ローカルLLMは無料?本当にかかる費用(PC・電気代・運用の手間)

ローカルLLMとは、AIのモデルを自社のPCやサーバーに置き、社外のサーバーへ送らずに手元の機械で動かす使い方のことです。実行ソフトとモデルは無料で使えるものが多い一方で、動かすPC代・電気代・運用の手間は無料ではありません。会社で使う場合は、担当者の時間まで含めて3年分を見積もると、機器の価格より人の時間のほうが大きな金額になることもあります。仕組みや全体像はローカルLLMとはにまとめているので、ここでは費用だけを順に見ていきましょう。

ローカルLLMで無料なのはどこまでか|ソフト・モデルの利用料と実行アプリ

無料で使えるのは、実行ソフトとモデルの利用料までになります。代表的な実行アプリのOllamaは、公式の料金ページで、自分の機械でモデルを動かす分は無料と案内しています。有料なのはOllamaのクラウドでモデルを動かすプランで、Proが月20ドル、Maxが月100ドルです。もう1つの定番であるLM Studioは、2025年7月8日の公式ブログで、家庭でも職場でも無料で使えると発表しました。以前は業務での利用に別の商用ライセンスが必要だったため、その頃の情報のまま有料だと考えている方もいるでしょう。

モデルも、Qwen・Gemma 4・gpt-oss、国産のELYZAやQwen3 Swallowのように、Apache 2.0というライセンスで配布されているものがあります。ダウンロードに料金はかからず、使った量に応じて請求が来ることもありません。無料なのはソフトとモデルの利用料までで、動かす機械と人の時間は会社の持ち出しになります。

1つ気を付けたいのが、Ollamaのクラウドのモデルです。名前の末尾が「:cloud」のモデルを選ぶと、処理は手元のPCではなくOllamaのサーバーで動くことになってしまいます。会社で使う場合は、クラウド機能を止める設定(環境変数のOLLAMA_NO_CLOUD=1など)を最初に入れておくと安心です。実行アプリの入れ方と画面の使い方はローカルLLMの構築手順で扱っているので、ここでは費用の話に絞ります。

※料金は2026年10月6日時点で各社の公式ページに表示されている内容です。

無料から費用が増えていく5つの段階

ローカルLLMの費用は最初に一度にかかるのではなく、使う範囲を広げるたびに段階を踏んで増えていきます。どの段階まで進むかで、見積もるべき費目がはっきり分かれます。

  1. 手持ちのPCで小さなモデルを試す段階です。費用は0円で、メモリ16GB程度のPCなら小さめのモデルを動かせる場合があります。
  2. メモリの多いPCに買い替える段階です。大きなモデルほど多くのメモリを使うため、PC代が最初の出費になります。
  3. GPUを積んだPCやMac Studioのような上位機を買う段階です。ここでPC代は数十万円の単位に上がります。
  4. 社内で共有する専用機にする段階です。営業時間中や24時間の稼働で電気代が毎月かかり、社内への公開設定、使う人の確認、置き場所も要るようになります。
  5. 担当者を決めて運用する段階です。更新・故障・問い合わせへの対応に充てる時間が、人件費として毎月かかり続けます。

個人が試すだけなら1段階目で止まり、本当に0円で済ませることが出来ます。社員に使わせると決めた時点で、専用機の電気代と担当者の時間が毎月の費用に加わります。会社として見積もるのは、この4段階目と5段階目まで進んだ姿にしておきましょう。

PC代|手持ちのPCで試せる範囲と買い替えの目安

ローカルLLMの費用のうち、最初に大きく出ていくのはPC代になります。どのモデルが動くかはメモリ(GPUのメモリ=VRAMを含む)の量でほぼ決まるため、PCスペックがそのまま実質の費用になると考えてください。

手持ちのPCで試せる範囲

LM Studioの公式ドキュメントは、WindowsでもMacでも16GB以上のメモリを推奨しています。WindowsでGPUを使う場合は専用VRAM 4GB以上が推奨で、Macはメモリ8GBでも小さいモデルなら使える場合があると記載があります。MicrosoftのCopilot+ PCはメモリ16GBが要件なので、ここ最近に買った業務用PCなら試せるものもあるでしょう。OpenAIのgpt-oss-20bは16GBのメモリで動くよう設計したとモデルカードで説明しており、Ollamaでのダウンロードサイズは14GBと表示されています。

