
SNS運用のAI活用とは、投稿文や画像の下書き、投稿時間の見直し、コメントへの返信案づくりといったSNSの作業の一部を、生成AIに手伝ってもらう運用のことです。会社のアカウントで使うなら、AIに任せる範囲を決めるより先に、誰が確認して誰が承認するか、どのAIで何を作ったかを残す方法を決めておくことが大切になります。投稿は一度出すと会社の発言として残るため、下書きの速さよりも、後から説明できる状態のほうが効いてきます。総務や広報がSNSを兼任している会社を想定して、手順と社内ルールを順番に見ていきましょう。
SNS運用にAIが求められる背景
SNS運用にAIが求められる背景には、運用するSNSが増える一方で、担当する人を同じように増やすのは難しいという事情があります。X、Instagram、TikTok、YouTube、Facebook、LinkedInと、会社が持つアカウントは少しずつ増えがちです。それぞれ文字の長さも写真や動画の形も違うため、同じ告知でもSNSの数だけ作り直す手間がかかってしまいます。
社員10〜200名の会社では、専任の担当者を置かず、総務や広報の方が本業のかたわらでSNSを受け持っていることも少なくないでしょう。投稿のネタ探し、文章づくり、画像の用意、コメントの確認と、1本の投稿の裏側には細かな作業がいくつも並んでいます。この細かな作業のうち、下書きや言い換え、集計といった部分をAIに任せられれば、担当の方は内容の判断と確認に時間を回すことが出来ます。
一方で、会社アカウントの投稿は、個人の発信と違って会社の発言として受け取られます。AIで早く作れるようになった分だけ、確認と承認の決まりが追いつかないと、誤った情報や不適切な表現がそのまま出てしまうおそれがあります。AIを入れる前に、誰が確認して誰が承認するかを決めておくことが出発点になります。
SNS運用でAIに任せられる作業
SNS運用でAIに任せやすいのは、答えが1つに決まらず、人が最後に選んだり直したりできる作業です。反対に、事実や数字の正しさそのものは、AIに任せきりにできない部分になります。よく挙がる6つの作業を、任せ方の目安と一緒に見てみましょう。
投稿文・企画案の生成(AIは下書き、仕上げは人)
投稿文と企画案は、AIの手伝いを実感しやすい作業です。イベントの告知、新商品の紹介、採用情報といった素材を渡すと、切り口の違う下書きを短い時間で何本も出してくれます。ただし、出てきた文章はあくまで下書きで、会社の言葉として出せるかどうかは人が判断することになります。月ごとの企画案も、季節の行事や自社の予定を渡して候補を出してもらい、そこから選ぶ使い方が向いているでしょう。
画像・動画の生成と編集(字幕・台本・素材作成)
画像や動画では、アイキャッチの案づくり、短い動画の台本、字幕の書き起こしといった作業をAIに手伝ってもらうことが出来ます。実在の人物や自社の商品を写したように見える画像をAIで作る場合は、後の節で触れる著作権や各SNSの表示ルールにも気を配る必要があります。画像はAIで作ったものと撮影したものを混ぜて使うことが多いため、どの画像をどのAIで作ったかを記録に残しておきましょう。
ハッシュタグの提案
ハッシュタグは、投稿文を渡して候補を出してもらうと、自分では思いつかない言い回しが見つかることがあります。一方で、AIがそのタグの実際の使われ方を正しく知っているとは限りません。候補は各SNSの検索で使われ方を確かめてから採用するのが安心です。
最適な投稿時間の分析
投稿時間の分析は、各SNSの分析画面から書き出した数字をAIに渡し、反応の多い曜日や時間帯を整理してもらう使い方になります。AIが自分でアカウントの数字を見に行くわけではないため、元の数字を正しく渡すことが前提です。件数が少ないうちは偶然の差も大きく出るため、数か月分をまとめて見るようにしてみてください。
コメント・DMの自動応答と感情分析
コメントやDMでは、よくある質問への返信案を作ったり、届いたコメントを前向き・否定的といった感情ごとに分けたりする使い方があります。ただ、会社アカウントの返信を人の確認なしで自動送信するのは控えたほうがよいでしょう。言い回しのずれ一つで相手の気持ちを逆なでし、炎上のきっかけになってしまうこともあるためです。AIが作るのは返信の案まで、送るのは人、と線を引いておくことをおすすめします。DMの本文には個人情報が含まれることも多いので、AIに貼り付けてよいかは後の節の線引きに沿って判断しましょう。
