
マニュアル作成のAI活用とは、業務の手順や操作の流れを生成AIに渡し、手順書の下書き・言い換え・翻訳を任せて、人が確かめて仕上げる作り方です。最初の下書きは短い時間で出来上がりますが、社内の手順を入れる前の学習の設定と、人による確認の2つは欠かせません。手順書の型を先に決めてAIに渡すと、誰が作っても同じ形の手順書がそろうようになります。設定の名前や上限の数字は、2026年9月時点で各社の公式ヘルプに書かれている内容に限って載せています。
生成AIでマニュアルを作る流れ|材料を渡す→指示→生成→人が確認
生成AIでのマニュアル作成は、目的と読み手を決める、材料を渡す、指示を出して下書きさせる、人が確かめて直す、の4段階で進めるのが基本になります。AIが肩代わりできるのは2段目と3段目の大部分で、1段目と4段目は人の仕事として残ります。実際に手間が減るのは、白紙から文章を起こす時間と、書き方をそろえる時間となります。
目的と読み手(対象者)を先に決める
最初に決めたいのは、そのマニュアルを誰が、どの場面で読むのかという点です。入社1週目の新人が一人で経費精算を終えるための手順書と、経理担当者が月末に確認するための手順書では、書くべき細かさがまったく違ってきます。AIは読み手を指定されないと、中くらいの細かさの無難な文章を返しがちです。目的は「このマニュアルを読んだ人が何を終えられるようになるか」を1文で書き、読み手は部署・経験年数・使う端末まで書き出してみてください。この2行が、後で渡すプロンプトの冒頭にそのまま入ります。
材料を集めてAIに渡す
AIに渡す材料には、今ある手順メモ、古いマニュアル、作業を口頭で説明した録音の文字起こし、画面のスクリーンショットなどが使えます。材料が少ないほど、AIはもっともらしい手順を自分で補ってしまいます。ベテランの方に作業を一度通しで話してもらい、その文字起こしを渡すだけでも、抜けの少ない下書きになりやすくなります。ただし、材料の中に顧客名やパスワードが混ざっていないかは、渡す前に必ず見ておきましょう。何を消すべきかは、後の判断表にまとめています。
指示を出して下書きを作らせる
指示には、書き手の役割、目的、読み手、出力の形、守ってほしい制約の5つを入れると、出力がぶれにくくなります。特に効くのは出力の形で、表の列まで指定すると、手順の粒度がそろった下書きが返ってきます。そのまま貼れるひな形は、プロンプトの節に載せました。
AIの出力は人が確認・修正してから使う
AIが書いた手順書には、存在しないボタン名や、社内の実際とは違う順番が混ざることがあります。WordのCopilotの公式ヘルプも、事実・番号・名前・ポリシーの記述などは確認して検証するよう注意を促しています。確認は、手順書を見ながら実際にその作業を最後まで操作してみる方法が確実でしょう。作った本人ではなく、その業務を知らない方に試してもらうと、説明が足りない箇所がはっきりします。
確認で直す箇所が多いときは、AIの性能より材料の不足を疑ってみてください。手順メモを1行足すほうが、指示文を書き直すより早く直ることが多くなります。
社内の手順を入れる前に確かめたい学習の設定
社内の手順を個人向けのAIに入れる前に、入力した内容がAIの学習に使われない設定になっているかを確かめておく必要があります。ChatGPT・Gemini・Claudeの個人向けプランは、利用者が自分で設定を変えない限り、会話が学習に使われうる扱いと各社のヘルプや料金ページで説明されています。会社で契約する法人向けのプランが、既定で学習に使わないと各社が説明しているのとは対照的です。
ChatGPT:データコントロールで学習をオフにする
ChatGPTでは、プロフィールアイコンから設定を開き、データコントロールにある「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにします。公式ヘルプの中には「すべてのユーザー向けにモデルを改善する」という表記もあり、画面の文言が少し違って見えることがあります。オフにすると、使っている端末に関係なくアカウント全体に反映され、対象はオフにした後の新しい会話と説明されています。1回だけ学習させずに使いたい場合は、新しいチャットの画面右上にある「一時」ボタンから一時チャットを始める方法もあります。一時チャットは履歴に残らず、メモリも作られず、学習にも使われませんが、安全上の理由で最長30日間コピーを保管する場合があると書かれています。なお、回答に「良い回答」「良くない回答」の評価を送ると、学習をオフにしていてもその会話全体が学習に使われることがあるので注意しましょう。
Gemini:アクティビティの保存をオフにする
