医療の生成AI活用事例。退院時サマリ・紹介状・問診などの業務別の実例と指示文

医療の生成AI活用事例とは、病院や診療所が文書の下書きなどに生成AIを使い、その効果と課題を公表したものです。退院時サマリ・紹介状・IC記録・問診・オンコール記録・議事録の6つの業務の公表事例と、院内文書を含めてそのまま貼れる指示文9本を、人が確かめる点と一緒にそろえました。数字はどれも当事者による発表で、前後比較・群間比較・アンケートと測り方もそろっていない点には注意が要ります。医療AI全体の定義や6つの重点領域は医療AIとは(定義と6つの重点領域)で確かめることが出来ます。

※事例・法令・指針の内容は、2026年10月16日時点で各公式ページと公表資料を確認したものです。事例の数値はすべて当事者(病院・開発企業)の発表による自己申告で、第三者が検証したものではありません。

医療の生成AI活用事例を業務の名前で並べると

公表されているAI・生成AIの事例は、診断そのものより、医師・看護師・医師事務作業補助者が毎日書いている文書の下書きに集まっています。東京都が令和6年度の事業で公表した4件(報告書が生成AIと明記しているのは赤羽東口病院)と、大学病院などの発表を業務ごとに並べると、次のようになります。

  • 退院時サマリ・看護サマリ:恵寿総合病院、東北大学病院(治療経過の要約)、藤田医科大学病院、赤羽東口病院
  • 紹介状・返書:赤羽東口病院
  • 患者への説明記録(IC記録):兵庫医科大学病院、赤羽東口病院
  • 問診:賛育会病院(AI問診)
  • オンコール電話の記録:松原アーバンクリニック(在宅医療の診療所)
  • 会議・カンファレンスの議事録:森山脳神経センター病院(多職種カンファレンス)、赤羽東口病院(院内会議)

東京都の4件の報告書には、事業経費や実施期間、月ごとの利用件数、うまくいかなかった点まで書かれています。削減時間だけを抜き出して並べると、自院でも同じだけ減るように読めてしまいます。患者情報を扱う業務と、患者情報を入れずに始められる業務では、使ってよい環境が変わる点も押さえておきましょう。

※東京都保健医療局「医療機関におけるAI技術活用促進事業の活用事例」(一覧ページ)。都のページに公表されている活用事例は、病院3件(森山脳神経センター病院・赤羽東口病院・賛育会病院)と診療所1件(松原アーバンクリニック)の計4件です。

なぜ今、病院の文書で生成AIの事例が増えているのか

背景にあるのは、2024年4月に始まった医師の時間外労働の上限規制です。厚労省は医師の働き方改革のページで、時短の取組としてタスク・シフト/シェアやICTの活用を挙げています。

医師が書いていた文書の一部を医師事務作業補助者に任せる流れは以前からありましたが、生成AIはその下書きの段階を短くする道具として使われ始めました。令和8年度の診療報酬改定では、生成AIの文書作成補助システムを組織で使うことが、医師事務作業補助体制加算の人数の数え方にも入っています。厚労省が公表した令和8年度診療報酬改定の個別改定項目に書かれている内容です。現場で増えているのは、診断をAIに任せる話ではなく、書く時間を減らす話と考えてよいでしょう。

公表された数字は、測り方を見てから読む

事例の削減率は測り方がそろっていないため、横に並べて比べることが出来ません。同じ人が導入前と後で比べた前後比較、AIを使う群と使わない群を分けた群間比較、使った人へのアンケートでは、数字の意味が変わります。試算の前提を最小値に置いた例や、目標に対する達成率で書いた例もあり、見出しの数字だけでは自院の見込みにつながりにくくなります。

事例業務公表された数字測り方・読むときの注意
赤羽東口病院(73床)カルテ記載・サマリ・紹介状・説明記録・議事録実削減 月60.03時間(目標219.7時間に対し達成率27.32%)1件あたりの導入前後の時間差から出した自己申告。項目別の達成率は10.44%〜217.39%と幅がある
森山脳神経センター病院音声による記録・カンファレンス議事録記録1件7〜10分→2〜6分程度効果の試算は最小値(7分→2分)を基準と報告書に明記。中心は音声認識で、報告書は生成AIとは書いていない
賛育会病院AI問診患者の記入 平均11分→6〜7分、医師の転記 平均8分→0分導入前・導入後ともサンプル15の前後比較。報告書は生成AIとは書いていない
松原アーバンクリニックオンコール電話の記録診療録の作成 1件あたり15分〜20分削減日中・電話1回線での実績。約325時間は夜間・休日まで広げた想定の計算。報告書は生成AIとは書いていない(AIによる診療録の自動生成)
恵寿総合病院退院時看護サマリ平均12分20秒(非使用群)・7分5秒(使用群)群間比較(AIなし89件・AIあり100件)。同じ人の前後比較ではない
東北大学病院治療経過の要約作成時間を平均47%削減耳鼻咽喉科・頭頸部外科の医師10名、開発途中の試作システムでの検証
藤田医科大学病院退院時サマリ医師の92%が時間短縮・業務改善につながったと回答医師170名へのアンケート(複数回答あり)。計測値ではない
兵庫医科大学病院診察の音声の要約(IC記録など)削減率の公表なし2025年6月1日導入の発表

恵寿総合病院の42.5%減は群間比較なので、AIを使った看護師と使わなかった看護師が別の人である点に気をつけてみてください。東北大学病院の47%も、医療文書全般ではなく「治療経過の要約」に限った、医師10名・試作システムでの結果になります。藤田医科大学病院の92%は時間を測った数字ではなく、医師170名へのアンケートで「時間短縮、業務改善につながった」と答えた割合です。

赤羽東口病院の報告書は、目標に届かなかった項目まで達成率で載せているので、自院で試算するときの手本として読むことが出来ます。自院で効果を測るときは、同じ業務・同じ職員で導入前と後を測る形にそろえましょう。

退院時サマリ・看護サマリ|恵寿総合病院・東北大学病院・藤田医科大学病院

退院時サマリと看護サマリには、公表された事例が4件集まっています。入院中の経過を電子カルテから拾い、決まった書式にまとめる作業なので、下書きをAIに任せやすい業務になります。

恵寿総合病院×Ubie:看護師の退院時看護サマリ

石川県七尾市の恵寿総合病院とUbieは2024年9月30日、看護師が書く退院時看護サマリでの検証結果を発表しました。6週間の検証で、作成時間の平均は生成AIを使わない群が12分20秒、使った群が7分5秒(42.5%減)となり、心理的負担の評価も3.7から2.7(27.2%減)に下がったとされています。発表は第65回全日本病院学会で行われ、測定はAIなし89件・AIあり100件の群間比較でした。出典はUbieのプレスリリースPR TIMES版になります。

