
Excelで生成AIを使うとは、関数やVBA(マクロ)の作成、表の整形、集計や分析といったExcel作業を、ChatGPTやCopilotなどのAIに手伝わせることです。入口はブラウザのチャットAI・Excel内蔵のCopilot・アドインの3つがあり、どれか1つに決めるより、作業ごとに使い分けるほうが実務に合っています。会社として先に決めておきたいのは、どの道具にどの表を入れてよいかと、AIが書いた数式やマクロを誰が確かめるかの2点になります。関数やマクロの相談は列名とダミー行だけで足りるので、社外秘の表そのものを渡さずに始めることが出来ます。
Excelで生成AIを使う3つの入口|チャットAI・Excel内蔵のCopilot・アドイン
Excelで生成AIを使う入口は3つあり、大きな違いはAIがブックに直接さわるかどうかにあります。同じ関数の相談でも、どの入口を通すかで、AIに見せる情報の量と、結果を反映する手間が変わってきます。
1. ブラウザのチャットAIに聞く
1つ目は、ChatGPT・Claude・Geminiなどのチャット画面に、やりたいことを日本語で書いて、関数やVBAのコードを出してもらう使い方です。AIはブックの中身を見ないので、出てきた数式やコードを自分でセルやVBAの画面に貼ることになります。手間は1つ増えますが、そのぶんAIに渡す情報を自分で選べるのが利点でしょう。関数やマクロの相談には表の数字そのものが要らない場面が多く、社外秘の表を扱う会社でも始めやすい入口となります。
2. Excel内蔵のCopilotを使う
2つ目は、Excelの右下にあるCopilotのアイコンから開く、Excel内蔵のCopilot(Microsoftの表記では「Excel の Copilot」)です。編集・計画・チャットの3つのモードがあり、既定の編集モードでは、頼んだ内容に沿ってブックを直接書き換えてくれます。数式の追加、グラフやピボットテーブルの作成、データの並べ替えまで、ブックを見たうえで手を動かしてもらえるのが強みになります。使えるのは対象のライセンスがあるアカウントだけで、必要なライセンスと起動のしかたはCopilot Excelの使い方と必要なライセンスに譲ります。
なお、セルに式として書くCOPILOT関数は、2026年9月14日以降はExcelで使えなくなったとMicrosoftのサポートページで案内されており、Copilotのウィンドウからは引き続き使えると書かれています。
3. ChatGPT for Excelなどのアドインを入れる
3つ目は、Excelに後から追加するアドインで、OpenAIが2026年3月にベータ版として発表したChatGPT for Excelがその一例です。Excelのリボンに入り、サイドバーのChatGPTがブックを読んで、数式の追加や分析をしてくれます。同じ名前で以前から出回っている第三者製のアドインもあり、こちらはOpenAIのAPIキーを自分で入れる別の製品となります。公式版と第三者製の見分け方やデータの渡り先はChatGPT for Excelとは|公式版と第三者製の違いで扱っているので、入れる前に一度確かめてみてください。社内の表をGoogleスプレッドシートで持っている会社であれば、Geminiを使う方法が別にあり、Geminiでデータ分析する2つの方法と検算のしかたが入口になります。
※機能と提供状況は、2026年9月18日〜27日にMicrosoftとOpenAIの公式ページで確認した内容に基づきます。
Excel作業に生成AIを使うメリットと、任せきれない部分
生成AIを使う大きな効き目は、関数やVBAを調べる時間が短くなることで、判断そのものは人の側に残ります。関数名を知らなくても、「得意先ごとに今月の合計を出したい」と日本語で書けば、SUMIFSのような候補と使い方がまとめて返ってきます。検索サイトで似た例を探し、自分の表に合わせて直す手間が減るので、Excelが得意な社員に質問が集中していた会社ほど効果を感じやすいでしょう。手入力の転記をマクロに置き換えれば、打ち間違いのような人のミスも減らすことが出来ます。集計やグラフの案出しを任せれば、これまで見ていなかった切り口に気付くきっかけにもなります。
