
社内チャットボットとは、社員から総務・人事・情シスなどへ寄せられる社内の問い合わせに、規程や手順書をもとに自動で答える仕組みのことです。最初の1本は、問い合わせログから「答えが規程に書いてあり、人の判断が要らない質問」を10〜20問選び、生成AIの法人プランの中で作るのが近道になります。専用製品を比べるのは、その1本を回してみてからでも遅くありません。作ったら社内に周知し、答えられなかった質問を30日かけて拾い直していきましょう。
製品ごとの機能や料金の違いを広く見たい方は、AIチャットボット比較の記事に全体像をまとめてあります。ここでは製品の比較には深入りせず、総務・情シスの担当者が最初の1本を作り、社内で回し始めるまでを順に追っていきます。
社内チャットボットとは|社外向けとの違いと種類
社内チャットボットは、問い合わせる相手が社員で、答えの元になるのが社内の規程や手順書という点で、お客さま向けのチャットボットと分かれます。社外向けは商品やサービスの案内が中心で、誰が見ても困らない公開情報を答えるのが前提です。社内向けは就業規則や経費精算のルール、社内システムの使い方など、外に出せない情報を扱うことになります。そのため、どの社員がどこまで見られるか、答えの元にした文書を誰が直すかを、最初に決めておく必要が出てきます。
シナリオ型とAI型(生成AI・RAG)
社内チャットボットの仕組みは、大きく分けてシナリオ型とAI型の2つがあります。シナリオ型は、あらかじめ用意した質問と答えの組み合わせを、選択肢をたどって案内する形です。答えがぶれない反面、用意していない聞き方には応じられず、質問を足すたびに人の手で分岐を作ることになってしまいます。AI型は、社員が普段の言葉で書いた質問を読み取り、登録した文書の中から答えを組み立てます。
いまのAI型の多くは生成AIを使っており、規程やマニュアルを読み込ませて答えさせる仕組みをRAG(検索拡張生成)と呼びます。質問のたびに関係する文書の箇所を探し、その内容をもとに生成AIが答えを書く方法になります。文書に書いていないことは、AI型でも正しく答えられません。答えの質は、読み込ませる文書の質でほぼ決まると考えてよいでしょう。
クラウド型とオンプレミス型
置き場所で分けると、提供会社のサーバーで動くクラウド型と、自社のサーバーに置くオンプレミス型があります。社員10〜200名の会社であれば、サーバーの管理を抱えずに済むクラウド型から考えるのが現実的です。生成AIの法人プランの中で作る方法も、このクラウド型の一つにあたります。自分たちで作るか専用製品を入れるかの選び方は、後の節で順に見ていきましょう。
社内チャットボットで減る手間と、部門別の活用例
社内チャットボットを入れて変わるのは、同じ質問に何度も答えていた担当者の時間と、答えを待っていた社員の時間の両方になります。総務や情シスの窓口には、毎月同じ時期に同じ質問が集まりやすいものです。
導入メリット(問い合わせ対応・時間外・属人化・テレワーク)
- 担当者が同じ答えを繰り返す回数が減り、判断の要る相談に時間を回せます。
- 夜間や休日、担当者が席を外しているときでも、社員が自分で答えを確かめられます。
- 「あの人に聞かないと分からない」状態が減り、異動や退職で答えが失われにくくなります。
- 在宅勤務や外出先の社員も、近くに聞ける人がいないまま手が止まることが減っていきます。
どれも、答えの元になる文書がそろっていることが前提になります。文書が古いまま動かすと、間違った答えを素早く広めるだけになってしまいます。
部門別の活用例(総務・人事・経理・情シス・店舗から本社)
部門ごとに、ボットに向く質問の例を挙げておきます。
- 総務:備品の申請方法、会議室の予約ルール、来客の受け付けの手順
- 人事・労務:有給休暇の申請手順、各種届出の書式の置き場所、慶弔休暇の日数の調べ方
- 経理:経費精算の締め日、交通費の申請方法、領収書をなくしたときの手順
- 情シス:パスワードの再設定、VPNの接続手順、新しいPCの初期設定、プリンターの追加
- 店舗や支店から本社へ:発注の締め時間、シフト表の出し方、本部へ出す報告書の様式
どの部門でも、答えが文書に書いてあって、聞く人によって答えが変わらない質問が向いています。反対に、個別の事情を聞いてから判断する相談は、後の節で触れるとおり人の窓口に残しましょう。