自院でまねするとき:看護サマリの下書き

看護サマリも患者情報を入れる業務なので、医療向けのサービスか、保存されないことを契約で確かめた環境で使い、電子カルテからの持ち出しの手順は情報システム担当と決めてから試してください。入れる材料は、氏名・IDなどを除いた看護記録の要点と、院内の看護サマリの書式の2つになります。

指示文1(看護サマリ・そのまま貼れる全文)

あなたは病棟の看護師の記録を手伝う補助者です。
以下の【看護記録の要点】から、【書式】に沿って退院時の看護サマリの下書きを作ってください。

条件
・要点に書かれていないことは書かない。足りない項目は「記載なし(要確認)」とする
・ADLは食事・排泄・移動ごとに、自立/見守り/一部介助/全介助のどれかと、具体的な様子を分けて書く。要点から判断できなければ「要確認」とする
・介護保険の区分やサービス名は、要点の表記のまま写す
・患者の氏名・ID・生年月日・住所は書かない
・最後に、要点と食い違う箇所や足りない項目があれば最大3つ、なければ「なし」と書く

【書式】
入院中の看護問題と経過:
退院時のADL(食事/排泄/移動):
介護保険・サービスの状況:
退院後も続けてほしい看護・申し送り:

【看護記録の要点】
80代女性。大腿骨の骨折で入院し、手術。看護問題は転倒の危険と痛み。痛みは内服で落ち着き、病棟内は歩行器で歩いている。食事は自分で全量。排泄は日中トイレ、夜間はポータブルトイレで見守り。要介護2、訪問看護を週1回利用中。退院後も夜間の転倒に注意し、内服の確認を続けてほしい。

出てくる文の例

入院中の看護問題と経過:転倒の危険と痛み。痛みは内服で落ち着いた。
退院時のADL:
 食事:自立。自分で全量摂取
 排泄:日中はトイレ(区分は要確認)。夜間はポータブルトイレで見守り
 移動:病棟内は歩行器で歩行(自立か見守りかは要確認)
介護保険・サービスの状況:要介護2。訪問看護を週1回利用中
退院後も続けてほしい看護・申し送り:夜間の転倒への注意と、内服の確認を続ける

食い違う箇所・足りない項目
1. 手術の日付と術式の記載がありません
2. 移動が自立か見守りかが、要点から読み取れません
3. 日中の排泄が自立か見守りかが、要点から読み取れません

人が確かめるのは次の点です。

  • ADLの区分が、病棟での実際の様子と合っているか
  • 介護保険の区分とサービスの回数が、記録と同じか
  • 申し送りに、要点にない看護が足されていないか
  • 受け持ちの看護師が読み、自分の記録として確定させたか

東北大学病院×NEC:治療経過の要約で平均47%

東北大学病院とNECは2023年12月13日のプレスリリースで、医療文書の作成時間を半減し、業務効率化の可能性を確かめたと発表しています。平均47%という数字は同院の事例紹介ページ(2024年11月7日)にあり、対象は「治療経過の要約」を作る時間に限られます。検証は2023年10月〜11月に耳鼻咽喉科・頭頸部外科の医師10名が受け持ち、使われたのは開発途中の試作システムです。医療文書全般で半分近く減るという意味ではないので、院内で紹介するときは条件ごと伝えましょう。

藤田医科大学病院×FIXER:31診療科での運用

学校法人藤田学園は2025年5月27日、藤田医科大学病院での退院時サマリの作成支援について発表しました。2025年2月に6診療科で先に使い始め、3月には31診療科で運用しているとされます。92%という数字は、2025年3月の医師170名へのアンケート(複数回答あり)で「時間短縮、業務改善につながった」と答えた割合で、時間を測った値ではありません。「全国初」という表現は、同法人の主張として読むのが無難でしょう。

赤羽東口病院:電子カルテとの距離

赤羽東口病院は、電子カルテの情報をコピー&ペーストで生成AIサービスに入れ、退院サマリや看護サマリの作成を補助しています。サマリは1件30〜60分が15〜45分になり、項目別の達成率は217.39%と目標を上回りました。その一方で報告書には、AIのアプリが電子カルテ上のシステムではないため、文書を入れるときも取り込むときも手作業のコピー&ペーストが生じる、という課題が書かれています。

電子カルテとAIの間をコピー&ペーストで往復する形か、院内のネットワークで使う形かで、手間も患者情報の扱いも変わります。この往復の手間は、導入を考えるときに最初に見積もっておきたい部分でしょう。

自院でまねするとき:退院時サマリの下書き

院内の電子カルテ端末は、インターネットから切り離した院内ネットワークで使われていることがあります。自院の端末がどちらかを先に確かめ、院内ネットワークのまま使える仕組みか、病院が認めた持ち出しの手順を情報システム担当と決めてから試してください。患者情報を入れる業務なので、使えるのは医療向けのサービスか、入れた内容がAIの学習などのために保存されないことを契約で確かめた環境だけになります。職員が個人で登録したAIのアカウントには入れないようにしましょう。

入れる材料は、氏名・ID・生年月日・住所を落とした入院経過のメモと、院内のサマリの書式の2つです。氏名などを除いても、日付・年代・病名から患者が分かることがあるため、個人情報として扱う点は変わりません。

指示文2(そのまま貼れる全文)

あなたは病院の退院時サマリの下書きを作る補助者です。
以下の【経過メモ】から、【書式】に沿って退院時サマリの下書きを作ってください。

条件
・メモに書かれていないことは書かない。足りない項目は「記載なし(要確認)」とする
・薬剤名・用量・日付・検査値は、メモの表記をそのまま写す
・診断名や治療方針を推測で補わない
・患者の氏名・ID・生年月日・住所は書かない(メモにも入れていません)
・最後に、メモと食い違う箇所や足りない項目があれば最大3つ、なければ「なし」と、「確認してほしい点」として挙げる

【書式】
入院日/退院日:
入院時診断:
既往歴:
主訴・入院の経緯:
主要な検査所見:
入院後経過:
手術・処置:
退院時処方:
転帰:
退院先:
退院後の方針・申し送り:

【経過メモ】
70代男性。既往に高血圧。〇月〇日、発熱と咳で救急外来を受診し、胸部X線で右下肺に陰影があり、肺炎の診断で入院。〇日から抗菌薬〇〇の点滴を開始し、〇日に解熱、〇日から食事を再開。手術なし。〇月〇日に軽快し自宅へ退院。〇月〇日に外来で再診予定。
(実際には、電子カルテの経過から氏名・ID・生年月日・住所を除いて貼る)

