介護記録のAI活用。利用者情報の線引きを決め、会社で管理する環境で記録文を整える

介護記録のAI活用とは、音声入力や文例選択、ChatGPTなどの生成AIを使って、サービス提供の記録や申し送り、家族への連絡文を短い時間で整えることです。利用者の心身の状況や病歴を扱う仕事なので、職員個人の無料アカウントではなく、入力が学習に使われない会社管理の環境を用意し、入れてよい情報の線引きを決めてから使うことが前提になります。そのうえで、AIの下書きは記録者が事実を確かめてから介護ソフトの正本に入力する流れを、事業所全体で揃えましょう。身体拘束や事故、虐待の疑いのように、AIに下書きさせないほうがよい記録もあります。

介護記録の負担という背景|手書き・転記・後回し・残業

介護記録は、サービスを提供するたびに書く決まりがあるうえ、ケアの質や家族への説明にも使われるため、どの事業所でも削りにくい仕事の一つです。訪問介護を例にとると、運営基準の第19条第2項が、提供した具体的なサービスの内容等を記録することを事業者に求めています。同じ基準の第39条第2項では、その記録を完結の日から2年間保存する義務も定められました。

現場の負担は、書く量よりも書く時間の置き場所にあります。ケアの合間に手書きのメモを取り、夕方にまとめて清書し、さらに介護ソフトや請求ソフトへ転記する、という流れの事業所は少なくありません。記録が後回しになると残業で片付けることになり、疲れた時間帯に書いた記録ほど、表現のばらつきや書き漏れが出やすくなってしまいます。

宮城県が掲載している実証事業の報告(オータス株式会社・アクアビット・ファクトリー株式会社、令和5年度先進的AI・IoT活用ビジネス創出実証事業)でも、介護記録の作成には多くの時間が費やされていると書かれています。同じ報告は、記録作成の課題として、専門用語が多いこと、文書表現に個人ごとのばらつきがあること、入力に時間がかかること、記録内容を分析・活用できていないことの4つを挙げていました。AIで減らせるのは、清書と転記と言い回しの調整にかかる時間です。何を見て、何をしたかという事実そのものは、これまでどおり職員が観察して書く必要があります。

※運営基準は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)です。条番号は訪問介護の規定で、他のサービス種別は準用規定や別の基準省令になります。2026年9月27日にe-Gov法令検索の原文で確認しました。

介護記録にAIを使うメリットとデメリット

介護記録にAIを入れるかどうかは、得られるものと、引き受けることになる手間を並べてみると判断しやすくなります。どちらも事業所の運営に直結する話なので、導入を決める前に本部と現場で同じ認識を持っておきたいところです。

メリット|清書と言い回しの時間が減り、記録の型がそろう

いちばん大きな変化は、ケアの合間に残したメモや音声を、記録の文章に整える時間が短くなる点にあります。職員は見たことを短く書き留めておけばよく、言い回しの調整や清書はAIの下書きに任せられます。書き終わりが早くなれば、夕方にまとめて書く流れを見直すきっかけにもなるでしょう。

書き方のばらつきが小さくなるのも助かる点です。宮城県の実証事業(令和5年度)で事業者がまとめた報告は、文書表現に個人ごとのばらつきがあることを記録作成の課題に挙げていました。事業所で決めた様式(SOAPやF-SOAIPなど)をAIへの指示に入れておけば、経験の浅い職員の記録も同じ型に寄せられます。

日本語の文章に慣れていない外国人介護職員を支えやすくなることも見逃せません。同じ報告は、開発の目的のなかで外国人就労者の活用に触れています。見たことを短い言葉で残してもらい、AIで記録の文に整えてから日本人職員が確かめる、という分担も考えられます。記録の型がそろうと、あとから読み返したり、利用者の状態の変化を追ったりするのも楽になります。

デメリット|誤りの確認、情報の扱い、準備の手間

AIの下書きには、事実と違う内容が混ざることがあります。個人情報保護委員会の注意喚起も、生成AIの応答結果には不正確な内容が含まれることがあると指摘しています。AIが書いた記録も、職員が読んで直し、自分の記録として仕上げる手順が欠かせません。確かめ方は運営指導と記録の保存から見たAI下書きの確認手順で紹介しています。

もう一つは利用者情報の扱いです。介護関係記録に書かれた病歴や障害の事実は要配慮個人情報にあたり、個人アカウントの生成AIは設定によって、入力した内容が学習に使われることがあります。どの情報なら入れてよいかは入れる・伏せる・入れない利用者情報の判断表で整理しました。

費用と準備の手間もかかります。ツールの利用料に加えて、入れてよい情報の線引きや職員への説明、確認の手順といった運用ルールを本部で決めておかないと、事業所ごとに使い方がばらけてしまいがちです。ルールのひな形は法人本部が決める導入手順と社内ルールのひな形に載せてあります。

介護記録に使うAIの種類|汎用型と特化型

介護記録に使うAIは、介護記録ソフトに組み込まれた特化型と、ChatGPT・Gemini・Claudeのような汎用型の生成AIの2つに分けて考えると整理しやすくなります。特化型は記録の正本と一体になっている点が強みで、汎用型は文章の整え方や点検の指示を自由に出せる点が強みです。どちらか一方を選ぶというより、正本は介護ソフト、文章づくりの補助は生成AIと役割を分ける事業所が多いでしょう。

