RAGサービス比較。社内文書の検索AIは専用が要るか、今のAI環境で足りるか

RAGサービスとは、社内の文書を検索し、見つけた内容をもとに生成AIに答えさせる仕組みを製品として提供するサービスです。社員10〜200名の会社であれば、専用のサービスを比べる前に、今の(または会社で契約する)AI環境のナレッジ機能で足りるかを2週間試す順番が無理のない進め方になります。専用が必要になるのは、社外の方にも答えさせる、窓口の一次回答を担当者へ引き継ぐ、部署ごとに見せる文書を分ける、といった条件が重なった場合に限られるでしょう。RAGの仕組みそのものはRAGとはで、自前で作る手順と費用はRAG構築の方法と費用で扱っています。

専用のRAGサービスが要るか、今のAIで足りるかの判断表

社員が自分で社内文書を調べる用途であれば、まず今のAI環境のナレッジ機能で試すのが先になります。専用のRAGサービスが力を発揮するのは、社外の方に答えさせる、問い合わせ窓口の一次回答を自動にして担当者へ引き継ぐ、部署ごとに見せる文書を細かく分ける、といった場面です。就業規則や社内マニュアル、よくある質問集のように全社員が見てよい数十本の文書を引かせたいだけであれば、ChatGPT Business や Claude のプロジェクトでも近い使い方が出来ます。

比較サイトの多くは、専用サービスを入れることを前提に製品を並べています。実際には、すでに会社でAIを契約していれば追加の費用がかからない選択肢もあるため、比べる順番を1つ前に戻してみてください。

確認する条件今のAI環境のナレッジ機能で足りる目安専用のRAGサービスを比べる目安判断の根拠
読ませる文書の量1つの用途あたり数十本まで部署をまたいで数百本以上、ファイル置き場ごと引かせたいChatGPT Business のプロジェクトは1つあたり40ファイル、Gemini Notebook の無料版は1ノートブックあたり50ソースが上限(各社ヘルプ)
文書の更新頻度月に数回、担当者が手で差し替えられる毎日のように更新され、手で入れ替えると古い版が残る古い版の文書は回答精度を下げる情報の例として挙げられている(IPAサイト掲載のガイドライン)
使う人社内の社員だけ社外の顧客や取引先、AIのアカウントを持たない人にも答えたいChatGPT のプロジェクトに招待できるのは自分のワークスペース内のメンバーのみ(OpenAI ヘルプ)
問い合わせの流れ社員が自分で調べて終わる窓口の一次回答を自動にし、答えられない質問を担当者へ引き継いで管理したい専用ヘルプデスク型は有人への引き継ぎ(PKSHA はチケット管理も)を機能として持つ(各社発表)
閲覧権限の細かさ全員が見てよい文書だけを読ませる部署や役職ごとに見せる文書が違い、その権限をファイル置き場で管理しているファイルを置く型は参加者全員が同じ文書を引く。ファイル置き場につなぐ型は元の閲覧権限を適用する(各社ヘルプ)
答える場所AIの画面で質問すればよいTeams・Slack・LINE WORKS の中で答えさせたいチャットツール上で動く専用サービスがある(各社発表)
開発と運用の体制情シスが1人、または兼務開発と運用ができる担当がいて、自社の業務システムに組み込みたい開発基盤型は構築と保守を自社か外部に任せる必要がある

※上限の数字は、ChatGPT Business のプロジェクトが2026年9月17日、Gemini Notebook が2026年9月28日に、各社の公式ヘルプで確認したものです。

3つの質問で、比べる相手を絞る

判断表の7行を全部埋めるのが大変な場合は、次の3つだけ先に答えてみましょう。

  1. 答える相手に、社外の人やAIのアカウントを持たない社員が含まれますか。含まれるなら、専用のサービスを比べる対象に入れます。
  2. 答えられなかった質問を、担当者へ引き継いで記録する必要がありますか。必要なら、ヘルプデスク型の専用サービスが候補になります。
  3. 部署ごとに見せてはいけない文書を、同じ仕組みで扱いますか。扱うなら、元の閲覧権限を引き継げるかどうかが選ぶ条件の中心になります。

3つとも答えが「いいえ」であれば、専用サービスを探す前に、今のAI環境のプロジェクト機能やノートブック機能で2週間の試験をしてみる価値があります。3つとも「いいえ」なら、まず今のAI環境で試す順番で困ることはほとんどありません。試した結果、文書の量や更新の手間で行き詰まった時点で、その不足を条件にして専用サービスを比べれば、選ぶ基準がはっきりしてきます。

判断の順番は、答える相手、引き継ぎの有無、閲覧権限の細かさの3つを先に決め、文書の量と更新頻度はその後に見る形になります。量の問題は、プロジェクトやノートブックを用途ごとに分ければ当面しのげることが多いためです。

RAGサービスのタイプ分けと、汎用AI環境の位置づけ

RAGサービスは、社内問い合わせ型、文書読み込み型、汎用AI環境のナレッジ機能、開発基盤型、構築支援型の5つに分けると比べやすくなります。よく見かける比較記事は専用サービスだけを4つ前後に分けていますが、今のAI環境に付いているナレッジ機能を同じ表に置くと、専用を入れるべきかどうかの判断がしやすくなるでしょう。

