
生成AIの活用事例とは、文章・画像・プログラムなどを作り出す生成AIを、企業が実際の業務に組み込み、その使い方や効果を公表したものです。各社の発表を並べてみると、業種や業務は違っても、利用環境が読み取れる事例はいずれも、社員の個人アカウントではなく会社が用意した環境で生成AIを使っています。この記事では、各社の発表と公的機関の記事で確認できた11社・12件の事例を、文書作成・問い合わせ対応・社内ナレッジ検索・広告・プログラミング・社内アプリの内製という業務別に紹介します。あわせて、事例ごとの利用環境、成果の数字の読み方、社員10〜200名の会社が同じ業務で真似るときの手順までを解説します。
生成AIとは|従来のAIとの違い
生成AIとは、大量のデータから学習したモデルを使って、文章・画像・音声・プログラムなどの新しい内容を作り出すAIのことです。人が文章で質問や指示を入力すると、その場で回答や下書きが返ってきます。業務で使われる代表的なサービスには、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityなどがあります。
従来のAIとの違いは、何を出力するかにあります。これまで企業で使われてきたAIの多くは、画像から不良品を見分ける、過去の売上から来月の需要を予測する、といった判別や予測のために、目的ごとに作られたものでした。生成AIは、1つのモデルで文章の下書き・要約・翻訳・アイデア出し・プログラムの作成まで幅広くこなします。そのため、特定の部署の専用システムにとどまらず、全社員の日常業務に広がりやすいという特徴があります。
一方で、生成AIはもっともらしい誤りを出すことがあり、入力した内容の扱いにも注意が要ります。この2点は、後半のリスクと利用ルールの節で詳しく扱います。
事例を探すときの注意:活用事例として紹介される記事には、需要予測や外観検査など、生成AIではないAIの事例が混ざっていることがあります。この記事では、生成AIを使ったことが各社の発表や公的機関の記事で確認できる事例を扱います。
調査の数字で見る、企業の生成AI活用の現状
生成AIを活用する企業は増えていますが、会社の規模が小さいほど活用率は低く、中小企業では会社として導入せず社員個人の判断に任せている会社が多数を占めています。個別の事例を見る前に、公的機関や金融機関が公表している3つの調査で全体像を確認します。
規模が小さいほど活用率は低い(帝国データバンク・2026年3月調査)
帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査」(調査期間2026年3月17日〜31日、全国23,349社を対象に有効回答10,312社、2026年5月14日公表)によると、生成AIを活用している企業の割合は、大企業46.5%、中小企業32.4%、小規模企業28.0%でした。規模が小さくなるほど低くなり、大企業と小規模企業の差は18.5ポイントあります。
活用している業務(活用企業3,560社が母数、複数回答)としては、文章の作成・要約・校正45.1%、情報収集21.8%、企画立案時のアイデア出し11.0%が挙がっています。懸念としては、情報の正確性50.4%、専門人材・ノウハウ不足41.3%、活用すべき業務の範囲40.0%、情報漏洩のリスク33.5%が挙がりました。また、活用している企業の86.7%が効果が出ていると答えています。
中小企業の64.9%は個人の判断に任せている(商工中金・2026年1月調査)
商工組合中央金庫「中小企業の生成AIの利用にかかる調査」(2026年1月調査。取引先の中小企業10,772社に送付し、有効回答3,892社・回収率36.1%。調査期間2025年12月19日〜2026年1月16日、2026年3月31日公表)では、会社としての生成AIへの向き合い方が次のように分かれました。
- 会社で導入している:16.3%
- 会社での導入はないが、個人のAI利用を推奨している:14.9%
- 会社での導入はなく、使用は個人の判断に任せている:64.9%
- 禁止・制限・その他:3.9%
同調査は、会社として導入した企業(592社)は、個人登録のAI利用を推奨している企業(534社)に比べて、経営へのプラス効果を感じている割合が10ポイント以上高く、会社による導入のほうが効果につながる可能性が示唆されると分析しています。会社で導入するか、個人の登録を推奨するかで、感じられる効果に差が出ている可能性があるということです。なお、この比較には、使用を個人の判断に任せている64.9%の企業は含まれていません。
導入または推奨している積極活用層(31.1%)の用途は、メール・報告書・議事録の作成・要約が74.0%、デスクワーク支援48.7%、戦略・アイデア出し30.0%、デザイン生成29.3%でした。課題については、この設問に回答した企業のうち、導入以前からの課題に分類された「具体的な活用場面が不明」が35.6%、導入検討フェーズの課題に分類された「導入を推進する人材がいない」が32.0%、導入後の課題に分類された「社内ルール・方針整備が追い付かない」が25.1%でした。
活用方針を定めた企業は約半数(総務省・令和7年版情報通信白書)
総務省「令和7年版 情報通信白書」が紹介する日本企業の調査では、生成AIの活用方針として積極的に活用する、または活用領域を限定して利用すると答えた企業の合計が、2024年度は49.7%で、2023年度の42.7%から増えました。一方で、中小企業では約半数が活用方針を明確に定めていないとされています。
