AIエージェントの作り方。ノーコードで業務用エージェントを作る手順と最初の題材

AIエージェントの作り方とは、AIに役割と手順と参考資料を持たせて、決まった仕事を任せられる形に組み立てていく手順のことです。社員10〜200名の会社なら、開発ツールから入るより、いま契約しているAIのノーコードの作成画面で、社内FAQのように回数が多く機密の低い仕事を1つ選んで作るのが近道になります。ChatGPTのカスタムGPT(GPTs)は2026年12月11日に提供終了予定のため、ChatGPTで作るならBusiness・Enterpriseのワークスペースエージェントを選びましょう。仕組みや生成AIとの違いは、AIエージェントとは?仕組みと生成AIとの違いで詳しく紹介しています。

AIエージェントの作り方は3つの方式から選ぶ

最初の1本は、ノーコードの方式で作るのが現実的です。方式は、画面で文章を書いて作るノーコード、開発ツールで処理の流れを組み立てるローコード、プログラムを書いて一から作るフルコードの3つに分かれます。違うのは作る手間だけではなく、作ったあとに誰が直し続けるのかという点になります。

ノーコード:会社で契約しているAIの作成画面で作る

ノーコードとは、プログラムを書かずに、画面の入力欄へ指示文を書き、参考資料のファイルを添えるだけで作る方式を指します。Gemini の Gem、Claude のプロジェクト、Microsoft 365 Copilot のエージェント ビルダー、ChatGPT のワークスペースエージェントがこれにあたります。作る人に求められるのは仕事の手順を言葉で説明する力で、総務や現場のリーダーの方でも十分に作ることが出来ます。一方で、外部のシステムに書き込むような込み入った動きは、道具によっては作れません。

ノーコードの良さは、作った本人がそのまま直せる点にあります。規程が改定されたら資料を差し替え、答え方がずれていたら指示文を1行足すだけなので、開発の担当者を待たずに済む形です。現場の仕事をいちばんよく知っている方が作り手になれるため、最初の1本を社内に根付かせるにはこの方式が向いているでしょう。

ローコード:Difyなどの開発ツールで作る

Difyのような開発ツールは、画面上で処理の部品をつなぎ、ワークフロー(作業の流れ)としてエージェントを組み立てる道具になります。一般的には、アカウントを作り、ナレッジとして資料を登録し、指示文(プロンプト)を書き、必要なツールをつないでから公開する、という順番で作っていきます。資料を検索してから答える、条件によって処理を分けるなど、細かな動きを組めるのが強みです。

ただ、どのAIのモデルを呼び出すかの設定や、作ったものを社内に公開する場所の用意、動かなくなったときの手当てまで、作った人が面倒を見続けることになります。社内に開発の分かる担当者がいて、ノーコードの道具では足りない動きが見えてから選んでも遅くはありません。

フルコード:PythonやLangChainで一から作る

Pythonなどのプログラミングと、LangChainのような開発用の部品集を使えば、動きを細かく決めたエージェントを一から作ることが出来ます。自社のシステムと深くつなげたい場合や、社外のお客さまに向けて提供したい場合に選ばれる方式です。その代わり、AIを呼び出すための鍵(APIキー)の管理、利用料の監視、画面づくり、作った後の保守まで、すべて自社で抱えることになってしまいます。社員10〜200名の会社が最初の1本をこの方式で始めるのは、負担が大きすぎるでしょう。

社員10〜200名の会社が選ぶ順番

選ぶ順番は、ノーコードで1本作って社内で使われるかを確かめ、足りない動きがはっきりしてからローコードやフルコードを検討する流れがおすすめです。実際に、最初からDifyの導入や開発会社への依頼を検討すると、何を任せるのかが決まらないまま見積もりの話だけが進んでしまいます。まずは、いま会社で契約しているAIに作成画面があるかを確認してみてください。新しい道具の契約は、任せたい仕事が1つ決まってからでも間に合います。

ノーコードで作れる4つの道具を、手順・プラン・共有範囲で比べる

ノーコードで作れる主な道具は、Gemini の Gem、Claude のプロジェクト、Microsoft 365 Copilot のエージェント ビルダー、ChatGPT のワークスペースエージェントの4つになります。このうちGemとプロジェクトは、各社の作成手順のページでエージェントとは呼ばれておらず、指示と知識を持たせた専用の助手という位置づけです。社内の質問に答える仕事ならこれで十分に役立ちますが、アプリとつないで作業させたり、決まった時刻に自動で動かしたりしたい場合はワークスペースエージェントの出番となります。

