
AI業務自動化とは、決まった手順の操作に加えて、文書を読む・文章を書く・判断の材料をそろえるといった工程までAIに任せ、業務の流れを少ない人手で回すことです。進めるときは、業務をまるごとAIに渡すのではなく、1つの業務を工程に分けて、工程ごとにRPA・ノーコード連携・生成AI・AIエージェント・人のどれが担うかを決めると失敗しにくくなります。読む・書く工程は生成AI、登録や転記はRPAや連携ツール、取り消せない操作は人の承認、という割り振りが基本の形です。ここでは、工程に分けるシートのひな形と判断表、追加費用なしで試せる範囲、社員10〜200名規模の会社の実名事例を順に見ていきましょう。
AI業務自動化とは|RPAの自動化と何が変わったか
これまでの業務自動化とAI業務自動化の差は、読む・書く・判断を支える工程まで任せられるようになった点にあります。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、人がパソコンで行う画面操作を記録し、同じ手順を繰り返させる仕組みです。決まった画面に決まった値を入れる作業には強い反面、請求書の書式が取引先ごとに違う、問い合わせの文面が毎回違う、といった揺れのある入力は苦手としてきました。
生成AIは、揺れのある文書を読んで必要な項目を取り出したり、文面の下書きを作ったりすることが出来ます。この読む・書くの部分が埋まったことで、これまで人が間に入っていた業務の流れを、最初から最後まで道具でつなげる場面が増えてきました。
一方で、生成AIの出力は毎回少しずつ変わり、もっともらしい誤りを含むこともあります。そのため、AI業務自動化は人の仕事をなくすことではなく、人が見る場所を絞り込むことだと考えると実態に合います。RPAとの違いや生成AIの得意・不得意の全体像は、生成AIで業務効率化する方法でも整理しています。
AIが読んで判断を支え、RPAや連携ツールが登録する組み合わせ
実際の業務では、AIとRPAのどちらか一方を選ぶより、組み合わせて使う形が多くなります。たとえば、メールで届いたPDFの請求書を生成AIが読み取って取引先名・金額・支払期日を決まった形式に並べ、その結果をRPAや連携ツールが会計ソフトへ登録する、といった流れです。AIは中身を理解する役、RPAや連携ツールは決まった場所へ運ぶ役と分けると、どちらの弱点も補い合えます。この役割分担を工程ごとに決めていくのが、後の節で扱う判断表になります。
中小企業のAI導入の現在地|中小機構の調査から
中小企業でAIを導入している会社は2割ほどで、導入済みの企業の8割超が生成AIを使っています。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)の「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月)は、東京商工リサーチに委託し、2025年11月17日〜12月12日に全国の中小企業10,000社を対象にWebアンケートで行われた調査です。AIの導入率(全社的に導入している、または一部の業務で導入している企業の合計)は20.4%で、導入を検討している18.6%と合わせると39.0%が導入に前向きと報告されています。
AIを導入済みの企業のうち、その部門で使っている割合をみると、総務・管理部門が68.3%で最多となり、営業・販売・サービス部門の60.3%、経営・企画部門の58.5%が続きます。導入済みの企業が使っているAI(複数回答)は生成AIが82.6%で、2番目の音声認識・音声対話AI(29.8%)を大きく上回る結果でした。AIを導入した中小企業では、バックオフィスで使われていることが多いと分かります。
※中小機構の調査は企業の回答をまとめたものです。導入率の母数は1,647社、導入済みのAIサービスは322社、導入目的は331社の回答です。事例情報の不足(83.3%)は1,635社、情報提供のニーズ(70.5%)は1,594社の回答です。
見落とせないのは、「成功事例や活用事例などの情報」が十分に入手できていないと答えた企業が計83.3%にのぼる点です。同じ調査で国などに求める支援としても、「導入事例などの情報提供」が70.5%と、導入費用などの助成(77.9%)に次ぐ高さになっています。後半では、同じ規模の会社の実名事例を工程に読み替えて紹介します。