効果測定レポートの自動作成
月ごとの効果測定レポートは、分析画面から書き出した数字をAIに渡して、伸びた投稿と伸びなかった投稿の違いを文章にまとめてもらう形が現実的です。まとめの文章は読みやすくなる一方、数字の読み違いが混ざることもあります。報告に使う前に、元の表と数字を1つずつ照らし合わせておくと安心でしょう。
SNSごとの使い分けとAIへの頼み方
同じ告知でも、SNSごとに読まれ方が違うため、AIへの頼み方も変えることになります。1つの素材から各SNS向けの形に書き分けてもらうと、作り直しの手間を大きく減らすことが出来ます。
- Xは、短い文で要点を先に伝える投稿や、お知らせの速報に向いています。AIには、要点を1つに絞った短い案を複数頼むと選びやすくなります。
- Instagramは、写真や画像が主役で、文章は写真の説明と補足にまわります。AIには、画像に添える説明文と、保存したくなる情報のまとめ方を頼むのが向いています。
- TikTokやYouTubeは動画が中心のため、AIには台本の下書き、冒頭で伝える一言、字幕の書き起こしを頼む使い方になります。
- FacebookやLinkedInは、会社の取り組みや採用、実績の紹介のように、少し長めの文章を載せやすい場です。AIには、事実を並べた素材を読みやすい順番に並べ替えてもらうと効果的です。
文字数の上限や画像の推奨サイズは各SNSの仕様で変わることがあるため、AIの答えをうのみにせず、投稿画面や公式のヘルプで確かめてから使ってみてください。SNSごとの違いを依頼文に書き込んでおけば、毎回の説明を省くことが出来ます。
汎用AIの用途別の使い分けと、複数AIで下書きを比べる手順
SNS運用でよく使われるChatGPT・Claude・Gemini・Perplexity・Canvaは、どれも文章や画像を扱えますが、使い心地には違いがあります。文章の言い回しの好み、長い資料の読み込み、出典を示しながらの調べもの、画像やデザインの仕上げと、場面によって手に取りやすいAIは変わってきます。実際に、調べものは出典のリンクを示してくれるAI、画像やバナーの仕上げはデザインツールのCanva、文章の下書きは言い回しが好みに合うAI、というように場面で分けて考えると選びやすいでしょう。
会社で使うときに見落としやすいのが、入力した内容がAIの改善に使われるかどうかの設定です。たとえばCanvaは、ビジネス向けの契約の内容はAI機能の改善に使わず、無料版とプロ版ではプライバシー設定に従うと、公式のトラストセンターで説明しています。ほかのAIでも、個人向けと法人向けで扱いが分かれていることがあるため、会社で使う前に各社の説明を確かめておきましょう。
各社はモデルの更新を続けており、どのAIが何を得意とするかの見立ても時期によって変わることがあります。ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityの4つの特徴と業務ごとの割り当て方は、主要4AIの違いと使い分けで詳しく紹介しています。
※Canvaのデータの扱いは、2026年9月26日時点で公式サイトのトラストセンター(プライバシー)に表示されている内容です。
同じ素材を複数のAIに渡して下書きを比べる手順
会社アカウントの投稿文づくりでおすすめしたいのが、同じ素材を複数のAIに渡して、出てきた下書きを並べて比べるやり方です。1つのAIだけに頼むと、そのAIの言い回しの癖がアカウント全体の色になってしまいます。複数の下書きを並べれば、言い回しの幅が広がるだけでなく、元の素材にない話が混ざっていないかにも気づきやすくなります。
- 素材メモを1つ作ります。日時・場所・対象・申込方法など事実だけを箇条書きにし、書いてはいけないこと(未公開の情報、言い切れない効果など)も添えます。
- 同じ依頼文と素材メモを、2〜3種類のAIにそのまま渡します。AIごとに頼み方を変えると比べられなくなるため、文面は変えません。
- 出てきた下書きを並べ、素材メモと1行ずつ照らし合わせます。素材にない日付・数字・効果の話が足されていたら、その案は外します。
- 残った案から、言い回しが自社らしいものを選び、人の手で直します。複数の案のよい部分を組み合わせてもかまいません。