Gemini の GemClaude のプロジェクトMicrosoft 365 Copilot のエージェント ビルダーChatGPT のワークスペースエージェント
作る場所gemini.google.com のWebアプリ(サイドバーの「Gem」)claude.ai/projects(「+ 新規プロジェクト」)microsoft365.com/chat・office.com/chat・Teams(モバイル不可)ChatGPT の左サイドバー「Agents」
作れるプランGoogle AI のプランなしを含む全プラン無料を含む全プラン(無料は5つまで)指示と公開Webの情報だけで動くものは追加料金なし(作成できる契約の条件は管理者に確認)Business・Enterprise(Enterpriseは提供開始時は既定でオフ)
持たせる知識パソコンのファイル・Googleドライブ・NotebookLMのノートブックファイル(1ファイル30MB、全体がコンテキストに収まる量まで)知識(メール・Teams等はCopilotライセンスがある場合のみ)ファイル(1ファイル512MB・合計10GB)とアプリ
外部アプリでの操作なし(指示と知識で答える)なし(指示と知識で答える)アクションは作れない(必要ならCopilot Studioへ)アプリ・独自のMCP・Slackでの利用・定時実行・API起動
社内共有の範囲一般公開・リンクを知っている全員・組織内・非公開(組織のドライブ共有設定に従う)Team・Enterpriseで組織内に共有(Can view/Can edit)組織内に編集可能・チャット可能で共有、組織全体への共有も可自分のみ・リンクを知っている組織内の人・組織のディレクトリに公開(Can chat/Can edit/Owner)
公式の呼び方Gem(ヒントのページにエージェントの語はない)self-contained workspaces(agentの語はない)宣言型エージェントworkspace agents

※2026年10月7日時点で、Google・Anthropic・Microsoft・OpenAIの公式ヘルプに掲載されている説明(各社の自己申告)を確認した内容です。画面の名前や対応プランは変わることがあるため、作る前に各社の公式ページで最新の内容をご確認ください。

Gemini の Gem:無料でも作れて、共有は会社のドライブ設定に従う

Gemは、Googleの公式ヘルプのプラン別機能表で、Google AI のプランがない状態から有料のプランまで、すべてに印が付いている機能です。作り方は、gemini.google.comでサイドバーを開き、「Gem」から「Gem を作成」を選んで名前とカスタム指示を書き、必要なら「知識」の「ファイルを追加」で資料を足して「保存」を押す流れとなります。資料はパソコンのファイルのほか、GoogleドライブやNotebookLMのノートブックからも追加出来ます。作成と編集はWebアプリでしか出来ない点も覚えておきましょう。

共有は「一般公開」「リンクを知っている全員」「組織内」「非公開」から選び、組織のGoogleドライブの共有設定に従って、Workspaceの管理者が制御する仕組みとなります。編集の権限を渡した相手は指示とファイルを更新したり削除したり出来るので、渡す相手は絞っておくのが安全です。

Claude のプロジェクト:無料は5つまで、共有はTeam・Enterpriseから

Claudeのプロジェクトは、無料のアカウントを含むすべての利用者が使え、無料の場合は5つまで作ることが出来ます。作り方は、claude.ai/projectsで「+ 新規プロジェクト」を押し、名前と説明を入れ、ナレッジを「+」で追加してから「プロジェクト指示を設定」で指示を書く順番になります。指示はプロジェクトの中のすべてのチャットに効くため、仕事ごとにプロジェクトを分けると使いやすいでしょう。ファイルは1つ30MBまでで、数の上限はないものの、全体がAIの一度に読める量(コンテキスト)に収まる必要があります。

社内で共有出来るのはTeamとEnterpriseのプランで、相手には「Can view(閲覧)」か「Can edit(編集)」の権限を渡す形です。組織のオーナーは、組織設定の「データとプライバシー」から共有そのものをオフに出来ます。プロジェクトの中で交わした会話は、本人が共有しない限りほかの人からは見えない仕組みになっています。

Microsoft 365 Copilot のエージェント ビルダー:指示とWeb情報だけなら追加料金なし

エージェント ビルダーは、Microsoftが宣言型エージェント(指示と知識で動きを決めるエージェント)を手軽に作る方法として案内している機能です。Microsoft 365 Copilotの画面で「新しいエージェント」を選び、やりたいことを文章で説明するか、「スキップして構成」から「構成」タブで項目を埋めるか、テンプレートから始めることが出来ます。項目は、名前(30文字まで)、アイコン、説明(1,000文字まで)、手順(8,000文字まで)、知識、スターター プロンプト(最初に表示する質問の例)で、機能としてコード インタープリターと画像ジェネレーターを足せます。作成の画面は microsoft365.com/chat、office.com/chat、Teamsにあり、モバイルからは作れません。