総務省の「令和7年版 情報通信白書」は、日本の中小企業では生成AIの活用方針を明確に定めていないという回答が約半数を占めると記しています。工程をAIにつなぐ前に、どの情報をAIに渡してよいかを決める段取りが要る、という点は覚えておきたいところです。
人手不足という背景と、導入目的の87.0%
中小機構の同じ調査では、AIの導入目的として業務効率化/作業時間の短縮を挙げた企業が87.0%で、2位の品質向上(32.3%)と50ポイント以上の差がありました。導入の効果としても、業務効率化/作業時間の短縮が83.2%、人手不足対応が33.9%と報告されています。採用が難しい中で、今いる社員の手を空けたいという切実さが、AI業務自動化の出発点になっている会社は多いでしょう。だからこそ、どの工程の手を空けるのかを具体的に決めることが大切になります。
業務を工程に分ける|7つの工程で見る
AI業務自動化を進めるときは、まず1つの業務を「受け取る→読む→判断する→書く→登録する→知らせる→確かめる」の7つの工程に分けてみてください。業務名のまま自動化できるかを考えると、できる部分とできない部分が混ざって判断がぶれやすくなります。工程に分けると、RPAに任せる所、生成AIに任せる所、人が止める所がはっきり見えてきます。すべての業務が7つの工程をそろって持つわけではなく、判断や書く工程がない業務もあるので、当てはまる工程だけ書き出せば十分です。
例1:請求書を受け取ってから支払予定を登録するまで
取引先からメールでPDFの請求書が届く会社を例に、工程を分けてみましょう。受け取る工程は、請求書用のメールアドレスに届いた添付ファイルを決まったフォルダへ保存する作業で、ノーコード連携ツールに向いています。読む工程では、生成AIやAI-OCR(AIを使った文字読み取り)がPDFから取引先名・請求金額・支払期日・振込先を取り出します。判断する工程は、発注の記録と金額が合っているか、振込先が以前と変わっていないかを見る部分で、ここは人が確かめたほうが安全です。登録する工程は、確かめた値を会計ソフトや支払予定表に入れる作業で、RPAや連携ツールが担えます。最後の支払いの実行は取り消しが難しい操作なので、自動化の対象から外し、人の承認を残しておくのが無難です。
例2:問い合わせメールへの一次回答
次は、Webサイトの問い合わせフォームから届く質問に一次回答を返す業務になります。受け取る工程は、フォームの送信内容を表計算シートやチャットへ流す部分で、連携ツールの得意分野です。読む工程と判断する工程では、生成AIが質問の種類(料金・納期・不具合・その他)を振り分け、社内のよくある質問から近い答えを探します。書く工程で生成AIが回答の下書きを作り、担当者が内容を確かめてから送る形にすれば、誤った案内が社外に出るのを防げます。送信まで自動にするのは、質問の種類が限られていて、下書きの手直しがほとんど要らない状態が数週間続いてからでも遅くありません。
業務分解シートのひな形
工程に分けた結果は、次のようなシートに書き出しておくと、担当を決める話し合いがしやすくなります。列は、工程・入力・出力・1回の時間・月の回数・例外の割合・間違えたときの影響・担当の8つです。
業務名:請求書の受付と支払予定の登録(記入例) 列:工程/入力/出力/1回の時間/月の回数/例外の割合/間違えたときの影響/担当 【受け取る】入力:メール添付のPDF/出力:保存したファイル/1回1分/月120回/例外5%/影響:社内で直せる/担当:ノーコード連携 【読む】入力:保存したPDF/出力:取引先名・金額・期日・振込先/1回4分/月120回/例外15%/影響:社内で直せる/担当:生成AI(人が確認) 【判断する】入力:読み取った値・発注の記録/出力:照合の結果/1回3分/月120回/例外10%/影響:社外に出る/担当:人 【登録する】入力:照合済みの値/出力:仕訳・支払予定/1回3分/月120回/例外5%/影響:社内で直せる/担当:RPA・ノーコード連携 【知らせる】入力:登録の結果/出力:担当者への通知/1回1分/月120回/例外0%/影響:社内で直せる/担当:ノーコード連携 【確かめる】入力:支払予定の一覧/出力:支払いの承認/1回5分/月1回/例外―/影響:社外に出る/担当:人 ※数字は記入例です。自社の実績で埋めてください。
