
生成AIの社内アンケートとは、社員が業務でどのAIをどう使っているかを、会社が自分の手で数字にするための調査になります。集まる中身は、設問の巧拙よりも、正直に答えても損をしないと伝わっているかどうかで変わってしまいます。ここでは、そのままフォームに貼れる設問15問の全文と、告知から報告までの段取りをまとめました。社員10名から200名の会社で、初めて配る方を想定しています。
「使っていますか」だけを聞いても、次の一手は決まりません
社内アンケートの目的は、利用率を知ることではなく、次に何をするかを一つ決めることにあります。使っているかどうかだけを聞くと、回答の半分が使っていると出ても、会社が用意した環境で使っているのか、個人のアカウントで使っているのかが分かれません。この二つでは打ち手がまるで違いますので、聞き方の段階で分けておく必要が出てきます。
会社が許可していないAIを、社員が独自の判断で業務に使っている状態は、シャドーAI(野良AI)と呼ばれています。この言葉の意味、リスクの全体像、管理コンソールや通信ログから技術的に見つける方法、見つけたあとの仕分けまでは、シャドーAI(野良AI)の見つけ方にまとめてあります。ここから先は、その全体像のうち社員に直接聞くという一手だけに絞って、設問と運用のつくり方をご紹介していきます。
ログや課金明細で外形的に分かることもありますが、私物のスマートフォンや自宅の回線で使われている分は、会社側の記録には残りません。いちばん知りたい使い方ほど、会社の記録の外側で起きてしまいます。だからこそ、答える側が損をしないと分かる聞き方が要ります。
全国調査の数字と自社の数字を切り分ける
全国調査の数字は、社内を動かすきっかけにはなりますが、自社の実態そのものではありません。たとえば株式会社サイバーセキュリティクラウドが2026年4月21日から22日に実施した調査(業務でパソコンを毎日使用する会社員300名・インターネット調査・実査委託先は楽天インサイト株式会社)では、67%にあたる201名が何らかの形で生成AIを利用しており、会社が公式に認めているツールの利用は52%、約15%がシャドーAIの状態にあると発表されています。同じ調査では、生成AI利用者の約60%が何らかの業務情報を入力した経験があるとも報告されました。
これらは調査会社のモニターに対する自己申告の集計で、第三者が検証した数字ではない点に注意が必要です。社内の会議で使うなら、全国の傾向を示す前置きとして1つか2つに絞り、本題は自社の回答で語るほうが議論が早く進みます。公表データそのものの読み比べは、シャドーAIの調査データまとめで扱っています。
※この記事で引用した調査結果は、2026年9月20日に各公表ページで確認したものです。出典は株式会社サイバーセキュリティクラウドのプレスリリース(https://www.cscloud.co.jp/news/press/202605138915/)で、調査主体の自己申告値であり、独立した第三者による検証結果ではありません。
アンケートを配る前に決める5つのこと
先に決めておくことは5つあり、どれも設問を書き始める前に片づくものになります。
- この結果で何を決めたいかを、1行で書いておく
- 匿名にするか記名にするか
- 回答にかけてよい時間と、設問の数
- 回答期限と、リマインドを出す日
- 集計結果を誰にどこまで見せるか
1つ目がいちばん大事で、ここが曖昧なまま設問を増やすと、集計しても何も決まらない表が残ってしまいます。決めたいことは、たとえば公認環境を配る範囲を決める、ルールの周知をやり直すかを決める、のように動詞で書いてみてください。
回答時間は5分から7分、設問数は12問から16問が現実的な範囲になります。回答期限は10日ほどに区切り、締切の2日前にリマインドを1回だけ送る形をおすすめします。期限を月末のように長く置くと、後回しにされたまま忘れられてしまいます。
5つ目の見せ方も、配る前に決めておきたい項目です。集計結果は全社に共有する、個票は集計担当の2名だけが見る、といったところまで先に決めておくと、前置きの文面がそのまま書けるようになります。