音声入力で記録する

音声入力は、ケアの直後や移動中に話した内容を文字にして、記録の下書きにする使い方です。手が空かない場面でも記録を残せるため、夕方にまとめて思い出しながら書く時間を減らすことが出来ます。製品によっては、決まった順番で話すと記録の欄に振り分けるものや、話し方の決まりを設けずに文章に整えるものがあり、選ぶ前に実際の職員の話し方で試してみてください。

注意したいのは、居室や共用部で話すと、ほかの利用者の名前や様子が声に入ることです。音声データがどこに保存され、いつ消えるのかも、導入前に提供元へ確かめておく項目となります。

定型文・テンプレート・文例選択で書き方のばらつきを減らす

定型文や文例を選ぶ方式は、よくある場面の記録を選択肢から組み立てる仕組みです。書き方のばらつきが減り、新人でも一定の形の記録を残せるようになります。一方で、選択肢にない出来事や利用者の言葉は、自由記述で補う必要があり、文例だけで記録が完成するわけではありません。

介護ソフト・請求ソフトとの連携で転記をなくす

記録の手間のうち、同じ内容を別の画面へ書き写す転記は、仕組みを変えれば減らしやすい部分です。介護記録ソフトと請求ソフト、ケアプランのやり取りがつながっていれば、提供日や内容を二度入力しなくて済みます。汎用の生成AIで整えた文章も、最後は介護ソフトに入力して正本にする流れにしておくと、転記が1回で止まります。

LIFE(科学的介護情報システム)への提出

LIFEは科学的介護情報システムの略称で、利用者の状態やケアの内容のデータを提出し、フィードバックをケアの見直しに活かすための仕組みになります。厚生労働省のページでは、LIFEでのデータ提出を算定要件としている加算があることが示されています。介護記録ソフトの中には、日々の記録から提出用のデータを作りやすくする機能を持つものもあり、加算を取っている事業所ほど、記録と提出のつながりを確かめておきたいところです。

記録データの分析・可視化・検索

記録がデータとして貯まると、食事量や排泄、睡眠の変化をグラフで見たり、過去の記録から似た出来事を探したりすることが出来るようになります。状態の変化や事故につながりそうな兆しに早く気づくことが、分析型の製品が目指すところです。ただ、分析の結果は判断の材料であり、ケアの方針はカンファレンスで職員が決める、という線は変わりません。

申し送り・職員間の情報共有

申し送りは、記録の中から次の勤務者に伝えるべきことを抜き出す仕事でもあります。記録ソフトの共有機能や、記録を検索して要点を返す機能を使うと、口頭の申し送りで漏れた情報を拾いやすくなります。生成AIに要約させる場合も、元の記録を正本として残し、要約は伝達の補助にとどめてください。

ChatGPTなど汎用の生成AIで記録を作る

汎用の生成AIは、箇条書きのメモを記録文に整える、長い記録を要約する、不適切な表現を点検する、といった文章の仕事に向いています。介護記録ソフトを入れ替えなくても試せる手軽さがある反面、職員が個人のスマホと個人のアカウントで使い始めると、利用者の情報が会社から見えない場所に残ってしまいます。汎用型を使うなら、次の節のひな形と、後半の入力ルールをセットで配ることが条件になるでしょう。

メモや会話から記録文・連絡帳・サマリーをAIで文章化する

生成AIに記録を整えさせるときは、事実は職員が書き、並べ方と言い回しだけをAIに任せるのが基本です。以下のひな形は、利用者の名前や住所を入れずに使える形にしており、【】の部分を置き換えて使うことが出来ます。どのひな形にも、書かれていないことを足さないよう指示を入れているのは、AIがもっともらしい事実を作ることがあるためです。

メモを記録文に整えるプロンプトのひな形

  • ひな形1:箇条書きメモから記録文へあなたは介護記録の文章を整える担当です。次のメモを、サービス提供記録の文章に整えてください。
    ・利用者:Aさん(80代・女性)
    ・時刻と場面:【10時15分 入浴介助】
    ・見たこと・測ったこと:【体温36.4度、背中に赤み(直径2cm程度)】
    ・本人の言葉:【「今日はお湯がぬるいね」】
    ・職員の対応:【湯温を上げた、赤みを看護職員に報告】
    条件:メモにない事実、原因の推測、病名は書かないでください。本人の言葉はかぎ括弧でそのまま残してください。見たことと職員の判断は分けて書いてください。足りない情報があれば、文章を作る前に質問で返してください。
  • ひな形2:SOAPの枠で並べ替える次の記録を、S(本人や家族の言葉)、O(観察した事実・数値)、A(記録者の判断)、P(今後の対応)の4つに分けて並べ替えてください。元の文にない内容は足さず、どこにも当てはまらない文はそのまま最後に残してください。
    【氏名・生年月日・住所を消した記録を貼る】
  • ひな形3:F-SOAIPの枠で並べ替える次の記録を、F(着眼点。その場面を短く表す見出し)、S(利用者やキーパーソンの言葉)、O(観察・状態や他職種から得た情報)、A(記録者の判断・解釈)、I(記録者の対応)、P(当面の対応予定)の6つに分けて並べ替えてください。元の文にない内容は足さず、判断が入っている文はAに寄せてください。
    【氏名・生年月日・住所を消した記録を貼る】

F-SOAIPの6つの項目の説明は、前の節で触れた宮城県掲載の実証報告にあるプロンプトの定義に沿っています。SOAPとF-SOAIPのどちらを使うかは、事業所の記録様式に合わせて決めてください。

