ローカルLLMに必要なPC。Mac・Windows別のメモリとGPUの目安

ローカルLLM用のPCとは、AIの言語モデルを社外へ送らずに、手元の機械のメモリに読み込んで動かすためのPCになります。選ぶときの物差しはメモリの量で、動かしたいモデルのサイズより多いメモリが必要です。Macは「ユニファイドメモリ」の容量、WindowsはGPUに付いた「VRAM」の容量で、動かせるモデルの大きさがおおむね決まります。仕組みやメリットから知りたい方は、先にローカルLLMとは何かをまとめた記事を読んでみてください。

ローカルLLM用PCは、Macはユニファイドメモリ、WindowsはVRAMで選ぶ

ローカルLLM用のPCは、CPUの名前や価格帯よりも、モデルを読み込むメモリの容量で選ぶことになります。ローカルLLMは、動いている間ずっとモデルの中身をメモリに置いたまま計算を続ける仕組みだからです。メモリに収まりきらないと、動きが極端に遅くなったり、そもそも読み込めなかったりしてしまいます。会社で購入を任された方がまず決めたいのは、どの大きさのモデルを動かしたいかという1点でしょう。

Macは「ユニファイドメモリ」の容量で決まる

Macのメモリは、CPUとGPUが同じ場所を共有する「ユニファイドメモリ」としてAppleの仕様表に書かれています。GPU専用のメモリが別にあるわけではないため、搭載した容量の多くをモデルの読み込みに回すことが出来ます。ただし、画面の表示やブラウザ、表計算のソフトも同じメモリを使うため、全部をモデルに回せるわけではありません。Appleの仕様ページでは、メモリの容量は購入するときに選ぶ構成として示されています。後から増設できるという記載は見当たらないため、Macは最初に選んだ容量で使い続ける前提で考えましょう。

Windowsは「GPUのVRAM」とメインメモリの2段で考える

WindowsのPCでは、GPU(画像処理用の半導体)に付いた専用のメモリであるVRAMと、PC本体のメインメモリが別々に用意されています。ローカルLLMを速く動かせるのは、モデルがVRAMに収まっている間に限られます。VRAMからはみ出した分はCPUとメインメモリで計算することになり、文字が出てくる速さが落ちてしまいます。Ollamaの公式ドキュメントでも、モデルがGPUとCPUのどちらにどれだけ載っているかを確かめる方法が案内されています。Windowsでは、まずVRAMの容量を見て、足りない分をメインメモリで受け止める2段の考え方になります。

同じ32GBという数字でも、Macのユニファイドメモリ32GBとWindowsのメインメモリ32GBでは意味が違ってきます。メインメモリが32GBあってもGPUのVRAMが8GBなら、GPUで動かせるのは8GBに収まる分までとなります。Windowsの仕様表は、メインメモリではなくGPUのVRAMの数字から読むようにしましょう。次の早見は、動かしたいモデルのサイズを、MacとWindowsそれぞれの容量に読み替えたものです。

動かしたいモデルの例(Ollamaの表示サイズ)Macで考えるユニファイドメモリWindowsで考えるGPUのVRAM
qwen3.5の9b(6.6GB)16GB(MacBook Air(M5)・Mac mini(M6)の最小構成)8GBでは余裕が少なく、16GB(RTX 5060 Ti 16GB版など)
gpt-ossの20b(14GB)24GB以上(OpenAIは16GBのメモリで動く設計と説明)16GB(RTX 5060 Ti 16GB版・RTX 5070 Ti・RTX 5080)
qwen3.6の27b(約18〜19GB)、gemma4の31b(約19〜20GB)32GB以上16GBでは収まらず、32GB(RTX 5090)
qwen3.5の35b(24GB)36GB以上、余裕を見るなら48GB32GB(RTX 5090)
gpt-ossの120b(65GB)、llama4のScout(67GB)96GB以上(M5 Ultra、128GBのM5 Max)GeForceでは足りず、96GBのRTX PRO 6000 Blackwellなど
qwen3.5の122b(81GB)128GB以上96GBのRTX PRO 6000 Blackwellでも余裕は少ない

※モデルのサイズは、2026年10月3日時点でOllamaのライブラリに表示されていたダウンロードサイズです。実際に動かすときは、会話の長さ(コンテキスト)の分だけ追加のメモリが要ります。メモリとVRAMの容量はApple・NVIDIAの公式仕様で、どのモデルがどれだけの速さで動くかを各社が保証するものではありません。早見の容量は、ダウンロードサイズに余裕を足して読み替えた目安です。

早見の左右を見比べると、30GBを超えるモデルからは、Macのほうが選べる機種の幅が広がってきます。NVIDIAの公式比較表では、GeForce RTX 50シリーズのVRAMはRTX 5090の32GBが上限となっているためです。それより大きなモデルをWindowsで動かすには、業務用のGPUを積んだワークステーションか、メモリを共有する別の形の機械を考えることになります。Windowsでも、AMDのRyzen AI Max+ 395のように最大128GBのメモリを積めるプロセッサーがあり、後の節で扱っています。

反対に、10GB前後までの小さめのモデルを試すだけなら、MacでもWindowsでも大きな差は出にくくなります。最初の1台は、どちらのOSが社内で管理しやすいかで決めても困ることは少ないでしょう。社員のPCがほぼWindowsの会社でMacを1台だけ入れると、資産管理や更新の手順が別になってしまいます。管理の手間も含めて、社内の標準に合わせるかどうかを先に決めておきましょう。

仕様表の数字を読み違えやすい3つの場面

ローカルLLM用のPC選びでは、数字そのものより、どの数字を見るかで間違えることが多くなります。1つ目は、Windowsのタスクマネージャーに出てくる共有GPUメモリを、VRAMと取り違える場面です。共有GPUメモリはメインメモリの一部をGPU用に貸し出す枠で、GPUに付いた専用のメモリとは別のものになります。VRAMとして数えてよいのは専用GPUメモリのほうだと覚えておいてください。

2つ目は、Macのユニファイドメモリを、すべてモデルのために使えると考えてしまう場面です。ユニファイドメモリはOSや画面の表示、開いているアプリとも分け合うため、16GBのMacで16GBのモデルを動かすのは現実的ではありません。3つ目は、GPUの名前だけを見て容量を決めてしまう場面になります。RTX 5060 Tiのように同じ名前で16GB版と8GB版がある製品や、ノートPC向けのように名前が近くても容量が違う製品があるためです。

どの場面も、購入の前に仕様表の該当する欄を1つずつ確かめれば防ぐことが出来ます。見積もりを取るときは、メモリ・VRAM・GPUの型番の3つを、それぞれ別の欄に書いてもらうよう頼んでみましょう。

ユニファイドメモリとVRAMの違いを、作業机にたとえると

パソコンに詳しくない方には、メモリを作業机の広さにたとえると伝わりやすくなります。Macのユニファイドメモリは、CPUとGPUが1つの大きな机を一緒に使うような作りです。机が広ければ、大きな資料(モデル)を広げたまま、2人で同時に作業を進めることが出来ます。

WindowsのGPUは、自分専用の机(VRAM)を持った計算の速い職人のような存在になります。資料が専用の机に収まれば素早く仕上げてくれますが、はみ出した分は隣の共用の机(メインメモリ)に置くしかありません。共用の机の資料は、計算のゆっくりな別の担当(CPU)が受け持つことになり、全体の仕上がりが遅れてしまいます。社内で説明するときは、このたとえを使って、どの机の広さを買うのかを話してみてください。

OS選びは、社内の管理のしやすさで決める

MacかWindowsかで迷ったときは、動かしたいモデルの大きさに加えて、社内の誰が面倒を見るのかも判断の材料になります。社員のPCがWindowsでそろっている会社なら、更新の手順や資産の管理をWindowsの流れに乗せられるため、担当者の手間は少なくて済みます。反対に、Macを使っている部署が多い会社なら、Macで試すほうが社員も扱いに慣れているでしょう。

大きなモデルを動かしたいのに、Windowsで32GBを超えるVRAMを用意するのが難しい場合は、共有の1台だけMacにする選び方もあります。その場合は、Macを扱える担当者がいるかどうかを、買う前に確かめておきましょう。

動かしたいモデルの大きさから、必要なメモリを見積もる

必要なメモリは、動かしたいモデルのファイルの大きさに、会話の長さの分の余裕を足して見積もることになります。モデルの名前に付いた20bや27bの数字は、パラメータ数(モデルの中にある数値の数)を10億単位で表したものです。同じ27bでも配布の形によってファイルの大きさが変わるため、PCを選ぶときは実際のダウンロードサイズを見るほうが確実でしょう。モデル名の数字だけで容量を決めてしまうと、買った後で足りないと分かる事態になりかねません。