匿名にするか記名にするかを先に決める
社員10名から200名の会社で、シャドーAIの実態を知りたいのであれば、匿名をおすすめします。記名式には、部署ごとにフォローができる、回答者に直接お礼を言える、という利点があります。ただし今回聞きたいのは、会社が許可していないAIを使ったかどうかという、答えにくい内容になります。
名前が残る前提だと、不利になりそうな選択肢は選ばれにくくなってしまいます。匿名にするかわりに、部署ではなく業務領域を聞き、集計の単位を粗くしておく手当てが必要です。記名で取りたい調査は、ルールを整えたあとの定着度の確認に回すとよいでしょう。
正直に答えてもらうための前置きと告知文
回答率と正直さを決めるのは設問ではなく、配るときに添える文になります。人事評価に使われるかもしれないと思われた時点で、答えは無難な方向へ寄ってしまいます。前置きで約束することは3つに絞り、あとは短くまとめてください。
回答者を責めない前置きの文面
前置きに入れる約束は、使い道・不問の範囲・差出人の3つになります。
- 使い道:回答は人事評価や懲戒には使わない。会議に出すのは集計した数字だけで、個票は集計担当者以外が見ない
- 不問の範囲:これまで個人のアカウントや私物の端末で使っていた分について、さかのぼって咎めることはしない
- 差出人:総務や情報システム担当の名前ではなく、社長または担当役員の名前で出す
不問の範囲をはっきり書いていない前置きは、読み手には約束として届きません。過去をさかのぼって咎めないと書けるかどうかが、回答の正直さを分けます。差出人を社長にするのは、答えても大丈夫だという判断を、現場の上司ではなく会社が引き受けるという意味になります。
経営者名で出す社内メールの全文
差出人名と日付だけを入れ替えれば、そのまま使える形にしてあります。
件名:業務での生成AIの使い方について(5分・匿名のアンケート)
お疲れさまです。代表の◯◯から、全社の皆さんにお願いがあります。
社内でどなたがどのように生成AIを使っているかを、会社としてきちんと知りたいと考えました。
このアンケートは匿名です。回答の内容を人事評価や懲戒に使うことはありません。
これまで個人のアカウントや私物の端末で使っていた方も、さかのぼって咎めることはいたしませんので、実際のところをそのままお書きください。
会社が用意していないAIが使われているとすれば、必要な道具を会社が用意できていなかったということになります。
回答は5分ほどで終わります。◯月◯日(◯)までのご協力をお願いします。
集計した結果は、全社の数字として◯月の全体会議でお知らせします。
この文面で効いてくるのは、最後の一文になります。結果を共有すると書いておくと、答えたことが何かにつながるという感覚が生まれ、次回の回答率にも響いてきます。
締切2日前に出すリマインドの全文
リマインドは1回だけ、締切の2日前に、同じ差出人名で出してください。
件名:アンケートの締切が近づいています(未回答の方へ)
お疲れさまです。先日お願いしたアンケートの締切が、◯月◯日(◯)に迫ってまいりました。
現在の回答は◯名で、全体の◯%となっています。
まだの方は、5分だけお時間をいただけると助かります。
匿名ですので、誰が答えて誰が答えていないかは会社側にも分かりません。
答えにくい設問は空欄のままで構いませんので、分かる範囲でお願いします。
回答済みの人数を書くのは、まだ出していない方に判断の材料を渡すためになります。未回答者の名前を挙げる形の催促は、匿名という約束と矛盾しますので避けてください。
「使っているか」を5つに分けて聞く設問の組み立て
利用の有無だけでは足りず、少なくとも5つの軸に分けて聞く必要があります。
- どの生成AIサービスを使っているか
- 会社の許可を得ているか
- どの端末・どの経路で使っているか(会社のパソコン/私物端末/ブラウザの拡張機能/業務ソフトに最初から入っているAI機能)