ひな形1の最後に質問で返させる指示を入れているのは、足りない情報をAIが推測で埋めるのを防ぐためです。足りない項目を先に質問させる指示を入れておくと、時刻や対応した職員の抜けに清書の前に気づきやすくなります。

連絡帳・家族へのお便りをつくる

家族への連絡帳やお便りは、記録より柔らかい言葉が求められるため、生成AIの言い換えが活きる文章です。医療・介護関係事業者向けのガイダンスでは、介護関係事業者の通常の業務で想定される利用目的の例に、家族等への心身の状況説明が挙げられています。そのうえで、ほかの利用者の名前や写真が混ざらないこと、体調を断定しないことの2点は、送る前に必ず確かめましょう。

  • ひな形4:家族への連絡帳次の今日の様子のメモを、ご家族向けの連絡帳の文章にしてください。200字以内で、やわらかい言葉にしてください。
    【氏名を消した今日の様子のメモを貼る】
    条件:ほかの利用者に関する内容は書かないでください。「治りました」「問題ありません」など体調を言い切る表現は使わず、見たことをそのまま伝えてください。受診や薬について勧める文は書かないでください。

送信前の確認者は、担当の職員とは別に、サービス提供責任者や生活相談員など1人を決めておくと安心です。写真を添える場合は、背景に写り込んだほかの利用者がいないかも、送る前に見ておきたい点になります。

ケース会議の議事録・サマリーを要約する

ケース会議の議事録や、1か月分の記録からモニタリング用のサマリーを作る作業も、要約が得意な生成AIに向いています。要約させるときは、元の記録の日付と内容を残したまま要点を抜き出すよう指示し、AIが元にない評価を書き足していないかを確かめてください。

  • ひな形5:1か月分の記録の要約次の【月】の記録から、食事・排泄・睡眠・活動・本人の言葉の5項目について、変化があった日付と内容を箇条書きで抜き出してください。元の記録にない評価や原因は書かないでください。変化がなかった項目は「記録上の変化なし」と書いてください。
    【氏名・生年月日・住所・被保険者番号を消した記録を貼る】

要約の結果は、元の記録と見比べながら担当者が読み、モニタリングの判断は担当者が自分の言葉で書き足すようにしましょう。AIの要約をそのまま計画の評価に使うと、元の記録にない言葉が正式な書類に紛れ込むおそれが出てきます。

外国人介護職員の記録を支える

母語や簡単な日本語で書いたメモを、正しい日本語の記録文に整える使い方は、外国人介護職員の負担を軽くする助けになります。宮城県掲載の実証報告でも、単語や短い文から記録を作ることや、外国人就労者の活用も可能になると書かれていました。

  • ひな形6:母語のメモを日本語の記録文にする次のメモは【ベトナム語など】で書かれています。内容を変えずに、介護記録として自然な日本語の文にしてください。数字・時刻・本人の言葉は元のメモのまま残し、意味が分からない語は訳さずに【確認】と書いてください。最後に、日本語の文を元の言語に訳し戻した文も付けてください。
    【氏名を消したメモを貼る】

訳し戻した文を本人に読んでもらい、自分の書いた内容と同じかを確かめてから記録に入れてください。元のメモも一緒に残しておくと、後で内容を確かめる必要が出たときに、誰が何を書いたかを追うことが出来ます。

介護記録のNGワードとダメな例|AIで点検する方法

介護記録のNGワードは、法令で一覧が決まっているものではなく、利用者の尊厳を損なう表現や、事実ではなく職員の決めつけを書いた表現のことを指して使われます。はっきりした公的な根拠がある例として、厚生労働省の「痴呆」に替わる用語に関する検討会の報告書(平成16年12月)は、「痴呆」という用語を侮蔑的な表現だとして、できるだけ速やかに変更すべきだと結論づけました。新しい用語としては「認知症」が最も適当だと報告されています。

それ以外の表現は、事業所ごとに言い換えの基準を決めて職員に配るのが現実的です。よく見直しの対象になるのは、次のような書き方でしょう。

  • 決めつけの言葉:問題行動、わがまま、不穏、拒否が強い、など理由や場面を書かずに評価だけを書いた表現
  • 命令・指示の言葉:食べさせた、座らせた、など職員が主語で利用者を動かす書き方
  • あいまいな言葉:様子を見た、変わりなし、いつもどおり、など何を見たかが分からない表現
  • 子ども扱いの言葉:ちゃん付けや幼児語での呼び方

ダメな例と言い換えの例を並べると、違いがつかみやすくなります。たとえば「夕方から不穏で、帰宅願望が強かった」は、「16時ごろから玄関の前を行き来し、『家に帰らないと』と3回話された」のように、時刻と行動と本人の言葉に分けて書き直せます。記録に残すのは職員の評価ではなく、見たこと・聞いた言葉・数値・時刻です。評価や判断を書くときは、その根拠になった事実と並べて書くと、読み手が同じ場面を思い浮かべやすくなってきます。

  • ひな形7:NGワードの点検次の介護記録を読み、①利用者の尊厳を損なう表現、②理由や場面を書かずに評価だけを書いた表現、③職員が主語で利用者を動かす書き方、④何を見たかが分からないあいまいな表現、の4種類に当たる箇所を抜き出してください。それぞれに言い換えの候補を1つ付けてください。元の記録にない事実は足さず、言い換えに必要な情報が足りない場合は「確認が必要な情報」として書き出してください。
    【氏名を消した記録を貼る】