例外の割合は、AIが読み取れなかった、形式が違った、人が直した、という件数の割合を、最初の1か月の実績で埋めると現実に近い数字になります。間違えたときの影響の列で「社外に出る」となった工程は、どれほど自動化しやすく見えても、人の確認を残す候補にしてください。
工程ごとの担当を決める判断表
工程ごとの担当は、入力の揺れと、間違えたときに取り消せるかどうかの2点でほぼ決まります。揺れのない入力を決まった場所へ運ぶならRPAかノーコード連携、揺れのある文書を読む・書くなら生成AI、手順そのものを組み立て直す必要があるならAIエージェント、取り消せない操作や例外の判断なら人が担います。7つの工程に当てはめると、次の表のようになります。
| 工程 | 主な担当 | 補助に使える道具 | 人が止める目安 |
|---|---|---|---|
| 受け取る | ノーコード連携 | RPA(メールソフトの画面操作) | 送り主が分からないファイル |
| 読む | 生成AI | AI-OCR | 読み取れない・項目が欠けている |
| 判断する | 人 | 生成AI(判断材料の整理) | 金額・振込先・契約条件に関わるもの |
| 書く | 生成AI | 文面のテンプレート | 社外に出る文面はすべて |
| 登録する | RPA/ノーコード連携 | AIエージェント(手順が毎回変わる場合) | マスタの削除・上書き |
| 知らせる | ノーコード連携 | 生成AI(要約して知らせる) | 社外への送信 |
| 確かめる | 人 | 生成AI(差分の洗い出し) | 最終の承認 |
AIエージェントは、目的を伝えると手順を自分で組み立てて複数の道具を操作する仕組みで、表では手順が毎回変わる登録作業の補助に置きました。エージェントそのものの定義や仕組みはAIエージェントとはで、生成AIに任せるかエージェントにするかの判断はAIエージェントと生成AIの違いで詳しく扱っています。
RPAとノーコード連携の違い
RPAとノーコード連携は、どちらも決まった手順を自動で回す道具ですが、動かし方が違います。RPAは人の画面操作をまねるため、連携の仕組みを持たない古い業務ソフトやWebの管理画面にも使えるのが強みです。その代わり、画面の配置が変わると止まりやすく、ソフトの更新のたびに手直しが要ることもあります。ノーコード連携は、アプリ同士が用意している接続口(API)を使ってデータを受け渡すため、画面が変わっても止まりにくくなります。クラウドのメール・表計算・チャット・会計ソフトの間をつなぐならノーコード連携、接続口のないソフトを操作するならRPA、と分けて考えると迷いません。
RPAと生成AI・AIエージェントが、失敗したときの止まり方と費用の決まり方でどう違うのかは、RPAとAIの違い|止まり方と費用で比べる、エージェント時代の使い分けでくわしく比べています。
生成AIが担うのは読む・書く工程
生成AIに任せるのは、文書を読んで項目を取り出す、長い文章を要約する、返信や報告の下書きを作る、といった読む・書く工程です。判断する工程でも、判断に必要な材料を並べる、規程と照らして気になる点を挙げる、といった下ごしらえなら任せられます。ただし、最後にどちらを選ぶかを決める部分は、責任を持てる方に残しておきましょう。
生成AIが苦手なこと|正確さ・再現性・例外・最終判断
生成AIには、自動化の流れに組み込むときに気をつけたい苦手が4つあります。
- 計算や数字の転記を100%正しく行う保証はなく、桁や日付を取り違えることがある
- 同じ入力でも出力が毎回少しずつ変わるため、毎回まったく同じ結果が要る処理には向かない
- 見たことのない書式や想定外の依頼にも、それらしい答えを作ってしまうことがある
- 契約や支払いのように責任が伴う最終判断は、AIに任せきりにできない
計算や転記の正確さが要る部分は、生成AIに数字を作らせず、読み取った値を表計算やRPAに渡して機械的に処理させる形にすると安定します。
AIの出力は人が確かめる|ハルシネーションへの備え
生成AIが事実と違う内容をもっともらしく出力することを、ハルシネーションと呼びます。自動化の流れに組み込むと、1件ずつ画面で見ていたときより誤りに気づきにくくなってしまいます。対策としては、AIが読み取った値の横に元のPDFの該当箇所を並べて見られるようにする、金額が一定額を超えたら必ず人に回す、といった確認の仕組みを工程の中に入れておくことが有効です。確認する人の負担が重くなりすぎないよう、全件を見るのか、例外と高額だけを見るのかも、業務分解シートの担当の列で決めておきましょう。
