生成AIの面白い活用事例8選。会社で真似る前の線引き

生成AIの面白い活用事例とは、AIで生成したタレントのCMや、原稿から映像を作るAIアナウンサー、手描きのスケッチから建物の外観案を出すAIのように、意外な場面で生成AIを使った実例のことです。会社が真似てよいのは事例の「使い方の型」で、線を引くのは「入れる情報」と「使う環境」の2つになります。公開済みの情報や自分で書いた下書きから試し、顧客名簿・見積・契約書・社員の情報は、学習に使わない設定とログを会社で管理できる環境が整うまで入れないでください。大手企業の業務での使い方と導入の全体像は、生成AIの活用事例12件と会社の環境で真似る手順でまとめて紹介しています。

面白い事例から真似てよいのは、使い方の型

面白い事例を見て「うちでも試したい」と感じたときに持ち帰ってよいのは、どんな仕事にAIを当てたかという型のほうになります。実際に、AIタレントのCMは「人を撮影する代わりに人物の画像を作る」型、AI部長は「企画会議の相談相手にAIを置く」型、スケッチからのデザイン案は「最初の案をたくさん出させて人が選ぶ」型と読み替えることが出来ます。型だけを取り出せば、社員10〜200名の会社でも、社内報の挿絵や販促チラシの案出し、新商品の名前の候補づくりに当てはめられるでしょう。

一方で、見た目をそのまま真似ないほうがよい部分もあります。事例の多くは、放送局とシステム会社、建設会社と研究機関のように、専門の相手と組んで形にしたものです。同じものを社員が個人のアカウントで作って社外に出すと、会社が中身を説明できなくなってしまいます。何を入れたのか、作った画像がどこから来たのかを、取引先に聞かれても答えられない状態になるためです。

判断の順番は、型を選ぶ、入れる情報を決める、使う環境を決める、の3段になります。後半の判断表は、この3段を事例ごとに1行で並べたものです。まずは事例を読みながら、自社のどの仕事に置き換えられそうかを思い浮かべてみてください。

たとえばパルコの広告を見て販促チラシに使いたいと考えたなら、型は「撮影の代わりに画像を作る」、入れる情報は自社の商品名と公開予定の文言まで、環境は会社で契約した画像を作れるAI、という順に決まります。取引先から預かった商品写真を参考画像として入れてよいかは、この段階で迷いやすいところになります。

発表元や報道で確かめられる生成AIの面白い活用事例8選

ここで取り上げる8件は、発表元の会社・自治体のページか、広告業界誌の報道で中身を確かめられたものです。数字が出てくるものは発表元の自己申告で、第三者が検証した値ではない点に気をつけてください。

大林組:スケッチから建物の外観デザイン案を出すAiCorb

大林組は2022年3月22日、手描きのスケッチや簡単な3Dモデルから、建物の外観(ファサード)のデザイン案を複数提案するAI「AiCorb」を発表しました。SRI Internationalとの共同開発で、提案された案はHypar上で3Dモデルにすることが出来ます。設計の初期段階の検討を速め、顧客との合意づくりを早める狙いがあると同社は説明しています。削減できた時間などの数字は、発表には書かれていません。文章を作るChatGPTのような大規模言語モデルではなく、デザインを生成するAIの事例である点も押さえておきましょう。

琉球朝日放送×NEC:原稿から番組映像を作るAIアナウンサー

琉球朝日放送とNECは2024年10月4日、放送原稿をもとにアナウンス映像を自動で作るシステムを連名で発表しました。原稿のテキストを用意するだけで、AIアナウンサーが読み上げる映像を制作でき、80か国以上の言語に対応すると両社は説明しています。機械翻訳を組み合わせれば、多言語版も日本語版とほぼ変わらない作業時間で作れるとされ、地上波とネット配信は2025年1月頃に始める予定と発表されました。背景には地方局のアナウンサーや制作人材の不足があり、AIアバターにはDeepBrain AI社のものを使い、沖縄県の「令和6年度沖縄DX促進支援事業補助金」も活用しています。中小企業に置き換えるなら、人手が足りない仕事を、原稿さえ書けば動画になる形に変えた例として読めるでしょう。