タイプ主な使い方例(製品名)向いている会社気をつける点
社内問い合わせ(ヘルプデスク)型Teams などに問い合わせ窓口を置き、FAQと社内文書で一次回答し、答えられない質問は担当者へ引き継ぐPKSHA AIヘルプデスク、Admina AIヘルプデスク、ヘルプドッグ総務・情シスへの同じ質問が多く、対応の記録も残したい会社料金非公開の製品が多い。導入後のFAQの手入れが続く
文書読み込み(ナレッジチャット)型社内文書を登録し、チャット画面で質問して答えさせるナレフルチャット、OPTiM AIRES、ChatSense、Rimo ナレッジAI、exaBase AIAIの利用と社内文書の検索を1つの専用画面にまとめたい会社質問回数や登録容量でプランが分かれる。今のAI環境と役割が重なりやすい
汎用AI環境のナレッジ機能普段使うAIの中で、プロジェクトやノートブックに文書を入れて質問するChatGPT Business(プロジェクト・社内ナレッジ)、Claude(プロジェクト)、Gemini Notebook、Microsoft Copilot、社内文書RAGを持つ法人向けAI基盤(UPGEAR AI など)すでにAIを会社で契約しているか、これから全社で契約する会社1つあたりのファイル数に上限がある。ファイルを置く使い方では、入れた文書を参加者全員が引ける(ChatGPT・Claude・Gemini の公式ヘルプによる。UPGEAR AI のファイル数・共有範囲は公開資料に記載なし)
開発基盤型クラウドの部品で検索と回答の仕組みを組み立てるAmazon Bedrock ナレッジベース、Azure AI Search、Google Cloud エージェント検索、Dify開発と運用ができる担当がいて、自社のシステムに組み込みたい会社料金は使った分だけ安く見えても、作る手間と保守の人件費が別にかかる
構築支援・受託開発型SIerなどに要件を伝え、自社専用の仕組みを作ってもらう各社の受託開発文書が大量で、権限や業務の流れが複雑な会社見積もり次第。作った後の改修も依頼が必要になる

※タイプの分け方は比べやすさのための整理で、各社が自らこの呼び方をしているわけではありません。1つの製品が複数のタイプにまたがることもあります。

社員10〜200名の会社で候補に上がりやすいのは、上の3つのタイプになります。開発基盤型と構築支援型は、自前で作る話と地続きのため、手順と費用の考え方は親記事のRAG構築の方法と費用にまとめました。

見落としやすいのは、文書読み込み型と汎用AI環境のナレッジ機能の重なりです。文書読み込み型の専用サービスも、多くは生成AIとのチャット画面を持っているため、今のAI環境と並べて入れると、社員から見れば「AIの画面が2つ」ある状態となってしまいます。どちらの画面で何を聞くのかを社員に説明できるかどうかを、比べる前に一度考えてみてください。

社内問い合わせ型は、他の4つと役割が少し違います。社員がAIに聞く仕組みというより、総務や情シスの窓口業務を置き換える仕組みで、答えられなかった質問を担当者へ回す流れまで含めて製品になっています。問い合わせ件数が多く、窓口の担当者が回答に追われている会社であれば、比べる価値が出てくるでしょう。

今のAI環境のナレッジ機能でできること(ChatGPT・Claude・Gemini・Copilot)

主要なAIには、社内文書を読ませて答えさせる機能がすでに付いており、数十本の文書を部署やチームで使う程度であれば専用サービスとの差は小さくなります。違いが出るのは、1つあたりに入れられる文書の数、共有できる相手の範囲、元の閲覧権限を引き継げるかどうかの3点です。

機能読ませ方公式に書かれた上限共有と権限根拠の示し方
ChatGPT のプロジェクトPDF・スプレッドシート・ドキュメント・画像のアップロード、テキストの貼り付け、Google Drive(ファイルとフォルダ)と Slack(チャンネル)のリンクBusiness は1プロジェクトあたり40ファイル、一度にアップロードできるのは10件までBusiness では編集とチャットの2段階の権限で共有。参加できるのは合計100人まで、招待はワークスペース内のメンバーのみヘルプに記載なし
ChatGPT の社内ナレッジ接続済みアプリや、MCPで作ったカスタムアプリをナレッジソースとして使うヘルプに件数の記載なし接続先の閲覧権限を適用し、各ユーザーが閲覧を許可された情報だけを使う回答と、提示されたソースへのリンクを確認するようヘルプで案内
Claude のプロジェクトファイルのアップロード1ファイル30MB。容量が上限に近づくと自動でRAGに切り替わり、ファイル数は無制限だが、合計がコンテキストに収まる範囲。容量が上限に近づくと自動でRAGに切り替わり、最大10倍まで入る(同社ヘルプ)Team・Enterprise で、閲覧のみか編集可の権限を付けて個人または組織全体に共有―
Gemini Notebook(旧NotebookLM)ソースとして文書を追加無料版は1ノートブックあたり50ソース、1ソースあたり50万語、ローカルからのアップロードは200MBまでノートブックを共有しても、共同編集者のソースの上限は変わらない回答にインラインで引用を表示
Gemini の GemGem の知識にファイルを入れる公式の記載を確認できずGoogle ドライブの共有設定が Gem にも適用。管理者が Gem の共有をオンオフできる―
Microsoft CopilotSharePoint などの組織データを使う(アドオンライセンスが必要)―ユーザーが少なくとも表示の許可を持つ組織データだけを表示―

※確認日:ChatGPT のプロジェクトは2026年9月17日、社内ナレッジと接続済みアプリは2026年9月25日、Claude のプロジェクトのRAGと Gemini Notebook のソース上限は2026年9月28日、Gem と Copilot は2026年9月16〜18日に、各社の公式ヘルプで確認しました。「―」は今回確認した公式ページに記載がなかった項目です。

ChatGPT Business:プロジェクト・社内ナレッジ・カスタムGPTの3つの入口

ChatGPT Business で社内文書を読ませる入口は、プロジェクト、社内ナレッジ、カスタムGPTのナレッジの3つになります。プロジェクトは、文書を置いてチームで共有する使い方で、Business では1つのプロジェクトに40ファイルまで入れることが出来ます。招待された方には編集かチャットの2段階の権限が付き、参加できる人数は合計100人までとヘルプに書かれています。

社内ナレッジは、Google Drive や SharePoint などの接続済みアプリをまたいで答えさせるプラグインで、Business・Enterprise・Edu が対象です。接続先の閲覧権限がそのまま適用されるため、各社員が元々見られる情報だけを使って回答が作られます。ただし、Business ではアプリが既定で有効になっており、管理者が決められるのはワークスペース全体でアプリを使えるかどうかまでとなります。ロールごとに使えるアプリを分ける設定は、Enterprise と Edu 向けに用意されています。

カスタムGPTのナレッジは、1つのGPTに20ファイル、1ファイル512MBまで添付出来る仕組みです。OpenAI はカスタムGPTの提供終了を予定していると告知しており(2026年9月時点)、対象となる Enterprise のワークスペースでは2026年12月11日に終える予定、その他のプランも同じ予定に沿うとされています。これから社内ヘルプデスク用のGPTを新しく作るのは、避けたほうがよいでしょう。