人が残る工程:取り消せない操作と例外の多い工程
人の承認を残す工程は、取り消せない操作と、例外の割合が高い工程の2種類になります。送金・社外へのメール送信・マスタの削除のように取り消せない操作は、自動化しても人の承認を残してください。例外の割合が高い工程は、自動化しても人が直す手間が残るため、先に入力の形をそろえるほうが効果が出やすいでしょう。AIに任せる範囲を、読むだけ・下書き・承認後に実行・上限つきの自動実行と段階的に広げる考え方は、AIエージェントの事例で紹介しています。
自動化できる業務の一覧を、工程で読み替える
よく挙がる自動化できる業務も、工程に分けると、AIが担う部分と人が残る部分がはっきりします。議事録の作成は、録音の文字起こしと要約を生成AIが担い、決定事項と担当者の確認を人が行う形が基本になります。問い合わせ対応は、振り分けと回答の下書きを生成AIに任せ、社外へ送る前の確認を人が行います。メールの下書きは、生成AIの得意な書く工程そのものです。請求書や申込書のデータ入力は、読む工程をAI-OCRや生成AIが、登録する工程をRPAや連携ツールが分担すると流れがつながります。社内資料や規程の要約は読む工程だけで完結しやすく、自動化の最初の1本に選びやすい業務でしょう。
部署別にどの業務から始めるかや、業務ごとの効果の計算は生成AIで業務効率化する方法で、経理・人事・総務の使いどころはバックオフィスのAI活用でまとめています。どの業務でも、読む・書く工程を担う生成AIは、特定の担当者だけでなく多くの社員が毎日使う道具になります。その道具が社員ごとの個人アカウントに散らばっていると、どの情報がどこに入力されたのかを会社が把握できなくなってしまいます。
工程をつなぐ前に、社員が毎日使う生成AIを会社の契約にまとめると、入力の扱いを一度に決められます。UPGEAR AI(アップギアAI)は、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約で使える法人向けサービスです(人数無制限)。
追加費用なしで試せる範囲|Power Automate・Zapierの無料枠
Microsoft 365やWindows 11を使っている会社なら、追加の契約をせずにPower Automateで自動化を試せる範囲があります。連携ツールのZapierにも無料プランがあり、まずは1つの工程を小さくつないでみることが出来ます。
ノーコード連携ツール(Zapier・Make・Power Automate)の役割
ノーコード連携ツールは、プログラムを書かずに、あるアプリで起きた出来事をきっかけに別のアプリへ処理を流す道具です。代表的なものにZapier、Make、Power Automateがあり、フォームに回答が届いたら表計算に1行足してチャットに知らせる、といった受け取る・登録する・知らせる工程を担います。Zapierの料金ページでは、有料のProfessionalの機能として、自社のOpenAIアカウントをつないで表のデータに生成AIの出力を加える項目(AI fields)も並んでいるのが確認出来ます。
Power Automate:Windows 11とMicrosoft 365で使える範囲
Microsoft Learnの「Windows 11 で Power Automate の使用を開始する」によると、Windows 11にはデスクトップ用のPower Automateがプレインストールされています。画面操作を記録してアクションに変える機能があり、RPAの入り口をパソコン1台から試すことが出来ます。また「Power Automate ライセンスの種類」では、Microsoft Entraテナントの職場または学校アカウントに基本機能が無料で含まれると案内されています。無料の範囲は、標準コネクタだけを使うクラウドフローの作成と実行(ほかの人との共有なし)と、パソコン上で人が立ち会って動かすデスクトップフロー(有人実行)です。人がいない夜間などにデスクトップフローを動かす無人実行には、プロセスライセンスなどの有料のライセンスが必要になります。まずは1人の担当者が、自分のパソコンで毎日の転記作業を記録して動かしてみるところから始めるとよいでしょう。
