
ローカルLLMでの翻訳とは、自社のPCやサーバーの中で動く言語モデルに文書を訳させ、原文を社外のサービスへ送らずに済ませる使い方です。社外秘の文書を外に出さずに訳すなら、先に決めるのは「どの区分の文書を、どの道具で訳してよいか」と「訳文を誰が、どう確かめるか」の2つになります。任せられるのは下訳までと考え、契約書や社外に出す文書の最終版は、原文が読める社員が突き合わせて確かめる前提で使いましょう。仕組みの全体像はローカルLLMとはにまとめているため、ここでは翻訳の使い方と線引きに絞ってお伝えします。
社外秘の文書をローカルLLMで訳す理由|機密とオフライン
ローカルLLMで訳す大きな理由は、原文がPCの外へ出ていかないことにあります。クラウドの翻訳サービスでは、貼り付けた文章やアップロードしたファイルが提供元のサーバーに送られ、そこで訳されて戻ってきます。送られた文章がどう扱われるかはサービスと料金プランで違うため、規約を読まないまま社外秘の文書を貼るのは避けたいところです。
実際に、DeepLの無料版の利用規約には、無料のサービスで機密データや個人データを含む内容を処理してはいけないという趣旨の条項があります。同じ規約で、DeepLはアップロードされた内容と訳文を、一定期間ニューラルネットワークの学習と改善のために処理する権利を持つとしています。一方で有料のDeepL Proについては、訳した文章を同意なく保存したり学習に使ったりしない旨をDeepLがデータセキュリティのページで説明しており、こちらは同社の説明(自己申告)となります。同じ翻訳サービスでも、無料版と有料版でデータの扱いが大きく変わる点は覚えておいてください。
Google翻訳の無料のWeb版については、入力した文章の扱いを明記した公式の説明が見当たらないため、ここでは良し悪しを断定しません。有料の別製品であるCloud Translation APIは、送った内容を学習に使わないとGoogleが説明していますが、無料のWeb版とは別のものとして考える必要があります。
ローカルLLMなら、モデルを一度PCに入れてしまえば、訳す作業そのものはインターネットにつながなくても進められます。出張中の機内や、ネットにつながない検証用のPCでも使えるのは、クラウドにはない利点となります。ただし、オフラインで動くからといって、誰がどの文書を訳したかまで会社が把握できるわけではありません。次の節の線引き表で、文書の区分ごとに使ってよい道具を先に決めておきましょう。
※2026年10月6日時点で各公式ページを確認しています。DeepL無料版の利用規約(https://www.deepl.com/en/terms-of-use)、DeepL Proのデータセキュリティ(https://www.deepl.com/pro-data-security)、Google Cloud Translation APIのデータの扱い(https://docs.cloud.google.com/translate/data-usage)。規約は変わることがあるため、使う前に最新の版をご確認ください。
文書の区分ごとに決める、訳してよい道具の線引き表
線引きは、文書を4つの区分に分け、区分ごとに使ってよい道具を表にして社内に配るのが分かりやすい形になります。区分は情報管理の規程がある会社ならその区分に合わせ、ない会社は次の4つから始めてみてください。
| 文書の区分 | 例 | ローカルLLM | 契約したクラウド翻訳(有料版・規約を確認済み) | 無料のWeb翻訳 |
|---|---|---|---|---|
| 公開 | 公開済みのWebページ、プレスリリース、製品カタログ | 使ってよい | 使ってよい | 使ってよい |
| 社内限り | 社内の通知、議事録、手順書 | 使ってよい | 使ってよい(規約と設定を確かめたもの) | 使わない |
| 社外秘 | 見積、開発資料、取引条件、未公開の企画 | 使ってよい(会社が決めたPCで) | 会社として可否を決める(秘密保持契約の条文も確認) | 使わない |
| 個人情報・契約・未公開の財務 | 社員や顧客の個人情報、契約書、決算発表前の数字 | 使ってよい(決めたPCで、訳した人と確認した人を記録) | 原則として使わない | 使わない |
