AIエージェントと生成AIの違い。答えを作って返す生成AIと、実行まで進めるAIエージェント

AIエージェントと生成AIの違いとは、作った答えを人に返して止まるか、目標に向けて自分で手順を組み、ほかのシステムを操作して実行まで進めるか、という働き方の違いです。エージェントは生成AIを頭脳として使う仕組みなので、別物というより、生成AIに段取りと手足を持たせた形と考えると分かりやすくなります。動く範囲が広がるぶん、間違えたときの影響、人が確かめる位置、料金の決まり方、社内の管理の仕方まで変わってきます。

AIエージェントと生成AIの違い|ひとことで言うと

生成AIは頼まれたものを作るところまで、AIエージェントはその先の実行まで受け持つ、というのがいちばん短い答えになります。両者の差は頭の良さではなく、道具につながっているか、手順を自分で決めてよいかという2点から生まれています。

定義の対比:生成AIは作って返し、AIエージェントは実行まで進める

生成AIは、指示(プロンプト)を受けて文章・画像・要約・表などを新しく作り、人に返す仕組みを指します。返ってきた答えをどう使うか、次に何を頼むかは、毎回人が決めることになります。一方のAIエージェントは、目標を受け取ると、そこに届くまでの手順を自分で組み立て、検索やファイル操作、ほかのシステムへの入力といった道具を使いながら作業を進めていきます。

総務省・経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)は、AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定めています。料理にたとえると、生成AIはレシピを書いて渡すところまで、エージェントは買い出しと調理まで済ませるところまでを受け持つ、という違いになるでしょう。定義の細かな読み方はAIエージェントとは?仕組みと生成AIとの違いにまとめました。

関係性:エージェントは生成AIを頭脳として使う

両者は並べて比べられることが多いものの、実際には入れ子の関係にあります。AIエージェントの多くは、生成AIの中核である大規模言語モデル(LLM)を頭脳に使い、次に何をするかを文章で考えさせる作りです。生成AIはエージェントの部品になり得ますが、生成AIだけではエージェントになりません。OpenAIが開発者向けに公開している手引き「A practical guide to building agents」も、LLMを組み込んでいても作業の進め方を任せていない単純なチャットボットや、1回だけ答えるLLMはエージェントではない、と線を引いています。

頭脳が同じでも、手足と段取りを与えるかどうかで呼び名が変わる、と覚えておいてください。

項目別の比較表(目的・起点・自律性・行動範囲・人の役割)

違いを項目ごとに並べてみましょう。

項目生成AIAIエージェント
目的頼まれたもの(文章・画像・要約・表)を作る渡された目標を達成する
動き出すきっかけ人の指示(プロンプト)1回ごと目標の受け取りのほか、決めた時刻やメールの着信などのきっかけ
手順を決めるのは人エージェント自身(結果を見て途中で組み直す)
使う道具基本は会話の中だけ(検索やファイルの読み込みに対応するものもある)検索、ファイル、メール、業務システム、他社サービスのAPIなど
結果の形画面に出る答え実行された作業(登録・送信・予約・更新など)
人の役割答えを読み、使うかどうかを決める目標と権限を渡し、影響の大きい操作の前に承認する
間違えたとき誤った答えが画面に出る誤った操作が実行される
料金の決まり方法人向けは1人あたりの月額が中心使った量に応じた課金が加わる例がある

会社として準備が変わるのは、表の下の3行にあたる、間違えたときの影響・人の役割・料金の部分になります。生成AIは答えを誤り、エージェントは操作を誤るという違いが、準備を分ける出発点です。

仕組み・種類・活用例を短く押さえる

この節では、違いを考えるうえで最低限いる知識だけを短く並べ、詳しい説明は別の記事に任せることにします。

仕組み:知覚→計画→行動→振り返りのループ

AIエージェントは、状況を読み取り、次の一手を計画し、道具を使って動き、結果を見て考え直す輪を、目標に届くまで回し続けます。生成AIは1回の指示に1回答えるだけなので、この輪を回す役目はいつも人の側にありました。

