農業のAI活用。作業記録・販売・補助金書類で生成AIを使う方法と始め方

農業のAI活用とは、センサーやドローンで畑や作物を見る「スマート農業」と、ChatGPT・Claude・Geminiなどの生成AIに文章を書かせる使い方の2つを指す言葉です。農業法人やJA、直売所の事務で今日から始められるのは後者で、作業日誌の整理、直売所のPOPや通販の商品説明、問い合わせへの返信、補助金の事業計画の下書きに使うことが出来ます。ただし農薬の使い方や食品表示、補助金の要件はAIの答えをそのまま使えないため、人が確かめる点を業務ごとにそろえて使いましょう。会社全体での進め方は中小企業のAI導入の進め方にまとめてあり、こちらはその農業版になります。

スマート農業とは|機械が見る領域と生成AIが書く領域の分担

スマート農業とは、ロボットやドローン、センサーなどの機械と情報技術を使って、農作業の省力化や品質の向上をめざす農業のことになります。機械が畑やハウスの様子を測り、AIがそのデータを解析して人の判断を助ける形が中心です。一方、ChatGPTのような生成AIは、人が渡した材料から文章や表を作る道具で、畑を直接見ることはありません。同じ「農業AI」という言葉でも、受け持つ仕事がまったく違うと考えておきましょう。

比べる点機械が見る領域(スマート農業)生成AIが書く領域
受け持つ仕事生育や病害虫の状態を測る、散布・収穫・走行を機械に任せる作業の記録を整える、販売の文を書く、問い合わせに返す、申請書類を文章にする
使う道具センサー、カメラ、ドローン、ロボット、営農管理クラウドChatGPT・Claude・Geminiなどの対話型のAI
AIに渡すもの機械が自動で集めた画像や数値人が書いたメモ、録音の文字起こし、過去の文書、公募要領
出てくるもの生育の状態、病害虫の疑い、収穫の見込み、機械の動き表、文章の下書き、返信の文案、要点の一覧
始めるときの重さ機械の購入・設置・操作の習得が必要パソコンやスマートフォンがあれば試せる
使う人生産の現場事務・販売・営農指導・経営の担当

この記事の主役は表の右側で、機械を買わなくても、手元のパソコンやスマートフォンで始められます。スマート農業の機械やサービスを詳しく比べたい方は、メーカーの資料や農林水産省のスマート農業のページから調べてみてください。

病害虫の診断・生育や収量の予測(画像・葉色の解析)

作物や葉の写真をAIが解析して、病害虫の疑いや生育の進み具合、収穫量の見込みを示す仕組みがあります。カメラやドローンで撮った画像を使うため、撮影の機材と、記録を積み重ねる期間が必要になります。生成AIにも写真を読ませることは出来ますが、それは機械の解析とは別物です。生成AIに病名や農薬の判断を任せず、普及指導員や販売店に確かめる前提で使ってください。

農薬散布ドローン・収穫ロボット・自動走行

農薬を空から散布するドローン、実を見分けて収穫するロボット、人が乗らずに走るトラクターなどが、機械側の代表例になります。どれも機械の購入や操作の習得が伴い、圃場の形や作物によって向き不向きが出てしまいます。価格や効果は機種ごとに大きく変わるので、導入を考えるときはメーカーの実演や地域の導入例で確かめましょう。

営農管理クラウドでの作業記録・圃場管理

営農管理クラウドは、圃場ごとの作業や資材の使用をスマートフォンなどから記録して、地図や一覧で管理するサービスです。記録をためる仕組みとしてはこちらが本命で、生成AIはその記録を読みやすい文章や報告に整える役回りになります。すでにクラウドで記録している法人なら、書き出した一覧を生成AIに渡して、月報や引き継ぎ資料にまとめさせる使い方が出来ます。生成AIが書く領域は、記録・販売・連絡・申請の4つに分けて考えると整理しやすいでしょう。

農業で生成AIが役立つ背景|高齢化・人手不足・後継者不足と技術の継承

農業で生成AIが役立つのは、人手が足りない中でも、事務と販売の仕事は減らないからです。担い手の高齢化や人手不足、後継者が見つからないという悩みは、農業の現場で長く語られてきました。畑の仕事に人を取られると、日誌の清書や取引先への連絡、申請書づくりは、夜や雨の日にまとめて片付けることになってしまいます。

熟練した方の勘やコツが言葉になっていないことも多く、引き継ぐ相手に説明しようとしても、文章にする時間が取れないのが実情でしょう。生成AIは、話した内容や走り書きのメモを、読みやすい手順書や記録の形に整える作業が得意です。機械で畑の作業を減らすスマート農業と並べて、机の上の作業を減らす道具として位置づけるとよいでしょう。

農協や農業法人では、組合員や取引先、消費者とのやり取りが毎日のように発生します。返信の文や案内の文を一から書く手間が減れば、その分を現場の相談や売り場づくりに回すことが出来ます。引き継ぎに使うなら、作業の段取りを録音して文字にし、AIに手順書の形へ直させるところから試してみてください。

生成AIを事務に使うメリット|省人化・品質・コスト・ノウハウの記録

生成AIを事務に使う大きな利点は、文章の下書きにかかる時間を短くし、その分を畑や接客に回せることになります。品質と収量を上げるのはスマート農業の機械の仕事で、生成AIが上げるのは書類や販売文の質とそろい方です。

たとえば直売所のPOPを担当者ごとに書くと、言い回しや載せる情報がばらばらになってしまいます。決まった指示文を使えば、誰が書いても産地や食べ方、保存方法の欄がそろった形で出てくるようになります。費用の面では、外部に頼んでいた商品説明やチラシの文案づくりを社内で下書きまで進められるため、頼む範囲を絞ることが出来ます。