表のうち、会社ごとに判断が分かれるのは「契約したクラウド翻訳を社外秘に使うか」の1マスです。有料版で保存しないと説明されていても、取引先との秘密保持契約で外部サービスへの入力を禁じている場合があるため、契約の条文を見て決めることになります。個人情報と契約書は、ローカルLLMで訳す場合でも、訳したPCと確認した人を記録に残しましょう。区分の決め方そのものは生成AIの社内ガイドラインの作り方と同じ考え方で進められます。
翻訳に使えるローカルモデル|TranslateGemmaとPLaMo翻訳
翻訳に絞って作られたモデルとしては、GoogleのTranslateGemmaと、Preferred Networks(PFN)のPLaMo翻訳がよく名前の挙がる候補です。汎用の対話モデルでも「次の文章を日本語に訳してください」と頼めば訳すことは出来ますが、翻訳専用のモデルは最初から翻訳の用途に合わせて作られています。モデルごとの細かな比べ方はローカルLLMのモデル比較に、日本語の得意なモデルは日本語に強いローカルLLMに任せ、ここでは翻訳で使う前提の確認点を見ていきます。
TranslateGemma(Google)
TranslateGemmaは、Googleが2026年1月15日に公式ブログで公開した翻訳向けのモデルです。サイズは4B・12B・27Bの3種類で、55の言語に対応しています。Bは10億を表す記号で、モデルの中にある数値(パラメータ)の数、つまりモデルの大きさの目安になります。Ollamaのライブラリにも登録されていて、取得するファイルの大きさは4Bが3.3GB、12Bが8.1GB、27Bが17GBとなっています。Googleは、12Bが同社の評価でGemma 3の27Bを上回ったと発表していますが、第三者が同じ条件で確かめた結果ではない点に注意してください。同じブログでは、4Bをスマートフォンなどの端末向け、12Bを一般的なノートPC向け、27Bをクラウド向けと位置づけています。使う前にはGoogleのGemma利用規約と禁止用途のポリシーへの同意が必要で、規約では出力された訳文についてGoogleは権利を主張しないとされる点も押さえておきましょう。
PLaMo翻訳(Preferred Networks)
PLaMo翻訳(plamo-2-translate)は、PFNが公開した英語と日本語のあいだの翻訳に向けたモデルです。PFNは2025年5月27日の発表で、PCのローカル環境でも動き、機密性の高い文書も訳せると説明していました。公式のコマンドラインツールはApple Silicon搭載のMacが中心で、Windows向けの公式の手段は確認できていません。Ollama向けなどに変換された版も出回っていますが、これらは第三者が作ったもので、PFNが公式に配っているものではない点に気をつけてください。
PLaMo翻訳を会社で使う前に確かめるライセンス
PLaMo翻訳はPLaMoコミュニティライセンスで配られていて、ダウンロードの前にこのライセンスへの同意を求められます。ライセンスでは組織の中での利用も商用目的に含まれ、社内翻訳だけでも商用の扱いとなります。商用目的で使えるのは、PFNの公式の登録ページで事前に登録し、さらに利用する会社または関連会社の年間売上高が10億円を超えない場合に限られます。売上高が10億円を超える会社は、PFNから別に商用ライセンスを受ける必要があります。関連するWebサイトや資料に「Built with PLaMo」と示す条項もあるため、社内で使うだけの場合にどう当てはまるかも含めて、導入前に条文を読んでおいてください。条件は利用する会社だけでなく関連会社の売上高にもかかっているため、グループ会社がある場合は経理の方とも数字を確かめましょう。
※2026年10月6日時点で各公式ページを確認しています。TranslateGemmaはGoogle公式ブログ(2026年1月15日・https://blog.google/innovation-and-ai/technology/developers-tools/translategemma/ )とOllamaライブラリ(https://ollama.com/library/translategemma)、PLaMo翻訳はHugging Faceのモデルページ(https://huggingface.co/pfnet/plamo-2-translate)とPLaMo community license(第1条・第3条)を参照。モデルの評価はいずれも提供元の発表です。
OllamaとLM Studioで翻訳用の環境を用意する