削減効果の数字は事例として読む
導入の効果としてよく目にする削減率は、多くが製品を提供する会社の載せている事例です。たとえば社内向けのAIチャットボット「HiTTO」の同社掲載の事例では、株式会社大京がITヘルプデスクの問い合わせ専用のチャットボットで、月間の入電件数を30%減らしたと紹介されています。こうした数字は、その会社の問い合わせの量や中身、文書の整い方があって出た結果となります。自社でどれだけ減るかは、自社の問い合わせログを数え、ボットに回せる質問の割合を見てから見込むのが確かでしょう。
最初にボット化する質問の選び方
最初の1本で扱う質問は、問い合わせログから選ぶと外れにくくなります。思いつきでFAQを書き始めると、実際にはあまり聞かれない質問ばかりが並びがちです。
問い合わせログの集め方
まず、直近3か月ほどの問い合わせを1枚の表に書き出してみてください。メールの受信箱、社内チャットの個別メッセージ、電話や口頭で受けたメモなど、窓口ごとに散らばっている分も集めます。口頭の分は記録が残っていないことが多いので、2週間だけ担当者に「誰から・何を聞かれたか」を一言ずつメモしてもらう方法もあります。集めたら同じ意味の質問を1行にまとめ、それぞれの件数を数えておきましょう。
ボット化するかを決める4つの判断(判断表)
書き出した質問を、次の4つの問いに1つずつ当てはめていきます。
- 月に何回聞かれるか月に数回以上、複数の社員から同じ質問が来るものを候補にします。年に1〜2回の質問は、ボットに載せても使われる場面がほとんどありません。
- 答えが規程や手順書に書いてあるか書いてあれば、その文書を読み込ませるだけで答えの元がそろいます。書いていない場合は、ボットを作る前に文書を一つ書くところから始めます。
- 人の判断が要らないか誰が聞いても同じ答えになる質問だけを対象にします。いつも「事情によります」と答えている質問は、ボットではなく人の窓口に回します。
- 個人情報や個別の事情を含まないか質問や答えに特定の社員の給与・健康・評価などが入るものは外します。答えの元になる文書にも、個人の情報は入れません。
4つすべてに当てはまる質問だけを、最初の1本に入れてください。1つでも外れる質問は「後で検討」と「人が答える」に分けて残しておくと、2本目を作るときの材料になります。迷った質問は、最初の1本には入れないでおきましょう。
判断の例
- 「経費精算の締め日はいつですか」は件数が多く、規程に書いてあり、誰が聞いても同じ答えなので、最初の1本に入れます。
- 「VPNにつながらないときはどうすればよいですか」は、手順書があれば入れます。担当者の頭の中にしか手順がない場合は、先に手順を文書にします。
- 「私の有給休暇はあと何日残っていますか」は個人の情報を見ないと答えられないため、ボットでは勤怠システムでの調べ方を案内する答えに置き換えます。
- 「異動の希望はどこに出せばよいですか」は書式の場所までなら答えられますが、中身の相談は人事の窓口に回します。
1本目は10〜20問ほどに絞り、1つの部門の質問だけで作るほうが、答えの点検も周知も楽に進められます。
個人アカウントや無料版で作ると、何が困るのか
個人のアカウントや無料版でも社内ボットらしいものは作れますが、社内情報を入れて社員に配る使い方には向きません。作れることと、社内情報を入れてよいことは別の話になります。
実際に、GeminiのGemはGoogle AIの有料プランがなくても作ることが出来ます。Claudeのプロジェクトも無料のアカウントで使え、無料の場合は5つまで作れると案内されています。一方で、ChatGPTの個人向けプラン(Free・Go・Plus・Pro)では、新しいGPTの作成も公開も出来ません。
困るのは、作った人のアカウントの中に、ボットと読み込ませた文書がそのまま残ってしまう点です。会社からは、誰がどの文書を入れたのか、誰に共有したのか、どんな質問が来ているのかが見えません。作った社員が異動や退職をすれば、ボットごと止まったり、社内の文書が個人のアカウントに残り続けたりしてしまいます。入力したデータが学習に使われる設定かどうかも、アカウントごとに確かめるしかありません。