- 採用した案を作ったAIと、比べたAIの名前を記録表に残します。
比べるときは、文章のうまさより先に、素材メモにない事実が足されていないかを見ます。AIによって事実の保たれ方に差が出ることがあり、その差が人の確認すべき場所を教えてくれます。複数のAIを1つの環境で使う考え方は、マルチAIの解説もあわせてご覧ください。
投稿の依頼文(プロンプト)のひな形
AIへの依頼文(プロンプト)は、毎回ゼロから書くより、会社で1つのひな形を決めて使い回すほうが品質がそろいます。プロンプトとは、AIに渡す指示の文章のことです。次のひな形は、素材メモを貼り付けて使う前提で作っています。
あなたは(会社名)の公式SNSアカウントの投稿文を下書きする担当です。 次の【素材】だけを使って、(SNS名)向けの投稿文を3案作ってください。 【条件】 ・【素材】にない日付、数字、効果、お客様の声は書かない ・効果を言い切る表現(必ず、絶対、No.1など)は使わない ・です・ます調で、やわらかく親しみのある書き方にする ・絵文字は1投稿に2つまで ・最後に、申込先や詳細ページへの案内を1文入れる ・各案の下に、事実として使った【素材】の項目を書き出す 【口調の決まり】 (呼びかけ方、一人称、使わない言葉、見本の投稿2〜3本を貼る) 【書いてはいけないこと】 (未公開の情報、社外秘の数字、個人名など) 【素材】 (日時・場所・対象・内容・申込方法などを箇条書きで貼り付ける)
最後の、使った素材を書き出してもらう条件がポイントになります。AIが素材にない話を足したときに、書き出しと本文を見比べるだけで気づけるようになるためです。ひな形は社内で共有できる場所に置いて、全員が同じものを使えるようにしておきましょう。
ブランドトーン・自分たちの言葉らしさを保つ決め方
AIに任せると文章は整いますが、どの会社も似たような言い回しになりやすいのが悩みどころです。自社らしさを保つには、アカウントの口調を短い決まりにして、ひな形の条件に書き込んでおく方法が効いてきます。
- 呼びかけ方(お客様、皆さまなど)と一人称(私たち、スタッフなど)
- 使う言葉と使わない言葉(業界の略語、流行語、強すぎる言い切り)
- 絵文字や記号の数と種類
- 過去に反応がよかった自社の投稿を2〜3本、見本として添える
見本の投稿を添えると、AIは言い回しの長さやリズムを寄せてくれることが多く、直す手間も減っていきます。それでも最後の一文や言葉選びは、担当の方が声に出して読み、自社の言葉として違和感がないかを確かめてみてください。
AIに入れてよい情報の線引きと入力データの扱い
AIに入れてよいかどうかは、その情報がすでに世の中に出ているかと、人に関わる情報かどうかで分けると判断しやすくなります。SNSの素材は外に出す前提の情報が多い一方で、公開前の新商品や、お客様とのやり取りが混ざりやすいのも特徴です。次の4つの区分を目安に、社内の決まりを作ってみてください。
- 自社サイトやプレスリリースで公開済みの情報(イベント情報、商品の説明、会社の取り組みなど)は、入れてよい区分として扱えます。
- 未公開の新商品やキャンペーンの情報は、会社で契約し、入力内容が学習に使われない設定を確かめた環境に限って入れる区分にします。公開日までは社外に出さない前提で扱います。
- お客様の写真、DMやコメントの本文、問い合わせの内容は、原則として入れない区分です。どうしても使うときは、名前や写っている人が分からない形に直してからにします。
- 氏名・連絡先・住所などの個人情報、社員の個人情報、取引先の非公開の情報は、入れない区分です。
個人情報については、個人情報保護委員会が令和5年(2023年)6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しています。そこでは、個人情報を含む指示文を入力する場合は、利用目的の達成に必要な範囲内であるかを十分に確認すること、が示されました。本人の同意なく個人データを含む指示文を入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合は法違反となる可能性があるため、提供事業者がその個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること、も求められています。お客様の写真やDMは、学習に使われないと確かめた環境でも、まずは入れない前提で考えましょう。この注意喚起は生成AIの利用を禁じるものではありませんが、入力先の規約や設定を会社の側で確かめる必要があることは読み取れます。社内ルール全体の作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で紹介しています。