伊藤園:CMにAIで生成したタレントを起用(報道)

宣伝会議AdverTimesでは、伊藤園が2023年9月に放映を始めた「お〜いお茶 カテキン緑茶」のテレビCMで、AIで生成したタレントを起用したと報じられています。ここでは伊藤園自身の発表資料ではなく、報道をもとにした事例として扱います。会社で真似るなら、人物の写真を撮る代わりに架空の人物画像を作る型になりますが、実在の人や既存の作品に似た画像を広告に使わない確認が欠かせません。

パルコ:人物もナレーションも音楽も生成AIで作った広告

パルコは2023年10月30日、モデルを撮影せずに、人物・背景・ナレーション・音楽まで生成AIで作った広告「HAPPY HOLIDAYS」キャンペーンを発表し、11月以降に掲出しました。制作の中身は、同社の公式ブログと宣伝会議AdverTimesの報道で確かめることが出来ます。同社ブログには、デジタルメディア協会の「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー'23」で優秀賞を受けたとも書かれています。広告の素材を撮影なしで作れる例として話題になりやすい一方、社内で真似るときは、出来上がった画像や音楽が既存の作品に似ていないかを人が確かめる工程を残しましょう。

サントリー食品インターナショナル:AI部長がCM企画を総指揮(報道)

宣伝会議AdverTimesでは、サントリー食品インターナショナルが2023年6月6日に公開したWeb CMで、ChatGPTを「AI部長」としてキャスティングや内容を相談しながら制作したと報じられています。会社の仕事に置き換えると、企画会議の相談相手としてAIを置き、案を広げる役を任せる使い方になります。最終的な判断を人がする点は同じで、社内の会議でも、AIの案を採るかどうかは担当者が決めると最初に共有しておきましょう。

横須賀市:全庁でChatGPTを試した実証

横須賀市は2023年4月18日、職員が全庁的にChatGPTを使う実証を始めると発表し、自治体で初めての取り組みだと説明しました。6月5日の結果報告では、約50%の職員が利用し、最終アンケートに回答した職員の約80%が「仕事効率が上がる」「継続利用したい」と答えたとしています。母数はアンケートの回答者で、全職員ではない点に注意が必要になります。同じ報告では、利用の約30%が検索目的でChatGPTに向かない使い方だったこと、約6%が概ね不適切な回答を受けたと報告したことも明かされています。実証の中で、何に向かないかが数字で見えたことは、会社にとっても真似しやすい点でしょう。

横須賀市:職員のChatGPT活用コンテスト

横須賀市は2023年11月22日、職員によるChatGPT活用コンテストの結果を発表しました。52件の応募から5名が11月20日の最終審査会で発表し、Excelマクロ作りの入門教材として使う方法、消防法令の解釈を説明する文章の生成、スケジュール作成とシステムの連携などが優秀事例に挙がっています。最優秀賞は健康保険課の「ChatGPTによる照合事務の時間短縮」でした。派手な広告ではなく、毎日の事務の中から面白い使い方が見つかった例になります。社内で試すときも、使い方を社員から募って発表し合う場を作ると、真似できる型が集まりやすいでしょう。

LINEヤフー:社内の問い合わせに答えるSeekAI

LINEヤフーは2024年7月11日、社内文書を検索して回答する生成AIツール「SeekAI」を全従業員に導入したと発表しました。社内の資料から答えを探して文章にする、RAG(検索拡張生成)と呼ばれる仕組みです。同社は年間70万〜80万時間の削減を目指すとし、広告事業のカスタマーサポート業務のテスト導入では正答率が約98%だったと説明しています。どちらも同社の自己申告で、70万〜80万時間は実績ではなく目標の数字です。社員10〜200名の会社なら、就業規則や経費精算の手引きのような社内FAQに答えさせる使い方が近く、社外に出す文書より先に試しやすい分野になります。