Ollamaに表示されたモデルのサイズ

Ollamaのライブラリでは、モデルごとのダウンロードサイズを確かめることが出来ます。2026年10月3日時点の表示では、gpt-ossの20bが14GB、120bが65GBとなっています。qwen3.5は、9bが6.6GB、27bが17GB、35bが24GB、122bが81GBと並びます。qwen3.6の27bは約18〜19GB、35bは約23〜24GBで、gemma4は26bが約16〜19GB、31bが約19〜20GBの範囲です。Llama 4のScoutは67GBで、ここに挙げた中では、総パラメータ数が100Bを超えるモデルはどれも60GBを超える大きさになります。

並べてみると、20〜35B級のモデルはおおむね14〜24GB、100Bを超えるモデルは65〜81GBの範囲に収まっています。社内のPCで現実的に動かせるのは前者で、後者はメモリを大きく積んだ共有機の話になってきます。社内で使いたいモデルの候補を2つか3つ決めたら、それぞれのサイズを書き出してみてください。どのモデルを候補にするかは、ローカルLLMのおすすめモデルと業務別の選び方で詳しく扱っています。

見積もりの流れを、議事録の要約にgpt-ossの20bを使いたい場合で考えてみましょう。ファイルは14GBのため、Windowsなら16GBのVRAMにほぼ収まるものの、残りは2GBほどしかありません。長い議事録を読ませると余裕がなくなり、一部がCPU側に回る可能性も出てきます。Macなら24GBのユニファイドメモリを選ぶと、画面やブラウザを開いたままでも余裕を持たせることが出来ます。ファイルの大きさちょうどではなく、会話の長さの分の余裕を見て、選べる容量のひとつ上を選ぶのがこの記事の目安になります。

総パラメータ数と活性パラメータ数の見方

最近のモデルには、総パラメータ数と活性パラメータ数の2つの数字が書かれているものがあります。総パラメータ数はモデル全体の大きさで、活性パラメータ数は1回の計算で実際に使われる部分の大きさを表します。たとえばQwen3.5-35B-A3Bは総35B・活性3B、gpt-oss-20bは総21B・活性3.6B、Gemma 4の26B A4Bは総25.2B・活性3.8Bとモデルカードに書かれています。こうした作りはMoE(専門家の混合)と呼ばれ、計算の量を抑えながら大きなモデルを動かす工夫の1つになります。

PCを選ぶときに気をつけたいのは、メモリの必要量は活性ではなく総パラメータ数のほうに沿うという点です。活性が3Bのqwen3.5の35bでも、Ollamaの表示サイズは24GBあり、ファイルはモデル全体の分だけ大きくなっています。活性の小さい数字だけを見て16GBで足りると考えると、読み込めなかったり、大きく遅くなったりしてしまいます。モデルカードを読むときは、まず総パラメータ数とダウンロードサイズの2つを確かめるようにしましょう。

量子化でサイズを下げる仕組みと、答えの質との引き換え

量子化とは、モデルの中の数値を少ない桁数で持つように変えて、ファイルを小さくする方法になります。OpenAIはgpt-oss-20bについて、MXFP4という量子化を使うことで16GBのメモリで動くよう設計したとモデルカードに書いています。量子化を強めるほど必要なメモリは減る一方、答えの細かさや正確さが落ちる場合もあります。同じモデルが複数の大きさで配られていることもあり、PCに合わせて小さい版を選ぶという手も取れます。

ただし、16GBで動くという説明は提供元の自己申告で、第三者が速さや質を確かめた数字ではありません。小さい版で動いたことと、業務で使える質が出ることは分けて確かめましょう。社内の文書を使って、元の大きさの版と答えを見比べてみると違いが分かりやすくなります。量子化の基本的な考え方は冒頭で案内した解説記事にもまとめてあるため、ここではPC選びに効く点だけに絞っています。

会話の長さ(コンテキスト)が長いほどメモリが増える

モデルを動かすときは、ファイルの大きさに加えて、やり取りしている文章の長さ(コンテキスト)を覚えておく分のメモリも使います。長い契約書や議事録を丸ごと読ませると、その分だけ必要なメモリが増えてしまいます。Gemma 4の26Bのように、256Kという長いコンテキストに対応したモデルもあります。対応している長さをいっぱいに使うほど、会話の分のメモリも大きくなっていきます。

LM Studioのドキュメントには、8GBのMacでも、小さいモデルと控えめなコンテキストなら使える場合があると書かれています。逆の見方をすると、長い文書を扱うほどメモリには余裕が要るということになります。長い文書を扱う予定がある会社は、早見の数字よりひとつ上の容量を選んでおくと安心です。短い問い合わせの下書きが中心なのか、数十ページの資料を読ませたいのかを、購入の前に部署へ聞いてみてください。

業務別に必要な容量を見積もった例

同じ会社の中でも、業務によって必要な容量はかなり変わってきます。ここでは、よくある3つの業務で、どのくらいの容量を見込めばよいかを並べてみます。モデルの名前は一例で、実際にどれを使うかは社内の文書で試して決めることになります。

1つ目は、社内の問い合わせへの返事や、メールの下書きのような短い文章を作る業務です。やり取りが短く、qwen3.5の9b(6.6GB)のような小さめのモデルから試せるため、16GBのMacやVRAM 16GBのGPUで始めやすくなります。2つ目は、会議の議事録を要約する業務で、1回に読ませる文章が長くなりがちです。gpt-ossの20b(14GB)を使うなら、Macは24GB以上、WindowsはVRAM 16GBに加えてメインメモリにも余裕を持たせておきたいところでしょう。

3つ目は、社内規程や契約書をまとめて読ませ、該当する箇所を探させる業務になります。文書の量が多いうえに答えの正確さも欲しいため、qwen3.6の27b(約18〜19GB)やqwen3.5の35b(24GB)のような20GB前後のモデルが候補に入ってきます。この場合は、Macなら32GB〜48GB、WindowsならRTX 5090の32GBが目安となり、部署で共有する1台として考えるのが自然です。社内でどの業務から始めたいかを1つ決めてから、容量を当てはめてみてください。

見積もりを社内で共有するときの書き方

見積もった容量は、稟議や部署への説明で使えるよう、短い形に書き残しておくと話が早く進みます。たとえば議事録の要約を例にすると、次のような5行にまとめることが出来ます。

  • 使いたい業務は、週1回の定例会議の議事録の要約
  • 試すモデルはgpt-ossの20bで、Ollamaの表示サイズは14GB(2026年10月3日時点)
  • 必要な容量は、Macならユニファイドメモリ24GB以上、WindowsならVRAM 16GB以上
  • 会話の長さの分を見込み、ひとつ上の容量を選ぶ
  • 候補の機種と最小構成の税込価格、確認した日付

この形で残しておけば、後からモデルを替えたくなったときも、どの行を書き換えればよいかがすぐに分かります。容量の根拠がモデルのサイズにあると示せるため、なぜこの構成なのかを聞かれても答えやすくなるはずです。部署ごとに1枚ずつ作り、同じ形式で並べてみましょう。

用途と人数で考える構成例と、会社の出費

会社で用意するPCの構成は、試す段階か、部署で共有するか、全社に広げるかで大きく変わってきます。ここで挙げる価格は、2026年10月3日時点のApple公式サイトに表示された税込価格(最小構成)になります。メモリを増やした構成の価格は含んでいないため、実際の見積もりはApple公式サイトで構成を選んで確かめてください。WindowsのGPUはNVIDIAの公式サイトに日本円の価格が出ていないので、製品名とVRAMだけを挙げています。

1人で試す段階:手元の1台で小さめのモデルから

最初の段階は、担当者1人が小さめのモデルを試し、業務で使えそうかを見極める期間になります。Macなら、Mac mini(M6)がユニファイドメモリ16GBで149,800円(税込)から、MacBook Air(M5)の13インチが16GBで184,800円(税込)から用意されています。どちらも24GB・32GBに変更できるため、gpt-ossの20bを試したいなら24GB以上を選んでおきましょう。Windowsなら、VRAMが16GBのGeForce RTX 5060 Ti 16GB版やRTX 5070 Ti、RTX 5080を積んだPCが候補になってきます。同じRTX 5060 Tiでも8GB版があるため、型番だけでなくVRAMの容量まで確かめることが大切です。

この段階では、新しく買う前に、今ある社用PCで試せるかを確かめておくのも1つの方法になります。手順は後半の今の社用PCで確かめる手順にまとめました。社用PCで小さめのモデルが動けば、購入の前に業務で使えるかどうかの感触をつかむことが出来ます。動かなかった場合も、どこが足りないかが分かるため、買うPCの条件を決めやすくなるはずです。

部署の数人で共有する段階:1台を置くか、各自に配るか

部署の5人ほどで使う段階では、1台を共有するか、各自に1台ずつ配るかで出費の形が分かれます。各自にMacBook Air(M5)の13インチを最小構成で配ると、184,800円×5台で924,000円(税込)になります。共有する1台を置く場合は、Mac Studio(M5 Max)が36GBで419,800円(税込)からあり、メモリを48GB・64GB・128GBへ変更して選ぶことが出来ます。128GBを選べるのは18コアCPU・40コアGPUのM5 Maxの構成に限られるので、構成画面で確かめてみてください。Mac mini(M5 Pro)も24GBで299,800円(税込)から用意され、48GB・64GBへ変えられます。

