医療AIの導入費用はいくら?補助金で下がる額と対象外の費用

医療AIの導入費用とは、AIツールの利用料に、初期設定・電子カルテ等との連携改修・端末・研修・保守を加えた、医療機関が負担する費用の総額のことになります。公式に金額を公開している文書作成支援AIには、月額22,000円(税抜)のプランや医師1名あたり月額16,500円(税込)の定額があり、後者を医師10名で使うと年1,980,000円(税込)です。補助は、東京都内の200床未満の病院と有床診療所なら都の事業で対象経費の2分の1(基準額1,000万円)、要件を満たす病院なら厚生労働省の事業で5分の4(1施設あたり上限8,000万円)、従業員300人以下の医療法人ならデジタル化・AI導入補助金が候補となります。ただし、保守費や2年目以降の利用料は補助の外に残りやすく、東京都の事業とデジタル化・AI導入補助金では交付決定の前に契約すると対象外になってしまいます。

医療AIの定義や活用例の一覧、安全管理の詳しい決まりは、医療AIとは何か・活用例の全体像をご覧ください。

医療AIの導入費用は、ツール代と周辺費用を足した総額で見る

医療AIの費用は、ツールの利用料だけを見ても総額はつかめません。実際に院内で使い始めるまでには、電子カルテとつなぐ改修、端末、職員研修、導入後の保守が、ツール代とは別の行に並びます。東京都の補助事業の手引も、見積書は○○一式ではなく内訳が分かる詳細なものを求めています。総額をつかむには、まず費用を次の6つに分けて考えてみてください。

  • ツールの利用料(月額・年額、または医師1名あたりなどの単位で決まる料金)
  • 初期費用(初期設定・データ移行・導入支援。規模に応じて個別見積もりとする例があります)
  • 連携改修費(電子カルテや院内システムとつなぐための改修)
  • 端末・周辺機器(専用のパソコン・タブレット・マイクなど)
  • ネットワーク・サーバー(院内の回線工事や、院内に置くサーバー)
  • 保守・研修・運用(保守契約、職員研修、AIの出力を確かめる職員の時間)

このうち補助金で下がるのは一部に限られ、制度によって対象になる行が違います。たとえば東京都の事業では、連携改修は対象経費に入る一方、wi-fiなどのネットワーク構築費や保守経費は対象外と書かれています。総額を6つの行に分けて持っておけば、補助で下がる部分と自院で持つ部分を分けて稟議に書くことが出来ます。

診断を支えるAIと、業務を支えるAIは費用の決まり方が違う

費用を比べる前に、そのAIが診断や治療を支える医療機器なのか、文書作成や問診などの業務を支えるツールなのかを確かめましょう。画像診断支援のように診断を支えるAIは、医療機器プログラムとして承認を受けて販売されるものがあり、価格は検査機器や画像の保管システムとの組み合わせで変わるため、施設ごとの見積もりで確かめることになります。一方、退院時要約や紹介状の下書き、問診の聞き取りなどを支える業務支援のツールには、月額や1名あたりの料金を公式ページに載せている例もあります。補助金の扱いも両者で分かれており、東京都の事業はAI医療機器に係るものを対象外としています。

どちらのAIを使う場合も、厚生労働省の通知(医政医発1219第1号・平成30年12月19日)が示すとおり、診断や治療を行う主体は医師で、最終的な判断の責任も医師が負います。承認の有無で比べる相手が変わるため、見積もりを取る前に、どちらの種類を探しているのかを院内で決めておくことが大切です。

問診・文書作成など業務支援AIの料金|公式に金額を公開している例

問診や文書作成を支える業務支援AIのうち、公式ページに金額まで載せている例はまだ限られます。ここでは、2026年9月29日時点で公式ページ・同社発表に金額が掲載されている2つの例を取り上げます。どちらも提供元が公表している料金で、第三者が価格や効果を検証したものではありません。

AIカルテアシスタント(株式会社ポテック)

株式会社ポテックのAIカルテアシスタントは、次の3つの料金を公式ページに載せている例になります。

  • 無料プラン 0円(チャットは月30メッセージまで)
  • Proプラン 月22,000円(税抜)
  • 同社の電子カルテ「AIカルテ」(月56,000円・税抜)とのセット 月78,000円(税抜)

公式ページには、表示価格はすべて税抜の月額で、初期費用・データ移行・導入支援費用は規模に応じて個別と書かれています。月額だけを年額に直すと、Proプランは年264,000円(税抜)、電子カルテとのセットは年936,000円(税抜)となります。初期費用が個別見積もりのため、1年目の支払いは、この年額に初期費用が上乗せされた額となってしまいます。無料プランは月30メッセージまでなので、日常の業務で使うより、操作の感触を確かめる用途に向いているでしょう。Proプランの料金が施設単位なのか利用者単位なのかは、見積もりの際に確かめてみてください。

Swift SOAP(株式会社パルシベイト)

株式会社パルシベイトは、Swift SOAPを医師(ユーザ)1名あたり月額16,500円(税込)の定額で、使い放題として提供すると発表しています。利用の対象は、診療所や病院で患者を診察する医師です。医師5名で使えば月82,500円・年990,000円、医師10名なら月165,000円・年1,980,000円(いずれも税込)となります。1名あたりの定額は使う量では増えない反面、使う医師が増えるほど費用がそのまま増えてしまいます。

項目AIカルテアシスタントSwift SOAP
料金の表示プランごとの月額(Pro 22,000円)医師1名あたり月額16,500円
税の表示税抜税込
無料で試せる枠無料プラン(チャット月30メッセージまで)見積もりで確認
初期費用規模に応じて個別見積もりで確認
電子カルテとの組み合わせ同社の電子カルテとのセット(月78,000円・税抜)見積もりで確認
使う量による増減見積もりで確認定額・使い放題と発表

※「見積もりで確認」とした項目は、提供元への問い合わせで確かめてください。

金額を公開していないサービスの見積もりの取り方

Ubie AI問診、VoiceChart、kanaVo、メルプWEB問診などは、2026年9月29日時点で公式ページに金額の掲載がありません。金額を公開していないサービスの費用を、公開している例から推し量るのは避けたほうが安全です。見積もりを依頼するときは、料金の単位と初期費用の内訳、最低利用期間の3つを同じ形式で出してもらうと、複数社を並べて比べることが出来ます。後半の見積書チェックリストを、そのまま依頼文に貼り付けて使ってみてください。

料金の単位で変わる費用の増え方

業務支援AIの料金は、何を単位に決まるかで、施設の規模が大きくなったときの増え方が変わります。

料金の単位費用が増える条件見積もりで聞くこと
施設・組織ごとプランの上位への切り替え、施設の追加プランの差は何で決まるか(機能・利用量など)
医師1名ごと使う医師の人数が増えたとき非常勤の医師や研修医も1名と数えるか
利用者1名ごと医師以外の職員にも配ったときアカウントの付け替えや退職者の扱い
利用量ごと文書の件数や使う回数が増えたとき上限に達したときに止まるのか、追加の費用で続くのか