Geminiでは、パソコンで gemini.google.com を開き、[設定とヘルプ] から [アクティビティ] を選び、上部の [オン] を押して [オフにする] を選びます。18歳以上の利用者は、この [アクティビティの保存] が最初からオンになっています。オフにしても、会話は最長72時間はアカウントに残る仕組みです。オンのまま使う場合、アクティビティは既定で18か月後に自動で削除され、3か月・36か月・自動削除しない、から選び直すことが出来ます。会社のGoogle Workspaceのアカウントでも、対象となるエディション(Business Starter・Standard・Plus、Enterpriseなど)で使う場合は、チャットやアップロードしたファイルが人のレビューや生成AIモデルの改良に使われないと説明されており、この設定を変えられるのも管理者だけとなります。
Claude:プライバシーの設定で学習をオフにする
Claudeでは、設定からプライバシーを開き、英語版ヘルプで Help Improve our AI models と表記されている項目のスイッチをオフにします。オフにした後の新しいチャットは、今後のモデルの学習に使わないと説明されています。ただし、安全性の審査で問題があると判定された会話は、信頼と安全のための改善に使われる場合があります。TeamやEnterpriseなどの法人向けプランは、料金ページの比較表で学習への利用が「デフォルトではなし」と示されています。
Copilot Chat(旧Microsoft 365 Copilot Chat):緑色のシールドを確かめる
WordやExcelを使う会社であれば、Microsoft 365の職場アカウント(Microsoft Entraのアカウント)でCopilot Chatにサインインしているかを確かめましょう。職場アカウントでサインインするとエンタープライズデータ保護(EDP)が適用され、画面上部の [New Chat] ボタンの横に緑色のシールドが表示されます。個人のMicrosoftアカウントでサインインした場合は、Copilot Chatのコンシューマー版(個人向けのCopilot)として動くと説明されています。シールドが見えない画面に社内の手順を貼るのは、いったん止めておくのが無難です。EDPは対象となるMicrosoft 365を契約している組織なら、職場アカウントでのサインインで追加料金なしで使えるので、まずは表示を確かめてみてください。
| サービス | 学習に使わせないための設定・確認 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| ChatGPT(個人向けプラン) | 設定>データコントロール>「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ | 評価ボタンで送った会話は学習に使われることがある。一時チャットも最長30日間は保管されうる |
| Gemini(個人のGoogleアカウント) | [設定とヘルプ]>[アクティビティ]>[オフにする] | オフでも最長72時間はアカウントに保存される |
| Claude(個人向けプラン) | 設定>プライバシー>Help Improve our AI models をオフ | 安全性の審査で判定された会話は例外になりうる |
| Microsoft Copilot Chat(旧Microsoft 365 Copilot Chat) | 職場アカウントでサインインし、[New Chat] の横の緑色のシールドを確認 | 個人のアカウントではコンシューマー版(個人向けのCopilot)になる |
※設定の名前と手順は、2026年9月時点で各社の公式ヘルプ(OpenAI・Google・Anthropic・Microsoft)に書かれている内容です。画面の表記は更新で変わることがあります。
マニュアルに入れてはいけない情報の判断表
マニュアルの材料としてAIに渡す前に、情報を「入れない」「伏せ字にして入れる」「入れてよい」の3つに分けておくと、迷わずに作業を進められます。個人情報の扱いについて判断の根拠になるのが、個人情報保護委員会が2023年6月2日に出した生成AIサービスの利用に関する注意喚起です。この中で委員会は、個人情報を扱う事業者が個人情報を含むプロンプトを入力するときは、利用目的の範囲内かを十分に確かめるよう求めています。さらに、本人の同意なく個人データを入力し、それが回答の出力以外の目的で扱われる場合は個人情報保護法に違反する可能性があるとして、提供事業者が機械学習に使わないことを確かめるよう促しました。
| 情報の例 | 判断 | 理由と書き方 |
|---|---|---|
