税理士のAIツールは3種類。税務特化ツール・会計ソフト内蔵のAI・汎用の生成AIの役割分担

税理士向けのAIツールとは、税理士・会計事務所の仕事をAIで補助するソフトやサービスのことで、大きく税務特化ツール・会計ソフト内蔵のAI・汎用の生成AIの3種類があります。3種類は同じ席を取り合う関係ではなく、任せる仕事がそれぞれ違います。記帳や仕訳は会計ソフトの中で、税法の調べ物の一次確認は税務特化ツールで、文書作成・要約・調べ物全般は事務所で契約する汎用の生成AIで受け持つ形が、無理のない組み合わせとなります。どれか1つを選ぶ比較ではなく、どこに何を任せるかを決めるための比較として読んでみてください。

AIで何ができるか、事務所で使うときの注意点といった全体像は税理士のAI活用ガイドにまとめています。ここでは、その中の「ツールの選び方」から一歩進めて、具体的な製品の中身と、公式ページで確かめた料金まで踏み込みます。

税理士・会計事務所のAIツールは3種類に分かれる

税理士・会計事務所で使われるAIツールは、AIがどこに組み込まれているかで3種類に分けると整理しやすくなります。

1つ目は、税務の調べ物や会計事務所の業務そのものに的を絞った税務特化ツールです。PwC Japanグループの「Tax AI Assistant」や、顧問先ごとの定型作業を自動化するサービス、会計事務所向けをうたう生成AIの環境などがこれに当たります。

2つ目は、freee・マネーフォワード・弥生といった会計ソフトの中に組み込まれたAI機能になります。証憑からデータを作り、勘定科目や仕訳を提案するなど、記帳の流れの途中で働くのが特徴です。

3つ目が、ChatGPT・Claude・Geminiなどの汎用の生成AIとなります。税務に限らず、文章を書く・読む・まとめるといった仕事を幅広く受け持つことが出来ます。

3種類の違いは、得意な仕事だけにとどまりません。料金の単位も、顧問先の情報がどこを通るかも、種類ごとに変わってしまいます。たとえば税務特化ツールには顧問先の数で料金が決まるものがあり、会計ソフトのAIは今使っている会計ソフトの契約とセットで考えることになり、汎用の生成AIの法人プランは使う方1人ごとの月額が基本です。どれが優れているかではなく、どの仕事をどれに任せるかで選ぶのが、3種類を比べるときの出発点になります。

検索結果には、個人の確定申告向けをうたう「AI税理士®」のようなサービスも並びますが、事務所の業務ツールとは対象が違うため、この比較には含めていません。

業務別の判断表|どの仕事をどの種類に任せるか

事務所の主な業務を、どの種類に任せるかで並べたのが次の表です。

業務任せる種類その種類に任せる理由注意すること
証憑の取り込み・仕訳の提案会計ソフト内蔵のAI読み取った結果がそのまま帳簿に入り、転記の手間が出ないAIが提案した勘定科目は人が確かめる。機能ごとに対象のプランが違う
消費税区分の確認会計ソフト内蔵のAI(判断に迷う取引は税務特化で調べる)仕訳と同じ画面で確かめられる判断が分かれる取引は、法令・通達の原文で確かめる
経費申請・固定資産の登録会計ソフト内蔵のAI申請や台帳の流れの中でそのまま使える顧問先側の会計ソフトの設定と契約が関わる
税法・通達の調べ物(一次確認)税務特化ツール参照する資料が税務に絞られている回答の根拠を、国税庁の法令解釈通達・質疑応答事例・タックスアンサーで確かめる
論点の最終判断・申告内容の確定税理士(AIに任せない)判断と責任は資格を持つ税理士にあるAIの回答は下調べの材料として扱う
顧問先へのメール・案内文の下書き汎用の生成AI文体の調整や言い換えを指示ひとつで出来る顧問先名や金額は伏せるか、必要な範囲に絞る
決算説明資料・月次報告のたたき台汎用の生成AI(顧問先が多ければ税務特化の自動化型も候補)試算表の要点を平易な言葉に直せる数字は会計ソフトの値と照らし合わせる
面談メモ・議事録の要約汎用の生成AI長い文章から決定事項と宿題を抜き出せる学習に使われない環境で使う
補助金の公募要領・改正資料の読み込み汎用の生成AI長いPDFを読ませて、要件と期限を表に整理できる期限と要件は原文で確かめる
所内マニュアル・Excel関数の作成汎用の生成AI手順の言語化と、関数やマクロの下書きが出来る顧問先のデータを貼らずに試す
申告期限の管理・顧問先への定型連絡税務特化ツール(業務自動化型)顧問先ごとに同じ作業を繰り返す仕事を対象にしたサービスがある連携するチャットやメールのアカウントを誰が管理するか決める

並べてみると、汎用の生成AIが受け持つ行が多くなります。記帳の流れに乗る仕事は会計ソフトの中、税法の根拠が要る調べ物は税務特化、それ以外の読み書きは汎用の生成AI、という線を引いておけば、新しい業務が出てきたときも迷わずに振り分けることが出来ます。税務の判断そのものは、どの種類のツールにも任せず、税理士が原典で確かめて決める仕事として残ります。一度、ご自分の事務所の業務を表の左の列に当てはめてみてください。

AIツールに向く業務・向かない業務|導入前に業務を棚卸しする

判断表では種類ごとの分担を見てきましたが、導入の前には、そもそもAIツールに渡してよい業務かどうかを一度分けておくと選びやすくなります。目安は、作業の形が毎回ほぼ同じか、AIの誤りに人が気づいて直せるかの2つです。AIの出力を人が読み直してから使える業務ほど、AIツールに任せやすい仕事となります。

AIツールに向きやすい業務

年末調整の案内文や扶養控除等申告書の提出依頼文、届出書の提出期限の一覧づくりは、毎年ほぼ同じ形でくり返される仕事です。どれも職員が読み直してから顧問先に出す流れが作りやすく、誤りがあっても届く前に止めやすくなります。月次の確認でも、増減の大きい科目を見つけるのは会計ソフトの増減表に任せ、その科目について顧問先に聞く質問文の下書きを汎用の生成AIで作る、という分け方がしっくりくるでしょう。