Zapier:無料プランは月100タスク
Zapierの料金ページでは、無料のFreeプランが月100タスクまで、きっかけ1つと処理1つをつなぐ2ステップのZapまでと表示されています。タスクは、Zapが処理を1つ成功させるごとに1と数えられ、新しいデータがないかを確かめるだけでは数えられないと説明があります。無料プランで新しいデータを確かめる間隔は15分で、有料のProfessionalは月19.99ドルからと表示されています。連携ツールの費用は、利用人数より、月に何回処理を動かすかで決まる点を押さえておきましょう。たとえば問い合わせ1件につき表計算への追加とチャットへの通知の2つの処理を動かすなら(無料プランではZapを2本に分けます)、月50件で100タスクとなり、無料プランの上限に届いてしまいます。
※Power Automate・Zapierの内容は、2026年9月27日時点で各社の公式ページに表示されているものです。Zapierの金額は米ドル表示で、支払い方法やタスク数によって変わります。料金や無料の範囲は変更されることがあるため、利用前に公式ページでご確認ください。
生成AIツールの紹介|ChatGPT・Copilot・Gemini・Claude
読む・書く工程を担う生成AIとしては、ChatGPT、Microsoft Copilot(旧称 Microsoft 365 Copilot)、Gemini、Claudeなどが広く使われています。Microsoft CopilotはMicrosoft 365のアプリと、GeminiはGoogle Workspaceと組み合わせやすいのが特徴です。ChatGPTとClaudeは単体で使うほか、法人向けのプランや、複数のAIをまとめて使えるサービスを通して使う形もあります。どれか1つが常に優れているわけではなく、長い文書の読み込み、調べもの、下書きなど、工程によって向き不向きが分かれます。主なAIの違いは主要4AIの違いと使い分けで、複数のAIを1つの環境で使う方法はマルチAIとはで紹介しています。
ツールの選び方|工程・連携・費用・セキュリティで見る
道具を選ぶときは、製品の評判より先に、業務分解シートで決めた担当の列から考えるのが近道です。
- 工程:RPA・ノーコード連携・生成AIのうち、足りない担当はどれか
- 連携:いま使っているメール・表計算・会計ソフトとつながる接続口があるか
- 費用:人数で増えるのか、処理の回数や利用量で増えるのか
- セキュリティ:入力した内容を学習に使わせない設定にできるか、利用の記録を会社が確認できるか
- 使いやすさ:担当者が自分で手直しできる操作画面か
特に生成AIは、社員が日々の文書を貼り付けて使う道具なので、個人の無料アカウントではなく会社で契約した環境を選ぶことが前提になります。点検の項目は生成AIのセキュリティ対策チェックリストが参考になるでしょう。
効果の見積もり方と数値目標|例外の割合を入れて計算する
自動化の効果は、例外の割合を入れて見積もると、導入後の実績とのずれが小さくなります。自動で流れるのは例外でない分だけで、例外は人が処理し、自動で流れた分にも確認の時間がかかるためです。
削減できる時間(月)= 1回の時間 × 月の回数 ×(1-例外の割合)- 確認にかかる人の時間
説明用の仮定として、1回12分かかる読み取りと入力の作業が月150回あり、例外の割合が20%、自動で流れた分の確認に1件2分かかるとします。自動で流れる分は12分×150回×0.8で1,440分となり、確認の時間は2分×120件で240分です。差し引いた1,200分、月20時間が見込める削減時間になります。同じ作業でも例外の割合が50%なら、12分×150回×0.5の900分から確認の150分を引いて750分、月12.5時間にとどまります。例外の割合が20%から50%に上がるだけで、見込める削減時間は4割近く減ってしまいます。
数値目標は、削減時間そのものより、1回の時間・例外の割合・人が直した件数の3つを工程ごとに追うと立てやすくなります。導入前に2週間ほど、今の作業の1回の時間と回数を記録しておけば、比べる基準が出来ます。人数と回数から効果を積み上げる計算は生成AIで業務効率化する方法にあるので、自動化の歩留まりを見るこの式と組み合わせて使ってみてください。