| マイナンバー(個人番号)・口座番号・健康に関する情報 | 入れない | 手順の説明に必要がなく、漏れたときの影響が大きい |
| パスワード・ログインID・APIキー・社内サーバーのアドレス | 入れない | マニュアル本文にも書かず、問い合わせ先だけを書く |
| 取引条件・単価・未発表の商品の情報 | 入れない | 個人向けのAIには入れず、学習に使われない法人向けの環境でも、社内ルールで扱いを決めてから入れる |
| 顧客・取引先の氏名、電話番号、メールアドレス | 伏せ字にして入れる | 顧客A、取引先B のように置き換えても手順の説明は成り立つ |
| 実際の画面のスクリーンショット | 伏せ字にして入れる | 写り込んだ顧客名・金額・メールアドレスを塗りつぶしてから渡す |
| 社内システムの画面名・ボタン名・メニューの順番 | 入れてよい | 手順書の中心になる情報で、正確に渡すほど下書きの質が上がる |
| 申請から承認までといった一般的な業務の流れ | 入れてよい | 誰が・いつ・何をするかを箇条書きで渡す |
表の「入れない」に当たる情報は、そもそも完成したマニュアルにも書かないのが基本になります。パスワードの置き場所を手順書に書く代わりに、「パスワードは情報システム担当に確認」と書き換えておきましょう。社内で入れてよい情報の線引きを文書にしておきたい方は、生成AIの社内ガイドラインの作り方も参考になります。
社員ごとの学習の設定に頼らず、手順書づくりに使うAIを会社として1つの環境にまとめる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
そのまま使えるプロンプト例と手順書のひな形
手順書づくりのプロンプトは、書き手の役割、目的、読み手、出力の形、制約の5つを毎回同じ順で書くと、仕上がりが安定します。下のひな形は、【】の部分を書き換えるだけで使えるようにしてあります。
ひな形プロンプト(書き手役・目的・出力形式・制約)
あなたは【業務名】に長く携わってきた、社内マニュアルの書き手です。 以下の【材料】をもとに、手順書の下書きを作ってください。 ■目的:このマニュアルを読んだ人が【例:一人で経費精算の申請を終えられる】ようになること ■読み手:【例:入社1か月以内の営業部員。パソコン操作は日常的にしている】 ■出力の形: 1. 冒頭に「この手順でできること」を2行で書く 2. 事前に用意するものを箇条書きにする 3. 手順は表にし、列は「No/操作/画面名・ボタン名/入力例/注意・よくある間違い/確認者」に固定する 4. 表の1行に書く操作は1つだけにする 5. 画像を入れたい位置に【画像:◯◯画面】と印を付ける 6. 最後に「材料から読み取れなかった点」を箇条書きで出す ■制約: ・材料に書かれていない画面名・ボタン名・数字は作らず、【要確認】と書く ・専門用語は初めて出たところで短く言い換える ・です・ます調で、1文は60字以内にする 【材料】 (ここに手順メモや作業の文字起こしを貼る。顧客名・パスワードなどは消してから貼る)
特に効くのは、材料にない画面名や数字を作らせず【要確認】と書かせる1行です。AIは空いている箇所をもっともらしく埋めようとするため、この1行がないと、存在しないボタン名が紛れ込みやすくなります。最後の「材料から読み取れなかった点」は、そのまま現場の担当者への質問リストとして使えます。
出力の型:No/操作/画面名・ボタン名/入力例/注意/確認者
出力の表の列を固定しておくと、誰が作った手順書でも同じ見た目にそろいます。
| No | 操作 | 画面名・ボタン名 | 入力例 | 注意・よくある間違い | 確認者 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 経費精算のシステムにログインする | ログイン画面/[ログイン] | 社員番号 12345 | 社員番号は半角で入れる | 本人 |
| 2 | 新しい申請を開く | トップ画面/[新規申請] | ― | 下書きが残っていたら先に削除する | 本人 |
| 3 | 領収書の日付と金額を入れる | 申請画面/[明細を追加] | 2026/9/25 3,300円 | 税込の金額で入れる | 本人 |
| 4 | 上長に申請する | 申請画面/[申請] | ― | 申請後に直せるかは【要確認】 | 上長 |
※表は出力の形を示すための架空のシステムの例です。画面名・ボタン名は実在の製品のものではありません。
確認者の列を入れておくのは、手順のどこで誰の目が入るかを、読み手が迷わないようにするためです。注意の列には、過去に実際に起きた間違いを書き足していくと、使うほど役に立つ手順書に育っていきます。表の列を先に決めて渡すと、手順の粒度がそろい、確認の手間も減らすことが出来ます。