AIツールに任せないほうがよい業務

申告書の内容を確定させる判断と、顧問先への税務上の回答は税理士の仕事なので、AIの答えは下調べの材料にとどめましょう(詳しくは税理士法と守秘義務の節で触れています)。税額や按分の計算そのものも、汎用の生成AIには任せず、税務ソフトやExcelで行うほうが安心です。

顧問先の経営方針に踏み込む提案や、相続の場面でのご家族への説明のように、相手の事情を聞き取って言葉を選ぶ仕事も、AIは下書きまでにとどめたほうが無難になります。改正の直後で通達や質疑応答事例が出そろっていない論点では、AIの答えが古い前提に立っていることもあるため、原文を確かめる手間を省かないでください。

導入でつまずきやすい場面

導入のつまずきは、ツールの性能よりも使い方の決め方から起きることがあります。たとえば次のような場面です。

  • 1種類のツールで記帳から文書作成まで全部をこなそうとして、得意でない仕事で手戻りが出る
  • 会計ソフトにAIの読み取り機能があるのに使わず、証憑の画像を汎用の生成AIに貼り付けて、転記の手間が残る
  • 所長だけが使い始め、職員は使い方が分からないまま個人のアカウントで試してしまう
  • 若手の職員がAIの答えを根拠を見ずに写し、判断の筋道を説明できなくなる
  • AIの答えを確かめる手順を決めないまま、下書きが顧問先にそのまま届いてしまう

どれも、判断表で分担を決め、AIの回答を確かめる手順と入力してよい情報の線引きを所内でそろえることで防ぐことが出来ます。まずは業務ごとに月の作業時間と、AIの誤りに人が気づけるかを書き出し、時間が長く誤りに気づきやすい業務から試してみてください。

3種類を組み合わせた1日の流れ(例)

判断表の分担を、ある事務所の1日に当てはめると次のような流れになります。

朝|証憑の取り込みと仕訳の確認

顧問先から届いた領収書や請求書は会計ソフトに取り込み、AIが提案した勘定科目と消費税区分を担当の職員が確かめます。判断に迷う取引だけを抜き出して昼までに税理士へ回す形にすると、確認の手間が一か所に集まります。

午前|顧問先からの質問への下調べ

顧問先から、ある支出が経費になるかという質問が届いたら、まず税務特化ツールで関連する条文や通達の見当をつけます。ツールが示した根拠は国税庁の通達や質疑応答事例で原文を開いて確かめ、そのうえで税理士が回答の方針を決めることになります。方針が決まったら、返信の文面は汎用の生成AIで下書きし、税理士が言い回しと中身を直してから送ります。

午後|面談とその後の記録

面談のメモや録音の文字起こしは、事務所で契約した汎用の生成AIに渡し、決定事項と宿題に分けてもらいます。要約は面談に出た職員が読み直し、次回までに用意していただく資料の案内メールも続けて下書きさせると、面談の当日中に顧問先へ連絡が届く形が作れます。手が空いた時間には、補助金の公募要領や改正資料の読み込みも汎用の生成AIに回すことが出来ます。

この流れで大切なのは、税務の判断が入る場面の前後に、必ず人が原典を確かめる工程を挟んでいることです。ご自分の事務所の1日に置き換えて、どこにどの種類を入れられるかを書き出してみてください。

税務特化ツールの比較|公式で確認した中身と料金

税務特化ツールは、中身で見ると調べ物型・業務自動化型・会計システム一体型の3つに分かれ、料金を公表しているかどうかもまちまちです。

ツール(提供元)型公式に書かれている中身料金(公式の表示)確認日
Tax AI Assistant(PwC Japanグループ)調べ物型「日本の税法および税務実務に特化した質疑応答ツール」。税務業務のリサーチや文書作成・要約の効率化をうたう公式ページに料金・提供の形の記載なし(問い合わせが必要)2026年9月29日(ページの表示日は2025年11月6日)
F&M One GeNNect(エフアンドエム)調べ物型(汎用AI+税務相談bot)会計事務所等向け。ChatGPT・Gemini・Claudeの3系統を同じ環境で使い分けられ、確定申告・法人税・相続税・消費税の税務相談botを標準搭載登録料100,000円、月額15,000円(5ライセンス込み)。いずれも税抜。6ライセンス目以降の単価は公表なし。最低利用期間は申込月を含む4か月2026年9月20日
税理士事務所向けAIエージェント(Blinx)業務自動化型記帳チェック・修正提案、顧問先教育bot、月次レポート自動生成、申告期限管理などの7領域。freee・マネーフォワード・LINE・Gmail・Slack・Chatworkなどと連携スタータープラン月50,000円(顧問先10社まで・7領域から2領域)、スタンダードプラン月80,000円(顧問先10社まで・7領域すべて)。拡張プランはスタンダードプランをもとに顧問先10社ごとに月30,000円を追加(30社超は個別見積)。税の表記なし2026年9月29日
Zeimee業務自動化型(個別に作り込む形)税理士・会計士事務所・BPO会社向け。記帳自動化AI・証憑収集AI・法人税申告チェックAI・決算書作成AIなど対象業務・帳票・連携要件を確かめたうえでの個別見積り2026年9月29日
OMSエージェント(TKC)会計システム一体型TKC会員の会計事務所向け。関与先企業向けのFXエージェントと合わせて、2026年9月末から順次提供を開始すると発表(2026年5月27日)プロトタイプ段階のフィードバックを踏まえて別途案内すると発表2026年9月29日

※中身・料金はいずれも各社の公式ページ・発表に書かれている内容で、各社の自己申告です。独立した第三者による検証を経た数字ではありません。税込・税抜の表記がないものは表示のまま載せており、税を足していません。F&M One GeNNectのみ公式に税抜の表記があります。