翻訳用の環境は、OllamaかLM Studioのどちらかを1台のPCに入れ、そこへ翻訳向けのモデルを取得する形が手軽な始め方になります。Ollamaは文字で指示を打ち込んで動かす道具で、設定を変えれば社内の別のPCから呼び出す使い方にも向いています。LM Studioは画面の操作でモデルを探して入れられるため、まず試してみる段階では扱いやすいでしょう。インストールから社内公開までの手順はOllamaを社内で使えるようにする手順にまとめているため、ここでは翻訳用のPCで確かめておく設定に絞ります。
Ollamaで確かめる2つの設定
OllamaでTranslateGemmaを使う場合は、「ollama run translategemma:12b」のようにモデル名とサイズを指定して呼び出します。翻訳用のPCで確かめておきたいのは、待ち受けの範囲とクラウド機能の2つです。Ollamaは初期設定では127.0.0.1のポート11434で待ち受けるため、そのPCの中からしか呼び出せない状態で動きます。社内の別のPCから使えるように待ち受けの範囲を広げる場合はOLLAMA_HOSTという設定を変えることになり、誰が呼び出せるかを社内のネットワーク側で絞る必要が出てきます。
ローカルのモデルだけで訳すつもりなら、Ollamaのクラウド機能は止めておきましょう。止め方は、環境変数OLLAMA_NO_CLOUDに1を設定するか、設定ファイル(~/.ollama/server.json)でdisable_ollama_cloudをtrueにする方法が公式のFAQで案内されています。Ollamaのクラウドモデルを選ぶと、プロンプトと応答はOllama側で処理されるというのが同社の説明です。翻訳用のPCでは、この設定が入っているかを最初に確かめてみてください。
LM Studioを職場で使う条件
LM Studioは、2025年7月8日の公式ブログで、家庭でも職場でも無料で使えるようになったと案内されています。アプリの利用規約は、個人と社内業務の目的で使うためのライセンスとされ、SaaSとして外部に提供したり再販したりする使い方は認められていません。社内の翻訳に使う範囲なら、この条件に収まることが多いでしょう。
※2026年10月6日時点で確認しています。Ollama FAQ(https://docs.ollama.com/faq)、Ollama Cloudの説明(https://docs.ollama.com/cloud)、LM Studio公式ブログ(https://lmstudio.ai/blog/free-for-work)、LM Studioアプリ利用規約(https://lmstudio.ai/app-terms)。
PCのメモリとモデルサイズの目安|翻訳用PCを誰が用意するか
翻訳用のPCは、使うモデルのファイルがメモリに余裕を持って収まるかどうかで選ぶことになります。TranslateGemmaで言えば、4Bは3.3GB、12Bは8.1GB、27Bは17GBのファイルを読み込むため、少なくともその大きさを上回るメモリ(GPUを積んだPCならGPUのメモリ)が要ります。実際には訳す文章の長さや、同時に動かすほかのアプリのぶんもメモリを使うため、ファイルの大きさぎりぎりのPCでは動きが重くなってしまいます。Googleが12Bを一般的なノートPC向けと位置づけている点も、選ぶときの手がかりになるでしょう。機種の選び方とメモリの目安はローカルLLMに必要なPCスペックで詳しく比べています。
翻訳用PCを置くと、社内で増える作業
1台のPCで試すところまでは手軽でも、会社の翻訳の道具として使い続けるとなると、担当者の作業が増えていきます。モデルの入れ替えやOllama・LM Studioの更新、クラウド機能を止めた設定が保たれているかの確認、誰がどの文書を訳したかの記録は、すべて社内の誰かが受け持つ形になります。翻訳したい社員が複数の部署にいると、PCを1台に集めるか、部署ごとに用意するかも決めなければなりません。情シスの専任がいない会社では、この運用を誰が続けるかを先に決めないと、翻訳用のPCは置かれたまま使われなくなってしまいます。自社で用意するか、既製のサービスで済ませるかは、後半の比較表で並べて考えてみてください。
担当者がPCと設定を見張り続ける形を変えたいなら、使うAIの環境を会社で1つにまとめる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
DeepL・Google翻訳などクラウド翻訳との比較|精度・速度・費用