医師だけで使う製品なら医師1名ごとの単位でも見通しは立ちやすく、事務や看護の職員まで広げるなら、利用者1名ごとの単位では費用の読みが難しくなります。自院で誰が使うのかを決めてから、単位の合う製品を選ぶ順番にしましょう。

※料金は2026年9月29日時点で各公式ページ・同社発表で確認したものです。AIカルテアシスタントは税抜、Swift SOAPは税込の表示で、どちらも提供元の自己申告の料金です。年額は月額×12か月で計算しています。

画像診断支援AI(医療機器プログラム)は個別見積もりになる

画像診断支援AIの費用は、公式ページの料金表ではなく、施設ごとの見積もりで確かめることになります。医療機器プログラムとしての承認を受けた製品は、検査機器や画像を保管するシステムとの組み合わせで構成が変わり、同じ製品でも施設ごとに必要な作業が異なるためです。金額の相場を示せるほどの公開情報はないため、ここでは見積もりで何を確かめるかに絞って整理しましょう。

見積もりに入る費用の種類

画像診断支援AIの見積もりには、次のような費用が入ることがあります。

  • 本体のライセンス(買い切りか、年額・月額か)
  • 検査機器や画像の保管システムとの接続
  • 院内に置くサーバーか、クラウドか
  • 読影の端末や表示用のモニター
  • 保守契約(ソフトの更新、故障時の対応)
  • 導入時の研修と、院内の運用ルールづくり

このうち接続と保守は、製品の本体価格と別の見積もりになる場合があるため、項目ごとの金額を出してもらうのが確実です。ソフトの更新のたびに費用がかかる契約か、保守料に含まれるのかでも、3年間の総額は変わってきます。

補助金との関係で気をつけたいこと

画像診断支援AIを補助金で入れようと考えている場合は、制度ごとの対象外の書き方を先に読んでおく必要があります。東京都の医療機関におけるAI技術活用促進事業は、AI医療機器に係るものを対象外と明記しています。厚生労働省の業務効率化の事業も、例に挙げられているのはAI問診や文書自動作成支援などの業務支援サービスです。画像診断支援AIが対象に当たるかは要綱の文言だけでは読み取りにくいため、都道府県の窓口に確かめてみてください。

診療報酬で評価される場面があるかどうかも、最新の告示・通知と販売元の説明を合わせて確かめましょう。そのうえで、承認の範囲と、医師が最終判断を下す運用を院内の手順に書き込むことになります。

電子カルテ連携・端末・保守など、本体価格と別にかかる費用

本体価格と別にかかる費用のうち、見落としやすいのは電子カルテとの連携改修と、導入後も毎年続く保守費です。どちらも見積書では別の行や別の会社の見積もりになることがあり、ツール代だけで稟議を通すと、後から追加の予算を組むことになってしまいます。

電子カルテ・院内システムとの連携改修

AIが作った下書きを電子カルテに取り込む、問診の結果をカルテに送るといった連携には、電子カルテ側の改修が必要になる場合があります。改修を担うのが電子カルテの販売元であれば、AIツールの提供元とは別の見積もりになります。東京都の事業では、既存の電子カルテシステム等と連携させるための改修が対象経費に含まれています。連携の範囲を広げるほど改修の作業は増えるため、最初は画面から貼り付ける運用で始め、効果が見えてから連携を足す順番も考えられます。

連携の範囲は、おおまかに次の3段階で考えると見積もりを比べやすくなります。

  • 段階1:AIの画面で作った下書きを、職員が電子カルテに貼り付ける(電子カルテ側の改修を伴わない)
  • 段階2:患者の基本情報や問診の結果など、決まった項目だけをやり取りする
  • 段階3:AIの出力を電子カルテの所定の欄に直接書き込む

段階が上がるほど、職員の手間は減る一方で改修と保守の範囲が広がっていきます。見積もりを依頼するときは、どの段階の連携を前提にした金額なのかを書いてもらいましょう。

端末・周辺機器

音声入力や問診のAIでは、診察室や受付に置くタブレット、マイク、専用のパソコンが必要になることがあります。東京都の事業は、AIに関連する電子機器を、必要な台数のみ・専用端末に限って対象としています。職員が普段使うパソコンの入れ替えまで補助で賄えるとは限らないので、台数と用途を見積書に書き分けてもらいましょう。

導入後に続く費用(保守・端末の入れ替え・回線)

導入後に毎年かかる費用は、保守・サポート料、端末の入れ替え、院内の回線やwi-fiの増強が中心です。これらは東京都の事業で対象外とされる経費と重なり、機器及びシステムの保守経費、リース料、通信費、wi-fiなどのネットワーク構築費はいずれも補助の外に置かれています。厚生労働省の事業も、運用・保守費用などのランニングコストは対象外で、業務効率化によって賄われるべきとしており、自院の予算で持つ前提になります。保守や通信費などの経常的な費用は補助で下がらない部分として、最初から年額に入れておきましょう。

一方で厚生労働省の事業は、Wi-Fi環境の整備費や電子カルテ等との連携費用、設置・訓練・効果測定の費用を、導入に附随する費用として対象に含めています。院内のWi-Fi整備をどの制度で扱えるかは、制度ごとに分かれることになります。

研修と、出力を確かめる職員の時間

見積書に載りにくい費用として、職員研修と、AIの出力を人が確かめる時間も数えておきたいところです。令和8年度診療報酬改定の個別改定項目では、医師事務作業補助体制加算でICT機器を活用する補助者を算入する要件の1つに、全補助者への操作方法と生成AIの適切な利用の研修が挙がっています。AIの下書きを医師が確かめて仕上げる時間は、ゼロにはなりません。効果を見積もるときは、短くなる時間から確認にかかる時間を差し引いて考えてみてください。

クラウド型と院内設置型(オンプレミス)で変わる費用の形

クラウド型は月額や年額の利用料が費用の中心になり、院内設置型はサーバーの購入・設置という初期費用と保守費が中心になります。どちらが安いかは利用年数と台数で入れ替わるため、同じ年数の総額で比べてみてください。

観点クラウド型院内設置型(オンプレミス)
最初にかかる主な費用初期設定、連携改修、端末サーバー機器の購入・設置、連携改修、端末
毎月・毎年続く費用月額・年額の利用料保守契約、機器の入れ替え
AIの更新利用料に含まれるかを契約で確認院内での入れ替え作業が必要になる場合がある
データの保存場所提供元のサーバー(場所と委託契約の内容を確認)院内
補助金との関係利用料は制度ごとに年度内・最大12か月分・最大2年分などの限りがある機器の購入は対象になりうるが、保守を対象外とする制度がある