- どんな種類の情報を入力したか
- 会社が公式の環境を用意したら、そちらへ移れるか
この5つをまとめて1問にすると、回答者は答えやすいほうだけを選んでしまいます。特に分けておきたいのが、3つ目の経路になります。
業務ソフトに最初から入っているAI機能は、本人にAIを使っている自覚がないまま動いている例が目立ちます。拡張機能と業務ソフト内蔵のAIは、別に聞かないと回答に出てきません。4つ目の入力した情報の種類は、リスクの重さを測る中心の材料になりますので、選択肢を具体的に並べておきましょう。
5つ目は、集計後の打ち手をそのまま決めるための設問です。移りたいという回答が多ければ、禁止の通達を出すより、公認環境を配るほうが早く片づきます。
未利用者を4つに切り分ける設問設計
使っていないという回答は、4つに切り分けておくと打ち手がそのまま決まります。
- 自分の業務に使う場面がない → 今は何もしない
- 使い方が分からない・学ぶ時間がない → 研修と、社内の使い方の共有
- 使ってよいかルールが分からない → ルールの周知をやり直す
- 使える端末や環境が手元にない → 公認環境を配る
1つにまとめて使っていないで終わらせると、研修をすべきか環境を配るべきかが最後まで決まりません。この4つは、回答する側にとっても答えやすい区切りになります。
部署名ではなく業務領域で分けて見る
集計の単位は、部署名ではなく業務領域にしておくほうが安全です。10名から200名の会社では、部署名で聞くと1部署の回答が数件しか集まらず、誰の回答かが推測できてしまいます。
営業・販売、企画・マーケティング、経理・総務・人事、製造・物流・現場、情報システム、その他、といった粗い区分にしておけば、匿名を保ったまま傾向が読めます。部署ごとのフォローが必要になったときは、集計後に各部署長へ全社の数字を渡し、そこから先は各部署で拾ってもらう形にしましょう。
アンケートで管理外のAIが見えてきたら、使う環境を会社で1つにまとめる片づけ方があります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
そのまま使える社内アンケートの設問15問
ここから先は、そのままフォームに貼れる形で15問を並べていきます。所要時間は5分前後で、使っていない方は問10から問15に答える形になります。設問文のあとに回答形式と選択肢をそのまま書いてありますので、順番も含めてコピーしてお使いください。
利用頻度を段階で聞く設問(問1・問2)
最初の2問で、集計の単位と利用頻度を押さえます。頻度は5段階にして、一度だけ試したという層を独立させておくのがコツになります。
- あなたが主に担当している業務領域を選んでください。
回答形式:単一選択
選択肢:営業・販売/企画・マーケティング/経理・総務・人事/製造・物流・現場/情報システム/その他 - この3か月間で、業務のなかで生成AI(ChatGPTなどの対話型AI)を使った頻度を選んでください。
回答形式:単一選択
選択肢:ほぼ毎日/週に数回/月に数回/一度だけ試した/使っていない
分岐:使っていないを選んだ方は問10へ進む
一度だけ試した層は、使っていない層とは打ち手が違いますので、まとめてしまわないようにしましょう。
どの生成AIサービスを使っているかを聞く設問(問3・問4)
サービス名は選択肢で出し、思い出してもらう形にしてください。自由記述だけにすると、記入の手間から空欄が増えてしまいます。許可の有無を別の設問に分けているのは、使っているという事実と、会社が認めているという事実がまったく別だからです。
- 業務で使ったことのある生成AIサービスを、すべて選んでください。
回答形式:複数選択
選択肢:ChatGPT/Google Gemini/Microsoft Copilot/Claude/Perplexity/Notion AI/翻訳サービスのAI機能/会社が契約しているAIサービス/サービス名が分からない/その他(サービス名を記入) - 問3で選んだサービスについて、会社の許可を得て使っているものを選んでください。