ノウハウの記録では、ベテランの方に話してもらった内容を文字にし、AIで作業手順書に整えれば、言葉にする手間がぐっと軽くなるでしょう。ただし削れるのは書く時間で、中身を確かめる時間は残ると考えておいてください。確認の手間を見込まずに使い始めると、誤りがそのまま取引先やお客様に届いてしまいます。

デメリットと課題|初期費用・ITスキル・データ整備と通信環境、AIの誤り

生成AIは機械を買う必要がないぶん初期費用は小さく、課題は使う人の慣れと、材料になる記録の整い方に出てきます。スマート農業では機械やセンサーの購入費が大きな負担になり、通信が届かない圃場ではデータを送れない問題も起こります。生成AIの場合、無料版でも試せる一方で、会社で使うなら法人向けのプランやサービスの月額がかかることになります。

ITに慣れていない方にとっては、どう頼めばよい答えが返るのか分からない、という壁が最初に来るでしょう。この壁は、業務ごとの指示文をひな形にして配れば、かなり低くすることが出来ます。材料の面では、日誌が手書きのノートだけだったり、人によって書き方がばらばらだったりすると、AIに渡す前の書き起こしに手間がかかってしまいます。

もう1つの課題は、生成AIがもっともらしい誤りを書くことです。この現象はハルシネーションと呼ばれ、農薬の使用回数や補助金の締切のように、間違えると困る情報ほど人の確認が欠かせません。個人情報や取引の数字をどの環境に入れるかという線引きも、使い始める前に決めておきましょう。

生成AIを使う業務と、組織別の最初の1業務

生成AIを使える業務は、記録・販売・連絡・申請・事務の5つに分けると、どこから手を付けるか決めやすくなります。

分類具体的な仕事AIに任せる部分人が決める部分
記録作業日誌・防除記録の清書、引き継ぎの手順書、月報話した内容や走り書きを表や文章に整える使った農薬・量・日付が正しいか
販売直売所のPOP、ECの商品説明、SNSの投稿、メルマガ、季節のお知らせ文案を何通りか出す産地・表示・効能の言い方
連絡消費者・取引先からの問い合わせへの返信、よくある質問の回答集、出荷の案内返信の文案、質問の分類約束する内容・値引き・品質の事実
申請補助金の事業計画の下書き、公募要領の要点の整理文章化、要点の表要件・金額・面積・実績の数字
事務会員名簿の住所の表記をそろえる、表の整形、会議メモの要約表記ゆれの直し、見出しづけ名簿をどの環境に入れてよいか

最初に選ぶ1業務は、組織の形によって変わってきます。

組織の形最初の1業務選ぶ理由
農業法人(生産が中心)作業日誌・防除記録の整理毎日発生し、記録の形がそろうと月報や計画書にも使い回せる
JA(営農・販売・総務)生産者から集めた栽培履歴(生産履歴)の記帳の書き起こしと、未記入・不明な点の洗い出し(出荷前の点検の下準備)出荷のたびに量が多く、洗い出しの誤りは人の点検で止まる
直売所POPと季節のお知らせ短い文で、店頭に出す前に確かめやすい
6次産業(加工品の販売)ECの商品説明文章の量が多い。食品表示の確認は必ず人が行う
観光農園予約や営業時間の問い合わせへの返信、SNSの告知同じ質問がくり返されやすい

迷ったら、毎週くり返していて、間違えてもすぐ直せる業務から選んでみてください。補助金の申請のように一度きりで間違いが許されない書類は、指示文に慣れてから取りかかるほうが安心でしょう。

作業日誌・防除記録の整理|音声メモから表にまとめる

作業日誌と防除記録は、話した内容や走り書きをAIに渡して、決まった表の形に整えさせる使い方が向いています。清書の手間が減るだけでなく、書き漏れた欄がひと目で分かるようになるのも利点です。

入れる材料

材料は、その日の作業を話して録音した文字起こしか、メモ帳の走り書きで十分になります。スマートフォンの音声入力を使えば、作業の合間に話すだけで文字になるので、畑から戻る前に材料をそろえることが出来ます。圃場は「第1圃場」「〇〇町ハウス2」のように、組織の中で決めた呼び名にそろえておきましょう。

AIへの指示文

指示文1 作業日誌・防除記録の整形(そのまま貼れます)
あなたは農業法人の事務担当です。下の【メモ】は、今日の作業を話した内容の文字起こしです。次の表の形に整えてください。
・列は、日付/圃場名/作物/作業内容/農薬名/希釈倍数/10a当たり散布量/使用回数(同じ有効成分を含む農薬の通算)/散布面積/収穫予定日/作業者/備考 とします。
・メモに書かれていない項目は推測で埋めず、「未記入」と書いてください。
・農薬や肥料の名前、量、倍率、回数は、メモに書かれた文字をそのまま写し、言い換えや補足をしないでください。
・最後に、未記入の項目と、メモの中で聞き取りがあいまいな語を箇条書きで挙げてください。
【メモ】
(ここに文字起こしや走り書きを貼る)

出てくる文の例

出力の例(材料のメモが「10月16日、第2圃場のなす、〇〇水和剤をいつもの量で散布、作業は山田」の場合)
日付:10月16日/圃場名:第2圃場/作物:なす/作業内容:散布/農薬名:〇〇水和剤/希釈倍数:未記入/10a当たり散布量:未記入/使用回数(同じ有効成分を含む農薬の通算):未記入/散布面積:未記入/収穫予定日:未記入/作業者:山田/備考:なし
未記入の項目:希釈倍数、10a当たり散布量、使用回数、散布面積、収穫予定日
あいまいな語:「いつもの量」は実際の倍数と散布量が分からないため、作業者への確認が必要です。
※農薬名・人名は説明用の仮のものです。