調べ物型は「根拠を探す入口」として使う

PwC Japanグループは、Tax AI Assistantを日本の税法と税務実務に特化した質疑応答ツールと説明しています。提供の対象や契約の形は公式ページに書かれていないため、検討するときは問い合わせで確かめてみてください。F&M One GeNNectは、汎用の生成AI3系統に税目ごとの税務相談botを載せた形で、会計事務所向けに月額と登録料を公表している点が特徴となります。

調べ物型を使うときに大切なのは、答えそのものより、答えの根拠をどこまで示してくれるかという点でしょう。回答に出てきた条文や通達は、国税庁の法令解釈通達や質疑応答事例、タックスアンサーで原文を開いて確かめる流れを、所内の決まりにしておきましょう。

F&M One GeNNectの月額を1ライセンスあたりに直すと月3,000円(税抜)に相当しますが、6ライセンス目以降が同じ単価かどうかは公表されていません。同社の利用規約では、最低利用期間は申込月を含む4か月で、申込月は当初の5ライセンスを無料で使え、課金は翌月1日から始まると定めています。4か月目の20日までに解約を申し出た場合で計算すると、登録料100,000円と月額15,000円の3か月分を合わせた145,000円(税抜)が、最短で解約したときの支出となります。

業務自動化型は「顧問先の数」で料金が決まる

Blinxの税理士事務所向けAIエージェントは、料金の単位が職員の人数ではなく顧問先の数になっています。公式ページではスタータープランが顧問先10社まで月50,000円、スタンダードプランが同じく10社まで月80,000円と表示され、10社を超える場合は拡張プランとなり、スタンダードプランをもとに顧問先が10社増えるごとに月30,000円が加わると表示されています(30社を超えると個別見積)。顧問先がちょうど10社の場合で割ると、スタータープランは1社あたり月5,000円、スタンダードプランは月8,000円に相当します。Zeimeeは対象業務や帳票、連携の条件を聞いたうえで費用と日程を見積もる方式をとっており、決まった料金表は公開されていない形です。

どちらも、記帳のチェックや月次レポート、申告期限の管理のように、顧問先ごとに同じ作業を繰り返す仕事を対象にしています。顧問先の数が多く、定型の作業に職員の時間が取られている事務所ほど、比べる意味が大きくなるでしょう。導入前には、会計ソフトやチャットとの連携のために、誰のアカウントでどのデータを読ませるのかを最初に確かめてみてください。

会計システム一体型は提供元の方針ごと選ぶ

TKCは2026年5月27日、TKC会員の会計事務所向けのOMSエージェントと、関与先企業向けのFXエージェントを発表しました。発表では、2026年9月末から順次提供を開始し、価格はプロトタイプ段階でのフィードバックを踏まえて別途案内するとしています。発表の見出しには「税理士の守秘義務を技術で守る、Governance by Design」とあり、データを守る設計を前面に出した内容です。TKCのシステムを使っている事務所であれば、価格が案内された段階で、ほかの種類と並べて比べてみるとよいでしょう。

会計ソフト内蔵のAI|証憑の読み取りと記帳は会計ソフトの中で

証憑の読み取りや仕訳の提案は、会計ソフトに組み込まれたAIに任せるのが自然な流れになります。汎用の生成AIに領収書の画像を1枚ずつ読ませることも出来ますが、結果を会計ソフトへ転記する手間が残り、毎月の大量の証憑を回す仕事には向いていません。取り込みから仕訳までが同じ画面で完結する会計ソフト側の機能のほうが、記帳の流れを止めずに済みます。

freee

freeeは2025年5月14日に「freee AI(β版)」などを発表し、2026年3月26日には「AIおまかせ明細取得」のβ版を発表しています。後者は一部のプランで利用に制限があると案内されており、どのプランで使えるかは契約中のプランで確かめる必要があります。

マネーフォワード

マネーフォワードは2025年12月15日に「『マネーフォワード クラウド』with AI」の特設サイトを公開し、経費申請サポートエージェント、固定資産登録サポートエージェント、業績分析エージェントなどを案内しています。2026年3月17日には、一部の士業事務所向けに消費税区分チェックエージェントの提供を始めたと発表しました。

弥生

弥生会計 Nextの機能ページには「勘定科目はAIが推測して提案します」とあり、AIとの対話で仕訳を提案してもらう機能は「1アカウントにつき月に300回まで使用が可能」と書かれています。2025年6月26日には「AI取引入力 β版」の発表もありました。

ミロク情報サービス(MJS)

MJSは2025年7月23日、Azure OpenAI Serviceを使ったチャットボット形式の問い合わせ対応Webサービス「MJS AIアシスト」を発表し、無償で使えると案内しています。対象はMJSの製品を使う会計事務所のお客様で、製品の使い方を尋ねる窓口に近い位置づけです。

会計ソフトのAIを使うときの考え方

会計ソフト内蔵のAIは、契約している会計ソフトとセットで決まります。AIのために会計ソフトを乗り換えるより、今の会計ソフトで使える機能を確かめるほうが先になります。機能ごとの追加料金の有無や対象のプランは、契約中の画面や各社の案内で確かめてみてください。

顧問先によって使っている会計ソフトが違う事務所では、使えるAI機能も顧問先ごとに変わってしまいます。どの顧問先がどの会計ソフトのどの機能を使えるかを一覧にしておけば、担当の職員が替わったときにも迷いません。一覧は判断表と同じ場所に置き、会計ソフト側で新しい機能が発表されたら書き足していく形が続けやすいでしょう。

※各社の発表日と機能名は、2026年9月29日に各社の公式ページ・ニュースリリースで確認したものです。いずれも各社の発表(自己申告)です。

汎用の生成AI|文書作成・要約・調べ物の全般を受け持つ

汎用の生成AIは、判断表の中で多くの行を受け持つ種類です。顧問先へのメールや案内文、決算説明資料のたたき台、面談メモの整理、補助金の公募要領の読み込み、所内マニュアルの作成など、税務の判断を含まない読み書きの仕事がまとめて対象となります。