※ChatGPT Business、Enterprise、Edu では、プロジェクトからアクセスした情報や接続済みアプリから取得した情報を、既定ではモデルの学習に使わないと OpenAI のヘルプに書かれています。

Claude:プロジェクトは容量が増えると自動でRAGになる

Claude のプロジェクトは、入れた文書の量がコンテキストの上限に近づくと、自動でRAGの方式に切り替わります。同社ヘルプでは有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)が対象で、容量を最大10倍まで広げられ、設定は要らないと説明されています。Team と Enterprise では、プロジェクトを閲覧のみか編集可の権限で、個人や組織全体に共有することが出来ます。1ファイルのアップロードは30MBまでで、ファイル数そのものに上限はなく、合計の量で制限される形となります(同社ヘルプ)。

Gemini:Notebook はソース数、Gem は共有設定に注意

Gemini Notebook(旧NotebookLM)は、追加したソースだけに基づいて、インラインの引用付きで答える仕組みになります。ソースの上限は1ノートブックあたり無料版50件、有料プランでは Plus 100件、Pro 300件、Ultra 500件または600件と、プランで大きく変わります。2026年9月2日からは計算量に基づく使用量の上限が加わり、重い使い方ほど早く上限に届くようになりました。Gem は、共有した Gem が Google ドライブに保存されるため、ドライブの共有設定がそのまま Gem にも適用される点を押さえておきましょう。

Microsoft Copilot:SharePoint の権限がそのまま効く

なお、組織データを引けるのはアドオンライセンスの Microsoft Copilot で、Microsoft 365 に含まれる Copilot Chat は SharePoint などの組織データ(Microsoft Graph)にはアクセスしません。Microsoft Copilot は、各ユーザーが少なくとも表示の許可を持っている組織データだけを表示すると、Microsoft が説明しています。ファイル置き場の権限をそのまま使える一方で、元の共有設定が広すぎれば、その広さのまま回答に出てくることになります。同社も、SharePoint などの権限モデルで適切な人が適切なコンテンツにアクセスできるようにすることが重要だと書いています。導入の前に、共有範囲が「全員」になっているフォルダがないかを確かめておくと安心です。

4つを並べると、ファイルを置く型(ChatGPT のプロジェクト、Claude のプロジェクト、Gemini Notebook)と、ファイル置き場につなぐ型(ChatGPT の社内ナレッジ、Microsoft Copilot)に分かれます。置く型は手軽ですが、入れた文書は参加者全員が引けてしまいます。つなぐ型は元の権限を生かせる代わりに、ファイル置き場の権限を先に整えておく必要が出てきます。

文書の権限と置き場所を、会社のAI環境でそろえる

文書の置き場所と見られる範囲が分かれるなら、使う環境を会社で1つにまとめる方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

主なRAGサービスの料金付き比較表(公式での確認日つき)

公式サイトに料金が出ている専用サービスは、会社単位の月額で4万円前後から6万円前後が中心で、料金を出していない製品も少なくありません。下の表は、各社の公式ページで確認できた金額だけを載せ、確認できなかったものは要問い合わせか記載なしとしています。

サービスタイプ公式に表示されている料金人数の数え方初期費用確認日
ナレフルチャット文書読み込み型Pro 月額40,000円〜(税抜)。月1,000クレジットまで。Business・Enterprise は要問い合わせ利用人数は無制限、企業単位の定額制公式に記載なし2026年9月28日
ヘルプドッグ社内問い合わせ型エントリー月4,000円(税込4,400円)、スタンダード月39,800円(税込43,780円)、ビジネス月59,800円(税込65,780円)。無料プランあり利用ユーザー数は無制限。プランごとにエージェント3名・10名・20名、生成AI型の会話は月100回・1,000回・1,000回エントリーは無料。スタンダードとビジネスは100,000円(税込110,000円)2026年9月28日
OPTiM AIRES文書読み込み型フリー0円、ライト月50,000円(税抜)、カスタム月65,000円〜(税抜)ユーザー作成数は無制限。ライトは月間質問5,000回、登録ドキュメント10GB全プラン無料2026年9月26日
ChatSense文書読み込み型Starter 0円(月30回まで)、Business 980円〜/人/月、Enterprise はお見積り。定額枠を超えた利用はトークン数に応じて課金1人あたり公式に記載なし2026年9月28日
Dify(クラウド版)開発基盤型Sandbox 無料、Professional 年590ドル、Team 年1,590ドル(いずれもワークスペースあたり・税別)Professional 3名、Team 50名まで(Team Members)公式に記載なし2026年9月28日
Amazon Bedrock ナレッジベース開発基盤型インデックスの保管がローデータ1GBあたり月5.00ドル、標準検索が1,000回あたり1.00ドル。回答を作るAIの利用料は別使った分だけなし(構築の費用は別)2026年9月28日
ChatGPT Business汎用AI環境標準シート 1人あたり月3,050円(年額課金)・月3,850円(月額課金)1人あたり。2シート以上公式に記載なし2026年9月16日
PKSHA AIヘルプデスク社内問い合わせ型公式サイトで要問い合わせ――2026年9月28日
exaBase AI文書読み込み型公式サイトで要問い合わせ――2026年9月28日
Rimo ナレッジAI文書読み込み型料金ページ(Rimo Voice)に単体の記載なし。要問い合わせ――2026年9月28日

※料金は、各行の確認日に各社の公式ページに表示されていた金額です。税込・税抜の表記がないもの(ChatSense、ChatGPT Business)には税を足していません。ChatSense の Business は料金ページ全体の金額で、RAGや追加学習の機能だけの料金は公式に記載がありません。ChatGPT Business の円の金額は日本向けの料金ページの表示で、米ドルでは標準シートが月20ドル(年額課金)・月25ドル(月額課金)です。プラン構成と価格は変わることがあるため、検討の際は各社の公式ページで最新の内容をご確認ください。