調査から読み取れること:会社として環境を用意して導入するかどうかで、効果の感じ方に差が出ている可能性があると、商工中金の調査は示しています。大企業の事例を真似るときも、この点が出発点になります。
※調査の数字は各調査主体の公表資料によるものです。項目ごとの母数と回答形式は、各公表資料でご確認ください。商工中金の積極活用層31.1%は同調査の表記です(同調査の内訳0.9・4.1・11.2・14.9%の合計が31.1%。構成比は四捨五入による)。
業種別に見る生成AIの活用事例12件と、各社が使っている環境
業種別に並べると、製造・金融・通信・広告と業種は違っても、利用環境が発表から読み取れる事例は、いずれも個人のアカウントではなく会社として用意した環境で生成AIを使っています。ここでは事例ごとに、何に使ったか、どの環境で使ったか、いつ誰が発表したかを並べます。成果の数字は、次の節から業務別に紹介します。
製造業の事例
- 何に使ったか:戦略策定や商品企画、製造工程に関する質問、品質規定や過去事例の参照
- 使った環境:OpenAIの大規模言語モデルをベースに自社開発した社内向けAIアシスタント「ConnectAI」を、国内の全社員約12,400人に提供
- 発表:2024年6月、同社ニュースルーム(導入から1年の実績)
- 何に使ったか:大みか事業所の品質保証業務で、トラブル事例の検索・分析と初報レポートの作成
- 使った環境:社内の Generative AIセンターが開発した仕組みを、2024年10月〜2025年3月に実証
- 発表:2025年6月、同社ニュースリリース
- 何に使ったか:建設機械の部品を加工・組み立てる会社で、在庫管理・不良品管理・作業実績などの社内アプリ約20種類を内製
- 使った環境:プログラミングの専門家ではない専務が、ノーコードツール(プログラムを書かずにアプリを作れる道具)とAIを使って作成
- 発表:2025年7月、中小企業基盤整備機構のJ-Net21の記事
金融・保険業の事例
- 何に使ったか:稟議書の作成アシスト、レポートの要約、行内手続きの照会など110以上のユースケース
- 使った環境:Microsoftの法人向けクラウドサービスであるAzure OpenAI Serviceと連携したMUFG版ChatGPT環境
- 発表:2023年9月、MUFGのサイト
- 何に使ったか:金融市場取引業務の社内問い合わせ対応。システムの仕様書・業務マニュアル・FAQを生成AIに読み込ませ、社内の問い合わせ対応を一部自動化
- 使った環境:カサナレ社との協業で構築
- 発表:2024年8月、同社リリース
- 何に使ったか:メールの下書き、要約、翻訳、コードの生成
- 使った環境:専用環境で動く従業員専用AIアシスタント「SMBC-GAI」。Microsoft Teamsに統合し、入力した情報が社外に出ない設計
- 導入:2023年7月(同社グループのサイトの記事による)
- 何に使ったか:社内業務での生成AI利用
- 使った環境:自社開発の社内用LLM(大規模言語モデル)を2024年7月1日に導入
- 発表:2025年4月、同社のプレスリリース(PR TIMES)
通信・ITの事例
- 何に使ったか:LINEの「auサポート」のチャットボットで、お客さまの入力の要約、足りない情報の聞き返し、担当者への引き継ぎ時の要約
- 使った環境:自社の顧客サポートの仕組みに組み込み
- 発表:2024年3月、同社ニュースルーム
- 何に使ったか:システム開発でのプログラム作成支援(GitHub Copilot)
- 使った環境:2024年10月にGitHub社とパートナー契約を結び、同社の表現で「安価かつセキュアな環境」で利用
- 発表:2024年12月、同社サイトの記事
- 何に使ったか:システム開発でのプログラム作成支援(GitHub Copilot)
- 使った環境:正式に提供が始まった機能(GA機能)だけを使わせる等の利用ポリシーを定めたうえで、会社として提供。GitHub Enterprise利用者6,012名のうちCopilot登録は3,039名
- 発表:2025年9月、同社の開発者向けブログ
広告業の事例
- 何に使ったか:広告コピーの自動生成(2023年5月発表)と、広告用の商品画像の自動生成(2023年12月発表)
- 使った環境:広告コピーは、自社開発の大規模言語モデルとChatGPTのAPI(プログラムから呼び出す接続口)を組み合わせて利用
- 発表:同社ニュースリリース
利用環境で分けると、岡田研磨を除く11件は次の5つの型に整理できます。
- 自社で開発した社内AI:パナソニック コネクト、日立製作所、ライフネット生命保険
- 法人向けクラウド上に作った社内AI:三菱UFJフィナンシャル・グループ(Azure OpenAI Service)
- 専用環境を社内のチャットツールに統合:三井住友フィナンシャルグループ(Microsoft Teams)
- 開発支援AIの法人契約:NTTデータ、NTTドコモ(GitHub Copilot)
- 自社のサービスや業務の仕組みに組み込み:KDDI、サイバーエージェント、三菱UFJ信託銀行
岡田研磨は、記事の要点がプログラミングの専門家ではない専務による社内アプリの内製にあり、生成AIの契約形態はこの一覧の対象外としています。いずれの型も、誰がどのAIを使うかを会社が決めている点は同じです。
