生成AI研修の資料。60分の社内研修で使うスライド構成とひな形

生成AI研修の資料とは、社員に生成AIの基本・使い方・注意点と社内ルールを伝えるために、研修の場で映して配るスライド一式のことです。一から作る必要はなく、総務省やIPAなどが無料で公開している教材を土台にし、自社のルールと業務の例のスライドだけを差し込めば形になります。社員10〜200名の会社であれば、まずは全社員向けに60分・25枚ほどの研修として組むのが扱いやすいでしょう。研修の費用・助成金・研修会社の選び方までの全体像は、生成AI研修の選び方・費用の全体像にまとめています。

生成AI研修の資料とは|借りる部分と自社で作る部分

生成AI研修の資料は、外から借りる部分と自社で作る部分に分けて考えると、準備の量がぐっと減ります。生成AIの仕組みや一般的な注意点は、どの会社で話しても中身はほとんど変わりません。そこは公的機関や企業が公開している教材を借りて、自社でしか書けない部分に時間を回すのが近道になります。

帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(調査期間2026年3月17日〜31日、有効回答1万312社・回答率44.2%)では、生成AI活用の懸念・課題として「専門人材・ノウハウ不足」を挙げた企業が41.3%でした。社内に教えられる人が少ない会社ほど、内容の確かな公開教材を土台にする意味は大きくなってきます。

※41.3%は、懸念・課題を3つまで選ぶ複数回答での割合です。

自社で用意する必要があるのは、次の3つだけとなります。

  • 使ってよいAI環境、入力してよい情報、社外に出す前の確認、相談窓口といった社内ルールのスライド
  • 自社の業務で生成AIを使う場面の実演(議事録の要約、取引先への案内文の下書きなど)
  • 受講後の確認テストと、研修の後に質問を受け付ける仕組み

研修を複数回に分けて深く学ぶ場合の教材構成は、親記事の社内で研修を内製する場合の教材構成(全4回・各90分)で紹介しています。ここでは、全社員がまず1回受ける60分の研修に絞って、資料の中身を具体的に組み立てていきます。

土台にする無料の公開教材3つ|形式・対象・利用条件の比較

土台にしやすいのは、総務省「生成AIはじめの一歩」、TIS「生成AIリテラシー向上研修」、IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」の3つです。どれも無料でダウンロードでき、スライドの形で公開されています。ただし、使う前の連絡や出典の書き方など、使うときの条件はそれぞれ異なります。

教材形式想定している対象使うときの条件60分研修で使う章
総務省「生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~」(消費者庁の消費者教育ポータルサイトにも掲載)PDFとPPTX(スライド75枚)。PPTXのノート欄に、各スライドで話す内容の参考メモあり今後の生活の中で生成AIに触れうる国民の方(初心者)使う前に、利用目的や資料編集の有無などを事前に連絡。講座の時間や進め方に応じて編集可。消費者教育ポータルサイトの表記は「加工可」で、講座で使うときは使途も含めて情報共有基礎知識、使い方の基本、注意点
TIS「生成AIリテラシー向上研修:研修資料の公開」(Fintanで公開)パワーポイント版・補足あり、PDF版・補足あり、PDF版・補足なしの3種。パワーポイント版とPDF版のスライド内容は同じ主に生成AIに触れたことがない、または日常的に使っていない方サイトのドキュメントはクリエイティブ・コモンズ表示4.0(CC BY 4.0)で公開。出典の表示・ライセンスへのリンク・変更した場合はその旨の表示が条件(個別に記載のある部分を除く)基礎知識、使い方の基本の補足
IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」(IPAとAIセーフティ・インスティテュートが公表)スライド形式のPDF(2.0MB)AIにもセキュリティにも詳しくないAI利用者やマネージャ引用・転載するときは、IPAの「書籍・刊行物等に関するよくあるご質問と回答」のQ2を確認注意点(営業秘密、詐欺、サイバー攻撃)

※公開教材の内容・利用条件は、2026年10月3日時点で各公式ページに掲載されている内容です。教材は内容が更新されることがあるため、研修の前に公式ページで最新の版と条件をご確認ください。