一方、qwen3.5の122bはダウンロードだけで81GBあり、手持ちのノートPCで動かす大きさではありません。実行時には質問や文書の長さに応じてさらにメモリを使うため、モデルのサイズぴったりのメモリでは足りなくなってしまいます。

買い替えるときの価格の目安

Macはメモリが多い構成を選びやすく、ローカルLLM用に検討されることが多い機種です。Apple日本の公式サイトの表示(税込・最小構成の価格)は次のとおりになります。

  • Mac mini(M6):メモリ16GB、149,800円から
  • Mac mini(M5 Pro):メモリ24GB、299,800円から
  • Mac Studio(M5 Max):メモリ36GB、419,800円から
  • Mac Studio(M5 Ultra):メモリ96GB、949,800円から
  • MacBook Air(M5):メモリ16GB、13インチが184,800円から

どれも最小構成の価格で、メモリを増やした構成にすると金額は変わります。Macのメモリは購入時の構成で決まるため、後から足せる前提で最小構成を選ばないようにしましょう。Windows機ならGPUのVRAMが目安で、NVIDIAの公式表ではRTX 5090が32GB、RTX 5070 Tiが16GB、RTX 5070が12GBです。GPUの価格はNVIDIAの公式サイトに日本円の表示がないため、販売店の見積もりで確かめてみてください。用途別の機種の選び方はローカルLLMに必要なPCにまとめています。

※Macの価格は2026年10月3日時点のApple日本の公式表記(税込・最小構成の「から」の価格)です。モデルのサイズはOllamaのライブラリに表示されたダウンロードサイズで、16GBで動くという説明はOpenAIの自己申告です。

電気代の計算式と計算例|目安単価31円/kWhで計算した場合

電気代は、機器の消費電力と動かす時間から自分で計算出来ます。式は次のとおりです。

電気代(円)=消費電力(W)÷1000×1日に動かす時間×日数×電気の単価(円/kWh)

単価は、全国家庭電気製品公正取引協議会が家電の電気代表示に使う目安単価31円/kWh(税込)で計算しています。これは家庭向けの目安なので、会社の請求書に書かれた契約単価に置き換えて計算し直してみてください。消費電力はメーカーが公表している最大値を使っているため、ここでの金額は最大値で動き続けた場合の上限の目安になります。

計算例(目安単価31円/kWhで計算した場合)

  • NVIDIA GeForce RTX 5090(GPU単体の総グラフィックス電力575W)を1日8時間・月22日:101.2kWhで約3,137円/月
  • Mac mini(M6/M5 Pro、最大155W)を1日8時間・月22日:27.28kWhで約846円/月
  • Mac Studio(M5 Max/M5 Ultra、最大480W)を1日8時間・月22日:84.48kWhで約2,619円/月
  • Mac miniを24時間・30日動かし続けた場合:111.6kWhで約3,460円/月
  • Mac Studioを24時間・30日動かし続けた場合:345.6kWhで約10,714円/月

RTX 5090の575WはGPU単体の値で、CPUやメモリなどPC本体の他の部品の電力は入っていません。NVIDIAはこのGPUに必要なシステム電力を1000Wとしているので、PC全体ではこの計算より増えると見ておくのが無難でしょう。営業時間だけ動かすなら、どの機器も月数千円の範囲に収まります。

差が出るのは、社内で共有する専用機を24時間動かし続ける場合です。Mac Studioを最大値で24時間動かし続けると、電気代は年約12.9万円が上限の目安になります。3年では約38.6万円となり、本体の価格に近い金額になってしまいます。夜間は止めるのか、つけっぱなしにするのかを先に決めておきましょう。

※消費電力はメーカー公表値(NVIDIAはTGP、Appleは最大消費電力(連続使用時))で、2026年10月6日時点の公式ページの表示です。実際の消費電力は使い方によって下がります。設置場所の空調の電気代は含んでいません。

運用の手間を人件費に直す|専門知識と担当者の時間

ローカルLLMでいちばん見落とされやすいのが、運用に充てる担当者の時間です。ソフトを入れて動かすところまでは誰でも出来ますが、社員に使わせ続けるには、いくつかの作業が毎月のように発生します。