表を見るときは、金額の横にある「何で数えるか」の列を先に読んでみてください。同じ月4万円前後でも、ナレフルチャットは利用人数が無制限でクレジットの上限があり、ヘルプドッグは利用ユーザー数が無制限でも、エージェントの人数と生成AI型の会話数で段が分かれます。OPTiM AIRES のライトは月5,000回の質問と10GBの文書が目安で、利用者が多い会社ほど質問回数の上限が先に効いてくるでしょう。

料金を出していない製品は、比べる段階で外すのではなく、自社の条件(人数、文書の量、使う場所)を書いて見積もりを取るのが近道になります。見積もりを頼むときに何を書けばよいかは、後半の稟議のひな形が下書きとして使えます。

RAGサービスの費用相場と料金体系の見方

RAGサービスの料金は、会社単位の定額、1人あたりの月額、使った分の従量、ワークスペース単位の年額の4つの形に分かれ、どれを選ぶかで人数が増えたときの費用の伸び方が変わります。相場の数字だけを並べても比べにくいため、形ごとに会社の出費へ直して見ていきましょう。

会社単位の定額:月4万〜6万円前後から

公式に料金を出している専用サービス3社では、会社単位の月額がナレフルチャットの Pro で40,000円から、OPTiM AIRES のライトで50,000円、ヘルプドッグのスタンダードで39,800円となっています(いずれも税抜)。年額にすると48万〜60万円前後で、ヘルプドッグのスタンダードは初期費用100,000円(税抜)が加わるため、初年度は577,600円(税抜)となってしまいます。人数が増えても月額は変わりにくい一方、質問回数やクレジット、登録容量の上限で上のプランへ移る形が多いため、上限の数字まで読むのが欠かせません。

1人あたりの月額:人数に比例して増える

ChatGPT Business や ChatSense の Business は、使う人の数だけ料金が増える形です。ChatGPT Business の標準シートを年額課金の月3,050円で数えると、30人なら毎月91,500円、1年で1,098,000円の出費になります。ナレッジ機能だけでなく、日常のチャットや文書作成にも使える席の代金である点は、専用サービスと比べるときに差し引いて考える必要があるでしょう。

使った分の従量:安く見えて、作る手間が別にかかる

Amazon Bedrock のナレッジベースは、文書の保管がローデータ1GBあたり月5.00ドル、標準の検索が1,000回あたり1.00ドルという料金です。1ドル=150円で計算した場合、1GBの文書に月3,000回の質問をしても月8ドル、1,200円ほどで収まります。ただし、この金額には回答を作るAIの利用料と、画面や権限の仕組みを作り、保守する人件費が入っていません。月の請求額が小さく見えても、社内に作れる人がいなければ外部への委託費が本体の費用となります。

ワークスペース単位の年額:Dify

Dify のクラウド版は、ワークスペースあたりの年額で、Professional が590ドル、Team が1,590ドル(税別)です。1ドル=150円で計算した場合、Professional は年88,500円、Team は年238,500円になります。含まれるメッセージのクレジットを使い切った後は、自社のAPIキーに切り替えて使う仕組みで、その分のAI利用料が別にかかってきます。

構築支援・受託開発:見積もり次第

SIerなどに作ってもらう場合の費用は、文書の量、権限の複雑さ、つなぐシステムの数で大きく変わり、公開された料金表はほとんどありません。比較記事に載っている相場の数字の多くは、出典や時期がはっきりしないため、自社の見積もりを取るまでは予算の根拠に使わないほうが安全です。

費用を比べるときは、月額の安さより、人数・質問回数・文書量のうち何で数えるかを先に揃えてください。自社で一番増えやすいもので数える料金を選ぶと、1年後に費用が跳ねやすくなります。

社員10名・30名・100名の年額試算

すでに会社でAIを契約している場合、そのナレッジ機能で足りれば追加の費用は0円で、専用サービスを入れると年に数十万円の上乗せとなってしまいます。これから全社でAIを契約する場合は、ナレッジ機能と日常のチャットを1つの契約で賄えるかどうかが、比べる軸の中心になります。

選び方社員10名社員30名社員100名前提
すでに契約している ChatGPT Business のプロジェクト・社内ナレッジを使う追加0円追加0円追加0円今の契約の範囲。ファイル数などの上限の中で使う
ChatGPT Business を新しく契約(標準シート・年額課金)366,000円1,098,000円3,660,000円1人月3,050円×人数×12か月。日常のチャットにも使える席
ChatGPT Business を新しく契約(標準シート・月額課金)462,000円1,386,000円4,620,000円1人月3,850円×人数×12か月
UPGEAR AI700,000円1,300,000円LPに目安の記載なし(要相談)10名は月50,000円、30名は月100,000円で計算(税抜)。初年度は初期費用100,000円(税抜)を含む
ナレフルチャット Pro を追加480,000円〜480,000円〜480,000円〜月40,000円〜(税抜)×12か月。初期費用は公式に記載なし。月1,000クレジットまで
OPTiM AIRES ライトを追加600,000円600,000円600,000円月50,000円(税抜)×12か月。初期費用無料。月間質問5,000回まで
ヘルプドッグ スタンダードを追加577,600円577,600円577,600円月39,800円(税抜)×12か月+初期費用100,000円(税抜)。エージェント10名、生成AI型の会話は月1,000回
Dify Team で自社構築238,500円+AI利用料238,500円+AI利用料要確認年1,590ドル(税別)を1ドル=150円で計算。Team Members は50名まで
Amazon Bedrock で自社構築10,080円+AI利用料+構築費12,240円+AI利用料+構築費19,800円+AI利用料+構築費文書1GB、質問は1人1日3回×月20日で計算。1ドル=150円の場合

※金額はすべて年額で、ChatGPT Business は料金ページに税の表記がないため税を足していません。UPGEAR AI の人数別の金額は、LPの料金表にある人数の目安(ライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)で計算しています。Dify の Team Members に、チャットだけを使う社員が数えられるかは公式ページで確認できていないため、100名の欄は空けています。Bedrock の計算は、保管1GBで年60ドル(9,000円)、質問は10名で月600回(年7.2ドル)、30名で月1,800回(年21.6ドル)、100名で月6,000回(年72ドル)です。料金の確認日は上の比較表と同じです。

