
生成AI研修とは、社員がChatGPTなどの生成AIを業務で安全に使えるように、指示の出し方、自分の業務への当てはめ方、情報漏洩や誤情報といったリスクと社内ルールを学ぶ研修です。選ぶときは講座の数や知名度よりも、自社の業務に合わせた演習ができるか、そして研修の翌日から社員が会社のルールのもとで使い続けられる環境と定着の段取りが用意されているかで判断すると失敗が減ります。この記事では、研修の種類と形式、費用を人数別の総額で見る方法、人材開発支援助成金の計算例、研修前に会社が決めておくこと、研修後30日の定着手順までを、社員10〜200名の会社の担当者向けに順に解説します。
生成AI研修とは|研修で何を学ぶのか
生成AI研修で学ぶことは、大きく分けて「指示の出し方」「業務への応用」「リスクと社内ルール」の3つです。どれか1つだけでは現場で使える状態になりません。操作だけ覚えても業務に当てはめられなければ使われなくなり、便利さだけ覚えてリスクを知らなければ、会社として許されない使い方が広がります。
ここでいう生成AIとは、文章・要約・表・画像などを、人の指示(プロンプト)に応じて作り出すAIのことです。ChatGPT、Microsoft Copilot、Gemini、Claudeなどが代表的なサービスで、多くの研修はこれらのいずれかを教材に使います。
| 学ぶ領域 | 主な内容 | 研修を終えた時点で目指す状態 |
|---|---|---|
| 指示の出し方(プロンプト) | 目的・前提・出力の形を伝える書き方、うまくいかないときの聞き直し方、長い資料を渡して要約させる方法 | 同じ依頼を、誰が書いても一定の品質で出力させられる |
| 業務への応用 | 議事録の要約、メール文案、社内文書のたたき台、表の整理、調べものの下準備など、自社の定型業務への当てはめ | 自分の業務のうち、AIに任せられる作業を3つ以上挙げて実際に試せる |
| リスクと社内ルール | 入力してはいけない情報、誤情報(ハルシネーション)の確認、著作権への配慮、会社が決めた利用ルールと相談先 | 迷ったときに、使ってよいか・誰に聞くかを自分で判断できる |
指示の出し方(プロンプト)
プロンプトとは、生成AIに渡す指示文のことです。研修では、誰に向けた文章か、何字程度か、箇条書きか表か、といった条件を最初に伝える書き方を練習します。うまくいかなかったときに、条件を足して聞き直す往復の仕方を体験させる研修のほうが、実務では役に立ちます。決まった型を暗記させるだけの内容だと、自分の業務に置き換えた瞬間に手が止まりやすくなります。
業務への応用
現場で使われ続けるかどうかを分けるのは、この部分です。一般的な例題(旅行の計画や架空の商品のキャッチコピー)だけで終わる研修は、受講直後の満足度が高くても、翌週には使われなくなることがあります。自社の議事録、社内報告書、問い合わせ対応の文面など、受講者が明日も触る書類を題材にできるかを研修選びの段階で確認します。
リスクの知識と社内ルール
生成AIの研修では、情報漏洩、著作権、誤情報の3つは必ず扱うべき内容です。ただしリスクの一般論を聞くだけでは、社員は何をしてよいのか判断できません。自社で決めた「入力してよい情報」「伏せて入れる情報」「入れない情報」の線引きを研修の中で具体例とともに示すことで、初めて行動が変わります。この線引きは研修会社ではなく会社が決めるもので、詳しくは後半の研修前に会社側で決めておくことで表にしています。
企業に生成AI研修が必要な理由と、研修で解決できる悩み
研修が必要な理由は、生成AIの導入そのものより、導入した後に使える人が社内に育っていないことが課題になりやすいためです。ツールの契約だけでは利用は広がらず、使い方もルールも各自の自己流になります。
帝国データバンクの「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(調査期間2026年3月17日〜31日、対象2万3,349社、有効回答1万312社)では、生成AIを業務で活用していると答えた企業は34.5%でした。規模別では大企業46.5%、中小企業32.4%、小規模企業28.0%で、規模が小さいほど活用の割合は低くなっています。同調査で懸念・課題として「専門人材・ノウハウ不足」を挙げた企業は41.3%(3つまでの複数回答)でした。
※数値は帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」の公表内容です。回答率は44.2%です。
国の指針でも教育は位置づけられています。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日)は、共通の指針の1つに「教育・リテラシー」を挙げています。AIに関わる者が十分なレベルのAIリテラシーを確保するために必要な措置を講じることを各主体が取り組む事項とし、あわせてステークホルダーに対して教育を行うことを、社会と連携した取組として期待される事項に挙げています。
研修で解決できる現場の悩み、研修だけでは解決しない悩み
研修を検討するきっかけになる悩みは、研修で解決できるものと、会社側の決定がないと解決しないものに分かれます。後者を研修会社に期待すると、研修の後も状況が変わりません。
| よくある悩み | 研修で解決できること | 研修の前後に会社が決めること |
|---|---|---|
| ツールを入れたのに一部の社員しか使っていない | 使いどころの具体例を体験させ、最初の1回の心理的な壁を下げる | 使ってよい業務の範囲と、試す時間を業務として認めるか |
| 使い方が人によってばらばらで品質が安定しない | 指示の書き方の基本と、出力を確認する手順をそろえる | よく使う指示文を共有する場所と、その管理担当 |
| 社員が個人のアカウントで使っていないか不安 | 個人アカウントで業務情報を扱うリスクを理解させる | 会社として使ってよいAI環境を用意し、どれを使うかを明示する |
| 何を入力してはいけないのか誰も説明できない | 情報の種類ごとの注意点を例とともに教える | 入力してよい情報・伏せて入れる情報・入れない情報の線引き |
| 管理職が部下の利用を評価できない | 管理職向けに、生成AIでできること・できないことを整理する | 利用を評価や業務計画にどう組み込むか |
| AIの誤った回答をそのまま使ってしまった | 誤情報が出る仕組みと、裏取りの手順を練習する | 社外に出す文書の確認者と確認の工程 |
社員が会社の把握していないAIを業務で使う状態は、野良AI(シャドーAI)と呼ばれます。研修で使い方を教えたのに、使ってよい環境が会社にない場合、この状態がかえって広がることがあります。対策の考え方は野良AI(シャドーAI)の対策で解説しています。
対象者・レベル別の生成AI研修の種類
生成AI研修は、誰が受けるかによって目的が変わります。全社員に同じ内容を受けさせるより、経営層・管理職、一般の利用者、社内の推進役、開発者の4つに分けて考えると、必要な時間と費用の見当がつけやすくなります。
| 対象者 | 目的 | 主な内容 | 中小企業での優先度の考え方 |
|---|---|---|---|
