SBI証券、生成AIチャット開始
COPLUS AI NEWS / 2026.09.09 夕
試してから、名前をつけて出す
いきなり全面展開しない。範囲を切って出す事例が並んだ日。9月9日夕のAI動向5本。
この日の国内発表に共通していたのは、対象を絞って世に出すという判断でした。証券会社は問い合わせのうち一部カテゴリだけをAIに任せ、製造業向けの検査ソリューションは工程を限って導入し、発注の判断材料をそろえるためのガイドまで無料で配られています。一方で海外からは、研究データの一括公開と、開発競争そのものへの警鐘が届きました。9月9日夕のAI動向5本を整理します。
本日の5本
① SBI証券、生成AIチャットを提供開始 まずはNISA・投資信託から
出典: 株式会社SBI証券(PR TIMES)/ 2026年9月9日
SBI証券が9月9日、顧客向けに生成AIを活用したチャットサービスの提供を開始したと発表しました。質問の意図や文脈をくみ取って回答し、対話形式での追加質問にも応じるもので、電話や有人チャットの受付時間に縛られず24時間利用できる点を挙げています。対応範囲は当初、NISAや投資信託など一部のカテゴリに限定されます。2026年6月から試験提供を行っており、同社の発表によると、この期間の顧客満足度は従来のチャットボットと比べて約3倍に向上したとしています。
💡 コプラスの視点:注目したいのは満足度の数字より、3カ月試してから範囲を絞って本番に出した進め方です。金融商品の説明は誤りが直接損害につながるため、答えてよい領域を先に決めておく設計は理にかなっています。自社で顧客向けにAIを使うなら、全社一斉ではなく、答えが確定していて件数の多い問い合わせから切り出すのが安全です。なお約3倍という数値は同社の自己申告であり、測り方は公表されていません。
② LTS Japan、AI外観検査とText-to-CADで製造業向けを本格展開
出典: LTSグループ(PR TIMES)/ 2026年9月9日
LTS Japanが9月9日、製造業向けAIソリューションの本格展開を発表しました。柱は2つで、AI外観検査のVsmartは、すり傷やへこみ、部品の配置ミスといった欠陥を検知し、現場のエッジPCと集約用のセントラルPCを組み合わせてリアルタイム検査から品質管理までを扱います。もう1つのSenCADは、テキストで指示すると3Dモデルを生成するText-to-CADのツールで、設計工程の短縮を狙うものです。同社は導入効果として不良品の検出精度90%以上や約30%の増産を掲げていますが、これは達成目標として示された値です。
💡 コプラスの視点:外観検査は、生成AIの導入が進まない会社でも成果が読みやすい領域です。判定基準が言葉ではなく現物にあり、正解データが日々の検査記録として社内に溜まっているからです。検討する場合は、目標値の90%や30%を前提に置かず、自社の不良率と検査にかけている人時を先に数えてください。比較の土台がないと、導入後に効果を語れなくなります。
③ デモの出来だけで決めない AIエージェント発注ガイドが無料公開
出典: 株式会社くるみバディ(PR TIMES)/ 2026年9月8日
くるみバディが9月8日、AIエージェントの発注判断に使う資料を無料公開しました。複数社のデモを見ても、入力する内容や仕上がりの範囲、料金に含まれる作業がそれぞれ違えば自社での適用可否を比べられない、という問題意識が出発点です。広告レポートの作成を題材に、同じ条件で比較するための業務依頼書、実演テスト票、停止と復旧の確認票、費用と作業時間の比較表などを20ページにまとめています。作成しましたという返答だけでは数値の正確性や確認済み版の保存状況が分からない点も指摘しています。
💡 コプラスの視点:AI導入の相談で最も多い失敗が、うまくいったデモを見て決めてしまうことです。デモは提供側が用意したデータで動きます。自社の実データ、それも一番汚い月のものを渡して同じ作業をさせると、各社の差がはっきり出ます。止まったときに誰がどう戻すのかを確認票にしておく発想も、稟議を通す材料としてそのまま使えます。
④ Google DeepMind、90億通りの塩基変異を予測したAlphaGenome Atlas
出典: ITmedia NEWS / 2026年9月9日(発表は現地時間9月8日)
Google DeepMindが現地時間9月8日、ヒトゲノムで起こり得る約90億通りの一塩基変異について、分子レベルの影響を予測したデータベースAlphaGenome Atlasを公開しました。データ量は1Pバイトで、タンパク質を作る領域と非コード領域の両方を対象とし、変異の影響度を数値化するAVIスコアを導入しています。Webポータル、AlphaGenome API、Google Antigravityのスキルの3つの形で提供され、非商用の学術研究向けは無償で即日利用できます。商用利用はGoogle Cloud経由で近日提供予定としています。希少疾患の研究で候補となる変異を絞り込む用途などが想定されています。
💡 コプラスの視点:直接の業務接点は限られますが、研究の入口が無償で開かれ、商用利用だけクラウド経由の有償になるという線の引き方は、他分野でも増えていく形です。自社が使っているAIサービスでも、無償で試せる範囲と、業務で使った瞬間に契約が変わる範囲がどこで分かれているかは確認しておく価値があります。
⑤ Anthropicの研究者が退社 開発競争を批判し業界の減速を求める
出典: ITmedia NEWS / 2026年9月9日
Anthropicの研究者ジェイコブ・コクソン氏が9月8日に同社を退社し、X(旧Twitter)への投稿とウォール・ストリート・ジャーナルの取材で、自己改善型の超知能を目指す開発競争が人命を危険にさらしていると批判しました。同氏はOpenAIでGPT-4.5の主要な貢献者を務めた後、安全性を重視するとして今年前半にAnthropicへ移籍した経歴を持ちます。Anthropicの安全性への取り組みは誠実だと評価する一方、政府の介入か業界全体の減速がない限り責任ある開発は不可能だと結論づけ、来年末には既に制御不能になっている可能性があるとも述べています。
💡 コプラスの視点:これは個人の見解であり、そのまま業界の総意として扱うべきものではありません。ただ、開発の内側にいた人が名前を出して発言した事実は残ります。利用する側にとっての実務的な含意は単純で、モデルは今後も短い間隔で入れ替わるという前提を置くことです。特定のモデルの挙動に手順書を密着させず、業務側のルールとして書いておけば、乗り換えのたびに作り直す必要がなくなります。
明日への展望
この日は、経済産業省がGENIAC採択事業者による事業計画発表会と中間報告会、成果報告会を開催しています。国内の基盤モデル開発や製造業データのAI-Ready化がどこまで進んだかは、報告内容が公開され次第あらためて確認したいところです。あわせて、SBI証券のように対象範囲を切って本番に出す事例が金融以外でも続くかどうかが、今後の判断材料になります。
本日のまとめ
一部カテゴリから始めた証券会社のAIチャット、工程を限って入る製造業向けの検査と設計支援、条件をそろえて比べるための発注ガイド。国内の3本はいずれも、範囲を決めてから出すという同じ作法でした。開発の最前線から聞こえてくる速度への警戒とは対照的ですが、使う側にできることは変わりません。任せる範囲と、確認する経路を先に紙に書いておくことです。
どの業務から任せるか、迷っていませんか
コプラスは、業務の棚卸しから利用ルールの整備、社内定着までを一緒に進めています。主要4AIを国内サーバー・学習オフで使えるUPGEAR AIとあわせて、無理のない範囲から始める形をご提案します。