出てくる文の例

入院日/退院日:〇月〇日/〇月〇日
入院時診断:肺炎
既往歴:高血圧
主訴・入院の経緯:発熱と咳を主訴に救急外来を受診し、肺炎の診断で入院となった。
主要な検査所見:胸部X線で右下肺に陰影
入院後経過:〇日より抗菌薬〇〇の点滴を開始。〇日に解熱し、〇日から食事を再開。
手術・処置:なし
退院時処方:記載なし(要確認)
転帰:軽快
退院先:自宅
退院後の方針・申し送り:〇月〇日に外来で再診予定。

確認してほしい点
1. 退院時処方がメモにありません
2. 血液検査の結果がメモにありません

下書きが出てきたら、人が必ず次の点を確かめます。

  • 薬剤名・用量・日付が、電子カルテの記載と一字ずつ合っているか
  • メモにない経過や診断名が足されていないか
  • 「記載なし(要確認)」の項目を、担当医が埋めたか
  • 最後に担当医が全文を読み、自分の文書として確定させたか

患者情報を個人のAIに入れると、守秘義務の問題になる

サマリの事例で病院が使っているのは、契約したサービスや院内の閉じた環境で、職員が個人で登録したAIではありません。同じ電子カルテの文章を個人のアカウントに貼り付けると、その内容がどこに保存され、何に使われるかを病院が確かめられなくなってしまいます。患者の情報は、職員が個人で登録したAIには入れないと院内で決めておきましょう。医療者の守秘義務は職種ごとに別々の法律で定められ、患者の病歴は個人情報の中でも扱いの重い情報になります。医師事務作業補助者や事務職員を名指しした守秘義務の条文は見当たりませんが、病院には個人情報保護法で従業者を監督する義務(第24条)があり、就業規則・雇用契約の守秘の決まりで固めるのが一般的です。

  • 刑法134条1項:医師・薬剤師・助産師などが、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金(看護師・保健師はこの条文には列挙されていません)
  • 保健師助産師看護師法42条の2:保健師・看護師・准看護師は、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならず、資格がなくなった後も同じ
  • 個人情報保護法2条3項:病歴は要配慮個人情報。施行令2条2号(健康診断その他の検査の結果)・3号(診療若しくは調剤が行われたこと)も該当
  • 医師法17条・20条:医師でなければ医業をしてはならないこと、自ら診察しないで治療や診断書・処方せんの交付をしてはならないこと

個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入れ、応答の出力以外の目的で扱われると法に反するおそれがあると示しました。そのうえで、提供事業者が入力を機械学習に使わないことなどを、十分に確かめるよう求めています。

AIが書いた文章をそのまま患者の記録に残すことも、もう一つの危うさになります。厚労省の平成30年12月19日の通知(医政医発1219第1号)は、AIを使った診療でも診断・治療などの主体は医師で、最終的な判断の責任は医師が負うと整理しています。もっともらしい誤り(ハルシネーション)が混ざっても、署名した医師の文書として扱われる点は変わりません。医療で生成AIを使ってよいかの全体の整理はChatGPTは医療で禁止されているのかにあり、職員が個人のAIを勝手に使う問題はシャドーAI(野良AI)の解説が参考になります。

職員が個人のAIに頼らないよう、使う場所を病院で1つに

院内マニュアルや会議資料のような患者情報を使わない業務から、病院が管理する入力先で始める方法があります。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。

紹介状・返書|赤羽東口病院の1件15分から5分

紹介状と返書は、赤羽東口病院が1件15分から5分になったと報告している業務です。同院はインターネットにつながる端末を医事課の事務室に置き、紹介状や議事録をそこで作っています。事業経費は17,541千円、実施期間は令和7年1月15日〜3月31日で、導入したのは「ユビーメディカルナビ生成AI」とユビーのコンサルティングサービスになります。ただし紹介状の目標に対する達成率は20.00%で、件数も月30件ほどと、サマリ(月100件)ほどには使われていません。

報告書は、用意されたプロンプト以外で命令を出すと意図しないものが出力される、という課題も挙げ、対策としてプロンプトの作り方の講習とテンプレートを数多く用意したと書いています。紹介状でも、使う人ごとに指示を書かせるより、院内で決めた指示文を配るほうが出力はそろいやすくなります。報告書には要件定義の工数が院内120時間からコンサル40時間へ、システム導入が300時間から178時間へと書かれ、「コンサルの併用が無ければ導入はできなかった」とも記されています。医療AIの導入にかかる費用の目安は、医療AIの導入費用と補助金で確かめることが出来ます。

自院でまねするとき:紹介状への返書の下書き

返書は紹介元の医師に宛てる文書なので、患者情報を扱う環境が前提になります。入れる材料は、紹介状の要点(患者名・ID・生年月日を除いたもの)と、自院での診察・検査の結果の要点の2つです。

指示文3(そのまま貼れる全文)

あなたは病院の医師事務作業補助者です。紹介元の医師への返書の下書きを作ってください。

条件
・宛先は「〇〇クリニック 〇〇先生」とし、実名は入れない
・書き出しは「平素より大変お世話になっております。」とし、続けてご紹介へのお礼を書く
・【受診時の所見】と【今後の方針】に書かれていない内容は足さない
・検査値・薬剤名は、書かれた表記のまま写す
・結びは「今後ともよろしくお願い申し上げます。」とする
・全体で400字以内

【紹介の要点】
60代女性。〇〇の精査目的でご紹介。
【受診時の所見】
〇月〇日に当科を受診。〇〇の検査を実施し、結果は〇〇。
【今後の方針】
当科外来で〇〇の方針。〇か月後に再評価の予定。
(実際には、氏名・IDを除いた所見と、担当医が決めた方針を貼る)

出てくる文の例

〇〇クリニック
〇〇先生 御侍史

平素より大変お世話になっております。
このたびは〇〇の精査目的で、60代女性の患者様をご紹介いただき、誠にありがとうございました。
〇月〇日に当科を受診され、〇〇の検査を実施いたしました。結果は〇〇でした。
今後は当科外来で〇〇の方針とし、〇か月後に再評価を予定しております。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

人が必ず確かめる点は次の4つになります。

  • 所見と方針が担当医のメモと合っているか(AIが推測の一文を足していないか)
  • 紹介元の医師名・医療機関名を、印刷前に人の手で正しく入れたか
  • 敬称や御侍史などの書き方が、院内の決まりに合っているか
  • 患者の氏名・生年月日を、印刷前に人の手で入れたか
  • 担当医が読んで署名したか