用途別の使い分けの例

主な3つのAIは、どれでも一通りの仕事をこなせます。そのうえで、事務所での使い分けの一例を挙げると次のようになります。

  • ChatGPT(OpenAI)…メールや案内文の下書き、表の整理、ファイルを添えた質問など、日常の読み書きの既定の1つとして
  • Claude(Anthropic)…長い資料や規程の読み込み、丁寧な文章への書き直しに
  • Gemini(Google)…Google Workspaceを使っている事務所なら、ドキュメントやスプレッドシートの中で(中で使えるのはBusiness Standard以上)

どのAIが優れているかの順位は、新しいモデルが出るたびに入れ替わってしまいます。1つに決め切るより、同じ質問を2つのAIに投げて答えが食い違う箇所を人が確かめる、という使い方のほうが事務所の仕事には合っているでしょう。詳しい使い分けは主要4AIの違いと使い分けにまとめています。

顧問先向けの文書の下書き

納期限の案内や資料の依頼、制度の変更のお知らせといった定型の文面は、汎用の生成AIに下書きさせると作業が早く進みます。顧問先ごとに言い回しの丁寧さを変えたいときも、指示を一言足すだけで書き分けられます。一方で、税額や期限など数字や日付が入る部分は、AIが書いた値をそのまま使わず、会計ソフトや国税庁の案内で照らし合わせる必要があります。よく使う文面は、所内で指示文のひな形としてまとめておきましょう。

議事録・面談メモの要約

面談の走り書きや録音の文字起こしを渡して、決定事項・宿題・次回の確認事項に分けてもらう使い方は、汎用の生成AIの得意な仕事となります。ただし顧問先の名前や金額がそのまま入る資料なので、学習に使われない設定の環境で使うことが前提です。要約をそのまま顧問先に送らず、面談に出た職員が読み直してから記録に残す流れを決めておきましょう。

税法の調べ物に汎用AIを使うときの注意

汎用の生成AIに税法を聞くと、存在しない条文や古い税率をもっともらしく答えることがあります。調べ物の入口として使うのは構いませんが、税務特化ツールと同じく、原典で確かめるまでは下書きとして扱うのが安全です。とくに改正があった論点では、回答がいつ時点の情報に基づくのか分からないまま使うと、誤りに気づきにくくなってしまいます。

事務所の人数別に月額を比べる|1人ずつ契約か、事務所で1つか

汎用の生成AIを職員に配るとき、費用の形は、1人ごとに席を買う形と、ライセンスの束や事務所単位で契約する形に分かれます。ChatGPT Businessのスタンダードシートは年払いで1席月20ドル、月払いで月25ドル、Claude Teamのスタンダードシートも年払いで月20ドル、月払いで月25ドルと、公式の料金ページに表示されています。Google Workspaceは、ドキュメントやスプレッドシートの中でGeminiを使えるBusiness Standardが1ユーザー月1,600円(税別・年間プランの月額)です。

1ドル=150円で計算した場合、5人・10人・20人の事務所で全員に配ると、毎月の出費は次のようになります。

  • 5人の事務所…ChatGPT Businessだけなら年払いで月100ドル(約15,000円)、月払いで月125ドル(約18,750円)。Claude Teamも全員に配ると、年払いどうしで月200ドル(約30,000円)
  • 10人の事務所…ChatGPT Businessだけなら年払いで月200ドル(約30,000円)、月払いで月250ドル(約37,500円)。Claude Teamも全員に配ると、年払いどうしで月400ドル(約60,000円)
  • 20人の事務所…ChatGPT Businessだけなら年払いで月400ドル(約60,000円)、月払いで月500ドル(約75,000円)。Claude Teamも全員に配ると、年払いどうしで月800ドル(約120,000円)

Google WorkspaceのBusiness Standardを全員に割り当てると、5人で月8,000円、10人で月16,000円、20人で月32,000円(いずれも税別)がかかります。年払いの2つを全員に配った場合、20人の事務所では年間で約144万円(月約120,000円×12か月)に達してしまいます。しかもこれは席の代金だけで、誰にどのAIを配ったか、退職した職員の席を止めたか、学習の設定がどうなっているかを、サービスの数だけ別々の管理画面で確かめる手間は含まれていません。

年払いと月払いの差も、人数が増えるほど効いてきます。ChatGPT Businessを20人に配る場合、月払いは年払いより月100ドル高く、1年では1,200ドル(1ドル=150円で約180,000円)の差になります。年払いにするかどうかは、職員の入れ替わりの見込みも含めて決めましょう。

※ChatGPT Businessの料金は2026年9月29日に公式の料金ページ(米ドル表示・税の記載なし)、Claude Teamの料金は同日に公式の料金ページ(税別の注記あり)、Google Workspaceの料金は同日に日本語版の料金ページ(税別・年間プランの月額)で確認したものです。ChatGPT Businessは最低2シート、Claude Teamは2〜150名のチーム向けと案内されています。円の金額は1ドル=150円で計算した概算で、実際の請求額は為替と税で変わります。

ライセンスの束や事務所単位で契約する形の費用の見方

ライセンスの束や事務所単位で契約するサービスでは、月額の決まり方が1人課金とは違ってきます。たとえばF&M One GeNNectはライセンス単位の課金で、最低5ライセンス分を月15,000円(税抜)で契約する形と公表しており、5人の事務所ならこの金額で3系統のAIと税務相談botを使える計算となります。一方、6ライセンス目以降の単価は公表されていないため、10人・20人の事務所の月額は見積もりを取らないと比べられません。比べるときは、月額だけでなく、登録料や初期費用、最低利用期間、途中で人数を減らせるかどうかまで並べてみてください。

費用を抑えようとして一部の職員にだけ配ると、配られなかった職員が個人のアカウントで使い始める、という別の問題が生まれやすくなります。1人課金は人数が倍になれば費用も倍になり、しかも管理画面は契約したサービスの数だけ増えていきます。

席を1人ずつ買うほど、費用も管理もばらばらに

職員ごとの契約をやめて、事務所で使う環境を1つにそろえる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

汎用AIと会計ソフトをつなぐか|TKCとfreee・マネーフォワードで分かれる方針

汎用の生成AIと会計ソフトを直接つなぐかどうかについては、会計ソフト各社の考え方がはっきり分かれています。ここで鍵になるのがMCP(Model Context Protocol)で、生成AIのアプリが外部のソフトやデータに接続するための共通の仕組みを指します。