共有の1台にすると、本体の代金は抑えやすくなります。その一方で、社員のPCからその1台へつなぐ設定や、誰がどこまで使えるかの線引きを自社で用意しなければなりません。同時に何人もが質問を投げると、1台の処理を分け合う形になるため、返事を待つ時間が延びてしまいます。共有か各自配布かは、同時に使いそうな人数と、設定を引き受けられる担当者がいるかどうかで決めましょう。

全社に広げたい段階:台数と管理の出費が積み上がる

10人以上に広げる段階では、PCの代金に加えて、台数分の設定と管理の手間が重くなってきます。たとえば10人にMacBook Pro(M5 Pro)の14インチを最小構成で配ると、369,800円×10台で3,698,000円(税込)となります。大きなモデルを全社の共有機で動かすなら、Mac Studio(M5 Ultra)が96GBで949,800円(税込)から用意されています。256GB・512GBへも変更できる機種で、512GBのモデルは10月後半に加わる予定だとAppleのニュースルームで案内されました。

見落としやすいのは、担当者の時間という出費のほうでしょう。仮に担当者が月8時間を、PCの更新やモデルの入れ替え、社員からの問い合わせに使うとします。1時間あたりの人件費を2,500円と置くと、月20,000円、年240,000円の出費となってしまいます。PCは一度買えば終わりですが、担当者の時間は使い続ける限り毎月かかります。

同時に使う人数から1台の大きさを考える

共有の1台を置くときは、部署の人数より、同じ時間帯に質問を投げる人数のほうが効いてきます。10人の部署でも、使うのが朝の数十分に集中するなら、同時に使う人数は部署の人数よりずっと少なくなることもあるでしょう。一方で、全員が議事録の要約を同じ会議のあとに頼むような使い方では、待ち時間が一気に延びてしまいます。

同時に使う人数が多くなりそうなら、1台を大きくするより、小さめのモデルを動かす台数を分ける考え方もあります。どちらが合うかは、今の社用PCで試したときの待ち時間をもとに考えるのが確かです。まずは部署の方に、1日のうちいつ、どんな業務で使いたいかを聞いてみてください。

1年あたりの出費に直して比べる

PCの代金は一度に出ていくため、担当者の時間と並べるには、1年あたりの金額に直すと比べやすいでしょう。仮に3年使う前提で考えると、Mac Studio(M5 Max)の最小構成419,800円(税込)は、1年あたり約139,933円となります。ここに先ほどの担当者の時間の年240,000円を足すと、共有の1台を持つ出費は1年あたり約379,933円になってしまいます。

各自に配る場合も、同じように計算してみましょう。5人にMacBook Air(M5)の13インチを配る924,000円(税込)は、3年で割ると1年あたり308,000円です。各自のPCで動かす場合は1台ずつの設定や更新が増えるため、担当者の時間は共有の1台より多くかかりやすいでしょう。どちらの形でも、PCの代金より担当者の時間のほうが大きくなる年があり得る点は、稟議の前に決裁する方と共有しておきたいところです。

Windowsで同じ段階を考える場合

Windowsで同じ3つの段階を考えると、GPUのVRAMの大きさで段階が分かれることになります。1人で試す段階なら、VRAM 16GBのRTX 5060 Ti 16GB版やRTX 5070 Tiを積んだPCが出発点になるでしょう。部署で20GB前後のモデルを共有するなら、32GBのRTX 5090を積んだPCが候補に残ります。全社で100Bを超えるモデルを動かしたいなら、96GBのRTX PRO 6000 Blackwellを積んだワークステーションや、128GBのメモリを積んだDGX Sparkのような機械を検討することになります。

GPUの価格はNVIDIAの公式サイトに日本円で出ていないため、Windowsの構成はPCメーカーや販売店の見積もりで比べる形です。見積もりを取るときは、Macの構成と同じ容量の段階にそろえて頼むと、OSをまたいだ比べ方がしやすくなります。同じ段階どうしの金額と、担当者が扱い慣れているOSかどうかを、並べて決めてみてください。

構成選びでよくある失敗

構成選びでよくあるのは、最初の1台を最小構成で買い、試したいモデルが入らないと後から分かる失敗です。16GBのMacを買ったあとで議事録の要約にgpt-ossの20bを使いたくなると、メモリを増やせないため買い直しになってしまいます。もう1つは、共有の1台を置いたのに、社員のPCからつなぐ設定を誰も引き受けられず、担当者の机の上だけで使われる失敗になります。買う前に、試したいモデルの一覧と、設定を受け持つ方の名前の2つを書き出しておきましょう。

台数が増えるほど、OSやソフトの更新、モデルの入れ替え、退職した方のPCの回収まで、自社で抱える作業も増えていきます。PCを用意して動かすところまでは出来ても、社員全員が安全に使える状態を保ち続けるのは別の仕事になります。自社で持つ場合の手間と、既製の法人向けサービスを使う場合を、一度並べて考えてみてください。

台数分のPCを管理する前に使う環境の形を決める

PCをそろえて管理する代わりに、会社で使うAIを1つの環境にまとめる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

Macを選ぶ場合:ユニファイドメモリの容量と機種の決め方

Macで選ぶときは、機種より先にユニファイドメモリの容量を決め、その容量を選べる機種を探す順番になります。Macのメモリは後から増やせる記載がないため、容量の選び間違いはそのまま買い替えにつながってしまいます。2026年10月3日時点のApple公式サイトでは、機種ごとに選べるメモリの範囲が次のように示されています。

  • MacBook Air(M5)は16GBから24GB・32GBに変更でき、メモリ帯域は153GB/s。13インチは184,800円(税込)から、15インチは219,800円(税込)から
  • Mac mini(M6)は16GBから24GB・32GBに変更でき、メモリ帯域は最大170GB/s。149,800円(税込)から
  • Mac mini(M5 Pro)は24GBから48GB・64GBに変更でき、メモリ帯域は307GB/s。299,800円(税込)から
  • MacBook ProはM5搭載の14インチが279,800円(税込)から。M5 Proは最大64GB・最大307GB/sで、14インチ369,800円、16インチ449,800円(いずれも税込)から。M5 Maxは最大128GB・最大614GB/sで、14インチ599,800円、16インチ649,800円(いずれも税込)から
  • Mac Studio(M5 Max)は36GBから48GB・64GB・128GBに変更でき、419,800円(税込)から
  • Mac Studio(M5 Ultra)は96GBから256GB・512GBに変更でき、メモリ帯域は1.2TB/s。949,800円(税込)から

※価格は2026年10月3日時点のApple公式サイトの税込価格(最小構成)です。メモリを増やした構成の価格は含みません。価格や構成は変わることがあるため、購入前にApple公式サイトでご確認ください。

一覧のメモリ帯域とは、メモリとチップの間で1秒あたりに運べるデータの量を指します。ローカルLLMは文字のかたまり(トークン)を1つ出すたびにモデルの中身を読み出すため、帯域が広い機種ほど文字の出る速さに余裕が出やすいと考えられます。MacBook Airの153GB/sとMac mini(M5 Pro)の307GB/sでは、約2倍の開きがあります。帯域の数字は速さを保証するものではないものの、長く使う共有機を選ぶときの比べどころになってきます。

Mac miniとMac Studio、MacBookの選び分け

同じ容量を選べる機種が複数あるときは、置き方と使う人数で選び分けることになります。担当者が1人で試すなら、持ち歩けるMacBook Airか、机に置くMac mini(M6)のどちらでも困ることは少ないでしょう。部署で共有する1台なら、48GB・64GBまで選べるMac mini(M5 Pro)か、128GBまで選べるMac Studio(M5 Max)が候補に残ります。100Bを超えるモデルまで見据えるなら、96GBから始まるMac Studio(M5 Ultra)を考えることになります。

MacBook ProのM5 Maxも128GBまで選べるものの、共有機として置きっぱなしにするなら、画面とキーボードの分だけ割高になりがちです。14インチのM5 Maxは599,800円(税込)から、Mac Studio(M5 Max)は419,800円(税込)からで、最小構成どうしの差は180,000円になります。どちらもメモリを増やすと価格は上がるため、同じ容量にそろえた見積もりをApple公式サイトで取り直してみてください。

16GB・24GBのMacで出来ること

16GBのMacは、qwen3.5の9b(6.6GB)のような小さめのモデルを試す入口になります。LM Studioの公式ドキュメントでも、macOSでは16GB以上のメモリが推奨されています。gpt-ossの20b(14GB)まで試したいなら、24GBを選んだほうが画面や他のアプリと取り合いになりにくいでしょう。MacBook AirとMac mini(M6)はどちらも32GBまで選べるため、迷ったら上の容量に寄せておくと後悔が少なくなります。