回答形式:単一選択
選択肢:すべて会社の許可を得ている/一部だけ許可を得ている/許可は得ていない/許可が必要かどうか分からない
どの経路・どの端末で使っているかを聞く設問(問5)
経路をたずねる問5は、答えにくい反面、ほかの設問では代わりのきかない材料になります。私物の端末や拡張機能を経由した利用は、会社側の記録にほとんど残りません。会社の記録に出てこない経路は、この1問でしか拾えないことになります。
- 生成AIを使っている経路を、すべて選んでください。
回答形式:複数選択
選択肢:会社のパソコンのブラウザから/会社から貸与されたスマートフォンから/私物のスマートフォンやパソコンから/ブラウザの拡張機能(アドオン)から/ふだん使っている業務ソフトに最初から入っているAI機能から/会社が契約しているAIサービスから/その他
どの業務・工程で使っているかを聞く設問(問6・問7)
業務と工程の設問は、研修の題材をそのまま決めるための材料です。問7の入力情報は、リスクの重さを測る中心の設問になりますので、選択肢を具体的に並べておきましょう。
- 生成AIを使っている業務・工程を、すべて選んでください。
回答形式:複数選択
選択肢:メール・チャットの文面づくり/議事録・報告書の作成/資料や企画書のたたき台づくり/調べもの・情報収集/文章の校正・要約/表計算の関数やマクロ/プログラムのコード/翻訳/画像や図の作成/顧客への提案内容の検討/その他 - 生成AIに入力したことがある情報を、すべて選んでください。
回答形式:複数選択
選択肢:社外に公開済みの情報だけ/社内向けの資料・議事録/顧客名・取引先名/見積・売上・財務の数字/契約書や法務に関わる文書/従業員や顧客の個人情報(氏名・連絡先など)/入力した内容を覚えていない/業務の情報は入力していない
入力していないという回答が多くても、覚えていないを選んだ件数が多ければ、実態は別のところにあります。
公認環境に移れるかを聞く設問(問8)
問8は、集計後の打ち手をそのまま決める設問になります。
- 会社が公式に使えるAI環境を用意した場合、今お使いのものから移れますか。
回答形式:単一選択
選択肢:すぐに移れる/同じことができるなら移れる/今使っているものを続けたい/判断できない
すぐに移れると、同じことができるなら移れる、この2つを足した数が、公認環境を配ったときに移ってくる人数の見込みと考えてよいでしょう。
効果実感を聞く設問(問9)
効果は、作業時間の変化という1点に絞って聞きます。
- 生成AIを使ったことで、その作業にかかる時間はどう変わりましたか。
回答形式:単一選択
選択肢:大幅に短くなった(半分以下)/短くなった/変わらない/かえって時間がかかった/分からない
満足度を5段階で聞く形は、数字が真ん中に寄りやすく、施策の判断には使いにくくなってしまいます。
ルールの認知と未利用の理由を聞く設問(問10・問11)
ルールの認知度は、周知のやり直しが必要かどうかを決める材料になります。問11の未利用の理由は、先ほどの4つの切り分けをそのまま選択肢にしてあります。
- 社内の生成AIの利用ルールについて、当てはまるものを選んでください。
回答形式:単一選択
選択肢:内容まで把握している/あることは知っているが内容は知らない/あるかどうか分からない/ないと思う - 生成AIを業務で使っていない、または使う回数が少ない理由として、最も近いものを選んでください。
回答形式:単一選択
選択肢:自分の業務に使う場面がない/使い方が分からない・学ぶ時間がない/使ってよいかルールが分からない/使える端末や環境が手元にない/その他
ヒヤリとした経験と出力の扱いを聞く設問(問12・問13)
問12と問13は、事故の手前で起きていることを拾う設問です。
- 生成AIを使っていて、これは危なかったと感じた経験はありますか。ある を選んだ方は、差し支えない範囲で問14にその内容もお書きください。(生成AIを使ったことがない方は「ない」をお選びください)