  • freee(2026年3月2日)…約270本のAPIをMCPのツールにした「freee-mcp」を発表。Claude Desktop・Claude Code・Cursorなどから利用できると案内
  • マネーフォワード(2025年10月3日)…MCPサーバーのβ版を、公認メンバーのうちプラチナメンバーに限って提供すると発表
  • TKC(2026年5月27日)…MCPサーバーを提供しない方針を表明。関与先企業のデータを守る設計思想として説明

※いずれも各社の公式発表(自己申告)で、2026年9月29日に各社のニュースリリースで確認した内容です。今後の方針や対応するAIアプリは変わる可能性があります。

どちらの方針が正しいという話ではありません。つなげば、会計データを汎用AIに読ませて分析や資料作りに使える幅が広がる一方、顧問先のデータが事務所の外のAIへ渡る経路が1本増えることになります。つながない設計は、その経路を最初から作らないという選び方でしょう。

事務所にとって大切なのは、どちらの会計ソフトを使っているかで、取れる選択肢が変わるという点です。freeeを使っている事務所や、マネーフォワードの公認メンバーのうちプラチナメンバーの事務所なら、つなぐかどうかを自分たちで決めることになり、TKCを使っている事務所なら、TKCのシステムの中で動くAIを使う前提で考えることになります。つなぐ場合は、誰のアカウントで接続し、どの顧問先のデータまで読めるのかを、事務所として先に決めておくことが欠かせません。職員の個人アカウントから会計ソフトにつなぐ使い方は、事務所として管理できない経路となってしまいます。freee-mcpについては、公式の発表文に対応先として書かれているのがClaude Desktop・Claude Code・Cursorなどである点も、接続前に確かめておきましょう。

実際につなぐ場合に、事務所で先に決めておきたい項目を挙げてみます。

  • 接続に使うアカウント…事務所で契約した汎用AIのアカウントに限るか、職員の個人アカウントも認めるか
  • 読める範囲…どの顧問先の、どの期間のデータまで汎用AIから読めるようにするか
  • 書き込み…汎用AIからの仕訳の登録や修正まで許すか、読み取りだけにとどめるか
  • 使うAIアプリ…会計ソフト側の案内に対応先として書かれているアプリの中から、どれを使うか
  • 記録…誰がいつ接続し、何をしたかを後から確かめられるか

これらを決めないまま職員が個々に接続を始めると、顧問先のデータへの入口が人数分だけ増えてしまいます。まずは読み取りだけ、所長のアカウントだけ、といった狭い範囲で試し、所内のルールが固まってから広げるのが無理のない進め方です。

顧問先の情報はどこを通るか|3種類で違うデータの行き先

3種類のツールは、顧問先の情報が流れていく先もそれぞれ違います。

会計ソフト内蔵のAIでは、証憑や仕訳のデータは会計ソフトの提供元の環境の中で扱われ、その先でどのAIの仕組みを使うかは各社の案内に従うことになります。たとえばTKCは新しいエージェントの基盤にMicrosoft Foundryを、MJSはMJS AIアシストにAzure OpenAI Serviceを使うと発表しています。

税務特化ツールには、提供元のサービスを経由して、その裏で動く生成AIへ情報が渡る形のものがあります。F&M One GeNNectは、入力データを外部AIの学習対象外とし、データを国内のAWS環境で管理すると、同社のサイトと利用規約に記載しています。

汎用の生成AIでは、情報はOpenAI・Anthropic・Googleといった提供元に直接渡ります。法人向けのプランなら既定で学習に使われない扱いですが、職員が個人のアカウントで使った情報は、事務所から行き先も設定も確かめられなくなってしまいます。どの種類でも、顧問先の情報の行き先と学習の扱いを、公式の記載で確かめてから使い始めましょう。MCPで汎用AIと会計ソフトをつないだ場合は、会計データが汎用の生成AIの提供元へ渡る経路が加わる点も、前の節と合わせて押さえておいてください。

顧問先データを学習させない設定の確認手順

顧問先の情報を入れる可能性があるなら、使う前に、入力が学習に使われない状態かを製品ごとに確かめる必要があります。事務所で法人向けのプランを契約していれば、3社とも既定で学習に使わない扱いとなっていますが、個人向けのプランでは本人の設定次第になります。

ChatGPT

ChatGPT Businessは料金ページで「お客様の業務データは、デフォルトではモデルの学習に使用されません」と案内しています。個人向けのプランで使っている場合は、プロフィールアイコンから設定を開き、データコントロールにある「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにします。一時チャットは30日後にシステムから削除され、モデルのトレーニングには使用されないとヘルプに書かれています。

Claude

Claudeの料金ページの比較表では、モデルのトレーニングについてTeamとEnterpriseが「デフォルトではなし」、Free・Pro・Maxが「オプトアウト」と表示されます。個人向けのプランでは、プライバシー設定のモデル改善(Model Improvement)の項目で学習への利用を切り替えられます。Anthropicの発表では、学習を許可した場合のデータ保持は5年、許可しない場合は従来どおり30日とされています。

Gemini

Google Workspaceの管理者向けヘルプには「お客様のコンテンツは、人間によってレビューされることも、許可なくお客様のドメイン外で生成 AI モデルのトレーニングに使用されることもありません」と書かれており、事務所のWorkspaceで使う限りはこの扱いになります。個人のGoogleアカウントでGeminiアプリを使う場合は、「Gemini アプリ アクティビティ」の「アクティビティの保存」で設定を確かめます。ヘルプによると、保存をオフにしても会話は72時間アカウントに保持され、人間のレビュアーが確認した会話やフィードバックは最長3年保存されることがあります。