※個人情報保護委員会の注意喚起は、2026年9月26日に同委員会の公式ページで確認した内容です。
担当者の個人アカウントでAIを使う問題
会社で使うAIを決めていないと、担当の方は自分で登録した無料版や個人契約のAIで投稿を作ることになりがちです。本人に悪気はなく、手元ですぐ使えるから使っているだけ、ということが多いのではないでしょうか。
ただ、個人のアカウントで作った場合、会社からはどのAIに何を入れたのかが見えません。入力した内容が学習に使われる設定のままでも、会社の側では確かめようがなくなってしまいます。担当の方が異動や退職をすると、過去の下書きや依頼文もその人のアカウントに残ったままとなります。
誤投稿が起きたとき、どのAIで何を作ったかをたどれないことが、個人アカウントの大きな弱点です。会社から見えないところでAIが使われる状態は野良AI(シャドーAI)と呼ばれ、SNS運用に限らずどの部署でも起こりうる問題になります。禁止するだけでは手元の便利さに負けやすいため、同じ使い方ができる環境を会社で用意し、そこで作ることを決まりにしてみてください。
投稿づくりに使うAIを会社で1つの環境にまとめれば、個人アカウントに頼らずに運用できます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
会社アカウントの社内承認フロー(起案・確認・承認)
会社アカウントの投稿は、起案・確認・承認の3つの役割に分けると、兼任の少人数でも無理なく回すことが出来ます。大切なのは人数ではなく、同じ人が書いて同じ人が出すという一人完結の形を避けることです。
- 起案は担当者が受け持ちます。素材メモを作り、AIで下書きを作って1案に仕上げ、使ったAIと依頼文を記録表に書き込みます。
- 確認は、別の担当者か上長が受け持ちます。素材メモと下書きを照らし合わせ、事実・表現・画像の3点を見ます。
- 承認は、部門長や経営者が受け持ちます。会社の発言として出してよいかを判断し、公開の可否を決めます。
2人しかいない会社なら、起案と確認を交代で受け持ち、承認は経営者にお願いする形でも十分に回ります。毎回の承認が負担になる場合は、定番のお知らせは確認までで公開してよい、新しい企画や数字を含む投稿は承認まで通す、というように投稿の種類で分けるとよいでしょう。
差し戻しの基準を先に決めておく
確認や承認で差し戻すかどうかを人の感覚に任せると、担当の方は何を直せばよいか分からず、やり取りが長引いてしまいます。次のどれかに当てはまったら差し戻す、と先に決めておきましょう。
- 素材メモにない日付・数字・効果・お客様の声が入っている
- 効果や成果を言い切る表現がある(必ず、確実に、誰でもなど)
- 未公開の情報や社外秘の内容が含まれている
- 人物や他社の商品、既存の作品に似た画像を使っている
- お客様や取引先が特定できる写真・文面が入っている
- 依頼して書いてもらった口コミ風の内容なのに、広告であることが分からない
- 記録表の使ったAI・入力した素材の欄が空いている
差し戻すときは、どの項目に当たったかを一言添えるだけで、次の下書きから同じ直しが減っていきます。
投稿ごとの記録表のひな形(誰がどのAIで作ったか)
投稿ごとの記録表とは、1本の投稿について、いつ・どのSNSに・どのAIで・何を入れて作り・誰が確認と承認をしたかを残す一覧のことです。公開した投稿は会社の発言として残り続けるため、後から問い合わせを受けたときに経緯を説明できる状態にしておくことが大切になります。表計算ソフトで、次の列を並べるところから始めてみてください。
- 投稿日と公開時刻
- SNS名とアカウント名
- 投稿の種類(お知らせ・採用・商品紹介・イベントなど)
- 使ったAI(サービス名とモデル名)
- 入力した素材(素材メモの保存場所と、個人情報を入れていないかの確認欄)
- 画像の出どころ(撮影・AIで作成・素材サイトなど)と、AI生成の表示をしたかどうか