回答形式:単一選択
選択肢:ある/たぶんあったが確信はない/ない/分からない - 生成AIの回答を、内容を確かめずにそのまま提出・送信したことはありますか。(生成AIを使ったことがない方は「ない」をお選びください)
回答形式:単一選択
選択肢:よくある/たまにある/ない/覚えていない
件数が少なくても、1件ずつ中身を読むことをおすすめします。
困っていること・つまずきを聞く自由記述(問14・問15)
自由記述は2問だけに絞り、いちばん最後に置いてください。
- 生成AIを業務で使うなかで、困っていること・うまくいかないこと、危なかったと感じた場面があれば書いてください。
回答形式:自由記述 - 会社に用意してほしいもの、決めてほしいルールがあれば書いてください。
回答形式:自由記述
自由記述を増やすほど、途中で離脱する方が増えていきます。ここまでの15問で、誰がどの経路でどのAIを使い、どんな情報を入れているかが、会社として初めて一覧になります。そして管理外で使われているAIの名前が並んだとき、次に決めるのは、禁止するのか、同じことができる環境を会社として配るのか、という二択になってきます。
GoogleフォームとMicrosoft Formsへの落とし込み
設問が固まったら、社内で普段使っているほうのフォームに入れていきます。匿名を約束した以上、回答者が特定できる設定をすべて外すところから始めてください。
Googleフォームでの設定
Googleフォームでは、次の4か所を確認します。
- 「設定」タブの「回答」を開き、「メールアドレスを収集する」を「収集しない」に変更する
- 「回答を1回に制限する」をオンにすると、回答者はGoogleアカウントでのログインが必要になる。メールアドレスを収集しない設定であれば氏名やメールアドレスは記録されないものの、社外の端末しか持たない方が答えられなくなるため、全社に配る場合はオフをおすすめする
- 「プレゼンテーション」の「進行状況バーを表示」をオンにする。残りの設問数が見えると、途中離脱が減る
- 問2で使っていないを選んだ方を問10へ送るには、設問をセクションに分けたうえで、問2の「回答に応じてセクションに移動」を使う
この分岐を入れておけば、未利用の方の回答は2分ほどで終わります。配るときは、組織内のユーザーに限定する共有設定を使わず、社内のチャットとメールの2か所にURLを貼る形にしましょう。
Microsoft Formsでの設定
Microsoft Formsでは、フォームを開いて上部のアクションバーの「設定」を選び、次の4か所を見ていきます。
- 「このフォームに入力できるユーザー」では、誰でも回答可能/組織内のユーザーのみが回答可能/組織内の特定のユーザーが回答可能 の3つから選ぶ。「組織内のユーザーのみが回答可能」を選ぶ場合は、その下に出てくる「名前を記録」のチェックを外す
- Microsoftは「1 人 1 つの回答」を匿名で集める手順のヒントとして案内しており、氏名を残すかどうかは「名前を記録」の側で決まる。重複回答を防ぎたい場合はチェックしたままで構わない
- 「終了日」に回答期限を入れておくと、締切後の回答を自動で止められる
- 分岐は、分岐させたい設問に移り、「質問のその他の設定」(設問の右下にある「…」)から「分岐の追加」を選んで設定する
どちらのフォームでも、回答結果はスプレッドシートやExcelに書き出して集計します。配る前に、自分で一度テスト回答を通し、実際にかかった時間を測ってから告知文に書いてください。
配信から報告までの2週間の日程表
日程は2週間で組むと、忘れられる前に締め切れます。月曜に準備し、翌週の木曜に締め切る形が扱いやすくなります。
| タイミング | やること | 担当 |
|---|---|---|
| 1週目 月曜 | フォームの最終確認とテスト回答。所要時間を実測して告知文に書き込む | 総務・情報システム |
| 1週目 火曜 | 経営者名で告知メールを配信。社内チャットにも同じ文面とURLを流す | 経営者(総務が代理送信) |