表を読むときの分かれ目は、今の会社にAIの契約があるかどうかです。ChatGPT Business をすでに30人で契約している会社が、同じ文書の検索のためにナレフルチャットの Pro を足すと、年48万円からの上乗せになってしまいます。今の契約のプロジェクトや社内ナレッジで試し、それでは届かない条件がはっきりしてから上乗せを検討しても、遅くはありません。

反対に、AIをまだ会社で契約していない場合は、専用の検索AIだけを先に入れると、日常のチャットは社員が個人のアカウントで使い続けることになりがちです。社員10名で比べると、ChatGPT Business の年額課金は366,000円、専用の検索AIは48万〜60万円前後で、後者には日常のチャットが含まれていない点を差し引く必要があります。何のために年額を払うのかを、社内文書の検索と日常のAI利用に分けて書き出してみると、どちらを先に入れるべきかが見えてきます。

専用の検索AIを足す前に、今の契約で足りない条件を1つずつ書き出すことが、年数十万円の差を分けます。書き出した条件が判断表の右側に当てはまらなければ、上乗せは急がなくてよいでしょう。

回答の根拠・出典表示をどう確かめるか

社内文書の検索AIで一番確かめたいのは、回答がどの文書のどこを根拠にしているかを、社員がその場で開いて確認できるかどうかです。根拠を示せない仕組みでは、AIがもっともらしい誤りを返しても気づく手段がなく、結局は元の文書を探し直す手間が残ってしまいます。

デジタル庁の「テキスト生成AI利活用におけるリスクへの対策ガイドブック(α版)」(2024年6月)は、生成AIで検索結果を要約して答える仕組みについて、元の文章を確認できるよう引用元の明記が望ましいとしています。行政職員向けの参考資料ですが、民間の社内検索にもそのまま当てはまる考え方と言えます。

各サービスの根拠の出し方

サービス公式に書かれている根拠の出し方
Gemini Notebookソースに基づいた情報に、インラインで引用を明記
ChatGPT の社内ナレッジ回答と提示されたソースへのリンクを確認するよう案内
ChatGPT のカスタムGPT引用や抜粋をさせたい場合は、指示でその旨と形式を指定するよう案内
PKSHA AIヘルプデスクSharePoint Online の社内文書を参照し、回答の生成と参照元情報の提示を行う(同社発表)
Amazon Bedrock などの開発基盤型出典の出し方は、作る側の設計で決まる

試すときは、答えの正しさより先に、示された根拠を実際に開いてみることをおすすめします。根拠として挙がった文書に、回答の中の数字や固有名詞が本当に書かれているかを確かめると、その仕組みが「読んでから答えている」のか、「それらしく答えている」のかが分かってきます。

根拠のリンクが出ても、社員が開かなければ意味がありません。社内に案内するときは、日付・金額・手続きの期限のように間違えると困る答えだけは、根拠を開いて確かめてから使う、という1行を利用ルールに入れておきましょう。社内ルールの作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で扱っています。

セキュリティと閲覧権限の管理:元の権限を引き継げるか

閲覧権限の扱いは、ファイルを仕組みの中に置く型と、ファイル置き場につなぐ型で大きく分かれ、社員10〜200名の会社で事故につながりやすいのは前者の使い方です。ファイルを置く型では、入れた文書をその仕組みを使える全員が引けてしまうため、見せてよい相手を入れる前に決めておく必要があります。

ファイルを置く型:入れた文書は全員が引ける

ChatGPT や Claude のプロジェクト、Gemini Notebook、多くの文書読み込み型の専用サービスは、文書を仕組みの中に取り込んで検索します。IPAのサイトに掲載された「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」(2024年7月公開。IPAの見解を代表するものではなく、中核人材育成プログラムの卒業プロジェクトの成果物)は、ベクトルDBに機密情報を含むデータを入れると全てのユーザが参照できることを、2024年6月時点の課題として挙げています。給与表や人事評価のような文書は、全員向けのプロジェクトやノートブックに入れてはいけません。部署ごとに見せる文書を分けたい場合は、プロジェクトやノートブックを部署ごとに作り、参加者を絞る運用で対応することになります。

ファイル置き場につなぐ型:元の権限の広さがそのまま出る

ChatGPT の社内ナレッジや Microsoft Copilot は、Google Drive や SharePoint の閲覧権限をそのまま適用し、各社員が元々見られる情報だけを回答に使うと説明されています。権限を二重に管理しなくて済む反面、ファイル置き場の共有範囲が広すぎれば、その広さのまま検索AIからも見えてしまいます。つなぐ前に、「リンクを知っている全員」や「組織全体」で共有されたフォルダを棚卸ししておくことが、つなぐ型の前提になります。

文書に仕込まれた指示にも注意する

OWASP の「LLM08:2025 Vector and Embedding Weaknesses」は、白地に白文字で隠した指示を書いた履歴書を、RAGで一次選考する仕組みに提出すると、AIが隠れた指示に従ってしまう例を挙げています。対策として、信頼できる出どころのデータだけを受け入れること、閲覧権限を考慮した検索の仕組みにすることを示しました。社外から届いた文書をそのまま検索AIに入れる運用は、社員10名の会社でも避けたほうがよいでしょう。

  • 学習に使われない設定になっているかChatGPT Business はワークスペースのデータを既定で学習に使わないと OpenAI のヘルプに書かれています。専用サービスでは、契約書や利用規約の該当箇所を確認します。
  • 入れた文書を誰が引けるかファイルを置く型なら参加者の範囲、つなぐ型なら元のファイル置き場の共有範囲を、導入前に書き出します。
  • 管理者がアプリの接続を止められるかChatGPT Business では、管理者がワークスペース全体でアプリを使えるかを変更できます。ロール別の出し分けは Enterprise と Edu の機能です。
  • 社外から届いた文書を入れる手順があるか隠れた指示や古い版が混ざらないよう、入れる前に担当者が中身を見る流れを決めます。

生成AI全体のセキュリティ対策の点検項目は、生成AIのセキュリティ対策チェックリストにまとめています。検索AIの導入は、この点検と同じ時期に進めると手戻りが少なくて済むはずです。