- 起案者・確認者・承認者と、それぞれの日付
- 差し戻しの有無と理由
- 公開後の反応と、訂正や削除をした場合の記録
使ったAIと入力した素材の欄は、誤投稿のときに原因をたどる手がかりになります。手で書くのが続かない場合は、会社で使うAIの環境が利用ログを残せるかどうかも、選ぶときの確認点に入れておくとよいでしょう。記録はあくまで説明のためのもので、担当の方を責める材料にはしないと最初に伝えておくことも、続けるコツと言えます。
AIに丸投げせず人が最終確認する
AIで作った投稿は、どれほど自然な文章でも、公開前に人が最終確認することを決まりにしましょう。AIは文章を整えるのは得意でも、書いた内容が事実かどうかを保証してくれるわけではありません。見た目が整っているほど確認が甘くなりやすいため、チェックの項目を紙1枚に決めておくと安心でしょう。
事実確認(ハルシネーション・数字や条件の照合)
ハルシネーションとは、AIが事実と異なる内容を、もっともらしく書いてしまう現象のことです。SNSの投稿では、イベントの日付、価格、申込の条件、商品の効果といった部分に紛れ込むと、そのままお客様の誤解につながってしまいます。素材メモと下書きを並べ、日付・数字・固有名詞・条件の4つを1つずつ照らし合わせてみてください。素材メモにない数字が1つでもあれば差し戻すと決めておけば、確認の迷いも減っていきます。
公開前チェックリスト
- 素材メモにない日付・数字・効果が入っていない日付・価格・申込条件・固有名詞を、素材メモと1つずつ照らし合わせます。
- 効果を言い切る表現や、根拠のない比較がない必ず・確実・No.1などの表現は、根拠を示せない限り外します。
- 未公開の情報・社外秘・個人情報が含まれていない公開日前の商品名や、お客様が特定できる内容がないかを見ます。
- 画像が既存の作品や他社の商品に似ていないAIで作った画像は、似た作品がないかを画像検索などで確かめます。
- リアルに見えるAI画像・動画に、各SNSの表示をしているYouTube・TikTokはリアルなAI生成・改変コンテンツの開示を、Metaはフォトリアルな動画とリアルな音声の開示を求めています。
- 依頼して投稿してもらう内容に、広告であることの表示がある「広告」「PR」などの表示で、事業者の表示であることが分かるかを確かめます。
- 自社の口調の決まりに沿っている呼びかけ方、絵文字の数、使わない言葉を見ます。
- 記録表の使ったAI・入力した素材・確認者・承認者の欄が埋まっている空欄があれば、埋まるまで公開を待ちます。
ステマ告示と会社のSNS運用(AIで書いた投稿も同じ枠組みで考える)
ステルスマーケティング(ステマ)とは、広告であるのに広告であることを隠す表示のことで、令和5年(2023年)10月1日から景品表示法違反となっています。根拠は令和5年3月28日の内閣府告示第19号「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」で、規制の対象になるのは商品やサービスを供給する事業者(広告主)です。消費者庁の特設ページでは、企業がインフルエンサー等の第三者に依頼・指示するものも広告に含まれると説明されています。
会社のSNS運用で気をつけたいのは、公式アカウントの投稿よりも、第三者や社員の投稿を通じた表示です。消費者庁長官が定めた運用基準では、従業員の投稿が事業者の表示に当たるかは、地位・立場・担当業務・表示の目的などの実態から総合的に判断するとされています。販売や開発に係る役員、管理職、担当チームの一員など、販売を促進する立場の人が販売促進のために投稿する場合(会社が指示して投稿させる場合を含む)は、事業者の表示に当たる例として挙がります。第三者のSNSや口コミサイトに投稿させること、ECサイトのレビューを依頼することなども、事業者の表示の例に含まれます。表示を明瞭にする方法としては、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」のような文章が例として示されています。
告示と運用基準の原文には、AIという語は出てきません。原文は表示を作る手段で区別していないため、AIで書いた口コミ風の投稿も、人が書いた場合と同じ枠組みで考える必要があるというのが筆者の解釈です。たとえばAIにお客様の感想のような投稿文を作らせ、社員の個人アカウントや依頼先から投稿してもらう使い方は避けましょう。依頼して投稿してもらう場合は、広告であることが分かる表示を条件に入れておくことをおすすめします。