人が必ず確かめる点

防除の記録では、使った農薬の名前と倍率、回数、使った時期が、ラベルの登録内容と使用基準に合っているかを人が確かめてください。農薬取締法第25条第1項は、農林水産大臣と環境大臣が農薬の種類ごとに「その使用の時期及び方法その他の事項について農薬を使用する者が遵守すべき基準を定めなければならない」と定めています。基準に合っているかの判断は、AIの答えではなく、農薬のラベルに書かれた登録内容と使用基準で確かめましょう。生成AIは農薬の名前や倍率を、それらしく書き換えてしまうことがあるため、指示文で「そのまま写す」と縛っています。

  • 日付と圃場名が実際の作業と合っているか音声入力では「第1」と「第7」のような聞き違いが起きやすくなります。
  • 農薬名がメモの表記と一字一句同じか名前の似た別の農薬に置き換わっていないかを見ます。
  • 希釈倍数・10a当たり散布量・使用回数がラベルの範囲かAIの答えではなく、ラベルの登録内容と使用基準、農林水産省の農薬登録情報提供システムで確かめます。
  • 「未記入」の欄を作業した本人に聞いて埋めたかAIに推測で埋めさせないことが、記録の信頼につながります。
  • 収穫の予定日と最後の散布日の間隔収穫前に使える日数の決まりも、ラベルで確かめます。

出典:農薬取締法(昭和23年法律第82号)第25条第1項(e-Gov法令検索)、農林水産省 農薬登録情報提供システム(農薬名・作物名・病害虫・有効成分で登録内容を検索できます)。2026年10月16日に確認しています。

慣れてきたら、1週間分の日誌をまとめて渡し、圃場ごとの作業の一覧や、翌年の作業計画のたたき台を作らせることも出来ます。その場合も、資材名と数量の列だけは元の記録と見比べる習慣を残してください。

JAの側では、生産者から集めた栽培履歴(生産履歴)の記帳を書き起こし、未記入や読み取れない点を洗い出す下準備に、指示文1を使うことも出来ます。その場合は列を記帳の様式に合わせ、【メモ】には生産者の名前を入れず、番号などに置き換えてください。出荷してよいかの判断は、これまでどおり人の点検で決めましょう。

外国人の働き手向けに作業手順書を直す

外国人の働き手がいる法人では、作業手順書を「やさしい日本語」と母国語の2列の表に直す使い方もあります。JAレーク滋賀が導入した栽培アシストAIでも、5か国語への翻訳が使い方の1つとして想定されています。材料は、いま使っている日本語の作業手順書と、相手の母国語の名前になります。

指示文6 作業手順書のやさしい日本語・母国語の表(そのまま貼れます)
あなたは農業法人で外国人の働き手の受け入れを担当しています。下の【手順書】を、1行に1つの作業となる表に直してください。
・列は、番号/やさしい日本語/〇〇語/注意すること とします。
・やさしい日本語は短い文にし、むずかしい漢字にはふりがなを付けてください。
・農薬や資材の名前、倍数、量、時間、日数などの数字は、【手順書】の表記のまま写し、訳したり言い換えたりしないでください。
・意味があいまいな箇所は推測で訳さず、最後に一覧で挙げてください。
【手順書】
(ここに日本語の作業手順書を貼る)

訳した文は、その言葉が分かる方に読んでもらってから配ってください。農薬名や数字が原文のまま写っているかは、日本語の手順書と1行ずつ見比べて確かめましょう。

顧客名簿や取引単価を個人の無料アカウントに入れる危険

生成AIを試すときに気を付けたいのが、事務の方が自分の無料アカウントに、顧客名簿や取引先との単価を貼り付けてしまう事故です。個人のアカウントは設定によって入力内容がAIの学習に使われることがあり、その設定を会社がまとめて確かめるのは難しくなります。

個人情報保護委員会は令和5年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表し、個人情報取扱事業者に向けて、個人情報を含むプロンプトを入れるときは「特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること」と求めています。同じ文書には、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入れ、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合は「個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性がある」という一文もあります。そのうえで、提供事業者がその個人データを機械学習に使わないことなどを十分に確かめるよう呼びかけています(個人情報保護委員会の該当ページ)。

利用を禁じた文書ではないものの、直売所の会員名簿やECの購入者情報は、この注意喚起がそのまま当てはまる情報だと考えましょう。取引先ごとの単価や仕入先、まだ公表していない売上や面積の数字も、個人情報ではなくても外に出したくない情報でしょう。こうした情報は、会社が用意した学習させない設定の環境でだけ扱うと決めておきましょう。

個人のアカウントで仕事を始めてしまうと、退職や異動のときに、やり取りの履歴ごと会社の外に残ってしまいます。会社が把握しないまま個人で使われるAIは、野良AI(シャドーAI)とも呼ばれています。販売や問い合わせのように顧客の情報が絡む業務は、会社として使う環境を1つ決めてから進めるのが安全な順番になります。

名簿や単価を入れる環境は、会社で1つに決めましょう

職員が個人のアカウントに顧客情報を入れずに済むよう、全員で使える環境を会社で用意する方法があります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

直売所のPOP・ECの商品説明|食品表示と言い過ぎを人が確かめる

直売所のPOPやネット通販の商品説明は、生成AIがすぐに役に立ちやすい業務になります。一方で、食品表示の決まりと、品質を実際より良く見せる表現の両方に気を配る必要があります。