32GB〜64GBのMacで出来ること

32GB以上になると、qwen3.6の27bやgemma4の31bといった20GB前後のモデルが現実的な候補に入ってきます。36GBのMac Studio(M5 Max)や48GBのMac mini(M5 Pro)なら、qwen3.5の35b(24GB)も視野に入るでしょう。64GBまで積めば、長い文書を読ませたり、2つのモデルを切り替えながら比べたりする余裕も生まれます。部署で共有する1台を想定するなら、この帯の容量を出発点に考えてみてください。

96GB以上のMacを考える場面

gpt-ossの120b(65GB)やLlama 4のScout(67GB)、qwen3.5の122b(81GB)を動かしたい場合は、96GB以上のMacが候補になります。Mac Studio(M5 Ultra)は96GBが最小構成で、M5 Maxは128GBまで選べます。OpenAIはgpt-oss-120bについて、80GBのGPU 1枚(NVIDIA H100やAMD MI300Xなど)に収まる設計とモデルカードで説明しています。100Bを超えるモデルは、ノートPCに載せるより共有の1台にまとめるほうが扱いやすくなります。持ち歩くPCで大きなモデルを動かすと、充電や発熱の面でも負担が大きくなりがちです。

Macでローカルの実行ソフトを使う場合、OllamaはAppleのMetalという仕組みでGPUを使って高速化します。LM Studioの公式ドキュメントでは、macOSはApple Silicon(M1/M2/M3/M4)とmacOS 14.0以降が必須とされています。ドキュメントのチップ名の表記はM4までになっているため、M5・M6の機種を買う前には最新の表記を確かめておきましょう。

Macでよくある失敗

Macでよくあるのは、すぐに手に入る最小構成を優先して、メモリの少ない構成で買ってしまう失敗です。お届け予定日は構成によって変わるため、急ぎの購入ほど最小構成に流れやすくなります。ところが、後から増設できる記載がないため、足りないと分かったときにはもう1台買うしかなくなってしまいます。注文の前に購入画面のお届け予定日を確かめつつ、納期より先に、試したいモデルが入るメモリの容量を決めておきましょう。

もう1つよくあるのは、部署で共有するつもりの1台をMacBook Proにしてしまう失敗です。ノートPCは持ち主が持ち帰ったり、出張に持ち出したりするため、ほかの社員が使いたいときに手元にない事態が起こりがちになります。共有を前提にするなら、置きっぱなしに出来るMac miniかMac Studioを選ぶほうが運用は楽になるでしょう。

Apple公式サイトで構成を見積もる手順

Macの見積もりは、Apple公式サイトの購入画面で構成を選ぶと、その場で税込の金額を確かめることが出来ます。機種のページから購入に進み、チップとメモリの容量を選んで、表示される金額を控える流れになります。メモリの選択肢はチップによって変わるため、たとえばMac Studioで128GBを選びたいなら、先に18コアCPU・40コアGPUのM5 Maxを選ぶ必要があります。

控えるときは、金額と一緒に、確認した日付と選んだ構成をそのまま書き写しておきましょう。価格は変わることがあるため、稟議を出す日の金額と食い違ったときに、どの時点の数字かを説明できるようにしておくと安心です。MacとWindowsの見積もりを並べる場合も、同じ日に確かめた数字どうしで比べてみてください。

Windowsを選ぶ場合:GPUのVRAMが効く理由と選び方

WindowsのPCでは、GPUのVRAMにモデルが収まるかどうかで、使い心地が大きく分かれます。GPUはたくさんの計算を同時にこなすのが得意で、モデルがVRAMに収まっていればその力をそのまま使えるからです。収まらなかった分はCPUとメインメモリが受け持つことになり、文字の出る速さはそこで頭打ちになってしまいます。OllamaのFAQでは、ollama psの表示で100% GPU、100% CPU、48%/52% CPU/GPUのように、どこに載っているかを確かめる方法が示されています。

実行ソフトが対応するGPUも、先に確かめておきたい点になります。Ollamaの公式ドキュメントでは、NVIDIAはcompute capability 5.0以上のGPU、AMDはRadeon RXやRadeon PROなど(ROCmという仕組み)に対応すると書かれています。Windowsで使う場合はWindows 10の22H2以降が条件で、NVIDIAのGPUはドライバーが551.61以降であることも求められます。LM Studioのドキュメントでは、GPUは専用のVRAMが4GB以上あることが推奨されています。

GeForce RTX 50シリーズのVRAMと選び方

NVIDIAの公式比較表で、GeForce RTX 50シリーズのVRAMを並べると次のとおりです。いずれもGDDR7というメモリを使っています。

  • GeForce RTX 5090は32GB
  • GeForce RTX 5080は16GB
  • GeForce RTX 5070 Tiは16GB
  • GeForce RTX 5070は12GB
  • GeForce RTX 5060 Tiは16GB版と8GB版の2種類
  • GeForce RTX 5060は8GB

業務でローカルLLMを試すなら、VRAM 16GBの製品が出発点になりやすいでしょう。gpt-ossの20b(14GB)は16GBにほぼ収まるものの、gemma4の26b(約16〜19GB)は16GBでは一部がはみ出す大きさとなります。20GB前後のモデルを無理なく載せたいなら、32GBのRTX 5090が候補として残ります。RTX 5070の12GBや8GBの製品は、qwen3.5の9b(6.6GB)のような小さめのモデルを試す用途に向いています。

GPUの価格はNVIDIAの公式サイトに日本円で表示されていないため、ここでは挙げていません。PCメーカーや販売店でGPU付きのPCを見積もるときは、GPUの型番とあわせて、VRAMの容量が見積書に書かれているかを確かめてください。RTX 5060 Tiのように同じ名前で容量が2種類ある製品は、型番だけでは8GB版が届いてしまうこともあります。

ゲーミング向けGPUと業務用GPU(RTX PRO)の使い分け

GeForceはもともとゲーム向けの製品で、1人が自分の机で試す用途なら十分に役目を果たしてくれます。32GBを超えるVRAMが必要になると、業務用のRTX PROシリーズが選択肢に入ってきます。RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Editionは96GBのGDDR7を積み、ECC(メモリの誤りを自動で直す仕組み)にも対応しています。32GBを超えるモデルをWindowsで動かすなら、GeForceではなく業務用のGPUを考えることになります。長時間止めずに動かす共有機では、こうした誤り訂正の有無も比べる項目に加えておきましょう。

NVIDIAには、DGX Sparkという小型の機械もあります。128GBのLPDDR5xを、CPUとGPUで共有するコヒーレントな統合システムメモリとして積んでいる製品です。公式ページに価格の表示はないため、検討する場合は販売店に見積もりを取る形になります。GPUを1枚ずつ足していく考え方とは別に、メモリを大きく積んだ1台を置く考え方もあると覚えておいてください。

Ryzen AI Max+ 395のようにメモリを共有するWindows機

Windowsでも、Macのように大きなメモリをCPUと内蔵グラフィックスで共有する作りの製品があります。AMDのRyzen AI Max+ 395は、最大128GBのメモリ(256-bit LPDDR5x)に対応し、内蔵グラフィックスにRadeonを積んだプロセッサーです。ただし、GPUに割り当てられるメモリの量は製品によって違う場合があります。製品ごとの仕様と実行ソフトの対応状況を、購入前にメーカーへ確かめるのが安全でしょう。Windowsで大きなモデルを試したい会社にとっては、Macと並べて比べる候補になります。

Windowsでよくある失敗

Windowsでよくあるのは、メインメモリを64GBや128GBに増やしたのに、GPUのVRAMが8GBのままという失敗です。メインメモリが大きければ大きなモデルを読み込めはするものの、VRAMに収まらない分はCPUで計算されるため、文字が出るのを長く待つことになります。もう1つは、GPUだけを後から買い足そうとして、PC本体の電源やケースの大きさが合わないと分かる失敗です。受注生産(BTO)のPCを注文するときに、VRAMの大きいGPUと、それに見合う電源をあわせて選んでおくと安心でしょう。

社内に情報システムの担当者がいない会社では、GPUの型番や電源の容量まで見比べるのは負担が大きくなりがちです。そうした場合は、PCメーカーや販売店に、動かしたいモデルのサイズとVRAMの希望を伝えて構成を提案してもらうのも1つの方法になります。提案を受けたら、見積書のVRAMの欄と、GPUが16GB版か8GB版かを、必ず自分の目で確かめてください。

AMDのRadeonを選ぶ場合

Windowsで使うGPUは、NVIDIAのGeForceだけではありません。Ollamaの公式ドキュメントでは、AMDのRadeon RXやRadeon PROなどにも、ROCmという仕組みを通じて対応すると書かれています。RadeonのGPUを積んだPCを検討するときも、見るべき数字はNVIDIAと同じくVRAMの容量になります。