※事例の日付と内容は、2026年10月13日時点で各発表元のページと、宣伝会議AdverTimesの記事で確認したものです。伊藤園とサントリー食品インターナショナルの2件は報道をもとにしています。

8件はどれも、社員が個人で思いついたものではなく、会社や自治体が組織として取り組んだものです。一方で、面白さに惹かれた社員が同じことを個人のアカウントで試すと、何を入れたか、どこに残ったかを会社が追えなくなってしまいます。

面白い使い方を試す場所は、会社の契約で1つにまとめる

文章の下書き、調べもの、画像づくりと得意なAIは用途で分かれるため、試す場所は会社で契約した1つの環境にまとめると安心です。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

面白い事例を自社の仕事に読み替える判断表

面白い事例を自社で試すかどうかは、事例ごとに入れてよい情報と使う環境を1行で決めると判断しやすくなります。下の表には、8件の事例と、よく紹介される例のうち会社で話題になりやすいもの、日常業務の例を並べています。

面白い事例自社の仕事への読み替え入れてよい情報入れない情報(環境が整うまで)使う環境
大林組 AiCorb(スケッチから外観案)店舗の改装イメージ、展示会ブースの案出し自分で描いたラフ、公開済みの自社の写真取引先から預かった図面、未公開の計画画像を作れるAIを会社の契約で
琉球朝日放送×NEC(AIアナウンサー)社内向けの説明動画、研修動画のナレーション原稿社内向けに書いた原稿本人の同意がない社員の顔写真・声原稿づくりは会社の生成AI、映像化は会社で契約した専用サービス
伊藤園(AIタレントのCM・報道)自社広告やSNS用の人物イメージ自社の商品写真、公開済みのコピー実在の人物や他社のキャラクターに似せる指示会社の契約で作り、公開前に人が似ていないかを確認
パルコ(生成AIで作った広告)季節の販促チラシや店頭POPの素材案公開予定の文言、自社の商品情報他社の広告やタレント写真を参考画像として入れること会社の契約で作り、公開前に人が確認
サントリー食品インターナショナル(AI部長・報道)新商品やキャンペーンの企画の壁打ち公開情報、取引先名を伏せた企画メモ取引先との条件、未発表の売上計画学習に使わない設定の会社の生成AI
横須賀市(全庁の実証)期間を決めて社員に配って試す公開情報、社内の一般的な文書顧客や社員の個人情報会社の契約で全員に配り、ログを残す
横須賀市(活用コンテスト)社内で使い方を募る発表会固有名詞を伏せた使い方の説明照合に使った名簿などの元データ会社の環境で試した結果だけを共有
LINEヤフー SeekAI(社内FAQ)就業規則・経費精算の社内FAQ社内規程や手順書のうち公開範囲を確かめたもの人事評価、給与、個人の相談記録社内文書を読み込ませられる会社の環境
よく紹介される例:AI面接面接の質問案や求人票の下書き職種の説明、評価の観点応募者の履歴書、面接の記録会社の環境でも、利用目的の範囲を確かめてから
日常業務:議事録・メール返信会議の要約、返信文の下書き社内会議の要点メモ取引先名や金額が入った録音・議事録会社の契約の生成AI

表は左から右へ読むだけで使えます。読み替えの列で試したい仕事を選び、入れてよい情報の列に収まる作業から始めると、社員が迷う場面が少なくなります。迷ったときの目安は、その情報が自社で書いたものか、誰かから預かったものかの違いです。顧客・社員・取引先から預かった情報は、会社の環境が整うまで入れないと決めてください。

使う環境の列で会社の契約と書いたのは、学習に使わない設定とログの扱いを、会社として相手に説明できる状態にするためです。画像と文章で別のAIを使う事例が多いことも、表を並べると見えてきます。面白い使い方を1つ試すたびに新しいサービスへ個人で登録していくと、管理する場所が増えていってしまいます。