一方で、AIはもっともらしい誤りを出すことがあり、これはハルシネーションと呼ばれます。Microsoftも、Excel の Copilot の制限事項として、間違いを犯したり不正確な結果を生成したりする場合があると説明し、金融・法律・医療のような機密性の高い分野の意思決定には使わないよう求めています。数式が動いたことと、答えが正しいことは別の話なので、確かめる工程を最初から作業に組み込んでおきましょう。
作業別の使い分け表|関数・VBA・整形・分析・表作成・文章の分類
どの入口を使うかは、契約しているサービスではなく、やりたい作業で決めると迷いが減ります。下の表は、Excelでよくある7つの作業について、3つの入口の向き不向きを並べたものです。◎は向いている、○は使える、△は条件付き、×は公式に対応していないことを表します。
| 作業 | チャットAIに聞く | Excel内蔵のCopilot | ChatGPT for Excelなどのアドイン |
|---|---|---|---|
| 関数を1本作る・エラーの原因を聞く | ◎ 列名とダミー行だけで頼める | ○ ブックを見て列に数式を入れてくれる | ○ 数式の追加や編集ができる |
| 他人が作った数式・VBAを読む | ◎ コードを貼って日本語で説明させる | ○ 選んだセルの数式を説明させられる | △ VBAによる自動化は未対応と公式に明記 |
| 定型の処理をマクロ(VBA)にする | ◎ コードを書かせて自分で貼る | △ 公式の機能一覧にVBA作成の記載なし | × マクロ/VBAによる自動化は未対応と公式FAQに記載 |
| 表記ゆれ・重複・空白を整える | ○ 直すための関数や手順を聞く | ◎ 編集モードでブックを直接整える | ○ ブックを編集できるが、先に複製する |
| 集計・グラフ・傾向の読み取り | △ 表の中身を渡すので社内の線引きが要る | ◎ グラフ・ピボットテーブル・分析情報を作れる | ○ タブをまたいだ分析ができる |
| 管理表・計画表を新しく作る | ○ 列の設計を相談してから貼る | ○ ワークシートの編集やデータの生成を頼める | ○ スプレッドシート全体を作成できる |
| セルの文章を分類・要約する | △ 件数が多いと貼り直しが手間で、個人情報も混ざりやすい | ◎ 要約や主なテーマを新しい列として追加できる | △ 大きなブックほど利用枠を多く消費する場合がある |
表のとおり、関数とVBAの相談はチャットAIでも十分こなせるのに対し、ブックを直接触る整形や分析はExcel内蔵のCopilotやアドインが得意とする領域です。VBAのコードを書かせるなら、今のところチャットAIに聞いて自分で貼る形が現実的でしょう。ChatGPT for Excelの公式FAQは、対応していない機能としてマクロ/VBAによる自動化を挙げており、Excel の Copilot の公式の機能一覧にもVBAの作成は見当たりません。Googleスプレッドシート中心の会社であれば、表の3列目の代わりに、Geminiを使う方法が候補になります。
関数を作らせる|日本語の条件を伝えるひな形とExcelの版
関数を頼むときは、やりたいことに加えて、Excelの版・列の見出し・ダミー行・空白やエラーのときの扱いまで伝えると、1回で使える数式が返ってきやすくなります。日本語で書く条件は、次のような普段の言い方で構いません。
- 得意先コードをもとに、別シートの得意先マスタから得意先名を引いてきたい(VLOOKUPやXLOOKUP)
- 金額が10万円以上なら「要承認」、それ以外は空白にしたい(IFやIFS)
- 担当者ごと・月ごとの売上合計を出したい(SUMIFS)
- 未入力のセルが何件あるかを数えたい(COUNTIFやCOUNTBLANK)
関数名が分からなくても、AIの側が候補を挙げてくれるので、書き出しは「〜したい」で十分です。
コピーして使える頼み方のひな形(関数)
下のひな形の【 】の中を自分の表に合わせて書き換え、そのままチャットAIに貼ってみてください。