ただし、対応しているGPUの一覧は実行ソフトごとに更新されていくため、購入前に最新のドキュメントで型番が載っているかを確かめておくと安心でしょう。社内にすでにRadeonを積んだPCがあるなら、まずそのPCで小さめのモデルを動かし、ollama psの表示で100% GPUになるかを見てみてください。

メインメモリ・CPU・ストレージの目安

GPUとVRAMを決めたら、残りのメインメモリ・CPU・ストレージは、足を引っ張らない水準を押さえれば十分になります。ここをけちると、せっかくのGPUが待たされる場面が出てきてしまいます。反対に、モデルがGPUに収まっている間は、CPUだけを高い型番にしても速さは変わりにくくなります。予算の配分は、VRAMとメモリに厚く、CPUには薄く、と考えておきましょう。

メインメモリ(RAM)は16GB以上から考える

LM Studioの公式ドキュメントでは、WindowsでもmacOSでも16GB以上のメモリが推奨されています。Windowsの場合、このメインメモリはVRAMからはみ出したモデルの受け皿にもなります。たとえば17GBあるqwen3.5の27bをVRAM 16GBのGPUで動かすと、収まらない分はメインメモリ側で計算される形です。このとき、メインメモリに余裕がないと、ブラウザや表計算のソフトまで重くなってしまいます。

VRAMからはみ出す使い方を想定するなら、メインメモリは16GBで止めず、余裕を持たせておくと安心でしょう。モデルを動かしながら、社員がいつもの業務ソフトも開いたままにする場面を思い浮かべてみてください。Macにはメインメモリとユニファイドメモリの区別がないため、この節の話は前の節の容量選びにそのまま含まれています。Windowsだけ、VRAMとメインメモリを別々に見積もる手間が増えることになります。

具体的な数字で考えると、VRAM 16GBのGPUでqwen3.6の27b(約18〜19GB)を動かす場合、少なくとも2〜3GBほど、会話の長さの分を含めるとそれ以上がVRAMに収まらない計算です。このはみ出した分をメインメモリが受け持つため、ollama psのProcessorの欄はCPUとGPUに分かれた表示に変わってきます。メインメモリが16GBしかないPCでは、Windowsや業務のアプリの分と合わせて窮屈になり、PC全体の動きも重くなりがちでしょう。はみ出す前提で使うなら、メインメモリは32GB以上にしておくと、ほかの作業との取り合いを減らしやすくなります。

社内の文書を検索して答えさせる仕組み(RAG)を組み合わせる場合は、文書を探す処理もメインメモリやCPUを使います。モデルと文書の検索を同じPCで動かすなら、モデルの分だけで容量を決めず、検索の分も見込んでおくことになるでしょう。どのくらい見込むかは扱う文書の量で変わるため、最初は少ない文書で試し、増やしながら様子を見てみてください。

CPUは脇役でも、AVX2の対応は確かめる

モデルがVRAMに収まっている間、計算の大部分はGPUが受け持ちます。CPUの性能が効いてくるのは、VRAMからはみ出した分を計算するときや、文書の読み込みなどの前後の処理になります。そのため、ローカルLLMのためだけにCPUを上位の型番へ上げる必要は薄いと考えられます。

CPUの性能が効く場面を減らすには、モデルをVRAMやユニファイドメモリに収めるのが近道になります。CPUにお金をかけるより、その分をメモリやVRAMの容量に回したほうが、ローカルLLMの使い心地は上がりやすいでしょう。

見落としやすいのは、CPUが対応している命令の種類のほうです。LM Studioの公式ドキュメントでは、Windowsのx64のPCではAVX2という命令に対応したCPUが必須とされています。数年前の社用PCを流用する場合は、CPUの型番から対応状況を確かめてみてください。LM StudioはWindowsのARM版(Snapdragon X Elite)にも対応していると書かれており、ARMのノートPCでも試すことは出来ます。

ストレージはモデルの数だけ容量が要る

ストレージは、試したいモデルのファイルをすべて置けるだけの空きが要ります。gpt-ossの20b(14GB)、qwen3.5の27b(17GB)、35b(24GB)の3つを入れるだけで55GBになります。ここにgpt-ossの120b(65GB)を足すと、合計は120GBまで膨らんでしまいます。モデルは新しい版が出るたびに入れ替えて試したくなるため、空き容量には余裕を持たせておくのが無難です。

モデルの入れ替えを繰り返すと、使わなくなった古いモデルがストレージに残り続けることもあります。OllamaもLM Studioも、要らないモデルを消して空きを戻すことが出来ます。試し終えたモデルは、月に1回ほど整理する決まりにしておくとよいでしょう。

モデルを読み込むときはストレージから読み出すため、読み書きの速いSSDを選んでおくと待ち時間が短くなります。社用PCのストレージが業務ファイルでいっぱいになっていると、モデルを置く場所が足りなくなってしまいます。購入前に、試したいモデルの合計サイズと、業務で使っている容量を足した数字を出しておきましょう。

ノートPCかデスクトップか、置き場所・電源・冷却まで決める

ローカルLLM用のPCは、1人が持ち歩いて試すならノートPC、部署で共有するならデスクトップや小型の据え置き機が向いています。共有の1台は、社員が使いたいときにいつでも動いている必要があるため、持ち出されるノートPCでは困る場面が出てきます。反対に、担当者が出張先や自宅でも試したいなら、ノートPCのほうが動きやすいでしょう。

ノートPCはGPUの名前だけで判断しない

Windowsのノートでは、デスクトップ向けと同じ名前のGPUでも、VRAMの容量が違う場合があります。カタログのGPUの名前だけで判断せず、メーカーの仕様表でVRAMの数字まで確かめてみてください。ノートPCは本体が薄く、熱を逃がす余裕も限られるため、長時間動かし続けると速さが落ちることもあります。MacBook ProのM5 Maxのように128GBまで選べるノートもあるものの、14インチで599,800円(税込)からと価格は上がってきます。

ノートPCを選ぶ場合は、社員が普段使う業務用のPCと、ローカルLLMを試すPCを1台で兼ねるかどうかも決めておきましょう。兼ねると購入の台数は減りますが、モデルを動かしている間は他の作業が重くなってしまいます。試す期間だけ専用の1台を用意し、続けるかどうかを決めてから台数を増やす進め方もあります。

ノートPCには、持ち出したときの紛失という心配もついて回ります。ローカルLLMで社外に出せない文書を扱うと、その文書や答えの記録がノートPCの中に残っていきます。持ち出すPCで機密性の高い文書を扱うなら、ディスクの暗号化や画面のロックなど、社用PCと同じ守りを必ずかけておきましょう。

共有の1台は、置き場所・電源・冷却まで決める

部署で共有する据え置き機は、置き場所を先に決めておかないと、届いてから困ることになります。高性能なGPUを積んだPCは消費電力が大きく、熱や音も出やすいため、執務室の机の下に置くと周りの方の迷惑になりかねません。サーバーを置ける部屋があるなら、そこに置いて社員のPCからつなぐ形を考えてみましょう。

GPUを後から足す予定がある場合は、PC本体の電源の容量や、ケースの中にGPUが収まる大きさかも確かめる必要があります。電源の容量が足りないと、GPUを買ったのに付けられないという事態になってしまいます。Mac miniやMac Studioのように本体とメモリが一体になった機種なら、パーツの相性を考える手間は減らせます。その代わり、メモリは購入時の構成のまま使い続けることになる点は、前の節で触れたとおりです。

夜間や休日も電源を入れたままにするかどうかも、共有機では決めておきたい点になります。いつでも使える状態にしておけば社員は便利ですが、その分だけ電気代がかかり、誰もいない時間に止まっても気づけません。始業時に電源を入れ、終業時に切る運用にするなら、その当番を誰が受け持つかまで決めておきましょう。

停電や瞬間的な電圧の低下で止まると、使っている途中の社員の作業も止まってしまいます。共有機として毎日使うなら、無停電電源装置の要否や、止まったときに誰が再起動するかも決めておくと安心でしょう。ここまで決めて初めて、社内で使える1台として回り始めます。

社員のPCから共有の1台につなぐときの考え方

共有の1台を置く場合は、社員が自分のPCからどうやってつなぐかも決めておく必要があります。社内のネットワークの中だけで使えるようにし、社外からはつながらない形にしておくのが基本の考え方になります。つなぐための設定は実行ソフトや機種によって違うため、設定を受け持つ方が手順書を作り、社員にはその手順だけを渡す形にしておきましょう。

設定を担当者1人だけが分かる状態にしておくと、その方が休んだり異動したりしたときに、誰も直せなくなってしまいます。手順書は、共有のフォルダなど、ほかの方も読める場所に置いておくとよいでしょう。