既存のファイル置き場・チャットツールとの連携

どのサービスを選ぶかは、社内文書が今どこに置かれ、社員がどこで質問したいかでほぼ決まり、Google Drive か SharePoint かで候補が入れ替わります。連携先の数を比べるより、自社のファイル置き場とチャットツールに対応しているかを先に確かめてみてください。

サービス読み取れる社内の情報(つなぐ先)社員が質問する場所公式に書かれている注意点
ChatGPT(接続済みアプリ・社内ナレッジ)Google Drive、SharePoint、Microsoft Teams、Outlook のメールとカレンダー、Slack、Box、Notion など(提供元ごとの公式ページがあるもの)ChatGPT の画面提供状況はプラン・地域・ワークスペース・ロールなどで異なる
ChatGPT(管理者が管理する同期)Google Drive、SharePoint、Microsoft Teams などに対応することがあるChatGPT の画面初回のインデックス作成や、更新・権限変更の反映に時間がかかることがある。対象プランはヘルプに明記なし
Microsoft CopilotSharePoint などの Microsoft 365 のデータ、Graph コネクタのデータ―表示されるのは、ユーザーが表示の許可を持つデータのみ
PKSHA AIヘルプデスクSharePoint Online の社内文書Microsoft Teams(アカウントがない場合はWebサイトや社内サイトのチャット窓口から問い合わせ可能と同社発表)FAQで解決しない質問は社内文書を参照し、それでも解決しない質問は担当部署へ有人連携(同社発表)
Admina AIヘルプデスク―Slack、Microsoft Teams、LINE WORKS(連携実装済みと同社発表)AIが対応できない場合は自動でオペレーターに引き継ぐ(同社発表)
Amazon Bedrock ナレッジベースS3、SharePoint、Confluence などから同期するネイティブコネクタ作る側で実装回答を作るAIの利用料は別

※連携先は、各社の公式ヘルプ・製品ページ(2026年9月16〜28日確認)に書かれているものです。すべてのプランで使えるとは限らないため、契約前に自社のプランで確認してください。

Google Workspace を使っている会社が ChatGPT に Google Drive を管理者の設定で同期させる場合、OpenAI のヘルプでは、含まれるファイル数によって同期の完了まで数時間から数日かかるとされています。試験導入の初日につないで、その日に試せるとは限らないため、2週間の日程の最初に同期を始めておくと動きやすいでしょう。

Microsoft 365 を中心に使っている会社は、SharePoint と Teams に対応しているかが最初の分かれ目となります。社員が普段 Teams で質問をやり取りしているなら、AIの画面を別に開かせるより、Teams の中で答える仕組みのほうが使われやすいことは想像しやすいでしょう。反対に、社員が普段からAIの画面で仕事をしている会社であれば、ファイル置き場をそのAIにつなぐだけで足りる場合もあります。

対応データ形式:PDF・表・画像・スキャン文書

PDF・Word・Excel・画像は主要なサービスのほとんどが読み込めますが、回答の精度を左右するのは形式より、文書が文字として読める状態か、古い版や重複が混ざっていないかのほうです。スキャンしたPDFや図の多い資料は、試験の段階で必ず何本か混ぜて確かめてみてください。

サービス公式に書かれている形式・容量
ChatGPT のプロジェクトPDF、スプレッドシート、ドキュメント、画像のアップロードと、テキストの貼り付け
ChatGPT のカスタムGPT1ファイル最大512MB。明確でテキスト中心のファイルを優先し、複雑なレイアウトは効果的に使いにくい場合があると案内
Claude のプロジェクト1ファイル30MBまでのアップロード
Gemini Notebook1ソースあたり最大50万語、ローカルからのアップロードは最大200MB
OPTiM AIRES ライト登録ドキュメント10GB、月間アップロード100回(うちOCR30回)、登録Webサイト2件(1サイト5,000ページ)
Amazon Bedrock ナレッジベースマネージドパーサーによるマルチモーダル文書解析が追加料金なしで含まれる

OPTiM AIRES のライトのように、文字を読み取るOCRの回数に上限を設けているサービスもあります。紙をスキャンしたPDFが多い会社は、その本数を数えてから、OCRの回数や追加料金を確かめておきましょう。ChatGPT のヘルプがテキスト中心のファイルを優先するよう書いているとおり、段組みの多い資料は、文字に起こした版を別に用意すると引かれやすくなります。

形式よりも効くのが、文書の整理です。IPAのサイトに掲載された前述のガイドラインは、ノイズが含まれる情報、重複した情報、最新版ではない古い情報を、回答精度を下げる情報の例として挙げていました。同じ規程の旧版と新版が両方入っていると、AIが旧版の条文を根拠に答えることが起こり得ます。

  • 同じ文書の古い版を外し、ファイル名に改定日を入れる
  • スキャンしたPDFは、文字を選択できるか(テキストとして読めるか)を先に確かめる
  • 表の多いExcelは、見出し行が1行目にあるか、結合セルが多すぎないかを見る
  • 画像だけの資料は、要点を文字にした説明を1枚添える
  • ファイル名は、中身が分かる名前にする(Claude のヘルプも、分かりやすいファイル名を勧めている)

この5つは、どのサービスを選んでも効いてくる下ごしらえになります。専用サービスを入れても文書が散らかったままでは精度は上がらないため、比較の前に手を付けておくと、どちらを選んでも無駄になりません。

回答精度の評価と改善:2週間の試験導入の手順

精度は、実際の社内文書と実際の質問で2週間試し、根拠が正しい文書を指したかどうかを数えれば、専用サービスとの比較に使える形で測れます。製品の説明にある精度の数字は各社の自社評価であることが多く、自社の文書でどうなるかは試すまで分かりません。

何を数えるか:デジタル庁のガイドブックの2つの観点

前述のデジタル庁のガイドブックは、RAGの手法を使う場合の評価の観点として、質問に対して適切な関連文章を取り出せているか、取り出した文章に対してAIの出力が適切か、などを挙げています。ここではそのうちの2つを使います。前者は、想定した文章をちゃんと取り出したか(再現率)と、不適切な文章が混ざっていないか(適合性)の2つです。後者は、出力に含まれる固有名詞が関連文章の中にあるか、出力の内容が関連文章の中で言及されているか、という見方になります。