自院でまねするとき:クリニックから病院への紹介状(診療情報提供書)

無床のクリニックでは、返書より病院へ送る紹介状を書く場面のほうが多いかもしれません。こちらも患者情報を扱うので、環境の前提は返書と同じになります。入れる材料は、氏名・IDなどを除いた症状の経過・検査結果・既往歴・処方の要点です。

指示文4(紹介状・そのまま貼れる全文)

あなたは診療所の院長の文書作成を手伝う補助者です。
以下の【紹介の材料】から、病院あての紹介状(診療情報提供書)の下書きを作ってください。

条件
・宛先は「〇〇病院 〇〇科 ご担当先生」とし、実名は入れない
・書き出しは「平素より大変お世話になっております。」、結びは「何卒よろしくお願い申し上げます。」とする
・紹介の目的を、書き出しの次の1文で書く
・【紹介の材料】にない症状・検査値・薬剤を足さない
・現在の処方は、薬剤名・用量を材料の表記のまま写す
・材料にない項目は「記載なし(要確認)」とする

【書式】
紹介目的:
症状経過:
検査結果:
既往歴:
現在の処方:
備考(アレルギーなど):

【紹介の材料】
60代男性。2週間前から階段を上るときに息切れがある。〇月〇日の心電図で〇〇を認めた。既往に糖尿病。処方は〇〇錠〇mg 1日1回。精査をお願いしたい。
(実際には、氏名・ID・生年月日・住所を除いて貼る)

出てくる文の例

〇〇病院 〇〇科
ご担当先生 御侍史

平素より大変お世話になっております。
2週間前から息切れのある60代男性について、精査をお願いしたくご紹介いたします。

紹介目的:息切れの精査
症状経過:2週間前より、階段を上るときに息切れあり
検査結果:〇月〇日の心電図で〇〇を認めました
既往歴:糖尿病
現在の処方:〇〇錠〇mg 1日1回
備考(アレルギーなど):記載なし(要確認)

何卒よろしくお願い申し上げます。

確かめる点は、処方の薬剤名と用量が電子カルテと一字ずつ同じか、紹介目的が院長の考えどおりか、記載なし(要確認)の項目を埋めたか、患者の氏名・生年月日と自院名・院長名・日付を人の手で入れたかの4つでしょう。要確認の欄を残したまま送らないよう、送る前に院長が全文を読んでみてください。

患者への説明記録(IC記録)|兵庫医科大学病院の録音と要約

病状説明やICの記録は、診察の音声を文字にして要約する形で使われ始めています。兵庫医科大学病院はmedimoの仕組みを2025年6月1日に導入し、診察の音声を文字起こしして約1,000字に要約し、電子カルテに記録していると、2025年6月13日のPR TIMESの配信で発表しました。主に使われているのは病状説明やIC記録で、削減率は公表されていません。

赤羽東口病院でも、患者向けの説明記録は1件20分から10分になったと報告されています。説明記録の達成率は19.94%で、利用は月20件ほどでした。録音して要約する仕組みを入れる場合は、患者や家族に録音を伝えるところから運用を決めることになります。

自院でまねするとき:説明時のメモをIC記録に整える

録音の仕組みがない病院でも、説明した医師のメモや、同席した看護師の記録を整える使い方なら試しやすいでしょう。これも患者情報を扱うため、医療向けのサービスか、保存されないことを契約で確かめた環境で使ってください。

指示文5(そのまま貼れる全文)

あなたは病院の診療記録を整える補助者です。
以下の【説明時のメモ】を、【記録の型】に沿って説明記録(IC記録)の下書きにしてください。

条件
・医師が説明したことと、患者・家族が話したことを分けて書く
・メモにない説明(合併症の確率、治療の選択肢など)を足さない
・数字・薬剤名・日付はメモのまま写す
・患者・家族の発言は、意味を変えずに短くまとめる
・メモに無い項目は「記載なし」、聞き取れない箇所は「(メモ不明瞭)」と書く

【記録の型】
説明日時/説明者/同席者:
説明の目的:
医師からの説明:
危険性・合併症(説明した範囲):
ほかの選択肢:
患者・家族の質問と回答:
同意の有無・理解の様子:
患者・家族の意向:
今後の予定:

【説明時のメモ】
〇月〇日〇時、80代女性と長女に説明。担当医〇〇、病棟看護師〇〇同席。〇〇の手術の方法と術後の経過を説明。術後〇日ほどで歩行の練習を始める見込み。危険性として出血と感染を説明。ほかの選択肢として、手術をしない場合の経過も説明。長女から入院の期間の質問、経過によるが〇週間ほどと回答。本人の理解の様子は(聞き取れず)。同意書は次回。〇月〇日に再度説明。
(実際には、氏名・IDを除いたメモを貼る)

出てくる文の例

説明日時/説明者/同席者:〇月〇日〇時/担当医〇〇/病棟看護師〇〇
説明の目的:手術の方法と、術後の経過についての説明
医師からの説明:〇〇の手術の方法と術後の経過。術後は〇日ほどで歩行の練習を始める見込み。
危険性・合併症(説明した範囲):出血、感染
ほかの選択肢:手術をしない場合の経過
患者・家族の質問と回答:長女より入院の期間について質問あり。医師より、経過によるが〇週間ほどの見込みと回答。
同意の有無・理解の様子:同意書は次回。本人の理解の様子は(メモ不明瞭)
患者・家族の意向:記載なし
今後の予定:〇月〇日に再度説明の予定。

人が確かめるのは次の点です。

  • 医師の説明と、患者・家族の発言が入れ替わっていないか
  • メモにない説明や、医師が話していない数字が足されていないか
  • 「(メモ不明瞭)」の箇所を、説明した医師が埋めたか
  • 患者・家族の意向が、話した言葉の意味のままか
  • 同意の有無と同意書の予定が、実際のとおりか

問診|賛育会病院のAI問診で見えたつまずき

問診では、賛育会病院(墨田区)がAI問診を入れ、紙の問診の記入と医師の転記の時間を比べています。AI問診は患者の答えに合わせて質問を出し分ける仕組みが中心で、報告書は生成AIとは書いていません。導入前の調査(2025年2月12〜13日・サンプル15)では、患者の紙の問診の記入が平均11分、医師の転記が平均8分でした。導入後(3月31日〜4月1日・サンプル15)は、AI問診の記入が平均6〜7分、医師の転記は平均0分になっています。産婦人科と小児科で月150〜250件ほど使われ、2025年5月は産婦人科209件・小児科264件となりました。事業経費は11,553千円で、導入したのはユビーのAI問診です。うまくいかなかった点も、報告書に具体的に書かれているのが参考になります。