用途別に変える部分(業務マニュアル・社内ツール・顧客対応)
ひな形のうち、用途によって書き換えるのは目的と出力の形の2か所です。
- 業務マニュアル(経費精算・受発注など)は、出力の形に「判断が分かれる場面」を足し、金額や取引先の種類といった条件ごとに手順を分けてもらう
- 社内ツールの操作手順は、画面名・ボタン名の列を必ず残し、画像を貼る位置の印を細かめに付けてもらう
- 顧客対応マニュアルは、よくある問い合わせと答え方の例を対にして出してもらい、使ってはいけない言い回しを制約に加える
- 図解やフローチャートは、手順を開始・処理・分岐・終了の要素に分けて書き出してもらい、清書は人が作図ツールで行う
フローチャートは、AIに要素と矢印の順番まで書き出させてから普段の作図ツールで描くと、手戻りが少なくなります。まずはどれか1つの業務で試し、うまくいった指示文を残しておけば、次の手順書からはずっと楽になるでしょう。
南陽市が公開している872例のプロンプト
自治体の実例では、山形県南陽市が業務で使っている生成AIのプロンプトを「一発OK!! 市民も使える!生成AI活用実例集(プロンプト集)」として公開しています。公開数は872例にのぼり、市の説明では2023年4月に活用の実証実験を始め、2024年4月に正式運用へ移りました。一覧の中には「顧客対応マニュアル作成」「組織内業務規定とルールブックの作成・改訂」「フローチャート作成の構成要素と注意ポイント生成」といった、マニュアルづくりに近いものも含まれます。自社の業務に近い例を探してひな形と見比べると、指示文の足りない部分に気づきやすくなります。
ひな形とテンプレートで型を固定する(ChatGPT・WordのCopilot)
毎回プロンプトを貼るのが手間に感じたら、ひな形そのものをAIの側に置いておく方法が便利です。
ChatGPTのプロジェクトにひな形と指示を固定する
ChatGPTのプロジェクトは、無料プランを含むすべてのプランで使える、チャットとファイルと指示を1か所にまとめる機能になります。プロジェクトの指示にひな形プロンプトを入れ、参考資料として旧マニュアルや社内の書式を追加しておくと、そのプロジェクト内のチャットでは毎回同じ型で下書きが出てきます。プロジェクトの指示はそのプロジェクトの中だけで効き、全体のカスタム指示より優先されます。追加できるファイルの数は、無料プランが1プロジェクト5個、GoとPlusが25個、ProやBusinessなどが40個までです。BusinessやEnterpriseではプロジェクトをワークスペース内の同僚と共有できるため、手順書の作り方そのものを部署でそろえることが出来ます。Business・Enterprise以外の個人向けプランで使う場合は、先ほどの学習の設定がプロジェクト内の情報にも関わってくるので、オフにしてから始めてください。
WordのCopilotで既存のテンプレートや手順メモから下書きする
社内の手順書をWordで管理している会社なら、WordのCopilotに既存のテンプレートを使わせる方法が合っています。公式ヘルプによると、テンプレートや既存の文書から始め、書式と構成を保ったまま新しい内容を下書きすることが出来ます。手順は、白紙の文書を開くか新しい内容を入れたい位置にカーソルを置き、右下隅のCopilotを開いて、トピック・対象読者・トーン・形式・長さを伝える流れです。元にしたい手順メモや旧マニュアルがある場合は、入力欄に「/」と入力してファイルを選び、最後に [生成] を選びます。使うには、対象のMicrosoft 365のサブスクリプションか、Microsoft 365 Copilotのライセンスが必要になります。出来上がった表や段落は、ほかの手順書と見比べながら、書式が崩れていないかを確かめましょう。
スクリーンショット・画像入りの手順書にする
操作を説明する手順書は、文章だけより、画面の画像を添えたほうが読み手の迷いが減ります。AIには画面のスクリーンショットを材料として渡し、画像ごとに「この画面で押すボタン」と「次に表示される画面」を書き出してもらう使い方が向いています。ChatGPTのプロジェクトには画像も追加でき、Geminiのチャットにも1回に10個まで(状況により制限がかかる場合があるとの案内付きで)ファイルを添付することが出来ます。画像を渡す前には、写り込んだ顧客名や金額、メールアドレスを塗りつぶしておいてください。
AIが読み取った画面名は、実際の画面と1文字ずつ照らし合わせる必要があります。似た名前のボタンが並ぶ画面では、読み違いがそのまま手順書に残ってしまいます。画像を貼る位置は、ひな形の出力の形に【画像:◯◯画面】と印を付けさせると決めやすくなります。完成版では1つの手順に画像1枚を目安にし、押す場所に枠や矢印を付けると伝わりやすいでしょう。