| 経営層・管理職 | 投資判断と社内方針の決定、部下の利用を支える | 生成AIでできること・できないこと、リスクと責任の所在、社内ルールの決め方、業務計画への組み込み | 最初に受ける層。ここで方針が決まらないと一般社員向け研修の内容が決まらない |
| 一般の利用者(全社員) | 日々の業務で安全に使えるようにする | 基本操作、指示の出し方、自部署の業務での演習、入力ルール、誤情報の確認 | 人数が多いため、形式と費用の工夫が要る層。全員が同じ環境で演習できることが前提 |
| 推進役(各部署のまとめ役) | 研修後の定着を現場で支える | 業務の洗い出しとAIへの当てはめ方、よく使う指示文の整備、社内からの質問への対応、利用状況の振り返り | 社員10〜200名なら各部署に1名、全体で2〜5名程度から始めるのが現実的 |
| 開発者・情報システムの担当者 | 社内システムとの連携や、AIを組み込んだ仕組みを作る | API(システム同士をつなぐ窓口)の使い方、社内文書を参照させる仕組み、セキュリティ設計 | 社内で開発を行う計画がなければ急がなくてよい |
社員10〜200名の会社では、専任の推進部署を置くことは難しいことが多いため、経営層・管理職向けの短い研修で方針を決め、一般社員向けの研修と並行して推進役を数名育てる進め方が組みやすくなります。開発者向けの研修は、業務での利用が定着し、システム化したい作業が具体的に見えてから検討しても遅くありません。
レベル別に分けるときの目安
同じ一般社員でも、すでに個人で使い慣れている人と、一度も触ったことがない人が混在します。同じ教室で受けさせると、どちらかが退屈するか置いていかれます。事前に簡単なアンケートで利用経験を聞き、入門と実践の2段に分けると、演習の時間を有効に使えます。
- 入門:一度も使ったことがない、または数回試しただけの人。操作、質問のしかた、入力してはいけない情報を中心にします
- 実践:週に数回以上使っている人。自分の業務の定型作業を題材にした演習、長い資料の要約、表の整形、指示文の共有を中心にします
- 推進:実践レベルの人の中から、部署の質問に答える役を担う人。業務の棚卸しと、利用状況の振り返り方を学びます
研修の形式と向き不向き|集合・オンライン・eラーニング・ハンズオン
形式は、研修の目的と受講者の人数で選びます。考え方を揃えたいなら講師と話せるライブ形式、全社員に同じ基礎を届けたいならeラーニング、手を動かして業務に当てはめたいならハンズオン演習が向いています。
| 形式 | 内容 | 向いている場面 | 向いていない場面 |
|---|---|---|---|
| 集合研修(会場) | 講師と受講者が同じ場所に集まる | 管理職の意識合わせ、部署をまたいだ議論、演習で隣の人と見せ合う形 | 拠点が分散している、全員の予定を合わせにくい |
| オンラインのライブ研修 | ビデオ会議で講師がリアルタイムに進める | 拠点が複数ある、移動の時間を減らしたい、質問をその場で受けたい | 受講者の画面が見えにくく、操作でつまずいた人を拾いにくい |
| eラーニング(動画・教材の自習) | 受講者が好きな時間に動画や教材で学ぶ | 全社員に基礎を揃える、繰り返し見返したい、シフト勤務の職場 | 自社の業務に合わせた演習、途中で止まる人のフォロー |
| ハンズオン演習 | 受講者が実際にAIを操作しながら課題を解く(ライブ研修や集合研修の中で行うことが多い) | 業務への当てはめ、指示文の改善を体験させる | 演習用のAI環境がない、入力してよい題材が決まっていない |
| 公開講座 | 研修会社が日時を決めて開き、複数の会社から受講者が集まる | 少人数を先に受けさせる、推進役候補に外部の知見を入れる | 自社の業務や社内ルールに合わせた内容にしたい |
| 一社向け研修(講師派遣・オンライン) | 自社の社員だけを対象に、内容を調整して実施する | 自社の業務題材で演習したい、社内ルールを研修に組み込みたい | 受講者が数名しかいない |
ハンズオン演習を行う場合は、受講者が何のアカウントで操作するかを先に決めておく必要があります。研修会社が用意する演習環境で行うのか、会社が契約したAI環境で行うのか、受講者の個人アカウントで行うのかで、入力してよい題材が変わるためです。個人の無料アカウントでの演習を前提にしている研修の場合、演習で自社の書類を扱えず、業務への応用が一般論で終わることがあります。
組み合わせの目安:社員10〜200名の会社では、管理職向けをライブ研修で短く行って方針を決め、全社員向けの基礎はeラーニングかオンラインのライブ研修、部署ごとの業務への当てはめはハンズオン演習、と役割を分けると、費用と効果の釣り合いが取りやすくなります。
研修で扱う主なツール|ChatGPT・Copilot・Gemini・Claude
研修で扱うツールは、研修の後に社員が実際に使うツールと同じにするのが原則です。研修で使ったツールと職場で使えるツールが違うと、画面も得意なことも違うため、学んだことがそのまま使えません。
| ツール | 提供元 | 一般的な位置づけ |
|---|---|---|
| ChatGPT | OpenAI | 対話形式で文章作成・要約・調べものなどに幅広く使われる生成AIサービス。後の章で紹介するトレノケートの公開講座のように、研修の教材に使われる例がある |
| Microsoft Copilot | Microsoft | Microsoftの製品群で使える生成AI。WordやExcelなど、普段使っている業務ソフトと組み合わせて使う場面で研修の題材になる |
| Gemini | Googleの生成AI。Googleのサービスを業務で使っている会社で研修の題材になりやすい | |
| Claude | Anthropic | 長い文章の読み込みや文章作成などの用途で使われる生成AI |
※各ツールの料金や使えるモデルは頻繁に変わるため、この記事では扱いません。研修を申し込む時点で、研修で使うツールの版と、自社で使うツールの版が同じかを研修会社に確認してください。
1つのツールに絞った研修は、画面操作まで細かく教えられる利点があります。一方で、複数のAIを業務に応じて使い分ける会社では、ツールごとの得意・不得意の違いと、どの作業にどれを使うかの社内の決まりを教える必要があります。使い分けの考え方はChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityの使い分けで整理しています。研修で教える指示の書き方の基本は、ツールが違っても大きくは変わらないため、ツール固有の操作は短く、指示の組み立てと業務への当てはめに時間を使う構成が長持ちします。
生成AI研修の費用の目安|形式別・人数別の総額で比べる
研修の費用は、1名あたりの受講料だけで比べず、受けさせたい人数を掛けた総額と、研修に使う社員の時間を合わせて比べます。1名あたりは手頃でも、全社員に受けさせると金額が大きく変わり、別の形式のほうが合うことがあるためです。
公開価格のある講座で人数別の総額を計算する
研修会社の公式ページで受講料が公開されている例として、トレノケートの公開講座「ChatGPTで学ぶ生成AIビジネス活用 ~仕事の生産性を高めるAIチャット入門~」があります。受講料は1名33,000円(税込)、日程は1日(13:00〜17:30)です。講義とハンズオンを組み合わせた講座で、2026年9月17日時点で掲載されている日程はオンラインのライブ開催です。この講座に社員を送った場合の総額を、人数別に計算すると次のとおりです。