入れてよい情報と入れてはいけない情報の線引き

線引きは、公開してよい情報か、誰かから預かった情報かで分けると迷いにくくなります。社員に伝えるときは、次の2つの一覧をそのまま見せるのが早いでしょう。

入れてよい情報の例は次のとおりです。

  • 自社サイトやパンフレットで公開済みの文章・商品情報
  • 自分で書いた下書きや企画メモ(取引先名・個人名を伏せたもの)
  • 一般的な知識についての質問や、文章の言い換えの依頼
  • 社内の規程や手順書のうち、社外に出ても困らないもの

個人のアカウントや無料版に入れてはいけない情報は、次のとおりになります。

  • 顧客名簿や問い合わせの記録など、個人を特定できる情報
  • 見積・原価・取引条件などのお金にかかわる情報
  • 社員の人事評価・給与・健康にかかわる情報
  • 取引先から預かった未公開の資料や図面
  • 契約書の本文

個人情報保護委員会の注意喚起(令和5年6月2日)

個人情報保護委員会は令和5年6月2日に生成AIサービスの利用についての注意喚起を出し、会社などの個人情報取扱事業者に2つの点を求めています。1つ目は、個人情報を含むプロンプト(AIへの指示文)を入れる場合に、特定した利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認することです。2つ目として、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入れ、そのデータが応答の出力以外の目的で扱われると、個人情報保護法に違反する可能性があると示しました。そのため、提供事業者がそのデータを機械学習に使わないこと等を十分に確認するよう書かれています。

同じ注意喚起では、一般の利用者に向けても、入力した個人情報が機械学習に使われ、正確または不正確な内容で出力されるおそれがあると呼びかけました。面白い使い方でも、顧客や応募者の情報が入るものは、利用目的の範囲内かと、学習に使われないかを確かめた環境で試しましょう。AI面接や議事録の要約が線引きの難しい例になるのは、このためです。

著作権:作った画像や文章が既存の作品に似ていないか

AIタレントや生成AIの広告を真似るときは、著作権の確認も外せません。文化庁のAIと著作権に関する考え方について(2024年3月)は、AIの学習の段階は著作権法第30条の4の範囲で扱い、生成・利用の段階では既存の著作物に似たAI生成物を使うと侵害となる可能性に留意する、という整理を示しました。社外に出す画像や文章は、作った人とは別の人が、既存の作品や他社の広告に似ていないかを見てから使うようにしましょう。

社内ルールの参照先:AI事業者ガイドライン第1.2版

経済産業省と総務省のAI事業者ガイドラインは、2026年10月時点で最新の第1.2版で、チェックリストとワークシート(別添7)も公開されています。社内ルールを一から書くのが難しいときは、こうした公的な資料の項目を下敷きにすると抜けが減らせます。ルール文書の組み立て方は生成AIの社内ガイドラインの作り方にまとめています。

よく紹介される面白い例と、会社での受け止め方

紹介記事でよく見かける面白い例には、発表元の資料までたどりにくいものや、文章を作る生成AIとは別の種類のAIの話が多く含まれています。ここでは会社名や数字は挙げず、仕組みと会社への持ち帰り方だけを短く書いていきます。

匂いを作るAIとロボット僧侶

言葉から香りを組み立てるAIや、ロボット僧侶の話題は、面白い例として何度も取り上げられてきました。どちらも研究や話題づくりの色が濃く、社員10〜200名の会社がすぐ真似る対象にはなりにくいでしょう。持ち帰れるのは、言葉で説明しにくい感覚を、AIとのやり取りで言葉に置き換えるという発想のほうになります。商品の味や手触りを説明する文を考えるときに、AIに言い回しの候補を出させる使い方なら、公開前の情報を入れずに試すことが出来ます。

犬語翻訳やペットの病気予測など、動物の気持ちや病気を読むAI

鳴き声から犬の気持ちを推し量るAIや、写真からペットの病気の兆しを見るAIも、よく並ぶ例の1つです。音声や画像を手がかりに見分けるAIとして紹介されることが多く、文章を作る生成AIとは種類が分かれます。会社に持ち帰るなら、写真や音声を読ませて分類させる使い方の例として見ておくくらいで十分でしょう。