クラウド型を選ぶときに、費用と同じ重さで確かめたいのが、データを預ける先の条件です。厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版の企画管理編は、医療情報の外部保存を委託する場合に、守秘義務や違反時のペナルティを契約で定めることや、保存する機器が国内法の適用及び執行の及ぶ範囲にあることを求めています。同じ第7.0版のQ&A(令和8年9月)の企画管理編Q18では、生成AIに医療情報を入力する場合、AIの学習等のために保存されないことが契約等で担保されていれば、サーバが国内法の適用を受けていることは必須ではないと示されました。いずれも外部保存の委託先に求める要件を当てはめて確かめるもので、契約の確認や院内での説明の手間も、クラウド型を使う費用の一部として見込んでおきましょう。

デジタル化・AI導入補助金の通常枠では、クラウド製品を選ぶことが加点項目の1つに挙がっており、クラウド利用料も最大2年分が補助の対象となります。院内の閉じたネットワークで作る例としては、慶應義塾大学病院とアルサーガパートナーズが2025年6月17日に、生成AIによる退院サマリ作成支援システムを病院内の閉じたネットワーク内で構築したと発表しています。院内で閉じる形は外に出さない安心がある反面、構築と保守を自院の予算で抱えることになるため、規模に合った形を選ぶことが大切です。

医師も職員も使うなら、人数で増えない契約も比べたい

事務や看護の職員にも配るなら、使う環境を院内で1つにまとめる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

医療AIの導入に使える3つの補助制度と、対象になる医療機関

医療AIの導入に使える補助は、東京都の事業、厚生労働省の事業、デジタル化・AI導入補助金の3つが軸になり、どれが使えるかは所在地・病床の有無・法人の形で決まります。東京都の事業は都内の医療機関だけが対象のため、ほかの道府県の方は、厚生労働省の事業とデジタル化・AI導入補助金から当てはまるものを探すことになります。まずは下の判断表で、自院がどの制度の候補になるかを確かめてみてください。

施設東京都 AI技術活用促進事業厚生労働省 業務効率化・職場環境改善支援事業デジタル化・AI導入補助金2026
東京都内・200床未満の病院対象になりうる対象になりうる(要件あり)医療法人で従業員300人以下なら対象になりうる
東京都内・有床診療所対象になりうる対象外(病院のみ)医療法人で従業員300人以下なら対象になりうる
東京都内・無床診療所対象外対象外(病院のみ)医療法人で従業員300人以下なら対象になりうる
東京都内・200床以上の病院対象外対象になりうる(要件あり)医療法人で従業員300人以下なら対象になりうる
東京都外の病院対象外(東京都のみの制度)対象になりうる(要件あり)医療法人で従業員300人以下なら対象になりうる
東京都外の診療所対象外(東京都のみの制度)対象外(病院のみ)医療法人で従業員300人以下なら対象になりうる

※東京都の事業は、国・地方公共団体・独立行政法人・国立大学法人が開設する医療機関と、本補助金の交付を受けたことがある医療機関(2か年計画の2年目の200床未満の病院を除く)は対象外です。厚生労働省の事業は、保険医療機関コードが発行され、令和8年4月1日から申請時点までに診療報酬請求の実績がある病院が対象で、業務効率化計画などの要件があります。デジタル化・AI導入補助金は、事務局サイトの組織形態の表で医療法人は従業員300人以下が対象とされ、申請対象者には個人事業も含まれます。個々の診療所・病院が対象になるかは、事務局・IT導入支援事業者に確認してください。

東京都「医療機関におけるAI技術活用促進事業」(令和8年度)

東京都の事業は、都内の200床未満の病院と有床診療所の開設者が、AI問診や音声入力などのAIを入れる費用の2分の1を補助するものです。基準額は1,000万円で、医療機関全体の業務改善のためのコンサルティングを合わせて行う場合は2,000万円になります。対象経費は、次の7つと定められています。

  1. AI問診の導入
  2. 電子カルテ等へのAIによる音声自動入力の導入
  3. AI通訳機など多言語対応のため必要な機器やシステムの導入
  4. その他AI技術を活用したシステム等の導入で、知事が適当と認めるもの
  5. 1〜4に関連する電子機器(必要な台数のみ・専用端末)
  6. 既存の電子カルテシステム等と連携させるための改修
  7. 医療機関全体の業務改善のため1〜4と合わせて活用するコンサルティング

1から4に関連するライセンス料・システム使用料等は、補助事業年度内に発生するものが対象で、令和9年3月利用分を令和9年4月に支払う場合も含まれます。一方で、AI医療機器や勤怠管理に係るもの、AI技術を使っていない機器やシステム、すでに入れたシステムの更新、wi-fiなどのネットワーク構築費、保守経費やリース料・通信費などの経常的な経費は対象外です。国や地方公共団体のほかの補助金を充てる経費も、対象になりません。

令和8年度の提出期限は第1回が6月30日(火)、第2回が9月30日(水)で、第3回の予定は手引には見当たらない状況です。これから申請を考える有床診療所や200床未満の病院は、次の募集を東京都保健医療局のページで確認してください。提出は原則としてJグランツで行い、見積書は一式ではなく内訳が分かる詳細なものが求められます。補助事業の完了後は、補助を受けた事業者や導入事例が保健医療局のホームページで公表されることも、申請前に院内で共有しておきましょう。東京都は令和6年度の活用事例の一部として、森山脳神経センター病院の音声自動入力、赤羽東口病院の文書作成での生成AI活用、賛育会病院の問診システム、松原アーバンクリニックのオンコール支援を公表しています。

東京都の補助額の計算例

補助額は、対象経費の支出予定額と基準額のうち小さいほうを選定額とし、そこに2分の1を掛けて求めます。

例対象経費基準額選定額補助額(×1/2)自院の負担
A:音声入力と専用端末600万円1,000万円600万円300万円300万円
B:AI問診・音声入力・連携改修(コンサルティングなし)3,000万円1,000万円1,000万円500万円2,500万円
C:Bと同じ総額でコンサルティングを含む3,000万円2,000万円2,000万円1,000万円2,000万円

例Bのように対象経費が基準額を超えると、超えた分はすべて自院の負担となってしまいます。手引には税込か税抜かの別が書かれていないため、見積書の金額をどちらで出すかは申請前に東京都へ確かめてください。補助金が支払われるのは事業完了後の令和9年5月の予定で、それまでは全額を自院で立て替えることになります。

厚生労働省「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」(令和8年度)

厚生労働省の事業は、令和7年度からの繰越分として令和8年度に行われるもので、実施主体は都道府県です。対象は、保険医療機関コードが発行され、令和8年4月1日から申請時点までに診療報酬請求の実績がある病院で、診療所は含まれません。補助は令和8年度中に生じる業務効率化に必要な経費の5分の4が上限で、1施設あたりの上限額は8,000万円です。対象にはAI問診や文書自動作成支援などの生成AIを活用した業務支援サービスも含まれ、利用料は令和8年4月1日から令和9年3月31日までに生じる最大12か月分が対象になります。