入れる材料

材料は、品目と品種、産地として表示する地名、収穫の時期、おすすめの食べ方、保存の方法、売る場所と文字数の目安です。栽培の工夫を書くときは、実際にしていることだけを箇条書きにして渡してください。書いていない栽培方法をAIが付け足すことがあるので、材料の段階で「ここにない事実は書かない」と縛るのが大切になります。

AIへの指示文

指示文2 直売所のPOP・ECの商品説明(そのまま貼れます)
あなたは〇〇町の直売所で売り場を担当しています。下の【材料】だけを使って、商品の紹介文を作ってください。
・POP用は、40字以内を3案出してください。売り場で目に留まる短い言葉にします。
・EC用は、300字前後を1案出してください。食べ方と保存方法を入れます。
・【材料】にない事実(栽培方法、受賞歴、栄養や健康への効果、他の産地との比較)は書かないでください。
・「日本一」「絶対」「必ず」「体に効く」のような言い切りや、効き目をうたう言葉は使わないでください。
・「無農薬」「減農薬」「有機」「オーガニック」は、【材料】に認証や表示の根拠が書かれていない限り使わないでください。
・産地の地名は【材料】の表記のまま使ってください。
【材料】
品目・品種:(例 トマト・〇〇)/産地の表示:〇〇県〇〇町/収穫時期:〇月〜〇月/おすすめの食べ方:……/保存方法:……/栽培で実際にしていること:……

出てくる文の例

出力の例(材料の食べ方が「塩をふってそのまま」の場合)
POP案1:〇〇町のトマト。まずは塩だけでどうぞ
POP案2:〇〇町の〇〇、〇月まで並びます
POP案3:〇〇町の畑から。塩をふってそのままがおすすめです
EC用:〇〇県〇〇町の畑で育てた〇〇です。〇月から〇月にかけて収穫しています。おすすめの食べ方は、塩をふってそのまま味わう方法です。保存は〇〇が向いています。……(以下、材料にあることだけが続く)
※材料にある事実だけで書いた例です。地名・品種は伏せ字にしています。

人が必ず確かめる点

食品表示法第5条は「食品関連事業者等は、食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をしてはならない」と定めています。食品表示基準は同法第4条にもとづいて内閣総理大臣が定めるもので、名称、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分、原産地などが表示事項として並びます。生鮮食品の原産地のように食品表示基準で決まった表示や、加工品の原材料などの表示は、AIの文案ではなく、人が基準と消費者庁の案内で確かめてください。

景品表示法第5条第1号は、商品の品質や規格などについて、実際のものよりも著しく優良であると示す表示などで、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」を禁じています。AIの文は大げさになりがちなので、比べる言葉と効き目の言葉は人が消しましょう。POPの紙は手書きの頃と同じく、売り場に出す前にもう1人が読む流れを残すと安心でしょう。

農林水産省の「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」は、「無農薬栽培農産物」「減農薬栽培農産物」などの表示を表示禁止事項としています。同省の解説資料では、「無農薬」の表示は「消費者が一切の残留農薬等を含まないとの間違ったイメージを抱きやすく、優良誤認を招く」と説明され、「減農薬」も比較の基準などが不明確なため表示禁止事項とされます。有機食品の検査認証制度のページにも、有機JASマークがない農産物や加工食品に「有機」「オーガニック」などの表示を付すことは法律で禁止されていると書かれています。材料に認証や表示の根拠がない限り、これらの言葉は文案から外しましょう。

  • 産地の地名が材料の表記と同じかAIが近くの別の地名や、広い地域名に言い換えていないかを見ます。
  • 材料にない栽培方法・受賞歴・効能が足されていないか書き足しは、そのまま事実と違う表示になってしまいます。
  • 比べる言葉や効き目をうたう言葉がないか「日本一」「どこよりも」「効く」などが入っていたら消します。
  • 加工品の表示を食品表示基準で確かめたか名称・原材料・添加物・保存方法・消費期限などは、AIの文案に頼らず基準で確かめます。
  • 「無農薬」「減農薬」「有機」「オーガニック」を根拠なく使っていないか無農薬・減農薬は特別栽培農産物の表示ガイドラインの表示禁止事項で、有機JASマークがないものに「有機」「オーガニック」と表示することは法律で禁止されています。
  • 他の店の文章や写真をまねていないか材料には自分の組織で書いた文と撮った写真を使います。

出典:食品表示法(平成25年法律第70号)第4条・第5条、景品表示法(昭和37年法律第134号)第5条第1号(いずれもe-Gov法令検索)、消費者庁 食品表示企画、農林水産省 特別栽培農産物に係る表示ガイドライン(解説資料)、農林水産省 有機食品の検査認証制度。2026年10月16日に確認しています。

SNSの投稿やメルマガも、同じ指示文の文字数と媒体の名前を変えるだけで作れます。販売の文はこの1本から広げていくことが出来ます。

取引先・消費者からの問い合わせへの返信|文案はAI、約束は人

問い合わせへの返信は、過去の回答を手本にAIが文案を作り、担当者が直して送る分担にすると、品質をそろえやすくなります。JA全農ひろしまでも、生成AIが返信文案を作り、担当者の確認と上司の承認を経て返信する流れを取っていると発表されています。詳しい内容は、後の実例の節で紹介します。

入れる材料

材料は、届いた問い合わせの本文と、過去に同じような質問へ返した文、組織として決まっている対応の方針です。お客様の名前、住所、電話番号、注文番号は、AIに渡す前に「〇〇様」「注文番号***」のように伏せてください。