| 受講人数 | 受講料の総額(税込) | 研修日の拘束時間の合計(13:00〜17:30で計算) |
|---|---|---|
| 10名 | 330,000円 | 45時間 |
| 30名 | 990,000円 | 135時間 |
| 100名 | 3,300,000円 | 450時間 |
※受講料はトレノケートの公式ページに2026年9月17日時点で表示されている金額(1名33,000円・税込)に人数を掛けた計算例です。拘束時間は講座の開始から終了までの4.5時間に人数を掛けたもので、移動時間は含みません。公開講座は開催日ごとに空席や開催の確定状況が異なるため、実際に同じ日に全員が受講できるとは限りません。
この計算から分かるのは、公開講座は少人数を先に受けさせる用途に向き、数十名以上の全社員に同じ基礎を届ける手段としては、総額と日程調整の両面で負担が大きくなりやすいことです。100名の場合、受講料に加えて延べ450時間分の業務が止まります。人数が多い場合は、一社向け研修やeラーニングの見積もりを取り、同じ人数の総額で並べて比べます。
形式別に、総額を比べるための見方
一社向け研修や法人向けのeラーニングは、公式ページに金額を載せず、問い合わせを受けて見積もる形のサービスがあります。たとえば、DMM 生成AI CAMPの法人向けページには受講料の掲載がなく問い合わせ制で、人材開発支援助成金を活用すると受講料の最大75%が補助されると記載されています(2026年9月17日時点)。この75%は、たとえば人への投資促進コース(定額制訓練)の経費助成60%に、賃金要件等を満たした場合の加算15%を加えた率と読むこともできますが、どのコース・どの条件での上限かは申し込み前に確認が必要です。金額が公開されていない形式は、同じ条件で見積もりを取り、次の表の枠を埋めて比べます。
| 形式 | 見積もりの単位で確認すること | 10名の場合の総額 | 30名の場合の総額 | 100名の場合の総額 |
|---|---|---|---|---|
| 公開講座(トレノケートの上記講座の例) | 1名あたりの受講料(33,000円・税込) | 330,000円 | 990,000円 | 3,300,000円 |
| 一社向け研修(講師派遣・オンライン) | 人数単位か、回数・時間単位か。人数の上限と、超えた場合の扱い。自社向けの内容調整が別料金か | 見積もりで記入 | 見積もりで記入 | 見積もりで記入 |
| 法人向けeラーニング | ID(受講者)数単位か、会社単位の定額か。契約期間と、途中で人数を増減できるか | 見積もりで記入 | 見積もりで記入 | 見積もりで記入 |
| 内製(社内講師) | 社内講師の準備時間と実施時間、演習に使うAI環境の費用 | 社内で試算 | 社内で試算 | 社内で試算 |
※DMM 生成AI CAMPの記載内容は、2026年9月17日時点で同社の法人向け公式ページに表示されている内容です。助成率は、会社の規模や助成金のコース、要件によって異なります(次の章で説明します)。
見積もりを取るときに必ず聞く7つの項目
- 金額の単位1名あたり、1回あたり、1時間あたり、会社あたりの定額のどれか。人数が増えたときに総額がどう変わるか。
- 内容の調整費自社の業務題材や社内ルールを研修に組み込む場合、事前の打ち合わせや教材の作り直しが別料金になるか。
- 演習に使うAI環境研修会社が用意するのか、会社の環境を使うのか。研修会社の環境を使う場合、演習で入力した内容の扱い。
- 研修後のフォロー質問窓口、追加の勉強会、教材の閲覧期間が料金に含まれるか。含まれない場合の費用。
- 講師の交通費・会場費集合研修の場合に別途かかる費用と、オンラインに切り替えた場合の違い。
- 助成金への対応人材開発支援助成金を使う場合の書類(訓練の日程・時間・内容が分かる資料など)を出してもらえるか。
- キャンセル・日程変更受講者の欠席や日程変更の扱いと、その場合の費用。
AIツール自体の利用料は研修費用とは別にかかります。研修の後も社員が使い続けるには、そのツールを会社として契約する費用が毎月発生するため、研修の総額とツールの年間費用を合わせて予算を立てると、研修後に使える環境がないという事態を防げます。法人向け生成AIサービスの料金は法人向け生成AIサービスの料金比較で一覧にしています。
人材開発支援助成金で費用を抑える|要件と計算例
生成AI研修の費用は、厚生労働省の人材開発支援助成金を使って抑えられる場合があります。ただし、助成率も要件も年度や改正で変わるため、この記事の数字で申請を判断せず、申請前に最新の支給要領を読み、管轄の都道府県労働局に確認してください。
生成AI研修で検討しやすい2つのコースと助成率
厚生労働省の「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」(令和8年4月8日時点)では、次の助成率・助成額が示されています。
| コース | 経費助成 | 賃金助成 |
|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 実費相当額の75%〔中小企業以外は60%〕 | 1人1時間あたり1,000円〔中小企業以外は500円〕 |
| 人への投資促進コース(定額制訓練) | 実費相当額の60%〔中小企業以外は45%〕。賃金要件等を満たすと+15% | (この記事では扱いません) |
※出典:厚生労働省「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」令和8年4月8日時点。経費助成は研修にかかった費用に対する助成、賃金助成は研修を受けている時間の賃金に対する助成です。どの研修がどのコースの対象になるかは、訓練の内容や形によって異なるため支給要領で確認してください。
事業展開等リスキリング支援コースについて、厚生労働省の令和8年度版の詳細パンフレット(令和8年8月3日版)には、令和4年〜8年度の期間限定の助成金として創設され、令和8年度末までの時限措置であることが書かれています。検討する場合は、受講のスケジュールが制度の期限に間に合うかも確認しておきます。
要件で特に注意する5点
厚生労働省「令和8年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和8年8月3日版)」では、事業展開等リスキリング支援コースについて次の要件が示されています。研修会社を選ぶ前に知っておかないと、選んだ研修が要件を満たさないことがあります。
- 事業展開やDX化などに伴う訓練であること事業展開や社内のDX化などに伴い、受講者の担当業務で必要になる知識や技能を学ぶ訓練であること。
- 訓練時間は10時間以上職場を離れて行う訓練(OFF-JT)の実訓練時間が10時間以上であること。eラーニング・通信制は、標準学習時間が10時間以上、または標準学習期間が1か月以上であること。
- eラーニング・通信制は経費助成のみで、上限ありeラーニングや通信制で行う訓練は経費助成の対象で、賃金助成はありません。経費助成の上限は中小企業15万円・大企業10万円です。