社員10〜200名の会社では、この観点をそのまま点数表にするのが扱いやすいでしょう。1問ごとに、根拠として出た文書が正しいか、回答の固有名詞と数字が根拠の中にあるか、の2点だけを「はい・いいえ」で付けていけば、専門の担当がいなくても比べられます。

2週間の進め方

時期やること担当できあがるもの
1〜2日目対象の文書を20〜40本選び、古い版と重複を外す。ファイル置き場につなぐ場合は同期を始める総務・情シス1名文書の一覧(ファイル名・改定日・見せてよい範囲)
3日目よくある質問を30問集め、正解が書かれた文書とページを横に書く総務・情シス1名と、問い合わせを受けている担当質問と正解の置き場所の表
4〜5日目今のAI環境のプロジェクトやノートブックで30問を聞き、回答と示された根拠を記録する総務・情シス1名1回目の記録
6〜7日目1問ごとに2点(根拠の文書は正しいか、固有名詞と数字は根拠の中にあるか)を採点し、外れた問いの原因を分ける総務・情シス1名1回目の点数と、外れた原因の一覧
8〜9日目ファイル名の変更、古い版の削除、指示文の追加など、原因に合わせて直す総務・情シス1名直した内容の記録
10〜13日目社員5名前後に普段の業務で使ってもらい、質問と困った点を書き留めてもらう。同じ30問も聞き直す選んだ社員2回目の点数と、実際の質問の記録
14日目判断表の右側に当てはまる不足が残ったかを確かめ、専用サービスを比べるかを決める総務・情シスと決裁者稟議の下書き

採点表のひな形

No.質問正解が書かれた文書・ページ示された根拠根拠の文書は正しいか固有名詞と数字は根拠の中にあるか外れた原因
1慶弔休暇は何日取れますか就業規則・休暇の章(記録する)はい・いいえはい・いいえ文書がない/古い版を引いた/探せていない/読み違い
2出張の日当の申請先はどこですか旅費規程(記録する)はい・いいえはい・いいえ同上
3取引先への見積書の承認者は誰ですか職務権限表(記録する)はい・いいえはい・いいえ同上

外れた原因を4つに分けておくと、直し方が決まります。文書がない場合は追加、古い版を引いた場合は削除、探せていない場合はファイル名や見出しの見直し、読み違いの場合は指示文の追加や元の文書の書き直し、という具合です。この4つを直しても点数が上がらず、しかも原因が文書の量や更新の手間にある場合に、専用サービスや同期の仕組みを比べる理由がはっきりします。

合格の線は会社で決めてかまいませんが、例として、30問のうち根拠の文書が正しかった問いが8割に届くかどうかを1つの目安にする方法があります。数字の線を先に決めておくと、2週間後の判断が担当者の印象に左右されにくくなるでしょう。2回目の点数が1回目より上がったかどうかも、今のAI環境で改善が効くかを見る手がかりになります。

社内稟議のひな形:専用を入れる場合・入れない場合

稟議には、試験導入で数えた点数と、判断表のどの条件に当てはまったかを書けば、専用を入れる場合も入れない場合も説明が通りやすくなります。下に2通りのひな形を用意しました。社名や数字を置き換えて使ってみてください。

ひな形A:専用のRAGサービスを入れず、今のAI環境で対応する

件名:社内文書の検索AIの導入方針について(今のAI環境での対応)

1.目的
就業規則・社内マニュアル・よくある質問集について、社員が自分で調べて答えにたどり着けるようにし、総務への同じ質問を減らす。

2.結論
専用のRAGサービスは新たに契約せず、現在契約している(  )のプロジェクト機能で対応する。追加の費用は発生しない。

3.判断の根拠
(1)2週間の試験導入で、よくある質問30問のうち( )問で、正しい文書を根拠に回答した。
(2)答える相手は社内の社員のみで、社外への公開や担当者への引き継ぎは必要としない。
(3)対象の文書は全社員が閲覧してよいもので、部署ごとの出し分けは不要である。
(4)対象の文書は( )本で、プロジェクト1つあたりの上限の範囲に収まる。

4.運用
・文書の差し替えは総務(  )が月に1回行い、古い版は削除する。
・日付・金額・期限に関わる回答は、示された根拠を開いて確かめてから使う。
・給与・人事評価など閲覧を限る文書は、プロジェクトに入れない。

5.見直しの条件
文書が( )本を超えた場合、社外への回答が必要になった場合、部署ごとの出し分けが必要になった場合は、専用サービスの導入を改めて検討する。

ひな形B:専用のRAGサービスを入れる

件名:社内問い合わせ窓口への検索AI導入について

1.目的
総務・情シスへの問い合わせのうち、規程やマニュアルで答えられるものを自動で一次回答し、担当者の対応時間を減らす。

2.結論
(  )を導入する。年額(  )円(税抜)、初期費用(  )円(税抜)。

3.今のAI環境では足りない理由
(1)答えられない質問を担当者へ引き継ぎ、対応の記録を残す必要がある。現在のAI環境には、この引き継ぎの仕組みがない。
(2)社員は普段(Teams/Slack)で質問しており、AIの画面を別に開かせると使われない見込みが高い。
(3)部署ごとに見せる文書が異なり、ファイル置き場の閲覧権限をそのまま使う必要がある。
(4)試験導入では、今のAI環境で30問中( )問にとどまり、原因は文書の量と更新の手間にあった。

4.比較した候補
(候補1):年額(  )円、数え方(人数/質問回数/エージェント数)
(候補2):年額(  )円、数え方(  )
今のAI環境:追加0円、ただし上記(1)〜(3)を満たさない

5.導入後の確認
3か月後に、問い合わせ件数・一次回答で解決した割合・担当者へ引き継いだ件数を報告する。

どちらのひな形でも、3の根拠に試験導入の数字が入っていることが大切です。「便利そうだから」「他社が入れているから」という理由だけでは、翌年の更新のときに続ける根拠が残らず、担当者が交代した後に説明が出来なくなってしまいます。