所内で確かめる順番

  • 事務所名義の法人向けプランで使っているかChatGPT Business・Claude Team・Google Workspaceなど、事務所の契約の中で使っているかを最初に確かめます。
  • 個人のアカウントで業務に使っている職員がいないか無料版や個人向けの有料プランで顧問先の資料を扱っていないかを、職員に聞き取ります。
  • 個人向けのプランなら、学習の設定をオフにしたかChatGPTは「すべての人のためにモデルを改善する」、Claudeはモデル改善(Model Improvement)、Geminiアプリは「アクティビティの保存」を確かめます。
  • 退職・異動した職員の席を止めたかサービスごとに管理画面が分かれている場合は、契約しているサービスの数だけ確かめます。
  • 誰がいつ何に使ったかを後から確かめられるか顧問先から利用状況を聞かれたときに説明できる記録があるかを見ます。

※画面名・項目名・保持期間は、2026年9月16日〜29日に各社の公式ヘルプ・料金ページで確認した表記です。画面の表記は更新で変わることがあります。

設定は一度確かめて終わりではなく、職員の入れ替わりや新しいサービスの追加のたびに見直しが必要になってしまいます。半年に一度など、確かめる時期を所内の予定に入れておきましょう。

税理士法と守秘義務|AIは税理士の判断を代わりに担えない

AIツールをどれだけ組み合わせても、税務の判断と申告内容の確定は、資格を持つ税理士が責任を負う仕事として残ります。

税理士法第38条は「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない」と定め、税理士でなくなった後も同様としています。罰則は第59条にあり、第38条に違反したときなどは「二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する」とされます。条文には、生成AIへの入力がそのまま違反になるとは書かれていません。それでも、学習に使われる設定のまま顧問先の情報を入力すれば、秘密を他に洩らしたと受け取られるおそれは否定できないでしょう。

個人情報保護委員会も、令和5年6月2日の注意喚起で、本人の同意なく個人データを含む指示文を生成AIに入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法に違反する可能性があると示しています。事務所として守るべきなのは、AIを使わないことではなく、学習に使われない環境だけで使うことです。AIの回答は下調べと下書きの材料と位置づけ、根拠の確認と最終判断は必ず税理士が行う、という線を所内で共有しておきましょう。

※税理士法の条文は、2026年9月29日にe-Gov法令検索(法令API)で現行の本文を確認したものです。

AIの回答を確かめる手順|税務の論点を顧問先に返す前に

AIの回答を顧問先に返す前に、所内で同じ手順を踏むと決めておけば、職員ごとの確認のばらつきを抑えられます。

  1. 回答に出てきた条文・通達・質疑応答事例の番号や名前を書き出す(出てこなければ、AIに根拠を示すよう求める)
  2. e-Gov法令検索や国税庁のサイトで原文を開き、書かれている内容と回答が合っているかを見る
  3. 改正があった論点かどうかと、いつ時点の条文・通達かを確かめる
  4. 顧問先の事実関係に当てはめ、税理士が判断する
  5. 使ったAI・確かめた原典・判断した人を、顧問先ごとの記録に残す

とくに1つ目で根拠が出てこない回答は、それだけで下書きとしての価値が下がってしまいます。根拠を示せない回答は使わない、という決まりを置くだけでも、誤った回答をそのまま伝える危険は小さくなります。記録の欄は、所内で使っている顧問先ごとの管理表に1列足す形で始めてみてください。

入力してよい情報・いけない情報の線引き

学習に使われない環境を用意したうえで、何をどこまで入力してよいかを所内で決めると、職員が迷わずに使えるようになります。線引きの例を3段階に分けて挙げてみます。

  • 入力してよいもの…顧問先名を伏せた文章の下書き、公開されている法令・通達・公募要領、所内マニュアル、数字を丸めた説明資料のたたき台
  • 事務所で契約した環境に限って入力してよいもの…顧問先名や金額を含む面談メモ、試算表の要点(必要な範囲に絞る)
  • 入力しないもの…マイナンバー、ログインIDやパスワード、顧問先から預かった資料の丸ごとの貼り付け

マイナンバーは法律で利用できる事務が限られている情報なので、事務所のルールとして生成AIには入れない扱いにするのが安全です。伏せ字にするときは、顧問先名をA社・B社のような記号に置き換え、金額は必要な桁だけ残す形にすると、下書きとしての使い勝手をあまり落とさずに済みます。決めた線引きは、所内の共有フォルダなど、職員がすぐ開ける場所に置いてみてください。

どの段階に入るか迷う情報は、入力しない側に寄せて扱うのが無難です。迷った例とその扱いを線引きの紙に書き足していくと、所内の判断が少しずつそろっていきます。

顧問先にAIの利用を伝えるか

顧問先にAIの利用を伝えるかどうかは事務所の判断になりますが、聞かれたときに答えられる状態にしておくことは欠かせません。説明の中身は、どの環境を使っているか、入力が学習に使われない設定か、データがどこに保管されるか、最終確認を誰がするか、の4点に絞ると伝わりやすくなります。顧問契約の更新や新しい契約の機会に、書面で一言添える方法も考えられます。

文例:当事務所では、資料の下書きや要約に、事務所で契約した生成AIを使うことがあります。入力した情報がAIの学習に使われない設定で利用しており、税務の判断と申告内容の確認は、すべて担当の税理士が行います。

文例は事務所の実際の運用に合わせて書き換え、まだ決まっていない運用を約束する文は入れないようにしましょう。説明した内容と実際の使い方がずれると、かえって信頼を損ねてしまいます。

顧問先から聞かれやすいのは、入力した情報がAIの会社に使われないか、データが海外に出ないか、AIの答えをそのまま申告に使っていないか、といった点でしょう。1つ目は契約しているプランの学習の扱いを、2つ目はそのサービスの保管場所の案内を、3つ目は所内の確認手順をそのまま答えれば足ります。答えに詰まる質問があれば、それは所内の運用がまだ決まっていない部分なので、顧問先への説明より先に所内で決めることになります。

3種類それぞれの選び方の軸と、規模別の組み合わせ例

選ぶときに見る軸は、3種類で同じではありません。

種類ごとに見る軸

税務特化ツールなら、回答がどの資料を参照しているか、その資料がいつ時点のものか、料金が公表されているかを先に確かめます。会計ソフト内蔵のAIなら、今の会計ソフトのどのプランで使えるか、β版か正式版か、追加の費用があるかが軸となります。汎用の生成AIの条件は、税理士のAI活用ガイドの選び方の節に挙げた4つの条件(学習に使わない設定を一律に適用できる、保存先が明確、管理者が利用を把握できる、複数のAIを使える)をそのまま使えます。どの種類も、職員が迷わず使える画面かどうかは、資料よりデモや試用で確かめるほうが確実でしょう。