種類:反射型・目標ベース型・学習型・階層型など

教科書的な分け方には、決まった条件に反応するだけの反射型から、目標ベース型、効用ベース型、学習型、役割を上下に分ける階層型まで、いくつかの型が並びます。業務の道具を選ぶ場面では、型の名前よりも、どこまで自分で動くかを見るほうが役に立つでしょう。

活用例:問い合わせ対応・営業・社内ヘルプデスク

よく取り上げられるのは、問い合わせを受け付けて回答し、答えられないものを担当者へ引き継ぐまでを受け持つ使い方です。国のガイドラインの別添でも、顧客管理や営業支援のシステムと連携し、見込み客の管理から商談の日程調整、メール配信までを支えるエージェントが例として示されています。社内ヘルプデスクや在庫・配送の調整も、手順が多く判断が挟まるため候補に挙がりやすい仕事になります。実名の事例はAIエージェントの活用事例で、任せた範囲と人が確認した場面をあわせて紹介しています。

メリット:業務効率化・24時間稼働・意思決定支援

期待できるのは、手順の多い作業の時間短縮、夜間や休日にも止まらない受け付け、複数の資料を読み比べたうえでの判断材料づくりといった効果になります。ただしどれも、エージェントに渡した道具と権限の範囲の中でしか生まれない点に気を付けたいところです。仕組みの流れや種類ごとの例、身近な例はAIエージェントとは?仕組みと生成AIとの違い、身近な例を解説で詳しく扱いました。

エージェント型AI(エージェンティックAI)との違い

エージェンティックAIは、複数のAIエージェントが役割を分け、全体として自律的に目標へ向かう仕組みを指して使われる言葉です。人の確認で見ると、生成AIでは人が答えを1つずつ読み、エージェントでは人が操作の前に承認し、エージェンティックAIではエージェント同士のやり取りが人の目を通らない場面が増えていくと考えられます。別添も脚注で、自律性が高まるにつれ、人の監視だけでは高速なAI同士のやり取りに追いつけない場面が十分に想定されると注意を促しています。言葉の定義と脚注の説明はAIエージェントとは?仕組みと生成AIとの違いにまとめました。

チャットボット・RPAとの違いと自律性の段階

チャットボットは用意した回答集に沿って受け答えする仕組み、RPAは人が決めた画面操作を毎回同じようになぞる仕組みを指すことが多い言葉です。自分で決められる範囲で並べると、チャットボットやRPA(どちらも決めた範囲の外では動かない)→AIエージェント→エージェンティックAIの順に広がっていきます。とはいえ製品の呼び名はこの順番どおりとは限らず、名前だけ変えた例もあると指摘されているため、見分け方は後の節で確かめてみてください。

同じ仕事を任せると何が変わるか|バックオフィスの3例

違いがいちばんよく見えるのは、同じ仕事を両方に任せてみたときです。ここでは、社員10〜200名の会社の経理・総務でよくある3つの仕事を題材にしました。

同じ依頼を両方に出したときの対比(請求書の登録・月次の案内メール・社内規程の問い合わせ)

それぞれの仕事を、生成AIに頼んだ場合とエージェントに任せた場合に分けて、AIがやること、人がやること、最後の確認、間違えたときに起きることを並べます。

仕事任せる先AIがやること人がやること最後に誰が何を確認するか間違えたときに起きること
届いた請求書PDFを読み取り、会計ソフトへ登録する生成AI貼り付けたPDFから取引先名・日付・金額・税区分の候補を読み取り、表にする表を原本と見比べ、会計ソフトに自分で入力する入力する担当者が、原本と表を照らし合わせる表の数字が違っても、入力前に気づけば帳簿には入らない
AIエージェントメールから請求書を拾って読み取り、会計ソフトに仕訳の候補を登録する(書き込み)登録された一覧をまとめて確認し、承認する経理の責任者が、登録一覧と原本を照らし合わせる誤った金額や二重登録が帳簿に残り、支払いや月次の数字にまで広がる
顧問先・取引先への月次の案内メール生成AI案内文の下書きを作る宛先ごとに直し、自分で送信する送る本人が、送信前に読み直す下書きの誤りは送信前に直せる
AIエージェント宛先リストを読み、相手ごとに文面を変えて送信まで行う宛先リストと文面の型を渡し、送信前に承認する承認する担当者が、宛先と本文の組み合わせを確かめる別の相手向けの内容が届くなど、送った後は取り消せない
社内規程についての問い合わせ生成AI貼り付けた規程から、質問に当たる箇所を要約して返す質問した社員が、原文で確かめる質問した本人誤った要約を読んだ本人が誤解する(影響はその人の範囲)
AIエージェント社内チャットの質問を受けて規程を検索し、回答し、必要なら申請書の作成や担当者への引き継ぎまで進める回答の根拠の示し方と引き継ぎのルールを決め、回答の記録を定期的に見る規程を持つ部署が、回答の記録を点検する誤った回答が複数の社員に同時に広がり、誤った内容のまま申請が進む