AIへの指示文

指示文3 問い合わせへの返信の文案(そのまま貼れます)
あなたはA農園のお客様窓口の担当者です。下の【問い合わせ】への返信の文案を作ってください。
・【過去の回答】の言い回しと方針に合わせてください。
・【対応方針】に書かれていない約束(返金、値引き、交換、配送日の確約)はしないでください。必要なときは「担当者から改めてご連絡します」と書いてください。
・品質や安全についての事実は、【対応方針】にあることだけを書いてください。
・最初にお客様の気持ちを受け止める一文を入れ、全体を300字以内にまとめてください。
・最後に、担当者が送る前に確かめるべき点を箇条書きで挙げてください。
【問い合わせ】(名前・連絡先・注文番号は伏せたもの)
【過去の回答】
【対応方針】

出てくる文の例

出力の例(届いた品物に傷があったという問い合わせ)
〇〇様
このたびはA農園の品物をお選びいただきありがとうございます。届いた品物に傷があったとのこと、楽しみにお待ちいただいていたところ、残念な思いをおかけしました。お手数ですが、傷の様子が分かる写真をお送りいただけますでしょうか。今後の対応につきましては、担当者から改めてご連絡します。
確かめる点:写真を受け取った後の対応(交換・返金など)は対応方針で決まっているか/注文番号と品物が合っているか
※農園名・お客様名は仮のものです。

人が必ず確かめる点

  • 組織で決めていない約束をしていないか返金・交換・値引き・配送日の確約は、対応方針にあるときだけ書きます。
  • 品質や農薬の使用についての説明が、実際の記録と合っているか防除記録と出荷の記録を見てから送ります。
  • お客様の名前や注文内容を取り違えていないか伏せ字を戻すときに、別の方の情報を入れてしまう誤りが起きやすくなります。
  • 苦情につながりそうな内容は上の立場の方が読んだか送る前の承認の流れを、AIを使う前と同じく残します。

取引先とのやり取りでも使い方は同じですが、価格や数量、納期の話はAIに書かせた後に必ず数字を見比べる工程を残しましょう。よくある質問は、返信の文案がたまってきたところでAIに分類させると、ホームページに載せる回答集のたたき台にもなります。

農水省や自治体の資料・公募要領の読み込み|要点表にして読む

農林水産省や都道府県、市町村が出す資料や公募要領は長く、AIに読ませて要点の表にすると、どこを読むべきかを早くつかめます。ただしAIの要約には読み落としや言い換えが混ざるので、表を作らせたら原文のページに戻って確かめる使い方にしましょう。

入れる材料

材料は、公式サイトから取ってきた公募要領や様式のPDFそのものになります。検索で見つけたまとめ記事ではなく、農林水産省や事務局、自治体のページに載っている最新の版を使ってください。年度が変わると要件や締切が改められることがあるため、ファイルの名前や表紙の日付も控えておきましょう。

AIへの指示文

指示文4 公募要領の要点表(そのまま貼れます)
あなたは補助金の申請を手伝う事務担当です。添付した【公募要領】を読んで、次の表を作ってください。
・行は、対象となる者/対象となる経費/対象とならない経費/補助率と上限額/申請の期間と締切/必要な書類/審査で見られる点/問い合わせ先 とします。
・各行に、根拠となるページ番号と、原文の表現をそのまま引用してください。
・公募要領に書かれていないことは「記載なし」と書き、推測で補わないでください。
・最後に、私たち(〇〇県の農業法人。主な作物は〇〇、従業員〇名)が対象になるかを判断するために、事務局へ確かめるべき点を質問の形で挙げてください。
【公募要領】(PDFを添付する)

出てくる文の例

出力の例(表の一部)
対象となる者:(原文の引用が入ります)(p.〇)
補助率と上限額:(原文の引用が入ります)(p.〇)
申請の期間と締切:記載なし(別紙のスケジュールを参照との記載あり。p.〇)
事務局へ確かめる点:農業法人は「対象となる者」に含まれますか/個人で農業を営む場合はどの区分になりますか
※表の中身は形を示すための例です。

人が必ず確かめる点

  • 表のページ番号を開き、引用が原文と同じかAIが原文を言い換えたり、別のページと混ぜたりしていないかを見ます。
  • 締切・補助率・上限額を公式ページと公募要領の両方で見比べたか途中で改訂が出ていることがあります。
  • 「記載なし」の行を事務局に問い合わせたか書かれていないことをAIの推測で埋めないためです。
  • 公募要領の版が最新か公開日や改訂日を、公式ページの掲載と照らし合わせます。

自治体の農業関係の通知や説明会の資料も、同じ指示文の行の名前を変えれば読み込むことが出来ます。会議の前に要点表を配っておけば、説明の時間を質疑に回せるようになります。

補助金の事業計画の下書き|AIは文章化だけ、要件と数字は人が確かめる

補助金の事業計画では、要件は公募要領から、数字は自社の記録から人が拾い、AIにはそれを読みやすい文章にまとめる仕事だけを任せましょう。AIが書いた計画は筋が通って見えても、採択を約束するものではありません。

対象になる制度を確かめる

ITツールの導入に使える国の制度として、中小機構が事務局を務める「デジタル化・AI導入補助金2026」があります。対象は中小企業・小規模事業者等とされ、個人事業も含まれますが、農業者や農業法人が対象になるかどうかの公式の記載は、2026年10月16日の確認では見当たりませんでした。申請を考える場合は、最新の公募要領と事務局で、自分の組織が対象かを確かめてください。