クラウド翻訳とローカルLLMの違いは、訳の出来よりも、原文の行き先と、手間や費用を誰が持つかに表れます。訳の質は文書の種類や言語の組み合わせで入れ替わるため、どちらが上とは言い切れません。自社の文書で試した結果で決めるのが確実で、その手順は後の節で紹介します。
| 比べる点 | ローカルLLM | 有料のクラウド翻訳(DeepL Proなど) | 無料のWeb翻訳 |
|---|---|---|---|
| 原文の行き先 | 自社のPCの中 | 提供元のサーバー | 提供元のサーバー |
| 学習への利用 | 社外に出ないため、提供元に渡らない | DeepL Proは同意なく保存・学習に使わないとDeepLが説明。Cloud Translation APIは学習に使わないとGoogleが説明 | DeepL無料版は学習と改善のために処理する権利を留保。Google翻訳の無料Web版は公式の明記を確認できず |
| 訳の質 | モデルと文書で差が出る。自社の文書で試して決める | サービスと文書で差が出る | サービスと文書で差が出る |
| 速さ | PCの性能とモデルの大きさ次第 | 回線とサービス次第 | 回線とサービス次第 |
| 費用 | 文字数に応じた利用料はかからない。PC代と担当者の手間がかかる | 利用料がかかる | 無料(DeepL無料版は規約で機密データの処理を禁止) |
| オフライン | 使える | 使えない | 使えない |
| 訳し方の指示 | プロンプトで用語や文体を指定できる | サービスの機能の範囲で指定 | 用語や文体の指定は限られる |
無料で使える範囲と、かかる費用
ローカルLLMで訳す場合、訳した文字数に応じた利用料は発生しません。LM Studioは職場でも無料で使えると案内されていて、PLaMo翻訳も年間売上高が10億円を超えない会社は事前登録のうえで商用に使える条件になっています。その代わり、翻訳用のPCを買う費用や、前の節で挙げた運用の手間は会社が持つことになります。無料かどうかはソフトの値段だけで決めず、PC代と担当者の時間を含めて比べてみてください。
※2026年10月6日時点で各社の公式ページを確認しています。データの扱いはいずれも提供元の説明(自己申告)です。訳の質や速さの数字は、条件で大きく変わるため載せていません。
長文・PDFを訳すときの分け方と翻訳用プロンプト
長い文書は、見出しや段落の区切りで分けて少しずつ訳すほうが、抜けや取り違えが起きにくくなります。一度に長い文章を渡すと、段落が丸ごと抜けたり、訳の途中で文体が変わったりすることがあるためです。分ける単位は1〜2段落ほどを目安にし、前の段落の訳も一緒に渡すと、言葉の選び方がそろいやすくなるでしょう。
翻訳用プロンプトのひな形
汎用の対話モデルで訳すときは、毎回同じ指示を使うと訳のばらつきを抑えられます。次のひな形の[]の中を、文書に合わせて書き換えて使ってみてください。
あなたは[業種]の社内文書を訳す翻訳者です。 次の[英語]の文章を[日本語]に訳してください。 ・原文にない説明や要約を足さない ・数字、日付、金額、固有名詞は原文のまま残す ・次の用語は指定の訳語を使う:[原語]→[訳語] ・意味があいまいな箇所は【要確認】と書いて残す ・訳文だけを出力する [原文]
翻訳専用のモデルは、指示の書き方がモデルの説明ページで決められている場合があるため、そちらの書式に合わせるほうが無難です。用語集は部署ごとに作るより、会社で1つの表にまとめて、ひな形に貼り込む形にするとそろえやすくなります。
PDFはレイアウトを保つ道具を使う
PDFは、文字を抜き出して貼り付けると、表や段組みが崩れて文の順番が入れ替わることがあります。表の多いPDFは、文字だけを抜き出して訳すと数字と項目がずれやすくなってしまいます。レイアウトを保ったまま訳す道具としてはPDFMathTranslateというオープンソースのソフトがあり、論文のPDFの数式や図表の配置を保って訳し、訳すエンジンにOllamaを選ぶことも出来ます。ライセンスはAGPL-3.0のため、手を加えて社外に提供するような使い方を考える場合は、条件を先に確かめておきましょう。社内の資料で試すときも、まず社外秘でないPDFで、表や注記の位置がずれないかを見てから広げてみてください。
※PDFMathTranslate(https://github.com/PDFMathTranslate/PDFMathTranslate)。機能を足した派生版としてPDFMathTranslate-nextも公開されています。2026年10月6日時点。