※事例の出典は、各社の公式発表(ニュースルーム・リリース・公式サイトの記事・開発者ブログ)、同社のプレスリリース配信(ライフネット生命保険)、公的機関の掲載記事(岡田研磨。中小企業基盤整備機構のJ-Net21の記事)です。報道だけで確認できる数字や、企業名を伏せた事例は載せていません。
文書作成・要約・翻訳の活用事例
文書の作成・要約・翻訳は、多くの企業が取り組んでいる使い道で、調査でも活用業務として大きな割合を占めています。前掲の帝国データバンク調査では、活用企業3,560社のうち文章の作成・要約・校正に活用している企業が45.1%(複数回答)、商工中金調査でも積極活用層の74.0%がメール・報告書・議事録の作成・要約に使っていました。
三井住友フィナンシャルグループ:メールの下書き・要約・翻訳
三井住友フィナンシャルグループは、2023年7月に従業員専用のAIアシスタント「SMBC-GAI」を導入しました。普段使っているMicrosoft Teamsの中から呼び出せるようにし、メールの下書き、文章の要約、翻訳、コードの生成に使っています。同社グループのサイトの記事によると、利用件数は導入当初の1日約6,000件から、2024年3月更新の記事の時点で1日約12,000件に増えました(同社発表)。
三菱UFJフィナンシャル・グループ:稟議書の作成アシストとレポート要約
三菱UFJフィナンシャル・グループは、Azure OpenAI Serviceと連携したMUFG版ChatGPTの環境を用意し、稟議書の作成アシスト、レポートの要約、行内手続きの照会など110以上のユースケースを挙げています(2023年9月、MUFGのサイト)。この発表には、削減時間などの効果の数字は書かれていません。
社員10〜200名の会社に置き換えると
同じ使い道は、会社の規模を問わずそのまま応用できます。たとえば次のような業務です。
- 議事録:会議の録音を文字起こしした文章を読ませ、決定事項・宿題・期限の3つに分けて要約させる
- 提案書・見積書の添え状:過去の提案書を下敷きに、今回の相手と条件に合わせた構成案と文面を作らせる
- 取引先へのメール:伝えたい要点を箇条書きで渡し、丁寧な文面に整えさせる。お詫びや値上げのお願いなど、書き出しに悩む文面ほど時間の差が出ます
- 社内報告書:日報や週報の箇条書きから、上長向けの報告文にまとめさせる
- 会計事務所・士業:税制改正や法改正の資料を要約させ、顧問先向けのお知らせの下書きを作る。顧問先ごとの数字や個人情報は入れず、一般的な説明部分に使う
どの業務でも、最後に人が読んで直す前提で使います。生成AIが作るのは下書きで、送る・提出する判断は人が行います。
顧客からの問い合わせ対応の活用事例
顧客からの問い合わせ対応では、生成AIに回答そのものを任せるのではなく、要約や聞き返しで担当者を支える使い方が事例になっています。
KDDI:チャットボットで要約と聞き返し
KDDIは、LINEの「auサポート」のチャットボットに生成AIを組み込みました。同社によると、問い合わせの約3割は文章が長い、または必要な情報が足りないために対応が難しいものでした。そこで生成AIが、お客さまの入力を要約し、足りない情報を聞き返し、担当者に引き継ぐときには、それまでのやり取りを要約して渡すようにしました。提供開始前の事前検証では、既存のチャットボットと比べて、対応時間を約5分、従来の約2割短縮できた事例を確認したと発表しています(2024年3月、同社発表。事前検証の結果)。
回答の最終判断は担当者に残し、担当者が読む量と聞き返す手間を減らす設計になっている点が参考になります。
社員10〜200名の会社に置き換えると
小さな会社では、チャットボットを作るところから始める必要はありません。問い合わせメールの本文を会社の環境の生成AIに読ませ、要点の整理と返信の下書きを作らせ、担当者が確認して送る、という形でKDDIの事例と同じ考え方を取り入れられます。よくある質問への回答例を社内で整えておくと、下書きの精度も上がります。ただし、お客さまの氏名や連絡先などの個人情報を入力するかどうかは、後述する利用ルールで先に決めておきます。
社内問い合わせ・社内ナレッジ検索の活用事例
社内の規程・過去事例・手続きを探す作業は、生成AIに社内の資料を参照させることで短くできる、というのが各社の事例に共通する使い道です。
日立製作所:品質保証のトラブル事例検索
日立製作所は、大みか事業所の品質保証業務で、過去のトラブル事例の検索・分析と、初報レポートの作成に生成AIを使う実証を2024年10月から2025年3月まで行いました。社内のGenerative AIセンターが開発した仕組みで、検索にかかる時間を約9割、分析とレポート作成の時間をそれぞれ8割以上削減したと発表しています(2025年6月、同社発表。実証実験の結果)。
三菱UFJ信託銀行:仕様書・マニュアル・FAQを読ませた社内問い合わせ対応
三菱UFJ信託銀行は、カサナレ社と協業し、金融市場取引業務の社内問い合わせ対応に生成AIを使っています。システムの仕様書、業務マニュアル、FAQを生成AIに読み込ませ、社内の問い合わせ対応を一部自動化する取り組みで、2024年4月から業務で利用し、担当部署の対応時間を50%削減したと発表しています(2024年8月、同社発表)。同社は、他の領域に広げれば年間数十万時間以上の効率化を見込めるともしていますが、こちらは見込みです。
パナソニック コネクトとMUFG:規定・手続きの参照
パナソニック コネクトは、社内向けAIアシスタントの使い道として、品質規定や過去事例の参照を挙げています。MUFGも、MUFG版ChatGPTのユースケースの1つに行内手続きの照会を挙げています。いずれも、社員が規程集やマニュアルを自分で探す代わりに、AIに尋ねて該当箇所を示してもらう使い方です。
