歯科医院のAI活用。説明文・予約・院内マニュアルと患者情報の線引き

歯科医院で使う生成AIとは、ChatGPTやClaudeのように文章を書くAIを、患者さん向けの説明文やリコールの文面、求人票、院内マニュアルの下書きに使うことです。患者さんの氏名・生年月日・カルテ番号・X線画像は入れず、治療の話は誰のことか分からない形にしてから入れる、と決めてしまえば、受付から院長まで毎日の文書づくりに使うことが出来ます。診断や治療方針を決めるのは歯科医師で、AIの出力をそのまま患者さんに渡さないことが前提となります。医科を含めた全体の話は医療AIの全体像と導入の注意点にまとめていますので、併せてご覧ください。

画像診断を支援するAIと、文書を書く生成AIは別物です

歯科のAIと呼ばれるものには、診断や治療計画を助ける専用のAIと、文章を書く汎用の生成AIの2種類があり、使い方も守る決まりも分かれています。この2つを混ぜて考えると、ChatGPTにX線画像を見せて所見を聞く、といった危うい使い方に流れてしまいます。

画像診断支援・CAD/CAM・矯正の治療計画を支援するAIと、最終判断は歯科医師

画像診断を支援するAIは、X線画像などを解析して、歯科医師が判断するための手がかりを示す仕組みになります。大阪大学歯学部附属病院も、2026年1月27日からX線画像をAIが解析して抜歯手術の難易度を助言する仕組みを実証として始めると、同日のプレスリリースで発表しており、詳しくは後の事例の節で紹介しています。診断を支援するAIは、診療のために作られた専用の仕組みで、汎用の生成AIとは成り立ちから違います。汎用の生成AIに、X線画像や口腔内写真を読ませて診断の手がかりにする使い方はやめましょう。CAD/CAMによる補綴物の設計や矯正の治療計画を支援するAIも、機器やソフトに組み込まれた専用の仕組みで、入れるかどうかは提供元の説明を聞いたうえで院長が決める話でしょう。

文書を書く汎用の生成AI

このページで厚く扱うのは、受付やスタッフが毎日使える汎用の生成AIのほうです。役に立つのは、毎回ゼロから書いている院内の文書になります。抜歯後の注意書き、リコールのはがき、求人票、滅菌の手順書のように、型が決まっていて言い回しに時間がかかる文書から始めると、手応えを感じやすいでしょう。どれも患者さん個人の情報を入れなくても書ける文書なので、最初の一歩として選びやすいはずです。

患者情報をどこまで入れてよいか(線引き表)

生成AIに入れてよいのは、誰の話か分からない形にした情報と、医院の側の情報だけです。次の表は、医院で契約して入力が学習に使われない設定を確かめた環境でも、同じように守る目安になります。

情報入れてよいか理由と扱い方
患者さんの氏名・ふりがな×入れない本人が特定される個人情報で、説明文やはがきの下書きには要らない。宛名は〔お名前〕の空欄にして、AIの外で書き込む
生年月日・住所・電話番号×入れない氏名と同じく本人が特定される。年齢が必要なときも「60代」のように丸める
カルテ番号・診察券番号×入れない院内の記録と突き合わせると本人が分かる番号のため
X線画像・口腔内写真×入れない診断に使う診療の記録。汎用の生成AIで読む理由がなく、診断に使うAIは別の専用の仕組み
病歴・服薬・アレルギー×入れない病歴は個人情報保護法の要配慮個人情報(第2条第3項)に当たる
予約の日時と氏名の組み合わせ×入れない診療が行われたことも施行令で要配慮個人情報に当たる。予約の調整は予約システムの中で行う
紹介状・技工指示書の本文×入れない診療内容そのもの。言い回しを整えたいときは、患者情報を消した定型文だけを入れる
匿名化した症例(年代・処置名・一般的な経過)△形を変えれば可氏名・日付・番号・珍しい経過を外し、誰の話か分からない形にしてから入れる。迷う症例は入れない
スタッフの情報(氏名・シフト・評価)△形を変えれば可求人票やシフト表の型づくりは名前を外して使う。評価や健康のことは入れない
予約の空き枠・診療時間・休診日○入れてよい医院の情報で、患者さん個人に結びつかない
医院の手順書・料金表・院内掲示の文○入れてよい医院がもともと決めている内容。出力は必ず人が読み直す

厚生労働省の安全管理ガイドラインのQ&Aは、条件を満たせば医療情報を生成AIに入れる道を示していますが、説明文やはがきの下書きには、そもそも患者さん個人の情報は要りません。表の×の行は、医院で契約した環境に変えても入れない、と院内で決めてしまうのが分かりやすいでしょう。迷ったときは、その情報を消しても文書が書けるかを考えてみてください。書けるなら消してから入れ、書けないなら院長に相談する、という順番で十分です。

院内の誰が、どの決まりで秘密を守るか

歯科医院では、資格ごとの法律と、医院そのものにかかる個人情報保護法、それに医院の決めごとの3つで、患者さんの情報を守る形になります。

  • 歯科衛生士と歯科技工士は、それぞれの資格の法律で秘密を守る義務を負う
  • 院長・歯科医師を含め、医院全体は個人情報保護法にしたがって患者さんの情報を扱う
  • 受付や歯科助手には、就業規則や入職時の誓約書で秘密を守ることを医院として決めておく

歯科衛生士と歯科技工士の守秘義務

歯科衛生士法第13条の6は「歯科衛生士は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない」と定め、歯科衛生士でなくなった後も同じ義務が続きます。歯科技工士法第20条の2も同じ形の条文で、違反には第31条で50万円以下の罰金が定められています。院長・歯科医師、受付や歯科助手を含め、医院で働く全員が、次に挙げる個人情報保護法の義務を負う医院の一員として患者さんの情報を扱います。