総務省「生成AIはじめの一歩」|講師用のメモ付きでそのまま話せる

総務省の教材は、初心者向けに「生成AIの基礎知識」「生成AIの活用場面や入門的な使い方」「生成AI活用時の注意点」の3つを紹介する構成となっています。PPTX版のノート欄には各スライドで話す内容の参考メモが書かれており、講師役の社員は話す内容を考えるときの参考に出来ます。スライドは75枚あるので、60分の研修では必要な部分を抜き出して使う形になります。講座の実施時間や進め方に応じて内容を編集できると明記されているため、連絡の際に編集の有無を伝えたうえで、抜粋や並べ替えを進めましょう。

総務省のページ生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~から、PDFとPPTXの両方をダウンロード出来ます。編集して使うならPPTXのほうが扱いやすいでしょう。

TIS「生成AIリテラシー向上研修」|全社研修をもとにした資料

TISの資料は、同社が2024年6月からオンラインで開いてきた全社向け研修の内容をもとに、再構成して公開されたものです。Fintanの生成AIリテラシー向上研修:研修資料の公開のページで、補足ありと補足なしを合わせた3種類が配られています。企業の社内研修として開かれてきた内容がもとになっているので、全社員向けの研修の流れを考えるときの手本にもなります。サイトのドキュメントは、個別に記載のある部分を除き、クリエイティブ・コモンズ表示4.0(CC BY 4.0)で公開されています。スライドを使う場合は、表紙かまとめのスライドに資料名・TIS・ページのURLに加えて、CC BY 4.0である旨と、抜粋・改変した場合はその旨を書いておきましょう。

IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」|注意点の章を厚くする

IPAの資料は2026年4月2日に公開されたもので、AIにもセキュリティにも詳しくない利用者やマネージャを想定し、社内研修にも使えるようスライド形式で作られています。目次には「クラウドAIに営業秘密は教えない」「外見では詐欺師を見破れないと心得る」といった項目が並び、注意点の章にそのまま足せる内容です。同じページでは、IPAの「情報セキュリティ10大脅威2026」で「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が第3位に入ったことも紹介されています。資料の一部を自社のスライドに引用・転載するときは、AI利用者のためのセキュリティ豆知識のページの案内に従い、IPAのよくある質問のQ2を先に確かめてください。

利用条件で確認すること|連絡・出典・引用の3つ

3つの教材の利用条件を並べると、総務省は事前の連絡、TISは出典の表示、IPAは引用・転載のルールの確認が、使う側に求められる作業となります。総務省の教材を使う前の連絡は、研修の日程が決まった時点で済ませましょう。どれも手間は小さいものの、抜けたまま研修を終えると、配布した資料を後から差し替える手間が出てしまいます。

総務省の教材を使う前の事前連絡|メール文のひな形

総務省の教材を社内研修で使うときは、教材の利用目的や資料編集の有無を、ページに記載された連絡先へ事前に伝えるよう求められています。連絡先は総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報活用支援室(偽・誤情報啓発教育教材担当)で、メールに書く項目もページで指定があります。下のひな形は、ページに示された書式に沿って並べたものです。[ ]の部分を自社の内容に置き換えて使ってみてください。

宛先:ページ記載の連絡先(総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報活用支援室 偽・誤情報啓発教育教材担当)
件名:MM/DD 啓発教育教材の利用について([会社名])

総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報活用支援室
偽・誤情報啓発教育教材担当 宛

総務省のホームページで公開されている啓発教材を利用したく、下記のとおり連絡いたします。

・所属(会社名・組織名等および部署名):[会社名] [部署名]
・担当者名:[氏名]
・連絡先(電話番号):[ ]
・連絡先(メールアドレス):[ ]
・利用する教材名:生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~(PPTX版)
・利用目的(社内研修、勉強会など):社内研修(全社員向け・60分・受講予定[ ]名)
・資料の編集有無(ありorなし):あり(研修時間に合わせたスライドの抜粋と、社内ルールのスライドの追加)

どうぞよろしくお願いいたします。
[会社名] [部署名] [氏名]