社員10〜200名の会社に置き換えると
規模の小さな会社でも、就業規則、経費精算のルール、業務マニュアル、製品の仕様書などを生成AIに読ませれば、社内の問い合わせ窓口として使えます。総務や情報システムの担当者に同じ質問が何度も来ている会社ほど、効果を実感しやすい使い道です。読ませるマニュアルそのものをAIで作る手順は、マニュアル作成をAIで進める手順とひな形にまとめています。
注意点は2つあります。1つは、読ませる資料を会社の環境の中に置くことです。社員の個人アカウントに社内規程を読み込ませると、会社から見えない場所に社内資料が残ります。もう1つは、回答の根拠になった資料名や条文を示させ、人が元の資料で確かめることです。
広告・クリエイティブ制作(画像生成)の活用事例
広告の分野では、コピーや商品画像を数多く作って試す作業に生成AIが使われています。
サイバーエージェント:広告コピーと商品画像の自動生成
サイバーエージェントは、広告効果を予測する「極予測AI」で、広告コピーの自動生成に生成AIを使っています。自社で開発した大規模言語モデルと、ChatGPTのAPIを組み合わせた仕組みです(2023年5月、同社発表)。
同社は2023年12月に、広告用の商品画像を自動生成する機能を発表しました(2024年1月から順次本格運用の予定と発表)。コピーと画像の両方で、たくさんの案を作って試す工程に生成AIを組み込んでいる点が特徴です。
社員10〜200名の会社に置き換えると
- チラシやWeb広告の見出し案を10案出させ、社内で選ぶ
- ECサイトの商品説明文を、商品の仕様から下書きさせる
- SNS投稿の文面を、伝えたいことから複数の言い回しで作らせる
- イベントの告知画像のたたき台を作らせ、デザイナーや担当者が仕上げる
広告やWebで公開するものは、社内で使う文書よりも確認を厚くします。特に画像は、既存の作品や他社の商標に似ていないか、実在の人物に見えないかを、公開前に人が確かめる工程を必ず入れます。詳しくは著作権の節で扱います。
プログラミング(開発支援)の活用事例
プログラミングでは、開発者向けの支援AIを会社として契約し、使い方のルールを決めて配る形の事例が発表されています。
NTTデータ:GitHub Copilotを会社の環境で
NTTデータは、2024年10月にGitHub社とパートナー契約を結び、プログラムの作成を支援するGitHub Copilotを、同社の表現で「安価かつセキュアな環境」で使っています。100以上のプロジェクト、2,000以上のユーザーが利用し、GitHub Copilotを利用した開発者約230名へのアンケートでは、64%が生産性の向上を実感したと答えました(2024年12月、同社発表)。また、2027年度までに開発工程全体で生産性を50%向上させることを目標に掲げています。この50%は目標で、実績ではありません。
NTTドコモ:利用ポリシーと採用率
NTTドコモは、GitHub Copilotについて、正式に提供が始まった機能だけを使わせる等の利用ポリシーを定めて提供しています。GitHub Enterprise利用者6,012名のうちCopilot登録は3,039名で、約3か月の間にAIが提案した2,131,503件のうち517,524件が採用されました(採用率24.28%)。同社はこれを、月平均で約20人月に相当する削減と試算しています(2025年9月、同社発表)。
採用率は、AIの提案のうち4件に1件ほどが使われたという意味です。残りの提案は開発者が不要と判断しており、人の判断を前提にした道具であることが数字からも読み取れます。
社員10〜200名の会社に置き換えると
社内に開発者がいない会社でも、表計算ソフトの関数やマクロの作成、データの集計手順の作成などに、同じ考え方を使えます。作ってもらった数式やマクロは、少ないデータで結果を確かめてから本番のファイルに使います。社内に開発者がいる会社では、開発支援AIを会社の契約で用意し、社外秘のプログラムを個人のアカウントに貼り付けない運用にしておくことが、NTTデータやNTTドコモの事例から学べる点です。
個人のアカウントに社内のコードや文書を貼る運用では、会社に何も残りません。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
社内アプリの内製の活用事例|社員80人の製造業
AIの活用は大企業だけのものではなく、社員80人の製造業で、プログラミングの専門家ではない専務が社内アプリを約20種類作った事例があります。
岡田研磨:専務がノーコードツールとAIで約20種類のアプリを内製
中小企業基盤整備機構のJ-Net21が2025年7月に掲載した記事によると、石川県津幡町で建設機械の部品の加工・組み立てを行う岡田研磨(従業員80人)では、プログラミングの専門家ではない専務が、ノーコードツールとAI(記事では生成AIではなく「AI」と表記)を使って、在庫管理、不良品管理、作業実績の記録など約20種類の社内アプリを内製しました。同記事によると、タブレットの導入や稼働状況の見える化システムを含むDXの結果、会社全体で月330時間の労働時間と、月5,600枚のA4用紙を削減しています。
この数字は、公的機関の記事が伝えるDX全体の効果で、生成AIだけの効果を切り出したものではありません。それでも、プログラミングの専門家ではない経営層が、AIを使いながら業務の仕組みそのものを変えた点は、社員10〜200名の会社にとって参考になります。