一方で、運用・保守などのランニングコストと施設整備費は対象外で、令和9年度以降の利用料への支援もありません。申請には、院長等を委員長とする業務効率化推進委員会や定量的な目標を含む業務効率化計画、令和8年4月1日時点のベースアップ評価料の届出などが求められます。仮に対象経費が1,000万円なら、補助の上限は800万円、自院の負担は200万円となる計算です。導入前後のデータ提出や、導入した機器の製品名・価格の情報提供を求められることもあるため、事務の負担も含めて検討してみてください。

デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)

デジタル化・AI導入補助金は、令和7年度補正予算事業からIT導入補助金を改称した国の補助金で、AIを含むITツールの導入を支援するものです。事務局サイトでは、医療・介護もサービス業として対象に含まれ、医療法人は従業員300人以下が対象と示されています。通常枠の補助率は1/2以内(最低賃金近傍の事業者は2/3以内)で、補助額は業務プロセスが1〜3つなら5万円以上150万円未満、4つ以上なら150万円以上450万円以下となります。クラウド利用料は最大2年分が対象で、導入コンサルティングや導入研修、保守サポートも役務として含めることが出来ます。申請は事務局に登録されたIT導入支援事業者と組んで行い、対象になるのは事前に登録されたITツールに限られます。個々の診療所・病院が対象になるかは、事務局やIT導入支援事業者に確認してください。

生成AIのチャットのように業種や業務を限らないツールは、汎用プロセスに当たる場合、それだけでは申請できない点に注意が必要です。汎用プロセスは、共通や業種別の業務プロセスを持つソフトウェアと組み合わせれば1プロセスとして数えられると公募要領に書かれています。ITツール検索では、生成AIを用いた機能を搭載したツールで絞り込むことができ、搭載の有無はIT導入支援事業者の申告に基づく表示です。通常枠の締切は、6次が2026年10月30日、7次が2026年12月1日と公表されており、以降の日程は随時更新されます。制度の細かな条件はデジタル化・AI導入補助金の解説にまとめています。

デジタル化・AI導入補助金で対象外になりやすい費用

デジタル化・AI導入補助金には、医療機関がつまずきやすい対象外の決まりがいくつかあります。公募要領とITツール登録要領では、次のものが補助の対象外、またはITツール登録の対象外とされています。

  • 交付申請の時点で利用金額が定められないITツール
  • 対外的に無償で提供されているもの(無料プランなど)
  • リース・レンタル契約のITツール(サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く)
  • 中古品
  • 交付決定前に購入したITツール
  • すでに購入済みのソフトウェアの増台や追加購入分のライセンス費用、すでに導入済みのソフトウェアの機能の追加・拡張を目的としたもの

すでに院内で使っているAIツールの利用者を増やす費用は、追加購入分のライセンス費用に当たるとITツール登録の対象外となるため、補助を前提に人数を広げる計画は組みにくくなります。月額・年額で料金が決まるサブスクリプションは1年分の利用料で登録され、2年分を申請する場合は交付申請の時に利用年数を申請する決まりです。AIを用いた機能を持つツールは登録申請の時にその旨を申告することになっており、生成AIとそれ以外のAIに分けてITツール検索に表示されます。なお通常枠の加点項目にAIの導入そのものは入っておらず、クラウド製品やサイバーセキュリティお助け隊サービスの選定などが挙がっています。制度の名前にAIとあっても、AIのツールだから審査で有利になるわけではない点を押さえておきましょう。

3制度の月額利用料と対象外の費用を並べる

3つの制度を、利用料・保守・対象外の費用で並べると次のようになります。

項目東京都 AI技術活用促進事業厚生労働省 業務効率化・職場環境改善支援事業デジタル化・AI導入補助金2026(通常枠)
対象の医療機関都内の200床未満の病院・有床診療所病院のみ(要件あり)医療法人は従業員300人以下など
補助率・上限1/2、基準額1,000万円(コンサルティングありは2,000万円)4/5を上限、1施設8,000万円1/2以内、最大450万円
月額利用料補助事業年度内に発生する分令和8年度中の最大12か月分クラウド利用料は最大2年分
保守対象外(サポートパック等を含む)対象外(ランニングコスト)保守サポートは、ソフトウェアと合わせて申請する役務として対象
主な対象外AI医療機器、勤怠管理、既存システムの更新、wi-fiなどのネットワーク構築費、リース料・通信費施設整備費、令和9年度以降の利用料交付決定前の購入、対外的に無償で提供されているもの、リース・レンタル、中古品、既存ソフトの追加ライセンス

並べてみると、保守費の扱いが制度によって分かれている点が目を引きます。保守を多く含む見積もりならデジタル化・AI導入補助金のほうが対象に入れやすい一方、補助額の上限は3制度の中で小さくなります。東京都の事業は、国や地方公共団体のほかの補助金を充てる経費を対象外としているため、同じ経費に重ねて使うことは出来ません。どの制度に何を載せるかは、見積書の段階で経費ごとに分けて考えてみてください。

申請から支払いまでの順番(交付決定の前に契約しない)

東京都の事業とデジタル化・AI導入補助金に共通する落とし穴は、交付決定の前に契約してしまうことです。東京都の事業は交付決定通知前の契約締結案件を補助対象外とし、デジタル化・AI導入補助金も、交付決定前に契約・発注・納品・支払い等を行った場合は補助金を受けられないと定めています。厚生労働省の事業は、実施要綱では利用料を令和8年4月1日以降に生じた分から対象としており、契約の時期の決まりは実施主体である都道府県の案内で確かめることになります。

  1. 院内で使う業務と範囲を決める(どの職種が何に使うか)
  2. 複数社から内訳の分かる見積もりを取る(対象経費と対象外経費を分けてもらう)
  3. 制度を選んで申請する(東京都は原則Jグランツ、デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者と組んで申請)
  4. 交付決定を待つ(東京都の第2回は令和8年11月以降の予定、デジタル化・AI導入補助金の6次締切分は2026年12月10日の予定)
  5. 交付決定の後に契約・発注・納品・支払いを行う(デジタル化・AI導入補助金はIT導入支援事業者の口座へ、原則銀行振込かクレジットカード1回払い)
  6. 事業期間内に完了させ、実績を報告する(東京都は令和9年3月31日まで)
  7. 補助金を受け取る(東京都は令和9年5月の予定)
  8. 効果の報告と継続利用(デジタル化・AI導入補助金は3年度目まで)

物品の購入は、東京都の事業では原則として一般競争入札または指名競争入札で行うとされており、1社の見積もりだけで決めると手続きに合わない場合があります。申請の準備から補助金の受け取りまで半年以上かかるため、導入したい時期から逆算して動き始めましょう。