文書の種類ごとの向き不向きと、人の確認が要る文書
ローカルLLMの翻訳が向くのは内容をつかめれば足りる社内向けの文書で、社外に出す文書や法的な意味を持つ文書ほど、人の確認が欠かせなくなります。次の表を、部署ごとに使い方を決めるときのたたき台にしてみてください。
| 文書の種類 | 向き不向き | 人の最終確認 |
|---|---|---|
| 社内メール・チャットの読解(英→日) | 向く。意味をつかむ用途なら下訳で足りる | 判断に関わる数字と日付だけ確認 |
| 会議資料・議事録 | 向く | 社外に配る場合は必要 |
| 社内マニュアル・手順書 | 向く。用語集をそろえると訳が安定する | 公開前に担当部署が確認 |
| 技術文書・仕様書 | 向く。専門用語の用語集が前提 | 数値・単位・型番を照合 |
| 契約書・覚書 | 下訳まで | 必須。最終は法務または専門家 |
| 英文の開示資料・IR資料 | 下訳まで | 必須。数字と表現を担当部署と照合 |
| 社外向けのメール・提案書(日→英) | 下訳まで | 必須。送る前に原文が分かる社員が確認 |
訳す向きによっても気をつける点は変わり、英語を日本語にする場合は読む人が社内なので、多少のぎこちなさは許されます。日本語を英語にして社外へ出す場合は、相手が訳文だけを読むため、誤訳がそのまま会社の発言として伝わってしまいます。社外に出す英文は、ローカルLLMの訳を下書きとして扱い、必ず人が読み直してから送りましょう。会議の録音を文字にしてから訳したい場合は、ローカルLLMで会議の録音を文字起こしする方法もあわせて見てみてください。
訳文の確認工程チェックリスト
訳文の確認は、原文と訳文を並べて、間違えると困る箇所から順に照らし合わせる流れで進めます。生成された訳は文として自然に読めるため、読み流すだけでは数字の写し間違いや、否定と肯定が入れ替わった文に気づきにくくなります。次の項目を、確認する人の手元の紙や共有の表にして使ってみてください。
- 原文と訳文を左右に並べる段落の数が合っているかを最初に数え、抜けた段落がないかを確かめます。
- 数字・日付・金額・単位を照合する桁、小数点、通貨、年の表記(和暦・西暦)が原文どおりかを1つずつ見ます。
- 固有名詞の表記をそろえる社名・人名・製品名・地名が原文のつづりのままか、社内で決めた表記になっているかを確かめます。
- 否定・例外・期限の文を読み直す「〜しない」「〜の場合を除き」「〜まで」のような文は、意味が反対になっていないかを原文で確かめます。
- 用語集と突き合わせる同じ語が文書の中で別の訳になっていないか、社内の訳語の一覧と照らして見ます。
- 大事な段落は逆翻訳する訳文をもう一度元の言語に戻し、原文と意味がずれていないかを比べます。ずれた箇所は人が原文で確かめます。
- 確認した人と日付を残す誰がいつ確認したか、どのモデルで訳したかを、文書の末尾や管理表に書き残します。
逆翻訳は、同じモデルで戻すと同じ思い込みを繰り返すことがあるため、別のモデルで戻すほうが食い違いに気づきやすいでしょう。確認者と日付の記録は、後で誤訳が見つかったときにどの文書へ広がったかをたどる手がかりになります。
候補モデルを社外秘でない10段落で比べる社内テスト
モデル選びは、ベンチマークの順位ではなく、自社の文書に近いサンプルで比べて決めるのが確実です。研究の世界ではBLEUやCOMETのような訳の良さを数値で測る指標が使われていますが、社内で選ぶ段階では、原文が分かる社員が目で見て照らし合わせる方法で足りるでしょう。BLEUは2002年の学会論文(Papineniほか)、COMETは2020年の学会論文(Reiほか)で提案された指標で、興味がある方は原典をたどってみてください。
- 社外秘でない文書から、社内メール・マニュアル・技術文書など、普段訳す種類を混ぜて10段落を選びます。
- 数字・日付・固有名詞・否定の文を含む段落を、少なくとも3つは入れておきます。
- 候補のモデル(例:TranslateGemmaの4Bと12B、PLaMo翻訳、普段使う汎用モデル)で、同じプロンプトを使って訳します。
- どのモデルの訳かを伏せて、原文が分かる社員2名に読んでもらいましょう。
- 前の節のチェックリストで誤りを数え、誤りの数と、直すのにかかった手間を表にまとめます。
- 1段落を訳すのにかかった時間も、実際に使うPCで測って記録しておくと比べやすくなります。
- 結果をもとに文書の種類ごとに使うモデルを決め、見直す時期も決めておきましょう。