専用サービスを選ぶと決めたときの確認項目

試験導入の結果、専用のRAGサービスを比べると決めた場合は、料金表の金額より、自社の条件で上限に当たるかどうかを先に確かめる必要があります。資料やデモでは分かりにくい点を、問い合わせのときにそのまま聞ける形で並べました。

  • 回答に根拠の文書とページが出るかデモでは、自社の文書を1本入れてもらい、根拠のリンクから元の文書を開けるかを見ます。
  • 元の閲覧権限を引き継げるかファイル置き場の権限をそのまま使うのか、サービスの中で別に権限を設定するのかで、管理の手間が変わります。
  • 文書の更新がどのくらいで反映されるか同期の間隔や、手で差し替える場合の手順を聞きます。古い版が残らない仕組みかも確認します。
  • 何で数える料金か人数、質問回数、クレジット、エージェントの席数、登録容量のどれで上のプランへ移るのかを、自社の1年後の見込みに当てはめます。
  • スキャン文書の読み取りに回数の上限があるかOCRの回数や追加料金の有無を、手元のスキャンPDFの本数と比べます。
  • 解約したときに、登録した文書と会話の記録がどう扱われるか削除の時期と方法を、契約前に書面で確認しておきます。

確認項目のうち、後から変えにくいのは閲覧権限の引き継ぎ方と、料金の数え方の2つになります。この2つが自社の条件に合わないサービスは、どれだけ回答の精度が高くても、利用が広がった後に作り直しや乗り換えが必要になりがちです。法人向けの生成AIサービス全体の料金の横並びは、法人向け生成AIサービスの比較で見ることが出来ます。

社内文書の検索AIを別に入れる前に、会社のAI環境と比べてみる

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです。機能には、自社資料を読み込ませて回答する社内文書RAG、よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有するカスタムプラス、利用ログ・権限・モデルのON/OFFを扱う管理者ダッシュボードがあります。月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名・スタンダード6〜20名・プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

RAGサービスと、ChatGPTのプロジェクト機能は何が違いますか?
どちらも社内文書を読ませて答えさせる点は同じです。ChatGPT Business のプロジェクトは、1つあたり40ファイルまでの文書を置いてワークスペース内のメンバーと共有する機能で、入れた文書は参加者全員が引けます。専用のRAGサービスには、担当者への引き継ぎや、Teams などのチャットツールの中での回答といった機能を持つものがあり、こうした条件が必要な場合に差が出ます。
社内文書をAIに読ませると、学習に使われませんか?
サービスとプランによって異なります。OpenAI のヘルプでは、ChatGPT Business、Enterprise、Edu のワークスペースのデータを既定でモデルの学習に使わないとしています。一方、無料版や個人向けの有料プランでは、学習に使う設定がオンになっている場合があります。専用サービスは各社の利用規約や契約書で、入力と登録した文書の扱いを確認してください。
部署ごとに見せる文書を分けたい場合はどうすればよいですか?
方法は2つあります。1つは、プロジェクトやノートブックを部署ごとに作り、参加者を絞る方法です。もう1つは、ChatGPT の社内ナレッジや Microsoft Copilot のように、ファイル置き場の閲覧権限をそのまま適用する仕組みを使う方法で、この場合は元のファイル置き場の共有範囲を先に整える必要があります。どちらも難しい場合は、閲覧権限をどう扱えるかを条件の中心にして、専用サービスを比べることになります。
専用のRAGサービスの費用相場はどのくらいですか?
公式に料金を出している専用サービスでは、会社単位の月額で約4万〜6万円(税抜)からが中心です。2026年9月の確認では、ナレフルチャットの Pro が月40,000円から、OPTiM AIRES のライトが月50,000円、ヘルプドッグのスタンダードが月39,800円(初期費用100,000円、いずれも税抜)でした。料金を公開していない製品も多いため、人数・文書の量・使う場所を書いて見積もりを取るのが確実です。
試験導入は何から始めればよいですか?
全社員が見てよい文書を20〜40本選び、古い版を外すところから始めます。次に、よくある質問を30問集めて正解が書かれた文書を横に書き、今のAI環境のプロジェクトやノートブックで聞いて、根拠の文書が正しいかを1問ずつ数えます。2週間で1回直して聞き直せば、専用サービスを比べる必要があるかを判断する材料がそろいます。
社内ヘルプデスク用にカスタムGPTを作ってもよいですか?
これから新しく作るのはおすすめしません。OpenAI はカスタムGPTの提供終了を予定していると告知しており(2026年9月時点)、対象となる Enterprise のワークスペースでは2026年12月11日に終える予定、その他のプランも同じ予定に沿うとしています。社内文書を使う場合は、プロジェクトや社内ナレッジで試すほうが無難です。
スキャンしたPDFや表の多いExcelも読めますか?
主要なサービスはPDFやスプレッドシート、画像を読み込めますが、精度は文書の状態で大きく変わります。スキャンしたPDFは文字を選択できるかを確かめ、読めない場合はOCRにかけた版を用意してください。OPTiM AIRES のライトのように、OCRの回数に上限があるサービスもあります。試験導入では、こうした文書を必ず何本か混ぜて確かめることをおすすめします。

まとめ

社内文書の検索AIを比べる前に確かめたいのは、専用のRAGサービスが本当に要るのか、今のAI環境のナレッジ機能で足りるのかという1点です。社外の方に答えさせる、担当者へ引き継ぐ、部署ごとに見せる文書を分ける、の3つがいずれも不要であれば、ChatGPT Business や Claude のプロジェクト、Gemini Notebook で2週間試す順番が無理のない進め方になります。

専用サービスの料金は、公式に出ているもので会社単位の月額4万〜6万円前後からが中心で、すでにAIを契約している会社にとっては年に数十万円の上乗せとなってしまいます。比べるときは、金額より、人数・質問回数・文書量のうち何で数えるかを揃えてください。

試験導入では、30問の質問と正解の置き場所を用意し、根拠の文書が正しいかを数えれば、専用が要るかどうかを数字で説明出来ます。その数字を稟議のひな形に入れれば、入れる場合も入れない場合も、翌年に見直すときの根拠が残るでしょう。自前で作る場合の手順と費用はRAG構築の方法と費用で、法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧で読むことが出来ます。