  • 社内への公開設定(OllamaのOLLAMA_HOST、LM StudioのServe on Local Networkなど)と、使う人を確かめる設定
  • 実行ソフトの更新と、新しいモデルへの入れ替え、入れ替え前後の答えの確認
  • 止まった・遅い・答えがおかしいといった社員からの問い合わせへの対応
  • モデルと実行ソフトのライセンスの確認と、社内での記録
  • 入社・退職・異動に合わせたアカウントの追加と停止
  • 故障したときの復旧と、代わりの機器の手配

どれもネットワークやPCの設定に慣れた人でないと進めにくい作業で、専門知識の要る仕事になります。かかる時間は会社や使い方で大きく違い、公的な調査も見当たらず、ここでは時間の割合を読者が置く仮定として金額に直してみます。

担当者の時間の何割を充てるかで計算する

厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の賃金(男女計)は340.6千円です。この金額は6月分の所定内給与額で、賞与と会社負担の社会保険料は含まれていません。担当者の勤務時間の1割を運用に充てると仮定すると、月約34,000円分、年約41万円分の人件費になります。2割なら月約68,000円分となり、3年では約245万円分に上ります。

3年で見ると、担当者の時間の1割だけでも約123万円分になり、PC1台の価格を超えてしまいます。実際の会社負担は賞与や社会保険料の分だけこの計算より大きくなるため、自社の担当者の給与で置き換えて計算してみてください。

情報システムの専任がいない会社では、総務や経理の方が兼務で面倒を見ることが多いはずです。その場合は、運用に取られた時間の分だけ本来の仕事が後ろにずれていきます。担当者が1人しかいないと、その方の休みや異動のたびに止まりやすくなる点も、費用とは別の負担として見ておく必要があります。

担当者の時間まで入れると、既製のサービスも比べる価値があります

更新や問い合わせ対応に担当者の時間を割き続けるのが難しいなら、使う環境を外の法人向けサービスにまとめる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

使う人数が増えたときの費用|1台で足りなくなる理由

使う人が増えるほど、ローカルLLMの費用は台数や機器の格に合わせて階段状に上がっていきます。Ollamaは初期設定のままだと、入れたPCの中からしか使えません。社内の他の人にも使わせるには、OLLAMA_HOSTで公開先を変えるか、LM StudioのServe on Local Networkを有効にする形になります。LM Studioの公式ドキュメントにも、ネットワーク上の複数の人で1つのLM Studioを使う用途が書かれています。

1台で何人まで使えるかの目安は、メーカーも実行ソフトの提供元も示していません。モデルの大きさ、質問や読ませる文書の長さ、同じ時間に使う人の数で変わるためです。同時に使う人が増えると答えが返ってくるまでの待ち時間が延び、上位の機種に替えるか台数を増やすことになります。台数を増やせば、本体の価格と電気代はその台数分だけ増えてしまいます。

チャット画面としてよく組み合わせるOpen WebUIは、使う人が合計50人以上の場合にブランド表示の条件があるライセンスです。何人まで1台で足りるかは公表されていないため、少人数で試して待ち時間を測ってから台数を決めましょう。部署ごとに専用機を置く形にすると、台数だけでなく更新や設定の手間も部署の数だけ増えていきます。

社員数別の3年総額|自社運用と既製の法人向けサービスを並べる

費用を比べるときは、機器代・電気代・人件費をまとめた3年の総額で並べるのが分かりやすくなります。まずローカルLLMを1台で運用する場合を、ここまでの数字で計算してみます。

ローカルLLMを1台で運用した場合の3年総額

前提は、本体はApple日本の公式表示の最小構成(税込)、電気代は目安単価31円/kWhで最大消費電力のまま動いた場合、人件費は賃金340.6千円の1割を36か月分です。

  • Mac mini(M6)を営業時間(1日8時間・月22日)に動かす:本体149,800円+電気代約3.0万円+人件費約122.6万円=約140.6万円
  • Mac Studio(M5 Max)を営業時間に動かす:本体419,800円+電気代約9.4万円+人件費約122.6万円=約174.0万円
  • Mac Studio(M5 Max)を24時間動かし続ける:本体419,800円+電気代約38.6万円+人件費約122.6万円=約203.2万円

どの例でも、3年総額の半分以上を人件費が占める計算になります。機器の価格だけを見ると数十万円の買い物ですが、運用まで含めると百万円台の支出として扱うのが実態に近いでしょう。

既製の法人向けサービスと社員数別に並べる

同じ3年で、既製の法人向けサービスの例を社員数別に並べると次のようになります。サービス側の月額は利用量に応じたプランで決まり、表の人数との対応は提供元が示すプランごとの人数の目安に沿っています。