※告示・運用基準・特設ページの内容は、2026年9月26日に消費者庁の公式ページで確認したものです。
AIで作った画像と著作権(文化庁の考え方に沿った確認)
AIで作った画像をSNSに使うときは、既存の作品に似ていないかを確かめる手順を決めておきましょう。文化審議会著作権分科会法制度小委員会が令和6年(2024年)3月15日にまとめた「AIと著作権に関する考え方について」では、生成された画像などに既存の著作物との類似性と依拠性が認められ、権利制限規定の対象外である場合は著作権侵害になる、という整理が示されています。類似性とは創作的な表現が共通していること、依拠性とは既存の著作物をもとに創作したことを指します。
同じ資料は、AIの学習段階でその著作物が学習されていた場合、利用者が既存の作品を知らなくても、通常は依拠性があったと推認されるとしています。また、AIで生成することが適法に行える場合でも、SNSへのアップロードなどの利用まで直ちに適法になるわけではなく、場面ごとに適法性の判断が必要とされます。知らずに似てしまった場合でも侵害とされうる点が、画像を使う会社にとっての注意点です。なお、この資料自体は、法的な拘束力を持つものではないと断っています。
- 特定の作家名、作品名、キャラクター名、他社の商品名を指示文に入れない
- 生成した画像を画像検索にかけ、似た作品や写真がないかを見る
- 人物の顔が写る画像は、実在の人に似ていないかを複数人で確かめる
- ロゴや商標に見える形が入り込んでいないかを見る
- 使ったAIと指示文を記録表に残す
詳しくは生成AIと著作権、画像生成AIの選び方は画像生成AIの比較もご覧ください。
※文化庁の資料の内容は、2026年9月26日に文化庁の公式ページで確認したものです。
YouTube・TikTok・MetaのAI生成コンテンツの表示ルール
動画や画像をAIで作って投稿するときは、各SNSが定めるAI生成の表示ルールも確かめておく必要があります。2026年9月26日に公式のヘルプや発表を確認した範囲では、3社とも、実在のように見えるリアルな画像・動画・音声を主な対象にしている点で共通します(Metaの開示義務は動画・音声)。
YouTube
YouTubeのヘルプでは、実在の人物・場所・出来事を実際と異なるように見せるリアルなAI生成・改変コンテンツは、開示が必要とされています。一方で、美顔フィルタや色の調整、背景のぼかし、AIによる字幕の作成や台本づくりの手伝いなどは、開示の対象外です。繰り返し意図的に開示を怠ると、ラベルの手動での付与や、削除などのペナルティにつながる可能性があるとも書かれています。
TikTok
TikTokは2023年9月19日の公式発表で、リアルな画像・音声・動画を含むAI生成コンテンツにはラベル付けが必須であると案内しました。AI生成コンテンツに自動で「AI生成」のラベルを付けるテストの開始も、同じ発表で明らかにされています。
Meta(Facebook・Instagram・Threads)
Metaは2024年2月6日の発表で、フォトリアルな動画やリアルに聞こえる音声をデジタルで作成・改変した投稿には、開示のためのラベル機能を使うよう求め、怠った場合はペナルティを科すことがあると説明しました。ラベルの表示名は「AI info(AI情報)」で、画像などは業界標準のAIの指標を検出した場合か本人が申告した場合に付き、AIで修正・編集しただけと判断したものは、ラベルを投稿のメニュー内に移す形とされます。広告については、Metaの生成AI機能で一から作ったり大きく編集したりした広告に、三点メニュー内などに「AI情報」が表示されると案内されています。政治・選挙・社会問題に関する広告では、他社のAIツールを使った場合も含めて、デジタルで作成・改変したかどうかの開示が義務になります。
確認した範囲では、AIで書いた投稿文そのものにラベルを求める記述は見当たりませんでした。ただし、各社のルールは更新されることがあるため、投稿の前に最新のヘルプを確かめてみてください。