社外秘でない文書で比べるのは、扱いをまだ決めていない道具に、守るべき文書を通さないためです。10段落は、確認する社員の負担を抑えながら、モデルごとの癖が見えてくる分量の目安となります。新しいモデルが出たときも、同じ10段落で訳し直せば、前の結果と並べて比べることが出来ます。
※BLEU:Papineni et al., ACL 2002(https://aclanthology.org/P02-1040/)。COMET:Rei et al., EMNLP 2020(https://aclanthology.org/2020.emnlp-main.213/)。
会社で安全に使うには|自社で構築する場合と既製の法人向けサービス
会社で翻訳にAIを安全に使うには、学習させない設定、ログの管理、社員への配布、複数のAIの使い分けの4つを、誰が受け持つかまで決めることになります。ローカルLLMを自社で構築すれば原文は社内に残りますが、この4つの作業はすべて社内の担当者の仕事として残ります。既製の法人向けサービスを使う場合は原文が提供元を通りますが、設定や管理の多くを提供元の仕組みに任せられます。次の表で、作業ごとにどちらが受け持つかを並べてみましょう。
| 作業 | ローカルLLMを自社で構築・運用 | 既製の法人向けAIサービスを契約 |
|---|---|---|
| 原文の置き場所 | 自社のPCの中 | 提供元のサーバー(保管場所は契約前に確認) |
| 学習させない設定 | 原文が外へ出ないため不要。クラウド機能を止めたかの確認は社内で行う | 提供元の設定と規約を契約前に確認 |
| 利用ログ | 記録の仕組みを社内で用意する | 管理画面で見られるかを確認 |
| 社員への配布と停止 | PCの設置か社内公開を社内で用意する | アカウントの発行と停止で済む |
| モデルの入れ替え・更新 | 担当者が入れ替える | 提供元が対応するモデルに限られる |
| 複数のAIの使い分け | 使うモデルごとに入れて管理する | 1つの画面で切り替えられるサービスもある |
| PC・サーバーの用意 | 必要 | 不要(社員の普段のPCで使う) |
社外秘や個人情報を含む文書が多く、ネットから切り離して訳したい会社は、ローカルLLMを1台の専用PCから始める形が合っています。社内限りの文書が中心で、翻訳のほかに要約や下書きにもAIを使いたい会社は、既製の法人向けサービスで全社に配るほうが運用の手間は軽くなるでしょう。両方を使い分け、社外秘の上の区分だけをローカルLLMに回す形も選べます。会社が翻訳の道具を用意しないままだと、社員が無料のWeb翻訳に社外秘の文章を貼る野良AI(シャドーAI)の形になりやすくなってしまいます。社内で使ってよいサービスの決め方は生成AIのセキュリティ対策チェックリストで、点検の項目ごとに整理しています。
訳す道具の線引きと、全社で使うAI環境をあわせて整える
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けサービスです。全モデルで学習非利用を標準適用し、会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理。管理画面では誰が・いつ・どのAIを使ったかを一覧でき、使わせるAIも会社が選べます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
ローカルで翻訳できるソフトは何がありますか?
翻訳におけるLLMとは何ですか?
ローカルLLMの翻訳はDeepLより精度が高いですか?
無料のDeepLやGoogle翻訳に社外秘の文書を入れてもよいですか?
インターネットにつながないPCでも翻訳できますか?
PLaMo翻訳は会社で無料で使えますか?
まとめ
ローカルLLMでの翻訳は、原文を社外のサーバーへ送らずに訳せる点が大きな利点で、社外秘や個人情報を含む文書の下訳に向いています。使い始める前に、文書の区分ごとに使ってよい道具を決め、PLaMo翻訳のように会社での利用に条件があるモデルはライセンスを確かめておきましょう。訳文は数字・固有名詞・否定を中心に原文と照らし合わせ、契約書や社外に出す英文は人の確認を必ず通す形になります。翻訳用のPCを自社で管理し続けるか、既製の法人向けサービスに任せるかは、運用の担当者を置けるかどうかで決めてみてください。ローカルLLMの全体像はローカルLLMとは、ほかの記事はAI活用コラム一覧からご覧いただけます。