個人情報保護委員会は2023年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、そのデータが応答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法に違反する可能性があるとしています。そのうえで、提供事業者が入力データを機械学習に使わないことなどを、十分に確かめるよう促す内容になります。
経済産業省と総務省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日)の別添でも、企業のルールが整っていない場合、社員が業務外の利用者向けの生成AIを業務に使い、リスクの高い使い方をするおそれがあると書かれています。社内ボットを公認の入口として用意すれば、こうした見えない利用を減らす手立てにもなります。使ってほしくない道をふさぐより、使ってよい道を先に用意しましょう。会社が把握していないAI利用の広がり方と対策は、シャドーAI(野良AI)の対策の記事で詳しく扱っています。
社内ボットは、会社が使う人と使われ方を見られる環境に置きましょう。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
生成AIの法人プランで最初の1本を作る手順
生成AIの法人プランで作る場合、どのサービスでも「指示文」「読み込ませる文書」「共有する範囲」の3つを決めれば形になります。画面の名前はサービスごとに違うので、使っている環境に合わせて読み進めてください。
作る前に用意するもの
- 前の節で選んだ10〜20問と、それぞれの答えの元になる規程や手順書のファイル。
- 答えられない質問が来たときに案内する、人の窓口の部署名と連絡方法。
- ボットに答えさせない話題の一覧(後の節で例を挙げます)。
- 点検用の質問を5問ほど。うち1問は、文書に書いていない質問にしておきます。
指示文には、役割、答えの元にする文書、文書にないときの返し方、答えない話題の4つを書きます。次のような短い文から始め、試しながら書き足していくと進めやすいでしょう。
あなたは〇〇株式会社の総務部の問い合わせ係です。社員からの質問に、添付した「就業規則」「経費精算マニュアル」「備品申請の手順」だけをもとに答えてください。答えには、根拠にした文書名と項目を必ず添えてください。文書に書いていないことは推測で答えず、「この内容は資料にありません。総務部(社内チャットの総務窓口)へお問い合わせください」と返してください。給与・人事評価・健康・ハラスメントの相談には答えず、同じ窓口を案内してください。
ChatGPT Business|GPTは2026年12月11日に提供終了予定
ChatGPT Businessでは、現時点ではワークスペースの設定と権限で許可されていれば、カスタムGPT(GPTs)を作って社内に公開できます(Enterpriseは新規作成の終了を2026年10月26日予定と案内)。ただし、OpenAIのヘルプでは、カスタムGPTは2026年12月11日に提供終了予定と案内されています。提供終了日を過ぎるとGPTとそのページにはアクセスできなくなり、作った人はプラグインという新しい仕組みへ移る形になります。
移行では、GPTの指示はプラグインのスキルへ、ナレッジのファイルは参照ファイルへ引き継がれます。一方で、モデルの選択や共有の設定は引き継がれず、プラグインは非公開の状態で作られる仕組みです。OpenAIは、移行後のプラグインが元のGPTと違う答えを返す場合があるとして、使い慣れた質問と難しい質問で比べるよう案内しています。これから社内ボットを新しく作るなら、GPTsで作るのは勧めにくい状況です。ChatGPTで作るなら移行先のプラグインで作るか、次に挙げる他社の仕組みも含めて考えてみてください。
Claudeのプロジェクト(Teamプラン)
Claudeでは、プロジェクトという機能が社内ボットの土台になります。手順は、claude.aiのプロジェクトの画面で「+ 新規プロジェクト」を選び、名前と説明を入れてから規程などのファイルをナレッジに追加し、「プロジェクト指示を設定」に先ほどの指示文を貼る流れです。Teamプランでは組織内のメンバーとプロジェクトを共有でき、権限は「Can view」(閲覧)と「Can edit」(編集)から選べます。社員には閲覧の権限で共有し、文書を差し替える担当者だけに編集の権限を付けるとよいでしょう。