AIの点検は見落としを拾う手がかりで、言い換えを採るかどうかは記録者が決めてください。点検の結果を研修で共有すると、事業所の言い換えの基準がそろっていきます。

個人アカウントの生成AIに利用者情報を入れると何が起きるか

職員が個人のアカウントで生成AIに利用者の情報を入れると、その情報が事業所の管理の外に出て、学習に使われるかどうかも会社から確かめられない状態になります。個人情報保護委員会は令和5年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で、個人情報取扱事業者に向けて2つの注意点を示しました。1つ目は、個人情報を含むプロンプトを入力するなら、特定した利用目的を達成するのに必要な範囲内かを十分に確認することです。2つ目として、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で扱われる場合には、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があると書かれました。

同じ注意喚起は、そうした入力をするなら、提供する事業者が個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。個人向けのサービスでは、この確認が職員一人ひとりの設定に任されてしまうのが問題です。OpenAIの公式ヘルプでは、ChatGPTのFree・Plus・Proを個人用ワークスペースで使う場合、データ共有はデフォルトで有効になっていると説明されています。学習に使わない設定に切り替えることは出来るものの、職員が切り替えたかどうかを事業所が一人ずつ確かめるのは難しいでしょう。

介護記録の中身は、要配慮個人情報に当たるものを多く含みます。医療・介護関係事業者向けのガイダンスでは、介護関係記録に記載された病歴、健康診断の結果、障害の事実などが、介護関係事業者で想定される要配慮個人情報の例に挙げられています。同じガイダンスは、介護関係記録を媒体の如何にかかわらず個人データに当たるものとしており、紙でも画面でも扱いは変わりません。

もう一つの問題は、記録の下書きが個人のアカウントに残ることです。職員が退職したあとも、個人のアカウントの会話履歴には利用者の情報が残り続けるおそれがあり、事業所には消すことも中身を確かめることも出来ません。利用者の情報を扱うなら、事業所が止められて中身を確かめられる環境で使うことが出発点になります。禁止するだけでは、便利さを知った職員が隠れて使い続けることになりかねず、同じことが出来る会社の環境を先に用意するほうが現実的な対策でしょう。

記録の下書きは、事業所が管理できる環境で

職員ごとの個人アカウントをやめ、学習に使われない環境を法人で1つに。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

入れる・伏せる・入れない利用者情報の判断表

生成AIに入れる情報は、入れない、伏せれば使える、そのまま使える、の3段階に分けて全事業所で同じ基準にすると、職員が迷わずに済むようになります。宮城県掲載の実証報告も、個人情報を含み外部に流出してはいけないデータと、外部に流出しても問題ないデータとで、使うAIを分ける考え方を示していました。以下は、会社で管理し学習に使われない環境で使う前提での区分です。

入れない情報

  • 氏名・生年月日・住所・電話番号・顔写真利用者本人を直接特定できる情報です。記録の清書を頼むときも、Aさん・80代女性のように置き換えてから入れます。
  • 介護保険の被保険者番号医療・介護ガイダンスでは、介護保険法に規定する被保険者番号等が個人識別符号の例として掲載されています。番号そのものは入れません。
  • 病名と服薬と住まいの組み合わせなど、組み合わせると個人が分かる情報一つずつは伏せていても、珍しい病名、特定の地区、家族構成が重なると、読む人によっては誰のことか分かってしまいます。
  • 家族関係の事情、経済状況、成年後見などの情報利用者本人だけでなく、家族の生活にも関わる情報です。
  • 身体拘束・事故・虐待の疑いに関する記録の原文事実の記録そのものが重く、扱いを誤ったときの影響も大きい記録です。詳しくは後の節で扱います。

伏せれば使える情報

  • 日々のケアの箇条書きメモ氏名を消し、時刻・行動・数値・本人の言葉だけにしたメモは、記録文に整える材料として使えます。
  • ケース会議の議事録出席者と利用者の名前を記号に置き換え、住所や病院名を消してから要約させます。
  • 苦情や相談の記録申し出た人と対象の利用者を記号に置き換えれば、返答の文案づくりに使えます。

そのまま使える情報

  • 記録の書き方の相談、文例、言い換えの候補利用者に関わらない一般的な相談は、そのまま入れて構いません。
  • 研修資料、マニュアル、公開されている行政資料運営基準や手引きの文章を、職員向けの言葉に直す使い方です。
  • 事業所の公開済みの案内文パンフレットやホームページに載せている文章の言い換えや翻訳に使えます。

迷ったときは、その文章が事業所の外に出たら利用者や家族が困るかどうかで判断するよう伝えると分かりやすいでしょう。判断に迷う情報を入れる前に相談できる窓口を決めておくことも、区分表と同じくらい大切になります。入力してはいけない情報の考え方はAIに入れてはいけない情報でも整理しています。

個人情報保護委員会の注意喚起と医療・介護ガイダンスの対応

生成AIを記録に使うときに確かめる項目は、個人情報保護委員会の注意喚起と、医療・介護関係事業者向けのガイダンスを重ねると、4つの問いにまとまります。ガイダンスは平成29年4月14日に個人情報保護委員会と厚生労働省が示したもので、令和8年4月に一部が改正されました。本文に生成AIについての記述はないため、ここでは既存の決まりを生成AIの使い方に当てはめて確かめる形をとっています。