医院としての個人情報保護法

個人情報保護法では、病歴は要配慮個人情報に当たり(第2条第3項)、施行令では診療が行われたことも同じ扱いとなります。本人の同意なく第三者に渡すことは第27条第1項で原則として禁じられ、外国にある第三者への提供には第28条で別の決まりがあります。業務の委託に伴って渡す場合は、第27条第5項第1号により第三者への提供には当たらないとされています。

個人情報保護委員会は令和5年6月2日の注意喚起で、個人データを含む指示文を入れるときは、提供元がそのデータを機械学習に利用しないことなどを十分に確認するよう求めました。この注意喚起は、生成AIの利用そのものを禁じた文書ではありません。入れる前に提供元の扱いを確かめる、という順番を院内の決まりにしておきましょう。

安全管理ガイドライン第7.0版は歯科診療所も対象

厚生労働省の安全管理ガイドラインは、2026年10月16日時点では第7.0版(令和8年6月)が最新で、概説編は対象の医療機関等として歯科診療所をはっきり挙げています。同じガイドラインのQ&A(令和8年9月)の企画管理編Q18は、生成AIに医療情報を入れる場合について答えたものです。原則は国内法の及ぶサーバーで、例外として「AIの学習等のために保存されないこと」が契約などで約束されていれば、国内法の適用を受けないサーバーも使える、という内容になります。確かめる相手は学習と保存の扱いを決めた契約や規約で、スタッフ個人の無料アカウントでは、そこを医院が管理することが出来ません。

歯科の団体の生成AIの指針

日本歯科医師会・日本歯科医学会・日本歯科人工知能研究会による生成AIの利用の指針は、2026年10月16日の確認時点では見当たりませんでした。医療全般では、厚生労働科学研究の研究班がまとめたHAIPの生成AI利用ガイドライン(第2版)があり、国の指針ではなく研究班の見解という位置づけになります。この中では、私的な利用は参考情報の収集に限るという考え方が示されています。

※出典(2026年10月16日に原文を確認):歯科衛生士法(https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/323AC0000000204 )、歯科技工士法(https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/330AC0000000168 )、個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/ )、同「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月14日、令和8年4月一部改正・https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/ )、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html ・概説編 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001716290.pdf ・Q&A https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001752355.pdf )、HAIP「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン(第2版)」2025年7月11日(https://haip-cip.org/assets/documents/nr_20241002_02.pdf )

患者さん向けの説明文(抜歯後・根管治療・インプラント・矯正)

患者さん向けの説明文は、院長がふだん口頭で伝えている内容をAIに渡し、読みやすい紙に整えてもらう使い方がいちばん手堅い形になります。AIに医学的な中身を考えさせるのではなく、医院の決まりを言い換える役に絞るのがコツです。

抜歯後の過ごし方の紙

入れる材料は、院長が決めている抜歯後の注意点の箇条書きと、医院の電話番号の2つだけで足ります。患者さんの名前や抜いた歯の位置は入れません。次の指示文は、そのまま貼って使うことが出来ます。

あなたは歯科医院の受付で、患者さんに渡す説明の紙を作る担当です。
次の【院の決まり】だけを使って、抜歯をした日にお渡しする「抜歯のあとの過ごし方」の紙を作ってください。

【条件】
・患者さんの名前や日付は書かず、どの患者さんにも渡せる文にする
・中学生でも読める言葉にし、専門用語には短い言い換えを添える
・【院の決まり】にないこと(薬の名前や量、治るまでの日数など)は書き足さない
・「必ず治ります」「痛みは出ません」のような言い切りはしない
・項目ごとに小見出しを付け、A4の半分に収まる長さにする
・最後に「気になる症状があるときは、我慢せずに医院へお電話ください」と〔電話番号〕の欄を入れる

【院の決まり】
(院長が決めた注意点を、ふだんの言葉のまま箇条書きで貼る。食事・うがい・入浴・お薬・出血したときの連絡の目安など)

出てくる文は、たとえば次のような形です。中身は医院の決まりがそのまま言い換えられるだけで、AIが付け足した部分がないかを見るのが確認の中心になります。

抜歯のあとの過ごし方

本日はお疲れさまでした。抜いたところが落ち着くまでの間、次の点に気をつけてお過ごしください。

■ お食事について
〔院の決まりの内容が、やさしい言葉で入ります〕

■ うがい・歯みがきについて
〔院の決まりの内容が入ります〕

■ お薬について
お渡ししたお薬は、説明のとおりにお飲みください。

気になる症状があるときや、ご不安なことがあるときは、我慢せずに医院へお電話ください。〔電話番号〕
※この紙は一般的なご案内です。お一人おひとりの状態に合わせた注意は、歯科医師からお伝えします。

(この文は歯科医師が内容を確認してからお渡しします)

人が必ず確かめるのは、院の決まりにない注意や数字が混ざっていないか、言い切りの表現が残っていないかの2点です。歯科医師が読んで内容を確かめてから印刷し、版を決めたら同じ紙を使い回す形にしましょう。

根管治療・インプラント・矯正の「治療の流れ」の紙

治療の流れの説明は、治療名と、院長がふだん口頭で伝えている説明のメモを材料にします。通院の回数や期間、起こりうることは医院や患者さんごとに違うので、メモにないところはAIに空欄のまま残させるのが安全です。