プロジェクトの中で各自がしたチャットは、本人が共有しない限りほかの人には見えない仕組みになっています。ファイルは1つ30MBまでで、個数の上限はないものの、全体がAIの読み取れる量に収まる必要があります。
GeminiのGem(Google Workspace)
Google Workspaceを使っている会社なら、GeminiのGemで作ることも出来ます。gemini.google.comを開き、サイドバーの「Gem」から「Gem を作成」を選んで、名前とカスタム指示を入れます。次に「知識」の「ファイルを追加」から規程のファイルを読み込ませ、「保存」を押せば出来上がりです。共有の範囲は「一般公開」「リンクを知っている全員」「組織内」「非公開」から選べ、社内ボットなら「組織内」を選ぶことになります。Gemの共有は組織のドライブの共有設定に沿って動き、Workspaceの管理者が管理する形です。作成と編集はWebアプリでだけ出来る点も覚えておいてください。
Microsoft 365のエージェント ビルダー
Microsoft 365では、契約内容によってエージェント ビルダーで社内向けのQ&Aを作れます。Microsoftの案内では、エージェント ビルダーは個人や小規模なチーム向けの軽いQ&A、Copilot Studioは部門や組織全体向けという使い分けになります。指示とパブリックなWebサイトだけを元にするエージェントは追加料金なしで使えますが、SharePointなど社内のデータを使うエージェントは従量課金で、既定ではオフになっています。Microsoft 365 Copilotのライセンスを持っている社員は、追加の料金なく使えるとされます。
気をつけたいのは、ナレッジとしてアップロードしたファイルの中身が、そのエージェントを使えるすべての人に見えてしまう点です。人事の資料のように見せる相手を限りたい文書は、入れないようにしましょう。
社内に出す前の点検
どのサービスで作っても、社内に出す前に、用意した点検用の質問で答えを確かめてみてください。答えに根拠の文書名が添えられているか、文書にない質問で人の窓口を案内できているかを見ます。間違いが見つかったら、指示文を直す前に、元の文書の書き方があいまいでないかを先に疑うのが近道になります。
社内チャットボットの費用|人数別に会社の出費へ直す
生成AIの法人プランで作る場合、費用はボットを作る分ではなく、ボットを使う社員の席の数で決まります。法人プランの中で作ったボットを社内で共有する形なので、ここでは使う社員全員に席を用意する前提で計算しています。
ChatGPT BusinessとClaude Teamの場合
ChatGPT Businessのスタンダードシートは、年払いで1人あたり月20ドル、月払いで月25ドルです。Claude Teamのスタンダードシートも、年払いで月20ドル、月払いで月25ドルと表示されています。どちらも同じ単価なので、人数ごとの会社の出費を並べてみます。
- 10人:年払いで年2,400ドル(月払いなら月250ドル、年3,000ドル)
- 30人:年払いで年7,200ドル(月払いなら月750ドル、年9,000ドル)
- 50人:年払いで年12,000ドル(月払いなら月1,250ドル、年15,000ドル)
- 100人:年払いで年24,000ドル(月払いなら月2,500ドル、年30,000ドル)
- 200人:年払いで年48,000ドル(ChatGPT Businessの場合。Claude Teamは2〜150名のチーム向けと案内されています)
円に直すと、1ドル=150円で計算した場合、30人の年払いで年108万円、10人なら年36万円となります。表示は米ドルで税の記載はないため、ここでは税を足さずに計算しました。ChatGPT Businessはワークスペースごとに2席以上が必要で、誰にも割り当てていない席にも、請求サイクルの開始時に料金がかかってしまいます。支払いはクレジットカードかデビットカードで、セルフサービスのBusinessワークスペースでは請求書払いや銀行振込は使えないと案内されています。2026年8月24日からは、1つのサブスクリプションで持てる有料の席が合計200席までになりました。全社分の席を先に買うより、ボットを使う社員の数を確かめてから席を足していくほうが無駄は出にくいでしょう。
GemとMicrosoft 365のエージェント ビルダーの場合