費用の区分について、Microsoftは、指示と公開されたWebサイトの情報だけで動く宣言型エージェントは追加料金なしで使えると説明しています。一方で、SharePointやGraphコネクタなど社内のデータを使うエージェントは従量課金の対象で、この課金は既定ではオフの設定です。Microsoft 365 Copilotのライセンスを持つ人は追加の支払いが要らず、メール・人物・Teamsのメッセージや会議を知識に使えるのもこのライセンスがある場合に限られます。共有は組織内の相手に「編集可能」か「チャット可能」で渡せ、組織全体に共有するスイッチもあります。管理者は共有出来る人を、すべてのユーザー(既定)、特定のユーザーやグループ、ユーザーなし、から選んで設定することが出来ます。

Copilot Studioでの作り方に進むのはどんなときか

エージェント ビルダーでは外部のサービスと連携して操作するアクションは作れず、必要な場合はCopilot Studioへコピーして作り込む形になります。Microsoftの説明では、エージェント ビルダーは個人や小さなチーム向けの軽い質問応答に向き、Copilot Studioは部門・組織全体・社外向けで、いくつもの段階を踏むワークフローや作った後の管理まで扱う道具という位置づけです。総務や現場で最初の1本を作る段階ではエージェント ビルダーから始め、外部サービスとの連携が必要になった時点で、情報システムの担当者と一緒にCopilot Studioへ移すのがよいでしょう。

ChatGPT のワークスペースエージェント:Business・Enterpriseで作り、Slackや定時実行にも対応

ChatGPTで業務用のエージェントを作るなら、BusinessかEnterpriseのワークスペースで使えるワークスペースエージェントが入口になります。Enterpriseのワークスペースでは提供開始時に既定でオフとなっており、管理者が有効にする必要があるとOpenAIは案内しています。作り方は、左サイドバーの「Agents」から「Create」を押し、やりたいことを文章で入れる(白紙から作るなら「Start blank」)と計画案が出るので、確認して「Build this agent」を押し、ビルダーで調整してから右上の「Create」で作成する流れです。テンプレートから作る場合は「Browse templates」から「Use template」を選び、作成前に右上の「Preview」で試すことも出来ます。

任せられる仕事は、アプリやツールとの接続、同僚やワークスペースへの共有、Slackでの利用、スケジュールを決めた自動実行、APIからの起動まで広がります。つなげる先はGoogleカレンダー・Googleドライブ・Slack・SharePointなどのアプリと独自のMCP(外部の道具をAIにつなぐための共通の仕組み)で、画像生成やWeb検索も使えます。資料のファイルは、1ファイル512MB、1つのエージェントで合計10GBまで持たせることが出来ます。

安全面で知っておきたいのは、送信・編集・投稿・削除といった書き込みの操作が、既定で「Always ask」(実行のたびに確認する)になっている点です。さらに、Connector Action Constraintsという設定で、たとえばメールの送り先を特定のドメインに限る制限も付けられます。アプリの認証は、使う人ごとに本人の権限で動く「End-user account」と、共有の接続を使う「Agent-owned account」から選び、共有の接続には可能ならサービスアカウント(人ではなく仕組み用のアカウント)を使うよう公式が注意を促しています。公開範囲は「Private to me」「Anyone at [組織名] with the link」「Publish to [組織名] directory」の3段階で、権限はCan chat・Can edit・Ownerから選びます。版の履歴から以前の版に戻すことも出来、グループ単位での共有にも対応しています。

ChatGPTのカスタムGPT(GPTs)を新しく作らない理由

ChatGPTのカスタムGPT(GPTs)は、OpenAIの公式FAQで2026年12月11日に提供終了予定と案内されており、これから新しく作る道としてはおすすめしません。この移行はすべてのChatGPTのプランに関わり、延期が承認されたEnterpriseのワークスペースでは2027年2月11日まで使える予定です。Enterpriseでは、カスタムGPTの新規作成そのものが2026年10月26日に終わる予定とされています。

提供終了日を過ぎるとカスタムGPTとそのページには入れなくなり、既存の会話だけが閲覧出来る形で残ります。GPTの指示はプラグインの「スキル」へ、接続済みアプリはプラグインのアプリへ、ナレッジファイルは参照ファイルへ移す道が用意されています。ただし、モデルの選択とカスタムアクションは引き継がれず、共有の設定も移らないため、プラグインは非公開の状態から配り直しになってしまいます。社内で配っているGPTsがあるなら、誰が作り、誰に共有しているかを今のうちに書き出しておきましょう。