料理ロボットときゅうりの仕分け

動画を見て料理を覚えるロボットや、農家がきゅうりの等級を見分けるAIを自作した話もよく紹介されています。前者はロボット、後者は画像を見分けるAIの話で、ChatGPTのような生成AIを入れれば同じことが出来るわけではありません。きゅうりの例から真似られるのは、毎日繰り返す小さな仕分け作業に目を付けた視点のほうになります。事務の仕事なら、書類の振り分けや問い合わせの分類に置き換えて考えることが出来ます。

不正取引の検知とAI面接

金融機関の不正取引の検知と、採用の対話型AI面接も、面白い事例の紹介によく並ぶ例です。不正取引の検知は、過去の取引の傾向から外れたものを見つける予測・検知型のAIとして説明されることが多く、生成AIの導入とは別に考える分野になります。AI面接は、応募者の受け答えや履歴書という個人情報を扱うため、真似る前に応募者への説明と、入力した情報が学習に使われないかの確認が先に来ます。生成AIを採用で使うなら、面接の質問案や求人票の下書きのように、応募者の情報を入れない作業から始めてください。

コンビニの商品企画と発注

コンビニの商品企画に生成AIを使った例と、AIで発注量を予測する例は、続けて紹介されることもありますが、中身は別の話になります。商品企画は文章や画像を作る生成AIの使い方で、発注は売上の予測に近い使い方です。中小企業が真似るなら、商品名やキャッチコピーの候補出しのような企画側から入るほうが、手元の売上データを入れずに始められるでしょう。

議事録・メール返信・資料のたたき台は、入れる情報で環境を分ける

毎日の仕事に近い使い方ほど、取引先の名前や金額が自然と入り込むため、面白い事例より線引きが難しくなります。横須賀市のコンテストで照合事務やスケジュール作成が選ばれたように、身近な事務にも面白い使い方は眠っています。ただ、その分だけ入れる情報には気を配ることになるでしょう。

議事録の要約は、録音の文字起こしを貼り付けた時点で、発言者の名前や取引先、金額がまとめて入ってしまいます。社内会議の要点メモから始め、取引先との会議の録音は会社の契約の環境で扱うと決めておくと線がはっきりします。メールの返信文の下書きも、相手の文面を貼ると相手の名前や連絡先を入れることになるので、名前を伏せるか、会社の環境で使うかを先に決めておきましょう。

資料のたたき台は、構成案や見出しの候補だけなら公開情報で足ります。売上や見積の数字を入れる段になったら、会社の環境に切り替えるのが目安になります。文章の下書きはこのAI、調べものは出典を示すのが得意なAI、というように用途で使い分ける考え方は主要4AIの違いと使い分けで紹介しています。

会社で安全に試すための環境:学習させない設定・ログ・配布・使い分け

面白い使い方を会社で試す環境は、学習に使わない設定、ログ、社員への配布、複数のAIの使い分けの4つがそろっているかで選ぶと迷いません。どれか1つでも欠けると、試したあとで何が起きたかを会社が説明しにくくなってしまいます。

学習に使わない設定が既定の契約を選ぶ

OpenAIは法人向けのデータの扱いのページで、ChatGPT Enterprise・ChatGPT Business・ChatGPT EduやAPIのデータ(入力と出力を含む)は、既定ではモデルの学習や改善に使わないと書いています。個人向けの版では、学習の扱いが本人の設定やサービスの規約に任されることになります。全員の設定を一人ひとり確かめるより、最初から学習に使わない契約を会社で選ぶほうが確実です。ChatGPTの法人プランの違いはChatGPTの法人プランの料金で比べています。

誰が何に使ったかのログを会社で持つ

試した結果を振り返るには、誰がどのAIに何を頼んだかを会社側で見られる状態が欠かせません。ログがあれば、入れてはいけない情報が入っていないかを後から確かめることも出来ます。個人のアカウントでは、このログを会社が見ることはできないと考えておきましょう。