4つの問いで、個人の無料アカウントと会社管理の環境を比べる

  • 問い1 利用目的の範囲内か注意喚起は、個人情報を含むプロンプトの入力が利用目的の達成に必要な範囲内かを確かめるよう求めています。職員の個人アカウントでは、何の目的で何を入れたかを事業所が把握できません。会社管理の環境なら、使ってよい業務と入れてよい情報を決めて配り、守られているかを後から確かめることが出来ます。
  • 問い2 学習に使われない設定か注意喚起は、提供事業者が個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。個人向けのプランでは既定で学習に使われる設定のものがあり、切り替えは職員任せになります。法人向けのプランや会社で契約するサービスでは、学習に使わないことを既定にしているものがあり、契約の時点で確かめられます。
  • 問い3 委託先として監督できるかガイダンスは、個人データの取扱いを委託する場合、安全管理措置の内容を契約に盛り込み、業務が適切に行われているかを定期的に確認することなどを求めています。個人の無料アカウントには、事業所と提供元との契約がありません。会社で契約するサービスなら、データの保存場所や再委託の有無を契約前に確かめることが出来ます。
  • 問い4 安全管理措置をとれるかガイダンスは、技術的な安全管理措置として、アクセス管理や個人データに対するアクセス記録の保存を挙げています。個人のアカウントでは、誰がいつ何を入れたかの記録が事業所に残りません。会社管理の環境なら、利用者・日時・利用したAIの記録や、退職者のアカウント停止を事業所の手で行えます。

この4つの問いに事業所として答えられるかどうかが、生成AIを記録に使ってよいかを考える目安になります。ガイダンスは、従業者の監督の対象に、雇用関係のある職員だけでなく派遣労働者なども含むとしており、パートや派遣の職員が使う場面も同じ基準で考える必要があります。

個人情報・セキュリティで確かめること(権限・委託先・契約条件)

記録ソフトでも生成AIでも、導入前に提供元へ確かめたい点は共通しています。次の項目を、見積もりを取る段階で質問してみてください。

  • 入力した内容や音声を、提供元のAIの学習に使うかどうか、使わない場合はどの契約書や規約に書かれているか
  • データを保存する場所(国内か国外か)と、保存する期間、解約したときの消し方
  • 再委託先の有無と、再委託する場合に事業所へ知らせる手続き
  • 職員ごとのアカウントと権限の分け方、退職者のアカウントを止める方法
  • 誰がいつ何を使ったかの記録を、管理者が見られるかどうか
  • 通信や保存時の暗号化、二要素認証などのログインの守り方

ガイダンスでは、認証について、記憶・生体情報・物理媒体のうち2つの独立した要素を組み合わせる二要素認証を採用することが望ましいとしています。答えが書面で返ってこない項目は、契約前に確かめておきましょう。

AIに下書きさせない記録|身体拘束・事故・虐待の疑い

身体拘束・事故・虐待の疑いに関わる記録は、AIに文章を作らせず、職員が事実をそのまま書くことをおすすめします。これらの記録は、運営指導や監査で確認されるうえ、書き方次第で事実の受け取られ方が変わってしまう記録です。

身体拘束の記録

訪問介護の運営基準では、身体的拘束等の態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由の記録が、2年間保存する記録の一つに挙げられました。厚生労働省老健局の「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和7年3月)は、切迫性・非代替性・一時性の3つの要件それぞれについて、なぜ満たしていると判断したのかを具体的に記録するよう求めています。再検討を行うたびに記録を加えることや、本人の状態と家族の意見も記録することが、同じ手引きのポイントに並んでいます。

手引きは、記録を運営指導や監査のときに提示できるようにしておく必要があるとも書いています。3つの要件の判断理由は、判断した職員の言葉で書き、AIに言い回しを整えさせないでください。AIが文章を滑らかにする過程で、判断の根拠があいまいな言葉に置き換わることがあるためです。

事故・ヒヤリハットの記録

事故の記録も、同じ運営基準で2年間保存する記録に含まれ、事故の状況と事故に際して採った処置を書くことになっています。運営指導の確認項目でも、事故状況と採った処置が記録されているかが確かめられます。発見した時刻、発見したときの状態、誰に連絡したか、どんな処置をしたかは、時系列で職員が書いてください。

虐待の疑いに気づいたとき

虐待の疑いは、記録を整えるより先に、事業所の手順に沿って報告する場面です。日本総合研究所が作成した「介護施設・事業所等で働く方々への高齢者虐待防止のためのポイント集」(令和8年3月・令和7年度老人保健健康増進等事業)は、介護従事者には虐待と思われる事態を発見した場合に市区町村等へ速やかに通報する義務があると説明しています。疑いに関わる出来事を生成AIに入れて相談することは避け、管理者と事業所の窓口に直接伝えるようにしましょう。

AIを使ってよいのは、職員が書き終えた記録の誤字や読みにくさを点検する場面までに限るのが無難です。その場合も、ひな形7のように事実を足さない指示を入れ、直した箇所は記録者が一つずつ採るかどうかを決めていくことになります。

運営指導と記録の保存から見たAI下書きの確認手順

AIで下書きした記録も、事業所の記録として運営指導で確認されるものになるため、下書きから正本までの流れを決めておくことが欠かせません。厚生労働省の「介護保険施設等運営指導マニュアル」(令和4年3月策定・令和6年7月改訂)の別添「確認項目及び確認文書」では、訪問介護のサービス提供記録について、提供した具体的サービス内容等が記録されているかを確認する項目があります。