デモや試用で聞いておきたいこと

税務特化ツールや事務所向けのAI環境は、公式ページだけでは分からない点が多く残ります。デモや問い合わせの場で、次の点を聞いてみてください。

  • 回答が参照している資料の種類と、いつ時点のものか法令・通達・質疑応答事例・タックスアンサーのどれを見ているのか、改正への追随はどうしているのかを確かめます。
  • 回答に根拠となる条文や資料名が示されるか根拠が示されない回答は、原典で確かめる手間がかえって増えます。
  • 入力した情報が学習に使われるか、どこに保管されるか提供元のサービスと、その裏で動く生成AIの両方について聞きます。
  • 料金の単位と、人数や顧問先が増えたときの月額顧問先の数・ライセンスの束・1人ごとの席のどれで決まるのか、上限を超えたときの扱いも確かめます。
  • 最低利用期間と、途中で減らせるかどうか登録料や初期費用と合わせて、最短で解約した場合の総額を出しておきます。
  • 会計ソフトやチャットと連携するとき、どのデータを読むのか読み取りだけか、書き込みまで行うのか、誰のアカウントで接続するのかを確かめます。

聞いた答えは、判断表と同じ形で1枚にまとめ、候補どうしを並べて見比べると決めやすくなります。答えがはっきりしない項目が多いサービスは、急いで契約せず、回答を待ってから判断しても遅くはないでしょう。

規模別の組み合わせ例

同じ3種類でも、事務所の規模によって最初に手を付ける場所は変わってきます。

  • 所長と数名の事務所…まず今の会計ソフトのAI機能を使い切り、汎用の生成AIは事務所名義で1つ契約する。税務特化ツールは、税法の調べ物に時間がかかっていると感じたときに検討する
  • 10人前後の事務所…汎用の生成AIの配布・停止・学習の設定を管理者がまとめて扱えるかが課題になる。顧問先ごとの定型作業が多ければ、顧問先の数で料金が決まる業務自動化型も比べる
  • 20人以上の事務所…担当ごとに使い方が分かれるため、利用の記録と、所内で共有する指示文のひな形が欠かせない。会計システム一体型を使っているなら、提供元のAIの案内を待って並べて比べる

比べるときは、3種類を1つの表に並べて優劣をつけるより、種類ごとに候補を1〜2つに絞るほうが決めやすくなります。規模が大きい事務所ほど、どの種類を使うかより、使い方をそろえる仕組みのほうが効いてくるでしょう。

ツールを決めたあとの小さな始め方

導入は、3種類を一度にそろえるより、今ある道具から順に確かめていくほうが無理なく進みます。

  1. 使っている会計ソフトのAI機能と、契約中のプランで使えるかを確かめる
  2. 汎用の生成AIを事務所で1つ契約し、学習の設定と、アカウントの発行・停止の手順を決める
  3. 入力してよい情報の線引きを決め、職員に配る
  4. 顧問先へのメールや面談メモの要約など、税務の判断を含まない業務から1〜2か月試す
  5. 税務特化ツールは、デモや試用で参照する資料の範囲と料金を確かめ、調べ物の量が多い事務所から検討する
  6. 3か月ごとに利用の記録と職員の声を見て、判断表の任せ先を更新する

税務特化ツールを後ろに置いているのは、会計ソフトと汎用の生成AIで足りる仕事を先に切り分けてからのほうが、何を買い足すべきかが見えやすいためです。判断表を所内の共有フォルダに置き、使ってみて分かったことを書き足していきましょう。

最初の1か月で決めておくこと

試し始めの1か月は、使い方を広げるより、決まりを固める期間と考えると進めやすくなります。決めておきたいのは、誰が管理者になるか、職員のアカウントをいつ発行していつ止めるか、判断に迷ったときに誰へ相談するか、の3つです。とくに管理者は、所長が兼ねるのか、事務の担当者に任せるのかで、退職時の停止や設定の見直しが滞らないかが変わってきます。1か月たったら、使われた業務と使われなかった業務を職員に聞き、判断表の任せ先を見直してみてください。

事務所で安全に使うには|汎用AIの環境を1つにそろえる

3種類のうち、事務所の管理が行き届きにくいのが汎用の生成AIです。税務特化ツールや会計ソフトのAIは事務所の契約の中で動きますが、汎用の生成AIは職員が個人のアカウントで簡単に使い始められてしまいます。

事務所として押さえたいのは、学習に使われない設定を全員に一律で適用すること、誰がいつ何に使ったかを記録に残すこと、職員への配布と退職時の停止を管理者が行えること、の3つです。これに加えて、文書作成・長文の読み込み・調べ物でAIを使い分けられると、1つのAIに無理をさせずに使えるようになります。職員ごとの契約を積み上げるより、事務所で使う汎用AIの環境を1つにそろえるほうが、設定も記録も1か所で済みます。環境をそろえたら、判断表の汎用の生成AIの行はその環境で受け持つ、と所内に伝えてみてください。

複数のAIの使い分けも所内でそろえる

環境を1つにしても、どの仕事にどのAIを使うかが職員ごとにばらばらだと、出来上がる文書の質にも差が出てしまいます。顧問先へのメールはこのAI、長い資料の読み込みはこのAI、というように業務ごとの既定を決め、よく使う指示文をひな形として所内で共有しておきましょう。既定のAIで満足できない答えが出たときだけ別のAIに同じ質問を投げる、という使い方にすれば、切り替えの迷いも少なくなります。

職員の個人利用を把握する方法は野良AI(シャドーAI)の見つけ方、点検項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめています。

事務所の汎用AIを、1つの契約と1つの管理画面で

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理でき、会話履歴や利用ログは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