操作動画・画面録画からマニュアルを作る
作業を画面録画した動画をAIに渡し、手順書の下書きを起こしてもらう方法も広がっています。ManusやGoogle AI Studioに動画を上げて手順書を作る例も紹介されており、動画から手順を書き起こす機能を持つマニュアル作成の専用ツールもあります。文章で説明しにくい操作ほど、動画から起こす方法の効果が大きくなります。
Geminiアプリに動画を上げるときの上限
身近なところでは、Geminiアプリのチャットに動画を添付して手順書にしてもらう方法があります。公式ヘルプによると、動画は1ファイル2GBまでで、合計の長さは5分まで、Google AI ProとUltraでは合計1時間まで扱えます。5分を超える作業は、画面が切り替わる区切りごとに動画を分けて渡すと、上限に収まりやすくなります。録画するときに操作を声で説明しておけば、操作の意図までAIに伝えやすくなる点も覚えておきたいところです。個人のGoogleアカウントで使う場合は、先ほどの [アクティビティの保存] をオフにしてから上げてください。
Google AI Studio・Manusを使う前に確かめること
Google AI Studioを無料で直接使う場合は、Gemini APIの追加利用規約で無料サービスとして扱われます。この規約では、無料サービスに送った内容と回答が製品の改良に使われ、人のレビュアーが確認する場合があるとされ、個人情報や機密情報を送らないよう書かれています。社内の手順を録画した動画は、この条件に当たる前提で扱うのが安全です。Manusなどほかのサービスを使う場合も、入力した動画が学習に使われるかを利用規約で確かめてから試してみましょう。
マニュアル作成専用ツールとの使い分け
生成AIとマニュアル作成の専用ツールは、どちらが上というより、得意な範囲が違う道具と考えるのが自然です。汎用の生成AIは、文章の下書き・言い換え・翻訳・抜けの点検を得意とし、無料プランから試せる点が強みになります。専用ツールは、画面の取り込みから手順ページの組み立て、閲覧権限や更新履歴の管理までを1つの画面で扱える種類の製品です。
| 比べる点 | 生成AI(ChatGPT・Gemini・Claudeなど) | マニュアル作成の専用ツール |
|---|---|---|
| 得意なこと | 文章の下書き、言い換え、翻訳、抜けの点検 | 画面の取り込み、手順ページの組み立て、配布と更新の管理 |
| 始めやすさ | 無料プランから試せる | 製品ごとの契約と初期設定が要る |
| 出力の形 | 指示しだいで自由。型を決めないとばらつく | 製品が用意した型にそろう |
| 共有と更新 | 置き場所と更新のルールを別に決める必要がある | 製品の中で完結しやすい |
| 向く場面 | 手順書の数が少ない、まず試したい | 手順書が多く、現場で毎日開かれる |
製品には、Teachme BizやManualForceなど、手順書の作成と共有を目的にしたものがあります。料金や機能は製品ごとに大きく違うため、各社の公式ページで確かめてください。手順書が数本のうちは生成AIとWordなど手元の道具で始め、本数が増えて更新が追いつかなくなった段階で専用ツールを検討する順番が、無理のない進め方でしょう。
無料でどこまでマニュアルを作れるか
手順書の下書きを作るだけなら、ChatGPT・Gemini・Claudeの無料プランでも十分に試すことが出来ます。ただし、無料プランには扱える量に上限があります。Claudeの無料プランでは、作れるプロジェクトの数が最大5つとされています。Geminiアプリはプランなしの場合、一度に扱える文章の量(コンテキストウィンドウ)が3万2,000トークンで、Google AI ProとUltraの100万トークンと比べると小さくなります。対象となるMicrosoft 365を契約している会社なら、職場アカウントでサインインしたCopilot Chatを追加料金なしで、エンタープライズデータ保護の下で使えます。長い旧マニュアルを丸ごと渡すより、章ごとに分けて渡すほうが扱いやすいでしょう。
もう1つの注意は、無料プランが個人向けの扱いになる点です。学習の設定をオフにしても、会社として誰が何を入れたかは把握できず、社員ごとの設定も会社からは見えにくくなってしまいます。試しに1本作るまでは無料プランで構いませんが、部署で使い続けるなら会社として使う環境を決めておきましょう。社員が個人のアカウントを業務に使う状態は、野良AI(シャドーAI)と呼ばれる問題にもつながります。
※プランごとの上限は2026年9月時点で各社の公式ページ・公式ヘルプに書かれている内容です。