中小企業の導入事例|DXセレクション2026の実名4社
経済産業省の「DXセレクション2026」選定企業レポート(2026年6月)には、社員数十名規模の中小企業が生成AIで業務を変えた例が載っています。レポートの数字は、各社の最終選考発表資料を基に経済産業省が作成したもので、各社の発表に基づく値です。ここでは4社の取組を、どの工程を自動化し、どこに人を残したかという見方で読み替えてみます。
プーラビダ(北九州市・訪問看護・26名)|報告書作成を1時間から5分に
グランプリに選ばれたプーラビダは、訪問看護ステーションを運営する会社です。生成AIを活用した内製プラットフォーム「ほぽたくん」で、レポートで「看護師の最大負担」とされる報告書作成をAIが支援し、作成時間を1時間から5分へ減らしたと発表しています。報告書の郵送手配も、2時間から3分になったとのことです。工程で見ると、書く工程と知らせる工程をAIと仕組みに任せ、看護の中身の判断は看護師に残した形と読めます。
エヌエスケーケー(神戸市・携帯電話販売代理店・61名)|請求書処理を月275分削減
エヌエスケーケーは、社長直轄のプロジェクトチームを置き、全社員が生成AIを活用できる環境を整えたと発表しています。成果として、請求書処理業務で月275分、営業提案書作成と引継ぎ業務で月300分の削減が示されました。毎月、全部署に生成AIを使った改善成果の報告を求め、成功事例と使い方を全社で共有する仕組みも作りました。道具を配るだけでなく、使い方を持ち寄る場をつくったことが、読む・書く工程の自動化を全社に広げた点として参考になります。
川六(高松市・ホテル・68名)|パートを含む全従業員がRAGを開発
川六は、毎週全店舗でRAG(社内の資料を読ませて答えさせる仕組み)の活用検討会議を開き、60代の社員やパートを含む全従業員がRAGを開発したと発表しています。既存店舗での経理業務の自動化や生成AI活用のノウハウを川六モデルとしてまとめ、一人当たりの月平均残業時間は2023年の6時間49分から2025年の3時間54分に減ったとのことです。ベテランの経験を読む工程の材料に変え、判断の支えに使っている例といえます。
ヒューマングループ(佐世保市・自動車教習所ほか・53名)|一人一ボット体制
準グランプリのヒューマングループは、30年使った既存システムからクラウドの統合業務プラットフォームへ移り、チャット基盤に業務を集めたうえで、ノーコードでのアプリ開発も進めています。全社員それぞれに、自身の資質データを学習したAIアシスタントを置く一人一ボット体制を作ったと発表しており、会議時間75%削減、社内電話90%削減を成果に挙げました。業務をつなぐ土台を先に整え、その上に社員ごとのAIを載せた順番になります。
4社の事例から見えるメリット
4社に共通するのは、特定の担当者だけでなく、全社員が参加する形でデジタルやAIの活用を進めていることです。DXの成果として、作業時間の短縮に加え、離職率の低下や残業の減少といった、人手不足に直結する変化も報告されています。属人化していた経験を形にし、誰でも同じ質で仕事が出来るようにした点も、見逃せないメリットでしょう。大企業や自治体の事例と、任せる範囲の広げ方はAIエージェントの事例で紹介しています。
※4社の数字は、経済産業省「DXセレクション2026」選定企業レポート(2026年6月)に掲載された値で、各社の最終選考発表資料を基に同省が作成したものです。第三者による検証を経た数字ではありません。従業員数も同レポートの記載です。
自動化を始める順番|5つのステップ
AI業務自動化は、1つの業務を工程に分けるところから始め、つなぐ範囲を少しずつ広げる順番で進めるのが無理のない形です。
- 1つの業務を選び、業務分解シートで工程に分ける
- 読む・書く工程を、会社で契約した生成AIで2〜4週間試し、例外の割合を記録する
- 受け取る・登録する・知らせる工程を、ノーコード連携やRPAでつなぐ
- 取り消せない操作と例外の多い工程に、人の承認を残す
- 手順書とプロンプト(AIへの指示文)のひな形を共有し、次の業務へ広げる
最初の業務は、月の回数が多く、間違えても社内で直せるものを選ぶと、効果と安全の両方を確かめやすくなります。いきなり複数の業務を同時に自動化すると、どこで止まったのかが分かりにくくなるため、1本ずつ広げていきましょう。