- eラーニングの訓練は同じ労働者につき1年度1回まで同じ社員に、年度内に何度もeラーニングの訓練を受けさせて助成を受けることはできません。(令和8年8月3日以降に提出した計画届の訓練が対象で、eラーニングと他の方法を組み合わせた訓練も含みます。コース全体では年度3回までです)
- 計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までの間訓練を始める日の6か月前から1か月前までの間に計画届を提出する必要があります。支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内です。
※上の5点は、厚生労働省「令和8年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和8年8月3日版)」と、同省「8月3日からの変更点」の記載をもとにまとめたものです。要件は改正されることがあるため、申請前に最新の支給要領と都道府県労働局で確認してください。
生成AIの汎用的な使い方だけを学ぶ研修は対象外になる例
令和8年8月3日からの変更で、厚生労働省は、「生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練」を、特定の業務への具体的な適用を伴わない汎用的な内容であるとして助成の対象外の例に挙げました。一方で、「生成AIを活用して商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練」は対象の例として示されています。
助成金を使う場合、研修は受講者の担当業務に直結する内容で構成し、受講者も、その内容に沿って業務の担当者から選ぶことが求められます(厚生労働省の例示)。全社員を集めてプロンプトの書き方の一般論だけを教える研修は、この例に照らすと対象外になるおそれがあります。部署ごとに業務の題材で演習する構成は、定着の面だけでなく、助成金の面でも検討する価値があります。
また、1日(4.5時間)の公開講座1本だけでは、10時間以上の要件に届きません。複数の講座を組み合わせる場合や、一社向け研修を複数回に分けて実施する場合に要件をどう数えるかは、支給要領と労働局で確認します。
計算例1:中小企業が一社向け研修を実施した場合
次の例は、制度の仕組みを理解するために前提を仮に置いた架空の計算です。実際の支給額を示すものではなく、受給できることを保証するものでもありません。
| 前提(仮定) | 内容 |
|---|---|
| 会社の区分 | 中小企業 |
| コース | 事業展開等リスキリング支援コース(要件をすべて満たしたと仮定) |
| 研修の内容 | 受講者の担当業務に直結する内容で構成したと仮定 |
| 研修の形 | 一社向けのライブ研修(OFF-JT)を3時間×4回、合計12時間。研修会社へ受講料として支払う形(事業外訓練)と仮定 |
| 時間帯 | 全時間が所定労働時間内と仮定(賃金助成は所定労働時間内の分のみ) |
| 受講者 | 20名(全員が12時間すべてを受講したと仮定) |
| 研修経費 | 仮に総額800,000円 |
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 経費助成 | 800,000円×75% | 600,000円 |
| 賃金助成 | 1,000円×12時間×20名 | 240,000円 |
| 合計 | 600,000円+240,000円 | 840,000円 |
同じ前提で中小企業以外の場合は、経費助成が800,000円×60%=480,000円、賃金助成が500円×12時間×20名=120,000円で、合計600,000円になります。賃金助成は研修費用の穴埋めではなく、研修を受けている時間の賃金に対する助成なので、研修経費から差し引いて自己負担を計算すると実態とずれます。研修経費の自己負担は、経費助成だけで見ると800,000円−600,000円=200,000円です。
※講師を招いて自社で開く形(事業内訓練)では、外部講師の謝金に実訓練時間1時間あたり3万円(税込)の上限があります。
計算例2:定額制のeラーニングを使った場合
こちらも前提を仮に置いた架空の計算です。人への投資促進コース(定額制訓練)の経費助成の率(加算なし)だけを使って計算しています。定額制訓練の経費助成には1人1か月2万円の限度があり、計画届は契約期間の初日の1か月前までに提出します(厚生労働省「人への投資促進コース」令和8年8月3日版のご案内)。
| 前提(仮定) | 計算 | 経費助成の額 |
|---|---|---|
| 中小企業が、定額制のeラーニングを受講者5名分、仮に年間360,000円で契約(1人1か月2万円の限度の範囲内と仮定) | 360,000円×60% | 216,000円 |
| 中小企業以外が、同じ条件で契約 | 360,000円×45% | 162,000円 |
※計算例1・2の経費額・時間・人数はすべて仮定です。対象となる経費の範囲、受講時間の数え方、支給の条件は支給要領で定められており、実際の支給額は審査によって決まります。申請前に最新の支給要領と都道府県労働局で確認してください。
助成金を前提に研修を選ぶときの注意
助成金は、研修が終わって支給申請をし、審査を経てから支給されます。研修費用はいったん会社が支払う前提で、資金繰りを考えておくと安心です。また、計画届の提出期限があるため、研修の日程を決めてから助成金を思い出すと間に合わないことがあります。研修会社に相談する最初の段階で、助成金を使う予定があることを伝え、必要な書類を出してもらえるかを確認します。
助成率の高さを理由に、自社の業務に合わない研修を選ぶのは本末転倒です。まず研修の中身で候補を絞り、そのうえで助成金の対象になるかを確かめる順番にします。中小企業が生成AIの導入で使える補助金や導入の進め方は、中小企業のAI導入でも紹介しています。
情報漏洩・著作権侵害・誤情報のリスクと、研修と並行して整えるルール
生成AIの業務利用には、情報漏洩、著作権侵害、誤情報(ハルシネーション)の3つのリスクがあり、研修で知識を教えるのと並行して、会社としての利用ルールを文書にしておく必要があります。研修で「気をつけましょう」と伝えるだけでは、何に気をつけるのかが人によって変わるためです。
情報漏洩:入力した内容がどう扱われるか
生成AIに入力した文章は、サービスの提供元のサーバーに送られます。サービスや設定によっては、入力内容がAIの学習に使われることがあります。個人情報保護委員会は「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日)で、個人情報を含むプロンプトを入力する場合には利用目的の達成に必要な範囲内であるかを十分に確認すること、本人の同意なく個人データを入力し、そのデータが応答の出力以外の目的で扱われる場合は個人情報保護法に違反する可能性があることを示し、入力したデータが機械学習に利用されないこと等を十分に確認するよう求めています。
研修で教えるべきなのは、入力してはいけない情報の一覧だけではありません。会社が用意したAI環境では、入力データが学習に使われない設定になっているか、個人アカウントではどうか、という環境による違いを具体的に示すことです。