※表は、任せ方によって人の出番がどう変わるかを示すために組み立てた例で、特定の製品の動きを示したものではありません。

3つの例に共通するのは、生成AIでは人が答えを使う前に必ず目を通すため、誤りが外へ出る前に止まりやすいという点です。エージェントでは、その目を通す場面が作業の途中から消えるので、確認を実行の前に置き直さない限り、誤りはそのまま帳簿や社外に届いてしまいます。任せる範囲を広げるほど、人の確認は作業の後ではなく実行の前に移す必要があります。

逆向きに見ると、影響が社内の1人で済む問い合わせ対応は、エージェントに任せても失敗の広がりが小さい仕事だと分かります。最初に試すなら、このように間違えても取り返しがつく仕事から選んでみてください。

エージェントが指揮し、生成AIが文章を作る組み合わせ

実際の業務では、2つを組み合わせて使う形もよく見られます。月次の案内メールなら、宛先ごとの材料集めと送信の段取りはエージェントが受け持ち、文面を書く部分では生成AIの得意分野がそのまま生きることになります。

Anthropicは、決まった道筋に沿ってLLMと道具を動かす仕組みを「ワークフロー」、LLMが自分で進め方と道具の使い方を決める仕組みを「エージェント」と呼び分けています。毎月同じ流れで進む仕事なら、流れは人が決めておき、文面づくりだけを生成AIに任せるワークフローで足りる場合も少なくありません。

間違えたときに起きることの違い

生成AIの誤りは画面の上で起き、エージェントの誤りは帳簿やメールの送信先など、会社の外側にまで届くという違いがあります。国のガイドラインの別添は、同じリスクの項目の中に生成AIの例とエージェントの例を並べて書いており、比べるとその差がよく分かります。

出力の誤りと行動の誤り(ハルシネーションと予測できない動作)

リスクの項目生成AIで起きることAIエージェントで起きること
誤った出力事実と異なることをもっともらしく答える(ハルシネーション)自律的な動作の中で、人の意図しない商品の注文やファイル削除などの動作を行う可能性がある
機密情報の流出入力した機密情報が、AIの出力などを通じて流出するリスクがある脆弱性を突いた攻撃などで挙動が不正に操作され、内部データが意図せず外部に送信される可能性がある
攻撃される範囲(別添は、エージェントやマルチモーダルな生成AIなど、扱う情報が複雑なシステムほど高まると説明)入力の経路や外部との連携が増え、攻撃される範囲が広がる
原因の切り分け(別添は、マルチモーダルな生成AIやエージェントなど、構成が複雑なシステムほど難しくなると説明)構成が複雑なため、保守やトラブルの原因調べが難しくなる場合がある

※総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」別添(2026年3月31日)の19ページと21ページの記述を要約して並べたものです。2026年9月26日に原文を確認しました。

この違いを、Webアプリの安全対策で知られる非営利団体OWASPは、LLMアプリの主要な弱点をまとめた一覧(2025年版)の6番目「Excessive Agency(過剰な行動権限)」として整理しています。LLMの出力が予想外だったり曖昧だったり、誰かに操作されたりしたとき、それに応じて害のある操作が実行されてしまう弱点を指す言葉です。原因は、必要以上の機能、必要以上の権限、必要以上の自律性のどれか、または組み合わせにあると説明されています。