農林水産省のスマート農業の支援は、ロボットやドローンなど機械の導入が中心になります。農林水産省の「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」のページには、補助事業でスマート農機やドローン、IoTなどを導入する際、システムの契約がこのガイドラインに準拠していることが令和3年度から要件になっていると書かれています。機械の導入と組み合わせる計画では、こうした契約の要件も公募要領と合わせて読んでおきましょう。

下書きの手順

  1. 公募要領から、審査で見られる点と、計画書の様式の見出しを書き出します。
  2. 自社の記録から、面積・作付け・売上・従業員数・導入したい設備の見積もりなど、計画に使う数字を人が集めます。
  3. 様式の見出しごとに、言いたいことを箇条書きにします。
  4. 箇条書きをAIに渡して文章に直させ、数字と固有名詞は変えないよう指示します。
  5. できた文章の数字・期間・要件を、手元の記録と公募要領で一つずつ照らし合わせます。

AIへの指示文

指示文5 補助金の事業計画の下書き(そのまま貼れます)
あなたは農業法人の事業計画書の作成を手伝う担当者です。下の【箇条書き】を、【様式の見出し】ごとに文章へ直してください。
・【箇条書き】にない数字、実績、効果の見込みは書き足さないでください。
・金額、面積、期間、人数、設備の名前は、【箇条書き】の表記のまま使ってください。
・効果を書くときは、「見込み」「計画」と分かる書き方にしてください。
・各見出しは〇〇字以内にしてください。
・最後に、【様式の見出し】のうち材料が足りない項目を挙げてください。
【様式の見出し】(公募要領の様式から写す)
【箇条書き】(見出しごとに、人が自社の記録から書いたもの)

出てくる文の例

出力の例(見出し「現状と課題」)
A農園は〇〇町で〇〇を〇〇haで生産しています。出荷の記録と取引先への連絡は〇名の事務担当が手作業で行っており、繁忙期には作業日誌の清書が数日遅れることがあります。本事業では、〇〇を導入し、記録の作成にかかる時間を減らす計画です。
材料が足りない項目:導入後の効果の見込み(数字の根拠となる記録がありません)
※農園名・数字は伏せ字にしています。

人が必ず確かめる点

補助金適正化法の第29条第1項は、「偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受け」た者などに、五年以下の拘禁刑もしくは百万円以下の罰金、またはその両方を科すと定めています。AIが書き足した実績や数字を、確かめずに出すことは避けてください。指示文で書き足しを禁じても、出てきた文は必ず手元の記録と見比べるのが安全でしょう。

  • 金額・面積・期間・人数が、自社の記録や見積書と一致しているか1か所ずつ、元の資料に印を付けながら照らし合わせます。
  • 実際にはしていない取り組みや、まだない実績が書かれていないかAIは文の流れを整えるために、それらしい実績を足すことがあります。
  • 要件を満たしているかを公募要領の原文で確かめたかAIの要約ではなく、原文のページで確かめます。
  • 効果の数字が見込みとして書かれているか決まった成果のように言い切っていないかを見ます。

出典:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)第29条第1項(e-Gov法令検索)、デジタル化・AI導入補助金2026(事務局)、農林水産省 農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン。2026年10月16日に確認しています。

地域で使える制度は、国・県・市町村でそれぞれ違ってきます。計画書を書き始める段階から、市町村の農政担当や普及指導センター、JAに相談しながら探していきましょう。

AIの答えが誤りやすい所と確かめ先|農薬・表示・補助金・著作権

汎用の生成AIは、農薬の使い方や制度の締切のように、地域や年で変わる細かい事実ほど誤りが混ざりやすいと考えておきましょう。農研機構は、自ら開発した農業特化の生成AIについて「汎用的な生成AIに比べて正答率が40%高い」と評価しており、詳しくは次の節で紹介します。専門の質問では、汎用の生成AIの答えにまだ外れが混ざる前提で使うのが無難でしょう。

誤りやすい情報AIが誤る形の例確かめ先
農薬の名前・倍率・回数・時期名前の似た農薬と取り違える、別の作物の使い方を書く農薬のラベルの登録内容と使用基準、農林水産省の農薬登録情報提供システム、都道府県の防除の指針、JAや普及指導センター
無農薬・減農薬・有機の表示材料にないのに「無農薬」「有機」などを書き足す農林水産省の特別栽培農産物に係る表示ガイドライン、有機食品の検査認証制度のページ
食品表示の決まり別の食品の決まりや、古い説明を書く消費者庁の食品表示のページ
補助金の締切・補助率・対象前の年度の公募の内容を答える最新の公募要領と事務局
法律・指針改正前の内容や、存在しない条文の番号を書くe-Gov法令検索、所管の省庁のページ
病害虫の診断写真だけで病名を言い切る普及指導員、JAの営農指導員
統計や市場の数字出どころのない数字を書く省庁や業界団体の公表資料の原文

AIの答えに数字や固有名詞が出てきたら、確かめ先を開くまでは下書き扱いにしてください。著作権の面では、他の農園や店の紹介文、写真を貼り付けて言い換えさせ、そのまま使う使い方は避けましょう。自分の組織で書いた文や撮った写真を材料にするのが基本になります。

答えの出どころを示させる指示を足すのも1つの手で、「根拠のURLと、その文書の日付を添えてください」と書いておけば、確かめる手間が少し軽くなるでしょう。ただし示されたURLが実在しない場合もあるため、開いて中身を読むまでは信用しないようにしましょう。

JA・研究機関の生成AI活用の実例3件

農業の分野で生成AIを使った実例として、実名で公表されている3件を発表の内容に沿って紹介します。数字はいずれも当事者や提供会社の発表で、第三者が検証したものではありません。