あなたは歯科医院で、患者さん向けの説明資料を作る担当です。
次の【治療名】について、初めて説明を受ける患者さんが読む「治療の流れ」の紙を作ってください。

【条件】
・見出しは「どんな治療か」「治療の流れ」「起こりうること(リスク・副作用)」「通院中にお願いしたいこと」「よくあるご質問」の5つにする
・どの見出しも【院の説明メモ】にある内容だけを使う。メモにない見出しの中身は書かず、〔歯科医師が記入〕と空欄にする
・書かれていない効果・期間・費用・成功率は書き足さない
・「痛くない」「一生もつ」「必ず」などの言い切りは使わない
・通院の回数や期間は〔 〕の空欄のままにし、歯科医師が書き込めるようにする
・よくあるご質問は、【院の説明メモ】から答えられるものだけを3つ作る
・患者さんの名前や症状は入れない
・最後に「詳しくは歯科医師がご説明します。ご不明な点は遠慮なくお尋ねください」と入れる

【治療名】根管治療(歯の根の治療)
【院の説明メモ】
(院長がふだん口頭で説明している内容を箇条書きで貼る)

インプラントや矯正の紙を作るときは、【治療名】と【院の説明メモ】を差し替えるだけで同じ指示文が使えます。費用の説明を入れるなら、院の料金表の文をそのまま貼り、AIに金額を書かせないようにしてください。

根管治療(歯の根の治療)の流れ

■ どんな治療か
〔院の説明メモの内容が入ります〕

■ 治療の流れ
1. 〔院の説明メモの内容〕
2. 〔院の説明メモの内容〕
通院の回数の目安:〔 〕回(歯科医師が記入します)

■ 起こりうること(リスク・副作用)
〔歯科医師が記入〕

■ 通院中にお願いしたいこと
〔院の説明メモの内容〕

詳しくは歯科医師がご説明します。ご不明な点は遠慮なくお尋ねください。

(この文は歯科医師が内容を確認してからお渡しします)

確かめる点は、治療の説明が院長の考えとずれていないか、空欄が勝手に埋められていないか、よくある質問の答えがメモの範囲に収まっているかの3つになります。インプラント・矯正の紙は同意書の代わりにはならず、同意書は別に用意します。費用や期間の質問が多い治療なので、3つ目の確認は特に丁寧に読んでおきたいところです。

今使っている紙を、英語版・やさしい日本語版・保護者向け版に作り分ける

すでに院長が確かめた紙があるなら、中身を変えずに読み手に合わせて書き直させる使い方も手軽に出来ます。材料は今使っている紙の文だけで、患者さんの情報は要りません。

次の【今使っている紙】の中身を変えずに、〔英語版/やさしい日本語版/小さなお子さんの保護者向け版〕に書き直してください。

【条件】
・注意点の数と順番は変えない。新しい注意や数字を足さない
・やさしい日本語版は、1文を短くし、漢字にふりがなを付ける
・保護者向け版は、各項目の注意を、お子さんに伝える言い方に言い換えた例を1つ添える(元の紙にない注意は入れない)
・英語版は、医院名・電話番号・〔 〕の空欄をそのまま残す
・訳し方に迷った言葉は、最後に一覧にして「要確認」と書く

【今使っている紙】
(院長が確認済みの紙の文を貼る)

書き直した版も、元の紙と並べて歯科医師が読み、意味が変わっていないかを確かめてから使ってください。英語版は、英語の分かるスタッフがいれば一緒に読んでもらうと安心できます。

保険診療で渡す文書のひな形

保険診療で患者さんに渡す文書のひな形づくりにも生成AIは使えますが、任せるのは説明の言い回しの候補までにとどめます。患者さんごとの所見は、歯科医師や歯科衛生士が自分で書く部分になります。算定の要件は診療報酬の通知で確かめ、ひな形には患者さんごとに書き足す欄を残しておくと安心です。

説明文を急いで作るとき、私用アカウントから患者情報が入る経路

院内で起きやすいのは、スタッフが自分のスマートフォンの無料アカウントで、説明文やLINEの返信を手早く作ろうとする場面になります。急いでいるときほど、患者さんの名前や治療の経過をそのまま貼ってしまいがちです。私用アカウントでは、入力が学習に使われる設定のままかどうかも、誰がいつ何を入れたかも、院長や事務長からは見えないままとなってしまいます。使ってはいけないと伝えるだけでは止まりにくいので、医院として使ってよい環境を1つ用意し、そこでだけ使う形に寄せていきましょう。こうした見えない利用の広がり方は野良AI(シャドーAI)の記事でも取り上げています。

私用アカウントに患者情報が入る前に、医院のAI環境を1つにそろえる

受付・歯科助手・歯科衛生士・院長が、同じ医院の環境で下書きを作れるようにする方法もあります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

リコール(定期検診)のはがき・LINE文面とキャンセル連絡

リコールは、多くの医院では会計のときに次の予約を取り、はがきやLINEは、そこで予約が取れなかった方に向けた連絡になります。宛名を空欄にした型を一度作ってしまえば、生成AIに患者さん個人の情報を渡さずに回せる業務です。誰にいつ送るかを選ぶのは予約システムや電子カルテの側の仕事で、患者さんの一覧を生成AIに渡して選ばせる使い方はしません。

定期検診のお知らせ(はがき・LINE)