生成AIの誤りは、人が読めば使う前に止められる誤りでした。エージェントの誤りは、操作が実行された後に見つかる誤りになりやすく、見つけたときには注文やメールがすでに相手に届いていることもあるでしょう。

情報漏えい・不正アクセス:漏れ方が変わる

生成AIで情報が漏れる経路は、主に社員が機密情報を入力してしまうことにあります。別添も、ルールが未整備の会社では、社員が会社の管理の外で一般向けの生成AIを業務に使い、リスクの高い使い方をするおそれがあると指摘しています。

エージェントでは、これに別の経路が加わります。エージェントが読んだメールやWebページに紛れ込んだ指示に従ってしまうと、社員が何も入力していなくても、つながっている社内データが外へ送られるおそれが出てきます。どこまで読ませ、どこへ送れるようにするかという接続の設計そのものが、漏えい対策の中心になっていきます。攻撃の手口と管理画面での絞り方はAIエージェントのセキュリティ対策で詳しく説明しました。

責任の所在と判断のブラックボックス化

生成AIの答えを使った結果は、使うと決めた人の判断として扱いやすいものです。エージェントが途中で重ねた判断は、後から記録をたどらないと、どの時点で何を根拠に決めたのかが見えにくくなってしまいます。

同じ基準で運用していても、モデルの確率的な性質から場面によって異なる判断を下すことがある、というのが別添の指摘です。構成が複雑なシステムほど、トラブルの原因を切り分ける難しさが増すとも書かれています。誰の権限で動かしたのか、どの操作を誰が承認したのかを記録に残しておくことが、後で説明を求められたときの拠り所になります。

エージェントに進む前に、毎日使うAIの漏れ口を絞る

漏れ口を絞る最初の一歩は、社員が毎日使う生成AIを会社の契約と設定にそろえることです。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

人が確かめる位置が、出口から入口へ移る

生成AIでは答えを使う前(出口)に人が読み、エージェントでは操作を実行する前(入口)に人が承認する、というのが確認の位置の違いです。エージェントは人の許可を求めずに動くものだと説明されることもありますが、会社で使う場合は、どこで止めて人に戻すかを先に決めておくのが基本となります。

人が最終判断・承認する場面:失敗の上限と取り消せない操作

OpenAIの手引きは、人の介入が必要になる代表的な場面として2つを挙げています。1つ目は、やり直しや操作の回数に上限を設け、それを超えたら人に引き継ぐ場面です。2つ目は、慎重さを要する操作、取り消せない操作、影響の大きい操作で、例として注文の取り消し、高額の返金、支払いが示されています。こうした操作は、エージェントの信頼性が確かめられるまで人の監督の下に置くのが望ましい、という考え方です。

Anthropicも、作業の終わり方として繰り返しの回数の上限などの停止条件を入れておくのが一般的だと説明しています。OWASPの一覧でも、影響の大きい操作の前に人が承認する仕組みが対策の1つとして挙がっているほどです。OpenAIの手引きが道具ごとの危うさを見極める材料として挙げる、読むか書くか、取り消せるか、必要な権限、金銭的な影響の4点を使うと、承認を挟む操作は次のように整理出来ます。

操作の例読むか書くか取り消せるか必要な権限金銭的な影響(社外への影響も含む)承認の目安
社内文書を検索して要約する読むだけ取り消す必要がない社内文書の閲覧権限なし承認なしで任せてよい
会計ソフトに仕訳の候補を下書きとして登録する書き込む削除して戻せる会計ソフトの登録権限帳簿に残るまとめて事後に確認する
顧問先・取引先へメールを送る書き込む(送信)取り消せない送信するメールアカウントの権限社外に出る送信前に1通ずつ、または一覧で承認する
振込・支払いの登録、返金書き込む取り消しにくい振込・支払いの登録権限お金が動く必ず実行前に承認する
ファイルやデータの削除書き込む戻せない場合がある削除できる権限業務が止まるおそれ必ず実行前に承認する
同じ操作のやり直しが続く――――回数の上限で止めて人に戻す

※承認の目安は、OpenAI「A practical guide to building agents」が挙げる判断材料と人の介入が必要な場面(2026年9月26日確認)をもとに、社内での運用に置き換えた一例です。

