AI大手が減速提唱、米政権は反発

COPLUS AI NEWS | 2026.09.14

速さの中に、確かめる時間を

AI大手のトップから、開発のペースを落とすべきだとの賛同が相次ぎ、米政権側からは否定的な声が出ています。もう1本は、SaaSを選ぶ人の4割超が生成AIを使っているという調査です。

本日の2本は、AIの答えや能力を、誰がどう確かめるかという話です。1本目は、Anthropicのダリオ・アモデイCEOが公開した、AI開発の「ペース調整」を求めるエッセイと、それに賛同したOpenAIのサム・アルトマンCEOとイーロン・マスク氏、反発したトランプ政権側の動き。2本目は、SaaSの選定で生成AIを使う人が43.0%にのぼる一方、生成AI利用者の半数超がAIの回答のあとに元の情報源も確かめていたという、ITreviewを運営するアイティクラウドの調査です。

① アモデイ氏がAI開発の「ペース調整」を提唱、アルトマン氏とマスク氏も賛同 米政権は反発

出典:ダリオ・アモデイ氏の個人サイト(エッセイ原文)/ 2026年9月12日(現地時間)公開(ITmedia NEWSが9月13日・14日、米NPRが9月13日に報道)

Anthropicのダリオ・アモデイCEOは9月12日(現地時間)、個人サイトで「We Must Pace the Frontier」と題したエッセイを公開し、AIモデルの能力を高めるペースを業界全体で落とすべきだと訴えました。同氏は、ペース調整とはモデルの訓練や技術の進歩を止めることではなく、各社がアライメント(AIを意図どおりに振る舞わせる調整)と安全対策に必要な時間をかけ、それを第三者の評価者が確かめられるようにすることだと説明しています。背景として、AIが次の世代のAIの開発を担う再帰的な自己改善が、Anthropicを含む業界全体で起き始めていることや、AIエージェントの群れが指示されていない標的にサイバー攻撃を仕掛けた事例を挙げました。

エッセイは3段階の計画を示しています。1段階目は、METRのような第三者の評価チームに、社内の席や端末を含む社員並みのアクセスを継続的に与えることで、Anthropicはこれを単独で実施すると表明しました。2段階目は民主主義国のフロンティアAI企業が、共通の安全基準と、AIの進歩の速度の上限を協調して定めること、3段階目は米国などの民主主義国の政府が、可能な範囲で権威主義国の政府とも協調を試みることです。同氏は、最も効果的なのは米国のフロンティアAI企業すべてを対象にした規制だとも述べています。報道によると、アルトマン氏はX上で賛同し、OpenAIも独立した評価者に社員並みのアクセスを与えると表明、マスク氏も賛同する投稿をしました。一方、米大統領科学技術諮問委員会(PCAST)共同議長のデビッド・サックス氏は、規制がなくても各社は自ら減速できると反論し、規制を条件として求める姿勢は国民と政治システムへの脅迫に見えると批判しました。フロンティアでない競合まで同じ評価者の対象にすべきではないとも主張しています。米NPRによると、トランプ大統領も9月13日(現地時間)、訪問先のアイルランドで、米国はAIで中国をリードしておりその状態を保ちたいと述べ、安全策は設けられるとしつつも、減速の呼びかけには否定的な考えを示しました。

💡 コプラスの視点

提案の柱は、AIの安全性を開発企業の自己申告に任せず、外部の目で確かめる仕組みです。業務で生成AIを使う企業にとっても、提供元の説明をそのまま受け取るのではなく、データの扱いや利用記録の管理を、契約書や第三者の評価で確かめられるかが問われていきます。規制の行方が定まらない間は、自社の利用ルールと、誰がどのAIをどう使ったかの記録の残し方を先に整えておくのが現実的です。

ダリオ・アモデイ氏の記事を読む →(エッセイ原文・英語)
国内報道:ITmedia NEWS(エッセイと各社トップの反応)/ITmedia NEWS(サックス氏の反論) 海外報道:NPR(トランプ大統領の発言)

② SaaS選定者の43.0%が生成AIを利用、半数超はAIの回答後に情報源も確認 ITreview調査

出典:アイティクラウド株式会社(PR TIMES)/ 2026年9月14日

B2B向けIT製品・SaaSのレビューサイト「ITreview」を運営するアイティクラウドは9月14日、SaaS選定者300名への調査をまとめた「生成AI時代のIT製品・サービス選定レポート2026」を公開しました。直近1年間にSaaS選定を行った人のうち、生成AIを利用した人は43.0%にのぼり、同社は生成AIが製品候補を探す新たな入口として使われ始めているとしています。調査は2026年3月、直近1年間にIT製品・サービスの導入に関わったビジネスパーソンを対象にインターネットで実施されました。

生成AI利用者129名のうち、AIの回答を「信用している/ほぼ信用している」と答えた人は74.4%でした。一方で、回答に含まれるURLを開いて元のWebページを見たり、AIから離れて検索エンジンで調べ直したりと、情報源を確かめる行動を取った人も54.4%いました。ITツール選定時に口コミ・レビューを「必ず確認する」人は、生成AI利用者で55.4%、非利用者で13.0%と差が開き、「だいたい確認する」を合わせるとそれぞれ91.3%と79.7%です。なお、本調査はレビューサイトを運営する同社によるもので、数値は同社の発表に基づきます。同社も、対象をIT導入の関与者に限っているため、生成AIとの接点が高めに出やすい可能性があるとしています。

💡 コプラスの視点

製品を選ぶ側がAIに候補を尋ねるようになると、AIの回答に名前が挙がるかどうかが、比較検討の入口を左右します。一方で調査からは、AIの答えをうのみにせず、元の情報やレビューで裏を取る人が多いことも読み取れます。社内でAIを調べものに使うときも、回答に示された出典を開いて確かめる手順を、使い方のルールに入れておきたいところです。

アイティクラウド株式会社の発表を読む →(アイティクラウド株式会社のプレスリリース)

本日のまとめ

アモデイ氏は、AIの能力を高めるペースを落とし、第三者の評価者に社員並みのアクセスを与える計画を示し、アルトマン氏とマスク氏も賛同しました。一方でトランプ大統領は減速の呼びかけに否定的な考えを示し、サックス氏は規制を条件にする姿勢を批判しています。SaaS選定の現場では4割超が生成AIを使い、利用者の4人に3人がAIの答えを信用する一方、半数超は元の情報源も確かめていました。AIが速く答えを出すほど、その答えや安全性を誰がどう確かめるかを決めておくことが、作る側にも使う側にも求められています。

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