GemやMicrosoft 365のエージェント ビルダーは、すでに契約しているGoogle WorkspaceやMicrosoft 365の中で作れるため、ボットのためだけの新しい契約が要らない場合があります。ただし、SharePointなど社内のデータを読ませるMicrosoftのエージェントが従量課金になる点は、先ほど触れたとおりです。いまの契約で何が使えるかは、管理画面と各社の公式ページで確かめてから見積もってください。
専用製品・自作の場合
社内問い合わせ向けの専用製品は、料金を公開していないものもあり、見積もりを取って比べる形になります。自社で一から作る場合は、利用料のほかに、作る人と直し続ける人の手間が費用に加わります。社員10〜200名の会社が最初の1本を試すなら、すでに使っている法人プランの中で作り、効果を見てから専用製品と比べる順番が無理のない進め方でしょう。法人プランの料金の詳しい内訳は、ChatGPTの法人プランの料金の記事で整理しています。
※料金・提供終了日・画面の名前は、2026年10月時点で各社の公式ヘルプ・料金ページに表示されている内容です。円の金額は1ドル=150円で計算した参考値で、税は含めていません。
専用製品を選ぶ場合に比べるところ
問い合わせの量が増え、法人プランのボットでは追いつかなくなってきたら、社内問い合わせ向けの専用製品を検討する段階です。製品ごとの違いは冒頭で案内した比較の記事に任せ、ここでは比べるときの見どころだけを挙げます。
選定ポイント(目的・データ連携・セキュリティ・使いやすさ)
- 目的に合っているか。社員の質問に答えるだけでよいのか、申請の受け付けや担当への引き継ぎまで任せたいのかを先に決めます。
- 社内の文書をどう読み込ませるか。ファイルを上げるだけか、社内の共有フォルダとつなげられるかで、更新の手間が変わります。
- 情報の扱い。入れた文書や質問が学習に使われないか、誰がどの答えを見られるかを分けられるかを確かめます。
- 使いやすさ。社員が普段使っている画面から聞けるか、スマートフォンからも使えるかを見ます。
- 料金の形。利用者の人数で決まるのか、質問の数で決まるのかによって、増えたときの出費が変わります。
Teams・Slackとの連携
TeamsやSlackなど、社員が毎日開いているビジネスチャットの中で質問できる形にすると、わざわざ別の画面を開く手間がなくなります。連携に対応しているかどうかと、その範囲は製品ごとに違うため、比べるときに各社の公式ページで確かめておきたい項目です。法人プランで作ったボットをチャットツールにつなげられるかどうかも、サービスと契約によって変わります。
社内向け専用製品の例
社内向けの専用製品には、株式会社マネーフォワードが運営する「HiTTO」のように、社内向けのAIチャットボットとして提供され、質問の数による課金はないと案内している製品があります。PKSHAの製品は2025年8月5日から「PKSHA ChatAgent」へ名称が変わり、社内の問い合わせ対応向けには別に「PKSHA AIヘルプデスク」が用意されています。どちらも料金は公開されていないため、見積もりの段階で、自社の問い合わせ件数と利用人数を伝えて比べてみましょう。
なお、申請の受け付けや別のシステムの操作までボットに任せたくなったら、それはチャットボットより一歩進んだAIエージェントの話になってきます。両者の違いと、社内問い合わせにどちらが向くかはAIエージェントとチャットボットの違いの記事で取り上げています。
答えさせない質問の線引きと、人へ渡す窓口
社内ボットを作るときは、答えられる質問と同じくらい、答えさせない質問を先に決めておくことが大切になります。ボットが答えてしまうと社員や会社に損が出かねない話題は、最初から人の窓口へ案内させます。
答えさせない質問の例
- 給与の額、賞与、人事評価、昇格や異動の個別の判断
- ハラスメントや人間関係の相談、内部通報
- 健康状態、病気による休職、家族の事情など、個人の事情を含む相談
- 懲戒や退職の手続きのうち、個別の判断が要るもの
- 契約や法律の解釈など、会社として責任を持って答える必要がある質問