承認を置いたら、承認する人が内容を読まずにボタンを押さない仕組みまで考えておきましょう。別添は、人が最終判断する場面でも、AIの判断を過度に信頼して自らの確認を怠ってしまう自動化バイアスに注意を促しています。読まずに押す承認は、承認がないのと同じ結果を招いてしまいます。承認の件数を絞り、本当に止めるべき操作にだけ承認を残すほうが、確認の質は保ちやすくなるはずです。

その仕事はエージェントにする価値があるか|判断表

エージェントは何でも任せられる上位版ではなく、向く仕事と向かない仕事がはっきり分かれる道具です。開発元が公開している手引きを読むと、むしろエージェントにしないという判断を先に勧めていることが分かります。

向いている仕事の使い分け:単発の作成は生成AI、複数手順の継続業務はエージェント

OpenAIの手引きは、エージェントを検討すべき仕事の条件として3つを挙げています。例外の多い込み入った判断が要ること(例として顧客対応での返金の承認)、ルールが多く複雑になりすぎて保守しにくいこと、文書や会話など形の決まっていない情報に大きく頼ることの3つです。作る前にこの条件をはっきり満たすかを確かめ、満たさなければ決まった手順で動く仕組みで足りるかもしれない、とも書かれています。

Anthropicが「Building effective agents」(2024年12月19日公開)で勧めるのも、できるだけ単純な解決策から始め、必要なときだけ複雑にするという進め方です。同社によれば、そもそもエージェントを作らないことも選択肢の1つになります。調査会社Gartnerのアナリストも2025年6月25日の同社の発表の中で、判断が要る場面にはエージェント、決まった流れには自動化、簡単な調べものにはアシスタント、という使い分けから始めるよう述べています。

上から順に確かめること当てはまる場合当てはまらない場合
1回頼んで答えをもらえば終わる仕事か(文案・要約・翻訳・アイデア出し)生成AIで足りる次の問いへ
手順がいつも同じで、例外が少ないか決まった手順の自動化(RPAやワークフロー)で足りる次の問いへ
途中で判断が要り、例外の扱いが多いかエージェント向きの条件1下の2つを確かめる
ルールが多すぎて、手順書では保守しきれないかエージェント向きの条件2下の問いを確かめる
書類・メール・会話など、形の決まっていない情報を読むかエージェント向きの条件3条件が1つもなければ、エージェントにしない
間違えたとき取り消せて、影響の大きい操作の前に承認を挟めるか小さく試す価値がある承認と止め方を先に用意する

※条件1〜3はOpenAI「A practical guide to building agents」の記述、上から2つの問いの順番はAnthropic「Building effective agents」とGartnerの発表(2025年6月25日)の考え方をもとに組み立てています。

単発で終わる作成・要約・草案は生成AIに、複数の手順を毎日くり返し、途中の判断が要る継続業務はエージェントに、と分けると迷いにくくなります。条件を満たさない仕事までエージェントにすると、費用と確認の手間だけが増えてしまいます。

エージェントと名乗る製品の見分け方(エージェント・ウォッシング)

Gartnerは、エージェント型AIのプロジェクトの40%超が、費用の高騰、事業価値の不明確さ、リスク管理の不足を理由に、2027年末までに中止されると予測しています(2025年6月発表)。同じ発表では、AIアシスタントやRPA、チャットボットといった既存の製品を、実質的なエージェント機能を持たないままエージェントと呼び替えるエージェント・ウォッシングが起きていると指摘しています。数千あるとされるエージェント型AIの提供元のうち、実態を伴うのは約130社にとどまるというのが同社の推定です。

いずれも調査会社の見立てで、将来の数字は予測にあたります。それでも、名前だけで選ぶ危うさを知るには十分な材料でしょう。製品の説明を読むときは、次の3点を確かめてみてください。

  • 目標を渡すと、複数の手順を自分で組んで進めるか(1回答えて終わるなら、中身は生成AIの使い方)
  • 外部のシステムやファイルに書き込めるか、読むだけか(どちらなのかで確認の設計が変わる)
  • どこで人の承認を挟めるか、途中で止める手段があるか