材料は、予約の方法(電話番号・Web予約の案内・受付時間)だけです。前回の治療内容は、はがきが家族の目に触れることも考えて書かせない形にしています。

あなたは歯科医院の受付担当です。
定期検診(リコール)のお知らせを、はがき用とLINE用の2通り作ってください。

【条件】
・宛名や患者さんの名前は入れず、「〔お名前〕様」と空欄にする
・前回の来院日や治療内容は書かない(はがきは家族の目にも触れるため)
・はがきは150字前後、LINEは80字前後にする
・押しつけがましくせず、「ご都合のよいときに」という調子にする
・予約の方法は【予約の方法】の内容だけを書く
・「放っておくと悪くなります」のように、不安をあおる書き方はしない
・はがきとLINEで、それぞれ言い回しの違う案を2つずつ出す

【予約の方法】
(お電話〔電話番号〕/Web予約〔URL〕/受付時間〔 〕を貼る)
(LINE用の例)
〔お名前〕様
〔医院名〕です。前回の定期検診から少し時間がたちましたので、ご案内をお送りしました。ご都合のよいときに、お電話かWeb予約でお申し込みください。〔Web予約のURL〕

(この文は院長または事務長が確認してから送ります)

キャンセルのあとの連絡

キャンセルのあとの連絡は、受付がいちばん言葉選びに迷う文面かもしれません。事前に連絡があった方と、連絡なく来院されなかった方で調子を変えられるよう、選んで使える型にしておくと、その場で慌てずに済むでしょう。

あなたは歯科医院の受付担当です。
〔事前に連絡があった方/連絡なく来院されなかった方〕に、次の予約をお願いするLINEの文を3通り作ってください。

【条件】
・責める言い方をしない。キャンセルの理由も聞かない
・キャンセル料には触れない
・病名や治療名は書かない
・「ご都合のよい日時をお知らせください」で終える
・1通目は60字以内、2通目は100字以内にする
・3通目は治療の途中の方向けに、「歯科医師から改めてご説明したいことがございます」という一文を添えた形にする
・連絡なく来院されなかった方には、「何かございましたか」と体調を気づかう一文を入れる
・患者さんの名前は「〔お名前〕様」と空欄にする

出てきた文で確かめるのは、病名や治療名が入っていないか、医院の受付時間と食い違っていないかの2点です。治療の途中の方向けの文は、歯科医師が送ってよいか判断してから使うようにしましょう。

リコールの対象者の抽出や患者データの分析で集患につなげる機能は、予約システムや電子カルテの側にあるものです。導入を考えるときは、その機能が患者さんの情報をどこに保存し、学習に使うかどうかを提供元に確かめてみてください。

受付・予約・問診の自動化と、カルテ・診療記録の自動化

受付・予約・問診や、カルテの記録を自動化するAIは、患者さんの情報をそのまま扱う専用のサービスで、前の節までの汎用の生成AIとは確認の重さが違います。どの仕組みでも、提供元に聞くのは保存場所・保存期間・学習に使うかの3点になります。

受付・予約・問診の自動化

医科では、東京都の事業の報告書で賛育会病院がAI問診を入れ、紙の問診の記入が平均11分からAI問診で平均6〜7分になったと報告しています(各15件の調べで、病院自身の報告です)。同じ報告には、高齢の方は紙より時間がかかる場合があるというつまずきも書かれているので、患者さんの年齢層と、受付が操作を手伝う時間まで見込んでおくと安心できます。

電話が重なる時間帯の自動応答

診療の始まりや昼休み明けのように電話が重なる時間帯は、自動応答に任せる範囲を、予約の変更と診療時間の案内だけに絞る使い方が考えられます。痛みや腫れの相談は、自動応答で答えさせず、受付か歯科医師につなぐ形にしておきましょう。入れる前には、録音や文字にした内容の保存場所・保存期間・学習に使うかを提供元に聞いてみてください。

予約前日のリマインドは予約システムの機能で

予約の前日に送るお知らせは、患者さんの氏名と予約の日時を組み合わせて扱うため、生成AIではなく予約システムの機能で送るのが筋になります。生成AIに頼むのは、お知らせの文面の型づくりまでです。予約システムを選ぶときも、保存場所・保存期間・学習に使うかの3点は同じように確かめておきます。

カルテ・診療記録の自動化(歯周ポケット検査などの音声入力・要約)

歯周ポケット検査は、数値を読み上げる人と記録する人の2人作業になりがちです。音声入力は、これを1人で進めやすくする仕組みになります。医科では、同じ東京都の事業で森山脳神経センター病院が、音声入力で記録の作成が1件7〜10分から2〜6分程度になったと報告しています(病院自身の報告です)。歯科医院で検討するなら、保存場所・保存期間・学習に使うかの3点に加えて、電子カルテとの間で手作業の写し替えが残らないかも聞いておくと、入れたあとで困りにくいでしょう。

※東京都「医療機関におけるAI技術活用促進事業」令和6年度 事業成果報告書(https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/jigyo/ai_katuyou )。数値はいずれも医科の病院による報告で、第三者の検証ではありません。2026年10月16日確認。

求人票(歯科衛生士・歯科助手)

求人票は、医院の条件を渡すだけで患者さんの情報を一切使わずに作れるので、生成AIを試す最初の文書に向いた業務です。医療広告等ガイドラインは、職員の採用を目的とした求人広告を、受診を誘うものではないため指針の対象となる医療広告ではないと整理しています。

あなたは歯科医院の事務長の補佐です。
次の【募集の条件】をもとに、求人サイトに載せる歯科衛生士の求人票を作ってください。読むのは歯科衛生士なので、SRP・メンテナンス・TBIなどの言葉は言い換えずにそのまま使ってください。