制度締切・申請交付決定事業・利用料の対象期間その後
東京都 AI技術活用促進事業(令和8年度)第1回 令和8年6月30日、第2回 令和8年9月30日(次年度は東京都のページで確認)第2回は令和8年11月以降の予定交付決定から令和9年3月31日まで補助金の支払いは令和9年5月の予定
厚生労働省 業務効率化・職場環境改善支援事業(令和8年度)都道府県の案内で確認都道府県の案内で確認利用料は令和8年4月1日〜令和9年3月31日の最大12か月分令和9年度以降の利用料は支援なし
デジタル化・AI導入補助金(通常枠6次)2026年10月30日 17:002026年12月10日(予定)交付決定〜2027年5月31日 17:00(予定)効果報告は2028年4月から3年度目まで
デジタル化・AI導入補助金(通常枠7次)2026年12月1日 17:002027年1月19日(予定)交付決定〜2027年7月30日 17:00(予定)効果報告は2028年4月から3年度目まで

※日程は2026年9月29日時点で東京都保健医療局・厚生労働省の実施要綱・デジタル化・AI導入補助金の事務局サイトの記載を確認したものです。デジタル化・AI導入補助金の7次より後の日程は、事務局が随時公表するとしています。

医師数別の年額試算|1人あたり課金は人数で増える

1人あたりで課金するツールの年額は、単価×利用する人数×12か月で決まり、人数が増えるとそのまま増えていきます。公式に金額を公開しているSwift SOAPの医師1名あたり月額16,500円(税込)を使って、施設の規模ごとに試算してみました。職員数そのものではなく、実際に使う医師の数で費用が決まる点に注意してください。

想定する施設(前提)使う医師月額(税込)年額(税込)3年間(税込)
職員10名前後の無床診療所1名16,500円198,000円594,000円
職員30名前後の有床診療所3名49,500円594,000円1,782,000円
職員100名前後の病院10名165,000円1,980,000円5,940,000円
職員200名前後の病院20名330,000円3,960,000円11,880,000円

※計算式は16,500円×医師数×12か月(3年間は×36か月)です。職員数と医師数の組み合わせは説明のための仮定で、実際の人数は施設ごとに異なります。料金は株式会社パルシベイトの発表(2026年9月29日確認)によるもので、初期費用・連携改修費・端末費・保守費は含みません。

医師20名の病院では、文書作成の支援だけで3年間に1,000万円を超える計算になります。さらに事務や看護の職員向けにも1人あたり課金のツールを配ると、その人数分が上乗せされてしまいます。その結果、配る相手を一部の職員に絞る判断になりやすく、配られなかった職員が自分の個人アカウントで業務に使い始めるおそれも残ります。人数で費用が増える契約と、人数では増えない契約のどちらが合うかは、使う人の範囲を先に決めてから比べましょう。

人数で増える費用と、増えない費用を分けて書く

年額を試算するときは、費用を人数で増えるものと増えないものに分けて表にすると、職員が増えたときの予算が読みやすくなります。

  • 人数で増える費用:1名あたりの利用料、使う人や場所の数だけ必要な端末、研修を受ける人数に応じた費用
  • 人数で増えない費用:施設単位・組織単位の利用料、連携改修、サーバーやネットワーク、契約によっては保守

AIカルテアシスタントのProプランのように月額で示されている料金も、課金の単位が施設なのか利用者なのかで、どちらの列に入るかが変わります。見積もりを取るときに、単位を必ず書いてもらうよう頼んでみてください。医師だけで使うのか、事務や看護の職員にも広げるのかで、同じ製品でも3年総額は大きく違ってきます。

3年間の総額で比べる|補助で下がるのは最初の1〜2年分

導入を比べるときは、月額だけでなく、初期費用と3年分の利用料・保守費を合わせた総額を並べましょう。3年という区切りは、デジタル化・AI導入補助金の効果報告が3年度目まで続くことや、補助で下がる利用料が長くても最初の2年分に限られることと重なります。

3年総額 = 初期費用 + 連携改修費 + 端末費 + 月額利用料×36か月 + 年間保守費×3年 + 研修費

医師10名の病院で3年総額の表を作る

式を実際の表にすると、見積もりで埋める欄と、公表料金で先に埋まる欄に分かれます。

行金額出どころ
初期費用見積もりで記入AIツールの提供元
連携改修費見積もりで記入電子カルテの販売元など
端末費見積もりで記入提供元・販売店
利用料(医師10名×16,500円×36か月)5,940,000円(税込)株式会社パルシベイトの発表の料金
保守費×3年見積もりで記入提供元
研修費見積もりで記入提供元
補助(厚生労働省の事業で利用料が対象になった場合)−1,584,000円次の見出しの計算
3年総額(自院の負担)上の合計—

空欄のまま稟議に回すと、利用料だけが目立ち、総額が実際より小さく見えてしまいます。見積もりが揃うまでは、空欄の行があることを稟議書に明記しておくのが誠実な書き方です。

補助の時期で、利用料の補助額はこう変わる

前の節の医師10名・月165,000円(税込)の例で、補助が利用料をどこまで下げるかを計算してみます。ここではSwift SOAPが各制度の対象になると仮定しており、実際に対象になるかは確認していません。

  • 厚生労働省の事業(病院のみ・令和8年4月から使っている場合):令和8年度中の12か月分1,980,000円×4/5=1,584,000円が補助の上限。3年間の利用料5,940,000円のうち、自院の負担は4,356,000円
  • 東京都の事業(11月に交付決定を受けて契約した場合):年度内に払う11月〜3月の5か月分825,000円×1/2=412,500円。3年間の自院の負担は5,527,500円
  • デジタル化・AI導入補助金(業務プロセスが1〜3つの場合):2年分3,960,000円×1/2=1,980,000円になるが、補助額は150万円未満に収まるため、3年間の自院の負担は444万円を上回る

厚生労働省の事業で利用料の補助が上限まで出た場合、年度ごとの支払いは1年目が396,000円、2年目と3年目がそれぞれ1,980,000円で、3年間の合計は4,356,000円(いずれも税込)となります。補助の効く1年目だけが軽く、2年目から支払いが5倍に跳ね上がる形です。10月から使い始めた場合は、年度内の6か月分990,000円×4/5=792,000円が上限になります。

同じ利用料でも、制度と交付決定の時期によって、補助で下がる額は大きく変わってしまいます。東京都の事業のように年度内の発生分だけが対象の制度では、交付決定が遅いほど補助される月数が減る点に気をつけましょう。どの制度でも、3年目の利用料は自院で持つことになります。厚生労働省の事業は業務効率化計画にランニングコストの確保方針を求めているため、計画の段階で2年目以降の財源を書いておく必要があります。

※税込の料金をそのまま使った計算です。東京都の手引には補助の対象を税込・税抜のどちらで数えるかの記載がありません。補助額は上限の計算で、実際の交付額は審査で決まります。

途中でやめると返還になる場合がある

補助を受けて入れたツールを途中でやめると、返還を求められることがあるので注意が必要です。デジタル化・AI導入補助金では、効果報告の完了前に導入したITツールを解約・利用停止すると辞退の手続きが必要になり、交付された補助金の全部又は一部の返還が必要となる場合があると公募要領に書かれています。効果報告の期間は、1年度目が2028年4月〜2029年1月、3年度目が2030年4月〜2031年1月です。厚生労働省の事業も、評価で成果が認められなかった場合には補助金の返還を求める場合があるとしています。最低利用期間や解約の条件は、補助の返還の条件と並べて確かめてみてください。