これらは、規程の場所や手続きの入口を案内するところまでに留め、中身の判断は人に任せる形が安心でしょう。経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」も、AIに単独で判断させるだけでなく、適切なタイミングで人の判断をはさむ使い方を検討するよう示しています。ハラスメントの相談に、ボットが一般論で答える状態は避けてください。相談した社員が、会社に取り合ってもらえなかったと受け止めてしまうおそれがあるためです。
人へ渡す窓口の決め方
ボットが答えられなかったときの行き先は、質問の種類ごとに1つずつ決めておきます。
- 規程や手続きの質問で文書にないものは、その文書を持っている部署の窓口へ案内します。
- システムの不具合や操作の質問は、情シスの窓口へ回します。
- 給与・評価・健康・ハラスメントの相談は、人事の担当者か社内の相談窓口へつなぎます。
- 内部通報は、社内規程で決めている通報窓口だけを案内します。
窓口は個人名ではなく、部署のメールアドレスや社内チャットの窓口のように、担当が替わっても変わらない連絡先にしましょう。ボットの答えの最後に窓口の名前と連絡方法を毎回添えさせると、社員が迷わずに済みます。入力してよい情報の範囲などを社内ルールとして文書にまとめるなら、生成AIの社内ガイドラインの作り方が参考になります。社内で使うAIの安全面の確認項目は、生成AIのセキュリティチェックリストで一覧にしてあります。
社内への周知文ひな形と、使い始めの3問
社内ボットは、作っただけでは使われません。社員が何を聞いてよく、何を聞いてはいけないのかが分かる形で、短い周知文を出すところまでを1セットと考えましょう。
全社への周知文ひな形
次の文をたたき台にして、自社の名前と窓口に置き換えて使ってみてください。
件名:総務の質問に答える社内チャットボットを始めます
皆さま
総務部より、社内の問い合わせに答えるチャットボットの利用開始をお知らせします。
■ 利用開始日:〇月〇日(〇)
■ 使える場所:〇〇(会社で契約している生成AIのサービス名)の「総務Q&A」
■ 答えられること:経費精算の締め日と手順、備品の申請方法、会議室の予約ルール、有給休暇の申請手順
■ 答えられないこと:給与・人事評価・健康・ハラスメントなど個別の事情を含む相談は、ボットではなく下記の窓口へお問い合わせください
■ 入力しないでほしいこと:お客さまの個人情報、社員の個人情報、パスワード
■ 答えが違っていた・答えられなかったとき:答えの下に出る窓口か、総務部(社内チャットの総務窓口)へお知らせください。いただいた質問をもとに、答えの元になる資料を直していきます
■ 個人で契約しているAIサービスに、社内の規程や資料を入れないようお願いします。社内の質問はこのボットをお使いください
まずは次の3つの質問を試してみてください。
・経費精算の今月の締め日はいつですか
・会議室の予約はどこからできますか
・ボールペンなどの備品を追加で頼みたいときはどうすればよいですか
使い始めの3問の選び方
周知文に載せる3問は、件数の多かった質問から、確実に正しく答えられるものを選びます。最初に試した質問で外れると、社員はそのボットを二度と開かなくなってしまいます。3問を事前に何度か試し、答えと根拠の文書名がぶれないことを確かめてから出してください。
周知は1回で終わらせず、朝礼や部署の定例で一言触れてもらう、問い合わせへの返信の最後にボットの場所を添える、といった形で繰り返すと定着しやすくなります。人の窓口で答えるたびにボットの場所を添えると、周知は定着しやすいでしょう。周知文の中で、答えられなかった質問を知らせてもらう流れを書いておくことも忘れないでください。
最初の30日の運用チェックリスト
公開してからの最初の30日は、答えの抜けがいちばん多く見つかる時期になります。この期間は、答えられなかった質問を拾って文書を直す作業を、週に1回の決まった仕事にしてみてください。
Claudeのプロジェクトのように各自のチャットが本人にしか見えない仕組みでは、ボットに何が聞かれたかを担当者が直接見ることは出来ません。そのため、窓口に届く報告と、窓口に直接来た質問の2つを手がかりに直していく形になります。
導入手順の全体(目的決定から改善まで)
- 目的と対象の部門を決めます(例:総務の定型の質問を減らす)。
- 問い合わせログを集め、4つの判断で10〜20問を選びます。
- 答えの元になる文書をそろえ、足りない答えを書き足します。
- 法人プランの中でボットを作り、点検用の質問で試します。