件名の形は「MM/DD 啓発教育教材の利用について(会社名)」とページに記載されています。MM/DDには、メールを送る日の日付を数字4桁で入れましょう(9月1日なら09/01)。スライドを抜き出すだけで中身を書き換えない場合、編集の有無は「なし」と書く決まりとなっています。社内ルールのスライドを差し込むなど、どこまでを編集と書くか迷うときは「あり」とし、何を足すのかを一言添えると相手にも伝わりやすくなります。

同じ教材は消費者庁の消費者教育ポータルサイトにも掲載されています。そちらでも、講座等で使うときは使途も含めて情報共有するよう書かれているため、どちらから入手した場合も連絡は省けないものと考えておくのが安全です。

60分の全社研修のスライド構成表|25枚・8章の組み方

全社員向けの最初の研修は、60分・25枚ほどに収め、基礎の説明と実演と社内ルールをほぼ同じ重さで並べると組みやすくなります。下の表は、公開教材から借りる章と自社で作る章を分けて並べたひな形になっています。

章スライド時間目的中身土台にするもの
1. はじめに1〜2枚目(2枚)3分研修のゴールを共有する表紙、今日のゴール(明日から何を使い、何を入れてよいかが分かる)自社で作る
2. 生成AIの基礎3〜6枚目(4枚)7分何が得意で何が苦手かをつかむ生成AIとは何か、得意なこと・苦手なこと総務省「生成AIの基礎知識」、IPAの基礎知識の章
3. 使い方の基本7〜10枚目(4枚)8分指示の出し方の型を知る活用場面、指示の書き方、答えを直してもらう聞き方総務省「活用場面や入門的な使い方」、TISの資料
4. 自社の業務での実演11〜13枚目(3枚)12分自分の仕事で使う場面を思い描く議事録の要約、案内文の下書き、表の整理など3つを画面で実演自社で作る
5. 注意点14〜17枚目(4枚)10分してはいけないことを知る情報漏えい、誤情報、著作権、AIを使った詐欺総務省「活用時の注意点」、IPAの資料
6. 自社のルール18〜21枚目(4枚)10分自社で守ることを覚える使ってよいAI環境、入力してよい情報、社外に出す前の確認、相談窓口自社で作る(ひな形は後述)
7. 確認テスト22〜23枚目(2枚)5分理解を確かめる○×と選択式の5問自社で作る(ひな形は後述)
8. まとめ・質疑24〜25枚目(2枚)5分明日からの行動を決める今日のまとめ、相談窓口の再掲、出典の一覧、質疑自社で作る
合計25枚60分自社で作るスライド13枚、公開教材から借りるスライド12枚

公開教材から借りるのは2章・3章・5章の12枚で、総務省の75枚からすべて選ぶとしても、使うのはおよそ6枚に1枚の割合です。全部を映そうとせず、ノート欄のメモを読んで、自社の社員に関係の深いスライドから選んでみてください。時間が足りなくなっても、4章の自社の業務での実演の12分は削らずに残しましょう。受講者が研修の翌日に使い始めるかどうかは、自分の仕事に近い実演を見たかどうかで変わりやすいためです。

90分・半日に伸ばすときに足す章

時間を伸ばす場合は、説明を増やすより、受講者が自分で手を動かす時間を足すほうが身に付きます。目安は次のとおりです。

  • 90分にする(+30分):受講者が自分の業務の文書で1つ試す個人演習20分と、質疑10分を足す
  • 半日・約3時間にする(90分版に+90分):部署ごとの演習45分、よく使う指示の型(プロンプト)を作って共有する30分、発表と講評15分を足す

演習で社内の書類を扱うには、会社が契約したAI環境が用意できていることが前提となります。個人アカウントしかない段階では、演習の題材を公開済みの情報や架空の例に限っておくのが無難です。

演習で社内の書類を扱うなら、会社のAI環境を1つに

個人アカウントしかない状態から、会社が契約した1つの環境へそろえる方法があります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

対象者別の研修の型と、資料の分け方

対象者別の研修は、全社員向けの60分版を共通の土台として1本作り、対象ごとに差分のスライドを足していく形にすると管理が楽になります。資料を対象ごとに一から作ると、社内ルールを改めたときに直す場所が増えてしまいます。