※確認先(いずれも2026年9月26日確認):YouTubeヘルプ「生成 AI コンテンツの使用に関する開示」、TikTok Newsroom「TikTok、AIが生成したコンテンツにラベル付けする新機能を発表」(2023年9月19日)、Meta Newsroom「Labeling AI-Generated Images on Facebook, Instagram and Threads」(2024年2月6日)と「Our Approach to Labeling AI-Generated Content and Manipulated Media」、Metaヘルプセンター「広告内のAI画像をMetaが特定してラベル付けする方法」。
誤投稿・炎上が起きたときの手順
誤投稿や炎上が起きたときは、慌てて消す前に、事実の確認と社内への報告を先に行う手順を決めておきましょう。消した投稿は画面の保存などで出回り続けることもあり、削除だけで終わらせると、かえって隠したように受け取られてしまうことがあります。
- 投稿の画面と、寄せられた反応を保存し、承認者に報告します。
- 記録表から、使ったAI・入力した素材・確認者と承認者をたどり、何が誤っていたかを確かめます。
- 事実の誤りなら訂正の投稿、不適切な表現なら削除とお詫び、というように対応を決めます。
- お詫びや訂正は、誤りの内容と正しい情報、今後の対応を短く書き、公式アカウントから出します。
- 原因がAIの下書きにあった場合は、依頼文のひな形や差し戻しの基準を見直します。
AIで作った下書きが原因だったとしても、公開したのは会社であり、お詫びの主語は会社になります。「AIが書いたので」という説明は、お詫びの中では避けたほうがよいでしょう。起きた後の対応の流れは、生成AIが原因の炎上と対策で詳しく紹介しています。
SNS管理ツールとAIツールの選び方
予約投稿や複数アカウントの管理をまとめたい場合は、SNS管理ツールの導入も選択肢に入ってきます。ただ、SNS管理ツールもAIツールも種類が多いため、機能の多さではなく、自社の目的に合うかどうかで選ぶのが近道になります。
SNS管理ツール(Buffer・Hootsuite・Sprout Social・SocialDogなど)の紹介と料金の見方
SNS管理ツールとは、複数のSNSアカウントへの予約投稿、コメントの確認、数字の集計などを1つの画面で行えるサービスのことです。Buffer・Hootsuite・Sprout Social・SocialDogといったサービスが、比較記事などで紹介されることがあります。料金の決まり方はサービスごとに異なり、改定されることもあるため、ここでは金額を挙げていません。比べるときは、月額だけでなく、何人で使えるか、いくつのアカウントをつなげるか、承認の機能があるかをそろえて見てみてください。
ツールの選び方(目的・対応SNS・料金・サポート)
ツールを選ぶときは、次の4つの順に確かめていくと迷いにくくなります。
- 目的は、予約投稿をまとめたいのか、分析を楽にしたいのか、返信の手間を減らしたいのかを先に決めます。
- 対応SNSは、自社が使っているSNSすべてに対応しているかを確かめます。
- 料金は、月額に加えて、人数やアカウント数が増えたときの変わり方を見ます。
- サポートは、日本語での問い合わせ窓口があるか、設定を手伝ってもらえるかを確かめます。
AIの機能が付いたツールでは、入力した投稿や数字がAIの改善に使われるかどうかも確認点に加えておきましょう。
無料プランと有料プランの違いを見るときの点
無料プランは、試しに使って自社に合うかを見るためのものと考えるのが無難です。無料プランには、つなげるアカウントの数や予約できる投稿の数、使える機能に制限があることが多く、会社での運用には足りない場面も出てきます。確かめたいのは、制限の中身に加えて、入力した内容の扱いが無料と有料で変わらないか、会社としての契約や請求書払いに対応しているか、という点になります。生成AIでも個人向けの無料版と法人向けのプランでデータの扱いが分かれていることがあるため、同じ目で確かめてみてください。
スモールスタートの進め方
最初から全部のSNSにAIを入れるより、1つのSNSと1種類の投稿から始めるほうが、決まりも定着しやすくなります。たとえばInstagramのお知らせ投稿だけをAIの下書きで作り、1か月ほど記録表をつけながら回してみましょう。1か月たったら、下書きにかかった時間、差し戻しの回数と理由、反応の変化を振り返り、ひな形と差し戻しの基準を直してから次のSNSに広げていくのがおすすめです。