【条件】
・担当制かどうか、1枠の時間、アシストや滅菌を誰が担当するかは、【募集の条件】にあるとおりに書く。なければ〔要確認〕と書く
・【募集の条件】にない待遇(賞与の額、残業の有無など)は書き足さず、分からない項目は〔要確認〕と書く
・「アットホーム」「やりがい」のような決まり文句は使わず、1日の仕事の流れが浮かぶように書く
・見出しは「仕事の内容」「1日の流れ」「勤務時間と休み」「給与と待遇」「医院の方針」「応募の方法」にする
・今いるスタッフの名前や年齢は書かない
・性別や年齢で応募できる人を限る書き方はしない
・最後に、求人票とは別に、面接で聞かれそうな質問を5つ挙げる

【募集の条件】
(勤務時間・休診日・給与の範囲・担当制かどうか・1枠の時間・アシストや滅菌の担当・院の方針を箇条書きで貼る)
■ 仕事の内容
メンテナンスの患者さんを中心に、SRP・TBIを担当していただきます。担当制:〔要確認〕/1枠の時間:〔 〕分

■ 1日の流れ
〔診療開始の時刻〕朝の準備と器具の確認 → 午前の診療 → 昼休み〔 〕分 → 午後の診療 → 片付けと翌日の準備
アシスト・滅菌の担当:〔要確認〕

■ 給与と待遇
月給〔 〕円〜〔 〕円(経験により決定)/賞与〔要確認〕

(この文は院長または事務長が条件と照らし合わせてから掲載します)

歯科助手の求人を作るときは、1行目の「歯科衛生士」と【募集の条件】を差し替えてください。確かめるのは、担当制や1枠の時間が実際の働き方と合っているか、〔要確認〕が埋められないまま載っていないかの2点になります。求人票に書く労働条件は、ハローワークや求人サイトの記入例と照らして、事務長が最後に確認しましょう。

院内マニュアル(滅菌・器具の片付け・受付の電話対応)と新人研修

院内マニュアルは、ベテランの頭の中にある手順を、新人が1人で読める紙に直す作業で、生成AIに向いた仕事です。AIに手順そのものを考えさせると、医院で使っていない薬剤や時間が書き足されることがあるので、今のやり方のメモを材料に整えさせる形に限ってください。

滅菌・器具の片付けの手順書

材料は、使った器具を片付けてから洗浄・滅菌・保管するまでの流れを、滅菌を担当している歯科助手か歯科衛生士がふだんの言葉で書いたメモです。音声で話した内容を文字にしたものでも十分使えます。

あなたは歯科医院の院内マニュアルを整える担当です。
次の【今のやり方のメモ】を、新人スタッフが1人で読んで手順を追える手順書に整えてください。

【条件】
・【今のやり方のメモ】にない手順、薬剤名、時間、温度は書き足さない。足りない所は〔院長に確認〕と書く
・手順は番号付きにし、1つの番号に1つの動作だけを書く
・手袋や保護具をつける場面、手を洗う場面、針や刃物を分ける場面は、メモにあるとおりに目立つ形で書く
・器具や機械の名前は、院で呼んでいる名前のままにする
・最後に「迷ったときは自己判断せず、滅菌の担当者に聞く」と入れる
・手順書の後ろに、新人が覚えたかを確かめる○×問題を5問付ける

【今のやり方のメモ】
(滅菌を担当している人が書いたメモを貼る)
使った器具の片付け(新人向け)

1. 手袋と保護具をつける ※必ず
2. 針・刃物など尖った物は、チェアサイドで専用の容器に分ける ※必ず
3. 使った器具をトレーごと洗い場へ運ぶ
4. 〔メモの内容〕
5. 〔院長に確認〕

迷ったときは自己判断せず、滅菌の担当者に聞く

(この手順書は院長と滅菌の担当者が確認してから掲示します)

確かめるのは、薬剤名・時間・温度などの数字がメモと一字一句同じか、〔院長に確認〕の箇所が埋まっているかの2点です。感染対策の手順は、AIが整えた紙をそのまま貼らず、院長と担当者が読み合わせてから掲示してください。院内感染対策として医院で決めている指針や研修の内容と食い違わないよう、指針と並べて読み合わせる形にしましょう。

受付の電話対応と新人研修

受付の電話対応は、場面ごとの台本と、覚えたかを確かめる問題をまとめて作ると、新人研修の資料にそのまま使えます。痛みや腫れ、歯が折れたなどの急ぎの電話で受付が案内してよい範囲と、歯科医師に確認して折り返す症状の線を、医院の決まりとして先に書き出しておく必要があります。

あなたは歯科医院の受付の教育担当です。
次の【電話対応の決まり】から、新人の受付スタッフ向けに、①電話対応の台本と、②理解を確かめる問題5問を作ってください。

【条件】
・①は「初めての予約」「予約を変えたい」「痛みや腫れがあって今日診てほしい」「歯が折れた・抜けた」「料金を聞きたい」の5つの場面ごとに作る
・「痛みや腫れ」「歯が折れた・抜けた」は【電話対応の決まり】にある範囲で空き時間を案内し、決まりにない症状(顔の腫れ・熱・口が開かないなど)は、いつから・どこが・連絡先を伺ってから、歯科医師に確認して折り返す台本にする
・受付が病名を言ったり、治療が要るかどうかを答えたりする台本にはしない
・②は○×で答えられる問題にし、答えと理由を下に付ける
・患者さんの実名は例にも使わない

【電話対応の決まり】
(院で決めている受け答え・取り次ぎの基準を箇条書きで貼る)
(場面:歯が折れた・抜けた)
受付:お電話ありがとうございます。〔医院名〕でございます。
受付:歯が折れてしまったのですね。いつ、どのように折れたか伺えますか。〔決まりにあれば:抜けた歯の持ち方のご案内〕確認して、折り返しお電話いたします。
※受付からは、病名や治療が必要かどうかはお答えしません。