Excelの関数を作ってください。 【Excelの版】Microsoft 365版(社内には Excel 2019 を使う人もいる) 【シート名】売上明細 【列の見出し】A列:日付/B列:得意先コード/C列:得意先名/D列:担当者/E列:金額 【データの範囲】見出しは1行目、データは2行目から。最終行は月によって変わる 【ダミー行(実際のデータではありません)】 2026/9/1 K001 サンプル商事 担当A 12000 2026/9/1 K002 テスト工業 担当B 0 2026/9/2 K001 サンプル商事 担当A (空白) 【やりたいこと】別シート「集計」のA列にある得意先コードごとに、E列の金額の合計をB列に出したい 【空白・エラーのとき】金額が空白の行は0として数える。該当する行がなければ0と表示する 【期待する結果】上のダミー行なら、K001の合計は12000、K002は0 【出してほしいもの】集計シートのB2に入れる数式を1本。下の行へコピーして使える形で。使った関数の意味を1行ずつ日本語で 【条件】Excel 2019でも動く関数だけを使う
ダミー行は、実際の得意先名や金額を使わず、形だけ同じ架空の値で作ります。空白の行や0円の行をわざと混ぜると、AIがその扱いまで考えた数式を返してくれます。出てきた数式に分からない関数があれば、「この数式を1つずつ日本語で説明してください」と続けて聞くことも出来ます。
Excelの版を伝える理由|XLOOKUPは2016と2019で使えない
AIは新しい関数を当たり前のように提案してくるため、版を伝えないと、社内の一部のパソコンで動かない数式が返ってくることがあります。例えばXLOOKUPについて、Microsoftのサポートページは「XLOOKUP は Excel 2016 および Excel 2019 では使用できません」と明記しています。Microsoft 365版で作った表を、買い切り版のExcel 2019を使う社員が開くと、その数式の部分が正しく計算されない、という食い違いが起こり得ます。社内に版の違うExcelが混ざっているなら、ひな形の条件に版を必ず書きましょう。自分の版は、Excelの[ファイル]→[アカウント]で確かめることが出来ます。
エラーの原因を聞く
#N/Aや#VALUE!が出たときは、数式とエラーの出ているセル、参照している列のダミー値を並べて、「原因と直し方を教えてください」と頼むのが近道です。原因の候補を複数挙げてもらい、1つずつ自分の表で確かめていくと、同じエラーで何度も止まることが減っていきます。
AIが作った数式を確かめる手順
AIが作った数式は、答えを先に知っている小さな見本で試してから、本番の表に広げるのが安全です。数式がエラーを出さずに動いても、参照する列が1つずれているだけで、もっともらしい間違った合計が出てしまいます。確かめ方は、次の5つで足ります。
- 手で計算できる5〜10行の見本を作り、答えを電卓で先に出してから数式の結果と比べる
- 0・空白・同じ金額・最終行といった境目の値を見本に混ぜ、意図どおりに扱われるかを見る
- 参照範囲が最終行まで届いているか、行を足したときに範囲が伸びるかを確かめる
- 下の行へコピーしたときに、固定すべきセル($の付いた絶対参照)がずれていないかを見る
- [数式]タブの[数式の検証]で、計算を1段ずつ追って途中の値を確かめる
とくに3つ目は見落としやすく、先月は正しかった合計が、行が増えた今月だけ少なく出る、という形で表に出てきます。見本で合った数式だけを本番の表に広げる順番は、急ぐときほど崩さないようにしてください。集計結果そのものの検算や、分析に使う表の匿名化はAIデータ分析のやり方と社内データを安全に渡す手順で詳しく扱っています。
VBA・マクロを作らせる|頼み方のひな形
マクロ(VBA)をAIに書かせるときは、何をするかだけでなく、してはいけないことと処理する件数の上限まで先に伝えるのが肝心です。VBAは、Excelの操作を手順として書いて自動で実行させるための言語で、毎月同じ手順で行う転記や並べ替え、シートの分割などに向いています。AIは短いマクロならすぐに書いてくれますが、指示があいまいだと、元のデータを消したり上書きしたりするコードが出てくることもあり得ます。下のひな形では、してはいけないことの欄をあえて設けています。
コピーして使える頼み方のひな形(VBA)
ExcelのVBAマクロを書いてください。 【Excelの版とOS】Windows版の Microsoft 365 【対象】このブックの「受注一覧」シートだけ 【列の見出し】A列:受注日/B列:得意先名/C列:状態(未処理・処理済)/D列:金額 【データの範囲】見出しは1行目、データは2行目から最終行まで(行数は毎回変わる) 【ダミー行(実際のデータではありません)】 2026/9/1 サンプル商事 未処理 12000 2026/9/2 テスト工業 処理済 8000 【やりたいこと】状態が「未処理」の行だけを、新しく作るシート「未処理_今日の日付」に書き出す 【してはいけないこと】元のシートの行を削除・上書きしない。ほかのブックやファイルを開かない・保存しない。メールを送らない 【件数の上限】試し用に、最初の10行だけを処理して止まる版も作ってほしい 【出してほしいもの】標準モジュールに貼るコード。各行に日本語のコメントを付ける。最初に、このマクロが何をするかを3行で説明する
最後の欄で「何をするかを3行で説明」と頼んでいるのは、後でそのマクロを引き継ぐ人のためです。AIが書いたコードは、作った本人も中身を説明できないまま使われがちで、担当者が異動すると誰も直せない、いわゆる属人化の状態になってしまいます。説明の3行とコードは、同じブックの説明用シートか共有の手順書に残しましょう。
他人が作った数式・マクロを読ませる
前任者が残したマクロの意味が分からないときも、チャットAIにコードを貼って「何をしているかを上から順に日本語で説明してください」と頼めば、読み解く手がかりになります。ただし、コードの中にはファイルの保存先のパスや取引先名、パスワードが書かれていることがあるので、貼る前に目で見て伏せてください。
コードや表を貼る相談先を会社の契約1つにまとめれば、個人のアカウントに貼る理由がなくなります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
AIが書いたマクロを動かす前の手順
AIが書いたマクロは、元のファイルに対していきなり実行せず、複製したファイルと少ない件数で試してから本番に使ってください。マクロが書き換えた内容は[元に戻す](Ctrl+Z)で戻せない場合があるため、失敗したときに戻れる場所を先に用意しておく必要があります。
- 元のブックをコピーし、ファイル名に「テスト」と付けたほうで作業する
- コードを上から読み、行の削除、上書き保存、ほかのファイルを開く・閉じる、メールを送る、といった命令が含まれていないかを確かめる(分からない行はAIに意味を聞く)
- マクロを含むブックは、マクロ有効ブック(.xlsm)として保存する
- 1回目は10行程度の少ないデータで実行し、結果を手作業で出した答えと突き合わせる
- 問題がなければ件数を増やし、最後に本番のブックのバックアップを取ってから実行する
- 使うと決めたら、コードと説明の3行を決まった場所に保存し、作った人と確認した人の名前を残す
2つ目で気になる命令が見つかったら、AIに「この行を削除しても目的は果たせますか」と聞いて、コードを小さくしてもらうのも一つの手です。元のブックでいきなり試すことだけは、どれほど急いでいても避けてください。手作業なら1件ずつ気付けた間違いも、マクロでは数百行に一度に広がってしまいます。
社外秘の表を渡さずに関数・マクロを相談するやり方
関数やマクロの相談に必要なのは、表の形であって中身の数字ではないため、列名とダミー行だけ渡せば足ります。得意先名・社員名・金額といった実データを消し、「サンプル商事」「担当A」「12000」のような架空の値に置き換えた3〜5行があれば、AIは実データのときと同じ数式やコードを書くことが出来ます。総務省の教材「生成AIはじめの一歩」も、情報流出を防ぐ行動の一つとして、個人情報や機密情報の入力を必要最小限にすることを挙げています。
避けたいのは、表をまるごと個人のAIアカウントに貼ってしまう使い方です。個人向けのプランでは、設定によっては入力した内容がモデルの改善に使われることがあり、会社はその設定や履歴を確かめられません。社員が退職した後も、その個人アカウントに業務のブックの中身が残ったままとなってしまいます。相談の前に、次の3点だけは確かめてみてください。
- 見出しの行と3〜5行だけにしたか実際の行は消し、形の同じ架空の値に置き換えます。見出しの名前に社外秘の案件名が入っていないかも見てください。
- 名前・コード・金額・メールアドレスが残っていないか貼り付ける直前に、もう一度全体を目で追います。
- コードに保存先のパスやパスワードが書かれていないか既存のマクロを読ませるときに見落としやすい点です。
集計や分析のように、中身の数字そのものをAIに見せる必要がある作業では、この伏せ方だけでは足りません。その場合は、どのアカウントで、どの区分の表までなら入れてよいかを会社として決めたうえで、匿名化の手順を踏むことになります。関数やマクロの相談も含めて、社員が迷わず使える場所を会社が用意していないと、手近な個人のアカウントに流れていくのは自然な成り行きでしょう。
表の整形・分析・表作成に使うとき
表の整形と分析は、AIがブックを直接触れるExcel内蔵のCopilotやアドインに向いた作業で、チャットAIは手順や関数の相談役として使うと無理がありません。
AIに渡す前に元データの形を整える
どの入口を使う場合も、表の形が崩れていると、AIは見出しや範囲を取り違えます。1行目を見出しにする、結合セルを解く、1つのシートに表を1つだけ置く、小計の行を混ぜない、の4点を先に直すだけで、返ってくる答えのずれが減ります。人が見やすいように作った帳票の形は、AIにとっては読みにくい形であることが多いと考えてください。
表記ゆれ・重複・空白を整える
「(株)」と「株式会社」、全角と半角の数字、前後の余分な空白といった表記ゆれは、Excel内蔵のCopilotなら編集モードで「得意先名の表記をそろえて」と頼む形で直すことが出来ます。チャットAIを使う場合は、表そのものを渡さず、「全角のスペースを消して前後の空白を取る数式を作って」のように、直すための関数や手順を聞く形が向いています。重複の削除はExcelの[データ]タブにある[重複の削除]でも出来るので、AIに頼む前に標準の機能で済まないかを見てみましょう。整形を任せるときは、元の列を残したまま、隣の列に直した値を出してもらうのが安心でしょう。
集計・グラフ・傾向の読み取りに使う
Excel内蔵のCopilotは、ブックのデータをもとにグラフやピボットテーブルを作ったり、売上の多い地域と少ない地域を答えたり、外れ値がないかを調べたりすることが出来ると案内されています。チャットモードを使えば、ブックを書き換えずに分析だけを聞くことも出来ます。ChatGPT for Excelも、タブをまたいだ分析や数式の追加を公式にうたっています。AIが出した数字は、元の表で主要な値を1つ2つ確かめてから報告に使ってください。チャットAIに表ごと渡して分析させる方法もありますが、中身の数字を外に出すことになるため、前の節で触れた会社の線引きが先に要ります。
セルの文章を分類・要約する
アンケートの自由記述や問い合わせの内容のように、セルに入った文章を分類したい場面では、Excel内蔵のCopilotが要約や主なテーマの抽出を行い、結果を新しい列として追加できると案内されています。分析の上付き番号にカーソルを合わせると参照した元のデータが表示されるので、分類の根拠を1件ずつたどることも出来ます。自由記述には氏名や連絡先が書き込まれていることが多いため、この作業は特に、どの環境で行ってよいかを先に決めておきたい作業です。
管理表・計画表をAIに作らせてExcelに貼る
新しく管理表を作るときは、いきなり表を作らせるより、先に列の設計だけを相談するほうが手戻りが少なくなります。「備品の貸し出しを管理する表の列を、目的と入力例つきで10個以内で提案して」のように頼み、社内の呼び方や決まりを伝えて直してもらってから、表の形で出力させます。チャットAIの答えをタブ区切りのテキストで出してもらえば、そのままExcelのセルに貼り付けることが出来ます。社内の用語や表記のルールは、教えない限りAIの答えには入らないので、最初の頼み方に書き添えてみてください。
頼み方のコツ|目的・背景・例・形式・やり取り
Excelの相談で答えの質を分けるのは、AIの賢さよりも、こちらが渡す条件の具体さです。総務省の教材「生成AIはじめの一歩」も、プロンプトの工夫として、目的や詳しい設定を書く、欲しい回答の例を与える、書式や回答方法を制限する、の3つを挙げています。Excelに当てはめると、次の5点に置き換えられます。
- 何のための表かを最初に書く(月次の報告用、請求の確認用など)
- 背景として、Excelの版と、データが毎月増えるかどうかを伝える
- 期待する結果の例を1〜2行示す(K001の合計は20000になるはず、など)
- 出してほしい形を決める(数式1本だけ、コメント付きのコード、表の形など)
- 1回で決めようとせず、エラーや違和感を伝えて直してもらうやり取りを重ねる
中でも、期待する結果の例を添えると、AIの数式が合っているかを自分で判定できるようになります。うまくいった頼み方をひな形として社内で共有すれば、Excelに詳しくない社員も同じ質の答えを引き出せるようになるでしょう。
無料でどこまで使えるか|3つの入口の料金の考え方
関数やVBAの相談だけなら、チャットAIの無料版でも始めることが出来ますが、会社の表を入れるかどうかで判断が変わります。
チャットAIの無料版
ChatGPTの無料版は、日常的なテキストのチャットを回数無制限で使える(不正利用を防ぐための制限は適用されます)と公式ヘルプに書かれており、ファイルのアップロードやデータ分析などには個別の上限が設けられています。関数の相談をダミー行で行う範囲なら、無料版でも困る場面は少ないでしょう。ただし、個人向けのアカウントでは、設定の「すべての人のためにモデルを改善する」がオンのままだと、会話がモデルの改善に使われることがあります。社員一人ひとりの設定を会社が確かめる手段はなく、業務の表を無料版に入れる使い方はおすすめ出来ません。
Excel内蔵のCopilot
Excel の Copilot は、Copilot Chatの対象となるMicrosoft 365のビジネス向け・企業向けサブスクリプションがあれば、アドオンなしでも標準的なアクセスで使えると公式FAQは説明しています。優先的なアクセスや会話履歴、モデルの切り替えなどは、有料のアドオン(料金ページの表記はMicrosoft 365 Copilot)の側に含まれます。アドオンの料金は年払いで1ユーザーあたり月3,148円相当(税抜)と表示されており、20人に配ると年間755,520円(税抜)の上乗せとなってしまいます。全員に配るか、Excelを多く使う社員に絞るかは、この金額と使う頻度を見比べて決めることになります。
※Microsoft 365 Copilotの金額は、2026年9月18日時点でMicrosoftの公式料金ページに表示されている税抜の金額です。2026年12月31日までの申し込みを対象とした初年度だけの割引価格は含めていません。アドオンの購入には、対象となるMicrosoft 365のプランのライセンスが別途必要です。
ChatGPT for Excelなどのアドイン
ChatGPT for Excelは、無料版とGoでも制限付きで使え、PlusとProでは各プランの利用上限の範囲で使えると公式ヘルプに書かれています。Business・Enterprise向けの無料プレビューは2026年6月2日までで、その後は各プランのクレジットと使用条件に従う扱いです。大きなブックや複数手順の編集ほど利用枠を多く消費する場合がある点も、あらかじめ知っておきたいところでしょう。
※ChatGPTとChatGPT for Excelの記載は、2026年9月18日〜20日にOpenAIの公式ヘルプと製品ページで確認した内容です。
会社で使う前に情シス・総務が決めること
Excelで生成AIを使い始める前に、情シスや総務が決めておきたいのは、使ってよい道具と入れてよい表、マクロの確認者、ネット由来のマクロの扱いの3つです。会社全体の生成AIのルールづくりは生成AIの社内ガイドラインの作り方、会社の知らないところで使われるAIへの備えはシャドーAI(野良AI)の対策も参考になります。
使ってよい道具と、入れてよい表の区分
まず、チャットAI・Excel内蔵のCopilot・アドインのうち、どれを会社として認めるかを、アカウントの種類まで含めて決めます。次に、表を「そのまま入れてよい」「列名とダミー行だけ」「入れない」の3段に分け、顧客名簿や給与の表のような個人情報を含む表は、入れない側に置くのが無難です。アドインは社員が[ホーム]→[アドイン]から自分で追加できる場合があるため、許可するものを一覧にして周知しておきましょう。ChatGPT for Excelの公式ヘルプには、Microsoftのアドインの利用規約のもとでMicrosoftがブックやプロンプトの内容を読み取れる場合があるとも書かれています。社内に配る短いルールのひな形はChatGPT for Excelの記事に載せているので、たたき台として使ってみてください。
AIが書いたマクロの確認者と置き場所
AIが書いたマクロを共有フォルダのブックに組み込む前に、誰が中身を確認するかを決めておきます。作った本人のほかにもう1人が、説明の3行とコードを読んで削除や上書きの命令がないかを見る形にすれば、属人化と事故の両方を減らすことが出来ます。本人しか説明できないマクロを、全員が使うブックに入れないことを決まりにしてください。コードと説明の置き場所を1か所に決めておけば、担当が替わったときにも引き継ぎが途切れません。
ネットで拾った・メールで届いたマクロ付きブックの扱い
Windows版のOfficeでは、インターネットから入手したファイルやメールの添付ファイルに含まれるマクロが、既定でブロックされる仕組みになっています。このとき表示される警告の帯には[コンテンツの有効化]の選択肢がなく、動かすには、ファイルのプロパティで[ブロック解除]にチェックを入れる操作が主な入口になります。社員が自分の判断でこの解除をすれば、出どころの分からないマクロでも動いてしまいます。ネットで見つけたマクロ付きのブックや取引先から届いたマクロ付きの添付ファイルは、各自で解除せず情シスに回す、という一線を決めておきましょう。
Microsoftは、組織としてこのブロックを管理するポリシーの使用を勧めていますが、そのポリシーはMicrosoft 365 Apps for enterpriseでのみ使え、Microsoft 365 Apps for businessでは使えないと明記しています。また、信頼できる場所に保存されたファイルではマクロがブロックされないため、その場所を増やしすぎないよう慎重な管理が求められます。なお、AIが書いたコードを社員が自分のブックに貼って作ったマクロは、インターネットから来たファイルではないので、この仕組みの対象にはなりません。こちらは前の項で決めた確認者の手順で守ることになります。
※ブロックの仕組みはWindows版のOfficeが対象で、MacのOffice、Android・iOSのOffice、Office on the webには影響しないと案内されています(2026年9月27日時点のMicrosoft Learnの記載)。
よくある質問
エクセルが得意な生成AIは?
AIでエクセル作成は無料ですか?
ExcelにAIを使うにはどうすればいいですか?
ChatGPT for Excelは無料ですか?
COPILOT関数はまだ使えますか?
AIが作ったマクロは、そのまま動かしても大丈夫ですか?
まとめ
Excelで生成AIを使う入口は、ブラウザのチャットAI、Excel内蔵のCopilot、ChatGPT for Excelなどのアドインの3つで、作業ごとに選ぶと迷いが減ります。関数とVBAの相談はチャットAIに列名とダミー行を渡す形で十分にこなせ、表の整形や分析はブックを直接触れる道具が向いています。AIが作った数式は答えの分かる見本で確かめ、マクロは複製したファイルと少ない件数で試してから本番に使ってください。
会社としては、使ってよい道具と入れてよい表の区分、マクロの確認者、ネット由来のマクロの扱いを先に決めることが、安心して任せるための土台になります。法人のAI活用に関するほかの記事は、AI活用コラム一覧から探すことが出来ます。
関数・マクロの相談とOfficeプレビューを、会社の環境で
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