著作権侵害:生成物を社外に出すときの確認
生成AIが作った文章や画像が、既存の著作物に似てしまうことがあります。他人の文章や画像をそのまま入力して作り直させ、社外に公開する使い方にも注意が必要です。著作権侵害にあたるかどうかは個別の事情で判断されるため、研修では判断のしかたを覚えさせるより、社外に出す文書・画像は公開前に確認する担当と手順を決め、その手順を守ることを教えるほうが現実的です。
誤情報(ハルシネーション):もっともらしい誤りを見抜く
ハルシネーションとは、生成AIが事実と異なる内容を、もっともらしい文章で出力する現象です。数字、日付、法令、固有名詞、出典は特に誤りが混じりやすい部分です。研修では、AIの回答をそのまま使わず、元の資料や公式の情報で確かめる手順を演習に入れます。たとえば、AIに要約させた文書と原文を突き合わせて、数字が変わっていないかを確認する練習は、短時間でも効果が分かりやすい演習です。
研修と並行して文書にしておくルール
| ルールの項目 | 決める内容 | 研修での扱い |
|---|---|---|
| 使ってよいAI環境 | 会社が用意するAI環境、個人アカウントの業務利用の可否 | 研修の冒頭で、どの環境を使うかを明示する |
| 入力する情報の線引き | 入力してよい・伏せて入れる・入れない情報の区分 | 具体例を使って区分を練習する |
| 出力の確認 | 社外に出す前の確認者、数字や出典の裏取り | 要約と原文の突き合わせを演習する |
| 禁止する使い方 | AIの出力だけで判断してはいけない業務など | 禁止の理由とともに伝える |
| 相談先と違反時の対応 | 迷ったときに聞く窓口、誤って入力したときの報告先 | 窓口の名前と連絡方法を配布資料に載せる |
ルール文書の作り方と記載例は生成AIの社内ガイドラインの作り方、導入前に点検したい項目は生成AIのセキュリティチェックリストにまとめています。
研修前に会社側で決めておくこと|使ってよいAI環境と入力情報の線引き表
研修の前に会社が決めておくことは、社員が使ってよいAI環境と、入力してよい情報の線引きの2つです。この2つが決まっていないと、研修講師は一般論でしか説明できず、受講者は研修の翌日に「結局うちでは何を使って、何を入れてよいのか」が分からないまま職場に戻ります。
決めること1:社員が使ってよいAI環境
最初に、業務で使ってよいAIを決めます。選択肢はおおむね次の3つで、それぞれで会社が把握・管理できる範囲が変わります。
| 環境 | 会社が把握できること | 主な注意点 | 研修での扱い |
|---|---|---|---|
| 社員個人の無料アカウント | ほぼ把握できない | 入力データの扱いが個人の設定次第になる。退職時にやり取りの履歴が個人の手元に残る | 業務情報を入力しない前提でしか演習できない |
| 社員個人の有料アカウント(会社が費用を補助する形を含む) | 費用の支払いは把握できるが、使い方や設定は把握しにくい | 学習利用の設定を社員ごとに確認する必要がある。誰がどう使ったかが会社から見えない | 設定の確認手順を研修で教える必要がある |
| 会社が契約して社員に配るAI環境 | アカウント、設定、サービスによっては利用状況まで把握できる | 契約内容で入力データの扱い、管理機能、使えるAIの種類が変わる | 社内の書類を題材にした演習ができる |
研修で業務への応用を学ばせたいなら、会社が契約して社員に配るAI環境を研修の前に用意しておくのが近道です。演習で自社の書類を扱え、研修の翌日から同じ画面で業務に使えるためです。個人アカウントの業務利用を認める場合も、認めない場合も、研修の冒頭でそれを明言します。
決めること2:入力してよい情報・伏せて入れる情報・入れない情報
次に、情報の種類ごとに入力の可否を決めます。下の表はひな形で、自社の業種や取引先との契約に合わせて調整してください。「伏せて入れる」は、固有名詞や数字を記号に置き換える、個人が特定できる部分を削るなど、加工してから入力することを指します。
| 情報の種類 | 会社が契約したAI環境(入力データを学習に使わない設定を確認済み) | 個人アカウント・会社が把握していないAI |
|---|---|---|
| 公開済みの情報(自社サイト、公開資料、プレスリリース) | 入力してよい | 入力してよい |
| 一般的な文章作成(案内文の下書き、言い回しの相談) | 入力してよい | 固有名詞を入れなければ入力してよい |
| 社内の業務文書(議事録、手順書、社内報告) | 入力してよい(社外秘の区分があるものは区分に従う) | 入れない |
| 顧客名・取引先名・担当者名 | 業務上必要な範囲で、社内ルールに従って入力 | 入れない |
| 見積もり・売上・原価などの数字 | 伏せて入れる(必要がなければ記号に置き換える) | 入れない |
| 個人情報(氏名と連絡先、社員の人事情報など) | 利用目的の範囲内か確認し、必要最小限に伏せて入れる。判断に迷うものは入れない | 入れない |
| 取引先から預かった資料(秘密保持契約の対象) | 契約で第三者のサービスへの入力が認められているか確認してから。確認できなければ入れない | 入れない |
| パスワード、アクセスキー、口座番号などの認証・決済情報 | 入れない | 入れない |
| 未公開の経営情報(M&A、人事異動、決算前の数字) | 入れない(経営層が個別に判断する場合を除く) | 入れない |
※この表は、社内ルールを作るときの出発点として示したひな形です。個人情報の扱いは個人情報保護委員会の注意喚起(令和5年6月2日)の考え方を踏まえ、利用目的の範囲と、入力データが機械学習に利用されないことの確認を前提にしています。業種ごとの法令や取引先との契約によって、より厳しい線引きが必要な場合があります。
決めること3:研修会社に渡す情報
上の2つが決まったら、研修会社に次の情報を渡します。これを渡さずに依頼すると、どの会社でも同じ一般的な研修になり、受講者が自分ごととして受け止めにくくなります。
- 社員が使うAI環境の名前と、使えるAIの種類
- 入力情報の線引き表(社外に出してよい範囲で)
- 受講者の部署と、各部署でAIに任せたい定型業務の例
- 演習の題材にしてよい書類の見本(伏せる加工をしたもの)
- 研修の後に社員が質問する社内の窓口
ここまでの要点:研修の中身は研修会社が作りますが、使ってよい環境と入力の線引きは会社にしか決められません。研修の前にこの2つを決めておくと、研修会社の選定の基準(自社の環境で演習できるか、線引き表を研修に組み込めるか)もはっきりします。
研修会社・サービスの選び方|7つの確認項目
研修会社を選ぶときは、実務に即したカリキュラムか、自社向けに調整できるか、講師の専門性、同業同規模の実績、研修後のフォローの5つを軸に、費用と助成金への対応を加えた7つで比べます。受講者数の多さや講座数の多さは、自社に合うかどうかとは別の話です。
- 1. 実務に即したカリキュラムか一般的な例題だけでなく、議事録、メール、報告書、表の整理など、受講者が翌日も触る業務の演習があるか。カリキュラムの見本と演習課題の例を見せてもらう。
- 2. 自社向けに内容を調整できるか自社の業務題材、社内ルール、使うAI環境に合わせて調整できるか。調整の範囲と、調整に必要な事前の打ち合わせの回数。