兼任1〜2人で回す週次のSNS運用
総務や広報が兼任する会社では、毎日少しずつ触るより、週に1回まとめて作る日を決めたほうが本業とぶつかりにくいでしょう。素材集めから予約までを1週間の流れにすると、たとえば次のような形になります。
- 月曜は、前の週に社内で集めたネタから今週出す投稿を決め、素材メモを作ります。
- 火曜は、素材メモと依頼文のひな形を2〜3種類のAIに渡し、下書きを比べて1案に仕上げます。
- 水曜は、確認者が素材メモと照らし合わせてチェックリストで確認し、承認者に回します。
- 木曜は、承認を受けた投稿を各SNSやSNS管理ツールで予約し、記録表に予約日時を書き込みます。
- 金曜は、その週の反応とコメントを確認し、記録表の使ったAI・入力した素材の欄が埋まっているかを見ます。
2人で回すなら、起案と確認を週ごとに交代すると、同じ人が書いて同じ人が出す形を避けることが出来ます。急なお知らせが入ったときも、この流れを短く縮めて通せば、例外を作らずに運用を続けやすくなります。月に1回は記録表を見返し、差し戻しの多かった項目をひな形の条件に足していくと、下書きの質も少しずつそろっていくでしょう。
会社でSNS運用のAIを安全に使うには
SNS運用のAIを会社で安全に使うには、担当の方の工夫に任せるのではなく、使う環境そのものを会社で用意することが近道になります。ここまでの手順を支える環境として、次の条件を満たしているかを確かめてみてください。
- 会社で契約し、担当者が個人のアカウントを使わずに作業できる
- 同じ素材を複数のAIに渡して、下書きを比べられる
- 入力した内容が学習に使われない設定を、会社側で確かめられる
- 誰がいつどのAIを使ったかの利用ログを、管理者が確認できる
- 使えるAIや機能を、管理者が権限で絞れる
- 依頼文のひな形を社内で共有できる
SNSの投稿は、社外の方が読む公開物です。公開物を作る業務だからこそ、どのAIで作ったかを会社として後から確かめられることが欠かせません。社内全体のAIの使い方の決まりは生成AIの社内ガイドラインの作り方、点検の項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストもあわせて見てみましょう。
SNSの下書きは複数のAIで、利用ログは会社に
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです。会話の途中でもモデルを切り替えられるため、同じ素材から複数のAIで投稿文の下書きを作って比べることが出来ます。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理でき、よく使う依頼文はカスタムプラスで社内限定のBOTとして共有できます。画像・PDFの生成にも対応しています。月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
SNSの投稿文をAIで作ったら、AIで作ったと書く必要はありますか?
無料版のAIで会社の投稿を作ってもよいですか?
AIで作った画像をSNSに使っても著作権の問題はありませんか?
社員に自社商品の感想をSNSに投稿してもらうのは問題ですか?
コメントへの返信をAIで自動化してもよいですか?
兼任の1人だけでも承認フローは作れますか?
まとめ
SNS運用のAI活用は、投稿文や画像の下書き、ハッシュタグの候補出し、投稿時間やレポートの整理といった作業の手間を減らしてくれます。一方で、会社アカウントの投稿は会社の発言として残るため、AIに任せる範囲より先に、確認と承認の役割、差し戻しの基準、記録の残し方を決めておくことが大切です。同じ素材を複数のAIに渡して下書きを比べれば、事実の足し間違いにも気づきやすくなります。
入力してよい情報の線引き、ステマ告示、AI画像の著作権、各SNSのAI生成の表示ルールも、公開前のチェックリストに組み込んでおきましょう。担当の方の個人アカウントに頼らず、会社で用意した環境で作り、誰がどのAIで何を作ったかを残すことが、兼任の少人数でも続けられる運用につながります。法人のAI活用に関するほかの記事は、AI活用コラム一覧をご覧ください。