試す社員に配り、終わったら止められるようにする

試す範囲を広げるときは、社員に配るアカウントを会社が発行し、異動や退職の際に止められる形にしておきます。会社が把握していない個人のアカウントで業務に使われる状態は、野良AI(シャドーAI)と呼ばれます。面白い使い方を禁止するより、試せる場所を会社で用意するほうが見えない利用を減らせます。見えない利用の広がり方はシャドーAI(野良AI)とはで解説しています。

文章・画像・調べものでAIを使い分ける

8件の事例を見ると、大林組はデザイン案を、パルコは人物や音楽を作るAI、LINEヤフーは社内文書を読むAI、サントリーの報道は対話型のAIと、使っている種類がばらばらです。1つのサービスに絞ると、試したい使い方の一部しか試せない場面も出てくるでしょう。複数のAIを1つの契約で使い分ける考え方はマルチAIとはで、利用環境の型と個人アカウントから会社の環境へ移る手順は親記事の後半でまとめています。

社内で小さく試す手順:1つの業務を1週間

社内で試すときは、1つの業務を、決めた社員だけで、1週間試すところから始めるのが無理のない進め方になります。いきなり全社に配ると、入れてよい情報の線引きが伝わる前に使い方が広がってしまいます。

  1. 試す業務を1つ選ぶ(判断表の読み替えの列から、社外に出さない仕事を選ぶ)
  2. 入れてよい情報と入れない情報を、試す前に紙1枚に書き出す
  3. 使う環境を決め、試す社員にだけアカウントを配る
  4. 出力を社外に出す前に確認する人を決める
  5. 1週間後に、使えた場面・向かなかった場面・入れそうになった情報を集める
  6. 続ける、広げる、やめる、のどれにするかを決めて社員に伝える

試す社員は、部署ごとに1〜2名ずつ選ぶと、部署による向き不向きが見えやすくなります。確認する人は、試す社員の上司か、社外に出す文書をふだん見ている方に頼むのが自然でしょう。

5番目の振り返りでは、入れそうになった情報を必ず聞いてください。横須賀市の実証で利用の約30%が検索目的だったように、試してみて初めて向かない使い方が見えることもあります。振り返りで集めた迷いは、そのまま社内ルールの項目になります。点検の項目を一覧で確かめたいときは生成AIのセキュリティ対策チェックリストも使えます。

1週間で手応えがあれば、別の業務を1つ足して同じ手順を繰り返しましょう。業務を足すたびに判断表の行が増え、それが自社版の活用事例集として社内に残っていきます。

社員に送る通知文のひな形

試す社員に送る通知文は、試す業務・期間・使う環境・入れてよい情報・入れない情報・出力の確認・振り返りの7つを1通に収めると伝わりやすくなります。下のひな形の【】の部分を自社に合わせて書き換え、そのまま社内メールやチャットに貼って使ってください。

件名:生成AIの試行利用のお知らせ(【部署名】・【開始日】から1週間)

【対象者】各位

業務での生成AIの使い方を探るため、下記のとおり試行利用を始めます。
面白い使い方を見つけたら、振り返りのときにぜひ共有してください。

1. 試す業務
 【例:社内FAQの回答案づくり/販促チラシの文言案/社内会議の要点の整理】

2. 期間
 【開始日】〜【終了日】(1週間)

3. 使う環境
 会社が用意した【サービス名】だけを使ってください。
 個人のアカウントや無料版に、業務の情報を入れないでください。

4. 入れてよい情報
 ・自社サイトなどで公開済みの情報
 ・自分で書いた下書き(取引先名・個人名を伏せたもの)
 ・【部署で決めた範囲】

5. 入れてはいけない情報
 ・顧客や社員の個人情報(氏名・連絡先・評価・給与など)
 ・見積・原価・取引条件、契約書の本文
 ・取引先から預かった未公開の資料や図面