  • 導入したばかりの時期は、操作方法の案内のため、職員が患者に対応する時間が少し増えた
  • 9割程度がAI問診を使う一方で、来院前に入力する患者は多くない
  • 高齢の患者は紙より時間がかかり、待ち時間が長くなることもある
  • AIの質問が、患者の意図しない方向へ進むことがある
  • ローマ字入力に対応しておらず、日本語のみの対応

タブレットは各外来に1台で足りた、という他院の事例からの指摘も載っています。高齢の方が多い外来では、紙の問診も残し、患者が選べる形で始めてみてください。問診票の設問そのものを考える段階なら、患者情報を入れずに生成AIで案を出すことも出来ます。

オンコール電話の記録|松原アーバンクリニックの在宅医療

在宅医療の診療所では、松原アーバンクリニック(世田谷区)がオンコール電話を自動で文字にし、サマリーを作る仕組みを入れています。出力される書式は、記録日時・情報種別・発信者・主な相談内容(背景・問題点・希望内容)・対応内容(即時・予定)・備考の6項目で、Bonbon社のcorteアプリと連携した形になります。報告書には、電話対応のあとの診療録を作る時間が1件あたり15分〜20分減ったこと、職員連絡の業務時間も体感で1割程度減ったことが書かれています。「言った言わない」の問題を解消した、という記載もあります。

実装は電話1回線・日中のみ(令和7年7月時点で仮実装)で、夜間や休日はまだ対象外です。「およそ325時間程度の短縮」という数字は、夜間・休日まで広げた場合の想定の計算で、実績ではない点に気をつけましょう。事業経費は1,650千円と、4件の中でいちばん小さい規模になります。

自院でまねするとき:オンコール電話のメモを記録の型に

電話の自動文字起こしがなくても、電話を受けた看護師や医師の走り書きを型に整える使い方なら、すぐに試せます。患者の状態を扱うので、医療向けのサービスか、契約で保存されないことを確かめた環境が前提です。

指示文6(そのまま貼れる全文)

あなたは在宅医療の診療所の記録係です。
以下の【電話メモ】を、【記録の型】に沿って整えてください。

条件
・メモにない症状・数値・指示を足さない
・発信者が話したことと、受けた職員が答えたことを分ける
・「即時の対応」と「予定の対応」を分けて書く
・体温や血圧などの数値は、メモのまま写す。メモに無いバイタルは書かない
・メモに無い項目は「記載なし」とする
・緊急度の判断はしない(判断は医師がする)

【記録の型】
記録日時:
受けた職員:
情報種別(相談・報告・依頼など):
発信者(続柄・職種):
バイタル(メモにあるものだけ):
主な相談内容(背景/問題点/希望内容):
対応内容(即時/予定):
備考:

【電話メモ】
〇月〇日〇時〇分、90代男性の長男から。夕方から38度台の発熱、食事は半分ほど。往診が要るか知りたいとのこと。受けた看護師〇〇が当番医に報告し、指示を長男へ伝えた。翌朝〇時に電話で確認すると伝えた。
(実際には、氏名・住所を除いて貼る)

出てくる文の例

記録日時:〇月〇日 〇時〇分
受けた職員:看護師〇〇
情報種別:相談
発信者:長男
バイタル:体温38度台(ほかはメモに記載なし)
主な相談内容:
 背景:夕方から発熱
 問題点:体温38度台、食事は半分ほど
 希望内容:往診が要るか知りたい
対応内容:
 即時:当番医に報告し、指示を長男へ伝えた(指示の内容は記載なし・要確認)
 予定:翌朝〇時に電話で状態を確認
備考:記載なし

人が確かめる点は、次の4つになります。

  • 体温・時刻・薬の名前が、メモと合っているか
  • 発信者の話と職員の答えが入れ替わっていないか
  • 医師の指示の内容が、医師の言ったとおりか(AIに指示を作らせていないか)
  • 緊急度の判断を、AIの文章に任せていないか

多職種カンファレンスの議事録|森山脳神経センター病院の累計18件

会議・カンファレンスの議事録は、森山脳神経センター病院(江戸川区)の多職種カンファレンスと、赤羽東口病院の院内会議で取り組まれた業務です。森山脳神経センター病院は、アドバンスト・メディアのAI音声入力システム「AmiVoice iNote」と議事録作成支援システム「AmiVoice ScribeAssist」、コニカミノルタジャパンのAI通訳サービス「MELON」を導入し、事業経費は9,775千円となっています。中心は音声認識で、報告書は生成AIとは書いていません。生成AIに近いのは、議事録を自動で作成・要約する機能の部分になります。音声による記録は1件7〜10分が2〜6分程度になり、記録件数も2024年12月の20件から2025年3月の171件まで増えました。

一方の議事録AIは、患者カンファレンスが週7回以上あるのに、2024年12月から2025年3月末までの累計使用は18件にとどまっています。報告書は、複数人が同時に発言する場面では誤変換が多く、実用的な下書きを作るのが難しいケースもあったと記しており、多職種が意見を出し合う場の録音には扱いにくさが残ります。赤羽東口病院では、院内会議の議事録など1件30分が10分になり、項目別の達成率は153.85%と目標を上回りました。録音から一気に議事録を作るより、書記のメモを整える使い方から入るほうが失敗は少ないでしょう。

自院でまねするとき:カンファレンスのメモを議事録に

患者カンファレンスは患者情報を含むので、患者が特定できる情報を除いても、医療向けか契約で確かめた環境で使うようにしましょう。委員会や病棟会議のように患者の話が出ない会議なら、患者情報を入れずに始めることも出来ます。

指示文7(そのまま貼れる全文)

あなたは病院の会議の書記です。以下の【会議メモ】を議事録に整えてください。

条件
・発言者は職種名(医師、病棟看護師、理学療法士、MSWなど)で書き、個人名は入れない
・決まったこと、主治医の方針、宿題(担当と期限)、持ち越しを分けて書く。希望や方針を決まったことに入れない
・メモにない発言や結論を足さない
・聞き取れなかった箇所は「(不明)」のまま残す
・最後に、決まったことを3行以内でまとめる