料金の決まり方の違い|1人あたりの月額に、使った分が加わる

生成AIの法人向けプランは1人あたりの月額料金が中心ですが、エージェントは動いた量に応じて費用が増える形が加わりやすくなります。同じ依頼でも、エージェントは裏側で何度も考え直し、道具を呼び出すため、処理する量そのものが多くなるからです。

導入・運用コストと計算資源の違い

Anthropicは自社の研究機能の開発記録(2025年6月13日公開)で、自社のデータでは、エージェントはチャットのやり取りに比べておよそ4倍、複数のエージェントを連携させる仕組みではおよそ15倍のトークン(AIが処理する文字の単位)を使うと述べています。同社が自社のデータとして発表した値で、第三者が検証した数字ではありません。同社は別の記事で、エージェント型のシステムは性能と引き換えに速度と費用を払うことが多いとも書いています。

料金の仕組みにも、この違いははっきり表れます。Microsoftの大企業向けCopilotの料金ページでは、対象のMicrosoft 365のサブスクリプションを持つ利用者はMicrosoft 365 Copilot Chatを追加料金なしで使える一方、Copilot Chatだけを使う場合のエージェントの使用は従量課金制で、使うにはAzureのサブスクリプションが必要と表示されています。有料のMicrosoft 365 Copilotのライセンスを持つ利用者は、支援用のカスタム エージェントを追加費用なしで利用できる、との記載もあります。同じ会社の製品でも、契約するライセンスによってエージェントの払い方が変わる例です。

※Microsoftの表示は、2026年9月26日に https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365-copilot/pricing/enterprise で確認した内容です。料金や条件は変わることがあります。

1人あたりの月額なら、人数を数えれば年間の費用が見通せます。使った分で払う仕組みでは、誰がどれだけ動かしたかで請求が変わるため、上限の設定と、どの部署の予算で動かすかを先に決めておく必要が出てきます。使った分で払う形では、費用は人数ではなく動かした回数と作業の重さで増えていきます。主要なエージェント機能の料金体系はAIエージェント比較、費用の管理の考え方は生成AIのコスト管理で扱っています。

社内管理の違い|入力のルールから、接続と権限のルールへ

生成AIの社内ルールは主に何を入力してよいかを決めるものでしたが、エージェントでは何につないでよいか、誰の権限で動くか、どの操作に承認が要るか、記録を誰がいつ見るか、どう止めるかまで決める必要が出てきます。

管理の項目生成AIで決めることエージェントで足すこと
情報入力してよい情報・いけない情報読ませてよいフォルダ・メールボックス・業務システム
権限誰に使わせるかエージェントが誰の権限で動くか(使う本人の権限の範囲に限る)
承認出力を使う前に人が読むどの操作に事前の承認が要るか、承認者は誰か
記録誰がいつ使ったかの記録何を読み、何を書き込み、何を送ったかの操作記録と、それを見る担当・頻度
停止アカウントの停止実行中の作業と予約した作業の止め方、止める権限を持つ人
接続先(原則として決めることはない)新しい接続先を足すときの申請と、使わなくなった接続の外し方

エージェントで足す項目の多くは、OWASPが先の弱点への対策として挙げている内容と重なります。呼び出せる機能を必要な分だけにする、接続先での権限を最小にする、使う本人の権限の範囲で動かす、影響の大きい操作は人が承認する、許可するかどうかの判断をLLMに任せず接続先のシステムの権限で効かせる、操作の記録を取って見張る、といった項目です。

総務や情報システムの担当の方は、既存の生成AIのルールを作り直す必要はありません。足りない項目を書き足す形で十分に間に合います。

社内規程に足す条文の例

既存の生成AI利用規程に書き足すなら、たとえば次のような条文が考えられます。

  1. (接続の許可)AIエージェントを社内のシステム・フォルダ・メールボックスに接続するときは、事前に情報システム担当の許可を得る。
  2. (権限)エージェントは利用者本人の権限の範囲で動かし、共有の管理者アカウントを使わない。
  3. (承認)社外への送信、支払い・返金の登録、データの削除は、実行前に担当者が内容を読んで承認する。
  4. (記録)エージェントの操作記録は会社の定める期間保存し、管理部門が定期的に点検する。
  5. (停止)異常に気づいた社員は作業を止め、定められた窓口へ直ちに連絡する。
  6. (個人アカウント)会社が認めていないAIサービスの個人アカウントに、社内のメールやフォルダを接続しない。