6. 出力の扱い
 AIが作った文章・画像は、社外に出す前に【確認者】が確認します。
 事実や数字が正しいか、既存の作品に似ていないかを確かめてください。

7. 振り返り
 【終了日】に、使えた場面・向かなかった場面を【提出先】へ送ってください。
 入れてよいか迷った情報があれば、あわせて書いてください。

問い合わせ先:【担当部署・担当者】

通知文を送ったあとは、期間の途中で一度だけ、困っていることがないかを声をかけてみましょう。入れてよいか迷った情報が途中で出てきたら、その場で判断して全員に共有すると、同じ迷いが繰り返されません。振り返りで集まった面白い使い方は、次に試す業務の候補として判断表に足していきましょう。

試す業務が増えてくると、文章・画像・調べものとで使うAIが分かれ、配るアカウントの数も増えていきます。その段階で、試す場所を会社で1つに決めておくかどうかが、続けやすさを左右することになります。

面白い使い方を、会社の契約の中で試す

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約・1つの画面で使い分けられる法人向けサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・使うモデルのON/OFFを管理でき、基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

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よくある質問

生成AIの面白い活用事例は、社員10〜200名の会社でも真似できますか?
真似できるのは事例の見た目ではなく、どんな仕事にAIを当てたかという型の部分です。AI部長なら企画の壁打ち、AIタレントなら広告用の人物イメージづくり、スケッチからのデザイン案なら最初の案をたくさん出させて人が選ぶ使い方に置き換えられます。入れてよい情報を先に決め、会社で用意した環境で小さく試すと始めやすくなります。
AIで作った人物画像を、自社の広告に使ってもよいですか?
広告に使った事例もありますが、実在の人物や既存の作品、他社のキャラクターに似ていないかを、公開前に人が確かめてください。文化庁の整理では、既存の著作物に似たAI生成物を利用すると著作権の侵害となる可能性があるとされています。作った人とは別の人が確認する工程を残しておくと安心です。
社員が個人のChatGPTで面白い使い方を試すのは問題ですか?
公開済みの情報だけで試す分には大きな問題になりにくいものの、業務の情報が入ると、学習の扱いやログを会社が確かめられなくなります。個人向けの版では、学習の扱いが本人の設定やサービスの規約に任されます。業務で試すなら、学習に使わない設定とログを会社で管理できる環境を用意してから試すのがおすすめです。
匂いを作るAIや犬語翻訳のAIは、ChatGPTのような生成AIですか?
紹介のされ方を見ると、音声や画像を見分けるAIや研究段階の技術として扱われることが多く、文章を作る生成AIとは種類が分かれます。会社がすぐ真似る対象というより、AIで何ができるかを知る話題として読むのがよいでしょう。持ち帰るなら、言葉にしにくいものを言葉に置き換える、という発想のほうです。
事例に出てくる削減時間などの数字は、そのまま当てにしてよいですか?
多くは発表元の自己申告で、第三者が検証した値ではありません。たとえばLINEヤフーの年間70万〜80万時間は削減の目標で、実績の数字ではありません。横須賀市の約80%も、アンケートに回答した職員が母数です。自社で試すときは、1週間の試行で自分たちの数字を取るほうが判断に使えます。
社内で試すとき、最初に決めることは何ですか?
試す業務を1つ、入れてよい情報の範囲、使う環境、出力を確認する人の4つです。この4つを通知文にまとめて試す社員にだけ送り、1週間後に使えた場面と向かなかった場面、入れてよいか迷った情報を集めます。迷った情報は、そのまま社内ルールの項目になります。

まとめ

生成AIの面白い活用事例から会社が持ち帰ってよいのは、AIタレントは人物画像づくり、AI部長は企画の壁打ち、スケッチからのデザイン案は案出しといった使い方の型です。見た目をそのまま真似るのではなく、自社のどの仕事に置き換えるかを先に決めることになります。

線を引くのは、入れる情報と使う環境の2つです。公開済みの情報と自分で書いた下書きから始め、顧客・社員・取引先から預かった情報は、学習に使わない設定とログを会社で管理できる環境が整うまで入れないでください。試すときは1つの業務を1週間、決めた社員だけで行い、通知文のひな形で線引きを先に伝えておきましょう。

法人のAI活用に関するほかの記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。大手企業の業務での事例と、会社の環境で真似る手順の全体像は生成AIの活用事例12件にまとめています。