【会議の種類】退院支援カンファレンス(患者は「Aさん・80代女性」と書く)
【出席】主治医、病棟看護師、理学療法士、MSW
【会議メモ】
主治医:自宅への退院を目標にしたい。退院前に家の様子を確認したい。
MSW:介護保険の申請状況を家族に聞く。〇月〇日まで。
理学療法士:階段の昇り降りを次回のカンファレンスまでに評価する。
退院日は家族の意向を聞いてから決める。家族の意向は(聞き取れず)。
(実際には、書記のメモを貼る)

出てくる文の例

議題:退院支援カンファレンス(Aさん・80代女性)
出席:主治医、病棟看護師、理学療法士、MSW
主治医の方針:
・自宅への退院を目標にしたい。退院前に家の様子を確認したい
宿題:
・MSW:介護保険の申請状況を家族に確認(〇月〇日まで)
・理学療法士:階段の昇り降りの評価(次回カンファレンスまで)
決まったこと:
・退院日は、家族の意向を聞いてから決める
持ち越し:
・目標の確定
・退院日の決定(家族の意向が(不明))
まとめ:自宅退院を目標に検討し、介護保険の確認と階段の評価を進める。退院日は家族の意向を聞いてから決める。

人が確かめる点は次のとおりです。

  • 宿題の担当と期限が、会議で決まったとおりか
  • 誰も言っていない結論が「決まったこと」に入っていないか
  • 職種名の書き間違いで、発言者が入れ替わっていないか
  • 「(不明)」の箇所を書記が埋めたか

患者情報を入れずに今日から始められる業務

院内マニュアル、患者向けのお知らせ、説明文のひな形、委員会の資料は、患者の情報を一切入れずに生成AIを使える業務です。東京都の4件はどれも患者に関わる記録が中心でしたが、診療所や小さな病院でまず手をつけやすいのは、こちらの業務になります。入力するのは院内の手順や決まりごとなので守秘義務の心配が小さく、職員がAIの使い方に慣れる練習にもちょうどよいでしょう。ただし院内の決まりごとも外に出したくない情報なので、使うのは病院が契約して管理する環境にしましょう。患者の情報を入れない業務から始めると、規程づくりと職員の練習を同時に進められます。

院内マニュアル:箇条書きの手順を読みやすい手順書に

入れる材料は、ベテラン職員が書いた箇条書きの手順メモと、院内の手順書の書式です。

指示文8(そのまま貼れる全文)

あなたは病院の業務マニュアルを整える担当者です。
以下の【手順メモ】を、新人職員が読んでも迷わない手順書にしてください。

条件
・手順は番号付きで、1つの番号に1つの動作だけを書く
・メモにない手順・薬剤名・数値を足さない
・判断が必要な箇所には「迷ったら〇〇に確認」の欄を作る
・専門用語は初出だけ( )で短く言い換える
・メモに無い項目は「メモに記載なし」とする
・最後に、メモの中で順番があいまいな箇所を挙げる

【手順書の書式】
目的/対象者/必要な物/手順/注意点/問い合わせ先

【手順メモ】
夜間の救急外来の受付(夜間帯の受付担当向け)
・顔色や呼吸の様子が悪い方は、受付より先に看護師を呼ぶ
・受付票を書いてもらう
・保険の資格を確認する
・看護師に連絡する(保険の資格の確認の前か後かは決まっていない)
・受付票を看護師に渡す
・わからないときは当直の事務責任者(内線〇〇)
(実際には、院内の手順メモを貼る。患者の情報は入れない)

出てくる文の例

目的:夜間の救急外来の受付を、同じ手順で進める
対象者:夜間帯の受付担当
必要な物:受付票
手順:
1. 顔色・呼吸の様子が悪い方は、受付より先に看護師を呼ぶ
2. 来院された方に、受付票への記入をお願いする
3. 保険の資格を確認する(迷ったら当直の事務責任者に確認)
4. 看護師に連絡する
5. 受付票を看護師に渡す
注意点:メモに記載なし
問い合わせ先:当直の事務責任者(内線〇〇)

順番があいまいな箇所
・看護師への連絡と、保険の資格の確認のどちらが先かが、メモから読み取れません

確かめる点は、手順の順番が実際の動きと合っているか、AIが足した手順がないか、問い合わせ先が今の担当になっているかの3つになります。

患者向けのお知らせ・説明文のひな形

休診のお知らせ、予防接種の案内、検査前の注意のひな形も、患者の情報を入れずに作れる文書です。読む人の年齢に合わせて、ふりがなや1文の長さを指定すると、使いやすい下書きが出てきます。

指示文9(そのまま貼れる全文)

あなたは診療所の受付スタッフです。
以下の【伝えたいこと】をもとに、待合室に貼る患者さん向けのお知らせを作ってください。

条件
・読む人は高齢の方が多い。1文は40字以内、むずかしい漢字にはふりがなを( )で付ける
・日付・時間・電話番号は【伝えたいこと】のまま写し、変えない
・医療の判断が要る内容(この症状なら受診しなくてよい、など)は書かない
・見出し1つ、本文は5行以内
・同じ内容で、ホームページ用の少し丁寧な文も1つ作る

【伝えたいこと】
〇月〇日(〇)は院内設備の点検のため、午後の診療を休みます。午前は通常どおりです。お薬が切れる方は〇日までにご相談ください。

出てくる文の例

【〇月〇日(〇)の午後は休診です】
〇月〇日(〇)は、院内の設備の点検(てんけん)のため、午後の診療をお休みします。
午前は、いつもどおり診療します。
お薬がなくなりそうな方は、〇日までにご相談ください。

(ホームページ用)
【〇月〇日(〇)午後休診のお知らせ】
〇月〇日(〇)は院内設備の点検のため、午後の診療を休診とさせていただきます。午前は通常どおり診療いたします。お薬が切れる方は、〇日までにご相談くださいますようお願いいたします。

確かめる点は、日付・曜日・時間がもとの文と一字ずつ同じか、医療の判断に当たる表現が混ざっていないかの2つでしょう。

委員会の資料と、問診票・説明文の案

感染対策委員会や医療安全委員会の資料も、院内の決まりや研修の要点をまとめる段階なら患者情報は要りません。赤羽東口病院は利用場面の一つに、インシデント・アクシデントレポートの作成補助を挙げています。レポートには患者が特定できる内容が入るので、使う環境の線引きは患者の記録と同じにしてください。説明文のひな形や問診票の設問の案も、一般的な内容として作るなら患者情報は入らず、医師が中身を確かめてから使う流れにすれば負担は小さくなります。