- 3. 講師の専門性講師本人が業務で生成AIを使っているか。担当する講師の経歴と、自社と近い業種での登壇経験。質問への回答を講師が直接行うか。
- 4. 同業・同規模での実績自社と同じくらいの規模、近い業種での実施例があるか。社名が出せない場合でも、規模・業種・実施内容を聞く。
- 5. 研修後のフォロー質問窓口、追加の勉強会、教材の閲覧期間、利用状況の振り返りの支援があるか。フォローの期間と費用。
- 6. 費用の単位と総額受けさせたい人数で総額を出してもらう。内容の調整費、交通費、フォローの費用を含めた金額で比べる。
- 7. 助成金への対応人材開発支援助成金を使う場合の書類を出してもらえるか。10時間以上などの時間要件を満たす構成にできるか。
比較表のひな形
候補を2〜3社に絞ったら、同じ項目で表にして比べます。空欄が残る項目は、問い合わせで聞く項目です。
| 確認項目 | 候補A | 候補B | 候補C |
|---|---|---|---|
| 形式(ライブ・eラーニング・ハンズオン) | |||
| 自社の業務題材での演習 | |||
| 演習に使うAI環境 | |||
| 社内ルールの組み込み | |||
| 講師の経歴・近い業種での登壇経験 | |||
| 同規模での実施例 | |||
| 研修後のフォローの内容と期間 | |||
| 受講人数での総額(税込) | |||
| 助成金の書類対応・時間要件 |
選定で迷ったときは、研修の翌日に受講者が何をするかを研修会社に聞いてみると違いが出ます。研修の中で終わる設計の会社と、翌日からの行動まで設計している会社では、答えの具体性が変わります。
研修で使い方を覚えても、会社のAIがなければ社員は個人のアカウントに戻りやすくなります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
独学・無料教材と有料研修の使い分け|怪しいセミナーの見分け方
生成AIの基本操作は独学でも身につけられますが、会社として同じルールで使える状態を作るには、独学だけでは足りません。独学で補えるのは個人の操作の習熟で、会社のルールや業務への当てはめ方は、社内で揃える場が必要になるためです。
独学・無料教材で足りること、足りないこと
| 学ぶ内容 | 独学・無料教材 | 有料研修・社内研修 |
|---|---|---|
| 基本操作、指示の書き方の基本 | 足りる。利用しているAIサービスの提供元が公開しているヘルプや使い方の案内から始められる | 苦手な人をまとめて底上げしたい場合に向く |
| 最新の機能の把握 | 足りる。提供元の公式の発表を追う | 研修の内容は作成時点の機能に基づくため、古くなることがある |
| 自社の業務への当てはめ | 個人差が大きい。得意な人だけが進む | 部署ごとの題材で演習でき、成果を共有できる |
| 会社の入力ルールの理解 | 身につかない(会社ごとに違うため) | 自社の線引き表を使って全員に同じ基準を教えられる |
| リスクへの対応の統一 | 人によって理解の深さがばらつく | 相談先や報告の手順まで揃えられる |
使い分けの目安は、個人の操作の習熟は独学、会社のルールと業務への当てはめは研修、です。独学を奨励する場合も、使ってよいAI環境と入力の線引きは研修や社内の説明会で全員に伝えておきます。無料で使えるサービスで独学する社員が、業務の書類を入力してしまうことを防ぐためです。
生成AIセミナーは怪しいのか|見分けるための6つの確認
生成AIのセミナーや講座がすべて怪しいわけではありませんが、個人向けの講座の中には、無料セミナーをきっかけに高額な講座へ誘導する形のものもあるため、申し込む前に確認する点があります。法人で研修を選ぶ場合も、担当者が個人で情報収集するときに同じ見方が役に立ちます。
- 稼げる・副業を前面に出していないか業務の効率化ではなく、AIで簡単に稼げる、副業で月◯万円といった訴求が中心のセミナーは、法人の研修の目的とは合いません。
- 無料セミナーの後に高額な講座を急いで勧めていないか今日だけの割引、残りわずかといった理由で、その場での申し込みを求める場合は、持ち帰って検討する。
- 運営会社と講師の実名が確認できるか会社名、所在地、講師の氏名と経歴が公式ページで確認できるか。講師の実績が、本人の発信以外でも確認できるか。
- 料金と解約の条件が申し込み前に分かるか総額、分割払いの手数料、途中解約の扱いが申し込み前に書面で示されるか。
- カリキュラムの中身が具体的か回数、時間、各回で扱う内容と演習が示されているか。成果の保証だけが強調されていないか。
- 情報の扱いを説明しているか入力してはいけない情報やリスクについて説明があるか。便利さだけを伝える講座は、業務利用の研修としては不十分です。
法人向けの研修を選ぶ場合は、この5点に加えて、前の章の7つの確認項目で比べます。研修会社の説明と契約書の内容が一致しているかも、申し込み前に確認します。
社員10〜200名の会社が研修を内製する場合の教材構成
社内に生成AIを業務で使いこなしている社員が1〜2名いれば、外部研修を使わずに内製することもできます。内製の利点は、自社の業務題材と社内ルールをそのまま教材にでき、研修後の質問にも同じ社員が答えられることです。一方で、講師役の社員の準備時間がかかり、リスクの説明が講師の知識の範囲に限られる点に注意します。
全4回・各90分の教材構成の例
次の構成は、一般社員向けに、1回90分を週1回、4週で行う想定の例です。合計6時間なので、助成金の時間要件(令和8年8月3日版のご案内では10時間以上)を満たすことを目的にした構成ではありません。内製の研修を助成金の対象にするには、講師の要件や対象外となる内容の定めがあり、時間を増やすだけでは足りません。助成金を使いたい場合は、計画を立てる前に労働局へ相談します。
| 回 | テーマ | 講義(目安) | 演習の題材 | 宿題(次回までに) |
|---|---|---|---|---|
| 第1回 | 生成AIの基本と社内ルール | 30分:生成AIとは何か、使ってよいAI環境、入力情報の線引き表、誤情報が出る理由 | 60分:会社のAI環境にログインし、公開済みの自社サイトの文章を要約させる。線引き表を使った仕分けクイズ(10問) | 自分の業務で時間がかかっている作業を3つ書き出す |
| 第2回 | 指示の出し方 | 20分:目的・前提・出力の形を伝える書き方、聞き直しのしかた | 70分:社内の会議メモ(伏せる加工済み)から議事録を作る。同じ依頼を3通りの指示で試して出力を比べる | 宿題で書き出した作業のうち1つをAIで試し、使った指示文を提出する |
| 第3回 | 自部署の業務に当てはめる | 15分:提出された指示文の良い例を紹介 | 75分:部署ごとに分かれ、定型業務(問い合わせへの返信文、週報、手順書の改訂など)で演習。出力を原文や数字と突き合わせて確認する | 部署で使える指示文を1つ完成させ、共有の場所に登録する |
| 第4回 | 確認と振り返り | 20分:誤情報の実例の見つけ方、社外に出す前の確認手順、相談窓口 | 70分:各部署が指示文を発表。うまくいかなかった例を持ち寄って改善する。今後30日の定着手順を説明 | 30日の定着手順の1週目に取り組む |