研修の型資料の重点60分版から変える所
全社員向けの基礎基礎知識、注意点、社内ルールそのまま使う
管理職・部門長向け部下の使い方をどう確認するか、相談を受けたときの判断4章の実演を、部下の生成物を確認する場面に差し替える。6章に承認の流れを足す
新入社員・若手向け社外に出す前の確認、相談の仕方5章の注意点の比重を上げ、確認テストを10問に増やす
開発・システムの担当向けソースコードや設定情報の扱い、外部サービスとの連携6章の入力情報の例に、コード・接続情報・顧客データの扱いを足す

どの型でも、最初に全社員向けの60分版を受けてもらってから差分の回に進む順番が分かりやすいでしょう。対象者・レベル別の研修の種類と選び方は、親記事の対象者・レベル別の生成AI研修の種類で整理しています。

自社で差し込む社内ルールのスライド4枚のひな形

社内ルールのスライドは、公開教材には載っていない自社だけの中身で、受講者が研修の後に見返す前提で作る部分です。4枚に10分を配分しているので、1枚あたり2分半ほどで説明し切れる量に抑えます。下のひな形の[ ]を、自社の名前や窓口に置き換えて使ってみてください。

スライドタイトルスライドに載せる文([ ]は自社で埋める)
18枚目業務で使ってよいAI業務で使ってよいのは[会社が用意したAI環境の名前]だけです。
ログインは[会社のアカウント]で行います。
個人で契約したAIや無料版には、公開済みの情報以外は入れません。
新しいAIサービスを使いたいときは[申請先]に申請してください。
19枚目入れてよい情報・伏せる情報・入れない情報入れてよい:公開済みの自社サイトの文章、一般的な文章の下書き、社内の手順書
伏せて入れる:顧客名・取引先名([A社]のように置き換える)、見積もりや売上の数字
入れない:パスワードやアクセスキー、口座番号、取引先から秘密保持契約で預かった資料、社員の人事情報
迷ったら入れずに[相談窓口]へ
20枚目社外に出す前の確認数字・日付・固有名詞は、公式の資料や原本で確かめる
他人の文章や画像に似すぎていないかを確かめる
取引先に出す文書は[確認する人:上長など]が目を通す
AIで作ったことを伝える必要がある場面は[自社の基準]に従う
21枚目困ったときの相談窓口使い方の質問:[窓口の名前・チャットのチャンネル名]
入力してしまった・誤って送ってしまったとき:すぐに[報告先]へ
返事の目安:[◯営業日以内]
ルールの原文:[社内ガイドラインの保存場所]

入力情報の線引きは、本来は情報の種類ごとに細かく決めておく必要があります。スライドには短い例だけを載せ、詳しい表は親記事の研修前に会社側で決めておく入力情報の線引き表を自社向けに直し、配布資料として添えるとよいでしょう。ルール文書そのものの作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方にまとめています。

ただし、18枚目で使ってよいAI環境を示しても、社員がそれぞれ個人のアカウントで使い続けていれば、入力した情報を会社が確かめる手段はありません。研修で教えたルールを守り続けてもらうには、スライドに書くAI環境そのものを、会社が全員に同じ条件で用意しておく必要が出てきます。

注意点の章に入れる中身|情報漏えい・誤情報・著作権

注意点の章は、情報漏えい・誤情報・著作権の3つに絞り、それぞれ「何が起きるか」と「自社ではどうするか」を対にして見せると伝わりやすくなります。一般論のスライドは公開教材から借り、その直後に自社のルールのスライドを置く並べ方が分かりやすいでしょう。

情報漏えい:入力した内容がどこへ行くか

生成AIに入力した文章は、使っているサービスの提供元へ送られて処理されます。サービスや設定によっては、入力した内容がAIの学習に使われる場合もあるため、何を入れてよいかは使う環境によって変わってきます。IPAの資料にある「クラウドAIに営業秘密は教えない」の章は、この話を短く伝えるのに向いています。研修では、19枚目の入力情報のスライドとつなげて説明してみてください。

誤情報:もっともらしい誤りを見抜く

生成AIは、事実と違う内容でも自然な文章で答えることがあります。IPAの資料の目次にある「生成AIは知識豊富だが経験不足の新人」というたとえは、受講者に感覚をつかんでもらうのに便利です。数字・日付・固有名詞は、必ず公式の資料や原本で人が確かめる、と研修で言い切っておきましょう。実演の中で、わざと誤りが混じった答えを見せると記憶に残りやすくなります。