同じマニュアルは、運営指導で確認する文書の範囲を、原則として指導を行う年度の前年度から直近までの実績としています。利用者の記録を確認する場合の対象は、特に必要と判断する場合を除き、原則として3名以内とされました。記録を電磁的記録で管理している場合は、画面上で内容を確認し、印刷した書類の準備は求めないようにと自治体向けに書かれています。

※保存年数は、訪問介護の運営基準では記録の完結の日から2年間です。運営指導マニュアルには、自治体が文書等の保存年限を2年から5年程度に定めている場合が多いとの記述があり、事業所の所在地の条例で年数が異なることがあります。2026年9月27日に厚生労働省の公表資料で確認しました。

AIの誤りを職員が確認して完成させる

生成AIは、メモにない出来事や数値をもっともらしく書き足すことがあります。個人情報保護委員会の注意喚起も、一般の利用者向けの留意点として、応答結果に不正確な内容が含まれることがあると書いています。確認の手順は、次の4段階にしておくと、職員が変わっても同じ形で回せます。

  • 1 記録者がメモを書く時刻、見たこと、測った数値、本人の言葉、対応した内容を、記録者自身が箇条書きで残します。
  • 2 AIに整えさせるひな形1〜3のように、事実を足さない指示を入れて記録文に整えます。
  • 3 記録者が元のメモと突き合わせる数字・時刻・本人の言葉が変わっていないか、メモにない言葉が増えていないかを確かめ、直します。
  • 4 介護ソフトに記録者名で入力する確定した文章を正本に入力します。AIとのやり取りの画面は正式な記録として扱いません。

AIとのやり取りの履歴を正本にしないのは、記録者と確定した日時が介護ソフトの側で残るようにするためです。正本がどこにあるかがはっきりしていれば、運営指導で画面を見せる場面でも迷わずに済むでしょう。電磁的記録については、運営基準の第217条が、書面で行うことが定められた作成や保存を電磁的記録で行えるとしています。

会社で安全に使うには|学習させない設定・ログ管理・職員への配布

介護事業所が生成AIを記録に使うなら、学習に使われない設定、利用の記録、職員への配布と停止の3つを、事業所の側で管理できる環境を選ぶことになります。OpenAIの公式ヘルプでは、ChatGPT Business・ChatGPT Enterprise・APIからの入力や出力は、デフォルトでモデルの改善に使われないと説明されています。こうした法人向けの契約であれば、職員一人ひとりが学習の設定を切り替える必要がなくなります。

※OpenAIの説明は、2026年9月27日に公式ヘルプ(日本語版)で確認したものです。学習の扱いはサービスとプランごとに異なるため、契約前に各社の公式の説明をご確認ください。学習させない設定の詳しい手順はChatGPTに学習させない方法で解説しています。

ログ管理で確かめられること

利用の記録が残る環境なら、誰が、いつ、どのAIを使ったかを管理者が後から確かめられます。ガイダンスが技術的な安全管理措置に挙げるアクセス記録の保存や、不正が疑われる異常な記録の定期的な確認にも、この記録が役立つはずです。月に一度、利用の多い職員と使われていない事業所を見るだけでも、ルールが届いているかどうかの手がかりになります。

職員への配布と停止

アカウントは入職の日に事業所が発行し、退職や異動の日に止める決まりにしておきます。個人のアカウントでは、事業所が止めることも、残った会話を消すことも出来ません。人事の手続きと同じ日にAIのアカウントも処理すると、止め忘れを防ぎやすくなります。

複数のAIを使い分ける

生成AIには得意な仕事の違いがあり、記録文を整えるのが得意なもの、長い議事録の要約が得意なもの、調べものに向くものと、同じ事業所の中でも使い分けたい場面が出てきます。ただ、サービスごとに職員が別々に登録すると、管理の手間も入力ルールの行き届き方もばらばらになりがちです。複数のAIを1つの環境でまとめて管理する考え方はマルチAIの解説にまとめているので、あわせてご覧ください。

法人本部が決める導入手順と社内ルールのひな形

複数の事業所を持つ法人では、本部が使う環境とルールを先に決め、事業所には同じひな形を配る形が進めやすくなります。会社が把握していない生成AIの利用は野良AI(シャドーAI)と呼ばれ、使っている職員を責めるより、同じことが出来る会社の環境へ移ってもらうほうが早く片付きます。

本部が進める6つの手順

  • 手順1 使っている人と用途を棚卸しする責めない前提で、どの事業所の誰が、どのAIを何に使っているかを聞き取ります。「どんな記録に使うと便利だったか」を聞くと実態が集まりやすくなります。
  • 手順2 使ってよい環境を1つに決めて告知する公認の環境と判断表を同時に配り、個人のアカウントに残っている業務の会話は各自で削除してもらうよう依頼します。
  • 手順3 入力ルールと文例を配る判断表、ひな形1〜7、言い換えの基準を1枚にまとめ、スマホでも読める形で配布します。
  • 手順4 確認者を決める日々の記録は記録者、家族への連絡帳はサービス提供責任者や生活相談員、というように文章の種類ごとに確認する人を決めます。
  • 手順5 入職・退職・異動のたびにアカウントを発行・停止する人事の手続きと同じ日に処理する決まりにします。
  • 手順6 良いプロンプトを事業所間で共有する現場で工夫されたひな形を本部で集め、事実を足さない指示が入っているかを確かめてから全事業所に配ります。