税理士の仕事はAIでいらなくなりますか?
記帳や文書の下書き、情報の整理といった作業は、AIが受け持つ範囲が広がりつつあります。一方で、税務の判断と申告内容の確定は資格を持つ税理士が責任を負う仕事で、税理士法第38条の守秘義務もかかります。AIは下調べと下書きの道具として使い、判断は税理士が行う形が現実的です。
税務特化のAIツールがあれば、汎用の生成AIは要りませんか?
役割が違うため、置き換えにはなりにくいと考えられます。税務特化ツールは税法の調べ物や顧問先ごとの定型作業に的を絞っている一方、顧問先へのメールや面談メモの要約、補助金の公募要領の読み込みといった税務以外の読み書きは汎用の生成AIが受け持ちます。F&M One GeNNectのように、汎用の生成AIに税務相談botを載せた形のサービスもあります。
会計ソフトのAI機能に追加料金はかかりますか?
機能ごとに対象のプランや提供の形が異なります。freeeのAIおまかせ明細取得のように、一部のプランで利用に制限があると案内されているβ版の機能もあります。契約中のプランで使えるか、追加の費用がかかるかは、各社の案内や契約中の画面で確かめてください。
無料版のChatGPTに顧問先の情報を入れてもよいですか?
おすすめしません。個人向けのプランは学習に使うかどうかが本人の設定次第で、事務所から設定や利用の記録を確かめられません。顧問先の情報を扱うなら、業務データが既定で学習に使われないChatGPT Businessのような法人向けプランなど、事務所で契約した環境に限るのが安全です。
税理士向けのAIセミナーや勉強会はありますか?
会計事務所向けの勉強会型のサービスもあります。たとえばエフアンドエムのAI研究会は、生成AIの情報提供と活用支援を行う会員制のサービスで、料金はブロンズが入会金5万円・月額1万円、シルバーが入会金10万円・月額3万円(いずれも税抜・2026年9月20日確認)と公表されています。AI研究会の会費にAIツールそのものの利用料は含まれず、F&M One GeNNectとは別の契約です。
TKCのシステムとChatGPTやClaudeを直接つなげますか?
TKCは2026年5月27日の発表で、MCPサーバーを提供しない方針を示しています。関与先企業のデータを守る設計思想として説明されており、会計事務所向けのOMSエージェントなど、同社のシステムの中で動くAIを2026年9月末から順次提供するとしています。freeeはfreee-mcpを、マネーフォワードは公認メンバーのうちプラチナメンバー限定のMCPサーバーβ版を発表しており、各社の方針は分かれています。
職員が5人ほどの小さな事務所でも、事務所で契約したほうがよいですか?
費用だけでなく管理の面から考えると、小さな事務所でも事務所で契約する意味があります。職員が個人のアカウントで使うと、学習の設定や退職時の停止を事務所から確かめられません。ChatGPT BusinessとClaude Teamはどちらも2名から契約でき、ChatGPT Businessを5人全員に配る場合は年払いで月100ドル(1ドル=150円で計算した場合は約15,000円)になります。
会計ソフトのAIと税務特化ツールで、勘定科目の判定が食い違ったらどうしますか?
どちらかを正解として採るのではなく、食い違った取引こそ人が確かめる対象と考えてください。取引の事実関係を確かめ、法令・通達・国税庁の質疑応答事例で根拠を見たうえで、税理士が判断します。判断した理由を顧問先ごとの記録に残すと、同じ種類の取引が出てきたときの確認が早くなります。
職員が個人で契約したChatGPT Plusを、業務に使ってもらってもよいですか?
ChatGPT Plusは月20ドルの個人向けプランで、学習の設定や利用の記録を事務所から管理できません。顧問先の情報を扱う業務には、事務所で契約した法人向けの環境を用意し、個人契約からの切り替えを案内するのが現実的です。
Google Workspaceを使っていれば、Geminiだけで足りますか?
文書作成や要約の多くはWorkspaceのGeminiでこなせますが、プランによって使える範囲が違います。Google Workspaceの料金ページでは、GeminiアプリはBusiness Starterから基本的なアクセス、Business Standard以上でより広いアクセスとされ、ドキュメントやスプレッドシートの中で使えるのはBusiness Standard以上です。長い資料の読み込みや調べ物で別のAIと答えを見比べたい場合は、複数のAIを使える環境を検討してください。
料金が公表されていない税務特化ツールは、どう比べればよいですか?
見積もりを取るときに、料金の単位(顧問先の数・ライセンス・人数のどれで決まるか)、初期費用や登録料、最低利用期間、途中で減らせるかどうかを同じ項目で聞き、最短で解約した場合の総額まで出してもらうと比べやすくなります。料金を公表しているサービスと並べるときも、この総額で比べると条件の違いが見えやすくなります。
税務特化ツールの回答は、そのまま顧問先に伝えてもよいですか?
そのまま伝えるのは避けてください。税務特化ツールでも、参照している資料の範囲や時点には限りがあります。回答に出てきた条文や通達は、国税庁の法令解釈通達・質疑応答事例・タックスアンサーで原文を確かめ、税理士が判断したうえで顧問先に伝える流れにしておくと安心です。

まとめ

税理士・会計事務所のAIツールは、税務特化ツール・会計ソフト内蔵のAI・汎用の生成AIの3種類に分けて考えると、何をどれに任せるかが決めやすくなります。記帳と仕訳は会計ソフトの中で、税法の調べ物の一次確認は税務特化ツールで、文書作成・要約・調べ物全般は事務所で契約した汎用の生成AIで受け持ち、税務の判断は税理士が原典で確かめて行う、という分担が基本です。料金の単位は顧問先の数、ライセンスの束、1人ごとの席と種類ごとに違うため、ご自分の事務所の人数と顧問先の数で、実際の月額を出して比べてみてください。顧問先の情報を入れる前には、学習に使われない設定と、誰が使ったかを確かめられる仕組みを必ず用意しておきましょう。

導入した事務所の声は会計事務所のAI活用事例、Claudeの契約と設定は税理士事務所でClaudeを使うときの契約と設定、業務ごとの指示文は税理士事務所のAIプロンプト集にまとめています。法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。