診療報酬の算定・症状詳記と、令和8年度改定の医師事務作業補助体制加算

診療報酬の算定や症状詳記は生成AIの話題によく挙がる業務ですが、算定の判断を生成AIに任せて運用している病院の発表は、確認日時点で一次資料として確かめられたものがありません。症状詳記の下書きにAIを使う場合も、患者の経過を入れる業務なので、ここまでの記録と同じ環境の線引きが当てはまります。制度の側では、令和8年度の改定で動きがありました。

厚労省が公表した令和8年度診療報酬改定の個別改定項目では、医師事務作業補助体制加算に、ICT機器を活用する医師事務作業補助者の配置人数の算入方法が新しく加わっています。前提は、生成AIで退院時要約・診断書・紹介状などの原案を作る文書作成補助システムを組織的に導入し、大半の医師と医師事務作業補助者が日常的に活用していることになります。そのうえで求められる要件は、次の3つです。

  • 医療情報を扱うものは、厚労省の安全管理ガイドラインと、総務省・経産省の提供事業者ガイドラインに準拠する
  • 生成AI等を用いるものは、経産省・総務省のAI事業者ガイドラインを遵守する
  • すべての医師事務作業補助者に、操作方法と生成AIの適切な利用の研修をする

これらを満たすと、医師事務作業補助者1人を1.2人として数えることが出来ます。医療文書用の音声入力(汎用のものは除く)、RPA、10種類以上の患者向け説明動画のうち1種類以上も広く使っていれば、1.3人として数えられます。加算の要件は、一部の医師が試す段階ではなく、大半の医師と補助者が日常的に使う状態です。ここに挙げたのは個別改定項目の文言なので、届出や最終的な要件は施設基準の通知で確かめてみてください。

国の指針・ガイドラインと日本医師会|確認日時点の公式資料

生成AIに医療情報を入れるときに見ておきたいのは、厚労省の安全管理ガイドラインのQ&A、個人情報保護委員会の医療・介護関係事業者向けガイダンス、研究班のHAIPガイドラインの3つになります。

厚労省 安全管理ガイドライン第7.0版Q&A(Q18)

厚労省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、第7.0版(令和8年6月)が最新版です。令和8年9月の第7.0版Q&Aの企画管理編Q18は、生成AIに医療情報を入れる場合、AIの学習などのために保存されないことが契約などで約束されていれば、サーバが国内法の適用を受けていることは必須ではない、としています。これは企画管理編7章の遵守事項⑤(外部保存の委託先の情報機器が国内法の及ぶ範囲にあること)の例外という位置づけになります。同じQ&AのQ16は、外部保存について目的・保存先・安全性を原則として事前に患者へ説明すること、その方法は院内掲示に限らないことを示しています。

個人情報保護委員会の医療・介護関係事業者向けガイダンス

個人情報保護委員会の医療・介護関係事業者向けガイダンスは平成29年4月14日のもので、令和8年4月に一部改正されました。病歴などの要配慮個人情報を扱う医療機関向けの資料なので、院内規程を作るときの土台にしてみてください。

HAIP「生成AI利用ガイドライン(第2版)」

HAIPの生成AI利用ガイドライン(第2版)は2025年7月11日に出された厚労科研の研究班の見解で、国の指針ではありません。中身は、組織が使ってよいと判断したサービスを使うこと、再学習の設定のまま同意なく個人情報を入れると第三者提供に当たる場合があること、私的な利用は参考情報の収集にとどめることなどです。医療情報を扱うなら入出力を保存するサーバを国内法の及ぶ場所に置くとしていて、この点はQ18より厳しい書き方になります。Q18とHAIPではサーバの置き場所の考え方が違うので、どちらに合わせるかを院内で決めましょう。

日本医師会

日本医師会については、生成AIに特化した指針は確認日(2026年10月16日)時点で見当たりません。AI全般については、日本医師会の答申「AIに関する臨床的課題と生命倫理について」が公表されています。

※正式名称:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」と同ガイドラインのQ&A(令和8年9月)/個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月14日・令和8年4月一部改正)/HAIP「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン(第2版)」(2025年7月11日)。いずれも2026年10月16日時点で各公式ページを確認しています。

画像診断・創薬のAIと、文書を書く生成AIの違い

医療AIの解説でよく並ぶ画像診断支援や創薬は、文書を書く生成AIとは別の種類のAIです。厚労省の保健医療分野におけるAI活用推進懇談会の報告書(平成29年6月27日)は、開発を進めるべき重点領域として、ゲノム医療、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発、介護・認知症、手術支援の6つを挙げています。こうしたAIは、画像や検査値などから特定の判断を助けるよう作られることが多い仕組みになります。ここまでの事例で使われている生成AIは、文章を作る汎用の道具を、サマリや議事録の下書きに当てはめたものです。6つの領域それぞれの説明は医療AIとは(定義と6つの重点領域)にあり、全体像はそちらで確かめることが出来ます。

音声認識と生成AIの線引きも、事例を読むときに役立ちます。森山脳神経センター病院の取り組みは話した言葉を文字にする音声認識が中心で、報告書は生成AIとは書いていません。生成AIに近いのは議事録を自動で作成・要約する機能の部分なので、分けて読むと数字の意味が取りやすくなります。音声を文字にする仕組みと、文字から文書を作る生成AIは、分けて効果を見ましょう。

自院で始める順番|小さく試して、測ってから広げる

始める順番は、患者情報を入れない業務で慣れ、使う環境と院内規程を決め、それから患者の記録に広げる流れが無理のない形になります。

  1. 院内マニュアル・お知らせ・委員会資料など、患者情報を入れない業務で、職員が指示文の使い方に慣れる
  2. 使ってよいAIの環境を1つに決め、個人のアカウントには患者情報を入れないことを院内規程に書く
  3. 患者情報を扱う業務は、医療向けのサービスか、保存されないことを契約で確かめた環境を選び、契約内容を記録しておく
  4. 業務を1つに絞り(例:看護サマリ)、導入前に同じ職員で1件あたりの時間を測る
  5. 指示文を院内で決めて配り、しばらく使ってから導入後の時間を同じ形で測る
  6. 結果と、うまくいかなかった点を記録し、次の業務に広げるかを決める

導入前の時間は導入したあとでは測れないので、手順4は飛ばさないでください。赤羽東口病院が対策に挙げた、テンプレートを数多く用意するやり方は、指示文を院内で決めて配る形と同じ考え方です。賛育会病院のように、患者が使う仕組みは操作の案内に職員の手がかかる時期があるので、導入したばかりの頃は人の配置にも余裕を持たせましょう。院内規程の書き方は生成AIの社内ガイドラインの作り方、点検する項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストが参考になります。