JA全農ひろしま|消費者からの問い合わせへの返信に生成AI

M-SOLUTIONS株式会社の2026年6月4日の発表によると、JA全農ひろしま(全国農業協同組合連合会 広島県本部)は、kintoneと連携する生成AI「Smart at AI」を、消費者からの問い合わせ対応に使っています。Webの問い合わせフォームの内容がkintoneに入り、AIが過去の対応履歴とプロンプトから返信文案を作り、担当者が確認・修正したうえで、上司の承認を経て返信する流れです。従来は1件に「60〜90分かかることもありました」という対応について、1件あたりの文案作成は約10分に短縮され、月10件ほどの同じ業務で月換算約8〜13時間の工数を生み出していると、同社は発表しています。

同じ発表によると、JA全農全体では2025年10月からMicrosoft Copilotが全職員に使えるようになっていました。JA全農の生成AIツールの利用についての厳格なガイドラインのもとで、地方組織からの申請で生成AIツールの利用が正式に承認されたのは、JA全農として初めてだとされています。ガイドラインの本文は公開されていないため、その中身までは分かりません。

JAレーク滋賀|営農指導に農業特化型AI

株式会社きゅうりトマトなすびが2025年7月7日にPR TIMESで出した発表によると、JAレーク滋賀(レーク滋賀農業協同組合)は営農指導に農業特化型AI「栽培アシストAI」(AgriweB)を導入しました。目的は、営農指導力の維持・強化と、職員の間で指導力をそろえることとされています。情報を集める時間の短縮や指導員どうしの情報共有、画像による病害虫の診断、5か国語への翻訳といった使い方が想定されている一方、成果の数字は示されていません。

農研機構と三重県|普及指導員向けの農業特化の生成AI

農研機構の2024年10月18日のプレスリリースによると、農研機構は農業に特化した生成AIを開発し、10月21日から三重県でイチゴを対象に試験運用を始めました。三重県の普及指導員が作った質問集での評価について、農研機構は「汎用的な生成AIに比べて正答率が40%高い」としています。発表時点の試験運用で使うのは普及指導員で、農家が直接使う形ではありませんでした。

3件を並べると、JAの窓口、JAの営農指導、県の普及指導と、使う場面はそれぞれ違っています。3件とも、AIの答えを職員や普及指導員が受け止め、人を通して届ける形です。自分の組織で始めるときも、この形をまねるところから考えてみてください。

出典:M-SOLUTIONS株式会社 2026年6月4日の発表(JA全農ひろしま)、株式会社きゅうりトマトなすび 2025年7月7日 PR TIMES(JAレーク滋賀)、農研機構 2024年10月18日 プレスリリース。いずれも当事者・提供元の発表で、数字は自己申告の値です。2026年10月16日に原文を確認しています。

法人・JAとして安全に使うには|学習させない設定・アカウント・線引き表

組織として生成AIを使うなら、学習させない設定の環境を会社が配り、入れてよい情報の線を決め、退職や異動のときに止める、という3つをそろえましょう。どれか1つが欠けると、個人のアカウントで使うのと変わらない状態に戻ってしまいます。

学習させない設定と、会社が配るアカウント

事務の方が個人の無料アカウントを使うと、学習に使われる設定かどうかも、誰が何を入れたかも、会社から見ることが出来ません。法人向けのプランやサービスには、入力した内容を学習に使わない扱いや、管理者がアカウントを配って止める機能を備えたものがあります。契約の前に、学習に使わない扱いと管理の機能を、提供元の資料で確かめてください。JAでは、所属する組織や県域のルールと承認の手順に従って、使えるサービスを決めることになります。全農の県本部であるJA全農ひろしまの例でも、JA全農のガイドラインのもとで、申請を経て利用が承認されたと発表されています。

退職や異動のときにアカウントを止め、会話の履歴を会社に残せるかどうかも、選ぶときの確認点になります。パート職員や季節雇用の方が多い組織では、アカウントの配布と停止の手順を、雇用の手続きと同じ表で管理するとよいでしょう。確かめる項目の一覧は、生成AIのセキュリティチェックリストにまとめてあります。

入れてよい情報・入れない情報の線引き表

情報の種類個人の無料アカウント会社が用意した学習させない環境補足
公開している産地の紹介・商品の特徴・営業時間入れてよい入れてよいすでに公開している範囲に限る
作業日誌(圃場名・作業内容・使用資材)入れない入れてよい圃場は組織の中の呼び名で書く
消費者・会員の名前、住所、電話、購入履歴入れない必要な範囲だけ。できれば伏せ字にする個人情報保護委員会の注意喚起を参照
取引先の名前・単価・仕入先・契約の条件入れない必要な範囲だけ取引先の名前は「A社」などに置き換える
未公表の売上・面積・経営計画の数字入れない必要な範囲だけ数字は最後に人が元の資料と見比べる
補助金の申請書の下書き入れない入れてよい要件と数字は人が公募要領と記録で確かめる
他の農園の写真・他の店の文章入れない入れない言い換えて使う材料にもしない

この表は出発点で、組織の事情に合わせて行を足し、職員が迷ったときに見る1枚として配ってみてください。文書の形にまとめるときは、生成AIの社内ガイドラインの作り方の手順が参考になります。

複数のAIを使い分ける

生成AIはサービスごとに得意な作業が少しずつ違うため、業務によって使い分けると答えの質が上がることがあります。たとえば長い公募要領を読み込ませる作業と、短いPOPの案を何通りも出す作業では、向いているAIが変わる場合もあるでしょう。職員が自分の判断でばらばらのサービスに登録すると管理が追いつかなくなるので、使い分けるなら会社が用意した1つの環境の中で切り替えられる形が安全になります。使い分けの目安はChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityの使い分けで整理しています。

