
社員50名の会社だと、生成AIの費用は年間いくらくらいかかりますか?
まとめ
建設業のAIツールは、言葉を扱う書類に強い汎用の生成AIと、図面・写真・工程のデータに強い建設特化ツールの2種類に分けて考えると選びやすくなります。2024年4月からの時間外労働の上限規制や、i-Construction 2.0の省人化の目標を考えると、現場に立つ時間を守りながら書類づくりの時間を短くする手段として、生成AIの出番は増えていくでしょう。
始めるときは、現場と事務所の全員が同じ会社の環境を使い、入力が学習に使われない設定と、入れてよい情報のルールを先にそろえてください。個人のアカウントに任せたままでは、学習の設定も会話の履歴も利用状況も、会社から見えないままとなってしまいます。日報、KY活動の候補出し、見積の前提整理のように毎日くり返す書類から始め、費用は人数と12か月を掛けた年間の総額で比べていきましょう。業種ごとの活用例は、AI活用コラム一覧からご覧いただけます。