著作権:生成物を社外に出す前に

AIで作った文章や画像を社外に出すときは、既存の作品に似すぎていないかを確かめる必要があります。著作権の考え方を詳しく扱うなら、文化庁の資料を参考資料として紹介するのが確実です。研修のスライドでは細かい解釈に踏み込まず、20枚目の確認手順と、迷ったときの相談先を示すところまでで十分でしょう。

注意点の章で紹介する国の資料

注意点の章の最後か配布資料に、次の資料の名前(分かるものは公表日も)を載せておくと、受講者が自分で調べ直すときの入口になります。

  • 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日):個人情報取扱事業者に対し、個人情報を含む指示を入力する場合は利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認すること、本人の同意なく個人データを入力する場合は提供事業者がそのデータを機械学習に利用しないこと等を十分に確認することを求めています
  • 文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日、文化審議会著作権分科会法制度小委員会)と「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日):文化庁のAIと著作権のページに掲載
  • 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」:共通の指針の一つに「教育・リテラシー」があり、AIに関わる者が十分なレベルのAIリテラシーを確保するために必要な措置を講じることを挙げている
  • IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」(2026年4月2日公開):社内研修にも使えるスライド形式の資料

個人情報の扱いや著作権の判断に迷う場面は、社内の相談窓口から必要に応じて専門家につなぐ流れを決めておくと安心です。研修の場では、資料の存在と相談の流れを伝えることに絞りましょう。

生成AIで研修資料そのものを作る手順とプロンプト例

研修資料の下書きは、生成AIに手伝ってもらうことも出来ます。ただし、AIに任せてよいのは骨組みと文章の下書きまでで、中身の正しさを確かめるのは人の役割となります。進め方は次の4段階が分かりやすいでしょう。

  1. 骨組みを作る:上の60分の構成表を渡し、章ごとのスライドのタイトル案を出してもらう
  2. 本文と話す内容を作る:1章ずつ、スライドに載せる短い文と、講師が話すメモの下書きを作ってもらう
  3. 人が確かめる:数字・日付・固有名詞・法令や資料の名前を、公式のページや原本で1つずつ確かめる
  4. 見た目を整える:パワーポイントなどで自社のひな形に流し込み、公開教材から借りたスライドと並べる

指示(プロンプト)の例を1つ載せておきます。[ ]を自社の内容に置き換えて使ってみてください。

あなたは社内研修の講師です。社員[ ]名の会社で、生成AIを初めて業務で使う全社員向けに、60分の研修を行います。
次の章立てのうち「4. 自社の業務での実演」の3枚分について、スライドのタイトル、スライドに載せる文(各3行まで)、講師が話す内容のメモ(各200字程度)を作ってください。
・実演する業務:[議事録の要約][取引先への案内文の下書き][表の整理]
・受講者:[事務・営業が中心で、生成AIを使ったことがない方が多い]
・使うAI環境:[会社で用意したAI環境の名前]
・守ること:実在の会社名・人名・金額は使わず、[A社][担当者B]のような架空の例にする
・分からないことや確かめが必要なことは、推測で埋めずに「要確認」と書く

このとき、社内の機密や顧客の情報を、資料作りのためであってもAIへは入れないようにしましょう。実演の題材も架空の例で作り、本番で実際の書類を使うのは会社が用意したAI環境の中だけにします。もう1つの注意点として、AIが書いた下書きには、存在しない資料名や、古い日付がもっともらしく混ざることがあります。生成AIで作ったスライドの数字と固有名詞は、すべて人が公式のページで確かめてから使いましょう。公開教材から借りた部分と、AIで作った部分が分かるように、ファイル上で印を付けておくと確認の漏れも減らせます。

受講後の確認テスト5問のひな形と、定着の測り方

確認テストは、研修の最後の5分で行い、全問正解できるまで解説を読み直してもらう形にすると、覚えてほしいルールが残りやすくなります。下の5問は、ここまでの社内ルールのスライドのひな形に合わせた例です。