使う人数既製サービスの例(UPGEAR AI)のプランと月額3年総額(税込・初期費用込み)ローカルLLMで考えること
10名スタンダード 月50,000円(税抜)約209万円1台から始められるが、同時に使う人が多いと待ち時間が延びる
30名プレミアム 月100,000円(税抜)約407万円上位機への入れ替えや台数の追加が要る可能性が高まる
50名プレミアム 月100,000円(税抜)約407万円台数を増やした分だけ本体代・電気代・設定の手間が増える
51名以上提供元の人数の目安に記載なし(要相談)―Open WebUIは50人以上でライセンスの条件を確認

※既製サービスの3年総額は、月額(税抜)×36か月に初期費用100,000円(税抜)を足し、1.1倍して税込に揃えた金額です(10名:190万円(税抜)、30名・50名:370万円(税抜))。ローカルLLM側も本体価格と電気代の単価は税込、人件費は消費税の対象外のため、比べる金額はすべて税込の側に揃えています。料金は2026年10月6日時点で提供元の公式ページに表示されている内容です。

10名で比べると、1台構成は約141万〜203万円、既製サービスは約209万円となります。損益分岐を考えるときは、金額が近いかどうかより、何が手に入るかの差を見ておくことが大切です。既製サービスでは各社のクラウドのAIをそのまま使え、更新や機器の故障を社内で抱えずに済みます。ローカルLLMは社外にデータを出さずに済む代わりに、使えるのは公開されているオープンなモデルに限られ、答えの質もクラウドの最新モデルと同じとは限りません。

人数が増えるほどローカル側は台数と手間の見通しが立ちにくくなり、金額だけでの比較が難しくなっていきます。機器代だけで比べず、担当者の時間を同じ表に入れてから比べてみてください。用途ごとの向き不向きはローカルLLMとクラウドの比較で詳しく扱っています。

無料のモデルでも商用利用の条件を確かめる

無料で配布されているモデルでも、会社で使うときの条件はライセンスごとに違います。費用はかからなくても、条件を確かめる手間と、守れなかったときの後始末は会社が負うことになります。

Qwen3.6、Gemma 4、gpt-oss、ELYZAの思考モデル、Qwen3 Swallowは、Hugging Faceのモデルカードでライセンスが Apache 2.0 と表示されています。Gemmaは以前の版では独自の利用規約でしたが、Gemma 4からApache 2.0に変わりました。SB IntuitionsのSarashinaの小型モデルはMITライセンス、実行ソフトのOllama本体もMITライセンスです。

注意が要るのはMetaのLlamaで、Llama 4は独自のLlama 4 Community Licenseで配布されています。「Built with Llama」の表示や、Llamaを使って作ったモデルの名前をLlamaで始めること、利用ポリシーを守ることなどが条件になります。月間のアクティブユーザーが7億を超える場合はMetaへの申請が要るとも定められています。

ライセンスを確かめる手順

  1. モデルの配布ページ(Hugging Faceのモデルカード)でライセンスの名前を見る
  2. リポジトリのLICENSEの本文を開き、商用利用・表示義務・禁止用途の条項を読む
  3. 利用ポリシーや追加の規約が別にあるかを確かめる(Llamaなど)
  4. 実行ソフトやチャット画面(Open WebUIなど)のライセンスも同じように確かめる
  5. 使うモデルの名前・版・ライセンス・確認した日を社内の台帳に残す

モデルの更新は速く、同じ名前の系列でも版によってライセンスが変わることがあります。新しいモデルに入れ替えるたびに、この手順を1から通すようにしましょう。

日本語に強いモデルを選ぶとき

日本語の答えの質を重視するなら、ELYZA、Qwen3 Swallow(東京科学大学・産総研)、国立情報学研究所のLLM-jpのように、日本語を強化した国産のモデルが候補になります。日本語の性能を比べる指標としては、Weights & Biases Japanが運営するNejumi LLMリーダーボードがあります。モデルごとの特徴と選び方はローカルLLMのおすすめモデルにまとめています。