会社の資産としての管理も一緒に決める

ローカルLLM用に買ったPCも、ほかの社用PCと同じように会社の資産として管理することになります。資産台帳への登録、保証とサポートの期間、故障したときの代わりの機械をどうするかを、購入の時点で決めておきましょう。社用PCの管理ツールを入れている会社なら、ローカルLLM用のPCも同じ管理の対象にしておくと、更新の漏れを見つけやすくなります。

共有の1台を置く場合は、誰がアクセスできるかの線引きも欠かせません。ローカルで動くからといって、社内の誰でも使える状態にしておけば安全というわけではないためです。共有機は、使える人の範囲と、管理を担当する方を必ず決めてから置きましょう。ローカルLLMの安全面の全体像は、冒頭で案内した解説記事のほうで詳しく扱っています。

Copilot+ PCのNPUは、ローカルLLMの必須条件ではない

Copilot+ PCの売り文句であるNPUは、OllamaやLM StudioでローカルLLMを動かすための必須条件ではありません。NPUとは、AIの計算を少ない電力でこなすために作られた専用の半導体を指します。Microsoftの公式ページでは、Copilot+ PCの要件として、40 TOPS以上のNPU、16GBのメモリ(DDR5/LPDDR5)、256GBのストレージ(SSD/UFS)が挙げられています。TOPSは1秒間にこなせる計算の回数を表す数字で、NPUの性能を比べるときに使われます。

一方で、OllamaのGPUに関するドキュメントで高速化の対象として挙がっているのは、NVIDIA・AMDのGPUと、AppleのMetalになります。LM Studioの動作条件にも、メモリの容量、VRAM、CPUの命令(AVX2)は書かれていますが、NPUの性能は条件に入っていません。ローカルLLM用のPCは、NPUのTOPSではなく、メモリとVRAMの容量で比べましょう。Copilot+ PCという表示だけを頼りに買うと、思ったほど大きなモデルが動かないという結果にもつながりかねないでしょう。

もちろん、Copilot+ PCがローカルLLMに使えないという意味ではありません。要件の16GBのメモリは、LM Studioが推奨する16GB以上という条件と重なっています。LM StudioはWindowsのARM版(Snapdragon X Elite)にも対応していると書かれており、Snapdragon X Eliteを積んだCopilot+ PCなら、小さめのモデルを試すことが出来ます。大事なのは、NPUがあるかどうかではなく、動かしたいモデルのサイズに対してメモリが足りているかどうかという点になります。

Copilot+ PCの16GBのメモリで、Ollamaに14GBと表示されるgpt-ossの20bを動かす場面を考えてみましょう。数字の上では収まりそうに見えても、Windowsや業務のアプリも同じメモリを使うため、余裕はほとんど残りません。Copilot+ PCをローカルLLMにも使いたいなら、qwen3.5の9b(6.6GB)のような小さめのモデルから試すのが無理のない進め方になります。

社内でPCの入れ替えを予定している会社では、Copilot+ PCを選ぶ理由とローカルLLMを動かす理由を分けて考えるとよいでしょう。WindowsのAI機能を使うためにCopilot+ PCを入れる判断と、ローカルLLMのために大きなメモリやVRAMを積む判断は、別々の話だからです。入れ替えの計画を立てる担当の方は、両方の条件を1枚の表に並べて、どちらを優先するかを決めてみてください。

PCの入れ替え計画にローカルLLMを組み込む

社用PCを数年ごとに入れ替えている会社なら、次の入れ替えの機会にローカルLLMの条件を書き足しておくと、別に予算を取る手間を減らせます。全員分を大きなメモリにする必要はなく、試す担当者の数台だけを上の容量にする形でも十分に役に立ちます。入れ替えの仕様書に、メモリの容量、VRAMの容量、CPUのAVX2対応、Windowsのバージョンの4つを書いておけば、ローカルLLMを試せるPCかどうかが一目で分かるようになります。

反対に、ローカルLLMのために全員のPCを入れ替えるのは、試す前の段階では先走りになりがちです。まずは数台で試し、業務で役に立つと分かってから、入れ替えの仕様に反映していく順番が無理のない進め方でしょう。どのPCを上の容量にするかは、試す業務の担当者から選んでみてください。

ARMのWindows PCで試すときの注意

Copilot+ PCには、SnapdragonのようなARMのプロセッサーを積んだ機種もあります。LM StudioのドキュメントにはWindowsのARM版(Snapdragon X Elite)への対応が書かれているため、Snapdragon X Eliteを積んだ機種ならLM Studioから試すことが出来ます。一方で、ほかの実行ソフトや周辺のツールがARMに対応しているかは、ソフトごとに確かめる必要があります。

ARMの機種で試す場合も、見るべき数字はメモリの容量です。単体のGPUを積んでいない機種では、モデルはメインメモリに読み込まれるため、16GBの機種なら小さめのモデルに絞ることになるでしょう。社内にARMのCopilot+ PCがあるなら、まず6.6GBほどの小さめのモデルを試し、待ち時間を記録の表に書き込んでみてください。

買う前に、今の社用PCで確かめる手順

新しいPCを買う前に、今ある社用PCでローカルLLMが動くかを確かめるのが、安上がりな下調べになります。OllamaもLM Studioも、自分の機械で動かす分は無料で使えるため、試すだけならソフト代はかかりません。手元のPCで小さめのモデルを動かしてみると、自社の業務に何が足りないのかが具体的に見えてきます。

手順1:今のPCのメモリとVRAMを確かめる

Windowsでは、タスクマネージャーを開くと、メモリとGPUの容量をまとめて確かめることが出来ます。Ctrl+Shift+Escキーで開き、パフォーマンスのタブを選んでみてください。

  1. パフォーマンスのタブで「メモリ」を選び、右上に表示される搭載量(メインメモリの容量)を控える
  2. 同じタブで「GPU」を選び、「専用GPUメモリ」の数字を控える。これがVRAMの容量にあたる
  3. GPUが2つ表示される場合は、名前を見て、NVIDIAやAMDの単体GPUのほうの数字を控える
  4. 設定のシステムからバージョン情報を開き、Windowsのバージョンを控える(OllamaはWindows 10の22H2以降が条件)

Macでは、画面左上のアップルメニューから「このMacについて」を開くと、チップの名前とメモリの容量が表示されます。Macの場合、ここに出ているメモリの容量がそのままユニファイドメモリの容量です。社内のPCを何台か確かめるなら、PCの名前、メモリ、VRAM、OSのバージョンを1行ずつ表にまとめておくと、後で比べやすくなります。

手順2:小さめのモデルを動かし、GPUに載っているかを見る

メモリとVRAMの数字が分かったら、その容量に収まりそうな小さめのモデルを1つ動かしてみます。たとえばVRAMが8GB以上あるWindowsのPCや、16GBのMacなら、qwen3.5の9b(6.6GB)のような大きさが試しやすいでしょう。Ollamaの場合は、モデルを動かしたまま別の画面でollama psと入力すると、Processorの欄にモデルの載り方が表示されます。

  1. Ollamaを入れ、試したいモデルを動かして、短い質問を1つ投げる
  2. モデルを動かしたまま、別のターミナルの画面でollama psと入力する
  3. Processorの欄が100% GPUなら、モデルはすべてGPUに載っている
  4. 48%/52% CPU/GPUのように分かれていれば、一部がGPUに収まらずCPU側で動いている
  5. 100% CPUなら、GPUが使われていないため、ドライバーや対応GPUの条件を見直す

Processorの欄がCPUとGPUに分かれている場合は、もうひと回り小さいモデルに替えて、100% GPUになるかを確かめてみるのも手です。NVIDIAのGPUで100% CPUと表示されるなら、まずドライバーが551.61以降になっているかを確かめることになります。

手順3:業務の文書で試し、結果を記録する

動くことが確かめられたら、次は実際の業務に近い文書で試してみましょう。社外に出しても困らない議事録や社内マニュアルを使い、要約や下書きを頼んでみると、答えの質と待ち時間の両方がつかめます。記録は、PCの名前・モデル・Processorの表示・待ち時間を同じ表に残しましょう。この記録があれば、どの容量のPCを買えばよいかを、感覚ではなく数字で決裁する方に説明しやすくなります。

記録の表は、次のような列で作ると、PCが何台あっても1枚で比べることが出来ます。

  • PCの名前と、使っている部署
  • メインメモリの容量と、VRAM(専用GPUメモリ)またはユニファイドメモリの容量
  • 試したモデルの名前と、Ollamaなどに表示されたサイズ
  • ollama psのProcessorの欄の表示(100% GPU、48%/52% CPU/GPUなど)
  • 短い質問1つと、議事録1本の要約にかかった待ち時間
  • 答えを読んだ担当者の感想と、業務でそのまま使えそうか

待ち時間は、ストップウォッチで測った秒数を書いておけば十分になります。同じ質問と同じ議事録を、すべてのPCとモデルで使い回すのがコツでしょう。条件をそろえておくと、PCの差なのか、モデルの差なのかを見分けやすくなります。