  1. 【○×】生成AIの答えは、文章が自然でもっともらしければ、確かめずに社外向けの資料に使ってよい。
  2. 【選択】会社が用意したAI環境以外のAI(個人で契約したものや無料版)に入れてよい情報はどれですか。 A:顧客名が入った議事録 B:公開済みの自社サイトの文章 C:見積もりの金額
  3. 【○×】会社が用意したAI環境であれば、システムのパスワードやアクセスキーを入力してもよい。
  4. 【選択】AIで作った文章や画像を取引先に出す前にすることはどれですか。 A:AIが作ったものなので、そのまま出す B:事実と数字を確かめ、他人の作品に似すぎていないかを見て、決められた人に確認してもらう C:表現だけ自分の言葉に直して出す
  5. 【選択】入力してよいか判断に迷う情報があるとき、どうしますか。 A:とりあえず入れて結果を見る B:入れずに[相談窓口]に聞く C:個人のアカウントで試してみる
問答え解説
1×生成AIは事実と違う内容も自然な文章で答えることがあります。数字・日付・固有名詞は公式の資料や原本で確かめてから使います。
2B会社が管理していないAIには、公開済みの情報だけを入れます。顧客名や金額は入れません(スライド19枚目)。
3×パスワードやアクセスキーなどの認証情報は、どのAI環境にも入れません。
4B社外に出す前の確認は、事実の確認、似すぎていないかの確認、決められた人の確認の3つです(スライド20枚目)。
5B迷ったら入れずに相談するのが社内ルールです。個人のアカウントで試すと、会社から見えない利用になってしまいます。

研修の後の定着の測り方

研修の効果は、受講直後のテストの点数だけでは分かりません。1か月後に同じ5問をもう一度解いてもらい、正答率が下がった問題のルールだけを、朝礼や社内の連絡で繰り返し伝えると手間が少なく済みます。あわせて、相談窓口に届いた質問の数と中身を記録しておくと、次の研修で厚くすべき章が見えてきます。研修の前に決めておく指標と、翌日から30日の定着手順は、親記事の研修後のフォロー体制と、翌日から30日の定着手順で紹介しています。

講師役の社員が当日までにやる準備チェックリスト

講師役の社員が当日までにやることは、公開教材の手続き、自社スライドの穴埋め、実演の予行の3つに分かれます。次の項目を、研修の2週間前ごろから順に確かめてみてください。

  • 総務省の教材を使う連絡を済ませたメールのひな形の項目どおりに送り、編集の有無も伝えておきます。
  • 公開教材を研修の直前にダウンロードし直した総務省・IPAとも教材を更新する場合があると案内しています。古い版のまま使わないようにします。
  • TISの資料を使う場合、出典の表示を入れた表紙かまとめのスライドに、資料名・TIS・ページのURL・CC BY 4.0である旨・抜粋や改変をした旨を載せます。
  • 社内ルールの4枚の[ ]をすべて埋め、決裁者の確認を取った使ってよいAI環境の名前、相談窓口、返事の目安まで埋まっているかを見ます。
  • 実演の題材を架空の例か公開済みの情報にした実在の顧客名・金額・個人情報が画面に映らないよう、資料と画面の両方を確かめます。
  • 会社のAI環境で、実演の操作を本番と同じ順に通したログインできない、答えが長すぎるなどの詰まりどころを事前に見つけます。
  • 確認テストの配り方と回収方法を決めた紙で配るか、社内のフォームで回答してもらうかを決め、結果の集計の担当も決めます。
  • 欠席者への対応を決めた録画を残すか、資料とテストだけを後日送るかを決め、受講の記録の付け方もそろえます。
  • 研修後の質問の受け付け先を、まとめのスライドに載せた窓口の名前と返事の目安を、21枚目と同じ内容で再掲します。

講師役の負担が大きくなりやすいのは、社内ルールの穴埋めと決裁です。ルールの中身が決まっていない場合は、研修の準備より先に、親記事の研修前に会社側で決めておくことから手を付けてみてください。