この事例から学べること:AIは、文章を作る道具であると同時に、分からないことを尋ねながら仕組みを作るための相談相手にもなります。社内にプログラミングの専門家がいないことは、始めない理由にはなりません。
全社員に社内専用の生成AIを配った事例
大企業の事例では、一部の部署で試すだけでなく、社員が広く使える社内専用の生成AIを配り、利用状況と効果を数字で追っています。
パナソニック コネクト:約12,400人に社内AIアシスタント
パナソニック コネクトは、OpenAIの大規模言語モデルをベースに自社開発した社内向けAIアシスタント「ConnectAI」を、国内の全社員約12,400人に提供しています。2024年6月の発表によると、12か月でのアクセス回数は1,396,639回で、直近3か月は前年同期比で41%増えました。全社員の労働時間の削減は12か月で計18.6万時間とされています(社員アンケートにもとづく同社発表)。同社は導入の目的の1つに、シャドーAI(会社が把握していない生成AIの業務利用)のリスクの軽減を掲げています。
三井住友フィナンシャルグループ:Teamsに統合した従業員専用AI
三井住友フィナンシャルグループのSMBC-GAIは、従業員専用の環境でMicrosoft Teamsから使える形にしたものです。1日の利用件数が約6,000件から、2024年3月更新の記事の時点で約12,000件に増えたと発表しています(同社発表)。
ライフネット生命保険:総合職正社員203名に自社開発の社内用LLM
社内専用の生成AIは、数万人規模の会社だけの話ではありません。総合職正社員203名のライフネット生命保険は、2024年7月1日に自社開発の社内用LLMを導入しました。2025年1月時点の利用率は87%で、2024年8月に実施した社内調査では、利用者の業務時間を約152時間削減したと発表しています(2025年4月、同社発表。回答した56名へのアンケートによる)。
※ライフネット生命保険は東京証券取引所プライム市場の上場企業です。総合職正社員は203名ですが、この記事では中小企業の事例としては扱っていません。
共通点:3社とも、社員向けの社内専用の環境を用意しています。利用回数や利用率を会社が数字で示せるのは、利用ログを取っているからです。削減時間は、社員アンケートなど別の方法で集計されています。
事例の成果の数字の読み方|同社発表・アンケート・見込み・目標
事例の数字は、実際に集計した実績か、社員へのアンケートか、見込み値か、目標かを確かめてから読む必要があります。同じ時間削減でも、根拠が違えば意味が変わるためです。この記事で紹介した数字を、根拠の種類で分けると次のようになります。
- 利用状況の実績(同社の集計):パナソニック コネクトのアクセス回数1,396,639回、三井住友フィナンシャルグループの1日約12,000件(2024年3月更新の記事の時点)、ライフネット生命保険の利用率87%、NTTドコモの採用率24.28%
- アンケートにもとづく効果:パナソニック コネクトの18.6万時間、ライフネット生命保険の約152時間、NTTデータの生産性向上を実感64%
- 実証実験・事前検証の結果:日立製作所の検索時間約9割削減、分析・レポート作成各8割以上削減、KDDIの対応時間約5分(従来の約2割)短縮(提供開始前の事前検証)
- 業務利用の実績(同社発表):三菱UFJ信託銀行の担当部署の対応時間50%削減
- 公的機関の記事によるDX全体の効果:岡田研磨の会社全体で月330時間・月5,600枚の削減(J-Net21の記事による。タブレット導入や稼働状況の見える化システムを含む)
- 試算・見込み値:NTTドコモの月平均約20人月相当、三菱UFJ信託銀行の他の領域に広げた場合の年間数十万時間以上
- 目標:NTTデータの2027年度までに生産性50%向上
いずれも各社の発表や公的機関の記事による数字で、第三者が検証した値ではありません。社内の稟議や説明資料に引用するときは、どの種類の数字かを添えて書くと、読み手の誤解を防げます。
大企業の数字を1人あたりに直す
大企業の数字が大きく見えるのは、人数が多いためでもあります。パナソニック コネクトの18.6万時間を、提供対象の全社員約12,400人で割ると、1人あたり年約15時間です(186,000時間÷12,400人=15.0時間)。月にすると約1.25時間になります。
この計算の前提は次のとおりです。18.6万時間は社員アンケートにもとづく同社の発表値であり、分母には使わなかった社員も含む全社員数を使っています。実際に使った人だけで割れば、1人あたりの時間はこれより長くなります。
仮に同じ比率が当てはまるとすれば、社員10名の会社では年150時間、50名なら年750時間という単純な掛け算になります。ただし、これは業務内容も環境も違う会社の数字を当てはめただけで、見込みではありません。自社の効果は、後述する効果の測り方で、自社の業務について測ることをおすすめします。
発表の時期にも注意する
紹介した事例の発表は2023年〜2025年です。生成AIのモデルや機能はその後も更新が続いているため、当時できなかったことが今はできる場合も、当時の設定や画面が今は変わっている場合もあります。事例は、使い道と進め方の参考にし、具体的な機能は現在の各サービスの公式情報で確かめます。
事例の業務をすぐ試せるプロンプト例