削れる時間から効果を見積もる

費用に見合うかを判断するには、削れる時間の見込みが必要です。Ubieは2024年9月30日に、恵寿総合病院で行った測定として、看護師の退院時看護サマリの作成時間が、生成AIを使わない群で平均12分20秒、使う群で平均7分5秒だったと発表しました。測定はAIなし89件・AIあり100件の群間比較で、同じ人の前後を比べたものではなく、当事者による発表で第三者の検証でもありません。差は1件あたり5分15秒で、仮に月200件に当てはめると月1,050分、17時間半ほどの計算になります。自院で見積もるときは、1件あたりの短縮時間×月の件数×時給で月の削減額を出し、そこから確認にかかる時間を差し引いてみましょう。

施設の規模と所在地で変わる、費用と補助の組み立て方

同じ医療AIでも、無床診療所と200床未満の病院では、使える補助も費用を増やす要因も違ってきます。職員10〜200名の医療機関を4つの形に分けて、組み立て方の目安を並べてみましょう。

無床診療所(職員10〜30名前後)

無床診療所は、東京都の事業と厚生労働省の事業のどちらも対象外のため、補助の候補はデジタル化・AI導入補助金に絞られます。医療法人か個人開設かで確かめる基準が変わるため、対象になるかは事務局やIT導入支援事業者に確かめる必要があります。使う医師が1〜2名なら、医師1名あたり月額16,500円(税込)の定額でも年額は約20万〜40万円に収まり、文書作成の支援から小さく始める形が取りやすいでしょう。受付や事務の職員にも生成AIを使ってもらうなら、医師向けの製品とは別に、職員全体で使う汎用の生成AIの契約を検討することになります。

東京都内の有床診療所

東京都内の有床診療所は、東京都の事業の対象になる一方、厚生労働省の事業は病院のみのため使えません。AI問診や音声入力、電子カルテとの連携改修、専用端末をまとめて申請すれば、対象経費の2分の1(基準額1,000万円)が補助の候補になります。ただし補助事業年度内に発生する利用料しか対象にならないため、翌年度からの利用料は自院の予算で組んでおく必要があります。補助を受けると事業者名や導入事例が公表されるので、院内の合意も早めに取っておきましょう。

東京都内の200床未満の病院

東京都内の200床未満の病院は、東京都の事業と厚生労働省の事業の両方が候補に入ります。東京都の事業はほかの国や地方公共団体の補助金を充てる経費を対象外としているため、同じ経費を両方に載せることは出来ません。補助率は厚生労働省の事業が5分の4と高い一方、業務効率化計画の作成や導入前後のデータ提出、成果が認められない場合の返還といった条件が重くなります。どちらに何を載せるかは、要件を満たせるかと事務の負担を並べて、院内で決めてみてください。

東京都外の病院

東京都外の病院は、厚生労働省の事業とデジタル化・AI導入補助金が候補です。厚生労働省の事業は都道府県が実施主体のため、募集の時期や手続きは所在地の都道府県の案内で確かめることになります。医師の数が増えるほど1名あたりの課金は年額が膨らむため、医師向けの専用製品と、事務・看護の職員が使う汎用の生成AIを分けて見積もると、3年総額を比べやすくなるでしょう。どの形でも、補助で下がるのは最初の1〜2年分で、その先の利用料と保守費を自院で持つ点は変わりません。

診療報酬の加算でAIの費用を一部回収できるか

令和8年度診療報酬改定の個別改定項目では、医師事務作業補助体制加算に、ICT機器を活用する医師事務作業補助者の配置人数の算入方法が新しく設けられました。生成AIで退院時要約・診断書・紹介状などの原案を作る文書作成補助システムを組織的に導入し、大半の医師と補助者が日常的に使っていることなどを要件に、補助者1人を1.2人として数えることが出来ます。医療文書用の音声入力、RPA、10種類以上の患者向け説明動画のうち1種類以上も広く活用している場合は、1.3人として数える形です。あわせて、医療情報を扱うものは厚生労働省の安全管理ガイドラインと総務省・経済産業省の提供事業者向けガイドラインへの準拠、生成AI等を使うものはAI事業者ガイドラインの遵守、全補助者への研修が求められています。ここに挙げたのは中医協に示された個別改定項目の段階の文言で、告示・通知の最終的な文言は厚生労働省の公表資料で確かめてください。

加算を費用の回収に数えるときの注意

加算の要件は、生成AIのツールを入れるだけでなく、院内の大半の医師が日常的に使う状態を作ることにあります。職員の一部にだけツールを配る形では要件に届きにくく、配布の範囲と研修の費用も見込む必要が出てきます。加算による収入は施設の体制や算定の状況で変わるため、費用の回収に数える場合は、医事課と一緒に自院の数字で試算してみましょう。

医師の働き方改革と費用の見方

2024年4月から医師の時間外労働の上限規制が始まり、厚生労働省はタスク・シフト/シェアやICTの活用を時短の取組に挙げています。上限は水準によって年960時間や年1,860時間と定められており、文書作成の時間を減らす投資は、加算とは別に、時間外労働を抑える手段としても見ることが出来ます。費用の回収は加算だけで考えず、時間外の手当や当直明けの負担がどう変わるかも合わせて見てみてください。

見積書で確かめる12項目のチェックリスト

見積書を受け取ったら、金額の合計より先に、次の12項目が書かれているかを確かめてみてください。どれかが抜けていれば、その項目を追記した見積もりを出し直してもらうのが近道です。

  • 料金の単位施設ごと・医師1名ごと・利用者1名ごと・利用量ごとのどれで決まるか。単位で3年総額の増え方が変わります。
  • 初期費用の内訳初期設定・データ移行・導入支援が個別に書かれているか。一式の表記は補助金の申請で内訳を求められます。
  • 電子カルテ・院内システムとの連携改修どこまでつなぐのか、改修を見積もるのはAIの提供元か電子カルテの販売元か。
  • 端末・周辺機器の台数と用途AI専用の端末か、普段使うパソコンの入れ替えか。東京都の事業は必要な台数のみ・専用端末が対象です。
  • 院内のネットワーク工事の要否回線やwi-fiの増強が必要か。東京都の事業ではネットワーク構築費が対象外です。
  • 保守・サポートの範囲と年額ソフトの更新や故障時の対応が含まれるか。保守を対象外とする補助制度があります。
  • 研修の回数と対象全職員向けか、一部の職員向けか。加算の要件では全補助者への研修が挙がっています。
  • 最低利用期間と解約の条件途中解約の違約金はあるか。補助金の効果報告の期間と重ならないかも見ます。
  • 利用量の上限と、上限に達したときの扱い上限で止まるのか、追加の費用で続けられるのか。
  • データの保存場所と、学習等のために保存されないことの担保委託契約や規約のどこに書かれているか。安全管理ガイドラインの外部保存の要件に当てはめて確かめます。
  • 補助の対象経費と対象外経費の区分け制度ごとに対象になる行と、ならない行を分けて書いてもらえるか。
  • 税込・税抜の表記、見積もりの有効期限と契約日契約日を交付決定の後に置けるか。月額の表示が税込か税抜かも揃えます。