※ライセンスはモデルカードに表示された名称で、2026年10月3日時点の内容です。使う前に各リポジトリのLICENSE本文をご確認ください。

見積もりで抜けやすい費目のチェックリスト

ローカルLLMの見積もりは、PC本体の価格だけで出されることが少なくありません。社内で共有する専用機にする前に、次の費目が入っているかを確かめてみてください。

  • モデルを置く保存容量Ollamaの公式ドキュメントは、モデル用に数十〜数百GBの空きが要ると案内しています。複数のモデルを試すと、内蔵の容量では足りなくなることがあります。
  • バックアップの置き場所設定や会話の記録、社内向けに整えた資料を残す先です。専用機が壊れたときに、どこから戻すかを決めておきます。
  • 停電への備え(無停電電源装置)24時間動かす専用機は、停電や瞬断で止まると再起動と確認の手間が出ます。
  • 設置場所と鍵誰でも触れる机の上に置くのか、施錠できる部屋に置くのか。社外秘の文書を扱うなら、置き場所そのものが管理の対象になります。
  • 空調と騒音電気代の計算に空調の分は入っていません。上位機を常に動かすと、熱と音の対策が要る場合もあります。
  • 保証と故障時の代わりの機器修理に出している間、社員の利用を止めるのか、代わりの機器を用意するのかを決めます。
  • 使う人を確かめる設定LM Studioは初期設定では認証を求めません。社内に公開するなら、Require Authenticationなどの設定と、トークンの管理の手間が加わります。
  • 更新を当てる担当と日程OllamaはWindowsとMacで更新を自動でダウンロードし、Restart to updateで適用します。共有機では、誰がいつ適用するかを決めておきます。
  • ライセンス確認の時間モデルを入れ替えるたびに、LICENSE本文と利用ポリシーを読む時間がかかります。
  • 担当者の退職・異動の引き継ぎ設定の中身を1人しか知らない状態だと、その方が抜けた時点で運用が止まります。手順書を残す時間も費用として見ておきます。

この中で金額にしにくいのは、担当者の引き継ぎと故障時の対応です。どちらも起きてから慌てることが多い費目なので、見積もりの段階で誰が受け持つのかだけでも決めておくとよいでしょう。

自社運用と既製サービスのどちらが合うか|判断表

ローカルLLMを自社で運用するか、既製の法人向けサービスを使うかは、費用より会社の体制で決まる部分が大きくなります。次の5つの点で、自社がどちらの列に近いかを見てみましょう。

確認する点自社でローカルLLMを運用する方が合う既製の法人向けサービスの方が合う
情報システムの担当者PCやネットワークの設定に慣れた担当者がいて、運用の時間を取れる専任がおらず、総務や経理の方が兼務している
使う人数機密の文書を扱う数人の部署だけで使う部署をまたいで全社員に使わせたい
扱うデータ社外のサーバーに出せない文書が中心社外秘の扱いをルールで決めれば、クラウドで扱える文書が中心
求める答えの質要約や下書きなど、オープンなモデルで足りる用途が中心クラウドの最新モデルの性能や、Web検索を使った調べものが要る
保守の体制故障・更新・担当者の交代に備えた手順と予備の機器を用意できる更新や故障の対応を社内で抱えたくない

左の列が多い会社は、担当者の1台から始めて、機密の文書を扱う用途に絞ってローカルLLMを育てていく形が合っています。右の列が多い会社は、社員全員の道具は既製のサービスで用意し、どうしても外に出せない文書だけローカルLLMで扱う組み合わせも選べます。両方を併用する場合は、どの文書をどちらで扱うかを社内ルールに書いておくことになります。

データを外に出さない利点と、無料ゆえの勝手な導入

ローカルLLMのいちばんの利点は、入力した文書を社外のサーバーに送らずに済むことです。Ollamaは公式のFAQで、ローカルで動かす場合はプロンプトもデータも同社からは見えないと説明しています。取引先から預かった資料や個人情報を含む文書を扱う会社にとって、この点は費用以上の価値になるでしょう。

一方で、無料で手軽に入れられることが、会社にとっての落とし穴にもなります。OllamaのWindows版は管理者権限なしでインストール出来る作りで、社員が会社のPCに自分の判断で入れることも難しくありません。私物のPCに入れて業務の文書を読ませたり、ライセンスを確かめないまま社内で配ったりすると、会社から見えないところでAIが使われる状態になってしまいます。

手元で動くと思って選んだモデルが、実は「:cloud」の付いたクラウドのモデルで、文書が社外のサーバーに送られていたということも起こり得ます。こうした会社の把握していないAIの利用は、野良AI(シャドーAI)と呼ばれる問題の1つです。入れてよいPCと使ってよいモデルを会社が先に決め、それ以外への導入は申請制にしておきましょう。