なお、個人用のプラン(Free・Go・Plus・Pro)では、そもそも新しいGPTを作ったり公開したりすることが出来ません。BusinessやEnterpriseでも残り期間は限られているので、GPTsで作った仕組みは、ワークスペースエージェントなど次の置き場所へ移す前提で計画を立てておくと安心です。

無料で試せる範囲と、費用がかかる場面

無料で試すなら、Gemと、5つまでのClaudeのプロジェクトが手軽な選択肢になります。エージェント ビルダーも、指示とWebの情報だけのエージェントなら追加料金なしで使えます(作成できる契約の条件は管理者に確認)。反対に、ワークスペースエージェントはBusiness・Enterpriseの契約が前提で、GPTsは個人用のプランでは新しく作れません。社内のSharePointのデータを読ませるエージェントは従量課金の対象になるので、試す段階では管理者と相談してから設定してみてください。

気をつけたいのは、無料で試せることと、会社の仕事に使ってよいことは別の話だという点です。個人の無料アカウントで作ったものは会社の管理画面から見えず、入力した内容の扱いも本人の設定次第となってしまいます。試すときは架空のデータや公開済みの資料だけを使い、社内の情報を入れるのは会社として契約した環境に移ってからにしましょう。

道具ごとにばらばらに作る前に、会社のAI環境をそろえる

道具ごとに共有の仕組みが違うからこそ、社員が使うAIの環境と権限を先に会社でそろえましょう。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

作る前の準備:最初の題材を4つの物差しで選ぶ

最初の題材は、回数が多く、手順が決まっていて、扱う情報の機密度が低く、間違えても影響が小さい仕事から選ぶのが確実です。作る前にやることは、候補の仕事を書き出し、この4つの物差しで点を付けて、1つに絞る作業になります。準備を飛ばして作り始めると、作ったのに誰も使わない1本が出来上がってしまいます。

物差し1:頻度(週に何回起きる仕事か)

頻度は、その仕事が社内で週に何回起きるかで見ます。月に1回しかない仕事を任せても、使う人が操作を忘れてしまい、定着しにくくなります。毎日のように同じ質問が来る仕事や、毎週同じ形の報告を書く仕事が向いています。

物差し2:定型度(手順と答えが決まっているか)

定型度は、手順や答え方がどれだけ決まっているかを表す物差しです。社内規程の問い合わせのように答えの根拠が文書にある仕事は、指示文と資料で動きを決めやすい題材になります。反対に、その場の判断や交渉が中心の仕事は、何を正解とするかを言葉にしにくく、最初の1本には向きません。

物差し3:機密度(AIに渡してよい情報か)

機密度は、AIに渡す資料や入力される情報が、社外に出たら困るものかどうかで見ていきます。最初は就業規則や社内の手続き案内のように、社員なら誰でも見てよい資料で作るのが安心です。顧客の個人情報や取引の条件が入る仕事は、学習に使わせない設定とログの管理が整った環境を用意してから扱いましょう。

物差し4:失敗時の影響(間違えたら誰が困るか)

失敗時の影響は、AIが間違えたときに、誰がどれくらい困るかで判断します。社員向けの案内であれば、間違いに気づいた人が担当者に聞き直せば足りますが、お客さまに直接届く回答や請求の金額は、1回の間違いが信用に響いてしまいます。最初の1本は、出力を必ず人が確かめてから使う仕事か、社内だけで完結する仕事に限っておくのが無難でしょう。

4つの物差しで点を付ける

候補の仕事ごとに、4つの物差しをそれぞれ3点満点で採点し、合計点の高いものから並べてみてください。採点の目安は次のとおりです。

  • 頻度3点=毎日起きる/2点=週に数回/1点=月に数回以下
  • 定型度3点=答えの根拠が文書にある/2点=手順はあるが例外が多い/1点=その場の判断が中心
  • 機密度(低いほど高得点)3点=社員なら誰でも見てよい/2点=部署の中に限る/1点=顧客情報や取引条件を含む
  • 失敗時の影響(小さいほど高得点)3点=社内で気づいて直せる/2点=上司の確認で止められる/1点=社外に直接届く

合計が10点以上の仕事が見つかれば、それが最初の1本の候補になります。頻度と定型度が高く、機密度と失敗時の影響が低い仕事を1つだけ選ぶのが、最初の1本の決め方です。候補が複数残ったときは、現場からいちばん困っているという声が多い仕事を選んでみましょう。