入力してよい情報と利用ルールを先に決める
工程をつなぐ前に、どの情報を生成AIに入力してよいかを決めておくことが欠かせません。個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力する場合には、生成AIサービスの提供事業者がその個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。自動化で処理件数が増えるほど、1件ずつ気をつけるやり方では追いつかなくなってしまいます。入力してよい情報の線引きの表はバックオフィスのAI活用で、社内ルールの作り方は生成AIの社内ガイドラインの作り方で紹介しています。
定着しない理由と社内教育
自動化が途中で使われなくなるきっかけは、作った人しか仕組みを直せない、例外が起きたときの連絡先が決まっていない、使う社員が出力の確かめ方を知らない、といった運用の抜けにあることが多いものです。作った方が異動しても直せるよう、業務分解シートと手順書を共有フォルダに置き、担当を2人以上にしておきましょう。社員向けには、AIの出力を確かめる手順と、例外を見つけたときの連絡先を、実際の業務の画面を使って短く伝えるほうが身につきやすくなります。エヌエスケーケーのように、月に1回、部署ごとの改善の成果を持ち寄る場を設けるのも1つの方法です。
自動化の手前に、毎日使うAIの環境を会社でそろえる
RPAや連携ツールでつなげるのは受け取る・登録する・知らせる工程で、その手前にある読む・書く・判断を支える工程は、社員が毎日使う生成AIが担います。この生成AIが社員ごとの個人アカウントに分かれていると、工程をつないでも、途中で業務文書が会社の把握できない場所を通ることになってしまいます。順番としては、まず会社で契約した生成AIの環境を用意し、そのうえでRPAや連携ツールを足していくほうが、あとから入力ルールをやり直さずに済みます。
会社の環境を選ぶときは、入力した内容を学習に使わせない設定を全員に一律で適用できるか、誰がいつどのAIを使ったかの記録を会社が確認できるか、社員への配布と停止を管理者が行えるか、工程に合わせて複数のAIを使い分けられるかを確かめてみてください。会社として把握できていないAIの利用はシャドーAI(野良AI)とも呼ばれ、その見つけ方と減らし方はシャドーAI(野良AI)とはでまとめています。
自動化の手前の、読む・書く工程を会社のAI環境で
UPGEAR AIは、ChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityを1つの契約・1つの画面で使える法人向けサービスです。管理者ダッシュボードで利用ログ・権限・モデルのON/OFFを管理でき、自社資料を読み込ませて回答させる社内文書RAGや、よく使う指示と手順をBOTにして社内限定で共有する機能もあります。データの保管とログ管理は国内サーバー(AWSの日本リージョン)で行います。料金は月額30,000円(税抜)から。どのプランも利用人数は無制限で、料金は利用量に応じたプラン設計です(人数の目安はライト1〜5名、スタンダード6〜20名、プレミアム21〜50名)。初期費用100,000円(税抜)が別途かかります。
UPGEAR AIの詳細を見るよくある質問
AIで自動化できる仕事は何ですか?
AIを活用した業務自動化の事例は?
AIの自動化とはどういうことですか?
AIで勤務表の作成を自動化できますか?
無料で試せるAI業務自動化の道具はありますか?
まとめ
AI業務自動化は、業務を受け取る・読む・判断する・書く・登録する・知らせる・確かめるの工程に分け、工程ごとにRPA・ノーコード連携・生成AI・AIエージェント・人を割り振ると進めやすくなります。読む・書く工程は生成AI、揺れのない登録や通知はRPAや連携ツール、取り消せない操作と例外の判断は人、というのが基本の割り振りです。効果は例外の割合を入れて見積もり、1回の時間・例外の割合・人が直した件数を工程ごとに追っていきましょう。
Power AutomateやZapierの無料の範囲で1つの工程から試しつつ、読む・書く工程を担う生成AIは会社で契約した環境にそろえると、自動化を広げるときの土台になります。法人のAI活用に関する他の記事はAI活用コラム一覧をご覧ください。