移行を急がせすぎると、使い慣れた個人の環境に戻る職員も出てきます。現場で生まれた良いひな形を会社の環境へ持ち込んでもらい、使いやすさを落とさないように気を配りましょう。

事業所内の運用ルールのひな形

ルールは長い規程より、職員が休憩中に読める1枚にまとめるほうが現場に届きます。次のひな形は、【】を法人の名前や部署に置き換えて使うことが出来ます。

  • 第1条 対象【法人名】の役員・職員・パート・派遣職員が、業務で生成AIを使うすべての場面に適用します。
  • 第2条 使ってよい環境業務で使うのは、法人が指定した【環境名】だけとします。個人のアカウントや個人のスマホのアプリで、利用者や職員の情報を扱いません。
  • 第3条 入力してはいけない情報氏名・生年月日・住所・電話番号・顔写真・被保険者番号、組み合わせると個人が分かる情報、家族の事情、身体拘束・事故・虐待の疑いに関する記録の原文は入力しません。
  • 第4条 伏せてから使う情報日々のメモ、議事録、苦情や相談の記録は、氏名を記号に置き換え、住所や病院名を消してから使います。
  • 第5条 正本と確認AIの下書きは記録者が元のメモと突き合わせて直し、介護ソフトに記録者名で入力したものを正本とします。家族への連絡帳は【確認者】が読んでから送ります。
  • 第6条 AIに書かせない内容身体拘束の判断理由、事故の経過、虐待の疑いに関わる出来事は、職員が書きます。AIは誤字の点検にだけ使います。
  • 第7条 ひな形の管理全事業所で使うプロンプトは【本部の担当部署】が確かめて配布し、改訂したときは日付を付けて差し替えます。
  • 第8条 アカウントの管理アカウントは入職時に【本部】が発行し、退職・異動の日に停止します。
  • 第9条 誤って入力したとき入れてはいけない情報を入力してしまったときは、すぐに【連絡先】へ報告します。報告した人を責めることはしません。

最初から完璧な規程を目指さず、この9項目で運用を始め、困った場面が出るたびに書き足していくのが現実的です。法人全体の生成AIのルールづくりは生成AIの社内ガイドラインの作り方、点検の項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストも参考にしてください。

段階導入|小さく試し、まず記録時間を測る

導入は、1つの事業所の1種類の記録から始め、AIを使う前の記録時間を測っておくと効果を比べやすくなります。たとえば、日々のサービス提供記録の清書に1日何分かかっているかを、1週間ほど記録してみてください。

そのうえで、判断表とひな形を配った事業所で同じ期間だけ試し、清書にかかった時間と、確認で直した箇所の数を比べます。時間が減っても直す箇所が多いなら、ひな形の指示を見直す合図です。効果の出た記録の種類から、ほかの事業所へ広げていくのが無理のない順番となります。

ツール選び・費用・補助金の考え方

ツールは、記録の正本を担う介護記録ソフトと、文章を整える生成AIとで、選ぶときに見る点が違います。費用や補助金も、どちらを入れるかで考え方が変わってきます。

ツール選びのポイント|操作性・端末・連携・サポート・費用

  • 操作性:年齢や経験の違う職員が、研修なしでも迷わず入力できるか。実際の職員に試してもらうのがいちばん確かな方法
  • 端末:スマホ・タブレット・パソコンのどれで使うか、事業所の外や利用者宅で使えるか
  • 連携:請求ソフトやケアプランのデータ連携、LIFEへの提出とつながるか
  • サポート:導入時の設定や研修、問い合わせの窓口と受付時間
  • 費用:月額の単位(事業所・職員・端末など)と、初期費用、解約時の扱い

生成AIを選ぶときは、これに加えて、前の節の4つの問いに答えられるかを確かめてください。学習に使われない設定、利用の記録、アカウントの停止を事業所で管理できるかどうかが、介護記録に使ってよいかを判断する目安になります。

料金・無料プラン・無料期間の見方

介護記録ソフトの中には無料プランや無料の試用期間を用意しているものがあり、生成AIにも無料で使える個人向けのプランがあります。無料で試すこと自体は問題ありませんが、個人向けの無料プランに利用者の情報を入れるのは避けてください。試用期間中は、架空の利用者のメモや、判断表の「そのまま使える情報」だけで操作性を確かめるのが安全な使い方になります。

費用を比べるときは、1人あたりの月額を並べるだけでなく、事業所の職員数に直して見積もりましょう。1人あたりの月額が安く見えても、パートを含む全職員に配ると、法人の出費は人数の分だけ積み上がります。料金が職員数で変わるのか、事業所単位なのか、利用量で決まるのかを、各社の公式の料金ページで確かめてください。

削減時間・費用対効果の数値の読み方

製品のページには、記録時間が1日何分減った、といった数値がよく載っています。その多くは提供元や導入した事業所の発表で、第三者が同じ条件で確かめた数字とは性格が違うものです。数値を見るときは、誰の発表か、何人の職員で、どの記録を、導入前のいつと比べたのかを確かめ、自社では前の節のように自分たちで測った時間で判断するのが確実でしょう。

補助金|介護テクノロジー導入支援事業の要件

介護記録ソフトやタブレットの導入には、都道府県が実施する介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金)を使える場合があります。令和8年度の要件は事業所の所在地の都道府県の実施要綱で確かめる必要がありますが、参考として厚生労働省が公表している令和7年度当初予算の事業概要を見ておきましょう。この資料では、ICTの補助の上限額は職員数1〜10人で100万円、11〜20人で150万円、21〜30人で200万円、31人以上で250万円です。