最初の1本に向く活用例:社内FAQ・問い合わせ対応・議事録

4つの物差しで点が高くなりやすいのは、社内FAQ、問い合わせへの回答の下書き、議事録の整理の3つになります。社内FAQのエージェントは、就業規則や経費精算の手引きを資料として持たせ、社員からの質問に根拠の箇所を示して答える役目を任せる形です。問い合わせ対応では、お客さまへ直接返すのではなく、担当者が使う回答の下書きを作らせ、送る前に人が確認する流れにすると失敗時の影響を小さく出来ます。議事録は、会議の文字起こしを渡して、決まったこと・宿題・期限を決まった形式で抜き出させる使い方が向いています。

反対に、最初の題材に選ばない方がよいのは、採用の合否や人事評価のように人の判断が結果を左右する仕事と、顧客の個人情報を大量に扱う仕事です。こうした仕事は、社内のルールと環境が整ってから、2本目以降で検討しても遅くはありません。準備の段階でよくある失敗は、作る人が自分の困りごとだけで題材を決めてしまうことなので、候補の書き出しには使う側の部署の方にも加わってもらいましょう。

指示文の書き方:5つの項目でひな形を作る

指示文は、役割・手順・禁止事項・出力形式・分からないときの動き、の5つの項目に分けて書くと、誰が作っても品質がそろいます。道具ごとに入力欄の名前は「カスタム指示」「プロジェクト指示」「手順」などと違いますが、書く中身は同じで構いません。エージェント ビルダーの手順の欄は8,000文字までなので、長い規程の本文は指示文に貼らず、知識のファイルとして渡すのがよいでしょう。次のひな形は、社内FAQのエージェントを想定して書いてみました。

【役割】
あなたは〇〇株式会社の総務部の社内問い合わせ窓口です。社員からの質問に、添付した社内規程に沿って答えます。

【手順】
1. 質問の内容を1文で言い直して確認する
2. 添付資料から根拠になる箇所を探す
3. 根拠の資料名と見出しを示して答える
4. 手続きが必要な場合は、次にやることを番号付きで示す

【禁止事項】
・添付資料にないことを推測で答えない
・個人の給与・評価・健康に関する質問には答えず、担当者へ案内する
・社外の人に向けた文面は作らない

【出力形式】
・最初に結論を2文以内で書く
・その後に根拠(資料名・見出し)と手順を箇条書きで書く
・全体で400字以内にまとめる

【分からないときの動き】
・資料で答えが見つからない場合は「資料に記載がありません」と書き、総務部の窓口へ問い合わせるよう案内する
・質問の意味が2通り以上に読める場合は、答える前に確認の質問を1つだけ返す

ひな形で手を抜きやすいのは、禁止事項と分からないときの動きの2つです。ここを書かないと、AIは資料にないことでもそれらしく答えてしまい、利用者は正しい答えと区別出来なくなってしまいます。資料にない質問には答えず担当者を案内する、という1行は、どの指示文にも必ず入れましょう。出力形式も文字数や見出しの順番まで決めておけば、使う人ごとに答えの形がぶれにくくなります。

役割の欄には、誰のために何をする窓口なのかを1〜2文で書けば十分です。手順の欄は、ベテランの担当者が新人に教えるときの順番をそのまま書き写すと、AIにも伝わりやすい文になります。社内の言い回し、たとえば部署の略称や書類の通称がある場合は、手順の後ろに用語の対応を数行添えておくと、質問の読み違いを減らせます。

書き方でよくある失敗は、最初から長い指示文を書こうとして、条件どうしが食い違ってしまうことです。まずは5つの項目を3行ずつ程度で書き、テストで出た間違いに合わせて1行ずつ足していく方が、直す場所がはっきりして早く仕上がります。ワークスペースエージェントやエージェント ビルダーのように、やりたいことを文章で説明すると下書きを作ってくれる道具では、その下書きに5つの項目がそろっているかを確かめてから使ってみてください。

ナレッジの登録とツール連携は、渡す資料と権限を絞る

ナレッジ(AIが答えの根拠にする資料)は、多く入れるほど賢くなるわけではなく、その仕事に必要な資料だけに絞った方が答えが安定します。資料の中から質問に近い部分を探して答えに使う考え方はRAG(検索拡張生成)と呼ばれ、この考え方を知っておくと、どの資料を入れるべきかが判断しやすくなります。資料に古い版と新しい版が混ざっていると、AIは古い方を根拠に答えることがあり、利用者はそれに気づけません。

資料の登録で気をつけること

登録する前に、資料の版を最新の1つにそろえ、ファイル名に版と日付を入れておきましょう。道具ごとに入れられる量も違い、Claudeのプロジェクトは1ファイル30MBまでで全体がコンテキストに収まる必要があり、ワークスペースエージェントは1ファイル512MB・合計10GBまでとされています。Gemはパソコンのファイルのほか、GoogleドライブやNotebookLMのノートブックを知識に足せるため、ドライブで最新版を管理している会社には扱いやすい作りです。表や画像の多い資料は、AIが読み違えることがあるので、テストの質問で必ず確かめてみてください。