(この台本は院長が確認してから研修に使います)

確かめるのは、取り次ぎの基準が医院の決まりと同じになっているか、○×問題の答えが正しいかの2点になります。新人が入るたびに同じ資料で研修できるので、作った台本は院内の共有フォルダに置いておきましょう。

医院ホームページの文面と医療広告等ガイドラインの点検

医院のホームページは、平成29年の医療法の改正により、ほかの広告と同じく医療広告等ガイドラインの規制の対象になっています。生成AIはホームページの文を書くより、今の文に禁止される表現が混ざっていないかを下見させる使い方のほうが安心です。

ガイドラインが禁止する広告には、内容が虚偽にわたる広告、ほかの医院と比べて優良である旨の広告、誇大な広告、患者さんの主観による治療の内容や効果の体験談、誤認させるおそれがある治療の前後の写真などがあります。具体例として「絶対安全な手術です!」や「どんなに難しい症例でも必ず成功します」は虚偽広告として扱われ、「日本一」なども比較優良広告として認められないと示されています。AIに書かせた紹介文には、こうした言い切りが入りやすいので、載せる前に必ず点検しましょう。

インプラント・矯正・ホワイトニングのような自由診療を載せるときは、保険が使えない旨(自由診療である旨)と標準的な費用を併記するのが前提です。麻酔管理料などが別にかかる場合は、それを含めた総額の目安も分かりやすく書くよう示されています。そのうえでホームページで詳しく紹介する(限定解除の)場合は、治療内容・治療期間と回数・主なリスクや副作用も分かりやすく載せることが条件になります。費用やリスクを、リンクを張った先のページだけに置いたり、利点の説明と比べて極端に小さな文字にしたりする形は避けるよう書かれています。専門性の資格で広告してよいのは、日本歯科専門医機構が認定する資格(基本的な診療領域のもの)と、届出済みの団体の資格に限られ、「厚生労働省認定○○専門医」のような表記は虚偽広告として扱われます。団体名のない「○○専門医」の表記も誇大広告に当たるとされ、それ以外の「○○認定医」などの表記も載せる前に確かめておくのが無難です。

あなたは歯科医院のホームページの文章を点検する担当です。
次の【点検する文章】を読み、厚生労働省の医療広告等ガイドラインで禁止されている広告に当たるおそれがある表現や、記載が足りない所を抜き出してください。

【点検の観点】
・内容が虚偽にわたるもの(例:「絶対安全」「必ず成功」)
・ほかの医院と比べて優れていると示すもの(例:「地域でいちばん」「日本一」)
・誇大なもの
・患者さんの主観による、治療の内容や効果の体験談
・治療の前と後の写真など、患者さんを誤認させるおそれがあるもの
・自由診療(インプラント・矯正・ホワイトニングなど)を載せる文に、保険が使えない旨(「自由診療」「全額自己負担」など)と標準的な費用の併記があるか
・自由診療を詳しく紹介する文に、通常必要とされる治療内容・標準的な費用・治療期間と回数・主なリスクや副作用が書かれているか(なければ「記載が足りない」と挙げる)
・広告してよい専門性の資格(日本歯科専門医機構の認定、届出済み団体の資格)以外の「〇〇認定医」などの表記がないか。「厚生労働省認定〇〇専門医」は虚偽広告、団体名のない「〇〇専門医」は誇大広告
・「インプラント科」「審美歯科」など、法令に根拠のない診療科名の表記がないか

【出し方】
・表にして「該当しそうな文」「当たりそうな項目」「言い換えの案」を並べる
・判断に迷うものは「要確認」とし、言い切らない
・言い換えの案では、新しい効果や数字を足さない

【点検する文章】
(ホームページの文章を貼る。体験談に患者さんの名前があれば消してから貼る)
該当しそうな文:痛みのない治療を必ずお約束します
当たりそうな項目:虚偽広告(要確認)
言い換えの案:痛みをできるだけ抑えられるよう、麻酔の方法を歯科医師がご説明します

該当しそうな文:(インプラントの紹介で)費用は〔 〕円から
当たりそうな項目:記載が足りない(自由診療である旨の併記がない。詳しく紹介するページなら、治療期間と回数、主なリスクや副作用の記載もない)
言い換えの案:〔歯科医師が記入〕

(この点検結果は院長がガイドラインの本文と照らして最終判断します)

院内掲示や院内で配るパンフレットは、受け手がすでに受診している患者さんに限られるため、ガイドラインでは受診を誘う広告ではなく情報提供や広報と整理されています。とはいえ前の節の説明文も、言い切りを避ける点は同じ基準で読んでおくと安心できます。医療広告等ガイドラインの最新版は令和8年3月30日最終改正の版なので、点検の前に厚生労働省の医療広告規制のページで開いてみてください。

Googleの口コミへの返信

口コミへの返信は、書いた方が患者さんかどうかを認めるだけで、受診の事実を明かすことになりかねない文面です。返信の型を作らせるときは、治療の中身に触れない条件をはっきり書いておきます。

あなたは歯科医院の受付担当です。
次の【口コミの文】に、医院の公式アカウントから返す文を、高い評価向けと低い評価向けに1つずつ作ってください。

【条件】
・治療の内容、来院した日、その方が患者であることを認める言い方は書かない
・「ご来院」「ご通院」「治療」「診察」の言葉は使わない
・低い評価にも反論しない。受け止める一文と、医院の連絡先〔電話番号〕だけにする
・高い評価には、お礼の一文と、今後もよい医院を目指すという一文だけにする
・どちらも80字以内にする