参照できる国の指針

農林水産省の「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」(令和2年3月12日策定)は、AIやデータを扱うシステムの契約についての指針で、生成AIの使い方を定めたものではありません。農林水産省、JA全中、JA全農が農業者向けに公表した生成AIの利用指針は、確認日(2026年10月16日)時点で見当たりませんでした。業種を問わない指針としては、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」第1.2版(令和8年3月31日)が出ています。組織のルールを作るときは、これらと個人情報保護委員会の注意喚起を手元に置き、農業の業務に合わせた具体的な決まりに落としていきましょう。

出典:農林水産省 農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン、総務省・経済産業省 AI事業者ガイドライン 第1.2版(令和8年3月31日)、個人情報保護委員会 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(令和5年6月2日)。2026年10月16日に確認しています。

始め方|最初の1業務から4つの段階で広げる

始めるときは、目的を1つに絞り、1つの業務で1か月ほど試してから広げる進め方が無理のない形です。いきなり全部の業務に広げると、確認の手間ばかりが増えて、使う人が離れてしまいます。

  1. 目的を1つ決めます。「防除記録の清書にかかる時間を減らす」のように、業務と困りごとを1文で書いておきます。
  2. 使う環境を決めます。個人のアカウントではなく、会社が用意した学習させない設定の環境を、試す人全員に配ります。
  3. 指示文をひな形にして配ります。この記事の指示文を自分の組織の言葉に直し、入れてはいけない情報の線引きと一緒に渡します。
  4. 1か月試して振り返ります。短くなった時間だけでなく、確認にかかった時間と、見つかった誤りの数も記録します。

振り返りの結果を見て、次の業務に広げるか、指示文を直すかを決めると、無理なく続けることが出来ます。うまくいった指示文は、職員の誰もが使える場所に置いて共有していきましょう。法人のAI活用についてのほかの記事は、AI活用コラム一覧からご覧いただけます。

記録・販売・申請のAIを、会社で1つの環境に

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で使える法人向けサービスです。基盤はAWSの日本リージョンで稼働し、管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理できます。よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有できる「カスタムプラス」で、業務ごとの指示文を職員に配ることも出来ます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

農業で生成AIを使うのに、スマート農業の機械は必要ですか?
必要ありません。作業日誌の整理、直売所のPOPや商品説明、問い合わせへの返信、補助金の事業計画の下書きは、パソコンやスマートフォンと生成AIのサービスがあれば始められます。機械が畑を見るスマート農業とは受け持つ仕事が違うため、別々に考えて大丈夫です。
農薬の使い方をChatGPTなどの生成AIに聞いてもよいですか?
下調べに使うのはかまいませんが、使う農薬・倍率・回数・時期は、農薬のラベルに書かれた登録内容と使用基準で確かめてください。農薬取締法第25条第1項にもとづいて使用基準が定められており、AIの答えはその代わりになりません。
補助金の申請書をAIに書かせても大丈夫ですか?
文章にまとめる作業を手伝わせるのはよい使い方です。ただし要件は公募要領から、数字は自社の記録から人が拾い、出てきた文は最後に人が照らし合わせてください。AIが書き足した実績や数字を確かめずに出すことは避けましょう。AIで下書きしても、採択が約束されるわけではありません。
デジタル化・AI導入補助金2026は農業法人も使えますか?
対象は中小企業・小規模事業者等(個人事業を含む)とされていますが、農業者や農業法人が対象になるかどうかの公式の記載は、2026年10月16日の確認では見当たりませんでした。申請を考える場合は、最新の公募要領と事務局で確かめてください。
直売所の会員名簿をAIに入れて、お知らせの文を作ってもよいですか?
個人の無料アカウントには入れないでください。個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを入れるときは利用目的の達成に必要な範囲か十分に確かめ、提供事業者が機械学習に使わないことなどを確かめるよう注意を呼びかけています。お知らせの本文は名簿を使わずに作り、宛名の差し込みは会社が管理する仕組みで行うのが安全です。
農林水産省やJAが出している生成AIの利用指針はありますか?
農林水産省・JA全中・JA全農が農業者向けに公表した生成AIの利用指針は、確認日(2026年10月16日)時点で見当たりませんでした。農林水産省の「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」(令和2年3月12日策定)は契約についての指針で、生成AIの使い方の指針ではありません。業種を問わない指針として、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」第1.2版(令和8年3月31日)があります。
パソコンが苦手な職員でも使えますか?
使えます。スマートフォンの音声入力で作業の内容を話して文字にし、配られた指示文に貼り付けるだけの形にすれば、キーボードの操作はほとんどいりません。最初は指示文のひな形を組織で用意し、出てきた文を確かめる担当を決めておくと始めやすくなります。

まとめ

農業のAI活用には、機械が畑を見るスマート農業と、生成AIが記録・販売・連絡・申請の文を書く使い方の2つがあります。農業法人やJA、直売所の事務で今日から始められるのは後者で、作業日誌の整理、POPや商品説明、問い合わせへの返信、公募要領の読み込み、事業計画の下書きに使うことが出来ます。

どの業務でも、AIに任せるのは文章にする部分だけで、農薬の使用基準、食品表示、景品表示、補助金の要件と数字は人が確かめる形になります。顧客名簿や取引の単価は個人の無料アカウントに入れず、会社が用意した学習させない環境で扱いましょう。まずは毎週くり返す1つの業務を選び、この記事の指示文を自分の組織の言葉に直して試してみてください。