| 1週目 木曜 | 回答数だけを確認する。個票は開かない | 総務 |
| 2週目 火曜 | 締切2日前のリマインドを、同じ差出人名で配信 | 経営者(総務が代理送信) |
| 2週目 木曜 18時 | 回答の締切。フォームの受付を停止する | 総務 |
| 2週目 金曜 | 単純集計と自由記述の要約、判断表への当てはめ | 総務・情報システム |
| 3週目 月曜 | 経営会議で1枚サマリーを報告し、打ち手を1つ決める | 経営者・総務・情報システム |
| 3週目 火曜以降 | 全社へ結果を共有する。出すのは全体の数字と決めた打ち手だけ | 総務 |
途中で見てよいのは回答数だけにして、個票は締切まで開かないと決めておきましょう。担当者が途中で中身を読むと、匿名の約束が形だけになってしまいます。
報告日を先に押さえておくのも効きます。集計の期限が決まっていないと、回答が集まったところで力尽き、表計算ファイルのまま半年が過ぎてしまいます。
匿名性を壊さない集計単位と、回答率の出し方
集計は、区分ごとの件数が5件を下回らない単位で止めます。
回答率は分母をつけて出す
回答率は、必ず分母を添えて書いてください。120名中78名が回答、回答率65%という形にすると、あとから見直すときに数字の重みが分かります。未回答の方を、使っていない方として数えないでください。
答えなかった理由は、忙しかった、答えにくかった、メールを見ていなかった、のどれとも判別できません。回答率が低かったときは、設問より先に、告知文の差出人と配信の経路を見直すほうが早道になります。社内アンケートの平均回答率として広く通用する公的な数字は見当たりませんので、他社の平均を追うより、次回の自社の回答率を上回ることを目標に置きましょう。
回答5件未満の区分はまとめる
業務領域ごとの集計で、回答が5件に満たない区分は、その他にまとめます。3名の部署の集計を単独で出すと、誰の回答かが周囲には分かってしまいます。まとめた結果、その他が大きくなっても構いません。知りたいのは細かい内訳ではなく、打ち手を変えるほどの差があるかどうかになります。
クロス集計は2軸まで、自由記述は要約して共有する
掛け合わせる軸は2つまでにとどめてください。業務領域と利用頻度、利用経路と入力した情報、この程度の組み合わせで打ち手は決まります。3軸以上で切ると、1つのマスの人数が1名や2名になり、匿名の約束が崩れてしまいます。
自由記述は、原文のまま社内へ回さないようにしましょう。言い回しや固有名詞から書き手が分かることがありますので、5件前後のまとまりに要約し、要約した文のほうを共有します。原文を読むのは、集計の担当者だけに絞ってください。
自己申告と客観データを突き合わせる
アンケートだけでは、管理外の利用は全部までは出てきません。正直に答えてもらう工夫をしても、本人が答えたくない部分や、AIだと気づいていない機能の分は落ちてしまいます。そこで、会社側に残っている記録と突き合わせておきます。
- Google WorkspaceやMicrosoft 365の管理コンソールで、AI関連の機能やアドオンの利用状況を見る
- クレジットカードの明細や経費精算のデータから、AIサービスへの課金を拾う
- プロキシやIT資産管理ソフトのログで、AIサービスへの通信やブラウザ拡張機能の導入状況を見る
アンケートには出てこなかったサービス名が明細に載っていれば、そこが答えにくかった領域ということになります。この確かめ方と、見つけたあとの仕分けの手順は、シャドーAIの見つけ方で詳しく扱っています。
突き合わせで出てきた数字を、個人を特定する目的には使わないと、前置きの段階で約束しておいてください。ログで個人を追い始めると、次回は誰も正直に答えなくなります。
集計結果を施策へ変える手順と判断表
集計が終わったら、打ち手を1つだけ選びます。同時にいくつも走らせると、どれが効いたのかが次回わからなくなってしまいます。判断は、利用の状態と効果の2軸で決めていきます。