多言語化(翻訳)の進め方
外国籍の社員やパートの方が読むマニュアルは、完成した日本語版をもとにAIで翻訳すると、短い時間で他の言語版を用意できます。翻訳を頼むときは、画面名・ボタン名を画面の表記のまま残すよう指示に入れておくことが大切です。画面が日本語のまま使われる職場で、ボタン名だけが訳されてしまうと、読み手が画面の中で探せなくなります。翻訳した版は、その言語が分かる社員に一度読んでもらい、意味の通らない箇所を直してから配りましょう。日本語版を直したときに訳文も合わせて直せるよう、表のNoを両方の版でそろえておくと、どこを直せばよいかがすぐに分かります。やさしい日本語への書き換えもAIに任せやすい作業で、翻訳の前に文を短くしておくと、訳文の確認もしやすくなります。
完成後の社内共有と更新(見直し)の運用
マニュアルは配った日から古くなり始めるため、置き場所と更新の担当を決めて初めて使えるものになります。
置き場所と作り方を1つにそろえる
完成版は、社内の共有フォルダやグループウェアなど、社員が迷わず開ける1か所にまとめましょう。ChatGPTのBusinessやEnterpriseであれば、ひな形を入れたプロジェクトを同僚と共有し、作り方そのものをそろえる使い方も出来ます。共有するときの権限は編集とチャットの2段階で、ワークスペースのリンクから参加した人は、最初はチャットの権限になります。1つのプロジェクトに参加できるのは、今のところ合計100人までとされています。なお、OpenAIは2026年9月時点でカスタムGPTの提供終了を予定していると告知しているため、これから型を作るならプロジェクトを使うほうが無難でしょう。
更新担当と見直しの時期を決める
更新が止まりやすいのは、担当が決まっていないマニュアルです。手順書の末尾に更新担当・最終更新日・次に見直す月を書く欄を作ると、古いまま放置される状態を防げます。システムの画面が変わったときや、同じ質問が現場から2回来たときを、見直しの合図にしてみてください。見直しでは、変わった手順だけをAIに渡して差分の下書きを作らせると、全体を作り直すより早く終わります。
IPA 産業サイバーセキュリティセンター中核人材育成プログラムの受講者が卒業プロジェクトとしてまとめた「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」(2024年7月。IPAの見解を代表するものではないと明記)でも、AIに参照させる情報に最新版ではない古い情報が含まれると、誤った回答につながると指摘されています。古い版のマニュアルを残したままにせず、差し替えた日に古い版を片付けることも、更新の手順に含めておきましょう。生成AIの利用に関する点検項目は、生成AIのセキュリティ対策チェックリストにもまとめています。
社内の手順を、学習に使わせない環境で作って共有する
UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです。全モデルで学習非利用を標準適用し、全社一律のため社員ごとの設定操作は要りません。手順書のひな形と指示はカスタムプラスで社内限定のBOTにして共有でき、完成したマニュアルは社内文書RAGで読み込ませて回答に使えます。会議録音や動画の読み込みにも対応し、管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理できます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
マニュアル作成にはどのAIを使うのがよいですか?
ChatGPTで手順書を作るにはどうすればよいですか?
操作動画からマニュアルを作れるAIはありますか?
無料でマニュアルを作成できますか?
AIが作ったマニュアルはそのまま使えますか?
マニュアル作成の専用ツールと生成AIはどちらがよいですか?
まとめ
AIでのマニュアル作成は、目的と読み手を決め、材料を渡し、型を決めた指示で下書きさせ、人が確かめて直す流れで進めるのが基本になります。社内の手順を入れる前には、ChatGPTのデータコントロール、Geminiのアクティビティの保存、Claudeのプライバシーの設定、Copilot Chatの緑色のシールドを確かめておきましょう。顧客名やパスワードは材料からもマニュアルからも外し、画面名や業務の流れだけを渡すのが安全です。表の列を固定したひな形をプロジェクトやテンプレートに置けば、誰が作っても同じ形の手順書がそろいます。完成後は置き場所を1つにし、更新担当と見直しの時期を決めて、使われ続けるマニュアルに育ててください。業務別のAI活用はAI活用コラム一覧に、使うAIの選び方は主要4AIの違いと使い分けにまとめています。