事例の業務を小さく試すなら、次のような指示文(プロンプト)から始められます。どれも、実在の顧客名や個人情報を入れずに試せる形にしています。
議事録の要約
次の会議メモを、決定事項、担当者つきの宿題、次回までの期限の3つに分けて箇条書きで整理してください。メモに書かれていないことは推測で補わず、不明と書いてください。(この下に会議メモを貼る)
取引先へのメール
取引先に、納期が1週間遅れることをお詫びするメールを書いてください。遅れの理由は部材の入荷遅れ、代わりの対応として分納を提案します。丁寧ですが長すぎない、300字程度の文面にしてください。
社内規程の質問
次の経費精算規程を読んで、出張時の宿泊費の上限と、領収書がない場合の扱いを答えてください。回答の根拠になった条文の番号も示してください。規程に書かれていない場合は、書かれていないと答えてください。(この下に規程の本文を貼る)
広告の見出し案
社員30名の住宅リフォーム会社が、地域の新聞折込チラシで浴室リフォームを案内します。40代〜60代の持ち家世帯に向けて、20字以内の見出し案を10個出してください。誇大な表現や、他社との比較は使わないでください。
表計算の数式
表計算ソフトで、A列に日付、B列に担当者名、C列に売上金額が入っています。担当者ごとの月別売上を別のシートに集計する方法を、数式つきで手順を追って説明してください。
出力は必ず人が確認します。特に数字、固有名詞、条文の番号は、元の資料と照らし合わせてから使います。
生成AIのリスクと利用ルール
生成AIの業務利用で押さえるべきリスクは、情報漏えい、誤った内容(ハルシネーション)、著作権などの権利侵害の3つです。事例の会社の中には、会社の環境に加えて利用ポリシーを定めている例があります(NTTドコモなど)。
情報漏えい:個人情報保護委員会の注意喚起
個人情報保護委員会は、2023年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しました。要点は次の3つです。
- 個人情報取扱事業者が、個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内かどうかを十分に確認すること
- 本人の同意を得ずに個人データを入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反する可能性があること
- そのため、個人データを含むプロンプトを入力する場合は、提供事業者が当該個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認すること
同委員会のパンフレットは、提供者が入力情報を学習に使う場合、個人データを入力すると提供者へ個人データを提供したことになる、とも説明しています。このため、入力した内容がどう扱われるかを会社が把握できない環境で、顧客や社員の個人データを入力することは避ける必要があります。社員が個人アカウントで使っている場合、学習に使うかどうかの設定は本人任せになり、会社からは確かめられません。
ハルシネーション:もっともらしい誤り
ハルシネーションとは、生成AIが事実と異なる内容を、もっともらしい文章で出力することです。存在しない条文や数字、実在しない出典を示すこともあります。前掲の帝国データバンク調査でも、懸念として情報の正確性(50.4%)が挙がっていました。
対策は、AIの出力を下書きとして扱い、数字・固有名詞・法令や規程の条文は元の資料で確かめることです。社内ナレッジ検索のように、回答の根拠になった資料名を示させる使い方にすると、確認の手間を減らせます。
著作権などの権利侵害
生成AIで作った文章や画像が、既存の作品や他社の商標に似てしまうことがあります。特定の作家や作品、キャラクターに似せるよう指示することは避け、広告やWebなど社外に公開するものは、公開前に人が似ているものがないかを確かめます。社外の文章を読み込ませて要約させる場合も、社内での検討に使う範囲にとどめ、要約をそのまま公開しない運用にしておきます。
入力してよい情報の範囲を決める
ルールの中心になるのは、何を入力してよいかの線引きです。次の点を社内で決めておくと、社員が迷わずに使えます。
- 入力してよい情報公開済みの情報、一般的な文章の下書き、社内の文書のうち会社が許可したもの
- 入力してはいけない情報顧客や社員の個人情報、取引先から預かった秘密情報、未発表の決算や人事の情報など。会社の環境でも扱わない情報を明記する
- 使ってよい環境業務では会社が用意した環境だけを使い、個人アカウントでの業務利用はしない
- 出力の確認社外に出すもの、数字や条文を含むものは、人が元の資料で確認してから使う
- 相談先判断に迷ったときに誰に聞けばよいかを決めておく
点検項目を網羅的に確認したい場合は、生成AIのセキュリティ対策チェックリストも参考になります。
真似る前に|事例の会社は会社の環境で使っている
事例から真似るべきなのは使い道だけではなく、会社として用意した環境で使っているという前提のほうです。
紹介した事例の形はさまざまですが、利用環境が発表から読み取れる事例の中に、社員それぞれが自分で登録した個人アカウントで使っている例はありません。パナソニック コネクトは、社内向けAIアシスタントを全社員に配った目的の1つに、シャドーAIのリスクの軽減を挙げています。