顧問先の資料を預かる会計事務所では、とくに接続先と送信の承認を先に決めておきたいところです。税理士法第38条は、税理士業務に関して知り得た秘密を、正当な理由なく他に漏らしたり盗用したりすることを禁じています。条文にAIの語はありませんが、外部へ送信できる経路を持つエージェントに顧問先のデータを触らせると、生成AIに文章を貼り付ける場合とは別の漏れ方が増えることになります。規程の全体の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方をご覧ください。

※税理士法第38条は、e-Gov法令検索(2025年10月1日施行の版)で2026年9月26日に原文を確認しました。

生成AIからAIエージェントへ進む順番

生成AIからエージェントへ進むには、いきなりエージェントを入れるのではなく、次の5つの段を順に上る形が無理のない進め方になります。前の段で作った記録や権限の仕組みが、次の段の安全装置として働くからです。

段階やること次へ進む目安
1. 生成AIを会社でそろえる会社の契約のアカウントを全社員に配り、入力を学習に使わせない設定と利用の記録をそろえる個人アカウントでの業務利用がなくなった
2. 繰り返し頼む仕事を固定するよく使う指示と手順を文章(プロンプト・手順書)にして社内で共有する同じ仕事の出来が人によってぶれなくなった
3. 読むだけのエージェントを試す調べもの・社内文書の要約など、書き込みや送信をしない使い方誤りの件数と、人が直した量が分かるようになった
4. 書き込みは承認付きで一部だけ下書きの登録やメール送信を、承認を挟んで限られた業務で任せる承認で止めた件数と理由が記録に残るようになった
5. 複数のエージェントを連携させる調べる・書く・確かめるを分担させる費用と効果を比べ、続けるかを判断出来る

この表は技術の進化の順ではなく、すでに生成AIを使っている会社が次に何をするか、という順に並べています。自社がいまどの段にいるかを確かめてから、次の段の準備に取りかかってみてください。

導入の進め方:目的を決め、小さく試し、効果を測る

どの段でも、目的を1つに絞り、対象の業務と部署を小さく決めてから試すのが基本です。OpenAIの手引きも、最初から複雑な構成で完全に自律したエージェントを作るより、段階的に進めたほうがうまくいくことが多いと書いています。Anthropicも、実際の業務に出す前に、影響が外に出ない試験環境で十分に試すことを勧める立場です。

効果は、処理した件数、かかった時間、人が直した割合、承認で止めた件数、使った量(費用)の5つで測ると、続けるかどうかを判断しやすくなるでしょう。任せる範囲を段階的に広げた企業や自治体の例はAIエージェントの活用事例にまとめてあります。

最初の一歩:毎日使う生成AIを、会社で安全に使える状態にする

順番表の1段目は、エージェントの話に入る前の準備に見えますが、実は後の段すべての土台になります。先に見た別添は、機密情報を扱うときは、企業向けの安全機能を備えたビジネス利用向けの対話型生成AIを使うよう勧めています。社員がそれぞれ個人のアカウントで生成AIを使っている状態のまま、社内のメールやフォルダにつながるエージェントを入れると、誰が何につないだのかを会社が把握出来なくなってしまいます。

そろえておきたいのは、次の段で必要になる土台です。会社の契約のアカウントを全員に配っておけば、後でエージェントを誰の権限で動かすかを、そのアカウントに結びつけて決められます。誰がいつどのAIを使ったかの記録を会社で持っておくことも、エージェントの操作記録を点検する体制の下地になります。入力を学習に使わせない設定を全員に同じようにかけておけば、エージェントに読ませる情報の範囲を決める話にも、そのままつなげることが出来ます。毎日の生成AIを会社の管理下に置くことが、エージェントに進むための最初の条件になります。会社が把握していない利用の実態はシャドーAI(野良AI)、学習させない設定はChatGPTに学習させない方法で確かめてみてください。