資料の中身にも手を入れておくと、答えの質が上がります。1つの手続きの説明が複数のファイルに分かれている場合は、1つの資料にまとめ直すか、どの資料が正なのかを指示文で伝えるようにしましょう。改定のたびに古いファイルを消し忘れることが、ナレッジでいちばん起きやすい失敗となります。

ツール連携は読むだけから始める

ツール連携とは、エージェントがメールやカレンダー、ファイルの保管場所などの外部のアプリを読んだり、書き込んだりできるようにすることを指します。書き込みが絡むと、間違ったときの影響は回答の誤りよりずっと大きくなってしまいます。ワークスペースエージェントでは書き込みの操作が既定で実行のたびに確認する設定なので、最初の1本ではこの既定を外さずに使いましょう。

認証を共有の接続にすると、つないだアカウントの権限でエージェントが動くため、使う人によっては本来見られない範囲の資料に届くおそれがあります。最初は、使う人それぞれの権限で動く設定を選び、共有の接続は仕組み用のアカウントに限りましょう。エージェント ビルダーは外部のサービスに書き込むアクションを作れないため、読むだけのエージェントとして割り切って使う道具になります。社内のSharePointのデータを知識に使う場合は従量課金の対象となるので、どのサイトをつなぐかを管理者と決めてから設定するのが確実です。

テストケース5件で確かめてから、社内に公開する

作ったエージェントは、決まった5件のテスト質問で確かめ、全部に合格してから公開するのが基本の流れです。その場の思いつきで数回質問して良さそうだから公開する進め方では、後から間違いが見つかったときに何を直せばよいか分からなくなります。ワークスペースエージェントなら右上の「Preview」で作成前に試せるので、そこで同じ5件を毎回流してみてください。

テストケース5件の作り方

5件は、それぞれ違う弱点を確かめるように選びます。社内FAQのエージェントであれば、次のような組み合わせが使いやすいでしょう。

  1. いちばん多く来る質問を、社員が実際に書く言い回しのまま入れる(例:有給休暇の申請はいつまでに出せばよいですか)
  2. 資料の中で答えが2か所に分かれている質問を入れ、両方を拾えるかを見る
  3. 資料にない質問を入れ、推測で答えずに担当者を案内するかを見る(例:来年の賞与はいくらですか)
  4. 個人の情報を聞く質問や禁止事項に触れる質問を入れ、きちんと断れるかを見る
  5. あいまいな質問を入れ、答える前に確認の質問を返すかを見る(例:申請の締め切りを教えて)

それぞれの質問には、あらかじめ期待する答えと合格の条件を書いておきます。たとえば3件目なら、資料に記載がない旨を伝えて総務部の窓口を案内していれば合格、金額らしき数字を答えたら不合格、という具合になります。5件のうち1件でも不合格なら、指示文か資料を直してから、もう一度5件すべてを流し直しましょう。

公開後も同じ5件で見直す

資料の差し替えや指示文の変更をしたときは、直した部分だけでなく、同じ5件を流して前の版と結果を比べます。ワークスペースエージェントには版の履歴があり、以前の版に戻すことも出来るため、変更で悪くなったときにすぐ戻せる作りです。実際に使われ始めたら、利用者から寄せられた間違いの例を6件目、7件目として足していき、テストの質問を会社の財産として育てていきましょう。

よくある失敗は、作った本人だけがテストをして、本人の聞き方に合わせた質問ばかりになることです。5件のうち少なくとも2件は実際に使う部署の方に書いてもらうと、現場の言い回しとのずれに早く気づけます。公開の範囲も、最初は試してくれる数人に限り、合格を確かめてから部署、全社へと広げていくのが安心でしょう。

社員が個人アカウントでばらばらに作ると起きること

社員が自分の個人アカウントでエージェントを作り、業務に使い始めると、会社は何がどこにあるのかを把握出来なくなります。こうした会社の管理の外にあるAIの利用はシャドーAI(野良AI)と呼ばれ、エージェントづくりが広がるほど増えやすい問題です。起きることはどれも、作って使い始めた後になってから気づくものばかりとなります。

退職や異動で、エージェントごと消えてしまう

個人アカウントで作ったエージェントは、作った本人のものとして残ります。本人が辞めたりアカウントを解約したりすると、社内で毎日使っていたエージェントが突然使えなくなり、指示文も資料もどこにも残っていないという事態が起こり得ます。会社の契約の中で作り、編集の権限を複数の人に渡しておけば、1人が抜けても直し続けることが出来ます。