一方、中小企業では事情が逆です。前掲の商工中金調査では、64.9%の中小企業が生成AIの使用を個人の判断に任せていました。そして同調査は、会社として導入した企業のほうが、個人登録のAI利用を推奨している企業より経営へのプラス効果を感じる割合が10ポイント以上高く、効果につながる可能性が示唆されると分析しています(個人の判断に任せている企業との比較ではありません)。
個人アカウントのまま業務に使うと、次のような問題が残ります。
- 入力内容の扱いを会社が決められない:学習に使わせない設定をしているかどうかは、社員本人の設定次第になる
- 誰が何に使っているかが見えない:利用ログを会社が取れないため、利用状況を把握できず、問題が起きても追えない
- 退職すると履歴が会社に残らない:業務で作った下書きや会話の履歴は本人のアカウントに残り、会社の資産にならない。逆に、退職後も本人の手元に業務の情報が残る
- 使える人と使えない人の差が広がる:自費で有料版を使う人だけが便利になり、社内の使い方がそろわない
ポイント:大企業の事例で利用回数や利用率を会社が数字で示せるのは、会社の環境で配り、利用ログを取っているからです。削減時間は社員アンケートなど別の方法で集計されています。社員10〜200名の会社が事例を真似るときも、使い道より先に、会社の環境を用意することから始めると、同じ土台に立てます。
自社で真似る4つの手順と、導入を成功させるポイント
社員10〜200名の会社が事例を真似るときは、業務を1つ選ぶ、会社の環境を用意する、ルールを決めて教える、効果を測る、の4つの手順で進めると、事例の会社と同じ土台で始められます。
手順1:業務の選び方(目的を決めて、小さく始める)
最初の業務は、目的がはっきりしていて、小さく試せるものを1つ選びます。いきなり全業務に広げようとすると、何が効いたのかが分からなくなります。選ぶときの目安は次の3つです。
- 毎週のように繰り返している作業である(議事録、定型メール、報告書など)
- 出来上がったものが正しいかを、人がすぐに確かめられる
- 個人情報や取引先の秘密情報を含まない、または含む場合の扱いを決められる
候補としては、議事録の要約、取引先へのメールの下書き、就業規則や社内マニュアルへの質問対応が始めやすい業務です。商工中金調査で、この設問に回答した企業のうち導入以前からの課題に分類された「具体的な活用場面が不明」が35.6%あったように、使い道が決まらないまま環境だけ用意しても定着しません。この記事の業務別の事例から、自社でも毎週発生している業務を1つ選ぶところから始めます。
手順2:会社の環境を用意する
次に、業務で使う生成AIを会社として用意します。社員10〜200名の会社が現実的に選べるのは、主に次の3つです。
- 各AIサービスの法人向けプランを契約する:ChatGPTやClaudeなどの法人向けプランを会社名義で契約する方法です。多くは1人あたりの月額料金です。ChatGPTの法人プランについてはChatGPTの法人向けプランと料金で解説しています
- 複数のAIをまとめて使える法人向けサービスを契約する:1つの画面と1つの管理画面で、複数の生成AIを使い分けられる形です。考え方はマルチAIの解説、国内の主なサービスの比較は法人向け生成AIサービスの比較にまとめています
- 自社で開発する:パナソニック コネクトやライフネット生命保険のような形です。開発と保守を担える人がいる会社向けの選択肢です
どの方法でも、確認するのは同じ点です。入力した内容を学習に使わせない設定を会社側で全員に適用できるか、利用ログを会社が取れるか、社員の追加と停止を管理者ができるか、の3つです。
手順3:ルールを決めて、社員に教える
環境を用意したら、前の節で挙げた入力してよい情報の範囲を1枚の文書にまとめ、全社員に説明します。社員教育は、長い研修より、実際の業務で使う短い説明会のほうが定着しやすくなります。手順1で選んだ業務を題材に、プロンプトの書き方と、出力を確認する手順を一緒に試すと、ルールと使い方を同時に伝えられます。
商工中金調査では、この設問に回答した企業のうち導入後の課題に分類された「社内ルール・方針整備が追い付かない」が25.1%ありました。最初から完璧なルールを目指すより、禁止事項と相談先だけを先に決め、使いながら足していくほうが進めやすくなります。
手順4:効果の測り方
効果は、導入前に測っておかないと比べられません。手順1で選んだ業務について、導入前に1件あたりの作業時間を数人に記録してもらい、導入後に同じ方法で記録します。あわせて、次の2種類の数字を分けて見ます。
- 利用の数字:利用率(使った社員÷配った社員)や利用回数。会社の環境の利用ログから取れる実績です。ライフネット生命保険は利用率87%を公表しています
- 効果の数字:作業時間の削減。実測か、社員へのアンケートかを分けて記録します
事例の数字の読み方で見たとおり、アンケートにもとづく数字と実測の数字は意味が違います。社内で報告するときも、どちらの数字かを添えておくと、次の投資判断に使いやすくなります。
推進体制:担当者を1人決める
商工中金調査では、この設問に回答した企業のうち導入検討フェーズの課題に分類された「導入を推進する人材がいない」が32.0%でした。社員10〜200名の会社では、専任の部署を作る必要はありません。取りまとめ役を1人決め、各部署に使い方を相談できる人を1人ずつ置くだけでも、進み方が変わります。岡田研磨の事例のように、経営層の1人が自ら使ってみせることも、社内に広げる力になります。
導入を成功させるポイントのまとめ:目的を決めて1業務から小さく始める、会社の環境を先に用意する、ルールは短く始めて育てる、導入前後で同じ方法で測る、取りまとめ役を1人決める。事例の会社がしていることを、会社の規模に合わせて小さく行えば足ります。