病院・クリニックで生成AIを安全に使うには

病院で生成AIを安全に使う土台は、職員が使う入力先を1つにし、病院がその設定と記録を管理できる状態を作ることです。入力先が職員ごとにばらばらだと、学習の設定も利用の記録も病院が確かめられなくなってしまいます。

  • 学習に使わせない設定を、病院側で全員に一律にかけられるか職員ごとの操作に任せると、設定の漏れが出やすくなります。
  • 誰がいつどのAIを使ったか、利用ログを病院側で見られるか院内規程が守られているかを確かめる手段になります。
  • 職員全員に配れるか一部の職員にしか配れないと、配られなかった方が個人のアカウントで使い始めることがあります。
  • 複数のAIを業務で使い分けられるか長い経過の要約、院内文書の言い換え、調べものでは、向いているAIが違うことがあります。
  • 患者情報を入れてよい環境と、入れない環境を院内で分けて決めたか患者情報を扱う業務は、医療向けのサービスや契約内容を確かめた環境に限ります。

安全管理ガイドラインの企画管理編は、外部保存の委託先について、医療情報を保存する機器が置かれた国や地域、国外法の適用の可能性などを確かめるよう示しています。患者等の許可なく保存を受託した医療情報を分析などの目的で扱わないことを、契約に入れる項目もあります。生成AI向けの規定ではありませんが、AIの提供元を選ぶときの確認項目として当てはめて使うことが出来ます。

患者情報を扱う業務の環境は、こうした項目と契約内容に照らして病院ごとに確かめる必要があり、汎用のAIサービスを選ぶときも同じ目で見てみてください。院内マニュアルや委員会資料のように患者情報を使わない業務なら、病院が契約して管理する汎用のAI環境から始めることも出来ます。複数のAIの使い分けは、主要4AIの違いと使い分けやマルチAIの解説が参考になります。

院内で使うAIの入力先を、1つの契約にまとめる

UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使い分けられる法人向けサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・使うモデルのON/OFFを管理でき、よく使う指示文を院内限定のBOT(カスタムプラス)にして共有することも出来ます。院内マニュアルや委員会資料、患者の話が出ない会議の録音からの議事録づくりなど、患者情報を使わない業務から始められます。基盤はAWSの日本リージョンで稼働しています。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。

UPGEAR AIの詳細を見る

よくある質問

医療の生成AI活用事例には、どんな業務がありますか?
公表されているAI・生成AIの事例は、退院時サマリ・看護サマリ、紹介状・返書、患者への説明記録(IC記録)、問診、オンコール電話の記録、会議・カンファレンスの議事録の下書きが中心です。東京都が令和6年度の事業で公表した4件(赤羽東口病院・森山脳神経センター病院・賛育会病院・松原アーバンクリニック。このうち報告書が生成AIと明記しているのは赤羽東口病院)や、東北大学病院・恵寿総合病院・藤田医科大学病院・兵庫医科大学病院の発表があります。どれもAIが下書きを作り、医師や看護師が確かめて仕上げる形です。
公表されている削減率は、自院でもそのまま期待できますか?
そのままは当てはめにくい数字です。どれも当事者の発表による自己申告で、前後比較・群間比較・アンケートと測り方がそろっていません。たとえば東北大学病院の平均47%は治療経過の要約に限った医師10名・試作システムでの結果で、藤田医科大学病院の92%は医師170名へのアンケートの回答割合です。自院では、同じ業務・同じ職員で導入前と後を測って比べると、自院の効果が見えやすくなります。
ChatGPTなどに患者の情報を入れてもよいですか?
職員が個人で登録したアカウントに入れるのは避けてください。医師は刑法134条1項、看護師は保健師助産師看護師法42条の2で守秘義務を負い、病歴は個人情報保護法2条3項の要配慮個人情報です。厚労省の安全管理ガイドライン第7.0版Q&AのQ18は、AIの学習などのために保存されないことが契約などで約束されていれば、国内法の適用を受けないサーバも使えるとしています。患者情報を扱う業務は、医療向けのサービスや契約内容を確かめた環境に限るのが前提になります。
患者情報を入れずに生成AIを使える業務はありますか?
院内マニュアル、休診や予防接種などの患者向けのお知らせ、説明文のひな形、委員会の資料、患者の話が出ない会議の議事録は、患者情報を入れずに始められます。診療所や小さな病院で、職員がAIの使い方に慣れる最初の業務にも向いています。院内の情報も外に出したくない内容なので、使うのは病院が契約して管理する環境にしてください。
令和8年度の診療報酬改定で、生成AIはどう扱われていますか?
厚労省が公表した令和8年度診療報酬改定の個別改定項目では、医師事務作業補助体制加算について、生成AIで退院時要約・診断書・紹介状などの原案を作る文書作成補助システムを組織的に導入し、大半の医師と医師事務作業補助者が日常的に使っている場合に、医師事務作業補助者1人を1.2人として数える仕組みが示されています。安全管理ガイドラインなどへの準拠や、全補助者への研修も要件です。届出や最終的な要件は、施設基準の通知で確かめてください。
日本医師会は生成AIの指針を出していますか?
2026年10月16日時点で、日本医師会の生成AIに特化した指針は見当たりません。院内規程を作るときは、厚労省の安全管理ガイドラインとそのQ&A、個人情報保護委員会の医療・介護関係事業者向けガイダンス、研究班によるHAIPの生成AI利用ガイドライン(第2版、国の指針ではない)を参照するのが現実的です。
AIが書いたサマリに誤りがあったら、誰の責任になりますか?
厚労省の平成30年の通知は、AIを使った診療でも診断・治療などの主体は医師で、最終的な判断の責任は医師が負うと整理しています。AIの下書きは、薬剤名・用量・日付と、メモにない記載が足されていないかを人が確かめ、医師が自分の文書として確定させる運用にしてください。

まとめ

医療の生成AI活用事例は、退院時サマリ・紹介状・説明記録・問診・オンコール電話の記録・議事録といった、毎日の文書の下書きに集まっています。公表された数字はどれも当事者の発表で、前後比較・群間比較・アンケート・最小値での試算・目標に対する達成率と測り方が違うため、条件まで見て読む必要があります。つまずきとして報告されているのは、電子カルテとのコピー&ペーストの往復、用意された指示文以外での意図しない出力、高齢の患者の入力時間、複数人の発言での誤変換でした。

患者情報を扱う業務は医療向けのサービスや契約内容を確かめた環境に限り、院内マニュアルやお知らせのような患者情報を使わない業務から、病院が管理する1つの入力先で始めてみてください。他の業種のAI活用は、AI活用コラム一覧から探すことが出来ます。