共有の設定が、本人任せになってしまう

Gemの共有には「一般公開」や「リンクを知っている全員」という選択肢もあり、Gemの共有を制御するのは組織のドライブ共有設定とWorkspaceの管理者です。個人アカウントで作ったGemには会社の管理者の目が届かないため、社内規程を入れたGemのリンクが社外に転送されても、会社は止めようがなくなってしまいます。会社のWorkspaceの中で作れば、組織の共有設定で外への共有を絞るなど、管理者が歯止めをかけられます。

GPTsの提供終了で、作り直しが一斉に起きる

社員がそれぞれGPTsで業務用のアシスタントを作っていた場合、2026年12月11日の提供終了予定に向けて、全員が移行か作り直しをすることになります。移行してもモデルの選択やカスタムアクションは引き継がれず、共有の設定も移らないため、使っていた同僚に改めて配り直す手間がかかってしまいます。誰がどのGPTを作り、誰と共有していたのかを会社が把握していなければ、どれが業務で使われていたのかさえ分かりません。

入力した情報の扱いが、人によって違ってしまう

個人アカウントでは、入力した内容をAIの学習に使わせるかどうかの設定も、本人次第となります。同じ部署の中でも設定を確かめている人とそうでない人が混ざり、取引先から聞かれても会社として説明出来ない状態が生まれてしまいます。個人がばらばらにエージェントを作る前に、会社の環境と権限をそろえておくことが出発点です。点検しておきたい項目は、生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめています。

会社で安全に使うための運用ルール:作成者台帳・公開範囲・見直し

会社でエージェントを安全に使うには、作る場所を会社の環境にまとめ、誰が何を作ったかを台帳で管理する仕組みが土台になります。道具の設定だけでは足りず、作る人と使う人のルールを短く決めておけば、エージェントが増えても管理の手間を抑えられます。社内ルール全体の作り方は、生成AIの社内ガイドラインの作り方も参考にしてください。

作る前にそろえる4つの設定:学習・ログ・配布・使い分け

1つ目は、入力した内容をAIの学習に使わせない設定を、社員ごとの操作に任せず会社側でそろえることです。2つ目は、誰がいつどのエージェントを使ったかを後から確かめられるよう、利用のログを会社で取れる環境を選ぶことになります。3つ目は社員への配布で、エージェントを作れる人と使える人を分け、作る権限は台帳に登録した人にだけ渡す形が管理しやすいでしょう。4つ目は複数のAIの使い分けで、調べものに強いAI、長い文書の読み込みに強いAIなど、仕事ごとに使うAIを決めておくと、エージェントの土台に使うAIも選びやすくなります。

AIごとの得意分野は主要4AIの違いと使い分けで、複数のAIを1つの環境でまとめて使う考え方はマルチAIとはで紹介しています。エージェントを作る道具がAIごとに分かれている以上、社員が使うAIそのものを会社の管理の下にそろえておくことが、ばらばらな作り方を防ぐ近道になります。

作成者台帳に書く項目

作成者台帳は、社内にあるエージェントを1行ずつ書き出す一覧表です。最低限、次の項目をそろえておきましょう。

  • 名前と目的何の仕事を、誰のために任せているエージェントか
  • 作った人と編集の権限を持つ人編集出来る人を2人以上にして、片方が抜けても直せるようにする
  • 使っている道具とプランGem・プロジェクト・エージェント ビルダー・ワークスペースエージェントのどれか、どの契約の中で作ったか
  • 持たせている資料と版資料の名前、版、最後に差し替えた日
  • 公開範囲自分のみ・部署・全社のどこまで公開しているか
  • テスト5件の結果最後に5件を流した日と、すべて合格したかどうか
  • 外部アプリとの連携つないでいるアプリと、書き込みの操作の有無、認証の方式

台帳はスプレッドシート1枚で十分で、新しく作ったときと、資料や指示文を直したときに1行ずつ更新するだけで回ります。編集の権限は必ず2人以上に持たせ、1人の退職でエージェントが止まらない形にしましょう。台帳に載っていないエージェントは業務に使わない、と決めておくことも、個人アカウントでの作成を減らす助けになります。