【口コミの文】
(口コミの本文を貼る。投稿者の名前は貼らない)
(高い評価への返信の例)
温かいお言葉をありがとうございます。これからも、地域の皆さまに安心していただける医院を目指してまいります。

(この文は院長または事務長が確認してから載せます)

返信を載せる前に、院長か事務長が読み、受診の事実を認める言い方が混ざっていないかを確かめましょう。

※厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」令和8年3月30日最終改正(https://www.mhlw.go.jp/content/001683594.pdf ・掲載ページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html )。2026年10月16日確認。

歯科での公表事例(画像解析・来院前相談)

歯科でAIを使った実名の発表として、ここでは次の2件を取り上げます。どちらも当事者や提供元による発表で、第三者が検証したものではありません。

大阪大学歯学部附属病院(画像解析AIとWeb予約)

大阪大学歯学部附属病院は、地域の歯科医師会や開業の歯科医師と連携した歯科医療のコミュニティを2025年10月1日から始めたとしています。そのうえで、2026年1月27日から、X線画像をAIが解析して抜歯手術の難易度を助言する仕組み(下顎管と智歯の接触推定AI)を実証として始めると、同日のプレスリリースで発表しました。かかりつけの歯科医師を通じて大学病院の診療予約をWebで取れる仕組みも、同じ取り組みの一部となります。対象は吹田・豊中・茨木・池田(能勢を含む)・箕面(豊能を含む)・摂津・高槻の近隣7歯科医師会で、参画する歯科診療所は211件(プレスリリースの記載では令和7年1月6日時点)です。このAIは画像を解析するもので、文章を書く生成AIではありません。効果の数値は公表されていない点も押さえておきましょう。

キレイハ(来院前の相談にAI)

岡山市の医療法人オーラルビューティー&ヘルスケア(キレイハ)は、AI商談ツール「ゴリラセールスAI商談」の導入を決めたと、提供元の株式会社アスレバが2026年10月6日にPR TIMESで発表しました。発表によると、Web広告やInstagram、地域の情報誌で医院を知った方が、治療の内容・費用・期間などを来院前にAIに相談できる窓口にする計画で、既存の患者さんへのLINEでの案内にも使うとしています。導入を決めた段階の発表で、成果の数値は公表されていません。来院前の相談をAIに任せる形を考える医院は、AIの答えが医療広告の決まりや院長の説明とずれないかを、どう確かめるかまで決めてから始めるとよいでしょう。

※大阪大学 プレスリリース(2026年1月27日) https://www.osaka-u.ac.jp/ja/guide/public-relations/press_release/files/20260127_01.pdf/@@download/file /株式会社アスレバ PR TIMES(2026年10月6日) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000182848.html 。いずれも当事者・提供元の発表で、2026年10月16日に本文を確認しています。

AIは補助で、AIにできないこと(診断・治療方針・最後の説明)

生成AIは文書の下書きを速くする道具で、診断や治療方針の判断、患者さんへの最後の説明は歯科医師の仕事として残ります。歯科医師法第17条は「歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない」と定め、第20条は自ら診察しないで治療をすることや診断書・処方せんを出すことを禁じています。

厚生労働省は平成30年12月19日の通知(医政医発1219第1号)で、AIを使った診療でも診断や治療を行う主体は医師で、最終的な判断の責任を負うと示しました。この通知は医師について示したものですが、歯科医院でAIの出力をどう扱うかを考えるときにも、判断するのは人という同じ線で考えておくと迷いにくくなります。ChatGPTを提供するOpenAIの使用ポリシーも、有資格者の適切な関与なく資格を要する個別の助言をすることを禁止事項に挙げています。

治療への不安が強い方への声かけや、持病や服薬が重なる複雑な症例の判断も、AIの下書きでは代わりが利かない部分です。AIが作った説明文は、歯科医師が読んで直してから患者さんに渡す、という順番を崩さないでください。院内のルールにも、この一文をそのまま書いておくと伝わりやすいでしょう。

導入時の注意と、30日で始める手順

導入は、目的を1つに絞り、患者さんの情報を使わない文書から小さく始めるのが失敗しにくい進め方です。予約システムや電子カルテとつなぐ話は、文書の下書きで慣れてから検討しても遅くはありません。

導入時の注意(目的・小さく始める・今の仕組みとの関係・相談先)

目的は「抜歯後の紙を作り直す」のように、1つの文書に絞ると効果が分かりやすくなります。使う環境は医院で契約したものを1つにし、入力が学習に使われない設定かどうかを契約や規約で確かめておきます。予約システムや電子カルテとの関係は、今の仕組みに手を入れずに使える範囲から始め、困ったときに誰に聞くかも事務長が決めておくと安心でしょう。院内の決まりの作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方でも詳しく紹介しています。

30日で始める手順の例

1週目は、院長と事務長で使う環境を1つ決め、学習に使われない設定を確かめたうえで、線引き表を院内用に直します。2週目は、抜歯後の紙と求人票の2つを事務長が作り、院長が読み直すところまでを試してみてください。3週目は、受付にリコールのはがきを、滅菌を担当している歯科助手か歯科衛生士に滅菌の手順書を作ってもらいましょう。4週目に、使った文書と困ったことを持ち寄り、院内ルールを1枚にまとめて全員に配る流れになります。

院内ルール1枚の雛形

次の雛形は、そのまま院内に貼れる形にしています。医院の実情に合わせて、使う環境の名前や相談先を書き換えて使ってください。

〔医院名〕 生成AIの使い方(院内ルール)

1. 生成AIは、医院で契約した〔環境の名前〕だけを使う。私用のアカウントやアプリには、医院の文書を入れない
2. 患者さんの氏名・生年月日・住所・電話番号・カルテ番号・診察券番号・X線画像・口腔内写真・病歴・紹介状や技工指示書の本文は入れない
3. 症例を使うときは、誰の話か分からない形に直してから入れる。迷ったら入れずに院長に相談する
4. X線画像や写真を生成AIに読ませて、診断の参考にしない
5. 患者さんに渡す文、ホームページに載せる文は、歯科医師が読んで直してから使う
6. ホームページの文は、医療広告等ガイドラインの禁止表現と記載の不足がないかを点検してから載せる
7. 困ったとき・間違えて入れてしまったときは、すぐに〔事務長の名前〕に伝える

〔制定日〕 院長〔 〕

事務長が決めておく項目のチェックリスト

  • 使う環境を1つに決めたか医院で契約し、入力が学習に使われない設定かどうかを契約や規約で確かめた環境にする。
  • 線引き表を院内用に直したか×の項目を院内ルールの2番に書き写し、スタッフ全員が見られる場所に置く。
  • 最初に作る文書を2つに絞ったか抜歯後の紙と求人票のように、患者さんの情報を使わない文書から選ぶ。
  • 出力を誰が読み直すかを決めたか患者さん向けは歯科医師、求人票は院長か事務長、滅菌の手順書は院長と、滅菌を担当している歯科助手か歯科衛生士。
  • 指示文を保存する場所を決めたかよく使う指示文は共有の場所に置き、毎回同じ形で使えるようにする。
  • 間違えて入れたときの連絡先を決めたか誰に伝えるか、提供元の会話の削除をどうするかを先に決めておく。
  • ホームページの点検の担当を決めたか医療広告等ガイドラインの最新版を確かめる人と、載せる前に読む人を決める。

チェックリストの7つが埋まれば、院内で生成AIを使い始める準備はおおむね整ったと考えてよいでしょう。セキュリティの点検項目をもう少し広く見たい場合は、生成AIのセキュリティチェックリストも役に立ちます。

受付・歯科助手・歯科衛生士・院長が、同じAI環境で下書きを

UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使い分けられる法人向けサービスです。全モデルで学習非利用を標準適用し、よく使う指示文は社内限定のBOTにして共有できます。管理者ダッシュボードでは利用ログ・権限・使えるモデルを管理でき、基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

歯科医院のAI受付はどのようなサービスですか?
決まった定義のある言葉ではなく、予約の受付、来院前の相談への応答、問診の入力など、受付の仕事の一部をAIや自動の仕組みに任せるサービスを指して使われます。提供元の発表では、岡山市の歯科医院が来院前の相談にAIを使うことを決めたとされています。患者さんの情報をそのまま扱うサービスなので、保存場所・保存期間・学習に使うかを提供元に確かめてから選んでください。
無料のChatGPTに、名前を消した説明文の下書きを頼むのは問題がありますか?
患者さんの名前や番号を外し、医院の決まりだけを入れて説明文を作るのであれば、入れる情報の心配は小さくなります。ただ、スタッフ個人の無料アカウントでは、学習に使われる設定かどうかや、誰が何を入れたかを医院が管理出来ません。急いだときに患者さんの情報が貼られてしまう経路も残るため、医院で契約した環境を1つ用意し、そこでだけ使う形をおすすめします。
X線写真をChatGPTに見せて、所見の参考にしてもよいですか?
おすすめしません。X線画像は診断に使う診療の記録で、診断を支援するAIは、診療のために作られた専用の仕組みです。汎用の生成AIは診断のための道具ではなく、診断や治療方針を決めるのは歯科医師です。画像を読む仕事は、専用の仕組みと歯科医師の側に置いてください。
日本歯科医師会に、生成AIの利用の指針はありますか?
2026年10月16日の確認時点では、日本歯科医師会・日本歯科医学会・日本歯科人工知能研究会による生成AIの利用の指針は見当たりませんでした。医療全般では、厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版が歯科診療所も対象にしており、そのQ&Aの企画管理編Q18が生成AIに医療情報を入れる場合について答えています。個人情報保護委員会の令和5年6月2日の注意喚起も併せて確かめておくと安心です。
AIに書かせたホームページの文章は、そのまま載せてもよいですか?
そのまま載せるのは避けてください。医院のホームページは医療広告等ガイドラインの規制の対象で、虚偽の広告、ほかの医院と比べて優良である旨の広告、誇大な広告、患者さんの主観による体験談、誤認させるおそれがある治療の前後の写真などが禁止されています。自由診療を載せる文には、保険が使えない旨と標準的な費用の併記が必要で、詳しく紹介する場合は治療内容・期間と回数・主なリスクや副作用も載せます。AIの文は言い切りが入りやすいため、ガイドラインの最新版と照らして院長が点検してから載せましょう。

まとめ

歯科医院で生成AIが役に立つのは、抜歯後の注意書きや治療の流れの紙、リコールのはがき、求人票、院内マニュアルのように、毎回書き直している院内の文書になります。患者さんの氏名・番号・X線画像・病歴は入れず、医院の決まりを材料にして下書きを作らせる形なら、受付から院長まで同じやり方で使うことが出来ます。

画像診断やCAD/CAMを支援するAIは別の専用の仕組みで、診断と治療方針を決めるのは歯科医師です。歯科衛生士法・歯科技工士法の守秘義務と、医院としての個人情報保護法、歯科診療所も対象に含む安全管理ガイドラインを土台に、使う環境を医院で1つに決めるところから始めてみてください。ほかの業種の使い方はAI活用コラム一覧にまとめています。