個人アカウントから会社の環境へ移る手順
すでに社員が個人アカウントで生成AIを使っている会社では、禁止するのではなく、会社の環境を用意してそちらへ移ってもらう手順で進めると、見えない利用を減らしやすくなります。
ステップ1:使っている人とツールを棚卸しする
最初に、誰がどの生成AIを、どの業務に使っているかを把握します。無記名のアンケートや部署ごとの聞き取りで、使っているサービス名、無料版か有料版か、どんな業務に使っているかを集めます。ここで利用を責めると本当のことが出てこなくなるため、目的は会社の環境を用意するための調査であることを先に伝えます。個人で有料版を契約してまで使っている社員は、社内で使い方に詳しい人でもあり、後の推進役の候補になります。
ステップ2:入力してはいけない情報を決める
棚卸しで分かった使い方をもとに、入力してはいけない情報を決めます。個人情報保護委員会の注意喚起を踏まえ、顧客や社員の個人データ、取引先から預かった秘密情報は特に明確にしておきます。会社の環境に移った後も入力しない情報と、会社の環境でなら入力してよい情報を分けて書くと、社員が判断しやすくなります。
ステップ3:会社の環境を用意して、全員に配る
会社の環境を用意するときに、次の4点を確認します。
- 学習させない設定:入力した内容をAIの学習に使わせない設定を、社員ごとの操作に任せず、会社側で全員に一律で適用できるか
- ログ管理:誰がいつどのAIを使ったかを、管理者が確認できるか。利用率を測るときにも使います
- 社員への配布:一部の社員だけでなく、使いたい社員全員に配れるか。配られなかった社員は個人アカウントに戻りやすくなるため、費用が人数でどう増えるかも確認します
- 複数AIの使い分け:社員がすでに複数のサービスを使い分けている場合、会社の環境でも同じように使い分けられるか。調べものに強いもの、長い文書の読み込みに強いものなど、用途による違いは主要4AIの違いと使い分けで解説しています
個人アカウントで使えていたことが会社の環境で使えないと、社員は元の使い方に戻ってしまいます。棚卸しで分かった使い方が、会社の環境でも同じようにできるかを確かめてから配ります。
ステップ4:個人アカウントでの業務利用を止める
会社の環境が使えるようになったら、移行の期限を決め、それ以降は個人アカウントで業務に使わないことをルールにします。個人アカウントに残っている業務の会話履歴は、必要なものを会社の環境や社内の共有フォルダに移したうえで、本人に削除してもらうよう依頼します。退職時の手続きにも、会社の環境のアカウント停止と、個人アカウントに業務の情報を残していないことの確認を加えておきます。
順番が大切な理由:会社の環境を用意する前に個人アカウントの利用だけを禁止すると、使い慣れた社員の仕事が止まるか、見えないところで使い続けられるかのどちらかになりがちです。先に会社の環境を用意し、移る道を作ってから止めるほうが、社内の協力を得やすくなります。
よくある質問
社員の少ない会社でも、事例のような効果は出ますか?
無料版の生成AIから始めてもよいですか?
社員が個人で契約したChatGPTの有料版を、会社の経費で落としてもよいですか?
最初に取り組む業務はどれがよいですか?
事例に出てくる削減時間は、自社でもそのまま見込めますか?
まとめ
生成AIの活用事例を業務別に見ると、文書作成・要約・翻訳、顧客からの問い合わせ対応、社内ナレッジ検索、広告・クリエイティブ制作、プログラミング、社内アプリの内製と、使い道は幅広く、社員80人の製造業や、総合職正社員203名の会社の事例もあります。
利用環境が読み取れる事例に共通しているのは、社員の個人アカウントではなく、会社が用意した環境で使い、利用状況を会社が把握していることです。一方、中小企業では64.9%が生成AIの使用を個人の判断に任せています。
事例の数字は実績・アンケート・見込み・目標のどれかを確かめて読み、自社で真似るときは、業務を1つ選ぶ、会社の環境を用意する、ルールを決めて教える、効果を測る、の順で進めます。すでに社員が個人アカウントで使っている会社は、会社の環境を用意してから個人アカウントでの業務利用を止める順番を守ってください。
※各社の数字は各社の発表によるもので、第三者が検証した値ではありません。事例と調査の内容は、2026年9月18日時点で各社の公式発表・公的機関のページで確認しました。紹介した取り組みの内容や数値は、その後変わっている可能性があります。
会社の環境で、4つのAIを社員に配る
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1画面で切り替えて使える法人向けのサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・使えるモデルを管理でき、自社資料を読み込ませて回答させる社内文書RAGや、よく使う指示と手順を社内限定のBOTとして共有する機能もあります。基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。UPGEAR AIの料金は月額30,000円(税抜)からで、ユーザーごとの課金はありません(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
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