試した結果、今のPCでも小さめのモデルで十分に役に立つと分かれば、新しく買うのは共有の1台だけで済むかもしれません。反対に、どのモデルもCPU側に回ってしまうなら、VRAMかユニファイドメモリの大きい機種が必要だとはっきりします。いずれの場合も、購入の稟議に試した記録を添えると、判断の理由を残すことが出来ます。

試す期間と、やめる基準を先に決める

社用PCでの下調べは、期間を区切らないと、いつまでも試し続けることになりがちです。たとえば試す期間を2週間と決め、その間に記録の表を埋める業務を1つか2つに絞ってみましょう。期間の終わりに、答えの質と待ち時間が業務で使える水準かを、担当者と上長で判断します。

やめる基準も、始める前に決めておくと判断がぶれません。どのモデルも100% CPUでしか動かず、待ち時間が業務に合わないなら、今のPCでは難しいと判断して購入の検討に進むことになります。小さめのモデルでも答えの質が足りない場合は、PCを大きくする前に、クラウドのAIや法人向けのサービスと比べる段階に進むほうがよいでしょう。

OllamaとLM Studioの動作条件を確かめる

試すときに使う実行ソフトの条件も、あわせて確かめておくと手戻りが減ります。Ollamaは、公式の料金ページで、自分の機械でモデルを動かす分は無料と表示されています。有料のProやMaxはクラウドで動かす場合のプランで、Ollama本体のライセンスはMIT Licenseです。LM Studioは2025年7月8日の公式ブログで、家庭でも職場でも無料で使えるようになったと発表しました。利用規約にも、個人と社内の業務の目的で使うことが認められると書かれています。

  • Ollamaは、NVIDIAのcompute capability 5.0以上のGPU、AMDのRadeon RX・Radeon PRO等(ROCm)、AppleのMetalでGPUを使う
  • OllamaのWindows版はWindows 10の22H2以降で、NVIDIAはドライバー551.61以降
  • LM StudioのmacOS版はApple Silicon(M1/M2/M3/M4)とmacOS 14.0以降が必須で、16GB以上のメモリを推奨
  • LM StudioのWindows版はx64とARM(Snapdragon X Elite)に対応し、x64はAVX2が必須、メモリ16GB以上・VRAM 4GB以上を推奨

実行ソフトの入れ方やモデルの選び方を細かく知りたい方は、ローカルLLMのおすすめモデルの記事も合わせて読んでみてください。ソフトが無料でも、試す担当者の時間は会社の出費になる点は忘れないようにしておきたいところです。

試した結果を、購入する容量に読み替える

記録の表がそろったら、次は購入する容量に読み替えていきます。100% GPUで動いたモデルのサイズと、そのPCのVRAMやユニファイドメモリの容量を並べると、どのくらいの余裕で動いていたかが分かります。試したいモデルがCPUとGPUに分かれていたなら、そのモデルのサイズより上の容量を選ぶことになります。

たとえば、VRAM 8GBの社用PCでqwen3.5の9b(6.6GB)が100% GPUで動き、答えの質にも満足できたとしましょう。そのうえでgpt-ossの20b(14GB)も試したいなら、Windowsでは16GBのVRAM、Macでは24GB以上のユニファイドメモリが次の候補となります。試した結果から容量を決めておけば、稟議で根拠を聞かれたときにも記録の表を見せて説明することが出来ます。

購入前のチェックリストと、会社で安全に使うための準備

ローカルLLM用のPCは、動かしたいモデルを決め、そのサイズに合うメモリとVRAMを選ぶところまで来れば、ほぼ決まったようなものです。あとは、購入の前に確かめる項目を1枚にまとめ、稟議を出す前に抜けがないかを見直していきます。次のチェックリストを、社内の稟議の添付資料として使ってみてください。

  • 動かしたいモデルと、そのダウンロードサイズを書き出したか候補を2つか3つに絞り、Ollamaのライブラリなどで表示されるサイズを控えます。サイズちょうどではなく、ひとつ上の容量を選ぶ前提で考えます。
  • Macなら、ユニファイドメモリの容量を購入時に決めたかAppleの仕様ページでは、メモリは購入時に選ぶ構成として示されています。後から増やす前提にせず、長い文書を扱うなら上の容量に寄せます。
  • Windowsなら、GPUのVRAMの容量が見積書に書かれているかRTX 5060 Tiのように同じ名前で16GB版と8GB版がある製品もあります。型番とVRAMの両方を見積書で確かめます。
  • メインメモリは16GB以上あり、はみ出す分の余裕があるかLM Studioは16GB以上を推奨しています。VRAMからはみ出す使い方を想定するなら、さらに余裕を持たせます。
  • CPU・OS・ドライバーの条件を満たしているかLM Studioのx64版はAVX2が必須、OllamaのWindows版はWindows 10の22H2以降、NVIDIAはドライバー551.61以降が条件です。
  • ストレージに、試したいモデルの合計サイズ分の空きがあるか3つ入れるだけで55GBになる例もあります。業務ファイルの容量と足して見積もります。
  • 使うモデルのライセンスを確かめたかQwen3.5(35B-A3B)・Qwen3.6・Gemma 4・gpt-ossはApache 2.0、Llama 4は独自のLlama 4 Community Licenseと各リポジトリに表示されています。使う前にLICENSEの本文を確かめます。
  • 置き場所・電源・冷却と、止まったときの担当者を決めたか共有の1台は、熱と音、電源の容量、再起動を受け持つ方まで決めてから置きます。
  • 資産台帳への登録と、使える人の範囲を決めたか保証の期間、故障したときの代わり、アクセスできる社員の範囲を購入の時点で決めます。
  • 価格の確認日を稟議に書いたかAppleの価格は2026年10月3日時点の税込価格(最小構成)です。稟議を出す日に公式サイトで改めて確かめます。

チェックリストのうち、後から取り返しがつきにくいのはMacのメモリ容量と、WindowsのGPUのVRAMの2つです。この2つは買った後に変えにくく、足りないと分かれば買い替えになってしまいます。ほかの項目は、使い始めてから見直すことも出来るため、迷ったらこの2つから決めていきましょう。

購入から使い始めるまでの流れ

チェックリストを埋めたら、購入から社内で使い始めるまでの流れも先に描いておくと、担当者の負担が見えやすくなります。次の順番で進めると、途中で抜けが出にくくなるでしょう。

  1. 今の社用PCで小さめのモデルを動かし、記録の表を作る
  2. 使いたい業務とモデルを決め、必要な容量を見積もる
  3. MacとWindowsで同じ容量の構成を見積もり、確認日を書き添える
  4. チェックリストを添えて稟議を出す
  5. 置き場所を決めて設置し、資産台帳に登録する
  6. 使える人の範囲と、入力してよい情報のルールを決めて社内に知らせる
  7. 3か月ほど使ったら、モデルと容量が業務に合っているかを見直す

この流れのうち、PCを買う作業そのものは4番目と5番目の間の一度だけで、前後の作業のほうがずっと多いことが分かります。担当者の時間は、この流れ全体にかかってくる点を覚えておいてください。

稟議に書く項目のひな形

ローカルLLM用のPCの稟議は、PCの購入としてだけ書くと、なぜその容量なのかが伝わりにくくなります。次の項目を並べておけば、決裁する方が容量の根拠と、買った後の手間の両方を一度に確かめることが出来ます。

  • 目的は、どの業務の、どんな作業を短くしたいか
  • 試した結果は、今の社用PCでの記録の表(モデル・Processorの表示・待ち時間)
  • 使うモデルと、そのダウンロードサイズとライセンス
  • 選んだ構成は、メモリまたはVRAMの容量と、その容量にした理由
  • 価格は、税込の金額と確認した日付、3年で割った1年あたりの金額
  • 管理は、設定と更新を受け持つ方の名前と、月に見込む時間
  • 使える人の範囲と、入力してよい情報のルール
  • 見直しの時期と、やめる基準

このうち、管理を受け持つ方の名前と月に見込む時間は、空欄のまま出されやすい項目になります。ここが埋まらないなら、PCを買う前に、自社で持つか既製のサービスを使うかを改めて比べ直すほうがよいでしょう。

会社で安全に使うには、PCとは別の準備が要る

ローカルLLMは入力した文章を社外に送らずに使える一方で、それだけで会社として安全に使える状態になるわけではありません。社員の多くは、ローカルLLMとは別に、クラウドのChatGPTやGeminiなども業務で使いたくなるはずです。その場合、入力した内容をAIの学習に使わせない設定を、全員分そろえられるかが問われてきます。一人ひとりの設定に任せると、どこかで漏れが出てしまいます。

誰がいつどのAIに何を入力したかを、会社として残せるかどうかも見ておきたい点になります。ローカルLLMを共有の1台で動かす場合も、使った記録をどう残すかは自社で考えることになるでしょう。社員へのアカウントの配布や、退職した方の停止を誰が受け持つかも、PCの台数が増えるほど手間がかさみます。こうした点の確かめ方は、生成AIのセキュリティ対策チェックリストで項目ごとに整理しています。