- 数人の社員に1〜2週間ほど試してもらいます。
- 周知文を出して全社に公開します。
- 30日間、週に1回、報告と窓口の質問を見て文書と指示文を直します。
30日のチェックリスト
- 公開の前日:点検用の5問と使い始めの3問が、根拠の文書名つきで正しく答えられる文書にない質問で、人の窓口を案内できるかも同じ日に確かめます。
- 1週目:答えられなかった質問と、答えが違っていたという報告を1か所に書き出したボットの下に出る窓口に届いた分と、担当者に直接届いた分を合わせて数えます。
- 1週目:書き出した質問ごとに、文書を直すか、対象外にして人の窓口へ回すかを決めた迷う質問は対象外のまま様子を見ます。
- 2週目:窓口に直接来た質問のうち、ボットで答えられる質問を数えた答えられるのに窓口へ来続ける質問は、周知文でボットの場所を案内し直します。
- 2週目:答えさせない話題に、ボットが答えてしまっていないかを試した給与や評価、ハラスメントの相談を装った質問を投げ、窓口を案内するかを見ます。
- 3週目:規程や手順書の改定が、ボットの文書に反映されているかを確かめた文書の差し替えを誰がいつ受け持つかを、この時点で決め直します。
- 4週目:週ごとに見てきた3つの数を並べ、2本目の部門を決めた3つの数は、答えられなかったという報告の数、窓口に直接来たボットで答えられる質問の数、ボットの対象に足した質問の数です。
よくある失敗と対策(FAQ不足・使われない・担当不在)
つまずきやすいのは、答えの元になる文書が足りないまま公開し、外れた答えが続いて使われなくなる形です。これは公開前の点検で、文書にない質問まで含めて試せば、ある程度防げます。もう一つは、周知が1回きりで、社員がボットの存在を忘れてしまう形になります。部署の定例で周知文を読み上げてもらうなど、繰り返し目に触れる場を作りましょう。
3つ目は、ボットを直す担当が決まっておらず、規程が改定されても古い答えを返し続けてしまう形です。文書を直す担当者と、週に1回見る曜日を、公開前に決めておきましょう。担当を1人に寄せず、部門ごとに文書の持ち主を決めておけば、異動があっても止まりにくくなります。
社内ボットを、会社が管理する1つの環境で
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです。GPTs・Gem・Claudeプロジェクトの社内版にあたるカスタムプラスでは、よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有でき、社内文書RAGで自社の資料を読み込ませて答えさせることも出来ます。利用ログ・権限・モデルのON/OFFは管理者ダッシュボードで管理でき、学習非利用を標準で適用したうえで、会話履歴・利用ログは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
社内チャットボットは無料で作れますか?
これからChatGPTのGPTsで社内ボットを作っても大丈夫ですか?
社員が何人くらいから社内チャットボットを入れる意味がありますか?
社内チャットボットの答えが間違っていたら、どうすればよいですか?
個人情報を含む質問にもボットで答えさせてよいですか?
TeamsやSlackの中で使える社内チャットボットは作れますか?
まとめ
社内チャットボットは、社員からの社内の問い合わせに、規程や手順書をもとに自動で答える仕組みです。最初の1本は、問い合わせログから件数が多く、答えが文書に書いてあり、人の判断も個人情報も要らない質問を選んで作ると外れにくくなります。
作る場所は、すでに使っている生成AIの法人プランや、Google Workspace・Microsoft 365の中で始められる場合があります。ChatGPTのGPTsは2026年12月11日に提供終了予定のため、新しく作るならプラグインや他社の仕組みも含めて選んでください。費用は使う社員の席の数で決まり、ChatGPT BusinessかClaude Teamのスタンダードシートを年払いで30人分そろえると、年7,200ドルとなります。
公開したら、答えさせない話題と人の窓口を周知文に書き、最初の30日は週に1回、答えられなかった質問を拾って文書を直していきましょう。ほかの業務でのAIの使い方は、AI活用コラム一覧にまとめています。