研修で教えた使い方を、全員が同じ環境で続けるために

研修の効果を続かせるには、18枚目に書いた「使ってよいAI環境」を、会社が全社員に同じ条件で配っておくことが前提になります。研修で正しい使い方を教えても、各自が個人のアカウントや無料版で使っていれば、学習に使われない設定になっているか、何を入力したかを会社が確かめることは出来ません。会社から見えないまま使われるAIは、いわゆるシャドーAI(野良AI)と呼ばれます。

会社でAI環境を1つ用意するときは、研修で教える内容と合っているかという目で、次の点を確かめてみましょう。

  • 入力した内容をAIの学習に使わない設定を、会社側で全員に一律にかけられるか
  • 誰がいつどのAIを使ったかの利用ログを、会社の管理者が確認できるか
  • 一部の社員だけでなく、研修を受けた全員に配れる料金の形になっているか
  • 研修で扱った用途に合わせて、複数のAIを使い分けられるか
  • 研修で作った指示の型(プロンプト)を、社内で共有して使い回せるか

点検の項目をもう少し広く確かめたい場合は生成AIのセキュリティ対策チェックリスト、複数のAIを1つの環境でまとめて使う考え方はマルチAIとはが参考になります。AIごとの得意な用途は主要4AIの違いと使い分けで比べています。研修の資料と使う環境がそろっていれば、受講者は研修の翌日から、スライドで見たとおりの画面で仕事を始めることが出来るようになります。

研修で教えた使い方を、全社員が同じ環境で

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約・1つの画面で使える法人向けサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・使えるモデルのON/OFFを管理でき、よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有する機能もあります。会話の履歴や利用ログは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

生成AI研修の資料は無料で手に入りますか?
手に入ります。総務省「生成AIはじめの一歩~生成AIの入門的な使い方と注意点~」、TIS「生成AIリテラシー向上研修」、IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」は、いずれも無料でダウンロードできるスライド形式の教材です。ただし、総務省は使う前の連絡、TISは出典の表示、IPAは引用・転載時のよくある質問のQ2の確認と、それぞれ使うときの条件があります。
総務省の教材は会社の研修で編集して使ってもよいですか?
総務省のページには、講座の実施時間や進め方などに応じて内容を編集できると書かれています。使う前に、教材の利用目的や資料編集の有無などを、ページに記載された連絡先へ事前に連絡するよう求められています。スライドの抜粋だけなら編集の有無は「なし」と書く決まりです。
TISの研修資料を社内研修で使うときに必要なことは何ですか?
TISの資料を公開しているFintanのサイトのドキュメントは、クリエイティブ・コモンズ表示4.0(CC BY 4.0)で公開されています。使うときは出典の表示とライセンスへのリンク、変更した場合はその旨の表示が条件となるため、表紙かまとめのスライドに資料名・TIS・ページのURL・CC BY 4.0である旨・抜粋や改変をした旨を載せておきましょう。
社内の生成AI研修の資料は何枚くらいにすればよいですか?
全社員向けの60分の研修なら、25枚ほどが目安です。公開教材から借りる基礎・使い方・注意点が12枚、自社で作る表紙・実演・社内ルール・確認テスト・まとめが13枚という配分にすると、説明だけで時間が終わらずに済みます。
生成AIで研修資料を作ってもよいですか?
骨組みや文章の下書きを作るのに使えます。ただし、社内の機密や顧客の情報は資料作りのために入力しないこと、作ったスライドの数字・日付・固有名詞は人が公式のページや原本で確かめることの2点は必ず守ってください。

まとめ

生成AI研修の資料は、総務省・TIS・IPAが無料で公開している教材を土台にし、自社のルールと業務の実演だけを自社で作れば形になります。全社員向けの最初の研修は60分・25枚ほどに収め、うち13枚を自社のスライドにする組み方が扱いやすいでしょう。

公開教材は、総務省は事前の連絡、TISは出典の表示、IPAは引用・転載のルールの確認と、使うときの条件がそれぞれ異なります。研修の日程が決まったら、まず連絡と条件の確認から始めましょう。社内ルールのスライド・確認テスト・講師の準備はこの記事のひな形を自社向けに直して使い、研修の後は、スライドに書いた「使ってよいAI環境」を全員が同じ条件で使える形に整えておくことが大切です。

研修の費用や助成金、研修会社の選び方は生成AI研修の選び方、法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。