| 効果が出ている | 効果が出ていない | |
|---|---|---|
| 公認環境で使っている | 使い方を社内で共有し、同じやり方を他部署へ広げる | 研修をする。題材は問6と問14の回答から選ぶ |
| 管理外で使っている | 公認環境を配る。同じことができる状態にしてから移ってもらう | ルールを作る。使ってよい範囲と、入力してはいけない情報を明記する |
| 使っていない | (ほとんど出ない組み合わせ) | 問11の理由で分ける。業務がない→今は何もしない/知識がない→研修/ルール不明→周知のやり直し/環境がない→公認環境を配る |
管理外で使っていて、しかも効果が出ている層が、いちばん先に手当てする相手になります。その方たちは業務のやり方をすでに変えていますので、禁止の通達だけを出すと、見えないところへ潜ってしまいます。効果が出ている管理外の利用は、止めるのではなく移してもらう対象です。
移ってもらう先を用意するときは、アンケートに出てきたサービス名を見比べて、同じ用途をまかなえるかどうかを先に確かめておきます。複数のAIを1つの環境でまとめて使う形についてはマルチAIの解説で整理しています。ルールづくりの進め方は生成AIの社内ガイドラインの作り方、点検項目はAIセキュリティのチェックリストを合わせてご覧ください。
経営者へ出す1枚サマリーのひな形
経営会議に出すのは、A4で1枚、4行の数字と決めた打ち手だけにします。
- 回答率:120名中78名(65%)
- 継続利用率:週に数回以上が78名中41名(53%)
- 公認環境の利用率:利用者のうち会社の許可を得ているのが◯名(◯%)
- 業務情報を入力した経験:◯名(◯%)。うち顧客名・取引先名が◯名、財務の数字が◯名
- 決めた打ち手:◯◯を◯月までに実施する(担当・期日つき)
4行とも分母を添えるのは、次回と比べるときに母数が変わるためになります。数字の下に、自由記述の要約を3件から5件だけ添えておくと、会議での納得の速さが変わってきます。
1回で終わらせず、同じ設問で3か月後にもう一度
同じ設問で、3か月後か半年後にもう一度配ります。設問を変えてしまうと、前回との比較ができなくなります。追加したい観点が出てきたときは、既存の15問はそのまま残し、末尾に足す形にしてください。
2回目で見るのは、回答率・管理外利用の比率・入力した情報の種類の3つになります。この3つが動いていれば、打ち手は効いていたと判断できます。動いていなければ、打ち手そのものではなく、周知の届き方を先に疑ってみましょう。
定点で並べた数字は、次の予算を通すときの材料にもなっていきます。野良AIそのものの整理は野良AIとは何かでも扱っていますので、社内で言葉をそろえる場面で使ってみてください。
よくある質問
社内アンケートで生成AIの利用状況を聞くのは違法ですか?
社内アンケートの平均回答率はどのくらいですか?
匿名にすると、誰に何をフォローすればよいか分からなくなりませんか?
設問は何問までにすべきですか?
管理外のAI利用が見つかったら、まず何をすればよいですか?
全国調査の数字を社内の報告資料に引用してもよいですか?
まとめ
社内アンケートの出来は、設問より前に、正直に答えてもらえる条件が整っているかで決まります。人事評価に使わないこと、過去をさかのぼって咎めないこと、差出人を経営者にすること、この3つを前置きに書いてください。
設問は15問前後に抑え、使っているかどうかではなく、どの経路で、どんな情報を入れたかまで分けて聞きます。集計は5件未満の区分をまとめ、回答率は分母つきで出し、判断表で打ち手を1つに絞ります。そして3か月後、同じ15問でもう一度配ってみてください。
公表データの読み比べはシャドーAIの調査データまとめ、見つけ方の全体像はシャドーAIの見つけ方、ほかの記事はAI活用コラム一覧にまとめています。
管理外で使われていたAIを、会社の環境に1つにまとめる
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