エージェントの前に、毎日使うAIを1つの契約でそろえる

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準適用し、管理画面では誰が・いつ・どのAIを使ったかを一覧でき、使わせるAIも会社が選べます。よく使う指示と手順は、カスタムプラスで社内限定のBOTにして共有できます。会話履歴や利用ログ、アカウントの管理は国内サーバー(AWSの日本リージョン)で行います。月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

ChatGPTはAIエージェントですか?
通常のチャットで質問に答えるChatGPTは生成AIとしての使い方で、エージェントにはあたりません。OpenAIのヘルプは、時間のかかる複数ステップの作業を進めて成果物を仕上げる「Work」をエージェントと説明しています(2026年9月時点)。同じChatGPTの中でも、機能によって答えるAIと動くAIに分かれると考えると整理しやすくなります。
AIと生成AIは同じですか?
同じではありません。AIは画像の認識や需要の予測なども含む広い言葉で、生成AIはその中で文章や画像などを新しく作るものを指します。AIという大きな円の中に生成AIがあり、その生成AIを頭脳にして道具を使い、実行まで進むのがAIエージェント、という入れ子の関係と考えると分かりやすくなります。
生成AIからAIエージェントに進むには、何から始めればよいですか?
まず、社員が毎日使う生成AIを会社の契約と設定にそろえるところから始めます。入力を学習に使わせない設定、利用の記録、全社員への配布がそろったら、繰り返し頼む仕事を手順書とプロンプトに固定し、読むだけのエージェントから試します。書き込みや送信を伴う使い方は、承認を挟んで一部の業務に限って広げていくのが無理のない順番です。
AIエージェントを使えば、生成AIは要らなくなりますか?
要らなくなりません。エージェントは生成AIを頭脳として使う仕組みで、文章を書く、要約する、案を出すといった部分はこれまでどおり生成AIの仕事です。1回頼めば終わる仕事は生成AIのほうが速く安く済むことが多く、手順が多く途中の判断が要る仕事だけをエージェントに任せる形が現実的です。
AIエージェントは人の許可なしに動くものですか?
設定次第です。目標を渡せば自分で手順を進めるのがエージェントの特徴ですが、会社で使う場合は、送信・支払い・削除など取り消せない操作の前に人が承認する形にするのが基本です。OpenAIの開発者向けの手引きも、取り消せない操作や影響の大きい操作は、エージェントの信頼性が確かめられるまで人の監督の下に置くよう勧めています。
AIエージェントの料金は、生成AIより高くなりますか?
使い方によって変わりますが、同じ依頼でも処理する量が増えやすい点は知っておきたいところです。Anthropicは自社のデータとして、エージェントはチャットの約4倍、複数のエージェントを連携させる仕組みでは約15倍のトークンを使うと発表しています。1人あたりの月額ではなく使った分で課金されるエージェント機能もあるため、上限の設定と予算の持ち方を先に決めておくと安心です。
社内規程は、生成AIのものとは別に作る必要がありますか?
別に作り直す必要はなく、既存の生成AIの規程に書き足す形で足ります。足す項目は、接続してよいシステムやフォルダ、エージェントが誰の権限で動くか、事前に承認が要る操作、操作記録の保存と点検、異常時の止め方と連絡先の5つが中心です。

まとめ

AIエージェントと生成AIの違いは、作った答えを人に返して止まるか、自分で手順を組んで実行まで進めるかにあります。エージェントは生成AIを頭脳に使う仕組みで、両者は対立するものではなく入れ子の関係です。

動く範囲が広がると、間違えたときの影響は画面の上から帳簿や社外へ広がり、人の確認は出口から入口へ移っていきます。料金も1人あたりの月額から、動かした量に応じた形が加わり、社内のルールには接続先・権限・承認・記録・止め方の項目が必要になってきます。

エージェントにする価値があるのは、途中の判断が多い、ルールが複雑、形の決まっていない情報を読む、といった条件を満たす仕事に限られます。進め方としては、毎日使う生成AIを会社の管理下にそろえ、繰り返しの仕事を手順にし、読むだけのエージェントから小さく試すのが近道になるでしょう。ほかの記事はAI活用コラム一覧からご覧ください。