ローカルLLMの答えも、クラウドのAIと同じように間違いを含むことがあります。社外に出す文書や数字を扱う業務では、答えを人が確かめる工程を手順の中に組み込んでおきましょう。答えを確かめる担当の方を決めておくと、間違いがそのまま取引先に届く事態を防ぎやすくなります。

業務によっては、ローカルLLMだけでなく、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを使い分けたい場面も出てきます。調べものはWeb検索に強いもの、長い文書の読み込みは長文に強いもの、と分けるだけでも答えの外れが減りやすくなります。複数のAIを1つの環境でまとめて使う考え方は、マルチAIの解説にまとめています。社員に何を入力してよいかのルールは、生成AIの社内ガイドラインの作り方を土台に決めてみてください。

社員への配布も、ローカルLLMだけで考えると見落としが出やすい点になります。ローカルLLMを使える社員と使えない社員が分かれると、使えない方が個人のアカウントでクラウドのAIを使い始めることもあります。会社が把握していないAIの利用はシャドーAI(野良AI)と呼ばれ、情報が思わぬ経路で外に出る原因になりかねません。配る範囲と、配らない方が代わりに何を使えばよいかを、あわせて決めておきましょう。

自社で持つか、既製の法人向けサービスを使うかを並べる

ここまでの準備をすべて自社で抱えるか、既製の法人向けサービスに任せる部分をつくるかは、会社ごとに答えが分かれます。社外に出せない文書を扱う業務がはっきりしていて、PCの管理を引き受けられる担当の方がいるなら、ローカルLLMを持つ意味は大きくなります。反対に、社員の大半が日々の文章作成や調べものに使いたいだけなら、PCを何台もそろえるより既製のサービスのほうが手間は少なく済むでしょう。

両方を組み合わせて、機密性の高い文書だけをローカルLLMで扱い、それ以外は法人向けのサービスで使う会社もあります。どちらが合うかは、扱う情報の種類、使う人数と頻度、管理を受け持てる体制の3つを並べて考えると見えてきます。3年分の総額や判断の流れまで比べたい方は、ローカルLLMとクラウドLLMの比較を合わせて読んでみてください。PCを買う前にこの比較を一度済ませておけば、台数の決め方にも迷いが少なくなります。

PCをそろえる前に、会社で使うAI環境を比べるなら

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よくある質問

ローカルLLMはメモリ16GBのPCでも動きますか?
小さめのモデルなら動かせる場合があります。LM StudioはWindowsでもmacOSでも16GB以上のメモリを推奨しており、8GBのMacでも小さいモデルと控えめなコンテキストなら使える場合があると書いています。ただし、Ollamaで14GBと表示されるgpt-ossの20bのようなモデルは、16GBのMacでは画面や他のアプリと取り合いになりやすくなります。Windowsの場合は、メインメモリよりGPUのVRAMの容量を先に確かめてください。
MacとWindowsはどちらがローカルLLMに向いていますか?
動かしたいモデルの大きさで変わります。10GB前後までの小さめのモデルなら、どちらでも大きな差は出にくく、社内で管理しやすいOSを選んで困ることは少ないでしょう。30GBを超えるモデルを動かしたい場合は、96GBや128GBのユニファイドメモリを選べるMacのほうが機種の幅は広くなります。GeForce RTX 50シリーズのVRAMはRTX 5090の32GBが上限のため、Windowsでそれ以上を求めるなら業務用のGPUなどを考えることになります。
ゲーミングPCをそのままローカルLLMに使えますか?
GPUのVRAMが足りていれば使えます。ゲーミングPCに多いGeForceは、RTX 5090が32GB、RTX 5080とRTX 5070 Tiが16GB、RTX 5070が12GBといったVRAMを積んでいます。動かしたいモデルのサイズがVRAMに収まるかを先に確かめ、Ollamaのollama psでProcessorの欄が100% GPUになるかを見てみてください。会社の資産として使うなら、台帳への登録や使える人の範囲も決めておきましょう。
Copilot+ PCを買えばローカルLLMが速く動きますか?
Copilot+ PCであることだけでは決まりません。Copilot+ PCの要件は40 TOPS以上のNPU、16GBのメモリ、256GBのストレージですが、OllamaのGPUのドキュメントで高速化の対象として挙がっているのはNVIDIA・AMDのGPUとAppleのMetalです。ローカルLLMの速さは、NPUのTOPSよりも、メモリとVRAMの容量で比べるほうが分かりやすくなります。
Macのメモリは後から増やせますか?
Appleの仕様ページでは、メモリの容量は購入時に選ぶ構成として示されており、後から増設できるという記載はありません。そのため、Macは購入時の容量で使い続ける前提で選ぶことになります。長い文書を読ませる予定がある場合や、20GB前後のモデルを試したい場合は、早めに上の容量を選んでおくと安心です。
社員みんなで1台のPCを共有して使えますか?
共有の1台を置き、社員のPCからつないで使う形をとる会社もあります。本体の代金は抑えやすい一方で、つなぐための設定、使える人の範囲、使った記録の残し方を自社で用意する必要があります。同時に多くの方が使うと返事を待つ時間が延びるため、同時に使いそうな人数と管理を受け持つ担当者を先に決めてから検討してみてください。
ノートPCでもローカルLLMは使えますか?
使えます。MacBook AirやMacBook Proは購入時にユニファイドメモリの容量を選べ、MacBook ProのM5 Maxは最大128GBまで選べます。Windowsのノートでは、デスクトップ向けと同じ名前のGPUでもVRAMの容量が違う場合があるため、メーカーの仕様表でVRAMの数字まで確かめてください。部署で共有するなら、持ち出されないデスクトップや小型の据え置き機のほうが向いています。
ストレージはどのくらいあればよいですか?
試したいモデルの合計サイズに、業務で使う容量を足して見積もります。Ollamaの表示では、gpt-ossの20bが14GB、qwen3.5の27bが17GB、35bが24GBで、3つ入れるだけで55GBになります。gpt-ossの120b(65GB)まで足すと120GBに達するため、新しいモデルを入れ替えながら試す余裕も含めて選んでみてください。
古い社用PCや中古のGPUでもローカルLLMは使えますか?
条件を満たしていれば使える場合があります。Ollamaの公式ドキュメントでは、NVIDIAのGPUはcompute capability 5.0以上が対象とされ、WindowsではNVIDIAのドライバーが551.61以降であることが条件です。LM StudioのWindowsのx64版は、AVX2に対応したCPUが必須とされています。まずはタスクマネージャーでVRAMを確かめ、小さめのモデルを動かして、ollama psの表示で100% GPUになるかを見てみてください。
DGX SparkやRTX PRO 6000はいくらですか?
NVIDIAの公式ページには、日本円の価格が表示されていません。DGX Sparkは128GBのLPDDR5xを統合システムメモリとして積み、RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Editionは96GBのGDDR7を積んだ業務用のGPUです。検討する場合は、販売店やPCメーカーから見積もりを取り、確認した日付と一緒に稟議に残しておきましょう。

まとめ

ローカルLLM用のPCは、Macならユニファイドメモリの容量、WindowsならGPUのVRAMの容量で、動かせるモデルの大きさがおおむね決まります。選ぶ順番は、動かしたいモデルを決め、Ollamaなどで表示されるサイズを控え、そのひとつ上の容量を選ぶ流れになります。20〜35B級のモデルならおおむね14〜24GB、ここで挙げた100Bを超えるモデルなら65〜81GBのサイズが目安となるでしょう。

構成は、1人で試すならMac mini(M6)やMacBook Air(M5)、VRAM 16GBのGPUを積んだPCから始め、部署で共有するならMac mini(M5 Pro)やMac Studio、RTX 5090を積んだPCへと段階を上げていく形になります。PCの代金に加えて、担当者の時間も1年あたりの出費に直して並べておくと、稟議の場でも説明しやすいでしょう。

Macは購入時にメモリの容量が決まり、WindowsのGeForce RTX 50シリーズはRTX 5090の32GBが上限という違いを押さえておくと、機種選びで迷いにくくなります。メインメモリは16GB以上、CPUはAVX2への対応、ストレージはモデルの合計サイズ分の空きを確かめてください。Copilot+ PCのNPUは、ローカルLLMを動かすための必須条件ではありません。

PCを買った後も、置き場所、電源、使える人の範囲、資産台帳への登録、使った記録の残し方まで、管理の仕事が続きます。社員が安全に使える状態を保つ手間まで含めて、自社で持つ形が合うのかを確かめておくと安心です。

買う前には、今の社用PCで小さめのモデルを動かし、ollama psのProcessorの欄で載り方を確かめるところから始めてみましょう。そのうえで、PCの台数と管理の手間を、既製の法人向けサービスを使う場合と並べて判断することになります。法人のAI活用に関するほかの記事は、AI活用コラム一覧から探すことが出来ます。