中でも料金の単位と保守の範囲は、3年総額と補助の対象に同時に響くため、最初に確かめたい項目になります。複数社の見積もりをこの12項目で表に並べれば、院内の稟議でも比べた根拠を示すことが出来ます。

見積もりを依頼するときの文面の例

複数社に同じ形で見積もりを出してもらうには、依頼の段階で項目を指定するのが近道です。次の文面を、自院の状況に合わせて書き換えて使ってみてください。

件名:AIツール導入のお見積もりのお願い

当院では、退院時要約などの文書作成を支援するAIの導入を検討しております。つきましては、以下の項目を分けたお見積もりをお願いいたします。

1. 料金の単位(施設・医師1名・利用者1名・利用量のいずれか)と月額/2. 初期費用の内訳/3. 電子カルテとの連携改修の範囲と費用(貴社以外が担う場合はその旨)/4. 端末・周辺機器の台数と金額/5. 保守・サポートの範囲と年額/6. 研修の内容と費用/7. 最低利用期間と解約の条件/8. 利用量の上限と、上限に達した場合の扱い/9. データの保存場所と、学習等のために保存しないことの契約上の定め/10. 税込・税抜の別と、見積もりの有効期限

補助金の申請を検討しているため、一式ではなく内訳が分かる形でのご提示をお願いいたします。

稟議書に書いておく9つの項目

見積もりが揃ったら、院内の稟議書には次の9つを書き込みましょう。

  1. 目的と対象の業務(退院時要約の下書き、問診、音声入力など)
  2. 使う人の範囲(医師のみか、事務・看護の職員まで広げるか)
  3. 費用の6つの行(利用料・初期費用・連携改修・端末・ネットワーク・保守と研修)
  4. 3年総額と、年度ごとの支払い額
  5. 使う補助制度と、対象経費・対象外経費の区分け
  6. 補助金を受け取るまでの立て替え額と時期
  7. 返還になりうる条件(途中解約、成果が認められない場合など)
  8. 安全管理の確認結果(学習等のために保存されないことの担保、保存場所、利用ログ)
  9. 効果の測り方(1件あたりの作成時間、件数、時間外労働の変化)

効果の測り方を導入前に決めておけば、厚生労働省の事業で求められる導入前後のデータ提出や、デジタル化・AI導入補助金の効果報告にもそのまま使えます。

院内で安全に使うための費用|設定・ログ・配布・使い分け

生成AIを院内で安全に使うための費用は、学習させない設定の確認、利用の記録を残す仕組み、職員への配布、用途ごとの使い分けの4つに分けて見込むことになります。どれも見積書の1行目には出てこない費用ですが、ここを削ると、患者の情報を扱う現場では使える範囲が狭まってしまいます。

学習させない設定と委託契約の確認

個人情報保護委員会は令和5年6月2日の注意喚起で、個人情報を含むプロンプトを入力する場合は利用目的の達成に必要な範囲内かを確認し、入力したデータが機械学習に利用されないことなどを十分に確認するよう求めています。病歴は個人情報保護法上の要配慮個人情報に当たるため、医療機関では、学習に使われない設定が職員一人ひとりの操作ではなく契約と管理者の設定で担保されているかが大切になります。厚生労働省の安全管理ガイドラインの企画管理編は、外部保存の委託契約に、医療機関や患者の許可なく受託した医療情報を分析等の目的で取り扱わないことを定めるよう求めており、生成AIの提供元にもこれを当てはめて確かめることが出来ます。

委託先を選ぶときに確かめる項目

安全管理ガイドライン第7.0版の企画管理編は、外部保存の委託先を選ぶときに確かめる事項も挙げています。

  • 委託先の基本方針・規程と、実施の体制
  • バックアップの体制
  • 信用度と経営の健全性
  • プライバシーマーク又はISMSの認証(どちらもなければISMAP、CSゴールドマーク、FedRAMP、SOC2・SOC3など)
  • 医療情報を保存する情報機器が設置されている場所(地域・国)
  • 委託先に対する国外法の適用の可能性

これらは生成AI向けに書かれた規定ではなく、外部保存の委託先への要件を当てはめて確かめるものです。同じ第7.0版のQ&Aの企画管理編Q16は、外部保存について、目的・保存先・安全性を原則として事前に患者へ説明することを求め、その方法は院内掲示に限らないとしています。確認と説明の手間は一度きりではなく、契約の更新やツールの入れ替えのたびに発生するため、使うツールの数を絞ることも、費用を抑える手の1つです。

利用ログと職員への配布

誰がいつどのAIを使ったかの記録は、院内ルールが守られているかを確かめる材料になります。1人あたり課金のツールを一部の職員にだけ配ると、配られなかった職員が個人のアカウントで業務に使い、記録が院内に残らない状態が生まれやすくなってしまいます。全職員に配れる契約かどうかは、ログを院内でまとめて見られるかと一体で考えてみてください。野良AIの見つけ方と対策は野良AI(シャドーAI)の解説で、点検の項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストで扱っています。

複数のAIを用途で使い分ける

文書の下書き、文献や制度の調べもの、会議の記録の要約では、向いているAIが異なることがあります。用途ごとに別々の契約を結ぶと、ツール代も管理画面も契約の数だけ増えてしまうため、複数のAIを1つの契約と1つの管理画面で使える形も選択肢に入ります。複数のAIをまとめて使う形の考え方は、マルチAIの解説にまとめています。

AIツール代を人数で増えない定額に抑える

職員10〜200名の医療機関で、医師だけでなく事務や看護の職員にも生成AIを使ってもらうなら、AIツール代を人数で増えない会社定額の契約にすると予算が読みやすくなります。人数で増えない契約でも、料金が利用量で決まる形のものもあるため、見積もりでは利用量の上限と、上限に達したときの扱いを必ず確かめましょう。医療文書の作成に特化した製品と、院内の幅広い業務に使う汎用の生成AIを分けて考えると、前者は使う医師の数、後者は院内全体の利用量で費用を比べることが出来ます。患者の情報を入れてよい範囲と入れない範囲の線引きは、ChatGPTは医療で禁止かの解説と生成AIの社内ガイドラインの作り方が参考になります。

院内のAIツール代を、人数で増えない定額に

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約・1つの画面で使える法人向けサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理でき、基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