補助を受ける条件としては、課題を抽出して業務改善計画を提出し、一定の期間、効果を報告することと、第三者による業務改善支援か研修・相談等による支援を受けることが挙げられています。あわせて、入所・泊まり・居住系は委員会を設置すること、在宅系は令和7年度内にケアプランデータ連携システムの利用を開始することも条件となっていました。

補助率は、次の要件を満たす場合は4分の3を下限、それ以外は2分の1を下限と書かれています。4分の3にするための共通要件は、収支が改善した場合に職員の賃金へ還元することを導入効果報告に明記することと、第三者による業務改善支援を受けることの2つです。ICTではさらに、在宅系はケアプランデータ連携システムを使い連携先の事業所が決まっていること、それ以外はLIFEにデータを提供しているか提供予定であること、または文書量を半減させる導入計画であることのいずれかが求められます。補助対象の例は、介護ソフト、タブレット端末、インカム、クラウドサービスのほか、転記の業務が発生しない環境が実現できている場合に限って業務効率化に資するバックオフィスソフトなどとなっています。

※金額・要件は、厚生労働省「介護テクノロジーの利用促進」ページに掲載の令和7年度当初予算の事業概要で、2026年9月27日に確認したものです。実施主体は都道府県のため、年度ごとの要件、受付期間、汎用の生成AIサービスが対象になるかどうかは、事業所の所在地の都道府県の実施要綱で確認してください。

介護記録の下書きを、法人で管理する1つの環境へ

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で使える法人向けサービスです。全モデルで学習非利用を標準適用しており、職員ごとの設定操作は不要です。管理画面では誰が・いつ・どのAIを・どう使ったかを一覧でき、特定のAIモデルの利用を禁止する設定も可能です。よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有するカスタムプラスで、本部で整えた記録のひな形を全事業所に配ることも出来ます。会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

介護記録でNGワードは何ですか?
法令で一覧が決まっているわけではありませんが、利用者の尊厳を損なう表現や、理由や場面を書かずに職員の評価だけを書いた表現は避けたい言葉です。厚生労働省の検討会報告書(平成16年12月)は「痴呆」を侮蔑的な表現として「認知症」への変更を求めました。問題行動・わがまま・不穏のような言葉は、時刻・行動・本人の言葉に分けて書き直すと、読み手に場面が伝わりやすくなります。
介護AIにはどんな種類がありますか?
介護記録ソフトに組み込まれた特化型と、ChatGPT・Gemini・Claudeのような汎用型の生成AIに分けると整理しやすくなります。特化型には音声入力、文例選択、請求ソフトやLIFEとの連携、記録の分析や検索の機能があり、汎用型はメモを記録文に整える、要約する、不適切な表現を点検する、といった文章の仕事に向いています。記録の正本は介護ソフト、文章づくりの補助は生成AIと役割を分けると整理しやすくなります。
介護記録でダメな例はどんなものですか?
「不穏だった」「様子を見た」「変わりなし」のように、何を見たかが分からない記録や、「食べさせた」のように職員が主語で利用者を動かす書き方は、見直しの対象になりやすい例です。「16時ごろから玄関の前を行き来し、『家に帰らないと』と3回話された」のように、時刻・行動・本人の言葉を分けて書くと、同じ場面を読み手が思い浮かべられます。
ChatGPTの無料版に利用者の情報を入れて記録を作ってもよいですか?
おすすめしません。OpenAIの公式ヘルプでは、個人用ワークスペースのFree・Plus・Proはデータ共有がデフォルトで有効と説明されており、学習に使わない設定にしたかどうかを事業所が確かめられません。個人情報保護委員会の注意喚起(令和5年6月2日)も、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力する場合には、提供事業者が機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。学習に使われない会社管理の環境を用意し、氏名などを伏せてから使ってください。
AIで作った記録は運営指導で問題になりませんか?
運営指導で確かめられるのは、提供した具体的なサービス内容等が記録されているかといった記録の中身です。AIの下書きを記録者が元のメモと突き合わせて直し、介護ソフトに記録者名で入力したものを正本にしておけば、事業所の記録として説明できます。身体拘束の判断理由や事故の経過のように、職員が事実を書くべき記録はAIに下書きさせないでください。
介護記録ソフトの導入に補助金は使えますか?
都道府県が実施する介護テクノロジー導入支援事業を使える場合があります。厚生労働省の令和7年度当初予算の事業概要では、ICTの補助の上限額は職員数に応じて100万円から250万円で、第三者による業務改善支援か研修・相談等による支援を受けることなどが要件とされています。年度ごとの要件と受付期間は、事業所の所在地の都道府県の実施要綱で確認してください。

まとめ

介護記録のAIには、音声入力や文例選択、連携や分析の機能を持つ介護記録ソフトと、文章を整える汎用の生成AIがあります。生成AIは、メモを記録文に整える、連絡帳を柔らかい言葉にする、NGワードを点検する、といった仕事で力を発揮します。

ただし介護記録は、病歴や心身の状況といった要配慮個人情報を多く含む記録です。職員個人の無料アカウントではなく、学習に使われず利用の記録が残る会社管理の環境を用意し、入れる・伏せる・入れないの判断表を配ってから始めてください。身体拘束・事故・虐待の疑いに関わる記録は職員が書き、AIの下書きは記録者が確かめてから介護ソフトの正本に入力する流れにしておきましょう。法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧にまとめています。