税理士の仕事はAIでなくなる?なくなる業務・残る業務と、事務所が今やること

「税理士はAIでなくなる」とは、記帳や申告書づくりをAIが肩代わりし、税理士という仕事そのものが要らなくなるという見方のことです。結論から言うと、税理士の仕事はAIでなくなりません。減っていくのは入力・転記・計算などの作業で、税務の判断と顧問先への説明は、これからも税理士の仕事として残ります。所長が今やることは、顧問先の情報が学習に使われない事務所の環境を用意し、職員全員が同じルールでAIを使える状態を作ることになります。

業務ごとのAIの使い方の一覧やツールの選び方は、税理士のAI活用ガイドにまとめてあります。

結論:税理士の仕事はAIでなくならない

税理士の仕事がなくならない理由は、AIの性能ではなく、法律と責任の置き場所にあります。AIが申告書の下書きを数分で作れるようになっても、その申告書について顧問先と税務署の前に立つのは税理士です。一方で、AIに任せられる作業が増えるほど、作業の量で事務所の売上を立てる形は苦しくなっていくでしょう。なくなるのは税理士ではなく、入力と転記を職員の人数でこなす働き方のほうだと考えると、所内での話し方も変わってきます。

独占業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)と税理士法

税理士法第2条では、税理士の業務として税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つが挙げられます。税理士または税理士法人でない者がこれらの業務を行うことは、第52条で禁じられています。条文の中に、AIやクラウドについての定めはありません。AIが申告書の数字を計算することはあっても、AIそのものが税務代理を引き受ける形は今の法律の中にない、ということになります。顧問先から見ても、相談の相手が資格を持った人であることに変わりはないでしょう。

責任の所在とAIの誤り(ハルシネーション)を人が確認する理由

生成AIは、もっともらしい誤りを混ぜて答えることがあり、これはハルシネーションと呼ばれます。条文の番号や通達の番号、改正の時期を取り違えたまま、自信のある文章で返ってくることも珍しくありません。AIの答えをそのまま顧問先に渡して誤っていた場合、責任を負うのはAIではなく事務所です。だからこそ、AIが出した下書きを職員が確かめ、最後に税理士が判断する、という順番を崩さないようにしましょう。この順番さえ決まっていれば、AIの誤りは確認の工程で拾いやすくなります。

オックスフォード大学(フレイ&オズボーン)・野村総研の代替可能性の研究をどう読むか

「税理士はAIでなくなる」という話の出どころとしてよく挙がるのが、野村総合研究所が2015年12月2日に発表した推計です。英オックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授、カール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究で、国内601種類の職業について、人工知能やロボットで代替される確率が試算されました。発表では、10〜20年後に日本の労働人口の約49%が就いている職業で、技術的には代替が可能になるという推計が示されています。ここで押さえておきたいのは、資料に添えられた代替可能性が高い100職業と低い100職業の一覧に、税理士の名前がどちらにも載っていない点になります。高い側の一覧に載っているのは、経理事務員や会計監査係員、一般事務員といった職業でした。推計はあくまで技術的に置き換えられるかを試算したもので、仕事がなくなる時期や割合を予言したものではありません。事務所に当てはめるなら、経理事務に近い入力や転記は置き換わりやすく、判断と説明は残りやすい、と読むのが素直でしょう。

※野村総合研究所のニュースリリース「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」(2015年12月2日)の本文で確認した内容です。資料は職業ごとの代替の確率を試算したもので、何年に何割の仕事がなくなるとは述べていません。

AIに置き換わる作業と残る仕事|業務別の切り分け表

所内でAIの使い方を決めるときは、業務ごとに「AIに任せる作業」「職員が確認すること」「税理士が責任を持つ判断」の3段に分けて考えると整理しやすくなります。次の表は、会計事務所の主な業務をこの3段に分け、確認する人の目安まで書き込んだものです。自分の事務所の担当者の名前を、右の列に入れてみてください。

業務AIに任せる作業職員が確認すること税理士が責任を持つ判断確認する人の目安
記帳・仕訳通帳・カード明細からの仕訳候補づくり、摘要の下書き勘定科目と税区分、取引の相手と中身が合っているか判断の分かれる科目(修繕費か資産か など)の決定担当職員→月次の締めで主任
証憑の読み取り領収書・請求書の文字の読み取り、日付と金額の抜き出し桁や日付の読み違い、同じ証憑の二重計上判断を伴う証憑は記帳の行で扱う担当職員
申告書の下書き前期との比較表、数字の転記、計算の検算転記漏れ、前期から大きく動いた数字の理由申告の内容の最終判断担当職員→税理士
税法の調べもの条文・通達の候補探し、論点の洗い出しAIが示した条文・通達を原文で開いて確かめるどの解釈で処理するかの決定担当職員→税理士
月次報告試算表の増減コメントの下書き、グラフの元になる表数字と文章の食い違い顧問先に伝える順番と強さ担当職員→主任
顧問先への説明説明資料のたたき台、言い換えの候補専門用語を顧問先の言葉に直せているか何をどこまで勧めるか税理士
税務調査対応過去のやりとりの時系列の整理、想定問答の下書き事実関係と証憑の突き合わせ調査官への説明の方針と立ち会い税理士
経営の相談資金繰り表のたたき台、選択肢の書き出し前提にした数字が最新か顧問先の事情をくんだ助言税理士

AIに置き換わる作業(記帳・仕訳入力・OCR・申告書の下書き・計算)

表の左の列にある作業は、どれも手順が決まっていて、正解を後から確かめられるものです。仕訳の候補づくりや証憑の文字の読み取り(OCR)、前期の数字の転記、計算の検算は、AIに任せても職員が見直せば誤りに気づくことが出来ます。職員の1日のうち、こうした作業にどれだけの時間を使っているかを、一度数えてみましょう。減らせる時間の大きさが見えると、AIを入れる理由を職員に話すときの言葉も具体的になります。

残る仕事(税務判断・税務調査対応・経営助言・顧問先との信頼関係)

右の列に残るのは、顧問先の事情を知ったうえで選ぶ仕事です。同じ支出でも、顧問先の事業の中身や今後の計画によって処理が変わる場面は少なくありません。税務調査で調査官に何をどう説明するか、資金繰りが苦しいときにどの順番で手を打つかも、数字だけでは決まらないでしょう。こうした判断は、顧問先との長い付き合いの中で積み上がる信頼があって、初めて受け入れてもらえるものになります。AIで浮いた時間は、この右の列の仕事に寄せていきましょう。

クラウド会計・自動連携・電帳法によるデジタル化で、入力はすでに減っている

入力の作業は、生成AIが広まる前から減り始めていました。クラウド会計ソフトの銀行口座やカード明細の自動連携で、通帳を見ながら打ち込む作業が少なくなった事務所も多いはずです。電子帳簿保存法への対応で、証憑を紙ではなく電子データで受け取る場面が増えたと感じる方もいらっしゃるでしょう。データで届く証憑が増えるほど、AIが読み取って仕訳の候補を出す作業との相性はよくなります。

職員が個人のAIに顧問先の情報を貼ってしまう危うさ

AIの使い方を職員一人ひとりに任せていると、顧問先の情報が事務所の外へ出ていく道が見えなくなってしまいます。仕事を早く片づけようとする職員ほど、自分のスマートフォンに入れた無料のAIへ、試算表の数字や顧問先からのメールを貼り付けてしまうことがあります。事務所が把握していないところで使われるこうしたAIは、シャドーAI(野良AI)と呼ばれています。個人向けのプランは設定によって入力した内容がAIの改善に使われることがあり、職員が辞めた後も会話の履歴は本人のアカウントに残ります。

守秘義務(第38条・第54条)と所長の監督義務(第41条の2)

税理士法第38条は、税理士が正当な理由なく、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らしたり窃用したりすることを禁じています。同じ義務は第54条で事務所の使用人その他の従業者にも課されていて、辞めた後も続きます。第41条の2では、税理士が使用人を使うときは、税理士業務の適正な遂行に欠けるところのないよう監督しなければならないとされます。第38条・第54条に違反した場合は、第59条で二年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金と定められています。生成AIへの入力がこれらの条文に当たるかどうかを、条文そのものは何も書いていません。ただ、職員が顧問先の情報をどこに入れたのかを所長が説明できない状態は、監督の面から見て心もとないものでしょう。職員がどのAIに何を入れたかを、所長が説明できる状態にしておきましょう。

日本税理士会連合会は、第41条の2の監督義務を果たすための「税理士事務所等の内部規律及び内部管理体制に関する指針」を平成27年4月に作り、令和5年3月に改訂しています。附録の様式には、事務所の情報管理のチェックリストや、職員を雇うときの誓約書のモデルが並びます。AIの扱いを所内で決めるときは、こうした今ある様式に1行足す形で始めると、職員にも受け入れてもらいやすくなります。

顧客情報の扱い・学習利用の確認(個人情報保護委員会の注意喚起)

個人情報保護委員会は令和5年6月2日に、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を出しています。その中で、個人情報を含む指示文を入れる場合は、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめるよう求めました。本人の同意なく個人データを含む指示文を入れ、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法に違反する可能性がある、とも書かれています。そのうえで、サービスを提供する事業者が個人データを機械学習に使わないことなどを十分に確かめるよう求めている点が、事務所の環境選びにそのままつながります。顧問先の情報を入れる前に、使うAIが学習に使わない契約になっているかを確かめてください。

個人のAIに任せず、事務所で1つの環境に揃える

職員が個人のAIへ顧問先の情報を貼らずに済むよう、使う環境を事務所で1つに揃えましょう。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

顧問先の情報をAIに入れてよいか|判断表

顧問先の情報をAIに入れてよいかは、「どの環境で使うか」と「何を外してから入れるか」の2つで決まります。次の表は、情報の種類ごとに、個人契約や無料のAIと、学習に使われない事務所の環境とで扱いを分けたものです。迷う情報が出てきたら、表の行を足して所内で共有していきましょう。

情報の種類個人契約・無料のAI学習に使われない事務所の環境入れる前に外すもの
一般的な制度の質問(条文・通達の調べもの)入れてよい入れてよい顧問先を特定できる事情
社名を外した試算表の数字入れない入れてよい社名・所在地・取引先の名前
顧問先の社名・代表者名入れない業務に要る範囲で入れてよい作業に要らなければ外す
個人の氏名・住所・生年月日入れない業務に要る範囲に限るその作業で使わない項目
口座番号・カード番号入れない入れない番号は伏せ字にする
マイナンバー(個人番号)入れない入れない番号の載った書類ごと入れない
申告書・決算書のファイル入れない業務に要る範囲で入れてよい個人番号の欄、印影の画像
給与・年末調整の資料入れない業務に要る範囲に限る個人番号、扶養する家族の情報
税務調査の通知・調査官とのやりとり入れない税理士が判断した範囲に限る顧問先を特定できる情報

※表は所内ルールの一例になります。マイナンバーや口座番号をどの環境でも入れないとしているのは、法律がAIへの入力を名指しで禁じているからではなく、漏れたときの影響が大きい情報を最初から外しておくための所内の線引きです。

表で読み違えやすいのは、事務所の環境の列を「何でも入れてよい」と受け取ってしまうことです。学習に使われない環境でも、業務に要らない情報まで入れる理由はありません。口座番号とマイナンバーは、どの環境でもAIに入れないと決めておきましょう。ファイルを丸ごと入れる前に、その作業に本当に要る項目だけを残す一手間を、職員の習慣にしていきたいところです。

事務所で安全に使うには|学習させない設定・ログ管理・職員への配布

判断表の右の列を使えるようにするには、事務所として契約し、設定を所長の側で管理できるAIの環境が要ります。個人の設定に任せる形では、誰がどの設定で使っているかを確かめる手段がないためです。次の6点を、契約の前に確かめておきましょう。

  • 入力した内容が学習に使われない扱いが、全員に既定で効いているか職員ごとの設定の切り替えに頼らず、契約の段階で学習に使わないと示されているかを見ます。
  • 会話の履歴がどこに、どのくらいの期間保存されるか顧問先から聞かれたときに、保管の場所を説明できるかが目安になります。
  • 職員ごとのアカウントを所長の側で発行・停止できるか退職や異動の日に、その日のうちに使えなくできるかを確かめます。
  • 誰がいつどのAIを使ったかの記録を事務所で見られるか監督の面でも、後から説明できる材料になります。
  • 提供する事業者が、顧問先の情報を預ける相手としてふさわしいか利用規約とデータの取り扱いの説明を読み、契約の相手として確かめます。
  • 使えるAIを事務所の側で選べるか用途に応じて複数のAIを使い分けたいときや、使わせるAIを絞りたいときに効いてきます。

大手の法人向けプランでは、入力を学習に使わない扱いが既定になっているものがあります。ChatGPT Businessの料金ページには業務データが既定ではモデルの学習に使用されない旨が書かれ、ClaudeのTeamプランも料金ページの比較表でモデルのトレーニングが既定ではなしとされています。Google Workspaceの管理者向けの案内にも、顧客のコンテンツが許可なくドメインの外で生成AIモデルのトレーニングに使われることはない、との記載があります。一方で、個人向けのプランは、学習に使わせない設定を本人が自分で切り替える形にとどまります。

※各社の扱いは、2026年9月29日時点で各社の公式ページ・ヘルプに表示されている内容を確認したものです。プランや規約は変わることがあるため、契約の前に最新の内容をご確認ください。

職員全員が同じ環境で使う理由と、ログの責任者

AIの環境は、一部の職員にだけ配るより、全員に同じものを配るほうが管理は楽になります。配られなかった職員が個人のAIを使い始めると、判断表の左の列の世界に戻ってしまうからです。人数で料金が増える契約だと、全員に配るのをためらう所長の方もいらっしゃるでしょう。その場合も、配る人と配らない人の線を引くより、全員が同じ環境で使える契約の形を先に探してみてください。記録を見る責任者は、所長本人か、所長が指名した1名に決めると運用がぶれません。

複数AIの使い分けは用途で決める

AIは種類によって得意なことが分かれていて、調べものに強いもの、長い資料の読み込みに強いもの、文章の言い換えが自然なものと、向き不向きがあります。用途ごとにどれを使うかを最初に決めておけば、職員が迷うことは少なくなります。同じ質問を2つのAIに投げ、答えが食い違ったところを人が確かめる、という使い方も出来ます。使い分けの考え方は4つのAIの違いと使い分けをご覧ください。

AIを使いこなす力・ツール習得は研修の1回目で揃える

AIを使いこなす力は、職員ごとの得意不得意に任せると差が開いてしまいます。研修の1回目は、操作より先に判断表と通知文を全員で読み合わせましょう。そのうえで、自分の担当先の仕訳を1件、社名を外した形でAIに候補を出させ、自分の判断と比べてもらうのが手ごろな題材になります。AIの答えのどこが違っていたかを職員どうしで出し合うと、確かめる目が早く育ちます。

環境を入れても使われない、定着の壁

環境を用意しても、最初の1か月で使う職員と使わない職員に分かれることも少なくありません。使わない理由を聞くと、「何に使ってよいか分からない」「間違えたら責任を問われそう」という声が出てくるでしょう。前者には業務別の切り分け表の左の列を、後者には通知文の相談先を示すと、手が止まる場面は減っていきます。月に一度、使った件数と困った場面を所内で出し合う時間を15分だけ取ってみてください。

所内への通知文のひな形

所内のルールは、長い規程より、1枚に収まる通知文のほうが読まれます。次のひな形の【】の部分を事務所に合わせて書き換え、メールやチャットで全員に送ってみてください。

件名:業務でのAIの使い方について(【日付】から)

所員各位

【日付】から、業務でAIを使うときは次のとおりとします。

1. 使ってよいAI
・事務所で契約した【サービス名】だけを使います。
・個人のスマートフォンやパソコンに入れた無料のAI、個人で契約したAIは業務に使いません。

2. 入れてはいけない情報
・マイナンバー(個人番号)、口座番号、カード番号は、どのAIにも入れません。
・顧問先の書類を入れるときは、その作業に要らない氏名・住所・番号の欄を外してから入れます。
・事務所の環境でも、業務に関係のない顧問先の情報は入れません。

3. AIの答えの扱い
・AIの答えは下書きとして扱い、条文・通達・数字は原文や元の資料で確かめます。
・顧問先に出す前に、担当の税理士の確認を受けます。

4. 困ったときの相談先
・入れてよいか迷ったときは、入れる前に【責任者名】に相談してください。
・誤って入れてしまったときは、消す前に、その日のうちに【責任者名】へ知らせてください。
・知らせてくれた方を責めることはありません。

5. 記録の確認
・事務所の環境の利用記録は、【責任者名】が月に一度確認します。

【事務所名】 所長 【氏名】

誤って入れてしまったときに「消す前に知らせる」としているのは、先に消してしまうと、何をいつ入れたかを後から確かめられなくなるためです。知らせた職員を責めないという一言を所長の口から添えるだけで、報告はぐっと届きやすくなります。ルールの文書を本格的に整えるときは、生成AIの社内ガイドラインの作り方も参考になるでしょう。

記帳代行から経営助言へ|減った時間を顧問先への説明に回す

AIで作業の時間が減っても、その時間の使い道を決めておかなければ、職員の忙しさは別の作業で埋まってしまいます。浮いた時間の振り向け先として手堅いのは、月次の数字を顧問先に説明する時間です。試算表を送るだけだった顧問先に、増減の理由と次の月に気をつけることを10分でも話せると、顧問先から見た事務所の値打ちは変わってきます。説明のたたき台はAIに作らせ、職員が数字を確かめ、税理士が話す、という分担にすると準備の時間も短く済みます。

顧問報酬の見直しを顧問先にどう説明するか

作業がAIで速くなると、顧問先から「それなら顧問料は下がるのか」と聞かれる場面も出てくるでしょう。このときは、減った作業の分と、増やした説明や相談の分を分けて伝えると、話がこじれにくくなります。たとえば、記帳の代行は料金を下げ、月次の面談や資金繰りの相談を新しいメニューとして加える、という組み替え方があります。説明の言い方の一例を挙げておきます。

「入力の作業はAIを使って時間を短くできたので、記帳のご負担は下げさせていただきます。その分の時間で、毎月の数字の動きと、来月に気をつけることをご説明する面談を始めたいと考えています。」

値下げにするか据え置きにするかは事務所ごとの判断ですが、何に時間を使う事務所になるのかを先に言葉にしておくと、話し合いの土台になります。

専門分野の特化・差別化は説明の時間から生まれる

医療や建設、飲食など、特定の業種に強い事務所を目指す動きもあります。業種ごとの論点を深く知るには、その業種の顧問先と話す時間が欠かせません。AIで作業を減らした時間を、得意にしたい業種の顧問先との面談に優先して回してみましょう。話した中身を所内で記録して共有すれば、ほかの職員の知識にもなっていきます。

説明できる帳簿を残す

AIで仕訳の候補を作るようになると、なぜその科目にしたのかを後から説明できない帳簿が増えるおそれがあります。判断の分かれた取引は、摘要に理由を短く書き残すことを所内のルールにしておきましょう。税務調査で理由を聞かれたときに答えるのは、AIではなく、その記録を残した事務所の側です。

所長が今やること|3か月の進め方

ここまでの話を、所長が手を動かす順番に並べ直すと次のようになります。3か月を目安に、1つずつ片づけていきましょう。

時期やること決める人
1か月目職員が今どのAIを使っているかを聞き取る/事務所で契約する環境を決める/判断表と通知文を所内の言葉に直して配る所長
2か月目全員に同じ環境のアカウントを配る/研修の1回目(判断表の読み合わせと、仕訳1件の比べ合い)/記録を見る責任者を決める所長・責任者
3か月目使った件数と困った場面を出し合う/切り分け表の担当の欄を見直す/浮いた時間を回す顧問先を決める所長・主任

聞き取りでは、個人のAIを使っていた職員を責めないことが何より大切です。正直に話してもらえないと、今どこに顧問先の情報が出ているのかが分からないままになってしまいます。

登録者数の推移・高齢化など業界動向をどう見るか

税理士の登録者数の推移や年齢の構成は、日本税理士会連合会などが公表している数字を一次資料で確かめてから判断するのが確かです。職員の採用や事務所の引き継ぎに悩む所長の方は、少なくないでしょう。人が採りにくい中で顧問先の数を保つには、1人の職員が受け持てる件数を、作業の時間を減らして広げていくのが近道となってきます。AIの環境を整えることは、職員を減らすためではなく、今いる職員で顧問先への説明の質を保つための準備になります。

顧問先の情報を、事務所の環境の中で扱う

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けAI基盤です。全モデルで学習非利用を標準適用し、会話履歴・利用ログ・アカウントは国内サーバー(AWSの日本リージョン)で管理します。管理者ダッシュボードで、利用ログ・権限・モデルのON/OFFを事務所の側で扱えます。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

税理士の仕事はAIで本当になくならないのですか?
税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士法第2条で税理士の業務とされ、税理士でない者が行うことは第52条で禁じられています。条文はAIについて何も定めておらず、AIが税理士に代わって業務を引き受ける形にはなっていません。減っていくのは入力・転記・計算などの作業で、税務の判断と顧問先への説明は税理士の仕事として残ります。
野村総研の推計では、税理士はAIに置き換わる職業とされていますか?
野村総合研究所が2015年12月2日に発表した推計(英オックスフォード大学との共同研究・国内601種類の職業)の資料では、代替可能性が高い100職業と低い100職業のどちらの一覧にも、税理士は載っていません。高い側に載っているのは経理事務員や会計監査係員などです。推計は技術的に代替できるかを試算したもので、仕事がなくなる時期を示したものではありません。
職員が個人の無料のAIに顧問先の情報を入れてしまったら、どうすればよいですか?
まず消す前に、何をいつどのAIに入れたかを責任者へ知らせてもらい、記録を残します。そのうえで入れた情報の範囲を確かめ、顧問先への連絡が要るかを税理士が判断します。同じことを防ぐには、学習に使われない事務所の環境を全員に配り、入れてはいけない情報を通知文で示しておくのが近道です。
AIに税法の質問をして、その答えを顧問先に伝えてもよいですか?
AIの答えは下書きとして扱い、示された条文や通達を原文で開いて確かめてから使ってください。生成AIはもっともらしい誤りを混ぜることがあり、誤った答えを伝えた場合の責任は事務所が負います。顧問先に伝える前に、担当の税理士が判断する順番を守ることをおすすめします。
小さな事務所でも、職員全員分のAI環境を用意したほうがよいですか?
一部の職員だけに配ると、配られなかった職員が個人のAIを使い始めることがあり、顧問先の情報がどこに入ったかを所長がつかみにくくなります。人数が少ない事務所でも、全員が同じ環境を使い、同じルールで動くほうが管理の手間は小さくなります。契約の前に、学習に使われない扱い・利用の記録・アカウントの停止を事務所の側で管理できるかを確かめてください。

まとめ

税理士の仕事は、AIでなくなりません。税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士法で税理士の業務とされ、AIが速くなるほど、判断と顧問先への説明に税理士の時間が集まっていきます。減っていくのは入力・転記・計算などの作業で、その時間をどこに回すかは所長が決めることになります。その前提として、顧問先の情報が学習に使われない事務所の環境を用意し、職員全員が同じルールで使える状態を作っておきましょう。ほかの業務でのAIの使い方は、AI活用コラム一覧からご覧いただけます。