医療AIの導入費用はいくらかかりますか?
AIの種類と使う人数で大きく変わります。公式に金額を公開している文書作成支援AIには、月額22,000円(税抜)のプランや、医師1名あたり月額16,500円(税込)の定額があり、後者を医師10名で使うと年1,980,000円(税込)です。これに初期費用、電子カルテ等との連携改修、端末、保守、研修の費用が加わります。画像診断支援AIは施設ごとの見積もりで確かめることになります。
無料で使える医療AIはありますか?
AIカルテアシスタントには、チャットが月30メッセージまでの無料プランがあります(2026年9月29日時点の公式ページ)。日常の業務で使うには量が限られるため、操作の感触を確かめる入口と考えるのが現実的です。なお、デジタル化・AI導入補助金では、対外的に無償で提供されているものは補助の対象外です。
無床診療所でも使える補助金はありますか?
東京都の医療機関におけるAI技術活用促進事業は200床未満の病院と有床診療所が対象で、無床診療所は対象外です。厚生労働省の医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業も病院のみが対象です。デジタル化・AI導入補助金は医療法人なら従業員300人以下が対象で、申請対象者には個人事業も含まれますが、個々の可否は事務局やIT導入支援事業者に確認してください。
補助金で月額の利用料も補助されますか?
制度によって期間が違います。東京都の事業は補助事業年度内に発生するライセンス料・システム使用料等、厚生労働省の事業は令和8年度中に生じる最大12か月分、デジタル化・AI導入補助金はクラウド利用料の最大2年分が対象です。いずれの制度でも3年目以降の利用料は自院の負担になり、東京都と厚生労働省の事業では保守費も対象外です。
補助金の申請前に契約してもよいですか?
おすすめしません。東京都の事業は交付決定通知前に契約した案件を補助の対象外とし、デジタル化・AI導入補助金も交付決定前に契約・発注・納品・支払い等を行った場合は補助金を受けられないと定めています。見積もりは申請前に取り、契約は交付決定の後に行ってください。
東京都の補助金はいくら受け取れますか?
対象経費の支出予定額と基準額(1,000万円、コンサルティングを行う場合は2,000万円)のうち小さいほうを選定額とし、その2分の1が補助金額です。対象経費600万円なら補助は300万円、コンサルティングなしで対象経費3,000万円なら選定額1,000万円の2分の1で500万円になります。支払いは事業完了後の令和9年5月の予定です。
画像診断支援AIの費用の相場はどのくらいですか?
相場を示せるほどの公開情報はなく、施設ごとの見積もりで確かめることになります。本体のライセンス、検査機器や画像の保管システムとの接続、サーバー、端末、保守を項目ごとに出してもらってください。東京都の事業はAI医療機器に係るものを対象外としている点にも注意が必要です。
医師事務作業補助体制加算でAIの費用を回収できますか?
令和8年度診療報酬改定の個別改定項目では、生成AIの文書作成補助システムなどを組織的に導入し大半の医師と補助者が日常的に使っている場合に、補助者1人を1.2人(ほかのICT機器も広く活用していれば1.3人)として数える算入方法が示されています。収入の増え方は施設の体制で変わるため、告示・通知の最終的な文言を確かめたうえで、自院の数字で試算してください。
クラウド型と院内設置型はどちらが安いですか?
利用年数と台数で入れ替わるため、同じ年数の総額で比べる必要があります。クラウド型は利用料が中心で、院内設置型はサーバーの購入・設置と保守が中心です。デジタル化・AI導入補助金の通常枠ではクラウド製品の選定が加点項目になっており、クラウド利用料は最大2年分が補助の対象です。
すでに使っているAIツールの利用者を増やす費用は、補助金の対象になりますか?
デジタル化・AI導入補助金では、すでに購入済みのソフトウェアに対する増台や追加購入分のライセンス費用は、ITツール登録の対象外とされています。東京都の事業も、すでに導入したシステム等の更新に係る経費を対象外としています。新しく入れるツールなのか、今の契約の延長なのかを、見積もりの段階で分けて確かめてください。
東京都以外の病院はどの補助金が使えますか?
東京都の事業は都内の医療機関だけが対象です。都外の病院は、都道府県が実施主体となる厚生労働省の医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業と、デジタル化・AI導入補助金が候補になります。厚生労働省の事業の募集時期や手続きは、所在地の都道府県の案内で確かめてください。
補助金はいつ受け取れますか?立て替えは必要ですか?
東京都の事業では、補助金の支払いは事業完了後で、令和9年5月の予定とされています。交付決定の後に契約・支払いを行い、事業を完了させてから受け取る流れのため、それまでは全額を自院で立て替えることになります。資金繰りの計画に、立て替えの額と期間を入れておいてください。
デジタル化・AI導入補助金に申請するには何が必要ですか?
事務局に登録されたIT導入支援事業者とパートナーシップを組んで申請し、導入するのは事前に事務局の審査を受けて登録されたITツールに限られます。支払いは原則として銀行振込かクレジットカード1回払いで、補助事業者の口座からIT導入支援事業者の口座へ行う決まりです。交付決定の後に契約・発注し、効果報告を3年度目まで続ける前提で計画してください。
職員が個人で契約した生成AIを業務で使うのは費用の節約になりますか?
ツール代は見かけ上かかりませんが、医療機関としての確認ができないまま患者の情報が入力されるおそれが残ります。個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを入力する場合に、入力したデータが機械学習に利用されないことなどを十分に確認するよう求めています。病歴は要配慮個人情報に当たるため、院内で契約と設定を確かめたツールを配るほうが、結果として説明や対応の手間を抑えられます。
職員全員に生成AIを使わせると費用はどうなりますか?
1人あたり課金のツールでは、配る人数に比例して費用が増えます。医師1名あたり月額16,500円(税込)の例では、20名で年3,960,000円(税込)です。事務や看護の職員にも広げるなら、人数で増えない契約も候補に入れ、料金を決める利用量の上限と、上限に達したときの扱いを確かめてください。

まとめ

医療AIの導入費用は、ツールの利用料だけでなく、初期費用・連携改修・端末・保守・研修を足した総額で見る必要があります。公式に金額を公開している文書作成支援AIには月額22,000円(税抜)のプランや医師1名あたり月額16,500円(税込)の定額があり、1人あたりの料金は使う医師が増えるほどそのまま増えていきます。画像診断支援AIは施設ごとの見積もりで、接続と保守を項目ごとに出してもらうことが出来ます。

補助は、東京都内の200床未満の病院と有床診療所なら東京都の事業、要件を満たす病院なら厚生労働省の事業、従業員300人以下の医療法人ならデジタル化・AI導入補助金が候補です。東京都の事業とデジタル化・AI導入補助金では交付決定の前に契約すると対象外になり、どの制度でも3年目以降の利用料は自院で持つことになってしまいます。見積書の12項目と3年総額の式を手元に置いて、比べる土台を院内で揃えてみてください。

最初の一歩は、院内で誰が何の業務にAIを使うのかを決めることです。使う人の範囲が決まれば、料金の単位が合う製品と、候補になる補助制度が絞り込まれていきます。そのうえで複数社から同じ形の見積もりを取り、稟議書の9項目に落とし込むと、院長や理事会にも費用の全体を一度で示すことが出来ます。

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