※回数と時間は想定の一例です。受講者が多い場合は、第1回と第2回を全体で行い、第3回と第4回を部署ごとに分けると、演習の質問に対応しやすくなります。
内製する場合に用意するもの
- 全員が同じ画面で演習できるAI環境受講者ごとに使うAIや設定が違うと、講師が画面の違いの説明に時間を取られます。会社が用意した環境で演習するのが前提です。
- 伏せる加工をした演習用の書類議事録、報告書、問い合わせ文など、固有名詞と数字を置き換えた見本を3〜5種類。
- 入力情報の線引き表と仕分けクイズ研修前に決めた線引き表を、そのまま教材に使います。
- 指示文を共有する場所部署ごとに使える指示文を登録し、誰でも使えるようにする場所。共有フォルダでも始められます。
- 質問を受ける窓口研修後の質問を受ける担当者と、連絡方法。
講師役の社員の負担の見積もり方
内製は外部に支払う費用がかからない代わりに、講師役の社員の時間を使います。教材の作成、演習用の書類の加工、各回の実施、宿題の確認、質問への対応を合計すると、実施時間の何倍もの時間になることがあります。講師役の社員の業務量を研修期間中は減らすことを、あらかじめ上長と決めておきます。講師役を1人に集中させず、部署の推進役と分担すると、研修後の定着の担い手も同時に育ちます。
効果を測る指標は研修の前に決める
研修の効果を測る指標は、研修を始める前に決め、研修前の数字を取っておきます。研修の後から指標を決めると、比べる元の数字がなく、効果があったのかを説明できないためです。
| 指標 | 測り方 | いつ測るか | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 利用率 | 会社のAI環境を月に1回以上使った社員の割合 | 研修前、研修後1か月、3か月 | 会社が利用状況を把握できるAI環境でないと測れない |
| 利用の頻度 | 1人あたりの週の利用日数 | 研修前、研修後1か月、3か月 | 一部の人だけが多く使っていないかも見る |
| 削減時間 | 対象業務(議事録、週報など)1件あたりの作業時間を、研修前後で本人に記録してもらう | 研修前の1週間、研修後1か月の1週間 | 自己申告なので、同じ業務・同じ記録方法で比べる |
| 指示文の共有数 | 共有の場所に登録された指示文の数と、使われた回数 | 研修後1か月、3か月 | 数だけでなく、実際に使われているかを見る |
| ルールの理解度 | 線引き表の仕分けクイズの正答率 | 研修の直後、3か月後 | 3か月後に下がっていれば、再度の説明が必要 |
| 受講者の満足度 | 研修直後のアンケート | 研修の直後 | 満足度が高くても利用が増えるとは限らない。利用率と合わせて見る |
社員10〜200名の会社では、すべての指標を毎月追う必要はありません。利用率と、対象業務を1〜2つに絞った削減時間の2つから始めると、測る手間をかけずに経営層へ説明できる数字がそろいます。利用率を測るには、誰がどのくらい使っているかを会社が把握できるAI環境が前提になる点は、研修の前に確認しておきます。
研修後のフォロー体制と、翌日から30日の定着手順
研修の成果は、研修の翌日から30日の間に、社員が自分の業務で使う機会を何回作れたかに大きく左右されます。研修の直後は意欲が高くても、職場に戻ると普段の業務に追われて使わなくなるため、週ごとにやることを決めて、推進役が声をかける仕組みにします。
30日の定着手順(週単位)
| 時期 | 受講者がやること | 推進役・管理職がやること | その週の終わりに確認すること |
|---|---|---|---|
| 翌日〜1週目 | 自分の業務で1つ、AIに任せる作業を決めて実際に試す。試した結果(使えた・使えなかった)を一言で報告する | 研修で使った指示文の見本を共有の場所に置く。報告のない人に個別に声をかける | 全受講者が1回以上使ったか |
| 2週目 | うまくいった指示文を共有の場所に登録する。うまくいかなかった例も1つ持ち寄る | 30分の共有会を開き、うまくいかなかった例を一緒に直す。入力の線引きで迷った質問を集める | 指示文が部署ごとに1つ以上登録されたか |
| 3週目 | 部署の定型業務(週報、議事録、問い合わせへの返信など)に当てはめ、作業時間を記録する | 部署で共通に使う指示文を決める。迷った質問への回答を線引き表に追記する | 対象業務の作業時間の記録が取れているか |
| 4週目 | 1か月の使い方を振り返り、続ける作業と、やめる作業を決める | 利用状況を確認し、使っていない人の理由を聞く。研修前の数字と比べて経営層に報告する | 利用率と削減時間を研修前と比べたか |
※週ごとの内容は、社員10〜200名の会社で進めやすい形として示した手順の例です。部署の繁忙期にあたる場合は、週の区切りをずらして調整してください。
フォロー体制で決めておくこと
- 質問の窓口:研修の後に出る質問の多くは、この情報を入れてよいか、という線引きの質問です。窓口を1か所に決め、回答を線引き表に追記して全員が見られるようにします
- 推進役の時間:推進役が声かけや共有会に使う時間を、業務として認めます。本来の業務の合間に任せると、2週目以降に止まりやすくなります
- 研修会社のフォロー:研修会社のフォロー(質問窓口、追加の勉強会など)を契約している場合は、30日の手順のどの週に使うかを先に決めておきます
- 3か月後の見直し:30日の手順の後、3か月後に利用率とルールの理解度をもう一度測り、必要なら短い追加研修を行います
入力ルールを社員の注意力だけに頼らず、AI環境側で守らせる
研修で教えた入力ルールは、社員の注意力だけでは守り続けられないため、会社のAI環境の設定と管理の仕組みで支える必要があります。研修の直後はルールを覚えていても、忙しい日や締め切り前には確認が抜けます。人は必ずどこかで間違えるという前提で、間違えても被害が広がりにくい環境を用意しておくことが、研修の効果を長持ちさせます。
研修だけで守らせる場合と、環境で支える場合の違い
| 研修で教えるルール | 社員の注意力だけに頼る場合 | AI環境の側で支える場合 |
|---|---|---|
| 入力データが学習に使われない環境で使う | 社員が各自のアカウントで学習利用の設定を確認し、切り替える。設定の漏れを会社は確認できない | 会社の環境で、入力データを学習に使わない設定を全員に一律に適用し、契約内容で確認する |
| 会社が認めたAIだけを使う | 使ってよいAIの一覧を配り、各自が守る | 会社の環境で使えるAIを管理者が選び、使わせないAIを止める |
| 誰がどう使っているかを振り返る | 社員の自己申告に頼る | 管理者が利用者・日時・使ったAIなどの利用状況を確認できる |
| 退職・異動のときに使えなくする | 個人アカウントの履歴は本人の手元に残る | 会社が配ったアカウントを管理者が停止する |
| よく使う指示文を共有する | 共有フォルダから各自がコピーして貼り付ける | よく使う指示と手順を社内限定で共有し、同じ手順で使える |
| 業務に応じてAIを使い分ける | 用途ごとに別々のサービスを契約し、社員が複数のアカウントを使い分ける | 1つの環境の中で複数のAIを切り替えて使える |