公開範囲と権限の決め方

公開範囲は、最初は作った人と試す数人だけに限り、テスト5件に合格してから部署、全社へと広げていく順番がおすすめです。ワークスペースエージェントでは、管理者がロールごとに、利用・作成・ディレクトリへの公開・共有接続つきの公開をそれぞれ許可出来るため、全社のディレクトリへの公開は情報システムの担当者だけに許すといった分け方が出来ます。Microsoft 365でも、管理者はエージェントを共有出来る人を、すべてのユーザー・特定のユーザーやグループ・ユーザーなしから選べます。Claudeのプロジェクトでも組織のオーナーが共有そのものをオフに出来るので、使い始める前に各道具の管理画面で設定を確認してみてください。

見直しの周期を決める

作ったエージェントは、3か月に1回などの周期を決めて、資料が最新か、テスト5件にまだ合格するか、実際に使われているかの3点を見直しましょう。使われていないエージェントは台帳から外して止め、数を増やしすぎないことも管理の一部となります。道具の側も変わり続けており、GPTsの提供終了予定のように作った場所そのものが使えなくなることもあるので、見直しの日には各社の公式のお知らせにも目を通す習慣をつけると安心です。

エージェントを作る前に、会社のAI環境と権限をそろえる

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです。よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有出来るカスタムプラス(GPTs・Gem・Claudeプロジェクトの社内版)や、利用ログ・権限・モデルのON/OFFを扱える管理者ダッシュボードを備え、基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

AIエージェントは無料で作れますか?
GeminiのGemは無料のアカウントでも作れ、Claudeのプロジェクトも無料のアカウントで5つまで作れます。ChatGPTのワークスペースエージェントはBusiness・Enterpriseの契約が前提で、カスタムGPT(GPTs)は個人用のプランでは新しく作れません。無料で試すときは社内の情報を入れず、公開済みの資料や架空のデータだけで試すのが安全です。
ChatGPTのGPTsは今から作っても大丈夫ですか?
おすすめしません。OpenAIの公式FAQでは、カスタムGPTは2026年12月11日に提供終了予定と案内されており、指示やナレッジはプラグインへ移す形になります。モデルの選択やカスタムアクション、共有の設定は引き継がれないため、ChatGPTで業務用のエージェントを作るなら、Business・Enterpriseのワークスペースエージェントを選ぶのが近道です。
プログラミングが出来なくてもAIエージェントは作れますか?
作れます。Gem、Claudeのプロジェクト、Microsoft 365 Copilotのエージェント ビルダー、ChatGPTのワークスペースエージェントは、いずれも画面に指示文を書き、資料のファイルを添えて作るノーコードの道具です。DifyやPythonを使う方法は、ノーコードで足りない動きがはっきりしてから検討しても間に合います。
ChatGPTのエージェントモードと、自分で作るエージェントは何が違いますか?
エージェントモードはChatGPT本体に付いている機能で、自分で作る専用のエージェントとは別のものです。OpenAIのヘルプでは、エージェントモードの対象はPlus・Pro・Business・Enterprise・Eduで、Freeは対象外と案内されています。決まった仕事を同じ手順で繰り返し任せたい場合は、ワークスペースエージェントのように専用のエージェントを作る方が向いています。
最初に作るエージェントは何がよいですか?
回数が多く、手順が決まっていて、機密度が低く、間違えても影響が小さい仕事が向いています。具体的には、就業規則や経費精算の手引きを資料にした社内FAQ、問い合わせへの回答の下書き、議事録から決まったことと宿題を抜き出す作業が候補になります。
社員が個人で作ったエージェントを業務で使わせてもよいですか?
会社の管理画面から見えない個人アカウントでの利用は、おすすめしません。退職で使えなくなる、共有の範囲を会社で制御出来ない、入力した情報の学習設定が人によって違う、といった問題が起きやすいためです。使われているものがあれば作成者台帳に書き出し、会社の環境で作り直す流れを案内しましょう。

まとめ

AIエージェントの作り方はノーコード・ローコード・フルコードの3つの方式に分かれ、社員10〜200名の会社の最初の1本はノーコードで作るのが現実的です。道具は、無料でも作れるGem、無料は5つまでのClaudeのプロジェクト、指示とWebの情報だけなら追加料金なしのエージェント ビルダー、Business・Enterprise向けのワークスペースエージェントの4つが候補になります。GPTsは2026年12月11日に提供終了予定のため、これから新しく作る道には選ばないようにしましょう。

作る順番は、頻度・定型度・機密度・失敗時の影響の4つで題材を1つに絞り、5つの項目で指示文を書き、資料を絞って登録し、テストケース5件に合格してから公開する流れになります。社員が個人アカウントでばらばらに作り始める前に、作る場所を会社の環境にそろえ、作成者台帳と公開範囲のルールを決めておきましょう。法人のAI活用に関するほかの記事は、AI活用コラム一覧をご覧ください。