禁止するだけでは、便利さを知った社員が見えないところで使い続けることもあります。会社として使ってよい環境を1つ用意し、そこへ寄せていくほうが、結果として管理する手間も小さくなっていきます。

PCの購入も更新の番もなしで、社員全員にAIを

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で使える法人向けサービスです。会話履歴や利用ログは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理し、利用ログ・権限・使わせるモデルのON/OFFは管理者ダッシュボードから扱えます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。上限に近づくと、管理者宛に複数回メールでお知らせします。上限に達した時点で利用を停止する安全設計のため、知らないうちに超過して追加の請求が発生することはありません。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

ローカルLLMは本当に無料で使えますか?
実行ソフトとモデルの利用料は無料で使えるものが多くあります。Ollamaは自分の機械で動かす分を無料と案内しており、LM Studioも2025年7月8日に家庭でも職場でも無料で使えると発表しました。ただし、動かすPC代、電気代、更新や問い合わせに対応する担当者の時間は別にかかります。個人で試すだけなら0円で済みますが、会社で使うならこれらを含めて見積もることになります。
ローカルLLMの電気代は月にいくらくらいかかりますか?
目安単価31円/kWh(税込)とメーカー公表の最大消費電力で計算すると、Mac Studio(最大480W)を1日8時間・月22日動かして約2,619円、24時間・30日動かし続けると約10,714円が上限の目安です。RTX 5090はGPU単体の575Wで1日8時間・月22日なら約3,137円ですが、PC本体の他の部品の電力は含みません。会社の契約単価で計算し直すと、自社の金額に近づきます。
今使っている会社のPCでもローカルLLMは動きますか?
メモリ16GB程度のPCなら、小さめのモデルを試せる場合があります。LM Studioは16GB以上のメモリを推奨しており、OpenAIはgpt-oss-20bを16GBのメモリで動くよう設計したと説明しています。大きなモデルや、長い文書を読ませる使い方では、メモリの多いPCやGPUを積んだPCが必要になります。
無料のモデルを会社の業務で使っても問題ありませんか?
ライセンスによって条件が違うため、モデルごとに確かめる必要があります。Apache 2.0やMITライセンスのモデルは業務でも使いやすい一方、Llama 4は表示義務や利用ポリシーなど独自の条件があります。使う前にモデルカードとLICENSEの本文を読み、モデル名・版・ライセンス・確認日を社内で記録しておくと、入れ替えのときにも追いやすくなります。
社員が自分の判断でローカルLLMを入れて使ってもよいですか?
会社のルールを決める前の自己判断での導入はおすすめしません。OllamaのWindows版は管理者権限なしでインストールでき、私物のPCや会社のPCに入れて業務の文書を読ませると、会社から見えない利用になってしまいます。入れてよいPCと使ってよいモデルを会社が決め、それ以外は申請制にしておくと管理しやすくなります。
ローカルLLMとクラウドの法人向けサービスはどちらが安いですか?
機器代だけで比べるとローカルLLMが安く見えますが、担当者の時間を入れると差は縮まります。賃金340.6千円の1割を運用に充てると3年で約123万円分になり、Mac Studio(M5 Max)1台を営業時間に動かす例では3年総額が約174万円です。人数が増えるとローカル側は台数や上位機が必要になるため、自社の人数と担当者の体制で3年総額を並べて比べることをおすすめします。

まとめ

ローカルLLMは、実行ソフトとモデルの利用料なら無料で使えます。OllamaもLM Studioも、自分の機械で動かす分には料金がかからず、Apache 2.0などで配布されるモデルも多く出ています。

会社で使うとなると、PC代、電気代、運用に充てる担当者の時間が加わります。電気代は営業時間だけなら月数千円の範囲ですが、専用機を24時間動かすと年10万円を超える上限の計算になることもあります。担当者の時間は、賃金の1割を充てる仮定でも3年で約123万円分となり、機器の価格を上回ってしまいます。

見積もりは、本体の価格だけでなく、保存容量・バックアップ・停電への備え・置き場所・保証・引き継ぎまで含めた3年の総額で出してみてください。そのうえで、担当者の体制、使う人数、扱うデータ、求める答えの質をもとに、自社で運用するか、既製の法人向けサービスを使うか、両方を組み合わせるかを決めるのが現実的です。法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。