研修の前後に確認したい、AI環境の5つの条件
- 入力データを学習に使わない設定を確認できる契約内容や管理画面で、入力データが学習に使われない設定になっていることを会社が確認でき、社員ごとの設定操作に頼らないこと。
- 管理者が利用状況を把握できる誰が、いつ、どのAIを使ったかを管理者が確認できること。効果測定の利用率もここから取れます。
- 社員にアカウントを配り、止められる研修を受けた社員全員にアカウントを配れ、退職や異動のときに管理者が停止できること。
- 使わせるAIを会社が選べる使ってよいAIを管理者が選び、必要に応じて特定のAIの利用を止められること。
- 複数のAIを業務に応じて使い分けられる研修で教えた使い分けを、アカウントを増やさずに実践できること。
研修を先に行い、環境を後から考える順番だと、研修で学んだ社員が使える場所がないまま時間が過ぎ、個人アカウントでの利用が広がることがあります。研修と環境の準備は、同じ計画の中で日程を合わせて進めるのが確実です。
導入企業の事例と受講者の声で成果を確かめる方法
研修会社が示す導入企業の事例や受講者の声は、自社と条件が近いものだけを参考にし、数字の測り方まで確認してから判断材料にします。事例は研修会社が選んで載せているものなので、うまくいった例が中心になるためです。
事例を読むときに確認する5つの点
| 確認する点 | 聞き方の例 |
|---|---|
| 会社の規模と業種 | この事例の会社は何名規模で、どの業種ですか |
| 受講者の範囲 | 全社員ですか、特定の部署や希望者だけですか |
| 成果の数字の測り方 | 削減時間は、何の業務を、いつからいつまで、どう記録した数字ですか |
| 研修以外に行ったこと | 研修と同時に、AI環境の導入や社内ルールの整備を行っていましたか |
| 研修後の期間 | 成果は研修の直後の数字ですか、数か月後の数字ですか |
受講者の声は、研修の分かりやすさや講師の印象を知る材料にはなりますが、業務で使い続けているかは分かりません。受講者の声を見るときは、受講直後のアンケートか、研修から時間がたってからの声かを確認します。
自社で成果を記録する形の例
次は、研修後に社内で成果を記録する形を示した想定例です。実在する会社の事例ではありません。
たとえば、社員40名の会社(想定例)で、総務と営業事務の10名を対象に研修を行う場合、研修前に議事録の作成時間を1件ごとに記録しておき、研修後1か月の同じ業務の時間と比べます。あわせて、会社のAI環境を月に1回以上使った社員の割合を研修前後で比べ、指示文の共有数を記録します。このように、測る業務と期間を先に決めた記録であれば、次の年度に研修を広げるかどうかを、研修会社の事例ではなく自社の数字で判断できます。
問い合わせから研修実施・フォローまでの導入の流れ
生成AI研修の導入は、社内の準備、研修会社への問い合わせと選定、助成金の手続き、研修の実施、定着の5つの段階で進めます。助成金を使う場合は計画届の期限があるため、研修日から逆算して日程を組みます。
| 段階 | やること | 目安の時期 |
|---|---|---|
| 1. 社内の準備 | 研修の目的と対象者を決める。使ってよいAI環境と入力情報の線引きを決める。効果を測る指標を決め、研修前の数字を取り始める | 研修日の2〜3か月前 |
| 2. 問い合わせと選定 | 2〜3社に問い合わせ、同じ条件で見積もりを取る。7つの確認項目の比較表で比べる。カリキュラムと演習の題材を調整する | 研修日の2か月前 |
| 3. 助成金の手続き(使う場合) | 最新の支給要領を確認し、労働局に相談する。計画届を提出する(令和8年8月3日版のご案内では訓練開始日の6か月前から1か月前までの間) | 研修日の6か月前〜1か月前 |
| 4. 研修の実施 | 管理職向けで方針を伝え、一般社員向けを実施する。演習は会社のAI環境で行う。研修の最後に30日の定着手順を説明する | 研修日 |
| 5. 定着と振り返り | 30日の定着手順を進める。1か月後・3か月後に指標を測る。助成金を使う場合は支給申請を行う(令和8年8月3日版のご案内では訓練終了日の翌日から2か月以内) | 研修後1〜3か月 |
※時期は、社員10〜200名の会社で進める場合の目安です。助成金の期限は事業展開等リスキリング支援コースの令和8年8月3日版のご案内の記載です。申請前に最新の支給要領と都道府県労働局で確認してください。
社内の準備の段階で、AI環境をまだ用意していない場合は、研修会社の選定と並行して環境の検討を始めます。研修の日までに社員へアカウントを配っておけば、演習をそのまま業務の環境で行え、研修の翌日から定着の手順に入れます。生成AIの導入全体の進め方は中小企業のAI導入でも解説しています。
研修で教えた入力ルールを、全員が同じ環境で守れるように
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。入力データを学習に使わない設定を全モデルに標準で適用しており、管理者は管理者ダッシュボードから利用ログの確認、権限の設定、使わせるAIのON/OFFを行えます。よく使う指示と手順はカスタムプラスでBOTにして社内限定で共有でき、会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。料金は月額30,000円(税抜)からで、ユーザーごとの課金はありません(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
生成AI研修の相場はいくらですか?
生成AIセミナーは怪しいですか?
AIは独学で学べますか?
生成AI研修に助成金は使えますか?
研修の前に会社で決めておくべきことは何ですか?
研修を受けても社員が使わなくなるのはなぜですか?
全社員に研修を受けさせる必要はありますか?
まとめ
生成AI研修は、指示の出し方、業務への応用、リスクと社内ルールの3つを学ぶ研修で、選ぶときは講座の数や知名度より、自社の業務題材で演習できるか、研修後の定着まで設計されているかで判断します。対象者は経営層・管理職、一般の利用者、推進役、開発者に分け、形式はライブ研修、eラーニング、ハンズオン演習を目的に応じて組み合わせます。
費用は1名あたりの受講料ではなく、受けさせたい人数の総額で比べます。公開価格のある講座の例では、1名33,000円(税込)の講座に30名を送ると990,000円です。人材開発支援助成金は費用を抑える手段になりますが、助成率や要件は変わるため、研修会社を選ぶ段階で最新の支給要領と労働局で確認し、計画届の期限から日程を逆算します。
研修の成果を左右するのは、研修の前後です。研修の前に使ってよいAI環境と入力情報の線引きを決め、研修の翌日から30日は週ごとの定着手順で使う機会を作ります。そして、研修で教えた入力ルールを社員の注意力だけに任せず、入力データを学習に使わない設定、管理者による利用状況の把握、アカウントの配布と停止ができるAI環境で支えることが、研修を一度きりで終わらせないための条件になります。
法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。社内ルールの整備については生成AIの社内ガイドラインの作り方も参考になります。
